JP2000226638A - フェライト主体組織鋼およびその製造方法 - Google Patents

フェライト主体組織鋼およびその製造方法

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JP2000226638A
JP2000226638A JP2967499A JP2967499A JP2000226638A JP 2000226638 A JP2000226638 A JP 2000226638A JP 2967499 A JP2967499 A JP 2967499A JP 2967499 A JP2967499 A JP 2967499A JP 2000226638 A JP2000226638 A JP 2000226638A
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steel
ferrite
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cooling
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Toshiyuki Hoshino
俊幸 星野
Kenichi Amano
虔一 天野
Setsuo Takagi
節雄 高木
Akihiro Tsuchiyama
聡宏 土山
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼素材中のCu含有量及び熱間加工条件の適正
化を図ることにより、 制御圧延−制御冷却法のように熱
間加工後に冷却するときの冷却速度を大きく設定しなく
ても、鋼組織を容易に細粒化して強度−靭性のバランス
が良好なフェライト主体組織鋼を提供することにある。 【解決手段】 この発明のフェライト主体組織鋼は、C
u:1.0 〜3.0 mass%を含有し、平均結晶粒径が10μm
以下のフェライトを主体とする組織を有することを特徴
とする。この発明のフェライト主体組織鋼の製造方法
は、Cu:1.0 〜3.0 mass%を含有する組成になる鋼素材
を、オーステナイト域に加熱した後、少なくともTo-150
℃〜To+150℃の温度域で加工率30%以上の熱間加工を行
ない、その後、冷却することを特徴とする。ここでTo温
度は、該鋼組成において面心立方構造時および体心立方
構造時の鋼の化学的自由エネルギーが等しくなる温度で
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、構造用鋼とし
て、鋼線材、棒鋼、形鋼、薄鋼板、厚鋼板および鋼管の
各種形態で用いられ、フェライト結晶粒径が10μm 以下
であるフェライト主体組織鋼およびその製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、鋼材の強化方法としては、固溶強
化方法、変態強化方法、析出強化方法及び結晶粒の微細
化による強化方法が知られている。
【0003】特に結晶粒の微細化による強化方法は、靭
性を低下させることなく強度を向上させることが可能で
あって、 強度−靭性の良好なバランスを確保する上で極
めて有効な方法であり、加えて、 他の強化法と比較し
て、 鋼中に高価な合金元素の添加を低位に抑制できるた
め、低コストで高強度の鋼材を製造できる等の利点があ
る。
【0004】結晶粒微細化による上記した効果を工業的
に利用した方法としては、熱間圧延条件およびその後の
冷却速度を制御する制御圧延−制御冷却(又は加速冷
却)法が知られており、この方法を低合金鋼に適用した
場合には、 微細な組織が得られるが、その平均結晶粒径
の一般的な水準はSi-Mn 鋼において、 現状では約15〜20
μm 程度である。
【0005】現状以上に結晶粒を微細化するための手段
としては、例えば、 特開昭58−123823号公報、特開昭59
−205447号公報、特公昭62−39228 号公報、特公昭62−
5212号公報、特公昭62−7247号公報に記載されており、
これらの公報には、3〜4μm 程度の微細フェライト粒
を得るための熱間圧延条件(温度、庄下率)および冷却
条件が開示されている。
【0006】上記微細フェライト粒を得るには、 Ar1
Ar3+100 ℃の温度域での累積圧下量を75%以上と高圧
下にする必要がある他、その後の冷却速度を20℃/s以上
と大きくする必要があるが、このような条件を、構造用
鋼の製造方法として工業的に適用するのは実際上困難で
ある。特に、20℃/s以上の冷却速度を確保することは、
現在の制御冷却設備の設備能力では、鋼材の厚さが薄い
ものを除き困難であるなどの問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、上
述した従来技術の問題点を解決し、平均結晶粒径10μm
以下のフェライト主体組織鋼およびそれを容易に製造す
ることができる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
課題を解決するために、鋭意検討を行なったところ、所
定量以上のCuを添加した鋼は結晶粒径が顕著に微細化す
ることを新たに見い出し、この発明を完成させるに至っ
た。以下にこの発明を完成させるに至るまでの経緯を述
べる。
【0009】本発明者らは、鋼にCuを添加し、熱間加工
条件およびその後の冷却速度を変化させて鋼組織を調査
し、以下の知見を得た。
【0010】すなわち、 Cu含有量((1) 所定量 (具体的
には1mass%)よりも少ない鋼の場合には、 Cu含有量)
が増大するに従って顕著となり、熱間圧延条件によって
はCuを含有しない鋼の約1/10の結晶粒径も容易に得るこ
とができるものの、制御圧延−制御冷却法で製造した鋼
の結晶粒径(15μm 程度)よりも小さくすることは難し
いことが判明した。
【0011】また、所定量以上のCuを添加した鋼の場合
には、 特に熱間加工条件の適正化を図りさえすれば、 冷
却速度にはほとんど依存せず、幅広い冷却速度範囲にわ
たって、制御圧延−制御冷却法で製造した鋼の結晶粒径
に比べて同等か又はそれよりも小さい結晶粒径の微細粒
が得られることを見出した。
【0012】従来の鋼の場合には、 結晶粒径は冷却速度
の影響を顕著に受けるため、かかる鋼の組織を微細化す
るには加速冷却を施すのが一般的であることを考慮すれ
ば、所定量以上のCuを添加した鋼の組織の微細化が冷却
速度には依存しないという現象を見出したことは、 工業
的には極めて重要である。
【0013】すなわち、かかるCu添加鋼は、サイズに依
らず結晶粒を微細化することを可能にするばかりでな
く、この微細化を達成する手段として、加速冷却をあえ
て行なう必要もなくなるからである。
【0014】尚、 加速冷却が不要になることは以下の点
で有利である。つまり、周知のように鋼板を加速冷却す
ると、熱応力によって鋼板が変形し、その後の矯正が必
要となる場合がある他、引張りの残留応力が発生し疲労
強度を低下させる等の問題が発生する場合があり、材質
以外の点から言えば、加速冷却は必ずしも好ましくな
く、よって、加速冷却が不要になることはかかる問題が
発生しない点で有利である。
【0015】このように所定量以上のCuを添加した鋼に
おいて組織が微細化するのは、下記1)〜4)の要因が複合
した結果であると考えられる。
【0016】1)加熱時のγ (オーステナイト)粒の成長
の抑制 オーステナイト域に加熱した際の初期γ粒の細粒化は、
組織微細化のために必須であるが、Cuの添加によるSolu
te drag 効果により粒成長が抑制されるため初期粒径は
微細となる。
【0017】2)再結晶γ (オーステナイト)粒の粒成長
の抑制 比較的高温域(具体的にはTo+150℃以上の温度域)での
加工によりγは再結晶するが、Cuの添加によるsolute d
rag 効果により再結晶後のγ粒の成長が抑制される。γ
→α変態においては、粒界が変態の核形成サイトとなる
ので、γ粒径が微細化されることにより変態後の鋼組織
は微細化される。
【0018】3)回復、再結晶速度の遅延 1)よりも低温域(具体的にはTo-150℃〜To+150℃の温度
域)で加工された場合、Cu添加によりオーステナイトの
積層欠陥エネルギーが低下するので、回復、再結晶が遅
延する。このため、加工により導入された歪みが変態ま
で保持される。この歪みは、変態時にはγ粒界に加えて
さらに粒内にも変態の核形成サイトを増加させるので変
態後の組織はさらに微細化される。
【0019】4)変態温度の低下および変態時における変
態界面の移動速度の低下 鋼の微細化には、核生成速度の増加と変態界面の移動速
度の低下が重要である。核生成速度は過冷度とともに増
加するが、Cu添加は変態温度を低下させて過冷度を増加
させる作用がある。また、γ→α変態時にCuが変態界面
に濃縮し、局所的に変態の駆動力(Driving force )を
低下させる結果、変態界面の移動速度が低下しこれが微
細化に寄与する。
【0020】上述した要因1)〜4)が、熱間圧延条件に応
じて作用する結果、Cu添加により鋼組織の顕著な微細化
が達成されるのである。
【0021】さらに、本発明者らは、上記Cu添加鋼を用
い、 通常のSi−Mn鋼に制御圧延−制御冷却法を適用して
得られる結晶粒径と同等レベルの結晶粒を得るための条
件を鋭意検討した結果、ある特定温度範囲で特定の熱間
加工を施すことにより、上記Si−Mn鋼の結晶粒径よりも
小さい10μm 以下の結晶粒が得られることを見出した。
【0022】この発明は、上述した新たな知見に基づき
なされたものであって、その要旨とするところは下記の
通りである。
【0023】すなわち、 1) Cu:1.0 〜3.0 mass%を含有し、平均結晶粒径が10
μm 以下のフェライトを主体とする組織を有することを
特徴とするフェライト主体組織鋼。
【0024】2) 上記1)において、さらにC≦0.1 mass
%、Si≦0.8 mass%、Mn≦2.O mass%、Cr : 0.01 〜3
mass%、Mo : 0.01 〜3mass%、Ni : 0.5〜3 mass%、
Ti :0.005〜0.1 mass%、Nb : 0.005〜0.1 mass%、V
: 0.005〜0.1 mass%、Al≦0.10mass%、Ca : 0.001〜
0.Ol mass %、REM : 0.001〜0.02 mass %、B: 0.000
3〜0.01 mass %の1種又は2種以上を含有するフェラ
イト主体組織鋼。
【0025】3) Cu:1.0 〜3.0 mass%を含有する鋼素
材を、オーステナイト域に加熱した後、少なくともTo-1
50℃〜To+150℃の温度域で加工率30%以上の熱間加工を
行ない、その後、冷却することを特徴とするフェライト
主体組織鋼の製造方法。ここで、To温度は、該鋼組成に
おいて、面心立方構造時および体心立方構造時の鋼の化
学的自由エネルギーが等しくなる温度である。
【0026】4) 上記3)において、鋼素材が、さらにC
≦0.1 mass%、Si≦0.8 mass%、Mn≦2.O mass%、Cr :
0.01 〜3 mass%、Mo : 0.01 〜3mass%、Ni : 0.5〜
3 mass%、Ti : 0.005〜0.1 mass%、Nb : 0.005〜0.1
mass%、V : 0.005〜0.1 mass%、Al≦0.10mass%、Ca
: 0.001〜0.Ol mass %、REM : 0.001〜0.02 mass%、
B: 0.0003〜0.01 mass %の1種又は2種以上を含有す
るフェライト主体組織鋼の製造方法。
【0027】
【発明の実施の形態】まず、この発明に従うフェライト
主体組織鋼の組成成分及び鋼組織の限定理由について説
明する。
【0028】1)鋼組成成分 Cu:1.0 〜3.0 mass% Cuは、この発明の必須成分であるので積極的に添加する
必要がある。しかし、Cu含有量は、 1mass%未満だと10
μm 以下のフェライト結晶粒径が得られず、また、3ma
ss%を超えて含有させると、マルテンサイト変態が生じ
やすくなって、この発明が目的とするフェライト主体組
織が得られなくなることから、1.0〜3.0mass%とす
る。
【0029】この発明に従うフェライト主体組織鋼は、
その組成成分についてはCu成分のみを上記含有量の範囲
内に限定しさえすれば、他の成分については特に限定を
必要としないが、C≦0.1 mass%、Si≦0.8 mass%、Mn
≦2.O mass%、Cr : 0.01 〜3 mass%、Mo : 0.01 〜3
mass%、Ni : 0.5〜3 mass%、Ti : 0.005〜0.1 mass
%、Nb : 0.005〜0.1 mass%、V : 0.005〜0.1 mass
%、Al≦0.10mass%、Ca :0.001〜0.Ol mass %、REM :
0.001〜0.02 mass %、B: 0.0003〜0.01 mass%の1
種又は2種以上を含有することがより好適である。
【0030】C:0.1mass %以下 Cは、強度確保の点で有効な成分であるが、 その含有量
が0.1mass %を超えると、Cuの効果により変態点が低下
した場合にマルテンサイト変態が発生しやすくなり、 こ
の発明が目的とするフェライト主体組織を得ることが難
しくなる傾向があることから、C含有量は0.1mass %以
下にするのが好ましい。
【0031】Si:0.8 mass%以下 Siは、固溶強化により、フェライト相の強度を向上させ
る効果を有する成分であるため添加してもよいが、 その
含有量が0.8 mass%を超えると、溶接性を悪化させる傾
向のある成分であるため、溶接が行なわれる用途に使用
する場合には、Si含有量を0.8 mass%以下に制限するの
が好ましい。
【0032】Mn:2.0 mass%以下 Mnは、焼入性を向上させ、鋼の変態点を低下させる効果
があるので、Cuの補助的な成分として用いることができ
る。しかし、Mnを過剰に添加すると、 マルテンサイト変
態が発生しやすくなることから、Mn含有量を2.0 mass%
以下に制限することが好ましい。
【0033】Cr:0.01〜3mass% Crは、0.01mass%以上の添加により変態点を低下させる
効果があるが、 3 mass%を超えて添加すると、マルテン
サイト変態が生じやすくなるため、その含有量を0.01〜
3 mass%にすることが好ましい。
【0034】Mo:0.01〜3 mass % Moは、0.01mass%以上の添加により変態点を低下させる
効果があるが、3 mass %を超えて添加すると、マルテ
ンサイト変態を生じやすくなるため、その含有量を0.01
〜3 mass%にすることが好ましい。
【0035】Ni:0.5 〜3 mass% Niは、Cuの熱間脆性を抑制する効果があるので、 熱間脆
性が問題となる場合には有効な添加成分であり、Cu含有
量の半分以上の量を添加することが好ましい。このた
め、この発明のCu含有量の下限値が1.0 mass%であるこ
とから、Niを0.5mass %以上添加することが好ましい。
尚、 Niを3 mass%を超えて添加すると、 マルテンサイト
変態を生じやすくなり、この発明の目的を達成すること
が難しくなる傾向があることから、Ni含有量の上限を3
mass%にすることが好ましい。
【0036】Ti:0.005 〜0.1 mass% Tiは、0.005 mass%以上の添加により、Ti(C,N)を
形成してオーステナイト加熱時のオーステナイト粒の粗
大化を抑制する効果があるため、 靭性向上のために添加
してもよいが、0.1 mass%を超えて添加すると、 却って
靭性を劣化させるおそれがあることから、その含有量の
上限を0.1 mass%にするのが好ましい。
【0037】Nb:0.005 〜0.1 mass% Nbは、0.005 mass%以上の添加により、Nb(C,N)を
形成してオーステナイト粒成長を抑制するとともに、粒
界に偏析して変態点を低下させる効果があるため添加し
てもよいが、0.1 mass%を超えて添加しても上記効果が
飽和してコストの上昇を招くだけであることから、その
含有量の上限を0.1 mass%にするのが好ましい。
【0038】V:0.005 〜0.1 mass% Vは、0.005 mass%以上の添加により、V(C,N)が
析出して強度の向上に寄与する成分であるため添加して
もよいが、0.1 mass%を超えて添加しても上記効果が飽
和してコストの上昇を招くだけであることから、その含
有量の上限を0.1 mass%にするのが好ましい。
【0039】Al:0.10mass%以下 Alは、強力な脱酸作用を持ち、鋼の清浄性を向上させる
効果を有する成分であるため添加してもよいが、 0.10ma
ss%を超えて添加した場合には、 鋼の清浄性がむしろ劣
化する傾向があることから、その含有量の上限を0.10ma
ss%とするのが好ましい。
【0040】Ca:0.001 〜0.01mass% Caは、0.001 mass%以上の添加により硫化物の形態制御
の効果があるが、 0.01mass %を超えて添加すると鋼中
に非金属介在物を形成し、 鋼の性質を悪化させる傾向が
あるため,その含有量の上限を0.01mass%にするのが好
ましい。
【0041】REM :0.001 〜0.02mass% REM は、0.001 mass%以上の添加によりオーステナイト
粒の粒成長を抑制し、オーステナイト粒を微細化する効
果があるが、0.02 mass%を超えて添加すると鋼の清浄性
を悪化させる傾向があるため、その含有量の上限を0.02
0 mass%にするのが好ましい。
【0042】B:0.0003〜0.01mass% Bは、0.0003mass%以上の添加により鋼の変態点を著し
く低下させるので、この発明においては有効な成分であ
るが、 0.01mass%を超えて添加するとB化合物を形成し
て靭性を劣化させる傾向があるため、その含有量の上限
を0.01 mass %にするのが好ましい。
【0043】2)鋼組織 この発明の鋼においては、その鋼組織を、 強度−靭性の
良好なバランスを確保するのに有利な組織、 すなわち、
平均結晶粒径10μm 以下のフェライト主体組織にするこ
とを必須の発明特定事項とする。
【0044】尚、 ここでいう「フェライト主体組織」
は、具体的には、 全てがフェライト組織である場合は勿
論のこと、 面積率で10%以下であれば、パーライト、マ
ルテンサイト等の組織が混入する場合も含むこととす
る。
【0045】次に、この発明に従うフェライト主体組織
鋼の製造方法において限定した鋼素材の組成成分及び製
造条件について、それらの限定理由について説明する。
【0046】1)鋼素材の組成成分 鋼素材の組成成分の限定理由は、 上述したフェライト主
体組織鋼の組成成分の限定理由とほぼ同様であるので説
明を省略する。
【0047】2)製造条件 a)熱間加工前の加熱 この発明では、上記組成になる鋼素材をオーステナイト
域に加熱することを必須の発明特定事項とする。すなわ
ち、上記鋼素材をオーステナイト域に加熱することによ
って、 Cuの添加によるSolute drag 効果により粒成長
が抑制され初期粒径が微細になるからである。尚、 加熱
温度としては、 900 〜1200℃の範囲にすることが好適で
ある。
【0048】b)熱間加工条件 この発明の製造方法では、 少なくともTo-150℃〜To+150
℃の温度域で加工率30%以上の熱間加工を行なうことを
必須の発明特定事項とする。これは、To+150℃を超え
る温度域での加工のみではこの発明が目標とする10μm
以下のフェライト粒径が得られなくなるためであり、ま
た、To−150 ℃を下回る温度では、変態後の加工となる
ため変態後の組織に歪みが導入され、靱性が顕著に低下
するからである。
【0049】さらに、To−150 ℃〜To+150 ℃の温度域
における加工率を30%以上とするのは、これを下回る加
工率ではこの発明が目標とする10μm 以下の結晶粒が得
られないためである。
【0050】尚、 ここでいう「熱間加工」は、熱間圧延
や丸棒の加工等だけには限定されず、例えば、 鍛造やス
エージングのような他の加工方法にも適用できるのは言
うまでもない。
【0051】また、「加工率」とは、加工による被加工
材の断面積の減少率をいう。具体的には、 板の圧延の場
合には、加工率は圧下率を意味し、 また、丸棒等の加工
の場合には、加工率は減面率を意味する。
【0052】c) その他の製造条件 その他の製造条件としては、特に限定は必要としない
が、 例えば、 上記熱間加工を施した後に冷却するときの
冷却速度としては、生産性の観点から0.005 ℃/s以上
にすることが好ましい。尚、この冷却速度は、 従来の制
御圧延−制御冷却法のようにあえて大きくする必要はな
い。
【0053】
【実施例】次に、この発明を以下に示す実施例に基づい
て説明するが、 この発明はこの実施例だけには限定され
ない。
【0054】(実施例1)表1 に示すように、異なるCu
含有量及びT0 温度を有する鋼素材A〜Eを溶製し、幅
30mm×長さ70mm×厚さ100mm の試験材を作製した後、上
記各試験材はいずれも、1085℃に加熱した後、 実験圧延
機により、To−150 ℃〜To+150 ℃の温度域を超える温
度である1070℃で圧下率33%の圧延と、To−150 ℃〜To
+150 ℃の温度域である920 ℃で圧下率30%の圧延を順
次行ない、その後、表 2に示す種々の冷却速度で冷却す
ることにより鋼No.1〜35を製造した。
【0055】最終的に得られた各鋼の平均フェライト粒
径を表2に付記し、加えて、 この平均フェライト粒径を
熱間加工後の冷却速度に対して両対数プロットしたもの
を図1に示す。尚、 鋼の平均フェライト粒径の測定は、
光学顕微鏡により1mm2 中のフェライト結晶粒の個数を
測定することによって行なった。
【0056】また、比較のため、従来の制御圧延−制御
冷却プロセスに適用されるSi−Mn鋼素材である鋼素材F
を溶製し、幅30mm×長さ70mm×厚さ100 mmの試験材を作
製した後、この試験材を、実際の制御圧延−制御冷却の
条件、すなわち、1085℃に加熱した後、 実験圧延機によ
り、1070℃で圧下率40%の圧延と、820 ℃で圧下率60%
の圧延を順次行ない、その後、20℃/sで冷却すること
によって、鋼No.36 を製造し、この鋼についても同様に
平均フェライト粒径を測定したので、その結果について
も併せて表2及び図1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】表2及び図1の結果から、発明例である鋼
No15〜35はいずれも、平均結晶粒径が10μm 以下であっ
た。また、Cu含有量がこの発明の適正範囲内である鋼素
材C〜Eにおいて、同種の鋼素材を用いて製造した鋼同
士で比較すると、 平均結晶粒径は、熱間加工後に行なう
冷却のときの冷却速度にはほとんど依存しないことが理
解される。
【0060】一方、 Cu含有量がこの発明の適正範囲外で
ある鋼素材A及びBを用いて製造した鋼の場合(鋼No.
1 〜14)には、 前記冷却速度を大きくするほど平均結晶
粒径が小さくなる傾向が認められるが、 前記冷却速度が
最も大きい鋼No.1及び8 でも、平均結晶粒径はそれぞれ
33.7μm 及び18.9μm であり、従来例である鋼No.36の
平均結晶粒径(15.7μm )と同等レベルにまでは、 細粒
化が図れていない。
【0061】このように、この発明では、 前記冷却速度
に関係なく細粒組織が得られることが理解される。
【0062】(実施例2)次に、 Cu含有量がこの発明の
適正範囲である鋼素材C〜Eを溶製し、幅30mm×長さ70
mm×厚さ100mm の試験材を作製した後、上記各試験材は
いずれも、1085℃に加熱した後、 実験圧延機により、To
−150 ℃〜To+150 ℃の温度域を超える温度である1050
〜1080℃の温度域で圧下率33%の圧延を行ない、 次い
で、 To-150℃〜To+150℃の温度域にある 820〜950 ℃の
温度域で表3に示す種々の圧下率の圧延を行ない、その
後、冷却速度 1℃/sで冷却することにより鋼No.37 〜
57を製造した。
【0063】
【表3】
【0064】最終的に得られた各鋼の平均フェライト粒
径を表3に付記し、加えて、 この平均フェライト粒径
を、To-150℃〜To+150℃の温度域(820 〜950 ℃の温度
域)での圧下率に対して片対数プロットしたものを図2
に示す。
【0065】表 3及び図 2の結果から、 To-150℃〜To+1
50℃の範囲内での加工率がこの発明の適正範囲(30%以
上)である鋼No.39 〜43,46 〜50及び53〜57はいずれ
も、平均結晶粒径が10μm 以下と顕著に微細化してお
り、加えて、 加工率のさらなる増加に伴いより一層の微
細化が進行していることが理解される。
【0066】一方、 To-150℃〜To+150℃の範囲内での加
工率がこの発明の適正範囲外(30%未満)である鋼No.3
7,38,44,45,51 及び52はいずれも、従来例である鋼No.3
6 の平均結晶粒径(15.7μm )よりも大きくなり、細粒
化が図れていない。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、特に鋼素材中のCu含有量及び熱間加工条件の適正化
を図ることにより、 制御圧延−制御冷却法のように熱間
加工後に冷却するときの冷却速度を大きく設定しなくて
も、容易に細粒化(平均結晶粒径10μm 以下)したフェ
ライト主体組織を得ることができ、 これによって、強度
−靭性のバランスが良好な構造用鋼を提供することがで
きる。
【0068】また、この発明の製造方法は、 前記冷却速
度やサイズにはほとんど関係なく、容易に微細粒組織を
得ることが可能であることから、その工業的な利用価値
は非常に大きいと言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】平均フェライト粒径と熱間加工後の冷却速度と
の関係を示す図である。
【図2】平均フェライト粒径とTo-150℃-To+150 ℃の範
囲内(820 〜950 ℃の温度域)での圧下率との関係を示
す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高木 節雄 福岡県大野城市大城5−14−23 (72)発明者 土山 聡宏 福岡県福岡市東区原田2丁目9−30 コー ポ嶋301 Fターム(参考) 4K032 AA01 AA02 AA04 AA08 AA11 AA12 AA15 AA16 AA19 AA20 AA22 AA23 AA24 AA31 AA35 AA36 AA40 BA01 BA02 CA01 CA02 CB01 CB02 CC03 CC04 CD01 CD02 CD03

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cu:1.0 〜3.0 mass%を含有し、平均結
    晶粒径が10μm 以下のフェライトを主体とする組織を有
    することを特徴とするフェライト主体組織鋼。
  2. 【請求項2】 請求項1において、さらにC≦0.1 mass
    %、Si≦0.8 mass%、Mn≦2.O mass%、Cr : 0.01 〜3
    mass%、Mo : 0.01 〜3 mass %、Ni : 0.5〜3mass
    %、Ti : 0.005〜0.1 mass%、Nb : 0.005〜0.1 mass
    %、V : 0.005〜0.1mass%、Al≦0.10mass%、Ca : 0.
    001〜0.Ol mass %、REM : 0.001〜0.02 mass%、B:
    0.0003〜0.01 mass %の1種又は2種以上を含有するフ
    ェライト主体組織鋼。
  3. 【請求項3】 Cu:1.0 〜3.0 mass%を含有する鋼素材
    を、オーステナイト域に加熱した後、少なくともTo-150
    ℃〜To+150℃の温度域で加工率30%以上の熱間加工を行
    ない、その後、冷却することを特徴とするフェライト主
    体組織鋼の製造方法。ここで、To温度は、該鋼組成にお
    いて、面心立方構造時および体心立方構造時の鋼の化学
    的自由エネルギーが等しくなる温度である。
  4. 【請求項4】 請求項3において、鋼素材が、さらにC
    ≦0.1 mass%、Si≦0.8mass%、Mn≦2.O mass%、Cr :
    0.01 〜3 mass%、Mo : 0.01 〜3mass%、Ni :0.5〜3
    mass%、Ti : 0.005〜0.1 mass%、Nb : 0.005〜0.1 ma
    ss%、V : 0.005〜0.1 mass%、Al≦0.10mass%、Ca :
    0.001〜0.Ol mass %、REM : 0.001〜0.02 mass %、
    B: 0.0003〜0.01 mass %の1種又は2種以上を含有す
    るフェライト主体組織鋼の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101311048B1 (ko) 2011-08-29 2013-09-24 현대제철 주식회사 탄소강 및 그 제조 방법
KR101517654B1 (ko) 2012-11-15 2015-05-06 영남대학교 산학협력단 이속압연 공정을 통한 고강도 페라이트강 판재의 제조방법

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