JP2000223373A - 分極性電極及びその製造方法並びに分極性電極を用いた電気二重層コンデンサ及びその製造方法 - Google Patents

分極性電極及びその製造方法並びに分極性電極を用いた電気二重層コンデンサ及びその製造方法

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JP2000223373A
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polymer material
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electric double
activated carbon
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Takayuki Saito
貴之 齋藤
Yukari Kibi
ゆかり 吉備
Ryuichi Kasahara
竜一 笠原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電気二重層コンデンサにおいて、分極性電極
と集電体との接触抵抗を低減する。 【解決手段】 未架橋の高分子材料と導電性付与材から
なる集電体1Bと、粉末状又は繊維状活性炭1Cを未架
橋の高分子材料で結合しかつ集電体の少なくとも片側に
配置した分極性電極1Aとを、電子線照射により架橋し
て一体化する。 【効果】 分極性電極と集電体とを架橋により一体化し
たことにより、分極性電極と集電体間の接触抵抗を小さ
くでき、また、外部より加える圧力も小さくできる。さ
らに、架橋に電子線照射を用いることでプロセスに要す
る時間を大幅に低減できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分極性電極及びその
製造方法並びに分極性電極を用いた電気二重層コンデン
サ及びその製造方法に関し、特に電解液として水溶液を
用いる電気二重層コンデンサに用いる分極性電極及びそ
の製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】電気二重層コンデンサは、電荷の蓄積に
分極性電極と電解液の界面に生じる電気二重層を利用し
たコンデンサである。電気二重層の厚さは数ナノメート
ルと非常に小さく、分極性電極に活性炭のような表面積
の大きな材料を用いることで大容量を実現できる。構成
材料に重金属等の有害物質を使用していないことから環
境負荷が少なく、また二次電池のように化学反応を伴わ
ないことから充放電のサイクル寿命に優れている。この
ため、二次電池の代替デバイスとしてマイコンやメモリ
等のバックアップ電源として広く用いられている。
【0003】また、近年、特公平7−91449号公報
に示されている活性炭/ポリアセン複合材料が発明され
たことや、特開昭57−60828号公報に示されてい
るようにバインダを用いてアルミ箔上に活性炭層を形成
できるようになったことで大容量・低抵抗化が可能にな
り、エンジンとモータとを併用するハイブリッド自動車
や電気自動車等のエネルギー回生、太陽光発電や風力発
電等の発電変動の緩和、瞬時停電等のバックアップ電
源、モータ起動時のラッシュ電流供給、燃料電池におけ
る負荷変動の緩和等パワーを必要とするさまざまな用途
が顕在化してきた。これらのパワー用途は数百ワットか
ら数十キロワットの電力を数秒間で充放電しなければな
らないため、低抵抗の電気二重層コンデンサが望まれて
いる。
【0004】電気二重層コンデンサは電解液の種類によ
って、硫酸や水酸化カリウムのような水溶液系と、有機
溶媒と4級アンモニウム塩等の電解質を使用する有機系
に分類され、電気特性、構成材料、構造等が大きく異な
る。水溶液系では耐電圧が有機系の3Vに比べ1Vと低
いが、電解液の比抵抗が小さいためコンデンサの内部抵
抗を低くできる。また、水溶液系では安価な金属を使用
できないが、有機系ではアルミニウム等の金属を使用で
きる。このため、有機系ではアルミ箔を集電体として分
極性電極を捲く捲回型やステンレス製のコインセル構造
等であるが、水溶液系ではゴムやプラスチック材料を基
本に構成した積層構造である。
【0005】図7は水溶液系電解液を使用した従来の電
気二重層コンデンサの基本セルの断面図である。分極性
電極2には、表面積が大きく導電性があり、かつ電気化
学的に安定な材料が用いられる。一般的には、比表面積
が500m2 /gから2500m2 /gの活性炭粉末
又は活性炭繊維、又は活性炭粉末や活性炭繊維をフッ素
系等のバインダ材で結合したものや特公平7−7044
8号公報に示されているように炭素で結合した固形状活
性炭、又は活性炭粉末や活性炭繊維をポリアセンで結合
した活性炭/ポリアセン複合材料である。
【0006】集電体3は分極性電極2と外部とを電気的
に接続し、電解液の漏れを防ぐためのもので、カーボン
等を添加して導電性を付与したブチルゴムやエラストマ
が使用される。厚さは500μm以下で、比抵抗は10
Ω・cm以下のものを使用することが多い。セパレータ
4は一対の分極性電極2が接触により短絡するのを防ぐ
とともに電解質イオンを通すためのもので、不織布や多
孔質フィルムが使用される。材質にポリプロピレンやポ
リエチレン等のプラスチックを使用する場合には親水性
を持たせるために、界面活性剤やシリカを添加する。
【0007】ガスケット5は一対の集電体2間の接触に
よる短絡と電解液の漏れを防ぎ、形状を維持するための
構造材であり、プラスチックやブチルゴム、エラストマ
ー等が用いられる。ガスケット5にプラスチックを使用
する場合には、集電体2とエポキシ接着剤等で接着す
る。また、ゴムやエラストマーの場合には、特開昭60
−216527号公報に示されているように100〜1
30℃で加硫させることにより集電体2と結合させる。
水溶液系電気二重層コンデンサでは耐電圧が水の電気分
解によって制限されるため、通常は1V前後である。こ
のため、使用する電圧に応じて基本セル6を直列に接続
し耐電圧を上げる。このとき、基本セル6を単純に積み
重ねる構造と、特開平6−5467号公報に示されてい
るように基本セル間の集電体を共通にしたバイポーラ構
造を有するものがある。
【0008】分極性電極2が活性炭粉末又は活性炭繊
維、又は活性炭粉末や活性炭繊維をフッ素系等のバイン
ダ材で結合した固形状の場合、粉末や繊維どうしの接触
抵抗や分極性電極2と集電体3との接触抵抗を低減する
ために、10kg/cm2 以上の圧力を印加し、保持
しなければならない。電気二重層コンデンサの内部抵抗
は一対の分極性電極2の対向面積が大きいほど低くなる
が、内部抵抗の低いコンデンサは圧力を保持するための
外装が大きくなり、実用上、使用が困難である。一方、
分極性電極2が、活性炭粉末や活性炭繊維を炭素で結合
した活性炭/炭素複合材料、又は活性炭粉末や活性炭繊
維を炭素で結合した活性炭/ポリアセン複合材料の場
合、分極性電極の比抵抗は数十mΩ・cmにまで低下
し、大容量、低抵抗の電気二重層コンデンサを作ること
が可能になった。
【0009】しかし、活性炭/炭素複合材料や活性炭/
ポリアセン複合材料は剛性が高いため、変形しない。そ
の結果、分極性電極2の平面度が低ければ集電体3との
接触面積が小さくなり、接触抵抗は粉末や繊維状活性炭
に比べて大きくなるという問題があった。このため、従
来、分極性電極2と集電体3との電気的な接続は、外装
ケース等により数kg/cm2 程度で加圧・保持した
り、有機バインダ等によって接着することにより保たれ
ていた。
【0010】例えば、特開平7−161589号公報や
特開平9−270370号公報、特開平8−97102
号公報では、導電性接着剤を用いて分極性電極2と集電
体3を接着している。また、特開平3−283521号
公報、特開平3−241809号公報に示されているよ
うに集電体3を加熱や溶剤で軟化させたり、特開平3−
080518号公報に示されているように分極性電極2
の凹凸を緩和する目的で粉末活性炭等を分極性電極2と
集電体3との間に入れたりすることで、分極性電極2と
集電体3との接触面積の向上を図っていた。
【0011】ところで、高分子材料の架橋や加硫には熱
によるものが一般的であり、上述したように電気二重層
コンデンサの組立にも使われている。しかし、材料を1
00℃以上に加熱する必要があるため、電解液の入った
コンデンサ等では加熱することによる電解液の漏れを防
ぐ必要がある。また、架橋速度が遅いため、時間がかか
ることや、エネルギー消費が大きい等の問題がある。一
方、電子線加速器を用いた高分子材料の架橋、加硫も広
く行われている。
【0012】特に、近年、電子線照射装置の性能や効率
の向上により、電線等の被覆材やチューブ等の耐熱性向
上、ゴムやタイヤの製造等に使用されている。一般に、
高分子材料に放射線を照射すると架橋と崩壊が起こる。
この場合、材料によって架橋の進む架橋型と崩壊の進む
崩壊型とに分類される。主鎖がビニル型は架橋型であ
り、主鎖がビニリデン型は崩壊型である。
【0013】具体的には架橋型としてはポリエチレン
(PE)、ポリプロピレン(PP)、クロロプレンゴム
(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(A
CM)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NB
R)、エチレン・プロピレンゴム(EPR)、イソプレ
ンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SB
R)、天然ゴム(NR)、シリコーンゴム、エチレン・
プロピレン共重合体(EPM)、エチレン・プロピレン
・ジエン共重合体(EPDM)、ポリアミド、ポリエス
テル、ポリスチレン、塩素化ポリエチレン(CPE)、
及びこれらの複合材料等が知られている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】分極性電極が活性炭粉
末又は活性炭繊維、又は活性炭粉末や活性炭繊維をフッ
素系等のバインダ材で結合した固形状の場合、粉末や繊
維どうしの接触抵抗や分極性電極と集電体との接触抵抗
を低減するために、10kg/cm2 以上の圧力を印
加し、保持しなければならなかった。また、活性炭/炭
素電極、活性炭/ポリアセン電極は剛性が高く変形しな
いため、集電体と接触する面の平面度が高くないと接触
面積が減少し、その結果、接触抵抗が大きくなるという
問題があった。このため、従来、分極性電極2と集電体
3との電気的な接続は、外装ケース等により数kg/c
2 程度で加圧・保持したり、有機バインダ等によっ
て接着しなければならなかった。
【0015】本発明は上述した従来技術の欠点を解決す
るためになされたものであり、その目的は分極性電極と
集電体との接触抵抗を低減することのできる電気二重層
コンデンサを提供することである。また、本発明の他の
目的は外装ケース等による加圧力を小さくすることので
きる電気二重層コンデンサを提供することである。さら
にまた、本発明の他の目的は分極性電極と集電体とを結
合させるプロセスにおけるコストを低減することのでき
る電気二重層コンデンサの製造方法を提供することであ
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明による分極性電極
は、未架橋の高分子材料と活性炭とが電子線照射により
架橋されてなることを特徴とする。また、本発明による
他の分極性電極は、未架橋の高分子材料と活性炭とから
なる電極部材と、未架橋の高分子材料と導電性付与材と
からなる集電体部材とを含み、前記電極部材と前記集電
体部材とが電子線照射により架橋して一体化してなるこ
とを特徴とする。そして、前記活性炭は、粉末状又は繊
維状であることを特徴する。なお、前記電子線照射にお
いては、加速電圧が100kV以上でかつ放射線量が1
Mrad以上であることを特徴とする。前記電極部材
は、カーボンブラックを更に含んでも良い。
【0017】一方、本発明による分極性電極の製造方法
は、未架橋の高分子材料と活性炭とからなる電極部材
と、未架橋の高分子材料と導電性付与材とからなる集電
体部材とを含む分極性電極の製造方法であって、前記電
極部材と前記集電体部材との主面同士を接触させるステ
ップと、この接触した前記集電体部材と前記電極部材と
に電子線を照射して前記主面同士を架橋して一体化する
ステップとを含むことを特徴とする。前記電極部材は、
カーボンブラックを更に含んでも良い。
【0018】また、本発明による電気二重層コンデンサ
は、未架橋の高分子材料と活性炭とからなる電極部材
と、未架橋の高分子材料と導電性付与材とからなる集電
体部材と、未架橋の高分子材料からなるガスケットと
を、電子線照射により架橋して一体化したことを特徴と
する。前記電極部材は、カーボンブラックを更に含んで
も良い。
【0019】さらにまた、本発明による電気二重層コン
デンサの製造方法は、未架橋の高分子材料と活性炭とか
らなる電極部材と、未架橋の高分子材料と導電性付与材
とからなる集電体部材と、未架橋の高分子材料からなる
ガスケットとを接触させる第1のステップと、この接触
した前記集電体部材及び前記電極部材並びにガスケット
に電子線を照射してこれらを架橋して一体化する第2の
ステップとを含むことを特徴とする。そして、本発明に
よる他の電気二重層コンデンサの製造方法は、前記第1
のステップにおいて前記集電体部材を挟み該集電体部材
の両主面夫々に前記電極部材を接触させ、この接触状態
に対して前記第2のステップにおいて電子線を照射する
ことにより、直列された複数の電気二重層コンデンサを
製造するようにしたことを特徴とする。前記電極部材
は、カーボンブラックを更に含んでも良い。
【0020】要するに本発明では、未架橋の高分子材料
と導電性付与材からなる集電体と、粉末状又は繊維状活
性炭を未架橋の高分子材料で結合しかつ集電体の少なく
とも片側に配置した分極性電極とを、電子線照射により
架橋して一体化しているのである。
【0021】また、その電気二重層コンデンサは、未架
橋の高分子材料と導電性付与材からなる集電体と、粉末
状又は繊維状活性炭を未架橋の高分子材料で結合しかつ
集電体の少なくとも片側に配置した分極性電極と、未架
橋の高分子材料からなるガスケットとを、電子線照射に
より架橋して一体化する方法で製造するのである。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の一形態につ
いて図面を参照して説明する。なお、以下の説明におい
て参照する各図においては、他の図と同等部分には同一
符号が付されている。
【0023】図1は本発明による電気二重層コンデンサ
に用いる分極性電極の実施の一形態を示す図である。同
図を参照すると、電気二重層コンデンサは、未架橋の高
分子材料と導電性付与材からなる集電体と、粉末状又は
繊維状活性炭を未架橋の高分子材料で結合し、かつ、集
電体の少なくとも片側に配置した分極性電極とが、電子
線照射により架橋することで一体化された構成である。
このとき、分極性電極の結合に用いる未架橋の高分子材
料と集電体に用いる未架橋の高分子材料とは同一のもの
でなくてもよい。また、未架橋の高分子材料と導電性付
与材からなる集電体と、粉末状又は繊維状活性炭を未架
橋の高分子材料で結合し、かつ前記集電体の少なくとも
片側に配置した分極性電極と、未架橋の高分子材料から
なるガスケットとを、電子線照射により架橋して一体化
する。これらの電子線照射は、加速電圧が100kV以
上で、かつ放射線量が1Mrad以上であることを特徴
とする。
【0024】また、未架橋の高分子材料には、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ブタジエン
ゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴ
ム、エチレン・プロピレンゴム、イソプレンゴム、スチ
レン・ブタジエンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、エ
チレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・
ジエン共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチ
レン、塩素化ポリエチレン、及びこれらの複合材料を用
いることを特徴とする。
【0025】次に、より具体的な実施例について説明す
る。
【0026】まず、実施例1について説明する。図1に
示されている電気二重層コンデンサに用いる分極性電極
1は以下のように製造する。すなわち、活性炭粉末1C
と未架橋のPP−EPDMよりなるオレフィン系熱可塑
性エラストマとを重量比で60:40に混合し、厚さ1
00μmのシート状に成形し、これを68×48mmの
長方形に打ち抜き、分極性電極1Aを得た。使用した活
性炭粉末はフェノール樹脂を原料とし、水蒸気賦活によ
り製造したもので、比表面積は1500m2/g、平均
粒径は10μmである。次に、未架橋のオレフィン系熱
可塑性エラストマーにカーボンブラックを配合して導電
性を付与し、厚さ30μmにシート化した後、76×5
6mmの長方形に打ち抜き、集電体1Bを得た。集電体
1Bの比抵抗は面方向を4端子法で測定した結果、0.
1Ω・cmであった。分極性電極1Aを集電体1Bの各
辺から4mmの位置に配置して、200kgの圧力を加
えて仮固定した。電子線の加速電圧を1000kV、放
射線量5Mrad照射し、分極性電極1A及び集電体1
Bとを架橋により結合し、図1に示されている分極性電
極1が得られる。
【0027】つまり、図1に示されている分極性電極1
は、図2に示されているフローチャートに従って製造さ
れる。すなわち、まず未架橋の高分子材料と活性炭とか
らなる電極部材と、未架橋の高分子材料と導電性付与材
とからなる集電体部材とを、接触させる(ステップS1
1)。この接触させた状態で電子線を照射して架橋して
一体化する(ステップS12)。
【0028】図3には、電気二重層コンデンサの断面図
が示されている。分極性電極/集電体複合材料1の分極
性電極1Aを上面にして、分極性電極1A上に30wt
%の硫酸を0.3cc滴下し、周囲を減圧にすること
で、分極性電極1A内に硫酸を含浸した。セパレータ4
には界面活性剤により親水処理したポリプロピレン繊維
からなる厚さ50μmの不織布を使用し、30wt%の
硫酸を0.2cc滴下して、染み込ませた。ガスケット
5は外寸76×56mm、内寸70×50mm、厚み2
00μmの額縁状で、ABS樹脂製である。これらを図
3のように配置し、エポキシ接着剤で接着して基本セル
6を得た。基本セル6の両側よりアルミに銅下地を施し
てハンダメッキした端子板8をあて、絶縁ブッシュ9を
介してボルトナットで固定することにより、動作電圧
1.0Vの本実施例の電気二重層コンデンサを得た。本
実施例の効果を確認するために、ボルトナットで固定す
るときの、端子板8の両側から加える圧力を0.5、
1.0、2.0、3.0、5.0kg/cm2 と変え
て試作した。
【0029】次に実施例2について説明する。本例で
は、電子線の加速電圧を50、100、500、100
0、2000、5000kVと変えて放射線量5Mra
d照射する。これにより、分極性電極1Aと集電体1B
とを架橋により結合し、図1に示されている分極性電極
1が得られる。また、電子線の加速電圧を1000k
V、照射線量を1、10、50Mradと変えて照射
し、分極性電極1A及び集電体1Bとを架橋により結合
し、分極性電極1を得た。
【0030】そして、実施例1の場合と同様にして動作
電圧1.0Vの本例の電気二重層コンデンサを得た。電
子線照射の条件以外は実施例1の場合と同様である。加
速電圧は装置を変えて実験した。また、照射線量は1回
の処理を10Mradとして繰返し行うことで目的の線
量を得た。
【0031】つまり、図3に示されている電気二重層コ
ンデンサは、図4に示されているフローチャートに従っ
て製造される。すなわち、まず未架橋の高分子材料と活
性炭とからなる電極部材と、未架橋の高分子材料と導電
性付与材とからなる集電体部材と、未架橋の高分子材料
からなるガスケットとを、接触させる(ステップS2
1)。この接触させた状態で電子線を照射して架橋して
一体化する(ステップS22)。
【0032】次に、実施例3について説明する。上述し
た実施例1の場合と同様にして架橋前の分極性電極1と
集電体1Bとの両側に分極性電極1Aを配置した分極性
電極1を製造した。そして、実施例1の場合と同様にし
て、図5のように架橋前の分極性電極1、セパレータ
4、ガスケット5を配置した。このとき、ガスケット5
にのみ、未架橋のオレフィン系熱可塑性エラストマを使
用した。
【0033】これに1000kVの電子線を10Mra
d照射して、分極性電極1Aと集電体1B及びガスケッ
ト5とを同時に架橋して結合させ、バイポーラ構造を有
する基本セル6の積層体7を得た。この積層体7の両側
よりアルミに銅下地を施してハンダメッキした端子板8
をあて、端子板8の両側から圧力を0.5kg/cm 2
印加し、この状態で絶縁ブッシュ9を介してボルトナ
ットにより固定することで、動作電圧3.0Vの本例の
電気二重層コンデンサを得た。
【0034】この場合、未架橋の高分子材料と活性炭と
からなる電極部材と、未架橋の高分子材料と導電性付与
材とからなる集電体部材とを用意し、図6に示されてい
る状態に固定する。すなわち、基本セルを直列した状態
に固定する。この固定された状態で電子線EBの照射を
行い、高分子材料と活性炭、高分子材料と導電性付与材
を夫々架橋させ、さらには電極部材と集電体部材とを架
橋させる。こうすることにより、電子線を1秒程度1回
照射するだけで電気二重層コンデンサを製造できる。よ
って、熱架橋を行う場合に比べ、電気二重層コンデンサ
の製造プロセスに要する時間を大幅に低減することがで
きるのである。
【0035】なお、上述した実施例1〜実施例3におい
て、未架橋の高分子材料及び活性炭の他に、更にカーボ
ンブラックを添加して電極部材を構成しても良い。配合
(重量)比は、活性炭100に対してカーボンブラック
は最大30程度である。カーボンブラックは活性炭より
も粒子が細かいので、これを添加することによって電極
の接触抵抗をより低くすることができる。
【0036】ここで、以上の実施例1〜実施例3に対す
る比較例1について説明する。比表面積が1500m2
/gで、平均粒径10μmの板状の活性炭に対し、重
量比が7:3になるよう重量平均分子量が10,000
以上である粉末状フェノール系樹脂(鐘紡製、商品名ベ
ルパールS890)を加え、乾式混合した。この混合粉
を180℃で熱プレスし、900℃の非酸化性雰囲気に
おいて焼成することで活性炭/ポリアセン複合材料を得
た。これを68×48mmに切断し、厚さ0.1mmの
分極性電極2を得た。
【0037】分極性電極2を30wt%硫酸中に浸漬
し、減圧にすることで、分極性電極2内に硫酸を含浸し
た。セパレータ4には界面活性剤により親水処理したポ
リプロピレン繊維からなる厚さ50μmの不織布を使用
し、30wt%の硫酸を0.2cc滴下して、染み込ま
せた。ガスケット5は外寸76×56mm、内寸70×
50mm、厚み200μmの額縁状で、ABS樹脂製で
ある。これらを実施例1と同様に配置し、エポキシ接着
剤で接着して基本セル6を得た。接着条件は70℃、1
時間である。基本セル6の両側よりアルミに銅下地を施
してハンダメッキした端子板8をあて、端子板8の両側
から圧力を5kg/cm2 印加し、この状態で絶縁ブ
ッシュ9を介してボルトナットにより固定することで、
動作電圧1.0Vの電気二重層コンデンサを得た。
【0038】また、比較例2について説明する。本例
は、熱架橋によって分極性電極と集電体3とを結合する
ものである。本例では、まず、活性炭粉末と未架橋のブ
チルゴムとを重量比で60:40に混合し、さらに架橋
材を加え、厚さ100μmのシート状に成形し、これを
68×48mmの長方形に打ち抜き、分極性電極2を得
た。使用した活性炭粉末は実施例1と同様である。な
お、ブチルゴム以外の未架橋の高分子材料を用いても良
い。ただし、未架橋の高分子材料に対する活性炭の重量
比は、50%〜95%であることが望ましい。
【0039】次に、未架橋のブチルゴムにカーボンブラ
ックを配合して導電性を付与し、厚さ30μmにシート
化した後、76×56mmの長方形に打ち抜き、集電体
3を得た。カーボンブラック以外の導電性付与材を用い
ても良い。ただし、未架橋の高分子材料に対する導電性
付与材の重量比は、40%〜70%であることが望まし
い。集電体3の比抵抗は面方向を4端子法で測定した結
果、0.3Ω・cmであった。分極性電極2を集電体3
の各辺から4mmの位置に配置して、200kgの圧力
を加えて仮固定した。これを120℃で3時間、恒温槽
内に放置して分極性電極2と集電体3とを熱加硫により
結合した。これを実施例1と同様にして、動作電圧1.
0Vの電気二重層コンデンサを製造した。ボルトナット
で固定するときに、端子板8の両側から加えた圧力は
0.5kg/cm2 である。
【0040】上述した各実施例及び比較例の電気二重層
コンデンサについて1kHzでの等価直列抵抗(以下、
ESRと略す)と静電容量とを測定した。ESRは1k
Hz、10mVの交流をコンデンサに印加し、電流の大
きさと電圧に対する位相差を測定することで求める。こ
のとき直流バイアスは印加しない。静電容量の測定方法
は定電流放電法による。具体的には、実施例3以外はコ
ンデンサに1.0Vを印加し30分充電する。実施例3
には3.0Vを30分印加する。その後、ただちに定電
流Iで放電し、充電電圧の60%から50%、すなわち
実施例3以外は0.6Vから0.5V、実施例3では
1.8Vから1.5Vに変化した時間Δtを測定する。
このとき静電容量は次式で求めることができる。 C=I×Δt/ΔV ここで、表1は測定結果である。
【0041】
【表1】 表1を参照すると、比較例1は他の実施例の分極性電極
に比べ活性炭の充填量が多いため、その分、静電容量が
大きい。実施例1の結果より、圧力が0.5kg/cm
2 でも比較例に比べて十分低いことがわかる。また、
圧力が高くなるほど、わずかにESRが低下している。
これは集電体2と端子板8との接触抵抗が下がったため
で、圧力によるESRの影響はほとんどないことがわか
る。
【0042】実施例2では加速電圧が50kVのとき、
分極性電極1Aと集電体1Bが剥離した。このことか
ら、加速電圧50kVでは不充分であることがわかる。
線量については1Mrad以上で十分である。
【0043】実施例3では圧力が0.5kg/cm2
にもかかわらず実施例1の3倍より小さくなっている。
これはバイポーラ構造により低減できたものと思われ
る。熱による架橋と電子線による架橋とでは電気特性
上、大きな差はみられない。しかし、熱による加硫では
数時間必要であるのに対し、電子線照射では数分で完了
している。よって、電子線照射はコストを下げる上で有
効な工法であることがわかる。
【0044】以上のように本発明の分極性電極は、未架
橋の高分子材料と活性炭とが電子線照射により架橋され
た構成であるため、耐熱性が高くすることができ、ハン
ダリフロー工程にも耐え得る。さらに、未架橋の高分子
材料に電子線を照射することで親水性を付与することが
できるという表面改質効果も得られる。
【0045】また、分極性電極と集電体とを架橋により
一体化したことにより、分極性電極と集電体との間の接
触抵抗を小さくでき、また、外部より加える圧力も非常
に小さくすることができるという効果が得られる。
【0046】さらに、熱架橋ではなく、架橋に電子線照
射を用いることで、分極性電極や電気二重層コンデンサ
の製造プロセスに要する時間を大幅に低減できる。な
お、未架橋の高分子材料は電子線照射により架橋の進む
高分子材料であり、かつ、電解液に対して安定な材料で
あれば良い。
【0047】そして、採用する電解液に応じて適切な高
分子材料を選択したり、材料や厚さ、大きさ等により加
速電圧や照射線量の最適化を行うことで、さまざまな設
計の電気二重層コンデンサに対応できる。
【0048】請求項の記載に関連して本発明は更に次の
態様をとりうる。
【0049】(1)前記未架橋の高分子材料に対する前
記活性炭の重量比が50%〜95%であることを特徴と
する請求項1〜6のいずれかに記載の分極性電極。
【0050】(2)前記未架橋の高分子材料に対する前
記導電性付与材の重量比が40%〜70%であることを
特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の分極性電
極。
【0051】(3)前記未架橋の高分子材料に対する前
記活性炭の重量比が50%〜95%であることを特徴と
する請求項7記載の分極性電極の製造方法。
【0052】(4)前記未架橋の高分子材料に対する前
記導電性付与材の重量比が40%〜70%であることを
特徴とする請求項7記載の分極性電極の製造方法。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、集電体と
分極性電極との接触抵抗を小さくでき、製造コストもか
からないことから、工業的価値の非常に高い電気二重層
コンデンサを実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態による電気二重層コンデ
ンサに用いる分極性電極を示す断面図である。
【図2】図1の分極性電極の製造方法を示すフローチャ
ートである。
【図3】本発明による電気二重層コンデンサの耐圧1V
の場合の構成を示す断面図である。
【図4】図3の電気二重層コンデンサの製造方法を示す
フローチャートである。
【図5】本発明による電気二重層コンデンサの耐圧3V
の場合の構成を示す断面図である。
【図6】本発明による電気二重層コンデンサの製造方法
における電子線照射プロセスを示す図である。
【図7】従来の電気二重層コンデンサの説明図である。
【符号の説明】
1 分極性電極 1A 分極性電極 1B 集電体 1C 活性炭粉末 2 分極性電極 3 集電体 4 セパレータ 5 ガスケット 6 基本セル 7 積層体 8 端子板 9 絶縁ブッシュ
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 4/60 H01G 9/00 301B 301F (72)発明者 笠原 竜一 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気株 式会社内 Fターム(参考) 5H003 AA01 AA08 BA00 BA05 BB02 BB03 BB11 BB14 BB32 BB38 BC01 BC02 BC05 BD00 5H014 AA02 AA04 BB00 BB04 BB05 BB06 BB08 CC01 EE01 EE07 EE08 HH00 HH04 5H017 AS05 BB00 BB06 BB11 BB16 BB19 CC01 DD03 DD05 DD06 EE00 EE07 HH00 HH10

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 未架橋の高分子材料と活性炭とが電子線
    照射により架橋されてなることを特徴とする分極性電
    極。
  2. 【請求項2】 未架橋の高分子材料と活性炭とからなる
    電極部材と、未架橋の高分子材料と導電性付与材とから
    なる集電体部材とを含み、前記電極部材と前記集電体部
    材とが電子線照射により架橋して一体化してなることを
    特徴とする分極性電極。
  3. 【請求項3】 前記活性炭は、粉末状であることを特徴
    する請求項1又は2記載の分極性電極。
  4. 【請求項4】 前記活性炭は、繊維状であることを特徴
    する請求項1又は2記載の分極性電極。
  5. 【請求項5】 前記電子線照射においては、加速電圧が
    100kV以上でかつ放射線量が1Mrad以上である
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の分極
    性電極。
  6. 【請求項6】 前記未架橋の高分子材料は、ポリエチレ
    ン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ブタジエンゴ
    ム、アクリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴ
    ム、エチレン・プロピレンゴム、イソプレンゴム、スチ
    レン・ブタジエンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、エ
    チレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・
    ジエン共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチ
    レン、塩素化ポリエチレン又はこれらの複合材料である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の分極
    性電極。
  7. 【請求項7】 前記電極部材は、カーボンブラックを更
    に含むことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載
    の分極性電極。
  8. 【請求項8】 未架橋の高分子材料と活性炭とからなる
    電極部材と、未架橋の高分子材料と導電性付与材とから
    なる集電体部材とを含む分極性電極の製造方法であっ
    て、前記電極部材と前記集電体部材との主面同士を接触
    させるステップと、この接触した前記集電体部材と前記
    電極部材とに電子線を照射して前記主面同士を架橋して
    一体化するステップとを含むことを特徴とする分極性電
    極の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記電極部材は、カーボンブラックを更
    に含むことを特徴とする請求項8記載の分極性電極の製
    造方法。
  10. 【請求項10】 未架橋の高分子材料と活性炭とからな
    る電極部材と、未架橋の高分子材料と導電性付与材とか
    らなる集電体部材と、未架橋の高分子材料からなるガス
    ケットとを、電子線照射により架橋して一体化したこと
    を特徴とする電気二重層コンデンサ。
  11. 【請求項11】 前記活性炭は、粉末状であることを特
    徴する請求項8記載の電気二重層コンデンサ。
  12. 【請求項12】 前記活性炭は、繊維状であることを特
    徴する請求項8記載の電気二重層コンデンサ。
  13. 【請求項13】 前記電子線照射においては、加速電圧
    が100kV以上でかつ放射線量が1Mrad以上であ
    ることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の
    電気二重層コンデンサ。
  14. 【請求項14】 前記未架橋の高分子材料は、ポリエチ
    レン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ブタジエン
    ゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴ
    ム、エチレン・プロピレンゴム、イソプレンゴム、スチ
    レン・ブタジエンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、エ
    チレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・
    ジエン共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチ
    レン、塩素化ポリエチレン又はこれらの複合材料である
    ことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の電
    気二重層コンデンサ。
  15. 【請求項15】 前記電極部材は、カーボンブラックを
    更に含むことを特徴とする請求項10〜14のいずれか
    に記載の電気二重層コンデンサ。
  16. 【請求項16】 未架橋の高分子材料と活性炭とからな
    る電極部材と、未架橋の高分子材料と導電性付与材とか
    らなる集電体部材と、未架橋の高分子材料からなるガス
    ケットとを接触させる第1のステップと、この接触した
    前記集電体部材及び前記電極部材並びにガスケットに電
    子線を照射してこれらを架橋して一体化する第2のステ
    ップとを含むことを特徴とする電気二重層コンデンサの
    製造方法。
  17. 【請求項17】 前記第1のステップにおいて前記集電
    体部材を挟み該集電体部材の両主面夫々に前記電極部材
    を接触させ、この接触状態に対して前記第2のステップ
    において電子線を照射することにより、直列された複数
    の電気二重層コンデンサを製造するようにしたことを特
    徴とする請求項16記載の電気二重層コンデンサの製造
    方法。
  18. 【請求項18】 前記電子線照射においては、加速電圧
    が100kV以上でかつ放射線量が1Mrad以上であ
    ることを特徴とする請求項16又は17記載の電気二重
    層コンデンサの製造方法。
  19. 【請求項19】 前記電極部材は、カーボンブラックを
    更に含むことを特徴とする請求項16〜18のいずれか
    に記載の電気二重層コンデンサの製造方法。
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