JP2004335889A - 電気化学キャパシタ - Google Patents
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Abstract
【課題】内部抵抗が十分に低減されており、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学キャパシタの提供。
【解決手段】電気化学キャパシタ1は、主として、互いに対向するアノード10及びカソード20と、アノード10とカソード20との間に隣接して配置される絶縁性のセパレータ40と、電解質溶液30と、これらを密閉した状態で収容するケース50とから構成されている。そして、アノードが、電子伝導性を有する略球状の炭素材料を構成材料として含んでおり、かつ、カソードが、電子伝導性を有する繊維状の炭素材料を構成材料として含んでいる。
【選択図】 図1
【解決手段】電気化学キャパシタ1は、主として、互いに対向するアノード10及びカソード20と、アノード10とカソード20との間に隣接して配置される絶縁性のセパレータ40と、電解質溶液30と、これらを密閉した状態で収容するケース50とから構成されている。そして、アノードが、電子伝導性を有する略球状の炭素材料を構成材料として含んでおり、かつ、カソードが、電子伝導性を有する繊維状の炭素材料を構成材料として含んでいる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気化学キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層キャパシタをはじめとする電気化学キャパシタは、分極性電極の電極電解質溶液界面に生ずる電気二重層に起因する容量を利用するものである。分極性電極は、一般に多孔質の炭素材料を構成材料として用いて形成されている。
【0003】
電気二重層キャパシタをはじめとする電気化学キャパシタは、容易に小型化、軽量化が可能であるため、例えば、携帯機器(小型電子機器)等の電源のバックアップ用電源、ハイブリッド車向けの補助電源として期待され、その性能向上のための様々な検討がなされている。
【0004】
上記の検討としては、例えば、アノードに使用する炭素材料の比表面積と、カソードに使用する炭素材料の比表面積とをそれぞれ所定の範囲に調節して構成することにより性能向上を意図した電気二重層キャパシタ(例えば、下記特許文献1参照。)や、互いに特性が異なる複数種の活性炭(例えば、内部抵抗の低い活性炭と静電容量やエネルギー密度の大きい活性炭との混合物)を用いて形成した電極を備える構成とすることにより性能向上を意図した電気二重層キャパシタが提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−107047号公報
【特許文献2】
特開2000−353642号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の電気二重層キャパシタをはじめとする従来の電気化学キャパシタは、内部抵抗(インピーダンス)を十分に低減できておらず、未だ十分な充放電特性を得ることができていないことを本発明者らは見出した。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、内部抵抗が十分に低減されており、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学キャパシタを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、以下の特定の幾何学的条件を満たす炭素材料を用いて形成したアノードと、以下の特定の幾何学的条件を満たす炭素材料を用いて形成したカソードとの組み合せを有する単位セルの構成が、上述の目的を達成する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、互いに対向するアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置される絶縁性のセパレータと、電解質溶液と、アノード、カソード、セパレータ及び電解質溶液を密閉した状態で収容するケースと、を有しており、アノードが、電子伝導性を有する略球状の炭素材料を構成材料として含んでおり、かつ、カソードが、電子伝導性を有する繊維状の炭素材料を構成材料として含んでいること、を特徴とする電気化学キャパシタを提供する。
【0010】
略球状の炭素材料を用いて形成した電極をアノードとし、繊維状の炭素材料を用いて形成した電極をカソードとして備えることにより、本発明の電気化学キャパシタは、内部抵抗が十分に低減され、優れた充放電特性を発揮することができる。
【0011】
ここで、本発明において、「アノード」及び「カソード」は、電気化学キャパシタの放電時の極性を基準に決定したものである。つまり、電気化学キャパシタの放電時に電子を放出する側の電極が「アノード」であり、放電時に電子を受容する側の電極が「カソード」である。
【0012】
また、本発明において、「繊維状の炭素材料」とは、その粒子のアスペクト比が2以上のものを示す。繊維状の炭素材料のアスペクト比が2未満となると、後述する「略球状の炭素材料」のアスペクト比との差が不十分となるとともに、キャパシタのインピーダンスが上がり、十分なレート特性が得られない。なお、上述した本発明の効果をより確実に得る観点から、「繊維状の炭素材料」からなる粒子のアスペクト比は2〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。繊維状の炭素材料のアスペクト比が8を超えると、繊維状の炭素材料を含む電極形成用の塗布液又は電極形成用の混練物を調製する際の塗料化すること(塗工可能な粘度を有する液とすること)が困難となる傾向が大きくなる。
【0013】
更に、本発明において、「略球状の炭素材料」とは、その粒子のアスペクト比が1.5以下のものを示す。従って、この略球状の炭素材料からなる粒子は、このアスペクト比を略球状の炭素材料のアスペクト比が1.5を超えると、上述の「繊維状の炭素材料」のアスペクト比との差が不十分となるとともに、電流密度が低下し、エネルギー密度の損失が大きくなる。なお、上述した本発明の効果をより確実に得る観点から、「略球状の炭素材料」からなる粒子のアスペクト比は1〜1.5であることが好ましく、1〜1.3であることがより好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明による電気化学キャパシタを電気二重層キャパシタに適用した場合について、その好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は本発明の電気化学キャパシタの好適な一実施形態を示す正面図である。また、図2は図1に示す電気化学キャパシタの内部をアノード10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。更に、図3は図1に示す電気化学キャパシタを図1のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図4は図1に示す電気化学キャパシタを図1のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
【0016】
図1〜図5に示すように、電気化学キャパシタ1は、主として、互いに対向する板状のアノード10(アノード)及び板状のカソード20(カソード)と、アノード10とカソード20との間に隣接して配置される板状のセパレータ40と、電解質溶液30と、これらを密閉した状態で収容するケース50と、アノード10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケース50の外部に突出されるアノード用リード12と、カソード20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケース50の外部に突出されるカソード用リード22とから構成されている。ここで、「アノード」10及び「カソード」20は、電気化学キャパシタ1の放電時の極性を基準に決定したものである。
【0017】
そして、電気化学キャパシタ1は、先に述べた本発明の目的を達成するために、以下に説明する構成を有している。
【0018】
以下に図1〜図9に基づいて本実施形態の各構成要素の詳細を説明する。
【0019】
ケース50は、互いに対向する第1のフィルム51及び第2のフィルム52とを有している。ここで、図2に示すように、本実施形態における第1のフィルム51及び第2のフィルム52は連結されている。すなわち、本実施形態におけるケース50は、一枚の複合包装フィルムからなる矩形状のフィルム53を、図2に示す折り曲げ線X3−X3において折り曲げ、矩形状のフィルムの対向する1組の縁部同士(図中の第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルムの縁部52B)を重ね合せて接着剤を用いるか又はヒートシールを行うことにより形成されている。
【0020】
そして、第1のフィルム51及び第2のフィルム52は、1枚の矩形状のフィルムを上述のように折り曲げた際にできる互いに対向する面(F51及びF52)を有する該フィルムの部分をそれぞれ示す。ここで、本明細書において、接合された後の第1のフィルム51及び第2のフィルム52のそれぞれの縁部を「シール部」という。
【0021】
これにより、折り曲げ線X3−X3の部分に第1のフィルム51と第2のフィルム52とを接合させるためのシール部を設ける必要がなくなるため、ケース50におけるシール部をより低減することができる。その結果、後述する電気化学キャパシタ1の設置されるべき設置空間の単位体積当たりのエネルギー密度(以下、「設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度」という)を向上させることができる。
【0022】
また、本実施形態の場合、図1及び図2に示すように、アノード10に接続されたアノード用リード12及びカソード用リード22のそれぞれの一端が上述の第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルムの縁部52Bシール部とを接合したシール部から外部に突出するように配置されている。
【0023】
更に、第1のフィルム51及び第2のフィルム52を構成するフィルムは可とう性を有するフィルムである。このように軽量であり薄膜化が容易な可とう性を有するフィルムを用いて形成されたケース50を備え、更に、アノード10、カソード20及びセパレータ40のそれぞれの形状を板状とすることにより、電気化学キャパシタ1の自体の形状を薄膜状とすることができる。フィルムは軽量であり薄膜化が容易なため、電気化学キャパシタ自体の形状を薄膜状とすることができる。そのため、本来の体積エネルギー密度を容易に向上させることができるとともに、電気化学キャパシタの設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度も容易に向上させることができる。
【0024】
ここで、電気化学キャパシタの「体積エネルギー密度」とは、本来、電気化学キャパシタの容器を含む全体積に対する全出力エネルギーの割合で定義されるものである。これに対して、「設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度」とは、電気化学キャパシタの最大縦、最大横、最大厚さに基づいて求められる見かけ上の体積に対する電気化学キャパシタの全出力エネルギーの割合を意味する。実際に、電気化学キャパシタを小型電子機器に搭載する場合、上述した本来の体積エネルギー密度の向上とともに、設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度を向上させることが、小型電子機器内の限られたスペースをデッドスペースを充分に低減した状態で有効利用する観点から重要となる。
【0025】
このフィルムは可とう性を有するフィルムであれば特に限定されないが、ケースの十分な機械的強度と軽量性を確保しつつ、ケース外部からケース内部への水分や空気の侵入及びケース内部からケース外部への電解質成分の逸散を効果的に防止する観点から、電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層と、最内部の層の上方に配置される金属層とを少なくとも有する「複合包装フィルム」であることが好ましい。
【0026】
第1のフィルム51及び第2のフィルム52として使用可能な複合包装フィルムとしては、例えば、図6及び図7に示す構成の複合包装フィルムが挙げられる。図6示す複合包装フィルム53は、その内面F50aにおいて電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層50aと、最内部の層50aのもう一方の面(外側の面)上に配置される金属層50cと有する。また、図7示す複合包装フィルム54は、図6示す複合包装フィルム53の金属層50cの外側の面に更に合成樹脂製の最外部の層50bが配置された構成を有する。
【0027】
第1のフィルム51及び第2のフィルム52として使用可能な複合包装フィルムは、上述の最内部の層をはじめとする1以上の合成樹脂の層、金属箔などの金属層を備えた2以上の層を有する複合包装材であれば特に限定されないが、上記と同様の効果をより確実に得る観点から、図7に示した複合包装フィルム54のように、最内部の層と、最内部の層から最も遠いケース50の外表面の側に配置される合成樹脂製の最外部の層と、最内部の層と最外部の層との間に配置される少なくとも1つの金属層とを有する3層以上の層から構成されていることがより好ましい。
【0028】
最内部の層は可とう性を有する層であり、その構成材料は上記の可とう性を発現させることが可能であり、かつ、使用される電解質溶液に対する化学的安定性(化学反応、溶解、膨潤が起こらない特性)、並びに、酸素及び水(空気中の水分)に対する化学的安定性を有している合成樹脂であれば特に限定されないが、更に酸素、水(空気中の水分)及び電解質溶液の成分に対する透過性の低い特性を有している材料が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン酸変成物、ポリプロピレン酸変成物、ポリエチレンアイオノマー、ポリプロピレンアイオノマー等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0029】
また、上述した図7に示した複合包装フィルム54のように、最内部の層50a以外に、最外部の層50b等のような合成樹脂製の層を更に設ける場合、この合成樹脂製の層も、上記最内部の層と同様の構成材料を使用してよい。更に、この合成樹脂製の層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(ナイロン)等のエンジニアリングプラスチックからなる層を使用してもよい。
【0030】
また、ケース50における全てのシール部のシール方法は、特に限定されないが、生産性の観点から、ヒートシール法であることが好ましい。
【0031】
金属層としては、酸素、水(空気中の水分)及び電解質溶液に対する耐腐食性を有する金属材料から形成されている層であることが好ましい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、クロム等からなる金属箔を使用してもよい。
【0032】
次に、アノード10及びカソード20について説明する。図8は図1に示す電気化学キャパシタのアノードの基本構成の一例を示す模式断面図である。また、図9は、図1に示す電気化学キャパシタのカソードの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【0033】
図8に示すようにアノード10は、集電体16と、該集電体16上に形成された電子伝導性の多孔体層18とからなる。この多孔体層18は、電子伝導性を有する略球状の炭素材料を構成材料として含んでいる。また、図9に示すようにカソード20は、集電体26と、該集電体26上に形成された電子伝導性の多孔体層28とからなる。この多孔体層19は、電子伝導性を有する繊維状の炭素材料を構成材料として含んでいる。この多孔体層18を有するアノード10と、多孔体層19を有するカソード20とを備えるため、電気化学キャパシタ1は内部抵抗が十分に低減されており、優れた充放電特性を有している。
【0034】
集電体16及び集電体26は、多孔体層18及び多孔体層28への電荷の移動を充分に行うことができる良導体であれば特に限定されず、公知の電気二重層キャパシタに用いられている集電体を使用することができる。例えば、集電体16及び集電体26としては、アルミニウムなどの金属箔等が挙げられる。
【0035】
多孔体層18は、その構成材料に略球状の炭素材料(アスペクト比が1.5以下、好ましくは1〜1.5、より好ましくは1〜1.3のもの)を含んで構成されていれば、その他の構成条件は特に限定されないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、多孔体層18中の略球状の炭素材料の含有量は、多孔体層18の総質量を基準として、75〜90質量%であることが好ましい。
【0036】
略球状の炭素材料としては、活性炭が好ましい。例えば、活性炭としては、原料炭{例えば、石油系重質油の流動接触分解装置のボトム油や減圧蒸留装置の残さ油を原料油とするディレードコーカーより製造された石油コークス又は樹脂を炭化したもの(フェノール樹脂など)や天然材料を炭化したもの(例えばヤシ殻炭)等}を賦活処理することにより得られるものを主成分としているものが好ましい。また、本発明の効果をより確実に得る観点から、略球状の炭素材料の比表面積は1000〜3000m2/gであることが好ましい。
【0037】
また、多孔体層18には、バインダー等の炭素材料以外の構成材料が含まれていてもよい。その種類とその含有量は特に限定されるものではない。例えば、炭素粉末に導電性を付与するための導電性補助剤(カーボンブラック等)と、例えばバインダー(ポリテトラフルオロエチレン,以下、PTFEという)とが添加されていてもよい。
【0038】
更に、多孔体層19は、その構成材料に繊維状の炭素材料(アスペクト比が2以上、好ましくは2〜8、より好ましくは4〜6のもの)を含んで構成されていれば、その他の構成条件は特に限定されないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、多孔体層19中の繊維状の炭素材料の含有量は、多孔体層19の総質量を基準として、75〜90質量%であることが好ましい。
【0039】
繊維状の炭素材料としては、活性炭が好ましい。例えば、活性炭としては、原料炭{例えば、石油系重質油の流動接触分解装置のボトム油や減圧蒸留装置の残さ油を原料油とするディレードコーカーより製造された石油コークス又は樹脂を炭化したもの(フェノール樹脂など)や天然材料を炭化したもの(例えばヤシ殻炭)等}を賦活処理することにより得られるものを主成分としているものが好ましい。また、本発明の効果をより確実に得る観点から、繊維状の炭素材料の比表面積は1000〜3000m2/gであることが好ましい。
【0040】
また、多孔体層19には、バインダー等の炭素材料以外の構成材料が含まれていてもよい。その種類とその含有量は特に限定されるものではない。例えば、炭素粉末に導電性を付与するための導電性補助剤(カーボンブラック等)と、例えばバインダー(ポリテトラフルオロエチレン,以下、PTFEという)とが添加されていてもよい。
【0041】
アノード10とカソード20との間に配置されるセパレータ40は、絶縁性の多孔体から形成されていれば特に限定されず、公知の電気二重層キャパシタに用いられているセパレータを使用することができる。例えば、絶縁性の多孔体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
【0042】
ただし、電解質溶液との接触界面を充分に確保する観点から、多孔体層18の空隙体積Zは、多孔体層体積100μLの時に50〜75μLであることが好ましく、60〜70μLであることがより好ましい。なお、空隙体積Zを求める方法は特に限定されず、公知の方法により求めることができる。
【0043】
また、カソード20の集電体28は、例えばアルミニウムからなるカソード用リード22の一端に電気的に接続され、カソード用リード22の他端はケース50の外部に延びている。一方、アノード10の集電体18も、例えばアルミニウムからなるアノード用リード12の一端に電気的に接続され、アノード用リード12の他端は封入袋14の外部に延びている。
【0044】
電解質溶液30はケース50の内部空間に充填され、その一部は、アノード10及びカソード20、及びセパレータ40の内部に含有されている。
【0045】
この電解質溶液30は、特に限定されず、公知の電気二重層キャパシタに用いられている電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、キャパシタの耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解質溶液)であることが好ましい。
【0046】
更に、電解質溶液30の種類は特に限定されないが、一般的には溶質の溶解度、解離度、液の粘性を考慮して選択され、高導電率でかつ高電位窓(分解開始電圧が高い)の電解質溶液であることが望ましい。例えば、代表的な例としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩を、プロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホランなどの有機溶媒に溶解したものが使用される。なお、この場合、混入水分を厳重に管理する必要がある。
【0047】
更に、図1及び図2に示すように、第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルムの縁部52Bからなる封入袋のシール部に接触するアノード用リード12の部分の部分には、アノード用リード12と各フィルムを構成する複合包装フィルム中の金属層との接触を防止するための絶縁体14が被覆されている。更に、第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルムの縁部52Bからなる封入袋のシール部に接触するカソード用リード22の部分には、カソード用リード22と各フィルムを構成する複合包装フィルム中の金属層との接触を防止するための絶縁体24が被覆されている。
【0048】
これら絶縁体14及び絶縁体24の構成は特に限定されないが、例えば、それぞれ合成樹脂から形成されていてもよい。なお、アノード用リード12及びカソード用リード22のそれぞれに対する複合包装フィルム中の金属層の接触が充分に防止可能であれば、これら絶縁体14及び絶縁体24は配置しない構成としてもよい。
【0049】
更に、携帯用の小型電子機器内の限られた狭い設置スペースにも設置可能とする観点から、アノード10、セパレータ40及びカソード20からなる積層体(アノード、セパレータ及びカソードからなる積層体)の厚さ(素体60の厚さ)が、0.1〜0.4mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであることがより好ましい。
【0050】
電気化学キャパシタ1は、キャパシタ容量が1×10−3〜1Fであることが好ましく、0.01〜0.10Fであることがより好ましい。これにより、フィルム状でありながら容量の大きい電気二重層キャパシタが得られる。これらは薄い特性を活かし、ICカード、ICタグ等への利用も可能となる。また、玩具等への用途や携帯機器への用途も拡大する。
【0051】
つぎに、上述したケース50及び電気化学キャパシタ1の作製方法について説明する。
【0052】
素体60(アノード10、セパレータ40及びカソード20がこの順で順次積層された積層体)の製造方法は、特に限定されず、公知の電気化学キャパシタの製造に採用されている公知の薄膜製造技術を用いることができる。
【0053】
アノード10及びカソード20となる電極が炭素電極の場合、例えば、公知の方法により賦活処理済みの活性炭等の炭素材料(アノード10の製造においては略球状の炭素材料、カソード20の製造においては繊維状の炭素材料)を用いてシート状の電極を作製することができる。この場合、例えば、炭素材料を5〜100μm程度に粉砕し粒度を整えた後、例えば炭素粉末に導電性を付与するための導電性補助剤(カーボンブラック等)と、例えば結着剤(ポリテトラフルオロエチレン,以下、PTFEという)とを添加して混練し、混練物を圧延伸してシート状に成形して製造する。
【0054】
ここで、上記の導電性補助剤としては、カーボンブラックの他、粉末グラファイトなどを用いることができ、また、結着剤としては、PTFEの他、PVDF、PE、PP、フッ素ゴムなどを使用することができる。
【0055】
次に、アノード10及びカソード20のそれぞれに対して、アノード用リード12及びカソード用リード22をそれぞれ電気的に接続する。セパレータ40をアノード10とカソード20との間に接触した状態(非接着状態)で配置し、素体60を完成する。
【0056】
次に、ケース50の作製方法の一例について説明する。まず、第1のフィルム及び第2のフィルムを先に述べた複合包装フィルムから構成する場合には、ドライラミネ−ション法、ウエットラミネ−ション法、ホットメルトラミネ−ション法、エクストル−ジョンラミネ−ション法等の既知の製造法を用いて作製する。
【0057】
例えば、複合包装フィルムを構成する合成樹脂製の層となるフィルム、アルミニウム等からなる金属箔を用意する。金属箔は、例えば金属材料を圧延加工することにより用意することができる。
【0058】
次に、好ましくは先に述べた複数の層の構成となるように、合成樹脂製の層となるフィルムの上に接着剤を介して金属箔を貼り合わせる等して複合包装フィルム(多層フィルム)を作製する。そして、複合包装フィルムを所定の大きさに切断し、矩形状のフィルム53を1枚用意する。
【0059】
次に、先に図2を参照して説明したように、1枚のフィルム53を折り曲げ、この折り曲げたフィルム53内(第1のフィルム51と第2のフィルム52との間)に素体60を挟み込む。その際、素体60のリード部(アノード用リード12及びカソード用リード22)の一部をシール部51B及びシール部52Bからケース50の外部に突出るようにする。次に、第1のフィルム51のシール部51B(縁部51B)と第2のフィルムのシール部52B(縁部52B)を、例えば、シール機を用いて所定の加熱条件で所望のシール幅だけヒートシールする。このとき、電解質溶液30をケース50中に導入するための開口部を確保するために、一部のヒートシールを行わない部分を設けておく。これにより開口部を有した状態のケース50が得られる。
【0060】
そして、この素体60の入ったケース50の開口部より電解質溶液30を注入する。続いて、アノード用リード12、カソード用リード22の一部をそれぞれケース50内に挿入した状態で、シール機を用いて、ケース50の開口部をシールする。このようにしてケース50及び電気化学キャパシタ1の作製が完了する。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の説明においては、主として、本発明を電気二重層キャパシタに適用した場合に好適な構成について説明したが、本発明の電気化学キャパシタは電気二重層キャパシタに限定されるものではなく、例えば、レドックスキャパシタ等の、互いに対向するアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に隣接して配置される板状のセパレータと、電解質溶液とを有し、これらがケース内に収容される構成の電気二重層キャパシタに適用可能である。
【0062】
また、電気化学キャパシタは、アノード10とカソード20との間にセパレータ40が配置された3層構造のものの他に、電極(アノード10又はカソード20)とセパレータとが交互に積層された5層以上の積層体からなる構成を有していてもよい。
【0063】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の電気化学キャパシタの内容をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
以下の手順により、図1に示した電気化学キャパシタと同様の構成を有する電気化学キャパシタを作製した。
【0065】
(1)電極の作製
アノード(分極性電極)及びカソード(分極性電極)は以下の手順により作製した。先ず、アノードの形成方法を説明する。賦活処理を施した略球状の活性炭素材料(比表面積:2000m2/g、アスペクト比:1〜1.5)と、バインダー{フッ素系樹脂、デュポン社製、商品名:「Viton−GF」}と、導電助剤(アセチレンブラック、電気化学工業社製、商品名:「DENKABLACK」)とを、これらの質量比が炭素材料:バインダー:導電助剤=80:10:10となるように配合し、これを溶媒であるNMP(N−メチルピロリドン)中に投入して混練することにより、アノード形成用の塗布液(以下、「塗布液L1」という)を調製した。
【0066】
次に、この塗布液L1をアルミニウム箔からなる集電体(厚さ:50μm)の一方の面上に均一に塗布した。その後、乾燥処理により、塗膜からNMPを除去し、更に圧延ロールを用いて集電体と乾燥後の塗膜とからなる積層体をプレスし、アルミニウム箔からなる集電体(厚さ:50μm)の一方の面上に電子伝導性の多孔体層(厚さ:0.120mm)が形成された電極(以下、「アノードE1」という)を作製した。
【0067】
次に、このアノードE1を矩形(大きさ:17.5mm×32.3mm)状を呈するように切断し、更に、150℃〜175℃の温度で真空乾燥を12時間以上行うことにより、電子伝導性の多孔体層の表面に吸着した水分を除去し、実施例1の電気化学キャパシタに搭載するアノードを作製した。
【0068】
次に、カソードの形成方法を説明する。賦活処理を施した繊維状の活性炭素材料(比表面積:2000m2/g、アスペクト比:2〜8)と、バインダー{フッ素系樹脂、デュポン社製、商品名:「Viton−GF」}と、導電助剤(アセチレンブラック、電気化学工業社製、商品名:「DENKABLACK」)とを、これらの質量比が炭素材料:バインダー:導電助剤=80:10:10となるように配合し、これを溶媒であるNMP(N−メチルピロリドン)中に投入して混練することにより、カソード形成用の塗布液(以下、「塗布液L2」という)を調製した。
【0069】
次に、この塗布液L2をアルミニウム箔からなる集電体(厚さ:50μm)の一方の面上に均一に塗布した。その後、乾燥処理により、塗膜からNMPを除去し、更に圧延ロールを用いて集電体と乾燥後の塗膜とからなる積層体をプレスし、アルミニウム箔からなる集電体(厚さ:50μm)の一方の面上に電子伝導性の多孔体層(厚さ:0.132mm)が形成された電極(以下、「カソードE2」という)を作製した。
【0070】
次に、このカソードE2を矩形(大きさ:17.5mm×32.3mm)状を呈するように切断し、更に、150℃〜175℃の温度で真空乾燥を12時間以上行うことにより、電子伝導性の多孔体層の表面に吸着した水分を除去し、実施例1の電気化学キャパシタに搭載するカソードを作製した。
【0071】
(2)電気化学キャパシタの作製
先ず、作製したアノード及びカソードの電子伝導性の多孔体層の形成されていない側の集電体の面の外縁部にアルミニウム箔からなるタブ部(幅4mm、長さ3mm)を、集電体にタブ部が電気的に接続された状態で配設した。また、アノード及びカソードの各タブ部に、アルミニウムリボン(幅3mm、長さ20mm)からなるリードをそれぞれ超音波溶接により電気的に接続した。次に、アノード及びカソードを互いに対向させ、その間に再生セルロース不織布からなるセパレータ(18.0mm×33.5mm、厚さ:0.05mm、ニッポン高度紙工業製、商品名:「TF4050」)を配置し、アノード、セパレータ及びカソードがこの順で接触した状態(非接合の状態)で積層された積層体(素体)を形成した。
【0072】
次に、タブ部にシーラント材を熱圧着した。次に、上記積層体(素体)を可とう性を有する複合包装フィルムから形成されたケース中へ入れ、タブ部同士をヒートシールした。可とう性を有する複合包装フィルムとしては、電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層(変性ポリプロピレンからなる層)、アルミニウム箔からなる金属層、ポリアミドからなる層がこの順で順次積層された積層体を使用した。そして、この複合包装フィルムを2枚重ね合せてその縁部をヒートシールして作製した。
【0073】
上記ケース内へ電解質溶液(1.2mol/Lの四フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム塩のプロピレンカーボネート溶液)を注入した後、真空シールすることにより電気化学キャパシタ(電気二重層キャパシタ)の作製を完了した。
【0074】
(比較例1)
実施例1の電気化学キャパシタに搭載したアノードと同一の手順及び条件で作成した電極をカソードとして搭載し、実施例1の電気化学キャパシタに搭載したカソードと同一の手順及び条件で作成した電極をアノードとして搭載したこと以外は、実施例1の電気化学キャパシタと同様の手順及び条件により電気化学キャパシタを作製した。
【0075】
(比較例2)
実施例1の電気化学キャパシタに搭載したアノードと同一の手順及び条件で作成した電極を、アノード及びカソードとして搭載したこと以外は、実施例1の電気化学キャパシタと同様の手順及び条件により電気化学キャパシタを作製した。
【0076】
(比較例3)
実施例1の電気化学キャパシタに搭載したカソードと同一の手順及び条件で作成した電極を、アノード及びカソードとして搭載したこと以外は、実施例1の電気化学キャパシタと同様の手順及び条件により電気化学キャパシタを作製した。
【0077】
[電気二重層キャパシタの特性評価試験]
実施例1及び比較例1〜比較例3の各電気二重層キャパシタについて以下の諸特性を測定した。
【0078】
充放電の測定は、充放電試験装置(北斗電工(株)製、HJ−101SM6)を使用した。先ず、0.5Cの定電流充電を行い、電気二重層キャパシタに電荷が蓄積していくに従って電圧が上昇するのをモニタし、電位が2.5Vに達したのち、定電圧充電(緩和充電)に移行し、電流が充電電流の1/10になった時に充電を終了させた。そして、放電も0.5Cの定電流放電を行い終止電圧を0Vとした。この試験後、1Cの電流で充電を行い、電位が2.5Vに達した後、定電圧充電に移行し、電流が充電電流の1/10になったときに充電を終了させた。そして、放電も1Cの定電流放電を行い終止電圧を0Vとした。再び充電を開始させ、これを10回繰り返した。
【0079】
キャパシタ容量(電気化学キャパシタのセルの静電容量)は次のようにして求めた。すなわち、放電曲線(放電電圧−放電時間)から放電エネルギー(放電電圧×電流の時間積分として合計放電エネルギー[W・s]を求め、キャパシタ容量[F]=2×合計放電エネルギー[W・s]/(放電開始電圧[V])2の関係式を用いて評価セルのキャパシタ容量[F]を求めた。
【0080】
次に、各電気化学キャパシタの内部抵抗(インピーダンス)は以下の方法で求めた。すなわち、測定環境温度25℃、相対湿度60%において、Solartron(東陽テクニカ社製,商品名)を用いて測定した1KHzの周波数における値を示した。
【0081】
「レート特性」(C2/C1)は以下の定義に基づいて算出した。すなわち、「C1」ととは、キャパシタ容量がαFである電気化学キャパシタを、放電電流値:α×10−3Aで放電させた場合の静電容量を示す。また、「C2」とは、上記C1を測定した同一の電気化学キャパシタ(キャパシタ容量がαFである電気化学キャパシタ)を、放電電流値:100×α×10−3Aで放電させた場合の静電容量を示す。そして、「レート特性」は、上記C2をC1で除した値(C2/C1)を示す。この「レート特性」の値が大きな電気化学キャパシタは、優れた充放電特性を有していると評価することができる。例えば、実施例1の電気化学キャパシタでは、α=1.8Fであるので、C1は1.8mAの電流値で放電した際に測定される静電容量となり、C2は180mAの電流値で放電した際に測定される静電容量となる。
【0082】
表1に、実施例1及び比較例1〜比較例3の各電気化学キャパシタの内部抵抗と、レート特性とを示す。なお、表1における内部抵抗値のうち、「初期」と記載された内部抵抗値は、セルを作製した直後に測定した値を示す。また、表1における内部抵抗値のうち、「容量確認後」と記載された内部抵抗値は、1C充放電を10サイクルした後の値を示す。更に、表1における内部抵抗値のうち、「レート特性評価試験後」と記載された内部抵抗値は、容量確認後にレート試験を行い、残留放電後に測定した値を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
本測定結果から実施例1の結果は、各比較例に比して内部抵抗が十分に低減されており、優れたレート特性(充放電特性)を示すことが確認された。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、内部抵抗が十分に低減されており、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学キャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気化学キャパシタの好適な一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す電気化学キャパシタの内部をアノード10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。
【図3】図1に示す電気化学キャパシタを図1のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。
【図4】図1に示す電気化学キャパシタを図1のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
【図5】図1に示す電気化学キャパシタを図1のY−Y線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
【図6】図1に示す電気化学キャパシタのケースの構成材料となるフィルムの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【図7】図1に示す電気化学キャパシタのケースの構成材料となるフィルムの基本構成の別の一例を示す模式断面図である。
【図8】図1に示す電気化学キャパシタのアノードの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【図9】図1に示す電気化学キャパシタのカソードの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…電気化学キャパシタ、10…アノード、12…アノード用リード、14…絶縁体、20…カソード、22…カソード用リード、24…絶縁体、30…電解質溶液、40…セパレータ、50…ケース、60…素体。
【発明の属する技術分野】
本発明は電気化学キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層キャパシタをはじめとする電気化学キャパシタは、分極性電極の電極電解質溶液界面に生ずる電気二重層に起因する容量を利用するものである。分極性電極は、一般に多孔質の炭素材料を構成材料として用いて形成されている。
【0003】
電気二重層キャパシタをはじめとする電気化学キャパシタは、容易に小型化、軽量化が可能であるため、例えば、携帯機器(小型電子機器)等の電源のバックアップ用電源、ハイブリッド車向けの補助電源として期待され、その性能向上のための様々な検討がなされている。
【0004】
上記の検討としては、例えば、アノードに使用する炭素材料の比表面積と、カソードに使用する炭素材料の比表面積とをそれぞれ所定の範囲に調節して構成することにより性能向上を意図した電気二重層キャパシタ(例えば、下記特許文献1参照。)や、互いに特性が異なる複数種の活性炭(例えば、内部抵抗の低い活性炭と静電容量やエネルギー密度の大きい活性炭との混合物)を用いて形成した電極を備える構成とすることにより性能向上を意図した電気二重層キャパシタが提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−107047号公報
【特許文献2】
特開2000−353642号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の電気二重層キャパシタをはじめとする従来の電気化学キャパシタは、内部抵抗(インピーダンス)を十分に低減できておらず、未だ十分な充放電特性を得ることができていないことを本発明者らは見出した。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、内部抵抗が十分に低減されており、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学キャパシタを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究を重ねた結果、以下の特定の幾何学的条件を満たす炭素材料を用いて形成したアノードと、以下の特定の幾何学的条件を満たす炭素材料を用いて形成したカソードとの組み合せを有する単位セルの構成が、上述の目的を達成する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は、互いに対向するアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に配置される絶縁性のセパレータと、電解質溶液と、アノード、カソード、セパレータ及び電解質溶液を密閉した状態で収容するケースと、を有しており、アノードが、電子伝導性を有する略球状の炭素材料を構成材料として含んでおり、かつ、カソードが、電子伝導性を有する繊維状の炭素材料を構成材料として含んでいること、を特徴とする電気化学キャパシタを提供する。
【0010】
略球状の炭素材料を用いて形成した電極をアノードとし、繊維状の炭素材料を用いて形成した電極をカソードとして備えることにより、本発明の電気化学キャパシタは、内部抵抗が十分に低減され、優れた充放電特性を発揮することができる。
【0011】
ここで、本発明において、「アノード」及び「カソード」は、電気化学キャパシタの放電時の極性を基準に決定したものである。つまり、電気化学キャパシタの放電時に電子を放出する側の電極が「アノード」であり、放電時に電子を受容する側の電極が「カソード」である。
【0012】
また、本発明において、「繊維状の炭素材料」とは、その粒子のアスペクト比が2以上のものを示す。繊維状の炭素材料のアスペクト比が2未満となると、後述する「略球状の炭素材料」のアスペクト比との差が不十分となるとともに、キャパシタのインピーダンスが上がり、十分なレート特性が得られない。なお、上述した本発明の効果をより確実に得る観点から、「繊維状の炭素材料」からなる粒子のアスペクト比は2〜8であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。繊維状の炭素材料のアスペクト比が8を超えると、繊維状の炭素材料を含む電極形成用の塗布液又は電極形成用の混練物を調製する際の塗料化すること(塗工可能な粘度を有する液とすること)が困難となる傾向が大きくなる。
【0013】
更に、本発明において、「略球状の炭素材料」とは、その粒子のアスペクト比が1.5以下のものを示す。従って、この略球状の炭素材料からなる粒子は、このアスペクト比を略球状の炭素材料のアスペクト比が1.5を超えると、上述の「繊維状の炭素材料」のアスペクト比との差が不十分となるとともに、電流密度が低下し、エネルギー密度の損失が大きくなる。なお、上述した本発明の効果をより確実に得る観点から、「略球状の炭素材料」からなる粒子のアスペクト比は1〜1.5であることが好ましく、1〜1.3であることがより好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明による電気化学キャパシタを電気二重層キャパシタに適用した場合について、その好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は本発明の電気化学キャパシタの好適な一実施形態を示す正面図である。また、図2は図1に示す電気化学キャパシタの内部をアノード10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。更に、図3は図1に示す電気化学キャパシタを図1のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。また、図4は図1に示す電気化学キャパシタを図1のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
【0016】
図1〜図5に示すように、電気化学キャパシタ1は、主として、互いに対向する板状のアノード10(アノード)及び板状のカソード20(カソード)と、アノード10とカソード20との間に隣接して配置される板状のセパレータ40と、電解質溶液30と、これらを密閉した状態で収容するケース50と、アノード10に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケース50の外部に突出されるアノード用リード12と、カソード20に一方の端部が電気的に接続されると共に他方の端部がケース50の外部に突出されるカソード用リード22とから構成されている。ここで、「アノード」10及び「カソード」20は、電気化学キャパシタ1の放電時の極性を基準に決定したものである。
【0017】
そして、電気化学キャパシタ1は、先に述べた本発明の目的を達成するために、以下に説明する構成を有している。
【0018】
以下に図1〜図9に基づいて本実施形態の各構成要素の詳細を説明する。
【0019】
ケース50は、互いに対向する第1のフィルム51及び第2のフィルム52とを有している。ここで、図2に示すように、本実施形態における第1のフィルム51及び第2のフィルム52は連結されている。すなわち、本実施形態におけるケース50は、一枚の複合包装フィルムからなる矩形状のフィルム53を、図2に示す折り曲げ線X3−X3において折り曲げ、矩形状のフィルムの対向する1組の縁部同士(図中の第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルムの縁部52B)を重ね合せて接着剤を用いるか又はヒートシールを行うことにより形成されている。
【0020】
そして、第1のフィルム51及び第2のフィルム52は、1枚の矩形状のフィルムを上述のように折り曲げた際にできる互いに対向する面(F51及びF52)を有する該フィルムの部分をそれぞれ示す。ここで、本明細書において、接合された後の第1のフィルム51及び第2のフィルム52のそれぞれの縁部を「シール部」という。
【0021】
これにより、折り曲げ線X3−X3の部分に第1のフィルム51と第2のフィルム52とを接合させるためのシール部を設ける必要がなくなるため、ケース50におけるシール部をより低減することができる。その結果、後述する電気化学キャパシタ1の設置されるべき設置空間の単位体積当たりのエネルギー密度(以下、「設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度」という)を向上させることができる。
【0022】
また、本実施形態の場合、図1及び図2に示すように、アノード10に接続されたアノード用リード12及びカソード用リード22のそれぞれの一端が上述の第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルムの縁部52Bシール部とを接合したシール部から外部に突出するように配置されている。
【0023】
更に、第1のフィルム51及び第2のフィルム52を構成するフィルムは可とう性を有するフィルムである。このように軽量であり薄膜化が容易な可とう性を有するフィルムを用いて形成されたケース50を備え、更に、アノード10、カソード20及びセパレータ40のそれぞれの形状を板状とすることにより、電気化学キャパシタ1の自体の形状を薄膜状とすることができる。フィルムは軽量であり薄膜化が容易なため、電気化学キャパシタ自体の形状を薄膜状とすることができる。そのため、本来の体積エネルギー密度を容易に向上させることができるとともに、電気化学キャパシタの設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度も容易に向上させることができる。
【0024】
ここで、電気化学キャパシタの「体積エネルギー密度」とは、本来、電気化学キャパシタの容器を含む全体積に対する全出力エネルギーの割合で定義されるものである。これに対して、「設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度」とは、電気化学キャパシタの最大縦、最大横、最大厚さに基づいて求められる見かけ上の体積に対する電気化学キャパシタの全出力エネルギーの割合を意味する。実際に、電気化学キャパシタを小型電子機器に搭載する場合、上述した本来の体積エネルギー密度の向上とともに、設置されるべき空間の体積を基準とする体積エネルギー密度を向上させることが、小型電子機器内の限られたスペースをデッドスペースを充分に低減した状態で有効利用する観点から重要となる。
【0025】
このフィルムは可とう性を有するフィルムであれば特に限定されないが、ケースの十分な機械的強度と軽量性を確保しつつ、ケース外部からケース内部への水分や空気の侵入及びケース内部からケース外部への電解質成分の逸散を効果的に防止する観点から、電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層と、最内部の層の上方に配置される金属層とを少なくとも有する「複合包装フィルム」であることが好ましい。
【0026】
第1のフィルム51及び第2のフィルム52として使用可能な複合包装フィルムとしては、例えば、図6及び図7に示す構成の複合包装フィルムが挙げられる。図6示す複合包装フィルム53は、その内面F50aにおいて電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層50aと、最内部の層50aのもう一方の面(外側の面)上に配置される金属層50cと有する。また、図7示す複合包装フィルム54は、図6示す複合包装フィルム53の金属層50cの外側の面に更に合成樹脂製の最外部の層50bが配置された構成を有する。
【0027】
第1のフィルム51及び第2のフィルム52として使用可能な複合包装フィルムは、上述の最内部の層をはじめとする1以上の合成樹脂の層、金属箔などの金属層を備えた2以上の層を有する複合包装材であれば特に限定されないが、上記と同様の効果をより確実に得る観点から、図7に示した複合包装フィルム54のように、最内部の層と、最内部の層から最も遠いケース50の外表面の側に配置される合成樹脂製の最外部の層と、最内部の層と最外部の層との間に配置される少なくとも1つの金属層とを有する3層以上の層から構成されていることがより好ましい。
【0028】
最内部の層は可とう性を有する層であり、その構成材料は上記の可とう性を発現させることが可能であり、かつ、使用される電解質溶液に対する化学的安定性(化学反応、溶解、膨潤が起こらない特性)、並びに、酸素及び水(空気中の水分)に対する化学的安定性を有している合成樹脂であれば特に限定されないが、更に酸素、水(空気中の水分)及び電解質溶液の成分に対する透過性の低い特性を有している材料が好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン酸変成物、ポリプロピレン酸変成物、ポリエチレンアイオノマー、ポリプロピレンアイオノマー等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0029】
また、上述した図7に示した複合包装フィルム54のように、最内部の層50a以外に、最外部の層50b等のような合成樹脂製の層を更に設ける場合、この合成樹脂製の層も、上記最内部の層と同様の構成材料を使用してよい。更に、この合成樹脂製の層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(ナイロン)等のエンジニアリングプラスチックからなる層を使用してもよい。
【0030】
また、ケース50における全てのシール部のシール方法は、特に限定されないが、生産性の観点から、ヒートシール法であることが好ましい。
【0031】
金属層としては、酸素、水(空気中の水分)及び電解質溶液に対する耐腐食性を有する金属材料から形成されている層であることが好ましい。例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、クロム等からなる金属箔を使用してもよい。
【0032】
次に、アノード10及びカソード20について説明する。図8は図1に示す電気化学キャパシタのアノードの基本構成の一例を示す模式断面図である。また、図9は、図1に示す電気化学キャパシタのカソードの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【0033】
図8に示すようにアノード10は、集電体16と、該集電体16上に形成された電子伝導性の多孔体層18とからなる。この多孔体層18は、電子伝導性を有する略球状の炭素材料を構成材料として含んでいる。また、図9に示すようにカソード20は、集電体26と、該集電体26上に形成された電子伝導性の多孔体層28とからなる。この多孔体層19は、電子伝導性を有する繊維状の炭素材料を構成材料として含んでいる。この多孔体層18を有するアノード10と、多孔体層19を有するカソード20とを備えるため、電気化学キャパシタ1は内部抵抗が十分に低減されており、優れた充放電特性を有している。
【0034】
集電体16及び集電体26は、多孔体層18及び多孔体層28への電荷の移動を充分に行うことができる良導体であれば特に限定されず、公知の電気二重層キャパシタに用いられている集電体を使用することができる。例えば、集電体16及び集電体26としては、アルミニウムなどの金属箔等が挙げられる。
【0035】
多孔体層18は、その構成材料に略球状の炭素材料(アスペクト比が1.5以下、好ましくは1〜1.5、より好ましくは1〜1.3のもの)を含んで構成されていれば、その他の構成条件は特に限定されないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、多孔体層18中の略球状の炭素材料の含有量は、多孔体層18の総質量を基準として、75〜90質量%であることが好ましい。
【0036】
略球状の炭素材料としては、活性炭が好ましい。例えば、活性炭としては、原料炭{例えば、石油系重質油の流動接触分解装置のボトム油や減圧蒸留装置の残さ油を原料油とするディレードコーカーより製造された石油コークス又は樹脂を炭化したもの(フェノール樹脂など)や天然材料を炭化したもの(例えばヤシ殻炭)等}を賦活処理することにより得られるものを主成分としているものが好ましい。また、本発明の効果をより確実に得る観点から、略球状の炭素材料の比表面積は1000〜3000m2/gであることが好ましい。
【0037】
また、多孔体層18には、バインダー等の炭素材料以外の構成材料が含まれていてもよい。その種類とその含有量は特に限定されるものではない。例えば、炭素粉末に導電性を付与するための導電性補助剤(カーボンブラック等)と、例えばバインダー(ポリテトラフルオロエチレン,以下、PTFEという)とが添加されていてもよい。
【0038】
更に、多孔体層19は、その構成材料に繊維状の炭素材料(アスペクト比が2以上、好ましくは2〜8、より好ましくは4〜6のもの)を含んで構成されていれば、その他の構成条件は特に限定されないが、本発明の効果をより確実に得る観点から、多孔体層19中の繊維状の炭素材料の含有量は、多孔体層19の総質量を基準として、75〜90質量%であることが好ましい。
【0039】
繊維状の炭素材料としては、活性炭が好ましい。例えば、活性炭としては、原料炭{例えば、石油系重質油の流動接触分解装置のボトム油や減圧蒸留装置の残さ油を原料油とするディレードコーカーより製造された石油コークス又は樹脂を炭化したもの(フェノール樹脂など)や天然材料を炭化したもの(例えばヤシ殻炭)等}を賦活処理することにより得られるものを主成分としているものが好ましい。また、本発明の効果をより確実に得る観点から、繊維状の炭素材料の比表面積は1000〜3000m2/gであることが好ましい。
【0040】
また、多孔体層19には、バインダー等の炭素材料以外の構成材料が含まれていてもよい。その種類とその含有量は特に限定されるものではない。例えば、炭素粉末に導電性を付与するための導電性補助剤(カーボンブラック等)と、例えばバインダー(ポリテトラフルオロエチレン,以下、PTFEという)とが添加されていてもよい。
【0041】
アノード10とカソード20との間に配置されるセパレータ40は、絶縁性の多孔体から形成されていれば特に限定されず、公知の電気二重層キャパシタに用いられているセパレータを使用することができる。例えば、絶縁性の多孔体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
【0042】
ただし、電解質溶液との接触界面を充分に確保する観点から、多孔体層18の空隙体積Zは、多孔体層体積100μLの時に50〜75μLであることが好ましく、60〜70μLであることがより好ましい。なお、空隙体積Zを求める方法は特に限定されず、公知の方法により求めることができる。
【0043】
また、カソード20の集電体28は、例えばアルミニウムからなるカソード用リード22の一端に電気的に接続され、カソード用リード22の他端はケース50の外部に延びている。一方、アノード10の集電体18も、例えばアルミニウムからなるアノード用リード12の一端に電気的に接続され、アノード用リード12の他端は封入袋14の外部に延びている。
【0044】
電解質溶液30はケース50の内部空間に充填され、その一部は、アノード10及びカソード20、及びセパレータ40の内部に含有されている。
【0045】
この電解質溶液30は、特に限定されず、公知の電気二重層キャパシタに用いられている電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、キャパシタの耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解質溶液)であることが好ましい。
【0046】
更に、電解質溶液30の種類は特に限定されないが、一般的には溶質の溶解度、解離度、液の粘性を考慮して選択され、高導電率でかつ高電位窓(分解開始電圧が高い)の電解質溶液であることが望ましい。例えば、代表的な例としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩を、プロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホランなどの有機溶媒に溶解したものが使用される。なお、この場合、混入水分を厳重に管理する必要がある。
【0047】
更に、図1及び図2に示すように、第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルムの縁部52Bからなる封入袋のシール部に接触するアノード用リード12の部分の部分には、アノード用リード12と各フィルムを構成する複合包装フィルム中の金属層との接触を防止するための絶縁体14が被覆されている。更に、第1のフィルム51の縁部51B及び第2のフィルムの縁部52Bからなる封入袋のシール部に接触するカソード用リード22の部分には、カソード用リード22と各フィルムを構成する複合包装フィルム中の金属層との接触を防止するための絶縁体24が被覆されている。
【0048】
これら絶縁体14及び絶縁体24の構成は特に限定されないが、例えば、それぞれ合成樹脂から形成されていてもよい。なお、アノード用リード12及びカソード用リード22のそれぞれに対する複合包装フィルム中の金属層の接触が充分に防止可能であれば、これら絶縁体14及び絶縁体24は配置しない構成としてもよい。
【0049】
更に、携帯用の小型電子機器内の限られた狭い設置スペースにも設置可能とする観点から、アノード10、セパレータ40及びカソード20からなる積層体(アノード、セパレータ及びカソードからなる積層体)の厚さ(素体60の厚さ)が、0.1〜0.4mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであることがより好ましい。
【0050】
電気化学キャパシタ1は、キャパシタ容量が1×10−3〜1Fであることが好ましく、0.01〜0.10Fであることがより好ましい。これにより、フィルム状でありながら容量の大きい電気二重層キャパシタが得られる。これらは薄い特性を活かし、ICカード、ICタグ等への利用も可能となる。また、玩具等への用途や携帯機器への用途も拡大する。
【0051】
つぎに、上述したケース50及び電気化学キャパシタ1の作製方法について説明する。
【0052】
素体60(アノード10、セパレータ40及びカソード20がこの順で順次積層された積層体)の製造方法は、特に限定されず、公知の電気化学キャパシタの製造に採用されている公知の薄膜製造技術を用いることができる。
【0053】
アノード10及びカソード20となる電極が炭素電極の場合、例えば、公知の方法により賦活処理済みの活性炭等の炭素材料(アノード10の製造においては略球状の炭素材料、カソード20の製造においては繊維状の炭素材料)を用いてシート状の電極を作製することができる。この場合、例えば、炭素材料を5〜100μm程度に粉砕し粒度を整えた後、例えば炭素粉末に導電性を付与するための導電性補助剤(カーボンブラック等)と、例えば結着剤(ポリテトラフルオロエチレン,以下、PTFEという)とを添加して混練し、混練物を圧延伸してシート状に成形して製造する。
【0054】
ここで、上記の導電性補助剤としては、カーボンブラックの他、粉末グラファイトなどを用いることができ、また、結着剤としては、PTFEの他、PVDF、PE、PP、フッ素ゴムなどを使用することができる。
【0055】
次に、アノード10及びカソード20のそれぞれに対して、アノード用リード12及びカソード用リード22をそれぞれ電気的に接続する。セパレータ40をアノード10とカソード20との間に接触した状態(非接着状態)で配置し、素体60を完成する。
【0056】
次に、ケース50の作製方法の一例について説明する。まず、第1のフィルム及び第2のフィルムを先に述べた複合包装フィルムから構成する場合には、ドライラミネ−ション法、ウエットラミネ−ション法、ホットメルトラミネ−ション法、エクストル−ジョンラミネ−ション法等の既知の製造法を用いて作製する。
【0057】
例えば、複合包装フィルムを構成する合成樹脂製の層となるフィルム、アルミニウム等からなる金属箔を用意する。金属箔は、例えば金属材料を圧延加工することにより用意することができる。
【0058】
次に、好ましくは先に述べた複数の層の構成となるように、合成樹脂製の層となるフィルムの上に接着剤を介して金属箔を貼り合わせる等して複合包装フィルム(多層フィルム)を作製する。そして、複合包装フィルムを所定の大きさに切断し、矩形状のフィルム53を1枚用意する。
【0059】
次に、先に図2を参照して説明したように、1枚のフィルム53を折り曲げ、この折り曲げたフィルム53内(第1のフィルム51と第2のフィルム52との間)に素体60を挟み込む。その際、素体60のリード部(アノード用リード12及びカソード用リード22)の一部をシール部51B及びシール部52Bからケース50の外部に突出るようにする。次に、第1のフィルム51のシール部51B(縁部51B)と第2のフィルムのシール部52B(縁部52B)を、例えば、シール機を用いて所定の加熱条件で所望のシール幅だけヒートシールする。このとき、電解質溶液30をケース50中に導入するための開口部を確保するために、一部のヒートシールを行わない部分を設けておく。これにより開口部を有した状態のケース50が得られる。
【0060】
そして、この素体60の入ったケース50の開口部より電解質溶液30を注入する。続いて、アノード用リード12、カソード用リード22の一部をそれぞれケース50内に挿入した状態で、シール機を用いて、ケース50の開口部をシールする。このようにしてケース50及び電気化学キャパシタ1の作製が完了する。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の説明においては、主として、本発明を電気二重層キャパシタに適用した場合に好適な構成について説明したが、本発明の電気化学キャパシタは電気二重層キャパシタに限定されるものではなく、例えば、レドックスキャパシタ等の、互いに対向するアノード及びカソードと、アノードとカソードとの間に隣接して配置される板状のセパレータと、電解質溶液とを有し、これらがケース内に収容される構成の電気二重層キャパシタに適用可能である。
【0062】
また、電気化学キャパシタは、アノード10とカソード20との間にセパレータ40が配置された3層構造のものの他に、電極(アノード10又はカソード20)とセパレータとが交互に積層された5層以上の積層体からなる構成を有していてもよい。
【0063】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の電気化学キャパシタの内容をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
以下の手順により、図1に示した電気化学キャパシタと同様の構成を有する電気化学キャパシタを作製した。
【0065】
(1)電極の作製
アノード(分極性電極)及びカソード(分極性電極)は以下の手順により作製した。先ず、アノードの形成方法を説明する。賦活処理を施した略球状の活性炭素材料(比表面積:2000m2/g、アスペクト比:1〜1.5)と、バインダー{フッ素系樹脂、デュポン社製、商品名:「Viton−GF」}と、導電助剤(アセチレンブラック、電気化学工業社製、商品名:「DENKABLACK」)とを、これらの質量比が炭素材料:バインダー:導電助剤=80:10:10となるように配合し、これを溶媒であるNMP(N−メチルピロリドン)中に投入して混練することにより、アノード形成用の塗布液(以下、「塗布液L1」という)を調製した。
【0066】
次に、この塗布液L1をアルミニウム箔からなる集電体(厚さ:50μm)の一方の面上に均一に塗布した。その後、乾燥処理により、塗膜からNMPを除去し、更に圧延ロールを用いて集電体と乾燥後の塗膜とからなる積層体をプレスし、アルミニウム箔からなる集電体(厚さ:50μm)の一方の面上に電子伝導性の多孔体層(厚さ:0.120mm)が形成された電極(以下、「アノードE1」という)を作製した。
【0067】
次に、このアノードE1を矩形(大きさ:17.5mm×32.3mm)状を呈するように切断し、更に、150℃〜175℃の温度で真空乾燥を12時間以上行うことにより、電子伝導性の多孔体層の表面に吸着した水分を除去し、実施例1の電気化学キャパシタに搭載するアノードを作製した。
【0068】
次に、カソードの形成方法を説明する。賦活処理を施した繊維状の活性炭素材料(比表面積:2000m2/g、アスペクト比:2〜8)と、バインダー{フッ素系樹脂、デュポン社製、商品名:「Viton−GF」}と、導電助剤(アセチレンブラック、電気化学工業社製、商品名:「DENKABLACK」)とを、これらの質量比が炭素材料:バインダー:導電助剤=80:10:10となるように配合し、これを溶媒であるNMP(N−メチルピロリドン)中に投入して混練することにより、カソード形成用の塗布液(以下、「塗布液L2」という)を調製した。
【0069】
次に、この塗布液L2をアルミニウム箔からなる集電体(厚さ:50μm)の一方の面上に均一に塗布した。その後、乾燥処理により、塗膜からNMPを除去し、更に圧延ロールを用いて集電体と乾燥後の塗膜とからなる積層体をプレスし、アルミニウム箔からなる集電体(厚さ:50μm)の一方の面上に電子伝導性の多孔体層(厚さ:0.132mm)が形成された電極(以下、「カソードE2」という)を作製した。
【0070】
次に、このカソードE2を矩形(大きさ:17.5mm×32.3mm)状を呈するように切断し、更に、150℃〜175℃の温度で真空乾燥を12時間以上行うことにより、電子伝導性の多孔体層の表面に吸着した水分を除去し、実施例1の電気化学キャパシタに搭載するカソードを作製した。
【0071】
(2)電気化学キャパシタの作製
先ず、作製したアノード及びカソードの電子伝導性の多孔体層の形成されていない側の集電体の面の外縁部にアルミニウム箔からなるタブ部(幅4mm、長さ3mm)を、集電体にタブ部が電気的に接続された状態で配設した。また、アノード及びカソードの各タブ部に、アルミニウムリボン(幅3mm、長さ20mm)からなるリードをそれぞれ超音波溶接により電気的に接続した。次に、アノード及びカソードを互いに対向させ、その間に再生セルロース不織布からなるセパレータ(18.0mm×33.5mm、厚さ:0.05mm、ニッポン高度紙工業製、商品名:「TF4050」)を配置し、アノード、セパレータ及びカソードがこの順で接触した状態(非接合の状態)で積層された積層体(素体)を形成した。
【0072】
次に、タブ部にシーラント材を熱圧着した。次に、上記積層体(素体)を可とう性を有する複合包装フィルムから形成されたケース中へ入れ、タブ部同士をヒートシールした。可とう性を有する複合包装フィルムとしては、電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層(変性ポリプロピレンからなる層)、アルミニウム箔からなる金属層、ポリアミドからなる層がこの順で順次積層された積層体を使用した。そして、この複合包装フィルムを2枚重ね合せてその縁部をヒートシールして作製した。
【0073】
上記ケース内へ電解質溶液(1.2mol/Lの四フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム塩のプロピレンカーボネート溶液)を注入した後、真空シールすることにより電気化学キャパシタ(電気二重層キャパシタ)の作製を完了した。
【0074】
(比較例1)
実施例1の電気化学キャパシタに搭載したアノードと同一の手順及び条件で作成した電極をカソードとして搭載し、実施例1の電気化学キャパシタに搭載したカソードと同一の手順及び条件で作成した電極をアノードとして搭載したこと以外は、実施例1の電気化学キャパシタと同様の手順及び条件により電気化学キャパシタを作製した。
【0075】
(比較例2)
実施例1の電気化学キャパシタに搭載したアノードと同一の手順及び条件で作成した電極を、アノード及びカソードとして搭載したこと以外は、実施例1の電気化学キャパシタと同様の手順及び条件により電気化学キャパシタを作製した。
【0076】
(比較例3)
実施例1の電気化学キャパシタに搭載したカソードと同一の手順及び条件で作成した電極を、アノード及びカソードとして搭載したこと以外は、実施例1の電気化学キャパシタと同様の手順及び条件により電気化学キャパシタを作製した。
【0077】
[電気二重層キャパシタの特性評価試験]
実施例1及び比較例1〜比較例3の各電気二重層キャパシタについて以下の諸特性を測定した。
【0078】
充放電の測定は、充放電試験装置(北斗電工(株)製、HJ−101SM6)を使用した。先ず、0.5Cの定電流充電を行い、電気二重層キャパシタに電荷が蓄積していくに従って電圧が上昇するのをモニタし、電位が2.5Vに達したのち、定電圧充電(緩和充電)に移行し、電流が充電電流の1/10になった時に充電を終了させた。そして、放電も0.5Cの定電流放電を行い終止電圧を0Vとした。この試験後、1Cの電流で充電を行い、電位が2.5Vに達した後、定電圧充電に移行し、電流が充電電流の1/10になったときに充電を終了させた。そして、放電も1Cの定電流放電を行い終止電圧を0Vとした。再び充電を開始させ、これを10回繰り返した。
【0079】
キャパシタ容量(電気化学キャパシタのセルの静電容量)は次のようにして求めた。すなわち、放電曲線(放電電圧−放電時間)から放電エネルギー(放電電圧×電流の時間積分として合計放電エネルギー[W・s]を求め、キャパシタ容量[F]=2×合計放電エネルギー[W・s]/(放電開始電圧[V])2の関係式を用いて評価セルのキャパシタ容量[F]を求めた。
【0080】
次に、各電気化学キャパシタの内部抵抗(インピーダンス)は以下の方法で求めた。すなわち、測定環境温度25℃、相対湿度60%において、Solartron(東陽テクニカ社製,商品名)を用いて測定した1KHzの周波数における値を示した。
【0081】
「レート特性」(C2/C1)は以下の定義に基づいて算出した。すなわち、「C1」ととは、キャパシタ容量がαFである電気化学キャパシタを、放電電流値:α×10−3Aで放電させた場合の静電容量を示す。また、「C2」とは、上記C1を測定した同一の電気化学キャパシタ(キャパシタ容量がαFである電気化学キャパシタ)を、放電電流値:100×α×10−3Aで放電させた場合の静電容量を示す。そして、「レート特性」は、上記C2をC1で除した値(C2/C1)を示す。この「レート特性」の値が大きな電気化学キャパシタは、優れた充放電特性を有していると評価することができる。例えば、実施例1の電気化学キャパシタでは、α=1.8Fであるので、C1は1.8mAの電流値で放電した際に測定される静電容量となり、C2は180mAの電流値で放電した際に測定される静電容量となる。
【0082】
表1に、実施例1及び比較例1〜比較例3の各電気化学キャパシタの内部抵抗と、レート特性とを示す。なお、表1における内部抵抗値のうち、「初期」と記載された内部抵抗値は、セルを作製した直後に測定した値を示す。また、表1における内部抵抗値のうち、「容量確認後」と記載された内部抵抗値は、1C充放電を10サイクルした後の値を示す。更に、表1における内部抵抗値のうち、「レート特性評価試験後」と記載された内部抵抗値は、容量確認後にレート試験を行い、残留放電後に測定した値を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
本測定結果から実施例1の結果は、各比較例に比して内部抵抗が十分に低減されており、優れたレート特性(充放電特性)を示すことが確認された。
【0085】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、内部抵抗が十分に低減されており、優れた充放電特性を得ることのできる電気化学キャパシタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気化学キャパシタの好適な一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す電気化学キャパシタの内部をアノード10の表面の法線方向からみた場合の展開図である。
【図3】図1に示す電気化学キャパシタを図1のX1−X1線に沿って切断した場合の模式断面図である。
【図4】図1に示す電気化学キャパシタを図1のX2−X2線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
【図5】図1に示す電気化学キャパシタを図1のY−Y線に沿って切断した場合の要部を示す模式断面図である。
【図6】図1に示す電気化学キャパシタのケースの構成材料となるフィルムの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【図7】図1に示す電気化学キャパシタのケースの構成材料となるフィルムの基本構成の別の一例を示す模式断面図である。
【図8】図1に示す電気化学キャパシタのアノードの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【図9】図1に示す電気化学キャパシタのカソードの基本構成の一例を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1…電気化学キャパシタ、10…アノード、12…アノード用リード、14…絶縁体、20…カソード、22…カソード用リード、24…絶縁体、30…電解質溶液、40…セパレータ、50…ケース、60…素体。
Claims (5)
- 互いに対向するアノード及びカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置される絶縁性のセパレータと、
電解質溶液と、
前記アノード、前記カソード、前記セパレータ及び前記電解質溶液を密閉した状態で収容するケースと、
を有しており、
前記アノードが、電子伝導性を有する略球状の炭素材料を構成材料として含んでおり、かつ、
前記カソードが、電子伝導性を有する繊維状の炭素材料を構成材料として含んでいること、
を特徴とする電気化学キャパシタ。 - 前記略球状の炭素材料のアスペクト比が1〜1.5であること、を特徴とする請求項1に記載の電気化学キャパシタ。
- 前記繊維状の炭素材料のアスペクト比が2〜8であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学キャパシタ。
- 前記セパレータが絶縁性の多孔体からなり、
前記アノードが前記略球状の炭素材料を含む多孔質の層を有しており、
前記カソードが前記繊維状の炭素材料を含む多孔質の層を有しており、
前記電解質溶液は、少なくともその一部が前記アノード、前記カソード、及びセパレータの内部に含有されていること、
を特徴とする請求項1〜3のうちの何れか1項に記載の電気化学キャパシタ。 - 前記アノード、前記カソード及び前記セパレータのそれぞれが板状の形状を呈しており、
前記ケースが、互いに対向する1対の前記複合包装フィルムを少なくとも用いて形成されており、かつ、
前記複合包装フィルムが、前記電解質溶液に接触する合成樹脂製の最内部の層と、前記最内部の層の上方に配置される金属層とを少なくとも有していること、を特徴とする請求項1〜4のうちの何れか1項に記載の電気化学キャパシタ。
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