JP2000251637A - 電子放出素子及びそれを用いた画像表示装置 - Google Patents

電子放出素子及びそれを用いた画像表示装置

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JP2000251637A
JP2000251637A JP4921999A JP4921999A JP2000251637A JP 2000251637 A JP2000251637 A JP 2000251637A JP 4921999 A JP4921999 A JP 4921999A JP 4921999 A JP4921999 A JP 4921999A JP 2000251637 A JP2000251637 A JP 2000251637A
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electron
film
electrodes
conductive thin
carbon
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JP4921999A
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Toshihiko Takeda
俊彦 武田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 素子駆動による特性劣化のない電子放出素子
を提供することを課題とする。また、長寿命、高信頼
性、高輝度で高品位な画像が得られる画像表示装置を提
供することを課題とする。 【解決手段】 基体1と、基体表面上に配置した相対向
する一対の電極2,3と、一対の電極間に導電性薄膜4
及び炭素を含有する膜7を有し、導電性薄膜が電極間で
間隙6を有して対向しており、間隙6を境にして、一方
の導電性薄膜が一対の電極の一方の電極と電気的に接続
され、他方の導電性薄膜が一対の電極の他方の電極と電
気的に接続され、炭素を含有する膜7が少なくとも導電
性薄膜4上に配置され、炭素を含有する膜は、450℃
以上の耐熱性を有し、且つ加熱処理後の膜厚減少が5パ
ーセント未満である構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出素子及び
それを用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては、大別
して熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種
類のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界
放出型(以下、「FE型」という。)、金属/絶縁層/
金属型(以下、「MIM型」という。)や表面伝導型電
子放出素子等がある。
【0003】FE型の例としてはW.P.Dyke &
W.W.Dolan,”Field emissio
n”,Advance in Electron Ph
ysics,8,89(1956)あるいはC.A.S
pindt,”Physical Propertie
s of thin−film field emis
sion cathodes with molybd
enium cones”,J.Appl.Phy
s.,47,5248(1976)等に開示されたもの
が知られている。
【0004】MIM型の例としてはC.A.Mea
d、”Operation of Tunnel−Em
ission Devices”,J.Apply.P
hys.32,646(1961)等に開示されたもの
が知られている。
【0005】表面伝導型電子放出素子型の例としては、
M.I.Elinson、Radio Eng.Ele
ctron Phys.、10,1290,(196
5)等に開示されたものがある。
【0006】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より、電子放出が生ずる現象を利用するものである。こ
の表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等
によるSnO2薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの
〔G.Ditmmer,Thin Solid Fil
ms,9,317(1972)〕In23/SnO2
膜によるもの〔M.Hartwell and C.
G.Fonsted,IEEE Trans.ED C
onf.,519(1975)〕,カーボン薄膜による
もの〔荒木久他:真空、第26巻、第1号、22頁(1
983)〕等が報告されている。
【0007】本出願人は、表面伝導型電子放出素子とそ
の応用に関し、多数の提案を行っている。その構成、製
造方法などは、例えば特開平7−235255号公報、
特開平8−171849号公報などに開示されている。
以下ではその要点を簡単に説明する。
【0008】上記の表面伝導型電子放出素子は、図1
(a),(b)に模式的に示すように、基体1上に対向
する一対の素子電極2,3と、該素子電極に接続されそ
の一部に電子放出部5を有する導電性膜4とを有してな
る。図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。
電子放出部5は、上記導電性薄膜の一部が、破壊・変形
ないし変質され、間隙が形成された部分であり、間隙内
部及びその近傍の導電性薄膜4上及び相対向する電極
2、3上には、活性化と呼ばれる工程により、炭素及び
/または炭素化合物を主成分とする堆積物が形成されて
いる(不図示)。これにより放出される電子の量が大幅
に増大する。
【0009】上記導電性膜4は、後述する通電による処
理(フォーミング工程)で間隙部を好ましい状態に形成
するために、導電性微粒子により構成される。また、前
述の炭素化合物を主成分とする堆積物を形成するための
原料は、真空ポンプから真空中に拡散する油が利用され
る場合や、炭化水素系の化合物を含有する有機物を真空
中に積極的に導入する方法がある。その一例としては、
真空中に前記電極と導電性薄膜からなる電子放出素子を
置き、フォーミングと呼ばれる通電処理を行って導電性
薄膜中に間隙部を形成したうえで、気化したアセトンを
ガスとして所望の圧力まで導入し、前記電極間に適当な
電圧を印加する方法が挙げられる。
【0010】上記手法を用いると、前記間隙部及び導電
性薄膜上に炭素を主成分とする堆積物を形成することが
できる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】表面伝導型電子放出素
子については、適用した画像表示装置が明るい表示画像
を長期にわたり安定して提供できるよう、更に安定で長
寿命な電子放出特性が要望されている。安定的に制御し
得る電子放出特性と長寿命化がなされれば、例えば蛍光
体を画像形成部材とする画像表示装置においては、明る
い高品位な画像表示装置、例えばフラットテレビの実現
が期待される。
【0012】しかし、前述したエリンソン等によるSn
2薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの〔G.Di
tmmer,Thin Solid Films,9,
317(1972)〕、In23/SnO2薄膜による
もの〔M.Hartwelland C.G.Fons
ted,IEEE Trans.ED Conf.,5
19(1975)〕、カーボン薄膜によるもの〔荒木久
他:真空、第26巻、第1号、22頁(1983)〕等
は電子放出素子の駆動時における不安定性、例えば放出
される電流値の時間的変動、揺らぎが大きく、画像表示
装置に応用した場合には表示画像のむら、輝度変動等の
点で問題となり満足しうる画像表示装置を実現すること
は困難であった。
【0013】また、従来の表面伝導型電子放出素子で
は、上述した短時間の電流変動とともに、長期にわたる
素子特性の変化、具体的には電子放出素子の経時劣化が
大きいという欠点があり、画像表示装置としての寿命を
十分保証できなかった。そのため、構造が簡単であり、
且つ微細な素子を形成可能であるという、面状配置に適
した素子の利点を生かした画像表示装置等への応用、実
用化を妨げていた。
【0014】一方、アセトンを原料として、通電処理を
行って炭素膜を形成した表面伝導型電子放出素子の場合
には、上記従来の電子放出素子に比べ短期、長期にわた
る電流変動の少ない素子が得られるが、画像表示装置に
求められる数万時間の寿命を保証することは困難であ
る。
【0015】実際に、アセトン雰囲気中で通電処理を行
って炭素膜を形成した表面伝導型電子放出素子の寿命評
価を行った時の放出電流の時間変化の模式図を図10に
示す。同図における駆動条件は、パルス幅100マイク
ロ秒、パルス間隔16.6ミリ秒、素子印加電圧15ボ
ルトである。
【0016】上記条件下で素子駆動を行ったとき、素子
駆動初期の放出電流値を1とすると、10000分後に
は放出電流はゼロとなる。画像表示装置への応用を考え
た場合、初期値の二分の一になるまでの時間を寿命と定
義すると、上記素子の寿命は100分程度であり画像表
示装置に必要な条件を満たすことはできないことが分か
る。
【0017】よって、本発明は、素子駆動による特性劣
化のない電子放出素子を提供することを課題とする。ま
た、本発明は、長寿命、高信頼性、高輝度で高品位な画
像が得られる画像表示装置を提供することを課題とす
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の手段にお
ける電子放出素子は、基体と、該基体表面上に配置した
相対向する一対の電極と、該一対の電極間に導電性薄膜
及び炭素を含有する膜を有し、該導電性薄膜が前記電極
間で間隙を有して対向しており、該間隙を境にして、一
方の導電性薄膜が前記一対の電極の一方の電極と電気的
に接続され、他方の導電性薄膜が前記一対の電極の他方
の電極と電気的に接続され、前記炭素を含有する膜が少
なくとも前記導電性薄膜上に配置され、該炭素を含有す
る膜は、450℃以上の耐熱性を有し、且つ加熱処理後
の膜厚減少が5パーセント未満である構成とした。
【0019】本発明の第2の手段では、第1の手段にお
ける炭素を含有する膜として、真空雰囲気中で450℃
の加熱処理後の膜厚減少が5パーセント未満である膜を
採用することもできる。
【0020】本発明の第3の手段では、第1の手段にお
ける炭素を含有する膜として、不活性ガス雰囲気中で4
50℃の加熱処理後の膜厚減少が5パーセント未満であ
る膜を採用することもできる。
【0021】本発明の第4の手段では、前記第1〜第3
の手段における炭素を含有する膜について、導電性薄膜
上及びその間隙内の前記基体表面上に配置した構成を採
用することもできる。
【0022】本発明の第5の手段では、前記第1〜第3
の手段における炭素を含有する膜について、前記導電性
薄膜上及びその間隙内の前記基体表面上及び前記相対向
する一対の電極上に配置した構成を採用することもでき
る。
【0023】本発明の第6の手段における画像表示装置
は、前記第1の手段から第5の手段の何れかに記載の電
子放出素子を基体上に複数配列した電子放出部材と、該
電子放出部材から放出された電子の照射を受けて発光す
る画像形成部材とを含む構成とした。以下に、本発明を
さらに詳述する。
【0024】既に述べたように、従来の表面伝導型と称
されるSnO2薄膜を用いたもの、Au薄膜によるも
の、In23/SnO2薄膜によるものの電子放出素子
は、素子駆動時の真空雰囲気中に残留するガス分子の吸
着、あるいは駆動による電界脱離によって素子の電子放
出部表面の状態が変化するため放出電流は極めて不安定
であった。この要因として、電子放出点を構成する材料
のガス吸着による仕事関数変化が考えられ、上記材料の
清浄表面とガス吸着した表面との仕事関数の違いが電流
変動として観測されるものである。吸着、脱離のくりか
えしは短時間での電流変動として現れるとともに、吸着
のみが進行する場合には長時間での電流変化、具体的に
は放出電流の減少として観測され、これは電子放出素子
の劣化を意味することになる。
【0025】従って、前記材料を用いた従来型の表面伝
導型電子放出素子は揺らぎが大きく、且つ寿命が短いと
いう欠点によって実用には至らなかった。一方、こうし
たガスの吸着、脱離の影響を受けにくいとされているカ
ーボン材料を用いた表面伝導型電子放出素子の場合に
は、短時間での電流変動という点では上記材料の欠点を
補った素子を得られると考えられるが、本発明者らが鋭
意検討を行った結果では、素子部を構成するカーボンの
質によって長時間での電流変動や寿命に大きく変化が現
れ、概して、質の低いカーボンとなった場合には素子寿
命が著しく短くなることを見出した。
【0026】質の低いカーボン、例えばアモルファスカ
ーボンの素子を形成した場合、素子駆動するにしたがっ
て放出電流の減少が見られ、画像表示装置に応用した場
合に必要とされる素子寿命〜1万時間を達成することは
極めて困難であることが分かっている。
【0027】この劣化が何に起因するかを検討したとこ
ろ、電子放出部を構成するカーボンが素子劣化するに従
って消失してゆくことが明らかになっており、素子駆動
時の強電界と電流が流れることによる放出部の発熱によ
って質の低いカーボンが焼失あるいは昇華してカーボン
膜そのものが減少し、電子を放出する強電界部分のカー
ボン膜間距離が広がってしまい、電界強度が低下するこ
とで電流が減少してゆくものと考えられる。
【0028】そこで、本発明では電子放出部を形成する
カーボン膜を耐熱性の高い材料とすることで長時間にわ
たる素子劣化を抑制した表面伝導型素子を得ている。具
体的には、素子の放出部に存在するカーボンを、真空中
あるいは1気圧の不活性ガス雰囲気中で450℃、ある
いは不活性ガス中で350℃の加熱処理を行っても、カ
ーボン膜厚あるいは体積が減少しない膜質のカーボン膜
を用いることで寿命の改善をはかっている。
【0029】上記のような耐熱性の高いカーボン膜の形
成方法としては、本発明では後述する活性化工程におい
て、トルニトリルあるいはベンゾニトリルの希薄ガス雰
囲気中で素子に電圧を印加し、雰囲気ガスを分解させて
カーボン膜を生成させるという手法を用いている。
【0030】こうして生成されるカーボン膜は、間隙を
有する導電性薄膜上、導電性薄膜の間隙間の基体表面
上、及び相対向する一対の電極上に堆積し、その膜厚は
5ナノメートルから100ナノメートルとしている。
【0031】上記トルニトリルまたはベンゾニトリルの
希薄ガス雰囲気中で形成される素子上のカーボン膜は、
例えばグラファイト(いわゆるHOPG,PG,GCを
包含する、HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構
造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れ
たもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱
れがさらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボ
ン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボン
と前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)であると
本発明者は確認している。
【0032】また、こうして得られた素子上に形成され
たカーボン膜は真空雰囲気下で加熱、焼成を行うとそれ
ぞれ450℃、350℃までは何ら形態変化は見られ
ず、素子自体の電子放出特性にも変化が見られない。さ
らには、本発明の素子を長時間、一定の印加電圧で駆動
しても素子を流れる電流及び放出電流には目立った減少
はなく、画像表示装置に応用した場合の駆動デューティ
ーでは1万時間以上の素子寿命を達成できることを確認
している。
【0033】さらには、後述する活性化と称する、トリ
ニトリル、ベンゾニトリル雰囲気下での通電処理時の電
圧波形を高デューティー比とすることでより耐熱性の高
い炭素膜を得ることができる。
【0034】具体的には、活性化時の波形において、パ
ルス幅/パルス間隔の比が大きくなるほど耐熱性が上が
り、素子の駆動時の劣化が小さくなることを本発明者ら
は見い出している。活性化工程における駆動デューティ
ー比が大きいほど望ましい炭素膜が形成され、より具体
的には1/10から1/2のデューティー比が適当であ
る。
【0035】活性化時の駆動デューティー比1/5、ト
リニトリル雰囲気下で炭素膜を形成した電子放出素子の
寿命評価の結果を図10に示す。トリニトリル雰囲気下
で高デューティー比活性化を行った電子放出素子はアセ
トン活性化を行った素子に比べはるかに長寿命であるこ
とを確認している。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
の電子放出素子について説明する。図2(a)、(b)
は本発明の電子放出素子を模式的に現した平面図と断面
図である。基板1上に一対の素子電極2,3が対向して
配置されており、後述するフォーミング工程等により導
電性薄膜4の一部に形成された間隙6が形成されてお
り、導電性薄膜4は基板1表面に対して横方向に対向し
ている。そして、導電性薄膜4が素子電極2,3の表面
を覆うことで、一対の電極と導電性薄膜とが電気的に接
続されている。
【0037】さらに、後述する活性化工程により、間隙
6内の基板1上およびその近傍の導電性薄膜4上、さら
には対向する電極上に、堆積物である、炭素を有する膜
7が形成されている。尚、本発明に於いては、堆積物
と、炭素を有する膜は同一のものを指す。
【0038】次に本発明の実施態様の製造方法におい
て、素子電極、導電性膜を形成する工程、フォーミング
工程を、図3(a)〜(c)を用いて、簡単に説明す
る。 1)基板1を洗剤、純粋および有機溶剤等を用いて十分
に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により素子電極材
料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて
基板1上に素子電極2,3を形成する(図3a)。
【0039】2)素子電極2、3を設けた基板1に、有
機金属化合物の溶液を塗布して、有機金属化合物薄膜を
形成する。有機金属化合物薄膜を加熱焼成処理し、リフ
トオフ、エッチング等によりパターニングし、導電性薄
膜4を形成する(図3b)。
【0040】ここでは、有機金属溶液の塗布法を挙げて
説明したが、導電性薄膜4の形成方法はこれに限られる
ものでなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積
法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用
いることもできる。また、上記の有機金属化合物の溶液
をインクジェット装置により所望の位置に液滴として付
与する方法を用いることもでき、この場合はリフトオフ
やエッチングによるパターニング工程は不要となる。
【0041】3)つづいて、フォーミング工程を施す。
このフォーミング工程の方法の一例として通電処理によ
る方法を説明する。導電性薄膜を形成した上記電子放出
素子を、真空装置内に設置し、内部を例えば1×10-5
Torr程度の圧力となるように排気し、素子電極2,
3間に、不図示の電源を用いて、通電を行うと、導電性
薄膜4に、間隙6が形成される(図3C)。
【0042】電圧波形は、パルス波形が好ましい。これ
にはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加
する図4aに示した手法と、パルス波高値を増加させな
がら電圧パルスを印加する図4bに示した手法がある。
【0043】図4(a)におけるT1及びT2は電圧波
形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μse
c.〜10msec.、T2は、10μsec.〜数1
00msec.の範囲で設定される。三角波の波高値
は、表面伝導型電子放出素子形態に応じて適宜選択され
る。このような条件のもと、例えば、数秒から数十分間
電圧を印加する。パルス波形は三角波に定されるもので
はなく、矩形波など所望の波形を採用することができ
る。
【0044】図4(b)におけるT1及びT2は、図4
(a)に示したものと同様とすることができる。三角波
の波高値は、例えば0.1Vステップ程度づつ、適当な
レートで増加させることができる。
【0045】通電フォーミング処理の終了は、上記のフ
ォーミング用のパルス電圧の間に、導電性薄膜4を局所
的に破壊、変形しない程度のパルス電圧を挿入し、その
時の電流を測定して抵抗値を検知することにより決定す
ることができる。例えば0.1V程度の電圧印加により
流れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上
の抵抗を示した時、通電フォーミングを終了させる。
【0046】なお、フォーミング工程の方法としては、
上記の方法以外でも、間隙6が適切に形成される方法で
あれば採用することができる。 4)次いで活性化工程を行う。本発明の活性化工程は、
有機物質のガスを含有する雰囲気下で、上記一対の素子
電極間にパルス電圧を繰り返し印加して、間隙6内の基
板上及びその周囲に炭素を有する膜7を堆積させる工程
である。この工程により素子に流れる電流である素子電
流Ifは著しく変化し、また、電子放出電流Ieも増大
する。活性化工程の終了判定は、素子電流Ifを測定し
ながら、適宜行う。なおパルス幅、パルス間隔、パルス
波高値などは適宜設定される。
【0047】ここで本発明の活性化工程においては、用
いられる有機物質のガスを含有する雰囲気として、蒸気
圧があまり高くなく、かつ重合しやすい有機物質のガス
を含有する雰囲気が好ましい。この条件を満たすものと
しては具体的には、気化したトルニトリを含有する雰囲
気が挙げられるが、間隙6内及びその周囲の堆積物であ
る炭素を有する膜7の形成に不都合がなければ、特別に
制限されるものではない。
【0048】またこの雰囲気は、例えばイオンポンプな
どにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質の
ガスを導入することなどによって得られる。さらにこの
ときの好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形
態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異な
るため場合に応じ適宜設定される。
【0049】またここで堆積物である炭素を有する膜7
を構成する炭素とは、例えばグラファイト(いわゆるH
OPG,PG,GCを包含する、HOPGはほぼ完全な
グラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度
で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程
度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指
す。)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、
アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混
合物を指す)であり、その膜厚としては、5〜100n
mの範囲とするのが好ましい。
【0050】5)以上のような工程を経て得られた電子
放出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工
程は、電子放出素子に吸着している余分な有機物質分子
などを除去する工程である。上記電子放出素子を真空容
器内に設置し、容器内を排気する。これに用いる真空排
気装置は、装置から発生するオイルが真空容器内に拡散
しないよう、オイルを使用しないものを用いるのが好ま
しい。具体的には、ソープションポンプとイオンポンプ
を組み合わせた真空排気装置等が望ましい。
【0051】真空容器内の有機成分の分圧は、炭素及び
炭素化合物が素子上にほぼ新たに堆積しない分圧で1×
10-8Torr以下が好ましく、さらには1×10-10
Torr以下が特に好ましい。さらに真空容器内を排気
するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁
や、電子放出素子に吸着した余分な有機物質分子を排気
しやすくするのが好ましい。真空容器内の圧力は極力低
くすることが必要で、1×10-7Torr以下が好まし
く、さらに1×10-8Torr以下が特に好ましい。
【0052】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分に除
去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定
な特性を維持することができる。
【0053】このような真空雰囲気を採用することによ
り、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、
また真空容器や基板などに吸着したH2O,O2なども除
去でき、結果として素子電流If,放出電流Ieが、安
定する。
【0054】上述した工程を経て得られた本発明を適用
可能な電子放出素子の基本特性について図5、図6を参
照しながら説明する。図5は、真空処理装置の一例を示
す摸式図であり、この真空処理装置は測定評価装置とし
ての機能をも兼ね備えている。図5において、55は真
空容器であり、56は排気ポンプである。真空容器55
内には電子放出素子が配されている。また、1は電子放
出素子を構成する基体(基板)であり、2及び3は素子
電極、4は導電性薄膜、5は前記間隙及びその近傍の領
域である電子放出部である。
【0055】51は、電子放出素子に素子電圧Vfを印
加するための電源、50は素子電極2,3間の導電性薄
膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、5
4は電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉する
ためのアノード電極である。53はアノード電極54に
電圧を印加するための高圧電源、52は素子の電子放出
による放出電流Ieを測定するための電流計である。
【0056】一例として、アノード電極の電圧を1kV
〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子放出素子と
の距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を行うこと
ができる。
【0057】真空容器55内に、真空計等の真空雰囲気
下での測定に必要な機器が設けられていて、所望の真空
雰囲気での測定評価を行えるようになっている。電源5
1が十分な電力を供給できるものであればこの装置によ
り上記フォーミング工程を行うことができるのは言うま
でもない。
【0058】また、真空処理装置の全体を、ヒーターに
より加熱できるようにすれば、上記の安定化工程に使用
することもできる。図6は、図5に示した真空処理装置
を用いて測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子
電圧Vfの関係を模式的に示した図である。同図におい
ては、放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さ
いので、任意単位で示している。なお、縦・横軸ともリ
ニアスケールである。
【0059】図6からも明らかなように、本発明を適用
可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関し
て対する三つの特徴的性質を有する。 (i)本素子はある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図6中
のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流
Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放出電
流Ieがほとんど検出されない。つまり、放出電流Ie
に対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子
である。
【0060】(ii)放出電流Ieが素子電圧Vfに単
調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制
御できる。 (iii)アノード電極54に捕捉される放出電子の量
は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。つまり、
アノード電極54に捕捉される電子の量は、素子電圧V
fを印加する時間により制御できる。
【0061】以上の説明より理解されるように、本発明
を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応
じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。こ
の性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成し
た電子源、画像表示装置等、多方面への応用が可能とな
る。
【0062】上記の特性を利用して、上記電子放出素子
を基体上に複数配置した電子源を作成することが可能で
ある。また電子放出素子の配列については、種々のもの
が採用できる。一例として、並列に配置した多数の電子
放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を多
数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向
(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制
御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子から
の電子を制御駆動するいわゆる、はしご型配置のものが
ある。
【0063】これとは別に、電子放出素子をX方向及び
Y方向に行列状に複数個配置し、同じ行に配置された複
数の電子放出素子の電極の一方を、X方向の配線に共通
に接続し、同じ列に配置された複数の電子放出素子の電
極の他方を、Y方向の配線に共通に接続するものが挙げ
られる。このようなものはいわゆる単純マトリクス配置
である。まず単純マトリクス配置について説明する。
【0064】表面伝導型電子放出素子については、前述
したとおり(i)ないし(iii)の特性がある。即
ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電子は、しきい
値電圧以上では、対向する素子電極間に印加するパルス
状電圧の波高値と幅で制御できる。一方、しきい値電圧
以下では、殆ど放出されない。この特性によれば、多数
の電子放出素子を配置した場合においても、個々の素子
に、パルス状電圧を適宜印加すれば、入力信号に応じ
て、表面伝導型電子放出素子を選択して電子放出量を制
御できる。
【0065】以下この原理に基ずき、本発明を適用可能
な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板につい
て、図7を用いて説明する。同図において、71は電子
源基板、72はX方向配線、73はY方向配線である。
74は表面伝導型電子放出素子、75は結線である。
【0066】m本のX方向配線72は、Dx1,Dx
2,……,Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパ
ッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成するこ
とができる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計され
る。Y方向配線73は、Dy1,Dy2,……,Dyn
のn本の配線よりなり、X方向配線72と同様に形成さ
れる。これらm本のX方向配線72とn本のY方向配線
73との間には、不図示の層間絶縁層が設けられてお
り、両者を電気的に分離している。
【0067】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2等で構成
される。例えば、X方向配線72を形成した基板71の
全面或は一部に所望の形状で形成され、特にX方向配線
72とY方向配線73の交差部の電位差に耐え得るよう
に、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配線
72とY方向配線73は、それぞれ外部端子として引き
出されている。
【0068】表面伝導型放出素子74を構成する一対の
電極(不図示)は、m本のX方向配線72とn本のY方
向配線73と導電性金属等からなる結線75によって電
気的に接続されている。
【0069】配線72と配線73を構成する材料、結線
75を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料
は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であって
も、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例え
ば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極
を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子
電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0070】X方向配線72には、X方向に配列した表
面伝導型放出素子74の行を、選択するための走査信号
を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一
方、Y方向配線73には、Y方向に配列した表面伝導型
放出素子74の各列を入力信号に応じて、変調するため
の不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出
素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走
査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0071】上記構成においては、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とす
ることができる。上述した単純マトリクス配置の電子源
を用いて構成した画像表示装置について、図8と図9を
用いて説明する。図8は、画像表示装置の表示パネルの
一例を示す摸式図であり、図9は、図8の画像表示装置
に使用される蛍光膜の摸式図である。
【0072】図8において、81は表面伝導型電子放出
素子を複数配した電子源の基板、801は基板81を固
定したリアプレート、86はガラス基板83の内面に蛍
光膜84とメタルバック85等が形成されたフェースプ
レートである。82は支持枠であり、該支持枠82に
は、リアプレート801、フェースプレート86が低融
点のフリットガラスなどを用いて接合される。804
は、電子放出素子である。802、803は、表面伝導
型電子放出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配
線及びY方向配線である。
【0073】外囲器(真空容器)87は、上述の如く、
フェースプレート86、支持枠82、リアプレート80
1で構成される。リアプレート801は主に基板81の
強度を補強する目的で設けられるため、基板81自体で
十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート801は不
要とすることができる。即ち、基板81に直接支持枠8
2を封着し、フェースプレート86、支持枠82及び基
板81で外囲器87を構成しても良い。
【0074】一方、フェースプレート86、リアプレー
ト801間に、スペーサーと呼ばれる不図示の支持体を
設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ
外囲器87を構成することもできる。
【0075】図9は、蛍光膜を示す摸式図である。蛍光
膜90は、モノクロームの場合は蛍光体92のみから構
成することができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体
の配列によりブラックストライプあるいはブラックマト
リクスなどと呼ばれる黒色導電材91と蛍光体92とか
ら構成することができる。
【0076】ブラックストライプ、ブラックマトリクス
を設ける目的は、カラー表示の場合、必要となる三原色
蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒くすることで
混色等を目立たなくすることと、蛍光膜90における外
光反射によるコントラストの低下を抑制することにあ
る。ブラックストライプの材料としては、通常用いられ
ている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性があり、光
の透過及び反射が少ない材料を用いることができる。
【0077】ガラス基板に蛍光体を塗布する方法は、モ
ノクローム、カラーによらず、沈殿法、印刷法等が採用
できる。蛍光膜90の内面側には、通常メタルバックが
設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光体92
の発光のうち内面側への光をフェースプレート側へ鏡面
反射させることにより輝度を向上させること、電子ビー
ム加速電圧を印加するための電極として作用させるこ
と、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメージ
から蛍光体を保護すること等である。
【0078】メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜9
0の内面側表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」
と呼ばれる。)を行い、その後Alを真空蒸着等を用い
て堆積させることで作製できる。
【0079】前述の封着を行う際には、カラーの場合は
各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、
十分な位置合わせを行う。
【0080】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図面を用いて説明
する。 「実施例1」本発明を用いて作製した電子放出素子は、
図2a,bに模式的に示される構成を有する。以下に本
実施例で作製した電子放出素子の製造工程を図3を用い
て説明する。
【0081】(工程−a)基板1として石英を用い、こ
れを洗剤、純水及び有機溶剤により洗浄した後、フォト
レジストRD−2000N(日立化成(株)製)をスピ
ンナーにより塗布(2500rpm、40秒)し、80
℃25分間のプリベークを行った。
【0082】次いで、素子電極のパターンに対応するマ
スクを用いて、密着露光し、現像液を用いて現像、12
0℃,20分間のポストベークを行って、レジストマス
クを形成した。
【0083】次いでNiを真空蒸着法より成膜した。成
膜レートは0.3mm/sec.で膜圧を10nmとし
た。次いで、上記基板をアセトンに浸してレジストマス
クを溶解し、リフトオフによりNiの素子電極2,3を
形成した。電極間隙Hは2μm、電極長Wは500μm
である。(図3a) (工程−b)電極が形成された基板を温水洗浄、乾燥を
行った後に、パラジウム金属の有機錯体を含有する溶液
をインクジェット法によって電極ギャップ上に所望の量
を配置し、350℃で30分間の大気中焼成を行い導電
性薄膜4を形成した。(図3b) (工程−c)次いで、上記の素子を図5に模式的に示し
た真空装置内に設置し、排気装置により真空チャンバー
内を排気し、圧力が1×10-5Torr以下となってか
ら素子電極2,3の間に図4bに示すような、波高値の
漸増する三角波パルスを印加した。パルス幅T1は1m
sec.、パルス間隔T2は10msec.とした。波
高値が約5.0Vと成ったところで、フォーミングが完
了し、導電性薄膜4中に間隙6が形成された。(図3
c) (工程−d)次いで、排気装置により真空チャンバー5
5内を更に排気し、圧力が1×10-7Torr以下とな
ってから、トルニトリルガスを導入し、圧力を1×10
-6Torrとした。次に、素子電極間に波高値を漸増さ
せながら極性を反転させる矩形波パルスを繰り返し印加
した。
【0084】ここでパルス幅T3は1msec.、パル
ス間隔T4は10msec.とし、波高値を10Vから
15Vまで35分間かけて漸増させた。その後に、素子
電極間に波高値15V、パルス幅は1msec、パルス
間隔は10msecで極性を反転させる矩形波パルスを
30分間繰り返し印加し、素子の活性化を行った。
【0085】(工程−e)次いで、排気装置により真空
チャンバー内を排気しながら、素子を250℃に加熱
し、素子上に吸着した不要な有機成分を除去し、真空チ
ャンバー内を1×10-8Torrの圧力まで排気した。
【0086】次いで素子を室温に戻した後、アノード電
極54に8kVの電圧を印加し、素子電極間に波高値一
定の矩形波パルスの電圧を印加して特性の測定を行っ
た。なお、アノード電極と素子の間隔Hは4mmにセッ
トした。
【0087】本実施例の素子を前記条件で一定の時間駆
動したところ、素子電流IfおよびIeはほとんど減少
しなかった。また、さらに高いデューティーで素子を駆
動し、寿命の加速試験を行ったが、実時間換算で1万時
間以上の間特に目立った劣化もなく駆動できることを確
認した。
【0088】また、同一条件で作製、活性化工程を終了
した素子を、1×10-9Toorの真空雰囲気中で45
0℃、1時間の加熱処理を行った後の炭素膜の形態を観
察した結果、炭素膜の膜厚、形態ともに変化は見られ
ず、前記条件で活性化を行った素子に形成される炭素膜
の耐熱性が確認された。
【0089】また、耐熱性の高い炭素膜を詳細に分析し
た結果、導電性薄膜の間隙内のみならず、その周囲の導
電性薄膜上にも炭素を有する膜が10nm程度以上の厚
さで形成されていることがわかった。さらに、炭素膜の
格子縞の間隔を測定したところ、概ね3.5〜4.7Å
の範囲にあることが観察され、グラファイトライクな微
結晶を多く含有した炭素膜であることが分かった。
【0090】
【比較例】以下にアセトン雰囲気下で炭素膜を形成した
電子放出素子の比較例について説明する。
【0091】実施例1の工程−a、工程−b、工程−c
と同様の手法により、電子放出素子の電極及び導電性薄
膜を作成した。次に、排気装置により真空チャンバー内
を更に排気し、圧力が1×10-7Torr以下となって
から、アセトンガスを導入し、圧力を1×10-4Tor
rとした。次に、素子電極間に波高値を漸増させながら
極性を反転させる短形波パルスを繰り返し印加した。こ
こでパルス幅T3は1msec、パルス間隔T4は10
msecとし、波高値を10Vから15Vまで35分か
けて漸増させた。
【0092】その後に素子電極間に波高値15V、パル
ス幅は1msec、パルス間隔は10msecで極性を
反転させる短形波パルスを30分間繰り返し印加し、素
子の活性化を行った。
【0093】次いで、排気装置により真空チャンバー内
を排気しながら、素子を250℃に加熱し、素子上に吸
着した不要な有機成分を除去し、真空チャンバー内を1
×10−8Torrの圧力まで排気した。
【0094】次いで素子を室内に戻した後、実施例1と
同様にアノード電極54に8kVの電圧を印加し、素子
電極間に波高値一定の短形波パルスの電圧を印加して特
性の測定を行った。なお、アノード電極と素子の間隔は
4mmにセットした。
【0095】この素子を前記条件で一定時間駆動したと
ころ、放出電流leは減少を続け、図10に示したよう
に、10000分後には放出電流がほぼゼロまで劣化し
た。また、同一条件で作製、活性化工程を終了した素子
を、実施例1と同様に1×10-9Torrの真空雰囲気
中で450℃、1時間の加熱処理を行った後の炭素膜の
形態を観察した結果、間隙部、導電性薄膜上、及び素子
電極上に活性化工程で形成されていた炭素膜はほぼ完全
に消失しており、アセトン雰囲気中で形成された炭素膜
は真空中、450℃焼成には耐えられないものであるこ
とが確認された。
【0096】また、同一条件で作製した素子の炭素膜を
詳細に分析した結果、導電性薄膜の間隙内のみならず、
その周囲に導電性薄膜上の炭素膜は2から4ナノメート
ル程度の厚さで形成されていることがわかった。さらに
同炭素膜は格子縞がほとんど見られず、結晶性を持たな
い炭素の集合体であることが確認された。
【0097】「実施例2」本実施例では、図8に模式的
に示したマトリクス配線の電子源と、これを用いた画像
形成装置を作製した。以下に電子源の製造工程及び画像
形成装置の製造工程を説明する。
【0098】(工程−A)洗浄した青板ガラス上にシリ
コン酸化膜をスパッタリング法により0.5μm形成
し、これを基板として、この上にCr5nm、Au60
0nmを真空蒸着法により順次成膜した後、フォトレジ
ストAZ1370(ヘキスト社製)を用い、フォトリソ
グラフィー技術により下配線802を形成した。
【0099】(工程−B)次いで厚さ1μmのシリコン
酸化膜より成る層間絶縁層(不図示)をスパッタリング
法により堆積する。 (工程−C)層間絶縁層にコンタクトホールを形成する
ためのフォトレジストパターンを作成、これをマスクと
してCF4とH2を用いたRIE(Reactive I
on Eching)方により、層間絶縁層をエッチン
グした。
【0100】(工程−D)素子電極のパターンに対応す
る開口を有するフォトレジスト(RD−2000N−4
1;日立化成社製)のマスクパターンを形成し、真空蒸
着法により5nmのTi、100nmのNiを順次堆
積、次いで有効溶剤によりフォトレジストを除去してリ
フトオフにより素子電極を形成した。素子電極の間隔H
は3μmとした。
【0101】(工程−E)工程−Aと同様のフォトレジ
ストを用いたフォトソリグラフィー法により、5nmの
Ti、500nmのAuの積層構造を有する上配線80
3を形成した。
【0102】(工程−F)実施例1同様、インクジェッ
ト法により、PdO微粒子より成る導電性膜を形成し
た。 (工程−G)コンタクトホール以外を覆うレジストパタ
ーンを形成し、真空蒸着により、5nmのTi、500
nmのAuを順次堆積し、レジストパターンを除去して
不要な積層膜を除去してコンタクトホールの埋め込みを
行い、フォーミング前の電子源基板を作成した。
【0103】次に、前記工程によって作製した電子源の
基板1を、リアプレート801に固定し、基板の5mm
上方にフェースプレートを支持枠82を介して配置し、
接合部にフリットガラスを塗布し窒素雰囲気中で400
℃に10分間保持して接合し、外囲器を形成した。
【0104】フェースプレートの内面には蛍光膜84と
メタルバック85が形成されている。蛍光膜84は図9
(a)のストライプ形状のものを採用し、印刷法により
形成した。黒色導電材はグラファイトを主成分とする材
質を用いた。メタルバックは、蛍光膜の内面を平滑処理
(フィルミング)した後、Alを真空蒸着することによ
り形成した。
【0105】上記の組立を行う際、蛍光体と電子放出素
子との対応を正確に行う必要があるため、十分に位置合
わせを行った。なお、外囲器内にはゲッタ装置(不図
示)も取り付けられている。
【0106】(工程−H)上記外囲器内を不図示の排気
装置で排気し、実施例1の工程cと同様に三角波パルス
を印加しフォーミング工程を行い、各導電性薄膜に間隙
を形成した。
【0107】(工程−I)続いて、実施例1の工程dと
同様にして、外囲器内にトリニトリルを導入して活性化
工程を行った。 (工程−J)ついで、実施例1の工程eと同様に外囲器
内を排気しながら加熱し、安定化工程をおこなった結
果、約3時間で内部の圧力が1×10-8Toorに到達
した。
【0108】以上の工程により作成された外囲器に不図
示の駆動回路を取り付け、メタルバックに10kVの高
電圧を印加し、TV信号を入力して画像を表示させたと
ころ、特に目立った劣化はなく、高輝度で高精細な画像
が長時間に渡って安定に得られた。
【0109】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による電子
放出素子は、導電性薄膜、電極、基板の少なくとも導電
性薄膜上に、450℃以上の耐熱性を有し、且つ加熱処
理後の膜厚減少が5パーセント未満である炭素膜からな
る表面伝導型電子放出素子であり、素子駆動による特性
劣化のない電子放出素子を提供できる。
【0110】また、本発明の電子放出素子を用いた電子
源あるいは画像表示装置に於いては、高精細な画像を得
るために多数の電子放出素子を高密度に配列しても非常
に安定であり、寿命が長く、信頼性が高く、高輝度で高
品位な画像が得られる装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の表面伝導型電子放出素子の構成を示す模
式図であり、(a)はその平面図、(b)は断面図であ
る。
【図2】本発明の電子放出素子の構成を示す模式図であ
り、(a)はその平面図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の電子放出素子の製造工程の一部を示す
模式図である。
【図4】本発明の電子放出素子の製造工程の一部である
フォーミング工程に用いることのできる電圧波形の一例
を示す模式図である。
【図5】測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を示
す模式図である。
【図6】本発明の電子放出素子の放出電流Ie、素子電
流Ifと素子電圧Vfの関係を示す模式図である。
【図7】本発明の電子放出素子を単純マトリクス配置し
た電子源に適用した一例を示す模式図である。
【図8】本発明の電子放出素子を画像表示装置に適用し
た一例を示す模式図である。
【図9】蛍光膜の例を示す模式図である。
【図10】電子放出素子の寿命評価を示す模式図であ
る。
【符号の説明】
1 基板 2、3 電極 4 導電性薄膜 5 電子放出部 6 間隙 7 堆積物 50 電流計 51 電源 52 電流計 53 高圧電源 54 アノード電極 55 真空容器 56 真空ポンプ 71 電子源基板 72 X方向配線 73 Y方向配線 74 電子放出素子 75 結線 801 リアプレート 802 下配線 803 上配線 804 電子放出素子 81 基板 82 支持枠 81 ガラス基板 84 蛍光膜 85 メタルバック 86 フェースプレート 87 外囲器 90 蛍光膜 91 黒色導電材 92 蛍光体

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体と、該基体表面上に配置した相対向
    する一対の電極と、該一対の電極間に導電性薄膜及び炭
    素を含有する膜を有し、該導電性薄膜が前記電極間で間
    隙を有して対向しており、該間隙を境にして、一方の導
    電性薄膜が前記一対の電極の一方の電極と電気的に接続
    され、他方の導電性薄膜が前記一対の電極の他方の電極
    と電気的に接続され、前記炭素を含有する膜が少なくと
    も前記導電性薄膜上に配置され、該炭素を含有する膜
    は、450℃以上の耐熱性を有し、且つ加熱処理後の膜
    厚減少が5パーセント未満であることを特徴とする電子
    放出素子。
  2. 【請求項2】 前記炭素を含有する膜は、真空雰囲気中
    で450℃の加熱処理後の膜厚減少が5パーセント未満
    であることを特徴とする請求項1記載の電子放出素子。
  3. 【請求項3】 前記炭素を含有する膜は、不活性ガス雰
    囲気中で450℃の加熱処理後の膜厚減少が5パーセン
    ト未満であることを特徴とする請求項1記載の電子放出
    素子。
  4. 【請求項4】 前記炭素を含有する膜が、前記導電性薄
    膜上及びその間隙内の前記基体表面上に配置されている
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電子放
    出素子。
  5. 【請求項5】 前記炭素を含有する膜が、前記導電性薄
    膜上及びその間隙内の前記基体表面上及び前記相対向す
    る一対の電極上に配置されていることを特徴とする請求
    項1〜3の何れかに記載の電子放出素子。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5の何れかに記載の電子放出
    素子を基体上に複数配列した電子放出部材と、該電子放
    出部材から放出された電子の照射を受けて発光する画像
    形成部材とを含むことを特徴とする画像表示装置。
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