JPH09330652A - 電子放出素子の製造方法ならびに電子放出素子および画像形成装置 - Google Patents

電子放出素子の製造方法ならびに電子放出素子および画像形成装置

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JPH09330652A
JPH09330652A JP16661996A JP16661996A JPH09330652A JP H09330652 A JPH09330652 A JP H09330652A JP 16661996 A JP16661996 A JP 16661996A JP 16661996 A JP16661996 A JP 16661996A JP H09330652 A JPH09330652 A JP H09330652A
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JP
Japan
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electron
emitting device
thin film
voltage
substrate
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JP16661996A
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Inventor
Toyoko Kobayashi
登代子 小林
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Original Assignee
Canon Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 素子間の特性のばらつきを抑える。 【解決手段】 基板1上の対向する電極2,3間に有機
金属化合物を含む水溶液の液適を付与し、基板を焼成し
て、導電性薄膜4を形成して電子放出部5とする電子放
出素子の製造方法において、前記水溶液中に酸化物微粒
子を混在させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面伝導型電子放
出素子形成用有機金属錯体、該有機金属錯体を主成分と
する表面伝導型電子放出素子形成用材料、表面伝導型電
子放出素子、該電子放出素子を用いた電子源、該電子源
を用いた画像形成装置及び該電子放出素子の製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては大別し
て熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類
のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界放
出型(以下「FE型」という)、金属/絶縁層/金属型
(以下「MIM型」という)や表面伝導型電子放出素子
等がある。FE型の例としてはW.P.Dyke &
W.W.Dolan,“Field emissio
n”,Advance inElectron Phy
sics,8,89(1956)あるいはC.A.Sp
indt,“PHYSICAL Properties
of thin−film field emiss
ion cathodes with molybde
nium cones”J.Appl.Phys.,4
7,5248(1976)等に開示されたものが知られ
ている。MIM型の例としてはC.A.Mead,“O
peration of Tunnel−Emissi
onDevices”,J.Apply.Phys.,
32,646(1961)等に開示されたものが知られ
ている。表面伝導型電子放出素子型の例としては、M.
I.Elinson,Radio Eng.Elect
ron Pys.,10,1290(1965)等に開
示されたものがある。
【0003】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より、電子放出が生ずる現象を利用するものである。こ
の表面伝導型電子放出素子としては、前記Elinso
n等によるSnO2 薄膜を用いたもの、Au薄膜による
もの[G.Dittmer,“Thin SolidF
ilms”,9,317(1972)]、In23
SnO2 薄膜によるもの[M.Hart well a
nd C.G.Fonstad,“IEEETran
s.ED Conf.”,519(1975)]、カー
ボン薄膜によるもの[荒木久他,真空,第26巻,第1
号,22頁(1983)]等が報告されている。
【0004】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な例として前述のM.Hartwellの素子構成を図
14に模式的に示す。同図において1は基板である。4
は導電性薄膜で、H型形状のパターンに、スパッタで形
成された金属酸化物薄膜等からなり、後述の通電フォー
ミングと呼ばれる通電処理により電子放出部5が形成さ
れる。尚、図中の素子電極間隔Lは、0.5〜1mm、
W’は、0.1mmで設定されている。
【0005】従来、これらの表面伝導型電子放出素子に
おいては、電子放出を行う前に導電性薄膜4を予め通電
フォーミングと呼ばれる通電処理によって電子放出部5
を形成するのが一般的であった。即ち、通電フォーミン
グとは前記導電性薄膜4両端に直流電圧あるいは非常に
ゆっくりとした昇電圧例えば1V/min.程度を印加
通電し、導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質
せしめ、電気的に高抵抗な状態にした電子放出部5を形
成することである。尚、電子放出部5は導電性薄膜4の
一部に亀裂が発生しその亀裂付近から電子放出を行う。
前記通電フォーミング処理をした表面伝導型電子放出素
子は、上述導電性薄膜4に電圧を印加し、素子に電流を
流すことにより、上述電子放出部5より電子を放出せし
めるものである。
【0006】また、表面伝導型電子放出素子としては、
上記の構成の他に、本出願人は、例えば特開平7−23
5255に開示されているように、電子放出部を含む導
電性薄膜を、電子電極とは別の、適当な材質により形成
した構成のものを報告している。この中で、導電性薄膜
の形成手法の好ましい例として、有機金属化合物の溶液
を塗布・乾燥後加熱焼成して有機成分を熱分解し、除去
し、金属もしくは金属酸化物とする手法が開示されてお
り、この際導電性薄膜をパターニングする手法として
は、フォトリソグラフィー技術によりCrマスクを形成
し、ウェットエッチによりリフトオフする方法が示され
ている。
【0007】また、フォーミング処理の際、パルス電圧
を印加する方法が示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来の表面伝導型電子放出素子においては、後述する様
な、様々の問題があった。
【0009】上述の表面伝導型放出素子は、構造が単純
で製造も容易であることから、大面積にわたり多数素子
を配列形成できる利点がある。そこで、この特徴を生か
せるようないろいろな応用が研究されている。例えば、
荷電ビーム源、表示装置等があげられる。多数の表面伝
導型電子放出素子を配列形成した例としては、後述する
様に、並列に表面伝導型電子放出素子を配列し、個々の
素子の両端を配線(共通配線とも呼ぶ)で、それぞれ結
線した行を多数行配列した電子源があげられる(例え
ば、特開昭64−031332、特開平1−28374
9、2−257552等)。また、特に表示装置等の画
像形成装置においては、近年、液晶を用いた平板型表示
装置が、CRTに替わって、普及してきたが、自発光型
でないため、バックライトを持たなければならない等の
問題点があり、自発光型の表示装置の開発が、望まれて
きた。自発光型表示装置としては、表面伝導型放出素子
を多数配置した電子源と電子源より放出された電子によ
って、可視光を発光せしめる蛍光体とを組み合わせた表
示装置である画像形成装置が、あげられる(例えば、U
SP5066883)。
【0010】ところが上述のような平面型表示装置を大
面積化する場合、大型基板上に電極等の微細なパターン
を従来のフォトリソ技術を用いて製造するには大型製造
装置が必要となり、莫大な費用がかかるという問題があ
った。
【0011】本発明は上記従来技術における電子放出部
形成用薄膜の製造工程を簡略化し、低コストの電子放出
素子、表示素子、画像形成装置を提供することにある。
さらに本発明は、電子放出部形成用材料の有機金属錯体
の水溶液の液滴が基板上で拡がるのを防ぎ、さらに電子
放出部の位置の制御を容易に行い、従って素子間の特性
のバラツキを抑え、安定な電子放出特性と高い電子放出
効率とを有する電子放出素子の作成を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく成
された本発明の表面伝導型電子放出素子は、素子電極の
形成方法として印刷法、さらに電子放出部形成用薄膜の
作成方法としてインクジェットおよびバブルジェット方
式を用い、電子放出部形成用材料として有機金属錯体の
水溶液を用いる。本発明の特徴としてはこの電子放出部
形成用材料中に酸化物微粒子を混入させることにある。
【0013】本発明で用いる酸化物微粒子は、ケイ素を
含む揮発性化合物を気相で反応させることにより作られ
る微粒子状無水シリカ微粒子が望ましく、具体例として
は、アエロジル(AEROSIL)の商品名で日本アエ
ロジル社から発売されている。このアエロジルは、19
42年にDegussa社(ドイツ)で開発されたシリ
カで、四塩化ケイ素の酸水素焔中での高温加水分解によ
り生成される。この特徴としては、純度が極めて高く、
粒子はほとんど完全な球形でかつ粒度がそろい、凝集性
が少なく、高密度が小さく、分散性が良い。また液体の
増粘作用も大きい。図16に代表的なAEROSIL3
00の電子顕微鏡写真と一次粒子粒度分布曲線を示す。
【0014】上記のような優れた性質を持つシリカ微粒
子を電子放出部形成用導電性薄膜中に混入させることに
より、以下のような効果が期待される。従来、電子放出
部形成用材料として有機金属錯体の水溶液を用い、その
液滴を基板に付与する際、液滴が所定の位置以外に拡が
ってしまうことがあった。またそれにより、焼成後の膜
厚にムラができてしまい、通電フォーミングによる電子
放出部の作成の際にその位置を制御するのが難しかっ
た。電子放出部は導電率の小さい位置すなわち膜厚の薄
い部分にできやすいためである。
【0015】ところが、粒径10〜1000オングスト
ロームのシリカ微粒子を有機金属錯体の水溶液中に0.
1〜10Wt%混入した液滴はシリカ微粒子の増粘作用
により基板上で拡がらず、所定の位置に付与することが
できる。また、素子電極間に付与した液滴は中央部が厚
くなることから、焼成後の薄膜中のシリカ微粒子も中央
部に多く存在するため、電子放出材料の凝集した粒子の
中で粒径の小さいシリカ微粒子部から電子放出部ができ
る可能性が高く、通電フォーミングによる電子放出部の
位置を制御することができる。またその際のフォーミン
グパワーも小さくすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に
係る表面伝導型電子放出素子の1例を示す模式図であ
り、図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。
図1において1は基板、2と3は素子電極、4は導電性
薄膜、5は電子放出部である。
【0017】基板1としては、石英ガラス、Na等の不
純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラス
にスパッタ法等により形成したSiO2 を積層したガラ
ス基板及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板等を
用いることができる。
【0018】対向する素子電極2、3の形成にはインク
の転写膜厚を薄くでき高精細印刷が可能であるオフセッ
ト印刷法が適当である。電極の印刷材料としては、有機
金属からなるレジネートペーストを用い、その金属材料
としては、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、
Al、Cu、Pd等の金属或は合金が挙げられる。また
Pd、Au、RuO2 、Pd−Ag等の金属或は金属酸
化物とガラス等から構成される印刷導体等から適宜選択
することができる。
【0019】素子電極間隔L、素子電極長さW、導電性
薄膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して、設計
される。素子電極間隔Lは、数千オングストロームから
数百μmの範囲とすることができ、素子電極間に印加す
る電圧等を考慮して好ましくは数μmから数十μmの範
囲とすることができる。素子電極長さWは、電極の抵抗
値、電子放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範
囲とすることができる。素子電極2、3の膜厚dは、数
百オングストロームから数μmの範囲とすることができ
る。また,前記一対の電極に接続される配線は、スクリ
ーン印刷法を用いて形成させることもできる。
【0020】導電性薄膜4には、良好な電子放出特性を
得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが
好ましい。その膜厚は、素子電極2、3へのステップカ
バレージ、素子電極2、3間の抵抗値及び後述するフォ
ーミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は、
数オングストロームから数千オングストロームの範囲と
するのが好ましく、より好ましくは10オングストロー
ムより500オングストロームの範囲とするのが良い。
その抵抗値は、Rsが102から107Ω/□の値であ
る。なおRsは、厚さがt、幅がwで長さが1の薄膜の
抵抗Rを、R=Rs(1/w)とおいたときに現れる。
本明細書において、フォーミング処理については、通電
処理を例に挙げて説明するが、フォーミング処理はこれ
に限られるものではなく、膜に亀裂を生じさせて高抵抗
状態を形成する処理を包含するものである。
【0021】導電性薄膜4を構成する材料の原料となる
金属化合物の金属元素としては、Pd、Pt、Ru、A
g、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、S
n、Ta、W、Pb等が挙げられる。
【0022】電子放出部導電膜形成のために基板に付与
される液体は、上記の金属化合物を含む水溶液である。
さらに金属化合物の均一性を向上させるために、ジメチ
ルスルホキシドやイソプロピルアルコール等の極性溶媒
を加えても良い。
【0023】ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子
が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子が個々に
分散配置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あるい
は重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体
として島状構造を形成している場合も含む)をとってい
る。微粒子の粒径は、数オングストロームから数千オン
グストロームの範囲、好ましくは、10オングストロー
ムから200オングストロームの範囲である。なお、本
明細書では頻繁に「微粒子」という言葉を用いるので、
その意味について説明する。
【0024】小さな粒子を「微粒子」と呼び、これより
も小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」より
もさらに小さく原子の数が数百個程度以下のものを「ク
ラスター」と呼ぶことは広く行われている。しかしなが
ら、それぞれの境は厳密なものではなく、どの様な性質
に注目して分類するかにより変化する。また、「微粒
子」と「超微粒子」を一括して「微粒子」と呼ぶ場合も
あり、本明細書中での記述はこれに沿ったものである。
【0025】「実験物理学講座14表面・微粒子」(木
下是雄編、共立出版1986年9月1日発行)では次の
ように記述されている。「本稿で微粒子と言うときには
その直径がだいたい2〜3μm程度から10nm程度ま
でとし、特に超微粒子というときは粒径10nm程度か
ら2〜3nm程度までを意味することにする。両者を一
括して単に微粒子と書くこともあってけっして厳密なも
のではなく、だいたいの目安である。粒子を構成する原
子の数が2個から数十〜数百個程度の場合はクラスター
と呼ぶ。」(195ページ22〜26行目)。
【0026】付言すると、新技術開発事業団の“林・超
微粒子プロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径
の下限はさらに小さく、次のようなものであった。「創
造科学技術推進制度の“超微粒子プロジェクト”(19
81〜1986)では、粒子の大きさ(径)がおよそ1
〜100nmの範囲のものを“超微粒子”(ultra
fineparticle)と呼ぶことにした。すると
1個の超微粒子はおよそ100〜108個くらいの原子
の集合体ということになる。原子の尺度でみれば超微粒
子は大〜巨大粒子である。」(「超微粒子−創造科学技
術−」林主税、上田良二、田崎明編;三田出版1988
年2ページ1〜4行目)「超微粒子よりさらに小さいも
の、すなわち原子が数個〜数百個で構成される1個の粒
子は、ふつうクラスターと呼ばれる」(同書2ページ1
2〜13行目)。
【0027】上記のような一般的な呼び方をふまえて、
本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集
合体で、粒径の下限は数オングストローム〜10オング
ストローム程度、上限は数μm程度のものを指すことと
する。
【0028】電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形
成された高抵抗の亀裂により構成され、導電性薄膜4の
膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミング等の手
法等に依存したものとなる。電子放出部5の内部には、
数オングストロームから数百オングストロームの範囲の
粒径の導電性微粒子が存在する場合もある。この導電性
微粒子は、導電性薄膜4を構成する材料の元素の一部、
あるいは全ての元素を含有するものとなる。電子放出部
5及びその近傍の導電性薄膜4には、炭素及び炭素化合
物を有することもできる。
【0029】上述の表面伝導型電子放出素子を製造する
方法としては様々な方法があるが、本発明で用いている
方法は、電子源形成用材料をBJまたはピエゾジェット
などのインクジェット方式により吐出し、基板上の電子
源が形成されるべき位置に付着させる方法である。この
方法で使用されるインクジェットのヘッドの例を図2及
び3に示す。図2は単発ヘッド、図3は単発ヘッドを並
列に配置し、電子源形成用材料の吐出及び基板への付着
に要する時間を短縮しようとするものであり、ノズル数
はとくに限定されるものではない。
【0030】以下、図1及び4を参照しながら製造方法
の一例について説明する。図4においても、図1に示し
た部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を
付している。
【0031】基板1を洗剤、純水および有機溶剤等を
用いて十分に洗浄後、オフセット印刷法により有機金属
からなるレジネートペーストを印刷、焼成して基板1上
に素子電極2、3を形成する(図4(a))。
【0032】素子電極2、3を設けた基板1に、イン
クジェット方式により、気相反応により作られた微粒子
シリカを数%混入させた有機金属溶液を塗布して(図4
(b))、有機金属薄膜を形成する(図4(c))。有
機金属溶液には、前述の導電性膜4の材料の金属を主元
素とする有機金属化合物の溶液を用いることができる。
特にそれらの水溶液を主体とする溶液が望ましい。この
有機金属薄膜を200℃から500℃で加熱焼成し、導
電性薄膜4を形成する。より詳しくは、有機金属錯体を
塗布した基板を分解温度以上に加熱し、基板上で有機金
属錯体の有機成分を分解させて電子放出部形成用薄膜4
を得る。
【0033】つづいて、フォーミング工程を施す。こ
のフォーミング工程の方法の一例として通電処理による
方法を説明する。素子電極2、3間に、不図示の電源を
用いて、通電を行うと、導電性薄膜4の部位に、構造の
変化した電子放出部5が形成される(図4(d))。通
電フォーミングによれば導電性薄膜4に局所的に破壊、
変形もしくは変質等の構造の変化した部位が形成され
る。該部位が電子放出部5を構成する。通電フォーミン
グの電圧波形の例を図5に示す。
【0034】電圧波形は、パルス波形が、好ましい。こ
れにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印
加する図5(a)に示した手法と、パルス波高値を増加
させながら電圧パルスを印加する図5(b)に示した手
法がある。
【0035】図5(a)におけるT1及びT2は電圧波
形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μ秒〜
10m秒、T2は、10μ秒〜100m秒の範囲で設定
される。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク
電圧)は、表面伝導型電子放出素子の形態に応じて適宜
選択される。このような条件のもと、例えば、数秒から
数十分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に限定さ
れるものではなく、矩形波など所望の波形を採用するこ
とができる。
【0036】図5(b)におけるT1及びT2は、図5
(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の
波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば
0.1Vステップ程度づつ、増加させることができる。
【0037】通電フォーミング処理の終了は、パルス間
隔T2中に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない
程度の電圧を印加し、電流を測定して検知することがで
きる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子
電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示
した時、通電フォーミングを終了させる。
【0038】フォーミングを終えた素子には活性化工
程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活性化工程と
は、この工程により、素子電流If、放出電流Ieが、
著しく変化する工程である。活性化工程は、例えば、有
機物質のガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミング
と同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことがで
きる。この雰囲気は、例えば油拡散ポンプやロータリー
ポンプなどを用いて真空容器内に排気した場合に雰囲気
内に残留する有機ガスを利用して形成することができる
他、イオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中
に適当な有機物質のガスを導入することによっても得ら
れる。このときの好ましい有機物質のガス圧は、前述の
応用の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類などに
より異なるため場合に応じ適宜選択される。適当な有機
物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族
炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデ
ヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、
スルホン酸等の有機酸類等を挙げることができ、具体的
には、メタン、エタン、プロパンなどCn2n+2で表さ
れる飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどCn2n
等の組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トル
エン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、ア
セトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチ
ルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プ
ロピオン酸等が使用できる。この処理により、雰囲気中
に存在する有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素
子上に堆積し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく
変化するようになる。活性化工程の終了判定は、素子電
流Ifと放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なお
パルス幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定さ
れる。
【0039】炭素および炭素化合物とは、例えばグラフ
ァイト(いわゆるHOPG、PG、GC)を包含する。
HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは
結晶粒が200オングストローム程度で結晶構造がやや
乱れたもの、GCは結晶粒が20オングストローム程度
になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指
す。)や非晶質カーボン(アモルファスカーボン及び、
アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混
合物を指す)であり、その膜厚は、500オングストロ
ーム以下の範囲とするのが好ましく、300オングスト
ローム以下の範囲とすることがより好ましい。
【0040】このような工程を経て得られた電子放出
素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程
は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空
容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイ
ルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用
しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープ
ションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げる
ことができる。
【0041】前記活性化の工程で、排気装置として油拡
散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生する
オイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成
分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有
機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新た
に堆積しない分圧で1×10-8Torr以下が好まし
く、さらには1×10-10 Torr以下が特に好まし
い。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全
体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着し
た有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。この
ときの加熱条件は、80〜200℃で5時間以上が望ま
しいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の
大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により
適宜選ばれる条件により行う。真空容器内の圧力は極力
低くすることが必要で、1〜3×10-7Torr以下が
好ましく、さらに1×10-8Torr以下が特に好まし
い。
【0042】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な
特性を維持することができる。このような真空雰囲気を
採用することにより、新たな炭素あるいは炭素化合物の
堆積を抑制でき、結果として素子電流If、放出電流I
eが、安定する。
【0043】上述した工程を経て得られた本発明を適用
可能な電子放出素子の基本特性について図6、図7を参
照しながら説明する。
【0044】図6は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。図6においても、図1に示した部
位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付し
ている。図6において、65は真空容器であり、66は
排気ポンプである。真空容器65内には電子放出素子が
配されている。即ち、1は電子放出素子を構成する基体
であり、2及び3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電
子放出部である。61は電子放出素子に素子電圧Vfを
印加するための電源、60は素子電極2、3間の導電性
薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、
64は素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを
捕捉するためのアノード電極である。63はアノード電
極54に電圧を印加するための高圧電源、62は素子の
電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するた
めの電流計である。一例として、アノード電極の電圧を
1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子放出
素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を行
うことができる。
【0045】真空容器65内には、不図示の真空計等の
真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、
所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようになって
いる。排気ポンプ66は、ターボポンプ、ロータリーポ
ンプからなる通常の高真空装置系と更に、イオンポンプ
等からなる超高真空装置系とにより構成されている。こ
こに示した電子源基板を配した真空処理装置の全体は、
不図示のヒーターにより200℃まで加熱できる。従っ
て、この真空処理装置を用いると、前述の通電フォーミ
ング以降の工程も行うことができる。
【0046】図7は、図5に示した真空処理装置を用い
て測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧V
fの関係を模式的に示した図である。図7においては、
放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいの
で、任意単位で示している。なお、縦・横軸ともリニア
スケールである。図7からも明らかなように、本発明を
適用可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに
関して対する三つの特徴的性質を有する。
【0047】即ち、(i)本素子はある電圧(しきい値
電圧と呼ぶ、図7中のVth)以上の素子電圧を印加す
ると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧V
th以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つ
まり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vth
を持った非線形素子である。(ii)放出電流Ieが素
子電圧Vfに単調増加依存するため、放出電流Ieは素
子電圧Vfで制御できる。(iii)アノード電極64
に捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間
に依存する。つまり、アノード電極64に捕捉される電
荷量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御でき
る。
【0048】以上の説明より理解されるように、本発明
を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応
じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。こ
の性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成し
た電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能とな
る。
【0049】図7においては、素子電流Ifが素子電圧
Vfに対して単調増加する(以下、「MI特性」とい
う。)例を実線に示した。素子電流Ifが素子電圧Vf
に対して電圧制御型負性抵抗特性(以下、「VCNR特
性」という。)を示す場合もある(不図示)。これら特
性は、前述の工程を制御することで制御できる。
【0050】本発明を適用可能な電子放出素子の応用例
について以下に述べる。本発明を適用可能な表面伝導型
電子放出素子の複数個を基板上に配列し、例えば電子源
あるいは、画像形成装置が構成できる。
【0051】電子放出素子の配列については、種々のも
のが採用できる。一例として、並列に配置した多数の電
子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を
多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向
(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制
御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子から
の電子を制御駆動するはしご状配置のものがある。これ
とは別に、電子放出素子をX方向及びY方向に行列状に
複数個配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電
極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配
された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配
線に共通に接続するものが挙げられる。このようなもの
は所謂単純マトリクス配置である。まず単純マトリクス
配置について以下に詳述する。
【0052】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素
子については、前述したとおり(i)〜(iii)の特
性がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電
子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に印
加するパルス状電圧の波高値と幅で制御できる。一方、
しきい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特性に
よれば、多数の電子放出素子を配置した場合において
も、個々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれば、入
力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電
子放出量を制御できる。
【0053】以下この原理に基づき、本発明を適用可能
な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板につい
て、図8を用いて説明する。図8において、81は電子
源基板、82はX方向配線、83はY方向配線である。
84は表面伝導型電子放出素子、85は結線である。な
お、表面伝導型電子放出素子84は、前述した平面型あ
るいは垂直型のどちらであってもよい。
【0054】m本のX方向配線82は、DX1、DX
2、・・・ 、DXmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパ
ッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成するこ
とができる。配線の材料、膜厚、幅は、適宜設計され
る。Y方向配線83は、DY1、DY2、・・・ 、DYn
のn本の配線よりなり、X方向配線82と同様に形成さ
れる。これらm本のX方向配線82とn本のY方向配線
83との間には、不図示の層間絶縁層が設けられてお
り、両者を電気的に分離している(m、nは、共に正の
整数)。
【0055】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2 等で構成
される。例えば、X方向配線82を形成した基板81の
全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配
線82とY方向配線83の交差部の電位差に耐え得るよ
うに、膜厚、材料、製法が、適宜設定される。X方向配
線82とY方向配線83は、それぞれ外部端子として引
き出されている。表面伝導型放出素子84を構成する一
対の電極(不図示)は、m本のX方向配線82とn本の
Y方向配線83と導電性金属等からなる結線85によっ
て電気的に接続されている。
【0056】配線82と配線83を構成する材料、結線
85を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料
は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であって
も、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例え
ば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極
を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子
電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0057】X方向配線82には、X方向に配列した表
面伝導型放出素子84の行を、選択するための走査信号
を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一
方、Y方向配線83には、Y方向に配列した表面伝導型
放出素子84の各列を入力信号に応じて、変調するため
の不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放出
素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される走
査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0058】上記構成においては、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とす
ることができる。
【0059】このような単純マトリクス配置の電子源を
用いて構成した画像形成装置について、図9と図10及
び図11を用いて説明する。図9は画像形成装置の表示
パネルの一例を示す模式図であり、図10は図9の画像
形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。図11は
NTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行なうための
駆動回路の一例を示すブロック図である。
【0060】図9において、81は電子放出素子を複数
配した電子源基板、91は電子源基板81を固定したリ
アプレート、96はガラス基板93の内面に蛍光膜94
とメタルバック95等が形成されたフェースプレートで
ある。92は、支持枠であり該支持枠92には、リアプ
レート91、フェースプレート96がフリットガラス等
を用いて接続されている。98は外囲器であり、例えば
大気中あるいは、窒素中で、400〜500℃の温度範
囲で10分以上焼成することで、封着して構成される。
84は、図1における電子放出部に相当する。82、8
3は、表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続
されたX方向配線及びY方向配線である。
【0061】外囲器98は、上述の如く、フェースプレ
ート96、支持枠92、リアプレート91で構成され
る。リアプレート91は主に基板81の強度を補強する
目的で設けられるため、基板81自体で十分な強度を持
つ場合は別体のリアプレート91は不要とすることがで
きる。即ち、基板81に直接支持枠92を封着し、フェ
ースプレート96、支持枠92及び基板81で外囲器9
8を構成しても良い。一方、フェースプレート96、リ
アプレート91間に、スペーサーとよばれる不図示の支
持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度
をもつ外囲器98を構成することもできる。
【0062】図10は、蛍光膜を示す模式図である。蛍
光膜94は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成
することができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の
配列によりブラックストライプあるいはブラックマトリ
クスなどと呼ばれる黒色導電材101と蛍光体102と
から構成することができる。ブラックストライプ、ブラ
ックマトリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必
要となる三原色蛍光体の各蛍光体102間の塗り分け部
を黒くすることで混色等を目立たなくすることと、蛍光
膜94における外光反射によるコントラストの低下を抑
制することにある。ブラックストライプの材料として
は、通常用いられている黒鉛を主成分とする材料の他、
導電性があり、光の透過及び反射が少ない材料を用いる
ことができる。
【0063】ガラス基板93に蛍光体を塗布する方法
は、モノクローム、カラーによらず、沈澱法、印刷法等
が採用できる。蛍光膜94の内面側には、通常メタルバ
ック95が設けられる。メタルバックを設ける目的は、
蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート9
6側へ鏡面反射させることにより輝度を向上させるこ
と、電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作
用させること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によ
るダメージから蛍光体を保護すること等である。メタル
バックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化
処理(通常、「フィルミング」と呼ばれる。)を行い、
その後Alを真空蒸着等を用いて堆積させることで作製
できる。
【0064】フェースプレート96には、更に蛍光膜9
4の導電性を高めるため、蛍光膜94の外面側に透明電
極(不図示)を設けてもよい。前述の封着を行う際に
は、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応
させる必要があり、十分な位置合わせが不可欠となる。
【0065】図9に示した画像形成装置は、例えば以下
のようにして製造される。外囲器98は、前述の安定化
工程と同様に、適宜加熱しながら、イオンポンプ、ソー
プションポンプなどのオイルを使用しない排気装置によ
り不図示の排気管を通じて排気し、10-7Torr程度
の真空度の有機物質の十分少ない雰囲気にした後、封止
が成される。外囲器98の封止後の真空度を維持するた
めに、ゲッター処理を行うこともできる。これは、外囲
器98の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あ
るいは高周波加熱等を用いた加熱により、外囲器98内
の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱
し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba
等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、例えば
1×10-5ないしは1×10-7Torrの真空度を維持
するものである。ここで、表面伝導型電子放出素子のフ
ォーミング処理以降の工程は、適宜設定できる。
【0066】次に、単純マトリクス配置の電子源を用い
て構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に
基づいたテレビジョン表示を行うための駆動回路の構成
例について、図11を用いて説明する。図11におい
て、111は画像表示パネル、112は走査回路、11
3は制御回路、114はシフトレジスタである。115
はラインメモリ、116は同期信号分離回路、117は
変調信号発生器、Vx及びVaは直流電圧源である。
【0067】表示パネル111は、端子Dox1〜Do
xm、端子Doy1〜Doyn、及び高圧端子Hvを介
して外部の電気回路と接続している。端子Dox1〜D
oxmには、表示パネル内に設けられている電子源、即
ち、M行N列の行列状にマトリクス配線された表面伝導
型電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動するた
めの走査信号が印加される。
【0068】端子Doy1〜Doynには、前記走査信
号により選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各
素子の出力電子ビームを制御するための変調信号が印加
される。高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例え
ば10K[V]の直流電圧が供給されるが、これは表面
伝導型電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体
を励起するのに十分なエネルギーを付与するための加速
電圧である。
【0069】走査回路112について説明する。同回路
は、内部にM個のスイッチング素子を備えたもので(図
中、S1ないしSmで模式的に示している)ある。各ス
イッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは
0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、
表示パネル111の端子Dox1ないしDoxmと電気
的に接続される。S1〜Smの各スイッチング素子は、
制御回路113が出力する制御信号Tscanに基づい
て動作するものであり、例えばFETのようなスイッチ
ング素子を組み合わせることにより構成することができ
る。
【0070】直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝
導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基
づき走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子
放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力する
よう設定されている。
【0071】制御回路113は、外部より入力する画像
信号に基づいて適切な表示が行われるように各部の動作
を整合させる機能を有する。制御回路113は、同期信
号分離回路116より送られる同期信号Tsyncに基
づいて、各部に対してTscan及びTsft及びTm
ryの各制御信号を発生する。
【0072】同期信号分離回路116は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から同期信号成分と輝
度信号成分とを分離するための回路で、一般的な周波数
分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期信
号分離回路116により分離された同期信号は、垂直同
期信号と水平同期信号よりなるが、ここでは説明の便宜
上Tsync信号として図示した。前記テレビ信号から
分離された画像の輝度信号成分は便宜上DATA信号と
表した。該DATA信号はシフトレジスタ114に入力
される。
【0073】シフトレジスタ114は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路113より送られる制御信号Tsftに基づいて
動作する(即ち、制御信号Tsftは、シフトレジスタ
114のシフトクロックであるということもでき
る。)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分
(電子放出素子N素子分の駆動データに相当)のデータ
は、Id1〜IdnのN個の並列信号として前記シフト
レジスタ114より出力される。
【0074】ラインメモリ115は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶するための記憶装置であ
り、制御回路113より送られる制御信号Tmryに従
って適宜Id1〜Idnの内容を記憶する。記憶された
内容は、I’d1〜I’dnとして出力され、変調信号
発生器117に入力される。
【0075】変調信号発生器117は、画像データI’
d1〜I’dnの各々に応じて表面伝導型電子放出素子
の各々を適切に駆動変調するための信号源であり、その
出力信号は、端子Doy1〜Doynを通じて表示パネ
ル111内の表面伝導型電子放出素子に印加される。
【0076】前述したように、本発明を適用可能な電子
放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有し
ている。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vth
があり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出
が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素
子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。こ
のことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、
例えば電子放出閾値以下の電圧を印加しても電子放出は
生じないが、電子放出閾値以上の電圧を印加する場合に
は電子ビームが出力される。その際、パルスの波高値V
mを変化させることにより出力電子ビームの強度を制御
することが可能である。また、パルスの幅Pwを変化さ
せることにより出力される電子ビームの電荷の総量を制
御することが可能である。
【0077】したがって、入力信号に応じて、電子放出
素子を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅
変調方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際
しては、変調信号発生器117として、一定長さの電圧
パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルス
の波高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いる
ことができる。
【0078】パルス幅変調方式を実施するに際しては、
変調信号発生器117として、一定の波高値の電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルス
の幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いる
ことができる。
【0079】シフトレジスタ114やラインメモリ11
5は、デジタル信号式のものをもアナログ信号式のもの
をも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や
記憶が所定の速度で行なわれれば良いからである。
【0080】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路116の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これには116の出力部にA/D変
換器を設ければ良い。これに関連してラインメモリ11
5の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、
変調信号発生器117に用いられる回路が若干異なった
ものとなる。即ち、デジタル信号を用いた電圧変調方式
の場合、変調信号発生器117には、例えばD/A変換
回路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パ
ルス幅変調方式の場合、変調信号発生器117には、例
えば高速の発振器及び発振器の出力する波数を計数する
計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリの
出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せた
回路を用いる。必要に応じて、比較器の出力するパルス
幅変調された変調信号を表面伝導型電子放出素子の駆動
電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加することも
できる。
【0081】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器117には、例えばオペアンプなど
を用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフ
ト回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式
の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)を
採用でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動
電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもで
きる。
【0082】このような構成をとり得る本発明を適用可
能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dox1〜Doxm、Doy1〜Doynを介し
て電圧を印加することにより、電子放出が生ずる。高圧
端子Hvを介してメタルバック95、あるいは透明電極
(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加
速された電子は、蛍光膜94に衝突し、発光が生じて画
像が形成される。
【0083】ここで述べた画像形成装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技
術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号に
ついては、NTSC方式を挙げたが入力信号はこれに限
られるものではなく、PAL、SECAM方式など他、
これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例えば、
MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用
できる。
【0084】次に、はしご型配置の電子源及び画像形成
装置について図12及び図13を用いて説明する。
【0085】図12は、はしご型配置の電子源の一例を
示す模式図である。図12において、120は電子源基
板、121は電子放出素子である。122(Dx1〜D
x10)は、電子放出素子121を接続するための共通
配線である。電子放出素子121は、基板120上に、
X方向に並列に複数個配されている(これを素子行と呼
ぶ)。この素子行が複数個配されて、電子源を構成して
いる。各素子行の共通配線間に駆動電圧を印加すること
で、各素子行を独立に駆動させることができる。即ち、
電子ビームを放出させたい素子行には、電子放出しきい
値以上の電圧を、電子ビームを放出しない素子行には、
電子放出しきい値以下の電圧を印加する。各素子行間の
共通配線Dx2〜Dx9は、例えばDx2、Dx3を同
一配線とすることもできる。
【0086】図13は、はしご型配置の電子源を備えた
画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図で
ある。130はグリッド電極、131は電子が通過する
ため空孔、132はDox1、Dox2、・・・ 、Dox
mよりなる容器外端子である。133は、グリッド電極
130と接続されたG1、G2、・・・ 、Gnからなる容
器外端子、134は各素子行間の共通配線を同一配線と
した電子源基板である。図13においては、図9、図1
2に示した部位と同じ部位には、これらの図に付したの
と同一の符号を付している。ここに示した画像形成装置
と、図9に示した単純マトリクス配置の画像形成装置と
の大きな違いは、電子源基板120とフェースプレート
96の間にグリッド電極130を備えているか否かであ
る。
【0087】図13においては、基板120とフェース
プレート96の間には、グリッド電極130が設けられ
ている。グリッド電極130は、表面伝導型放出素子か
ら放出された電子ビームを変調するためのものであり、
はしご型配置の素子行と直交して設けられたストライプ
状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応
して1個ずつ円形の開口131が設けられている。グリ
ッドの形状や設置位置は図13に示したものに限定され
るものではない。例えば、開口としてメッシュ状に多数
の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導型放
出素子の周囲や近傍に設けることもできる。容器外端子
132及びグリッド容器外端子133は、不図示の制御
回路と電気的に接続されている。
【0088】本例の画像形成装置では、素子行を1列ず
つ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。
【0089】本発明の画像形成装置は、テレビジョン放
送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等
の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光
プリンターとしての画像形成装置等としても用いること
ができる。
【0090】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳し
く説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもの
ではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素
の置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0091】[実施例1]電子放出素子として図1
(a)、(b)に示すタイプの電子放出素子を作成し
た。図1(a)は本素子の平面図を、図1(b)は断面
図を示している。また図1(a)、(b)中の記号1は
絶縁性基板、2および3は素子に電圧を印加するための
一対の素子電極、4は電子放出部を含む薄膜、5は電子
放出部を示す。なお図中のLは素子電極2と3の電極間
隔、Wは素子電極の幅を表している。
【0092】図4に示す工程に従い電子放出素子を次の
ようにして作成した。
【0093】すなわち、絶縁性基板1として石英基板を
用い、これを有機溶剤、純水により充分に洗浄後200
℃の熱風で乾燥した。該基板上に、オフセット印刷によ
り素子電極2、3を形成した(図4(a))。
【0094】このとき、インキとしては有機金属からな
るPtレジネートペーストを用いた。石英基板上のイン
キは約70℃の乾燥と約580℃の焼成によりPtから
なる素子電極として形成した。焼成後のPt電極厚さは
約1000オングストロームと薄く形成できた。また電
子放出材を配置する素子電極間の寸法は30ミクロンに
設定した。
【0095】次に、BJ方式のインクジェット装置(C
anon製 BJ−10V)を用いて、水70Wt%で
IPA+エチレングリコール+PVAが30Wt%の液
にパラジウムモノエタノールアミン(以下PAMEと略
す)が1Wt%となるように調整したものに、日本アエ
ロジル株式会社製AEROSIL300を溶媒の1Wt
%を分散したものを電子放出膜材料として、上記のよう
に処理した素子電極上に付し(図4(b))、乾燥させ
た。複数の素子について液滴付与を行った結果、いずれ
においても付与された液滴は拡がることなく、所望の位
置に再現性良く付与することができた。これを300℃
に加熱して、PdO微粒子からなる微粒子膜を形成し、
電子放出部形成用薄膜4とした(図4(c))。この微
粒子膜の平均粒径は90オングストロームであったが微
粒子膜中には〜300オングストローム程度のPd微粒
子の凝集物も見られた。さらに電極間の中央部に平均粒
径70オングストロームのシリカの微粒子の存在が確認
された。この電子放出部形成用薄膜4の膜厚は100オ
ングストローム、シート抵抗値は5×104 Ω/□であ
った。
【0096】次に、素子電極2、3間に電圧を印加し、
電子放出部形成用薄膜4を通電処理(フォーミング処
理)することにより、電子放出部5を作成した(図4
(d))。フォーミング処理の電圧波形を図5に示す。
図5中、T1およびT2は電圧波形のパルス幅とパルス
間隔であり、本実施例ではT1を1m秒、T2を10m
秒とし、三角波の波高値(フォーミング時のピーク電
圧)は4Vとし、フォーミング処理は約1×10-6to
rrの真空雰囲気下で60秒行った。さらに還元処理に
より酸化パラジウムを金属パラジウムに還元した。次
に、アセトン分圧:1×10-2Pa、矩形波パルス幅:
100マイクロ秒、パルス間隔:10ミリ秒、パルス波
高値:0〜14Vまで5V/分で昇圧、の条件で活性化
処理を行なった。このようにして作成された電子放出部
5はパラジウム元素を主成分とする微粒子が分散配置さ
れた状態となり、その微粒子の平均粒径は40オングス
トロームであった。
【0097】以上のようにして作成された素子につい
て、その電子放出特性の測定を行った。図6に測定評価
機能を備えた真空処理装置の概略構成図を示す。図6に
おいて、1は絶縁性基板、2及び3は素子電極、4は電
子放出部を含む薄膜、5は電子放出部を示し、61は素
子に電圧を印加するための電源、60は素子電流Ifを
測定するための電流計、64は素子より発生する放出電
流Ieを測定するためのアノード電極、63はアノード
電極64に電圧を印加するための高圧電源、62は放出
電流を測定するための電流計である。電子放出素子の上
記素子電流If、放出電流Ieの測定にあたっては、素
子電極2、3間に電源61及び電流計60を接続し、該
電子放出素子の上方に電源63及び電流計65を接続し
たアノード電極64を配置している。また本電子放出素
子及びアノード電極64は真空装置内に設置されてお
り、その真空装置には不図示の排気ポンプ及び真空計等
の真空装置に必要な機器が具備されており、所望の真空
下で本素子の測定評価を行えるようになっている。なお
本実施例では、アノード電極と電子放出素子間の距離を
4mm、アノード電極の電位を1kV、電子放出特性測
定時の真空装置内の真空度を1×10-6torrとし
た。
【0098】以上のような測定評価装置を用いて、本電
子放出素子の電極2、3間に素子電圧を印加し、その時
に流れる素子電流If及び放出電流Ieを測定したとこ
ろ、図7に示したような電流−電圧特性が得られた。本
素子では、素子電圧8V程度から急激に放出電流Ieが
増加し、素子電圧16Vでは素子電流Ifが1.6m
A、放出電流Ieが0.8μAとなり、電子放出効率η
=Ie/If(%)は0.05%であった。
【0099】以上説明した実施例中、電子放出部を形成
する際に、素子の電極間に三角波パルスを印加してフォ
ーミング処理を行っているが、素子の電極間に印加する
波形は三角波に限定することはなく、矩形波など所望の
波形を用いても良く、その波高値及びパルス幅・パルス
間隔等についても上述の値に限ることなく、電子放出部
が良好に形成されれば所望の値を選択することができ
る。
【0100】[実施例2]よく洗浄した青板ガラスから
なる基板上にレジネートペーストインキのオフセット印
刷、焼成によって厚さ1000オングストロームのPt
素子電極パターンを形成した。このように形成した素子
電極上に、BJ方式のインクジェット装置を用いて、実
施例1と同様の電子放出膜材料中にAEROSIL30
0CFを1Wt%分散させた溶液を付与し乾燥した。こ
のAEROSIL300CFはAEROSIL300同
様、平均粒径70オングストロームで分散性に優れてい
るものである。この後は、実施例1と同様にして電子放
出素子を作成した。
【0101】本素子では、素子電圧7.9Vから急激に
放出電流Ieが増加し、素子電圧16Vでは素子電流I
fが1.6mA、放出電流Ieが0.8μAとなり、電
子放出効率η=Ie/If(%)は0.05%であっ
た。
【0102】[実施例3]16行16列の256個の素
子電極を実施例1と同様に作製し、次にマトリクス上配
線と下配線及びこの両者の交差部で両者を電気的に絶縁
する層間絶縁層を形成した基板(図8)の各対向電極に
対してそれぞれ実施例1と同様にして酸化Pdを形成
し、実施例1と同様にしてフォーミング、活性化処理を
行い電子源基板とした。
【0103】次にこのようにして作成した電子放出素子
を用いて、図9に示すような画像形成装置の表示パネル
を作成した。すなわち、上記に示す方法で電子放出部形
成用薄膜を形成した基板81をリアプレート91に固定
した後、基板81の5mm上方に、フェースプレート9
6(ガラス基板93の内面に蛍光膜94とメタルバック
95等が形成されて構成される)を支持枠92を介して
配置し、フェースプレート96、支持枠92、リアプレ
ート91の接合部にフリットガラスを塗布し、大気中で
400℃ないし500℃で10分以上焼成することで封
着した。また、リアプレート91への基板81の固定も
フリットガラスで行った。図9において84は電子放出
部、82、83は表面伝導型電子放出素子の一対の素子
電極と接続されたX方向配線及びY方向配線である。端
子Dox1ないしDox16と端子Doy1ないしDo
y16を通じて各素子に時分割で所定電圧を印加し、端
子HVを通じてメタルバックに高電圧を印加することに
よって、任意のマトリクス画像パターンを表示すること
ができた。
【0104】[比較例]実施例1と同様に絶縁基板上に
オフセット印刷により素子電極2、3を作成した。次
に、酢酸パラジウム−モノエタノールアミンを12gの
水に溶解したものをBJ付与用水溶液とした。この水溶
液を素子電極間2、3に付与した。複数の素子について
液滴付与を行なったところ、数個の素子において所望の
位置以外に液滴の拡がりが見られ、素子間の膜厚のバラ
ツキが見られた。次に、これを通電フォーミングする際
に、本比較例ではフォーミングのピーク電圧は5Vと実
施例に比べ20%程度高くする必要があった。
【0105】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、電
子放出部形成用薄膜の作成時に電子放出部形成用材料の
溶液中にシリカ微粒子等の酸化微粒子を混入させること
により、この液滴を基板に付与する工程において、液滴
の拡がりを抑制することができる。そのため、所定の位
置に電子放出膜を再現性良く作成できる。さらに、通電
フォーミングによる電子放出部作成の際に電子放出部の
位置制御が可能となり、またその際のフォーミングパワ
ーも小さくすることができる。そのため、大面積にわた
って多数の電子放出素子を作成する場合でも均一な電子
放出特性を得ることができ、良好な表示素子、画像形成
装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
の構成を示す模式的平面図および正面図である。
【図2】 本発明で使用しうる電子源形成用材料吐出ヘ
ッドの構成の一例を示す模式図である。
【図3】 本発明で使用しうる並列型電子源形成用材料
吐出ヘッドの構成の一例を示す模式図である。
【図4】 本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
の作製方法の一例を示す模式図である。
【図5】 本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
の製造に際して採用できる通電フォーミング処理におけ
る電圧波形の一例を示す模式図である。
【図6】 測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を
示す模式図である。
【図7】 本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
についての放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vf
の関係の一例を示すグラフである。
【図8】 本発明を適用可能な単純マトリクス配置の電
子源の一例を示す模式図である。
【図9】 本発明を適用可能な単純マトリクス配置の画
像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図10】 図9の装置に使用しうる蛍光膜の一例を示
す模式図である。
【図11】 本発明で適用しうる画像形成装置において
NTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行なうための
駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図12】 本発明を適用可能な梯子配置の電子源の一
例を示す模式図である。
【図13】 本発明を適用可能な梯子配置の画像形成装
置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図14】 Hartwellの表面伝導型電子放出素
子の一例を示す模式図である。
【図15】 AEROSIL300(日本アエロジル社
製)の粒子構造を示す電子顕微鏡写真と各種AEROS
ILの一次粒子分布曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
1:基板、2,3:素子電極、4:導電性薄膜、5:電
子放出部、21:ヘッド本体、22:ヒーターまたはピ
エゾ素子、23:インク流路、24:ノズル、25:イ
ンク供給管、20:インク溜め、60:素子電極2、3
間の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するため
の電流計、61:電子放出素子に素子電圧Vfを印加す
るための電源、62:電子放出部5・アノード電極64
間を流れる放出電流Ieを測定するための電流計、6
3:アノード電極64に電圧を印加するための高圧電
源、64:素子の電子放出部より放出される放出電流I
eを捕捉するためのアノード電極、65:真空装置、6
6:排気ポンプ、81:電子源基板、82:X方向配
線、83:Y方向配線、84:表面伝導型電子放出素
子、85:結線、91:リアプレート、92:支持枠、
93:ガラス基板、94:蛍光膜、95:メタルバッ
ク、96:フェースプレート、98:外囲器、101:
黒色導電材、102:蛍光体、111:表示パネル、1
12:走査回路、113:制御回路、114:シフトレ
ジスタ、115:ラインメモリ、116:同期信号分離
回路、117:変調信号発生器、Vx及びVa:直流電
圧源、120:電子源基板、121:電子放出素子、1
22(Dx1〜Dx10):前記電子放出素子を配線す
るための共通配線、130:グリッド電極、131:電
子が通過するため空孔、132(Dox1、Dox2、
・・・ 、Doxm):容器外端子、133:グリッド電極
130と接続された容器外端子。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上の対向する電極間に有機金属化合
    物を含む水溶液の液滴を付与する工程と、前記基板を加
    熱焼成して前記液適が付与された位置に導電性薄膜を形
    成して電子放出部とする工程とを有する電子放出素子の
    製造方法において、前記水溶液中に酸化物微粒子を混在
    させることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記の酸化物微粒子が気相反応により作
    られたシリカ微粒子であることを特徴とする請求項1記
    載の電子放出素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記のシリカ微粒子の粒径が10〜10
    00オングストロームであることを特徴とする請求項2
    記載の電子放出素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記のシリカ微粒子の含有量が溶媒に対
    し0.1〜10Wt%であることを特徴とする請求項2
    または3記載の電子放出素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記の液滴付与はインクジェット方式に
    より行うことを特徴とする請求項1〜4記載の電子放出
    素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記インクジェット方式はバブルジェッ
    ト方式またはピエゾジェット方式であることを特徴とす
    る請求項5記載の電子放出素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記液滴を連続的に付与して前記導電性
    薄膜を線状または面状に形成することを特徴とする請求
    項1〜6記載の電子放出素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7いずれかの製造方法に従い
    製造されたことを特徴とする電子放出素子。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の電子放出素子を用いたこ
    とを特徴とする表示素子。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の表示素子を用いたこと
    を特徴とする画像形成装置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2000022643A1 (fr) * 1998-10-14 2000-04-20 Canon Kabushiki Kaisha Dispositif d'imagerie et son procede de production

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2000022643A1 (fr) * 1998-10-14 2000-04-20 Canon Kabushiki Kaisha Dispositif d'imagerie et son procede de production

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