JP2000219923A - 粉末冶金により製造された複合材料、その製造方法及び電気接点材料 - Google Patents

粉末冶金により製造された複合材料、その製造方法及び電気接点材料

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JP2000219923A
JP2000219923A JP2000013117A JP2000013117A JP2000219923A JP 2000219923 A JP2000219923 A JP 2000219923A JP 2000013117 A JP2000013117 A JP 2000013117A JP 2000013117 A JP2000013117 A JP 2000013117A JP 2000219923 A JP2000219923 A JP 2000219923A
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Gerd Renner
レナー ゲアト
Udo Siefken
ジーフケン ウド
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Renner Louis GmbH
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高電気的強度であり、従って低電子放出量で
あり、材料消耗量に対する高耐性を兼ね備え、よって、
電気真空スイッチボックスのスイッチング接触部などの
1,000〜12,000Vの電圧範囲内での使用に適
した複合材料を提供する。 【解決手段】 70重量%のCr金属粉末および30重
量%のW金属粉末を混合、圧縮し、真空状態、または保
護気体下で共に溶融させる。その溶融物を急冷し、でき
るだけ素早く固体化して、その後粉砕して、CrW混晶
粉末を調製し、≦160μmの大きさになるように篩に
かける。Cu60重量%、Cr/W40重量%の組成の
成形品が得られるように得られたCrW混晶粉末を圧縮
し、高真空下、液体銅を含浸させて粉末冶金により複合
材料を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、混晶または金属間
相として存在する少なくとも二つの耐熱性成分から成る
粒状添加物が埋め込まれたマトリックスを有する粉末冶
金により製造された複合材料に関する。更に、本発明
は、その製造方法、および、接点材料としてのその使
用、特に電気真空スイッチボックスにおける使用に関す
る。
【0002】
【従来の技術】真空接点パッドは、電気真空スイッチの
スイッチボックスのコアを形成し、先行技術によると、
一般に低融点および高導電性を有する金属マトリックス
(例えば、Ag、Cu、またはそれらの合金)に埋め込ま
れた耐アーク性粒状成分(例えば、W、Mo、またはC
rのような耐熱金属)からなっている。接点材料は、以
下のような高度で、尚且つ、時には矛盾した要求を満た
さなければ成らない。
【0003】・低材料消耗量 ・充分な遮断容量 ・低溶接傾向 ・低電気抵抗 ・優れた破裂強度(電気的強度) ・低遮断電圧 CuCr複合材料は、平均電圧が12kVより高く約30
kVまでの範囲またはそれ以上で用いられる真空電源スイ
ッチに特に適していることが分かっている。CuCr複
合材料は、非常に有利な回路遮断特性および優れた電気
的強度(誘電体再固化作用)を有する。しかし、CuCr
複合材料の材料消耗量は、この範囲の性能において必要
とされる一万回といった作動回数に比べて極めて低く不
十分である。
【0004】1000V未満の低電圧範囲においては、
真空接触器を使用することの重要性がますます高まって
いる。この範囲内で使用される接触器は、百万回以上の
作動に耐えなければならず、遮断電圧レベルはできる限
り低くなければならない。したがって、この目的に使用
する複合材料は更なる重要な必要条件を満たさなければ
ならない。
【0005】この範囲に対する有効材料には、純粋で不
純物の少ないまたは更なる添加物を含むW/Cu、WC
/AgおよびWC/Cuが挙げられる。特に、マトリッ
クス成分Agが優れた電流遮断特性を示し、一方で高融
点成分であるWまたはWCはアークの影響による材料消
耗量を最小限度にする。
【0006】純粋な耐熱性成分WおよびCrの矛盾した
特性により、真空接触器用スイッチボックスに関します
ます増大する下記必要条件を満たすことのできる1,0
00〜12,000V間での残存間隙用接点材料を設計
することは困難である。 ・電圧が高くなると、電子を放出する傾向が高まるため
純粋タングステン成分の使用は制限される。これは、タ
ングステン(融点3,410℃)の耐熱性によるものであ
る。したがって、真空状態における電気的強度は弱めら
れる。 ・一方、低電圧においては、作動回数が多いことから材
料消耗量が蓄積されることにより、耐材料消耗性が乏し
いため、純粋Cr耐熱性成分の使用が制限される。
【0007】ここで、二つの異なった融点を有する金属
部分CrおよびWを混合することにより、所望の電圧範
囲に応じて融点(つまり、スイッチング特性に関する耐
材料消耗性)および電子放出(つまり、電気的強度)に関
して最適な性質を有する耐熱性成分を人工的に調節する
ことが考えられる。これにより、電気接触のスイッチン
グの際、現在まで使用されてきた接点材料の欠点となる
特性(Crの場合には、低融点による高材料消耗量、W
の場合には、高融点による高い電子放出性または低電気
的強度)を中和できるはずである。
【0008】この種の可能な一手段としては、欧州特許
出願公開第0083245号明細書に記載されており、
中でも、金属粉末混合物を圧縮し、固体または液体Cu
相において焼結させることによる粉末冶金を含むそれ自
体知られている方法で調製されるCuCrW合金が開示
されている。この引用文献は、できるだけ微細な粒状の
複合物調製を目的としている。この目的は、立方晶系に
おいて晶化する金属WおよびCrにより、相互に耐熱性
金属の完全固溶体を作ることにより達成される。
【0009】この教示の有用度を調べるために、この引
用文献の指示に従ってCuCrW合成物を調製した。液
体Cu相において焼結させた後、W粒子はCrで被覆さ
れてもとの形態および寸法で存在する。W−Cr粒子
は、Cuマトリックスに埋め込まれる(図1参照。図1
は欧州特許出願公報第0083245号のCuCrW複
合材の研磨断面の顕微鏡写真図で、1はW、2はCr、
3はCuを示している。)。引用文献において仮定され
ているタイプの、WおよびCrの混晶は検出されなかっ
た。金相学的見地からしてこれは驚くべきことではな
い。というのも、その工程に適用しなければならない
1,100〜1,200℃(Cu液相線以上)の溶融温度
において、タングステンとクロミウムの反応は期待でき
ないからである。
【0010】上記引用文献に従って調製した材料Cu7
1%/Cr24%/W5%(%は重量%)を蛍光X線分
析したところ、タングステンは検出限度までCrとCu
の周囲マトリックスに溶解できないことが分かった。面
積10×14μm2のCrの領域に対する総合分析(sum
mation analysis)では、純粋Crが示されており、つ
まり存在するWの量は、検出限度の0.1%未満である
(図2参照。図2は欧州特許出願公報第0083245
号のCuCrW複合材のCrの蛍光X線総合分析結果で
あり、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において
暗い50μmのグレイ粒子における10μm×14μm
×1.155(補正係数)に対する30kVでの総合分
析結果。)。一方、CrのW粒子中への拡散も確認でき
なかった。局所分析は、純粋Wを示し、つまり存在する
Crの量は、検出限度の0.1%未満である(図3参
照。図3は欧州特許出願公報第0083245号のCu
CrW複合材のWの蛍光X線局所分析結果であり、SE
Mにおいて明るい10μmの粒子の非エッチング領域に
おける30kVでの局所分析結果。)。したがって、耐
熱性金属CrおよびWの相互溶け込み、つまり混晶の形
成は実現できないかのように思われる。この引用文献
は、耐熱性成分であるCrおよびWを密に混合すること
により、その二つの純粋成分の異なった特性を利用して
スイッチング特性を向上させることを教示してはいな
い。
【0011】同様に、欧州特許出願公開第066859
9号明細書は、タングステン、モリブデン、タンタル、
およびニオビウムからなるグループから選択される付加
的補助剤を含むCuCrの接点材料を開示している。前
記接点材料は、液体銅相における耐熱性成分の拡散、お
よびその後の急冷により、Cuマトリックス中のアーク
抵抗成分のきめ細かい分散物として得られる。
【0012】CuCrW材料に関しては、CrWの相互
拡散並びにCrとWの耐アーク性粒子が記載されてい
る。この発明は、本質的に金属マトリックス中へそれぞ
れ個々の耐熱性成分がきめ細かく分散した分散物に関す
るものである。耐熱性成分間の混晶または金属間相の形
成については記載されていない。
【0013】よって、記載されているCuマトリックス
中のCrおよびWの混合物は、1,000〜12,00
0Vの電圧範囲で使用される真空接触器用材料に関する
必要条件を満たしていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、例
えば、CuまたはAgなどから成る低融点導電性マトリ
ックスと、耐熱性成分からなる粒状添加物とを含み、真
空電源スイッチおよび真空接触器に関する上記必要条件
を満たす、つまり、高電気的強度であり、従って低電子
放出量であり、また、材料消耗量に対する高耐性を兼ね
備え、よって、1,000〜12,000Vの電圧範囲
内での使用に適した複合材料を提供することを目的とす
る。
【0015】本発明はまた、経済的に実行可能な方法で
実施できるこのような複合材料の製造方法を提供するこ
とをも目的とする。
【0016】更に、本発明は、接点材料、好ましくは、
1,000〜12,000Vの電圧範囲内における電気
真空スイッチボックスのスイッチング接触部として使用
するための複合材料を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】上記目的は、耐熱性成分
の部分が一種又はそれ以上の耐熱性成分粒子から成るの
ではなく、好ましい実施の形態において明らかに異なっ
た融点を有する、少なくとも二つの耐熱性成分粒子から
成る混晶または金属間相が存在する場合、優れた特性を
有する材料が得られるという驚くべき発見に基づいて達
成された。金相学的見地から、純粋なまたは高度に濃縮
された耐熱性成分からなるα相の形成は、一定の重量比
においては必ずしも回避できない。しかしながら、使用
する耐熱性成分の混晶または金属間相も形成されること
は明白であり、これによって複合材料の特性(例えば、
低電子放出量)が明らかに向上する。α相を形成しない
ような組成を選択するのが好ましい。
【0018】本発明によると、所望の材料特性は、先行
技術において一般的なように、共に焼結させ、低融点マ
トリックス中の更なる成分に混ぜ合わせることによっ
て、または種々の高融点粉末成分を混合することによっ
て調整されるのではなく、前もって合金化された耐熱性
成分(混晶または金属間相の形態で存在)により変性させ
るものである。
【0019】したがって、本発明は、融点が高くても、
1,200℃以下の金属から成るマトリックスと、少な
くとも二つの耐熱性成分から成り前記マトリックスに埋
め込まれた粒状添加物とを含む粉末冶金により製造され
た複合材料に関するもので、前記耐熱性成分が混晶また
は金属間相の形態で存在することを特徴とする。
【0020】本発明に係る複合材料の好ましい実施の形
態を、請求項2〜8の主題とした。1,500〜2,4
00℃の範囲内に融点を有する第一のまたは第一グルー
プの耐熱性成分と、2,400℃を超える融点を有する
第二のまたは第二グループの耐熱性成分を使用した複合
材料が特に好ましい。
【0021】更に、本発明は、前記複合材料の製造方法
を提供し、少なくとも二つの耐熱性成分の粉砕混合物
を、加熱により混晶または金属間相に転換し、その後冷
却および粉砕により得られた粉末を、粉末冶金工程によ
り融点が高くても1,200℃以下の金属マトリックス
と結合させることを特徴とする。
【0022】前記工程の好ましい実施の形態は、請求項
10および11の主題を構成する。
【0023】本発明の更なる主題は、特に1,000〜
12,000Vの電圧範囲内での、電気接点材料、好ま
しくは電気真空スイッチボックスのスイッチング接触部
としての上記複合材料の使用である。
【0024】即ち、本発明の複合材料、その製造方法及
び電気接点材料は、次の様である。
【0025】(1)融点が高くても1,200℃以下の
金属から成るマトリックスと、少なくとも二つの耐熱性
成分から成る、前記マトリックスに埋め込まれた粒状添
加物とを含む粉末冶金により製造された複合材料であっ
て、前記耐熱性成分が相互の混晶または金属間相を含む
ことを特徴とする複合材料。
【0026】(2)前記複合材料の総重量を基準に、前
記耐熱性成分の量が15〜80重量%、好ましくは25
〜50重量%であり、前記マトリックスの量が20〜8
5重量%、好ましくは50〜75重量%である前記
(1)項に記載の複合材料。
【0027】(3)少なくとも二つの耐熱性成分のう
ち、第一のまたは第一グループの耐熱性成分の融点が
1,500〜2,400℃の範囲内にあり、第二のまた
は第二グループの耐熱性成分の融点が2,400℃を超
えることを特徴とする前記(1)項および(2)項のい
ずれか一つに記載の複合材料。
【0028】(4)前記(1)〜(3)項のいずれか一
つに記載の複合材料であって、融点の低い前記耐熱性成
分との関係で融点の高い前記耐熱性成分が混晶または金
属間相を形成することにより完全に溶解していることを
特徴とする前記(1)〜(3)項のいずれか一つに記載
の複合材料。
【0029】(5)前記マトリックスが、Cu、Agお
よびAlから選ばれる少なくとも一つの金属から成るこ
とを特徴とする前記(1)〜(4)項のいずれか一つに
記載の複合材料。
【0030】(6)前記耐熱性成分が周期律表Vb族金
属(V、Nb、Ta)およびVIb族金属(Cr、Mo、
W)、並びにそれらの窒化物、炭化物、珪素化合物、硼
化物およびそれらの混合物から選ばれることを特徴とす
る前記(1)〜(5)項のいずれか一つに記載の複合材
料。
【0031】(7)前記耐熱性成分の総重量を基準に、
融点の低い前記耐熱性成分の量が10〜90重量%、好
ましくは30〜70重量%であることを特徴とする前記
(1)〜(6)項のいずれか一つに記載の複合材料。
【0032】(8) 融点の低い一耐熱性成分がCrで
あり、融点の高い一耐熱性成分がWであることを特徴と
する前記(1)〜(7)項のいずれか一つに記載の複合
材料。
【0033】(9)前記(1)〜(8)項のいずれか一
つに記載の複合材料の製造方法であって、少なくとも二
つの耐熱性成分の粉砕混合物を加熱により混晶または金
属間相に転換し、その後冷却および粉砕して得られた粉
末を、粉末冶金により融点が高くても1,200℃以下
の金属マトリックスと結合させることを特徴とする複合
材料の製造方法。
【0034】(10)融点が1,500〜2,400℃
の範囲内にある第一のまたは第一グループの耐熱性成分
と、融点が2,400℃を超える第二のまたは第二グル
ープの耐熱性成分との混合物を使用することを特徴とす
る前記(9)項に記載の複合材料の製造方法。
【0035】(11)前記製造を保護気体雰囲気下また
は高真空下で実施することを特徴とする前記(9)また
は(10)に記載の複合材料の製造方法。
【0036】(12)前記(1)〜(8)項のいずれか
一つに記載の複合材料の電気接点材料としての使用。
【0037】(13)前記(1)〜(8)項のいずれか
一つに記載の複合材料の電気真空スイッチボックス内の
スイッチング接点としての使用。
【0038】(14)前記(13)項に記載の複合材料
の1,000〜12,000Vの電圧範囲内での使用。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0040】本発明の粉末冶金により製造された複合材
料は、融点が高くても1,200℃以下の金属からなる
マトリックスを含み、前記マトリックスには、少なくと
も二つの耐熱性成分から成る粒状添加物が埋め込まれて
おり、前記耐熱性成分は、相互の混晶または金属間相の
形態で存在している。
【0041】前記複合材料のマトリックスに適した金属
としては、通常真空接触パッドに使用されるため、電気
導電性に優れた比較的融点の低い金属が挙げられる。好
ましいマトリックス材料としては、Cu、AgまたはA
lがある。また、これら金属の合金を使用することも可
能で、その際合金を構成する各成分の質量比は重要では
ない。
【0042】本発明の複合材料への使用に適した耐熱性
成分の例としては、周期律表第Vb族金属、すなわち
V、NbおよびTa、ならびに第VIb族金属、すなわ
ちCr、MoおよびWが挙げられる。これら金属は元素
形態の単体のみならず、これら金属の窒化物、炭化物、
珪素化合物または硼化物(以下、「硬質材料」という)も使
用でき、またそれらの混合物または前記金属と前記硬質
材料との混合物も使用できる。上記硬質材料の使用によ
り、複合材料の特性、例えばその重量に関してプラスの
影響を与えることができる。好ましい耐熱性成分は、金
属CrおよびWである。
【0043】使用する少なくとも二種類の耐熱性金属ま
たは硬質材料の質量比は、これらの成分を加熱すること
により混晶または金属間相が確実に得られる限りにおい
て、重要ではない。この前提条件により限定される制限
範囲内で、少なくとも二種類の金属または硬質材料の質
量比は広範囲にわたって異なっていても良い。本発明
は、混晶または金属間相が部分的にのみ形成され、一方
で余剰金属成分が純粋物質として部分的に残留している
場合の質量比をも包含する。耐熱部が、好ましくは、混
晶および金属間相を少なくとも1重量%、より好ましく
は少なくとも5重量%、更に好ましくは少なくとも10
重量%、特に少なくとも50重量%を含むのが好まし
い。耐熱部の90%以上、特に耐熱部全体が混晶および
金属間相として存在するのが特に好ましい。
【0044】ここで、用語「混晶」とは、耐熱性金属また
は硬質材料の均質固溶体のことを言い、結晶格子におけ
るその位置(positions)は、様々な金属の原子により占
められている。硬質材料を形成する半径の小さい原子
は、金属ホスト格子の割込み位置に含まれ得る(レンプ
化学百科事典(Roempp Lexikon Chemie)、第10版、1
998年、2705頁参照)。
【0045】「金属間相(intermetallic phases)」と
は、金属の構造とは著しく異なる構造の二つ以上の金属
元素から成る化学組成物である。現存の原子価に対応す
る化学量的組成を有する相に加え、この正確な組成が広
い均質範囲における特殊ケースを示すにすぎない相もあ
る。金属間相の特殊な例としては、ラーベス相、ヒュー
ム-ロザリー相およびジントル(Zintl)相がある(レンプ
化学百科事典(Roempp Lexikon Chemie)、第10版、1
998年、1943頁参照)。
【0046】複合材料の総質量中の耐熱性成分量は特に
重要ではないが、通常、15〜80重量%、好ましくは
25〜50重量%を占める。したがって、マトリックス
金属の量は、通常20〜85重量%、好ましくは50〜
75重量%を占める。
【0047】本発明の好ましい実施の形態において、複
合材料は、融点が1,500〜2,400℃といった比
較的低い範囲にある少なくとも一つの第一の耐熱性成分
と、融点が2,400℃を超える比較的高い範囲にある
少なくとも一つの第二の耐熱性成分とを含む。融点が前
者の範囲内にある耐熱性成分の例としては、Crおよび
Nbがあり、融点が2,400℃を超える適した耐熱性
成分の例としてはTa、MoおよびWといった金属が挙
げられる。融点の低い金属としてはCrが、融点の高い
金属としてはWがそれぞれ好ましい。この実施の形態に
おいても、耐熱性成分の質量比は、加熱により少なくと
もかなりの部分が混晶または金属間相に転換されるよう
な質量比が好ましい。
【0048】実用性の理由から、大規模な機械類を使用
すること無く溶け合うように個々の耐熱性成分量を選択
するのが望ましい。よって、混合物は、低融点耐熱性成
分、例えばクロミウムを10〜90重量%、好ましくは
30〜70重量%と、高融点耐熱性成分、例えばタング
ステンを10〜90重量%、好ましくは30〜70重量
%含む。特に適しているのは、約70重量%のCrと約
30重量%のWとの混合物である。特に、耐熱性成分量
は、低融点耐熱性成分との関係で高融点耐熱性成分が完
全に溶解して混晶または金属間相を形成するように選択
されることが好ましい。
【0049】本発明に係る複合材料の製造における第一
の工程では、少なくとも二つの粉砕耐熱性成分を密に混
合し、これらを溶融する高エネルギー密度を生じさせる
ことのできる適切な方法によりその混合物を迅速に溶融
させ、その混合物を均質化し、特筆するに価する程分離
させることなく再度急速冷却することにより完全にまた
はほぼ完全に均質な混晶または金属間相を形成する。冷
却速度は、100K/分より速くなければならない。さ
もなければ、多角形構造体が分離する傾向にあるからで
ある。
【0050】そして、冷却された溶融ケークを、適した
方法で粉砕し、篩にかけて、所望の粒径を有する混晶粉
末を得る。
【0051】得られた混晶粉末を、所望の複合材料を形
成するために下記可能性の内の一方により、優れた電気
導電性を有する低融点マトリックス金属と共に更に加工
する。 ・固相焼結:低融点マトリックスの金属粉末と得られた
混晶粉末とを混合、圧縮し、且つマトリックス金属の融
点より低い温度で、好ましくは高真空下で焼結させる。 ・液相焼結:得られた混晶粉末を圧縮し、好ましくは高
真空下で溶融マトリックス金属を含浸させる。
【0052】好ましい高真空処理により、焼結工程で得
られた成形品は、従来の保護気体中で焼結させたものに
比べ気体が少ない、つまり、O2、N2またはH2の残留
量が少ない。これらのブランク片を、電気真空スイッチ
ボックスでの使用に適した接触部を提供するためにディ
スクまたはリング等の形状に更に機械加工する。
【0053】本発明の複合材料は、例えば、電気真空ス
イッチボックスの接点材料として使用できる。本発明の
複合材料は、1,000〜12,000Vの電圧範囲に
おける使用に特に適しており、特に、融点が1,500
〜2,400℃の範囲内である少なくとも一つの耐熱性
成分と、融点が2,400℃を超える少なくとも一つの
耐熱性成分とを含み、融点が前記範囲のいずれかである
これらの耐熱性成分から成る混晶または金属間相を含
む。
【0054】下記実施例は、いかなる意義においても本
発明を限定するものではなく、本発明の好ましい実施の
形態を示すものである。
【0055】(実施例1)70重量%のCr金属粉末
(純度:Cr≧99.8重量%)および30重量%のW金
属粉末(純度:W≧99.95重量%)を混合、圧縮し、
真空状態、または保護気体下で共に溶融させる。その溶
融物を急冷し、できるだけ素早く固体化する(冷却速度
は、>100K/分)。得られたWおよびCrの混晶
は、組成がほぼ均質であり、それぞれ個々の成分の分散
に関してわずかな不均質性を示すだけである。固体化さ
れた溶融物は、均等な多角形の粒子構造を示す(図4参
照。図4は、実施例1のCr/Wが70/30(質量
比)である混晶の研磨断面の顕微鏡写真図。)。使用す
るWおよびCr金属粒子は溶融物中に完全に溶解し、溶
融ケーク中ではもはや検出できない。
【0056】低冷却速度を(<100K/分)にした場合
では、均等な多角形の構造は、分離する傾向にあり、樹
木状の基礎構造(substructure)を形成する(図5参照。
図5は実施例1で冷却速度が遅い場合の樹木状基礎構造
を有するCr/Wが70/30(質量比)である混晶の
研磨断面の顕微鏡写真図。)。
【0057】電子走査顕微鏡検査により、これらの結果
を以下のように確認することができた。
【0058】0.5×0.7mm2といった広い面積に
対する総合分析により、Cr/Wの重量比が、初期量に
対応する70/30であることが明確となっている(図
6参照。図6は実施例1のCr/Wが70/30(質量
比)である混晶のCrおよびWの蛍光X線総合分析結果
であり、孔の存在しない領域における0.5mm×0.
7mm×1.155(補正係数)に対する30kVでの
総合分析結果。)。Cr中のWの分布分析では、Cr中
のWが本質的に均一に分布していることが示されている
(図7参照。図7は実施例1のCr/Wが70/30
(質量比)である混晶のWの分布分析図であり、白い小
点がWを示し、大きな黒点が溶融ケーク中の孔であ
る。)。この面積は、図4に示したような均等な多角形
の構造の面積に対応する。
【0059】Cr=54重量%およびW=46重量%で
ある樹枝状結晶の形態の基礎構造の20×28μm2
いった小さな面積に対しては、この理想的な組成から最
もはずれていることが総合分析により明らかになってい
る(図8参照。図8は実施例1のクロミウムを多量に含
む基礎構造を有するCr/Wが70/30(質量比)で
ある混晶のCrおよびWの蛍光X線総合分析結果であ
り、SEMにおいて明るい樹枝状結晶端部における20
μm×28μm×1.155(補正係数)に対する30
kVでの総合分析結果。)。この面積は図5に示したよ
うな基礎構造を有する混晶の一断片に相応する。
【0060】その後、溶融ケークを事前に粉砕し粉末に
する。得られた混晶粉末を、≦160μm(160μm
以下)の大きさになるように篩にかけ、固相焼結させ
る。すなわち、Cu金属粉末75重量%と、得られたC
rW混晶粉末25重量%とを混合、圧縮し、高真空下、
銅の融点より低い温度で焼結させる。
【0061】(実施例2)CrW混晶粉末を実施例1で
説明したようにして調製し、≦160μmの大きさにな
るように篩にかけ、液相で焼結させる。すなわち、Cu
60重量%、Cr/W40重量%の組成の成形品が得ら
れるように得られたCrW混晶粉末を圧縮し、高真空
下、液体銅を含浸させる(図9参照。図9は、実施例2
のCuマトリックス中のCrW混晶の研磨断面の顕微鏡
写真図。)。
【0062】(実施例3)65重量%Cr金属粉末(純
度:Cr≧99.8重量%)と35重量%タンタル金属
粉末(純度:Ta≧99.9重量%)とを圧縮し真空状
態、または保護気体下で溶融させる。
【0063】得られた溶融ケークの分析では、CrTa
が37/63重量%(Cr原子67%とTa原子33%
に相応)の化合物中、金属間相Cr2Taからなる多角形
の、最初に結晶化した粒子が見られる(図10参照。図
10は実施例3の金属間化合物Cr2Ta相の蛍光X線
総合分析結果であり、最初に結晶化した22μmの図1
1に示す粒子における2μm×2.8μm×1.155
(補正係数)に対する30kVでの総合分析結果。)。
前記粒子は、Cr金属マトリックスに取り囲まれている
(図11参照。図11は実施例3のCrマトリックス中
のCr2Ta粒子のSEM画像。)。このテスト結果は、
ほぼ34重量%のタンタルを含む共晶組成に近い金属成
分CrおよびTaを含む、事前に選択した圧粉体の組成
によるものである(Massalski et al.、二元合金相図(B
inary Alloy Phase Diagrams)、第二版、第二巻、第133
9頁参照)。
【0064】Ta含有量が63〜66重量%までのより
多くのTaを含む開始混合物(starting compound)を
用いることにより、純粋Cr2Taの点までCr相を費
やしてCr2Ta相の割合が増加する。
【0065】実施例1または2において説明したよう
に、溶融ケークを粉砕し、粉末冶金工程によりCuまた
はAgと共に加工し、金属複合材を形成する。
【0066】(実施例4)70重量%のCr金属粉末お
よび30重量%のWC粉末を混合、圧縮し、真空状態、
または保護気体下で溶融させる。高融点WCは、先ず形
成されるCr溶融物中に完全に溶解する。溶融ケーク
は、Crが70重量%、Wが28.2重量%、Cが1.
8重量%の公称組成を有するCrW混合炭化物として固
化する。固化および冷却工程の処理によっては、金相学
的分析において、樹枝状結晶が小さいまたは大きいとい
った部分的不均質性が示される(図12参照。図12は
実施例4の樹木状基礎構造を有するCr/W/Cが70
/28.2/1.8(重量%)である混合炭化物の研磨
断面の顕微鏡写真図)。融点のより高い耐熱性成分WC
は、前記の新混合炭化物中において完全に溶解してい
る。
【0067】純粋Cr金属を比較的融点の低いCr32
(融点1,850℃)に置換すれば、混合炭化物中の炭素
含有量を増加させることができる。これは、クレーム3
における前提条件に相当する。溶融ケークは固化し、C
r61重量%、W28重量%、C11重量%の公称組成
を有する(図13参照。図13は実施例4のCr/W/
Cが61/28/11(重量%)である混合炭化物の研
磨断面の顕微鏡写真図。)。この場合もまた、オリジナ
ルの炭化物は、新混合炭化物にとって好都合なように完
全に溶解した。
【0068】実施例1または2において説明したよう
に、溶融ケークを粉砕し、粉末冶金工程によりCuまた
はAgと共に加工し、金属複合材を形成する。
【0069】限定するものではないが類似の方法で、V
C、NbC、TaCおよびTiCのような炭化物、Ti
NおよびTaNのような窒化物、Ta2SiおよびV3
iのような珪素化合物、並びにTiB2のような硼化物
を、ここで使用した耐熱性成分の代わりに使用すること
もできる。
【0070】(実施例5)実施例4で説明したように、
CrNb50/50重量%の組成物と、CrMo70/
30重量%の組成物とからなる更なる溶融ケークを混合
圧縮し、溶融させ、引き続き粉砕し、篩にかけ分離しさ
らに処理して、CuまたはAgを含むそれぞれの複合材
が得られる。
【0071】
【発明の効果】本発明の複合材料によれば、高電気的強
度であり、従って低電子放出量であり、また、材料消耗
量に対する高耐性を兼ね備え、よって、1,000〜1
2,000Vの電圧範囲内での使用に適した複合材料を
提供できる。
【0072】本発明はまた、経済的に実行可能な方法で
実施できるこのような複合材料の製造方法を提供でき
る。
【0073】更に、本発明は、接点材料、好ましくは、
1,000〜12,000Vの電圧範囲内における電気
真空スイッチボックスのスイッチング接触部として使用
するための複合材料が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】欧州特許出願公報第0083245号のCuC
rW複合材の研磨断面の顕微鏡写真図。
【図2】欧州特許出願公報第0083245号のCuC
rW複合材のCrの蛍光X線総合分析結果。
【図3】欧州特許出願公報第0083245号のCuC
rW複合材のWの蛍光X線局所分析結果。
【図4】実施例1のCr/Wが70/30(質量比)で
ある混晶の研磨断面の顕微鏡写真図(倍率100倍)。
【図5】実施例1で比較のための冷却速度が遅い場合の
樹木状基礎構造を有するCr/Wが70/30(質量
比)である混晶の研磨断面の顕微鏡写真図(倍率100
倍)。
【図6】実施例1のCr/Wが70/30(質量比)で
ある混晶のCrおよびWの蛍光X線総合分析結果。
【図7】実施例1のCr/Wが70/30(質量比)で
ある混晶のWの分布分析図であり、白い小点がWを示
し、大きな黒点が溶融ケーク中の孔である。
【図8】実施例1のクロミウムを多量に含む基礎構造を
有するCr/Wが70/30(質量比)である混晶のC
rおよびWの蛍光X線総合分析結果。
【図9】実施例2のCuマトリックス中のCrW混晶の
研磨断面の顕微鏡写真図(倍率100倍)。
【図10】実施例3の金属間化合物Cr2Ta相の蛍光
X線総合分析結果。
【図11】実施例3のCrマトリックス中のCr2Ta
粒子のSEM画像。
【図12】実施例4の樹木状基礎構造を有するCr/W
/Cが70/28.2/1.8(重量%)である混合炭
化物の研磨断面の顕微鏡写真図(倍率100倍)。
【図13】実施例4のCr/W/Cが61/28/11
(重量%)である混合炭化物の研磨断面の顕微鏡写真図
(倍率200倍)。
【符号の説明】
1 W 2 Cr 3 Cu
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (71)出願人 597168376 Postfach 1749, D−85207 Dachau, Germany

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 融点が高くても1,200℃以下の金属
    から成るマトリックスと、少なくとも二つの耐熱性成分
    から成る、前記マトリックスに埋め込まれた粒状添加物
    とを含む粉末冶金により製造された複合材料であって、
    前記耐熱性成分が相互の混晶または金属間相を含むこと
    を特徴とする複合材料。
  2. 【請求項2】 前記複合材料の総重量を基準に、前記耐
    熱性成分の量が15〜80重量%、好ましくは25〜5
    0重量%であり、前記マトリックスの量が20〜85重
    量%、好ましくは50〜75重量%である請求項1に記
    載の複合材料。
  3. 【請求項3】 少なくとも二つの耐熱性成分のうち、第
    一のまたは第一グループの耐熱性成分の融点が1,50
    0〜2,400℃の範囲内にあり、第二のまたは第二グ
    ループの耐熱性成分の融点が2,400℃を超えること
    を特徴とする請求項1および2のいずれか一つに記載の
    複合材料。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一つに記載の複
    合材料であって、融点の低い前記耐熱性成分との関係で
    融点の高い前記耐熱性成分が混晶または金属間相を形成
    することにより完全に溶解していることを特徴とする請
    求項1〜3のいずれか一つに記載の複合材料。
  5. 【請求項5】 前記マトリックスが、Cu、Agおよび
    Alから選ばれる少なくとも一つの金属から成ることを
    特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の複合材
    料。
  6. 【請求項6】 前記耐熱性成分が周期律表Vb族金属
    (V、Nb、Ta)およびVIb族金属(Cr、Mo、
    W)、並びにそれらの窒化物、炭化物、珪素化合物、硼
    化物およびそれらの混合物から選ばれることを特徴とす
    る請求項1〜5のいずれか一つに記載の複合材料。
  7. 【請求項7】 前記耐熱性成分の総重量を基準に、融点
    の低い前記耐熱性成分の量が10〜90重量%、好まし
    くは30〜70重量%であることを特徴とする請求項1
    〜6のいずれか一つに記載の複合材料。
  8. 【請求項8】 融点の低い一耐熱性成分がCrであり、
    融点の高い一耐熱性成分がWであることを特徴とする請
    求項1〜7のいずれか一つに記載の複合材料。
  9. 【請求項9】 前記請求項1〜8のいずれか一つに記載
    の複合材料の製造方法であって、少なくとも二つの耐熱
    性成分の粉砕混合物を加熱により混晶または金属間相に
    転換し、その後冷却および粉砕して得られた粉末を、粉
    末冶金により融点が高くても1,200℃以下の金属マ
    トリックスと結合させることを特徴とする複合材料の製
    造方法。
  10. 【請求項10】 融点が1,500〜2,400℃の範
    囲内にある第一のまたは第一グループの耐熱性成分と、
    融点が2,400℃を超える第二のまたは第二グループ
    の耐熱性成分との混合物を使用することを特徴とする請
    求項9に記載の複合材料の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記製造を保護気体雰囲気下または高
    真空下で実施することを特徴とする請求項9または10
    に記載の複合材料の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記請求項1〜8のいずれか一つに記
    載の複合材料の電気接点材料としての使用。
  13. 【請求項13】 前記請求項1〜8のいずれか一つに記
    載の複合材料の電気真空スイッチボックス内のスイッチ
    ング接点としての使用。
  14. 【請求項14】 前記請求項13に記載の複合材料の
    1,000〜12,000Vの電圧範囲内での使用。
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