JP3667137B2 - 電子放出素子、電子放出素子を用いた電子源、及び電子源を用いた画像形成装置 - Google Patents

電子放出素子、電子放出素子を用いた電子源、及び電子源を用いた画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子放出素子、この電子放出素子を用いた電子源、及びこの電子源を用いた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子放出素子を用いた電子源として熱電子源及び冷陰極電子源の2種類が知られている。冷陰極電子源を構成する電子放出素子には、電界放出型(FE型)、金属・絶縁層・金属型(MIM型)及び表面伝導型などの電子放出素子がある。
【0003】
FE型電子放出素子の例としては、W.P.Dyke&W.W.Dolan,“Field Emission”,Advance in ElectronPhysics,8,89(1956)あるいはC.A.Spindt,“Physical Properties of Thin−film Field Emission Cathodes with MolybdeniumCones”,J.Appl.Phys.,47,5248(1976)等が知られている。
【0004】
MIM型電子放出素子の例としては、C.A.Mead、“Operation of Tunnel−Emission Devices”,J.Apply.Phys.32,646(1961)等が知られている。
【0005】
また、表面伝導型電子放出素子の例としては、M.I.Elinson、Radio Eng.Electron Phys.,10,1290(1965)等がある。
【0006】
表面伝導型電子放出素子は基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に並行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものである。この表面伝導型電子放出素子としては、上記エリンソン等によるSnO2 薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの〔G.Ditmmer,Thin Solid Films,9,317(1972)〕、ln2 O3 −SnO2 薄膜によるもの〔M.Hartwell and C.G.Fonsted,IEEE Trans.ED Conf.,519(1975)〕、カーボン薄膜によるもの〔荒木久他:真空、第26巻、第1号、22頁(1983)〕等が報告されている。
【0007】
本出願人は、表面伝導型電子放出素子とその応用に関し、多数の提案を行っている。その構成及び製造方法は、例えば特開平7−235255号公報及び特開平8−171849号公報などに開示されている。
【0008】
これら公報記載の要点を簡単に説明する。表面伝導型電子放出素子は、図18(A),(B)に模式的に示すように、基板1上に対向する一対の素子電極2,3と、これらの素子電極に接続されその一部に電子放出部5を有する導電性薄膜4とを備える。図18(A)は平面図、図18(B)は断面図である。電子放出部5は、上記導電性薄膜の一部が破壊・変形ないし変質され、間隙が形成された部分であり、間隙内部及びその近傍の導電性薄膜4上には、活性化と呼ばれる工程により、炭素及び/または炭素化合物を主成分とする堆積物が形成されている。これにより放出される電子の量が大幅に増大する。
【0009】
上記導電性薄膜4は、後述する通電による処理(フォーミング工程)で間隙部を好ましい状態に形成するために、導電性微粒子により構成される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
電子放出素子については、これを適用した画像形成装置が、表示画像を構成する画素間の輝度のばらつきが少ない均一な画像を安定して提供できるよう、電子放出特性の均一性と安定性の向上が要望されている。
【0011】
従来の電子放出素子においては、フォーミング及び活性化処理によって形成された電子放出部は、電子放出点の密度が小さくなることがあり、その場合、電子放出部全体にわたって均一に電子放出しないという問題があった。
【0012】
このような素子を基板上に複数配置して、例えば平面型画像形成装置などに利用する電子源を形成すると、素子間においても電子放出部の形態が不均一であり、その電子放出特性に至っても均一な電子放出を行うことが困難である。
【0013】
したがって、このような電子源を用いて均一で動作安定性に優れた画像形成装置を提供することは極めて難しい。
【0014】
本発明の課題は、均一で安定な電子放出特性を有する電子放出素子を提供することにある。
【0015】
また、本発明の別の課題は、均一で動作安定性に優れ、より高品位な画像を形成し得る電子源及び画像形成装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の電子放出素子は、
絶縁性基体の主表面上に配置された一対の電極と
該一対の電極間に配置されると共に、第一の間隙を挟んで対向する炭素を主成分とする第一の膜及び炭素を主成分とする第二の膜と、
前記一対の電極の一方と前記炭素を主成分とする第一の膜とを接続する第一の導電性膜と
前記一対の電極の他方と前記炭素を主成分とする第二の膜とを接続する第二の導電性膜とを備えており、
前記第一の導電性膜と第二の導電性膜が第二の間隙を挟んで対向しており、該第二の間隙内に前記第一の間隙が配置されている電子放出素子であって、
前記炭素を主成分とする第一及び第二の膜の各々は、前記第一の間隙に沿って、前記炭素を主成分とする第一の膜と第二の膜とが対向する方向における凹凸部を備えると共に、前記基体の主表面に垂直な方向における凹凸部を備えている構成である。
【0018】
この構成において、前記第一及び第二の膜は炭素を主成分とする堆積物であり、気化トルニトリルを含む雰囲気中で行う活性化処理時によって形成される。
【0020】
本発明の電子源及び画像形成装置及びテレビジョン放送の表示装置は、上記電子放出素子を適用して構成される。
【0021】
【作用】
上記構成の本発明の電子放出素子においては、微小間隙部の導電性膜部材に形成された炭素含有膜部材が微小間隙の延在方向に凹凸部を有するので、電子放出点密度が高くなる。
【0022】
この電子放出点密度が低いと、電子放出部の電子放出は独立して揺らぐので、ある時間でみると、電子放出していない領域が多く出現する可能性が大きくなり、全体としての電子放出は揺らぎが大きく不均一になる。これに対して、電子放出点密度が高いと、隣接放出点間の電子放出に相関が生じ、ある電子放出点の電流密度が大きくなると、隣接した電子放出点の電流密度が小さくなる、或いはある電子放出点の電流密度が小さくなると、隣接した電子放出点の電流密度が大きくなる。その結果、全体としての電子放出は均一化する。
【0023】
前記凹凸部は、更に周期構造を有する場合、全電子放出部にわたって凹凸構造が均一に存在することになる。
【0024】
また、電子放出素子を基板上に複数配置して構成した電子源においては、画素対応の素子間での電子放出の不均一性が減少する。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1(A)、(B)は本発明の電子放出素子を模式的に示した平面図及び断面図である。ガラス材料から形成された絶縁性基板1上に一対の素子電極2,3が対向して配置されており、後述するフォーミング処理等により導電性薄膜4の一部に形成された間隙6を置いて、導電性薄膜4が基板1表面に対して横方向に対向している。そして、導電性薄膜4が素子電極2,3の表面を覆うことで、一対の電極2,3と導電性薄膜4とが電気的に接続される。
【0027】
なお、FIB等の手法を用い、電極間隔をフォーミングにより形成する上記間隙6程度の幅に形成する場合は、導電性薄膜4と電極2、3とを別々に形成しなくともよい。
【0028】
さらに、後述する活性化処理工程により、間隙6内の基板1上及びその近傍の導電性薄膜4上に、堆積物である炭素を有する膜10が配される。また、上記したように、導電性薄膜4を用いない場合には、電極2、3と炭素を有する膜10とが直接接続される。なお、本発明に於いては、堆積物と炭素を有する膜とは同一のものを指す。また、炭素を有する膜10は、間隙6内に配された間隙7を置いて、基板1表面に対して横方向に対向して配される。なお、図1に示した構成だけでなく、基板1上に導電性薄膜4、対向する素子電極2,3の順に積層した構成とすることもできる。
【0029】
次に、素子電極及び導電性薄膜を形成する工程及びフォーミング処理工程を、図2(A)〜(C)を用いて説明する。
【0030】
基板1を洗剤、純水及び有機溶剤等を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技術を用いて基板1上に素子電極2,3を形成する(図2(A))。
【0031】
素子電極2,3を設けた基板1に、有機金属化合物の溶液を塗布して、有機金属化合物薄膜を形成する。有機金属化合物薄膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング等によりパターニングし、導電性薄膜4を形成する(図2(B))。
【0032】
ここでは、有機金属溶液の塗布法を挙げて説明したが、導電性薄膜4の形成方法はこれに限られるものでなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用いることもできる。また、上記の有機金属化合物の溶液をインクジェット装置により所望の位置に液滴として付与する方法を用いることもでき、この場合はリフトオフやエッチングによるパターニング工程は不要となる。
【0033】
続いて、フォーミング処理を施す。このフォーミング処理の方法として、導電性薄膜4の還元を促すガスを含む雰囲気中での通電処理による方法を説明する。導電性薄膜4が金属酸化物よりなる場合は、このガスとし水素が使用可能である。導電性薄膜4を形成した上記電子放出素子を、真空装置内に設置し、内部を例えば1×10−5<−5乗>Torr程度の圧力以下となるように排気し、N2:98%− H2:2%の混合ガスを1×10−3<−3乗>Torr程度、真空装置内に導入し、素子電極2,3間に、不図示の電源を用いて通電を行うと、導電性薄膜4に間隙6が形成される(図2(C))。
【0034】
このとき、水素ガスによる還元により、導電性薄膜4を構成する物質が金属酸化物から金属に変化し、その際、凝集を伴って間隙の形成が促進される。更に、好ましくは、基板温度を室温以上の温度:50〜100℃程度に設定する。
【0035】
通電する電圧波形は、パルス波形が好ましく、パルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する図4に示した手法があげられる。図4におけるT1及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔とである。通常、T1は1μsec.〜10msec.、T2は10μsec.〜数100msec.の範囲で設定される。矩形波の波高値は、表面伝導型電子放出素子形態に応じて適宜選択される。このような条件のもと、例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。
【0036】
通電フォーミング処理の終了は、上記のフォーミング用のパルス電圧の間に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない程度のパルス電圧を挿入し、その時の電流を測定して抵抗値を検知することにより決定することができる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示した時、通電フォーミングを終了させる。
【0037】
なお、フォーミング処理の方法としては、上記以外でも、間隙6が適切に形成される方法であれば採用することができる。
【0038】
上記のように形成された間隙6は、巨視的には対向する素子電極端におよそ平行に、直線状に形成されているが、微視的には、導電性薄膜4の対向端部に波状或いは鋸刃状のうねり構造形態で、基板表面に平行に形成される。
【0039】
次いで活性化処理を行う。活性化処理工程は、有機物質のガスを含有する雰囲気下で、上記一対の素子電極間にパルス電圧を繰り返し印加して、間隙6内の基板1上及びその周囲に炭素を有する膜10を堆積させる工程である。この工程により素子に流れる電流である素子電流Ifは著しく変化し、また、電子放出電流Ieも増大する。活性化処理の終了判定は、素子電流Ifを測定しながら、適宜行う。なおパルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0040】
この活性化処理において用いられる有機物質のガスを含有する雰囲気としては、蒸気圧があまり高くなく、かつ重合しやすい有機物質のガスを含有する雰囲気が好ましい。この条件を満たすものとしては具体的には、気化したトルニトリルを含有する雰囲気が挙げられるが、間隙6内及びその周囲の堆積物である炭素を有する膜10の形成に不都合がなければ、特に制限されるものではない。またこの雰囲気は、例えばイオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質のガスを導入することなどによって得られる。さらにこのときの好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場合に応じ適宜設定される。
【0041】
また、ここで堆積物である炭素を有する膜10を構成する炭素とは、例えばグラファイト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含する。HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものである)、非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと上記グラファイトの微結晶との混合物)であり、その膜厚は、5〜100nmの範囲とするのが好ましい。
【0042】
図5に、電子放出部に沿った方向での断面の模式図を示す。図5(A)は、電子放出素子を上部から見た図である。上記のようにして形成された導電性薄膜4の炭素を有する膜10は、間隙7に沿って対向方向及び高さ方向に凹凸15を有する。図5(A)中の点線B−B' に沿った断面の模式図を図5(B)に示す。また、図5(C)は図5(B)の拡大図である。
【0043】
この凹凸構造は、フォーミング条件及び活性化条件によっても異なるが、10nm〜1μmの周期で特徴づけられる周期構造を有する。この凹凸15はフォーミング及び活性化条件によっても異なるが、基板1に垂直な方向に100nm以下の高さを有する。また、この凹凸15の持つ周期性は、フォーミング直後に観察される、微視的な波状構造のスケールとおよそ対応している。
【0044】
以上のような工程を経て得られた電子放出素子は、安定化処理を行うことが好ましい。この処理は、電子放出素子に吸着している余分な有機物質分子などを除去する工程である。上記電子放出素子を真空容器内に設置し、容器内を排気する。これに用いる真空排気装置は、装置から発生するオイルが真空容器内に拡散しないよう、オイルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープションポンプとイオンポンプとを組み合わせた真空排気装置等である。
【0045】
真空容器内の有機成分の分圧は、炭素及び炭素化合物が素子上にほぼ新たに堆積しない分圧で1×10−8<−8乗>Torr以下が好ましく、さらには1×10−10<−10乗>Torr以下が特に好ましい。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着した余分な有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。このときの加熱条件は、80〜250℃、好ましくは150℃以上で、できるだけ長時間処理するのが望ましいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。真空容器内の圧力は極力低くすることが必要で、1×10−7<−7乗>Torr以下が好ましく、さらに1×10−8<−8乗>Torr以下が特に好ましい。
【0046】
安定化処理を行った後の、駆動時の雰囲気は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ましいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な特性を維持することが出来る。 このような真空雰囲気を採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、また真空容器や基板などに吸着したH2 O,O2 なども除去でき、結果として素子電流If,放出電流Ieが安定する。
【0047】
上述した工程を経て得られた本発明を適用可能な電子放出素子の基本特性について図3、図7を参照しながら説明する。
【0048】
図3は、真空処理装置の一例を示す構成図である。この真空処理装置は測定評価装置としての機能をも兼ね備えている。図3において、真空容器35内には電子放出素子が配されている。即ち、1は電子放出素子を構成する基体(基板)であり、2及び3は素子電極、4は導電性薄膜、5は間隙6,7及びその近傍の領域である電子放出部である。31は電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源、30は素子電極2,3間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、34は電子放出部より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極である。33はアノード電極34に電圧を印加するための高圧電源、32は素子の電子放出による放出電流Ieを測定するための電流計である。一例として、アノード電極の電圧を1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子放出素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を行うことができる。
【0049】
真空容器35内に、真空計等の真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、所望の真空雰囲気での測定評価を行えるようになっている。電源31が十分な電力を供給できるものであれば、この装置により上記フォーミング処理工程に用いることができるのは言うまでもない。また、真空処理装置の全体を、ヒーターにより加熱できるようにすれば、上記の安定化処理工程に使用することもできる。
【0050】
図7は、図3に示した真空処理装置を用いて測定された放出電流Ieと素子電流Ifと素子電圧Vfの関係を模式的に示した図である。図7においては、放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいので、任意単位で示している。なお、縦・横軸ともリニアスケールである。
【0051】
図7からも明らかなように、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関して対する三つの特徴的性質を有する。即ち、
(1)本素子はある電圧(しきい値電圧と呼ぶ、図7中のVth)以上の素子電圧を印加すると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧Vth以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つまり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vthを持った非線形素子である。
【0052】
(2)放出電流Ieが素子電圧Vfに単調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制御できる。
【0053】
(3)アノード電極34に捕捉される放出電子の量は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。つまり、アノード電極34に捕捉される電子の量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0054】
以上の説明より理解されるように、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。この性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成した電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能となる。
【0055】
図7においては、素子電流Ifが素子電圧Vfに対して単調増加する(MI特性)例を示した。上述した製造工程によっては、素子電流Ifが素子電圧Vfに対して電圧制御型負性抵抗特性(VCNR特性)を示す場合もあるが、上記安定化処理を行うことによりMI特性に変化する。
【0056】
上記の特性を利用して、上記電子放出素子を基体上に複数配置した電子源を作成することが可能である。また電子放出素子の配列については、種々のものが採用できる。一例として、並列に配置した多数の電子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を多数個配し(行方向)、この配線と直交する方向(列方向)で、電子放出素子の上方に配した制御電極(グリッド)により、電子放出素子からの電子を制御駆動するはしご型配置のものがある。
【0057】
これとは別に、電子放出素子をX方向及びY方向に行列状に複数個配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配線に共通に接続するものが挙げられる。このようなものは所謂単純マトリクス配置である。
【0058】
まず単純マトリクス配置について説明する。表面伝導型電子放出素子については、前述したとおり(1)ないし(3)の特徴がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の波高値と幅で制御できる。一方、しきい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特性によれば、多数の電子放出素子を配置した場合においても、個々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電子放出量を制御できる。
【0059】
以下この原理に基ずき、本発明を適用可能な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板について、図8を用いて説明する。図8において、81は電子源基板、82はX方向配線、83はY方向配線である。84は表面伝導型電子放出素子、85は結線である。m本のX方向配線82は、Dx1,Dx2,……,Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成することができる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y方向配線83は、Dy1,Dy2,……,Dynのn本の配線よりなり、X方向配線82と同様に形成される。これらm本のX方向配線82とn本のY方向配線83との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を電気的に分離している。
【0060】
不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2 等で構成される。例えば、X方向配線82と形成した基板1の全面或は一部に所望の形状で形成され、特にX方向配線82とY方向配線83との交差部の電位差に耐え得るように、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配線82とY方向配線83とは、それぞれ外部端子として引き出される。
【0061】
表面伝導型放出素子84を構成する一対の電極(不図示)は、m本のX方向配線82とn本のY方向配線83と導電性金属等からなる結線85とによって電気的に接続されている。
【0062】
配線82と配線83を構成する材料、結線85を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であっても、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例えば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0063】
X方向配線82には、X方向に配列した表面伝導型放出素子84の行を、選択するための走査信号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一方、Y方向配線83には、Y方向に配列した表面伝導型放出素子84の各列を入力信号に応じて、変調するための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走査信号と変調信号との差電圧として供給される。
【0064】
上記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0065】
次に、はしご型配置の電子源について図11を用いて説明する。図11は、はしご型配置の電子源の一例を示す摸式図である。図11においては、110は電子源基板、111は表面伝導型電子放出素子である。112、Dx1〜Dx10は、電子放出素子111を接続するための共通配線である。電子放出素子111は、基板110上に、X方向に並列に複数個配されている(これを素子行と呼ぶ)。この素子行が複数個配されて、電子源を構成している。各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に駆動させることができる。
【0066】
即ち、電子ビームを放出させたい素子行には、電子放出しきい値以上の電圧を、電子ビームを放出しない素子行には、電子放出しきい値以下の電圧を印加する。各素子行間の共通配線Dx2〜Dx9は、例えばDx2、Dx3を同一配線とすることもできる。
【0067】
上記のいずれの構成の電子源についても、本発明の電子放出素子が適用できる。
【0068】
上述した単純マトリクス配置の電子源を用いて構成した画像形成装置について、図6と図9を用いて説明する。図9は画像形成装置の表示パネルの一例を示す構成図であり、図6は図9の画像形成装置に使用される蛍光膜の構成図である。
【0069】
図9において、110は表面伝導型電子放出素子を複数配した電子源の基板、91は基板1を固定したリアプレート、96はガラス基板93の内面に蛍光膜94とメタルバック95等が形成されたフェースプレートである。92は支持枠であり、この支持枠92には、リアプレート91、フェースプレート96が低融点のフリットガラスなどを用いて、接合される。84は電子放出素子である。82、83は表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。
【0070】
外囲器(真空容器)98は、上述の如く、フェースプレート96、支持枠92、リアプレート91で構成される。リアプレート91は主に基板110の強度を補強する目的で設けられるため、基板110自体で十分な強度を持つ場合は別体のリアプレート91は不要とすることができる。即ち、基板110に直接支持枠92を封着し、フェースプレート96、支持枠92及び基板110で外囲器98を構成しても良い。一方、フェースプレート96、リアプレート91間に、スペーサーと呼ばれる不図示の支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度をもつ外囲器98を構成することもできる。
【0071】
図6は蛍光膜94を示す摸式的な構成図である。蛍光膜94は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成することができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリクスなどと呼ばれる黒色部材61と蛍光体62とから構成することができる。
【0072】
ブラックストライプ、ブラックマトリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要となる三原色蛍光体の各蛍光体62間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜94における外光反射によるコントラストの低下を抑制することにある。ブラックストライプの材料としては、通常用いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性があり、光の透過及び反射が少ない材料を用いることができる。
【0073】
ガラス基板93に蛍光体を塗布する方法は、モノクローム、カラーによらず、沈殿法、印刷法等が採用できる。蛍光膜94の内面側には、通常メタルバック95が設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート96側へ鏡面反射させることにより輝度を向上させること、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメージから蛍光体を保護すること等である。
【0074】
メタルバック、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる。)を行い、その後Alを真空蒸着等を用いて堆積させることで作製できる。フェースプレート96には、更に蛍光膜94の導電性を高めるため、蛍光膜94の外面側に透明電極(不図示)を設けてもよい。
【0075】
前述の封着を行う際には、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分な位置合わせを行う。
【0076】
図9に示した画像形成装置の製造方法の一例を以下に説明する。電子源の活性化までは、すでに述べた方法により行う。この後、安定化処理を行ってから、電子源、画像形成部材、真空容器形成部材等をフリットガラスなどを用いて接合し、組立工程を行い、内部を排気して、排気管をバーナーなどを用いて加熱し封じきる。この後、必要に応じてゲッタ処理を行っても良い。或いは、組立工程を行った後、安定化処理を行っても良い。
【0077】
図10はこの安定化工程に用いる装置の概要を示す構成図である。外囲器98は、排気管102を介して真空チャンバー103に連結され、さらにゲートバルブ104を介して排気装置105に接続されている。真空チャンバー103には、内部の圧力及び雰囲気中の各成分の分圧を測定するために、圧力計106、四重極質量分析器107等が取り付けられている。外囲器98内部の圧力などを直接測定することは困難であるため、真空チャンバー103内の圧力などを測定する。
【0078】
外囲器98を加熱して、80〜250℃の適当な温度に保持しながら、イオンポンプ、ソープションポンプなどのオイルを使用しない排気装置105によりの排気管102を通じて排気し、有機物質の十分少ない雰囲気にし、圧力計106及び四重極質量分析器107によりこれを確認した後、排気管をバーナーで熱して溶解させて封じきる(封止)。外囲器98の封止後の圧力を維持するために、ゲッター処理を行なうこともできる。
【0079】
これは、外囲器98の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるいは高周波加熱等を用いた加熱により、外囲器98内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分であり、蒸着膜の吸着作用により、外囲器88内の雰囲気を維持するものである。
【0080】
なお、はしご型の配線を有する電子源を用いた画像形成装置の製造方法も、上記と同様である。
【0081】
図12は、はしご型配置の電子源を備えた画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す摸式図である。120はグリッド電極、121は電子が通過するため空孔、122はDox1,Dox2,…Doxmよりなる容器外端子である。123は、グリッド電極120と接続されたG1,G2,…Gnからなるグリッド用容器外端子である。
【0082】
グリッド電極120は、表面伝導型放出素子から放出された電子ビームを変調するためのものであり、はしご型配置の素子と直交して設けられたストライプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応して1個ずつ円形の開口121が設けられている。グリッドの形状や設置位置は図12に示したものに限定されるものではない。例えば、開口としてメッシュ状に多数の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導型放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0083】
容器外端子122及びグリッド容器外端子123は、不図示の制御回路と電気的に接続されている。
【0084】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳述する。
【0085】
〔実施例1〕
本発明により形成された電子放出素子は、図1(A),(B)に模式的に示される構成を有する。本実施例で作製した電子放出素子の製造工程を図2を用いて説明する。
【0086】
工程−a:
基板1として石英を用い、これを洗剤、純水及び有機溶剤により洗浄した後、フォトレジストRD−2000N(日立化成(株)製)をスピンナーにより塗布(2500rpm、40秒)し、80℃,25分間のプリベークを行った。
【0087】
次いで、素子電極のパターンに対応するマスクを用いて、密着露光し、現像液を用いて現像、120℃,20分間のポストベークを行って、レジストマスクを形成した。
【0088】
次いでNiを真空蒸着法より成膜した。成膜レートは0.3mm/sec.で膜圧を10nmとした。
【0089】
次いで、上記基板をアセトンに浸してレジストマスクを溶解し、リフトオフによりNiの素子電極2,3を形成した。電極間隙Hは2μm、電極長Wは500μmである(図2(A))。
【0090】
工程−b:
電極が形成された基板を、アセトン、イソプロパノール、酢酸ブチルで洗浄し乾燥した後、真空蒸着法によりCrを50nm成膜する。次いでフォトレジストAZ1370(ヘキスト社製)をスピンナーにより塗布(2500rpm、30秒)し、90℃、30分間のプリベークを行った。
【0091】
次いで、マスクを用いた露光と現像により、導電性薄膜の形状に対応する開口を形成、120℃,30分間のポストベークを行ってレジストマスクを形成した。
【0092】
次いで、エッチャント((NH4 )Ce(NO3 )6 /HC1/H2 O=17g/5cc/100cc)に30秒間浸漬し、マスク開口部のCrエッチングし、次いでアセトンによりレジストを剥離しCrマスクを形成した。
【0093】
次いで、有機Pd化合物の溶液(ccp−4230:奥野製薬(株)製)をスピンナーで塗布(800rpm、30秒)し、300℃,10分間の焼成を行い、PdO微粒子より成る導電性薄膜を形成した。
【0094】
次いで、上記エッチャントに再度浸漬して、Crマスクを除去し、リフトオフにより、所望のパターンの導電性薄膜4を形成した(図2(B))。
【0095】
工程−c:
次いで、上記の素子を図3に模式的に示した装置に設置し、不図示の排気装置により真空チャンバー(真空容器)35内を排気し、圧力を1×10−5<−5乗>Torr以下とした。
【0096】
次に、N2:98%-H2:2%の混合ガスを真空チャンバー35内に導入した。真空チャンバー35の圧力は1.3×10−3<−3乗>Paとした。
【0097】
次に、素子電極2,3の間に図4(B)に示すような、波高値が10V一定の矩形波パルスを印加した。パルス幅T1は0.1msec.、パルス間隔T2は16.6msec.とした。この条件で、約20分間電圧を印加し続けたところ、フォーミングが完了した(図2(C))。
【0098】
上記パルスとパルスの間に、波高値0.1Vの矩形波パルスを挿入し、素子の抵抗値を測定し、これが1MΩを超えたところでパルス電圧の印加を止め、真空チャンバー35を排気した。
【0099】
工程−d:
次いで、排気装置により真空チャンバー35内を更に排気し、圧力が1×10−7<−7乗>Torr以下となってから、トルニトリルを導入し、圧力を1×10−6<−6乗>Torrとした。素子電極間に図13に示すような波高値一定で極性を反転させる矩形波パルスを繰り返し印加した。波高値は15V、パルス幅T3は1msec、パルス間隔T4は10msecとした。
【0100】
工程−e:
次いで、排気装置により真空チャンバー35内を排気しながら、素子を150℃に加熱し保持したところ、1×10−8<−8乗>Torrの圧力に到達した。 素子を室温に戻した後、アノード電極34に8kVの電圧を印加し、素子電極間に波高値一定の矩形波パルスの電圧を印加して特性の測定を行った。なお、アノード電極と素子との間隔は4mmにセットした。
【0101】
素子を一定時間駆動したところ、素子電流If及び放出電流Ieの揺らぎは非常に小さかった。また、電流If及びIeはほとんど減少せず、電子放出特性が非常に安定な素子が得られた。
【0102】
上記特性を測定した素子を、真空チャンバー35から取り出して、走査型原子間力顕微鏡を用いて電子放出部5の形態観察を行った。その結果、電子放出部5を構成する間隙7の炭素を有する膜10が、間隙7の延在方向で、基板1面に垂直な高さ方向に0〜60nmの高さの分布を持つ凹凸15を有していた。更に、この凹凸構造は、間隙7の延在方向に、50nm付近を中心にした周期の、振幅がおよそ60nmの周期構造を有していた(図5参照)。
【0103】
また、同様に、特性を測定しなかった素子の形態観察を行った結果、特性を測定した素子と形態に差はなかった。
【0104】
〔実施例2〕
本実施例は、図14に模式的に示したマトリクス配線の電子源と、これを用いた画像形成装置(図9)の製造方法である。図14は本実施例により形成されたマトリクス配線の電子源の構成を模式的に示す部分平面図で、図14中の折れ線A−A’に沿った断面の構造を図15に示す。
【0105】
以下、図16及び図17を参照して、電子源の製造工程を説明し、さらに画像形成装置の製造工程も説明する。
【0106】
工程−A:
洗浄した青板ガラス上にシリコン酸化膜をスパッタリング法により0.5μm形成し、これを基板として、この上にCr5nm、Au600nmを真空蒸着法により順次成膜した後、フォトレジストAZ1370(ヘキスト社製)を用い、フォトリソグラフィー技術により下配線82を形成した(図16(A))。
【0107】
工程−B:
次いで、厚さ1μmのシリコン酸化膜より成る層間絶縁層141をスパッタリング法により堆積する(図16(B))。
【0108】
工程−C:
層間絶縁層にコンタクトホール142を形成するためのフォトレジストパターンを作成、これをマスクとしてCF4 とH2 を用いたRIE(ReactiveIon Eching)法により、層間絶縁層141をエッチングした(図16(C))。
【0109】
工程−D:
素子電極のパターンに対応する開口を有するフォトレジスト(RD−2000N−41:日立化成社製)のマスクパターンを形成し、真空蒸着法比より5nmのTi、100nmのNiを順次堆積、次いで有効溶剤によりフォトレジストを除去してリフトオフにより素子電極5,6を形成した。素子電極の間隔Lは3μmとした(図16(D))。
【0110】
工程−E:
工程−Aと同様のフォトレジストを用いたフォトソリグラフィー法により、5nmのTi、500nmのAuの積層構造を有する上配線83を形成した(図17(E))。
【0111】
工程−F:
実施例1の工程−bと同様のCrマスクを用いたリフトオフにより、PdO微粒子より成る導電性薄膜4を形成した(図17(F))。
【0112】
工程−G:
コンタクトホール142以外を覆うレジストパターンを形成し、真空蒸着により、5nmのTi、500nmのAuを順次堆積し、レジストパターンを除去して不要な積層膜を除去してコンタクトホールの埋め込みを行い、フォーミング前の電子源基板を作成した(図17(G))。
【0113】
上記電子源基板を用い、図9に示す構成の画像形成装置を作成した。
【0114】
電子源の基板110をリアプレート91に固定し、基板の5mm上方にフェースプレートを支持枠92を介して配置し、接合部にフリットガラスを塗布し窒素雰囲気中で400℃に10分間保持して接合し、外囲器を形成した。フェースプレートの内面には蛍光膜94及びメタルバック95が形成されている。蛍光膜94はストライプ形状(図6(A))のものを採用し、印刷法により形成した。黒色導電材はグラファイトを主成分とする材質を用いた。メタルバックは、蛍光膜の内面を平滑処理(フィルミング)した後、Alを真空蒸着することにより形成した。
【0115】
上記の組立を行う際、蛍光体と電子放出素子との対応を正確に行う必要があり、十分に位置合わせを行った。なお、外囲器内にはゲッタ装置(不図示)も取り付けられる。
【0116】
工程−H:
上記外囲器内を不図示の排気装置で排気し、実施例1の工程−cと同様に矩形波パルスを印加しフォーミング処理を行い、各導電性薄膜4に間隙6を形成した。
【0117】
工程−I:
続いて、実施例1の工程−dと同様にして、外囲器内にトリニトリルを導入して活性化処理を行った。
【0118】
工程−J:
実施例1の工程−eと同様に外囲器内を排気しながら加熱し、安定化処理を行った結果、約3時間で内部の圧力が1×10−8<−8乗>Torrに到達した。
【0119】
以上の工程によって作成された上記外囲器に不図示の駆動回路を取り付け、メタルバックに10kVの高電圧を印加し、画像形成装置の電子源を構成するための個々の電子放出素子の特性を測定し、それぞれの素子の特性を比較したところ、素子電流If及び放出電流Ieのばらつきは少なく良好であった。また、TV信号を入力して画像を表示させたところ、高輝度で高精細な画像が長時間に亘って安定に得られた。
【0120】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子放出素子は、導電性膜部材に形成された炭素含有膜部材が間隙の延在方向に凹凸部を有するので、電子放出点密度が高くなり、電子放出部全体としての電子放出の不均一性が減少し、安定した電子放出を行うことができる。
【0121】
また、本発明の電子放出素子を大面積に数多く配列形成した電子源及びこの電子源を用いた画像形成装置においても、画素対応の素子間の不均一性が小さく、したがって、輝度のばらつきなどが少なく、高精細で大面積の画像表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態の電子放出素子の構成を示す模式的平面図及び断面図。
【図2】 一実施の形態の電子放出素子の製造工程の一部を示す。
【図3】 測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を示す構成図。
【図4】 一実施の形態の電子放出素子の製造工程の一部であるフォーミング処理工程に用いることのできる電圧波形の一例を示す。
【図5】 一実施の形態の電子放出素子の炭素を有する膜の微小間隔部分を説明するための模式図。
【図6】 蛍光膜の一例を示す構成図。
【図7】 一実施の形態の電子放出素子の放出電流Ieと素子電流Ifと素子電圧Vfとの関係を示す。
【図8】 一実施の形態の電子放出素子を単純マトリクス配置した電子源に適用した一例を示す構成図。
【図9】 一実施の形態の電子放出素子を画像形成装置に適用した一例を示す構成図。
【図10】 一実施の形態の電子放出素子を画像形成装置に適用した際の画像形成装置の製造工程において使用される真空処理装置の一例を示す構成図。
【図11】 一実施の形態の電子放出素子を梯子配置した電子源に適用した一例を示す構成図。
【図12】 一実施の形態の電子放出素子を画像形成装置に適用した他の一例を示す構成図。
【図13】 一実施の形態の電子放出素子の製造工程の一部である活性化処理工程に用いることのできる電圧波形の一例を示す。
【図14】 一実施の形態の電子放出素子を単純マトリクス配置した電子源に適用した一例を示す構成図。
【図15】 図14中の折れ線A−A’に沿った部分断面図。
【図16】 実施例に係わる電子源の製造工程の一部を説明するための図。
【図17】 実施例に係わる電子源の製造工程の一部を説明するための図。
【図18】 従来の表面伝導型電子放出素子の構成を示す模式的平面図及び断面図。
【符号の説明】
1 基板
2、3 電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 導電性薄膜の一部に形成された間隙
7 炭素を有する膜(堆積物)10間の間隙
10 炭素を有する膜(堆積物)
30 素子電極2,3間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計
31 電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源
32 電子放出素子から放出された放出電流Ieを測定するための電流計
33 アノード電極34に電圧を印加するための高圧電源
34 電子放出素子から放出される電子を加速及び捕捉するためのアノード電極
35 真空容器(真空チャンバー)
61 黒色部材
62 蛍光体
81 電子源基板
82 X方向配線
83 Y方向配線
84 電子放出素子
85 結線
91 リアプレート
92 支持枠
93 ガラス基板
94 蛍光膜
95 メタルバック
96 フェースプレート
98 外囲器
102 排気管
103 真空チャンバー
104 ゲートバルブ
105 排気装置
106 圧力計
107 四重極質量分析器(Q−mass)
110 電子源基板
111 電子放出素子
112 共通配線
120 グリッド電極
121 電子が通過するためにグリッド電極に設けられた空孔
122 容器外端子
123 グリッド用容器外端子
141 層間絶縁層
142 コンタクトホール

Claims (5)

  1. 絶縁性基体の主表面上に配置された一対の電極と
    該一対の電極間に配置されると共に、第一の間隙を挟んで対向する炭素を主成分とする第一の膜及び炭素を主成分とする第二の膜と、
    前記一対の電極の一方と前記炭素を主成分とする第一の膜とを接続する第一の導電性膜と
    前記一対の電極の他方と前記炭素を主成分とする第二の膜とを接続する第二の導電性膜とを備えており、
    前記第一の導電性膜と第二の導電性膜が第二の間隙を挟んで対向しており、該第二の間隙内に前記第一の間隙が配置されている電子放出素子であって、
    前記炭素を主成分とする第一及び第二の膜の各々は、前記第一の間隙に沿って、前記炭素を主成分とする第一の膜と第二の膜とが対向する方向における凹凸部を備えると共に、前記基体の主表面に垂直な方向における凹凸部を備えていることを特徴とする電子放出素子。
  2. 前記第一及び第二の膜は炭素を主成分とする堆積物であり、気化トルニトリルを含む雰囲気中で行う活性化処理によって形成されることを特徴とする請求項1に電子放出素子。
  3. 基体上に複数の電子放出素子を配列形成した電子源において、
    前記電子放出素子の各々が請求項1または2に記載の電子放出素子であることを特徴とする電子源。
  4. 電子源と、該電子源から放出された電子を照射することで画像を形成する画像形成部材とを有する画像形成装置において、
    前記電子源が請求項3に記載の電子源であることを特徴とする画像形成装置。
  5. 画像形成装置と、該画像形成装置にテレビジョン放送信号を表示させるための回路と、を備えたテレビジョン放送の表示装置であって、
    前記画像形成装置が請求項4に記載の画像形成装置であることを特徴とするテレビジョン放送の表示装置。
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