JP2000201050A - 表面弾性波装置用基板およびその製造方法 - Google Patents

表面弾性波装置用基板およびその製造方法

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JP2000201050A JP11028538A JP2853899A JP2000201050A JP 2000201050 A JP2000201050 A JP 2000201050A JP 11028538 A JP11028538 A JP 11028538A JP 2853899 A JP2853899 A JP 2853899A JP 2000201050 A JP2000201050 A JP 2000201050A
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幸則 中村
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智彦 柴田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】サファイア単結晶基板の上に、クラックがな
く、電気−機械結合係数や中心周波数の温度係数などの
圧電特性も良好で、弾性表面波の伝播速度の高い窒化ア
ルミ単結晶層を形成した弾性表面波装置用の基板および
その製造方法を提供しようとするものである。 【解決手段】α-Al2O3のサファイア単結晶基板1の表面
を、R(1-102)面より[11-20 ]軸を中心として−方向に
2°以上回転させてオフアングルを持たせた面とし、こ
の面上にMOCVDによってバッファ層として作用する
窒化ガリウム層2を0.1〜0.2μm の平均膜厚で成
膜し、さらにその上に窒化アルミ単結晶層3をMOCV
Dにより2μm 以上の平均膜厚に堆積形成する。これら
の窒化ガリウム層および窒化アルミ単結晶層を成膜して
いる間のサファイア単結晶基板の表面温度はほぼ950
℃と一定とするので、製造プロセスは簡単となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、弾性表面波装置に
用いる基板およびその製造方法に関するものであり、特
にα-Al2O3のサファイア単結晶基板の表面上にMOCV
Dにより形成したバッファ層およびその上に同じくMO
CVDによって堆積形成した窒化アルミ単結晶層を具え
る弾性表面波装置用基板およびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、弾性表面波装置用の基板の材料と
しては水晶、LiNbO3、LiTaO3、Li2B4O7 などが使用され
ている。これらの基板材料は、重要な伝送特性である電
気−機械結合係数K2および遅延時間温度係数TCD が特に
優れているものとして選ばれてきた。一方、弾性表面波
装置の用途は近年ますます広がり、動作周波数が高いも
のが要求されるようになって来ている。しかしながら、
上述した水晶、LiNbO3、LiTaO3、Li2B4O7 などの基板の
弾性表面波の伝播速度は3000〜5000m/sec 程度である
が、GHz オーダーの弾性表面波装置では5000〜6000m/se
c 以上の伝播速度を有する基板が必要となる。
【0003】上述したように、高周波数化のためには伝
播速度の高い基板が必要となり、そのような要求を満た
すものとして窒化アルミ(AlN) を用いることが提案され
ている。この窒化アルミの電気−機械結合係数K2はほぼ
0.8%と水晶の5倍程度であり、中心周波数の温度係数T
CFの絶対値も20ppm/℃以下とすることができ
る。しかし、窒化アルミは非常に融点が高いので単体の
単結晶では得られにくいので、一般にはα-Al2O3のサフ
ァイアなどの単結晶基板上に単結晶薄膜を形成してい
る。このようなサファイア基板は入手し易いこと、格子
定数が窒化アルミの格子定数と大きくは相違していない
ことなどの理由によって使用されている。
【0004】上述したようにサファイア基板の表面に窒
化アルミ単結晶層を形成した弾性表面波装置用の基板を
用いることは提案されているが、本発明者は、サファイ
ア基板のR(1-102)面の表面をアンモニア雰囲気に曝すこ
とによって窒化アルミ単結晶層を形成する初期窒化を行
った後に、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor
Deposition: 金属有機物を用いる化学気相成長) 法によ
って窒化アルミ単結晶層を堆積形成することを試みた。
例えば、サファイア単結晶基板を収容したCVD装置
に、トリメチルアルミニウム(TMA) とアンモニア(NH3)
とを導入して窒化アルミを堆積させた。このようなMO
CVD法によって形成した窒化アルミ単結晶層も良好な
電気−機械結合係数K2を有していることを確認した。し
かし、実験室においてこのような弾性表面波装置の基板
を製造する際には、例えば5mm 角程度の小さなサファイ
ア基板を用いている。しかし、実用的な量産を行なうた
めには、例えば50.8mm(2インチ) 以上のサファイアウエ
ファを用い、その上に窒化アルミ単結晶層を形成し、さ
らにその上に所望の電極パターンを形成した後に、1チ
ップづつ切断するような製造方法を確立する必要があ
る。
【0005】例えば、厚さが300 〜500 μm の2インチ
サファイアウエファを用い、その上に上述した初期窒化
法によって窒化アルミ単結晶層を形成した後、上述した
MOCVD法によって1μm 以上の膜厚の窒化アルミ単
結晶層を堆積して弾性表面波装置用の基板を製造した
が、窒化アルミ単結晶層に1mm程度の間隔で多数のクラ
ックが発生することが確認された。このように窒化アル
ミ単結晶層に多数のクラックが入った基板を用いて弾性
表面波装置を製造すると、弾性表面波装置の伝送損失を
増大させ、デバイス特性を劣化させることになるので、
このような基板を用いては実用的な弾性表面波装置を製
造することができないことが分かった。
【0006】従来、発光デバイス(LED)の製造にお
いて、サファイア基板上にGaN やAlN のようなIII-V 化
合物単結晶膜を成膜する場合にクラックの発生を防止す
るために、サファイア基板の表面に最初にバッファ層を
形成することが知られている。そこで、上述したクラッ
クの発生を防止するために、本発明者はサファイア基板
の表面に最初に厚さが5〜50nm程度ときわめて薄い窒化
アルミより成るバッファ層を形成し、さらにその上に厚
い窒化アルミ単結晶層を堆積する方法を試みた。この場
合、最初はサファイア基板の表面温度を300 〜450 ℃と
低くして窒化アルミの成膜を行い、その後900 〜1100℃
と基板の温度を高くして窒化アルミ単結晶層を堆積させ
た。このような方法で製造した窒化アルミ単結晶層には
上述したクラックは発生しなかったが、電気−機械結合
係数K2がほぼ零となってしまい、圧電特性が失われてし
まうことが分かった。上述した発光デバイスでは、圧電
特性の喪失は問題にならないが、本発明に係る弾性表面
波装置用の基板としては致命的な問題となる。このよう
にバッファ層を介在させることによって圧電特性が失わ
れてしまう理由は明らかではないが、窒化アルミ単結晶
層の表面の微細構造を観察すると、多数の双晶が存在し
ていることが確認された。
【0007】本発明者はこのような欠点を解消し、2イ
ンチ以上のサファイアウエファを用いる場合にもクラッ
クの発生を良好に抑止することができる弾性表面波装置
用基板およびその製造方法を既に提案している(特開平
10−107581号公報)。
【0008】この公開公報に記載されている弾性表面波
装置用基板は、α-Al2O3のサファイア単結晶基板の表面
に窒化アルミ単結晶層を形成した弾性表面波装置用の基
板において、前記サファイア単結晶基板の表面を、R(1-
102)面より[11-20 ]軸を中心として回転させてオフア
ングルを持たせた面とし、この面上にMOCVDにより
堆積したバッファ層として作用する第1の窒化アルミ単
結晶層と、このバッファ層上に形成された第2の窒化ア
ルミ単結晶層とを以て形成したものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述した弾性表面波装
置用基板においては、バッファ層として作用する第1の
窒化アルミ単結晶層の膜厚は5〜50nm、特に10nmの近傍
とし、第2の窒化アルミ単結晶層の膜厚は1μm 以上と
している。また、このような2層構造を製造する場合に
は、サファイア基板をCVD装置内に入れたままでサフ
ァイア基板の表面温度を制御している。すなわち、バッ
ファ層を堆積形成する際には基板温度を300 〜450 ℃、
特にほぼ350 ℃の温度まで低下させ、第2の窒化アルミ
単結晶層を形成する際には、基板の表面温度を900 〜11
00℃、特にほぼ950 ℃まで加熱して堆積を行っている。
【0010】しかしながら、このように平均膜厚の薄い
第1の窒化アルミ単結晶層を、比較的低い成膜温度で再
現性良く形成することは非常に困難であり、生産性に乏
しく、歩留りが低いという問題があった。その結果、弾
性表面波装置用基板としての特性も理想的なものとする
ことが困難であり、実用化が阻害されていた。
【0011】したがって、本発明の目的は、弾性表面波
特性が良好であるとともに容易かつ正確に製造すること
ができる弾性表面波装置用基板およびその製造方法を提
供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】本発明の弾性表面波装置用基板は、α-Al2
O3のサファイア単結晶基板の表面に、バッファ層として
作用する窒化ガリウム層を形成し、その上に前記窒化ガ
リウム層よりも平均膜厚の厚い窒化アルミ単結晶層を形
成したことを特徴とするものである。さらに本発明によ
る弾性表面波装置用基板は、α-Al2O3のサファイア単結
晶基板の表面に、バッファ層として作用する窒化アルミ
・ガリウム層を形成し、その上に前記窒化アルミ・ガリ
ウム層よりも平均膜厚の厚い窒化アルミ単結晶層を形成
したことを特徴とするものである。
【0013】本発明による弾性表面波装置用基板の実施
例においては、前記サファイア単結晶基板の表面を、R
(1-102)面より[11-20 ]軸を中心として回転させてオ
フアングルを持たせた面とするのが好適である。この場
合、R(1-102)面を[11-20 ]軸を中心としてマイナス側
にほぼ2°以上回転させた面とするのが特に好適であ
る。このような弾性表面波装置用基板では窒化アルミ単
結晶層に殆どクラックが発生しないことを確かめた。
【0014】さらに、本発明による弾性表面波装置用基
板においては、前記バッファ層として作用する窒化ガリ
ウム層または窒化アルミ・ガリウム層の平均膜厚をほぼ
0.1〜0.2μm とし、このバッファ層として作用す
る窒化ガリウム層または窒化アルミ・ガリウム層の上に
形成される窒化アルミ単結晶層の平均膜厚をほぼ2μm
以上とするのが好適である。本発明によれば、このよう
にバッファ層の平均膜厚を厚くすることができるので、
製造工程は簡単になるとともに窒化アルミ単結晶層の平
均膜厚を十分厚くすることができるので電気−機械結合
係数k2がほぼ0.8%、中心周波数の温度係数TCFが
ほぼ−20ppm/℃の弾性表面波装置用基板を実現す
ることができる。ここで、本発明においては、上述した
窒化ガリウム層または窒化アルミ・ガリウム層より成る
バッファ層は、サファイア単結晶基板の表面上に均一に
成膜されるのではなく、凹凸が存在する。したがって、
バッファ層の膜厚を薄くする場合には、窒化ガリウムま
たは窒化アルミ・ガリウムが存在しない領域も発生す
る。したがって、このような凹凸を有するバッファ層表
面の上に形成される窒化アルミ単結晶層の表面も凹凸を
有するものとなる。本発明においてはこのような凹凸を
有する層の膜厚を平均膜厚として示した。また、窒化ア
ルミ単結晶層平均膜厚は、凹凸をなくすように研磨した
後の平均膜厚であり、研磨前の平均膜厚は、例えば3μ
m以上とするのが好適である。
【0015】さらに、本発明による弾性表面波装置用基
板の製造方法は、α-Al2O3のサファイア単結晶基板のR
(1-102)面を、[11-20 ]軸を中心として回転させてオ
フアングルを持たせた面上にMOCVDによりバッファ
層として作用する窒化ガリウム層を堆積形成し、さらに
この窒化ガリウム層の表面にMOCVDにより窒化アル
ミ単結晶層を堆積形成したことを特徴とするものであ
る。
【0016】このような本発明による弾性表面波装置用
基板の製造方法を実施するに当たっては、α-Al2O3のサ
ファイア単結晶基板のR(1-102)面を、[11-20 ]軸を中
心として、特に−側にほぼ2°以上回転させてオフアン
グルを持たせた面上にMOCVDによりバッファ層とし
て作用する窒化アルミ・ガリウム層を堆積形成し、さら
にこの窒化アルミ・ガリウム層の表面にMOCVDによ
り窒化アルミ単結晶層を堆積形成するのが好適である。
【0017】本発明による弾性表面波装置用基板の製造
方法においては、前記サファイア単結晶基板を900℃
以上の温度に加熱しておいて、前記バッファ層および窒
化アルミ単結晶層をMOCVDで堆積形成することがで
き、上述した従来技術のようにバッファ層を形成する際
に低温でMOCVDを行なう場合に比べてプロセスは簡
単となる。また、バッファ層をMOCVDによって形成
するに先立って、水素アニールを行った後、初期窒化処
理を行なうこともできる。このような初期窒化処理を施
すことによって、サファイア単結晶基板に表面に100
Å以下のきわめて薄い窒化アルミ単結晶層が形成され、
この窒化アルミ薄層の上に上述したバッファ層が形成さ
れることになる。
【0018】
【発明の実施の形態】図1〜3は、本発明による弾性表
面波装置用基板の一実施例を製造する順次の工程を示す
断面図である。先ず、図1に示すように、α-Al2O3なる
組成によって表されるサファイア単結晶ウエファ1を準
備する。このサファイア単結晶ウエファ1は3インチの
直径を有するものとし、その厚さは約 450μm とする。
本発明においては、このサファイア単結晶ウエファ1の
表面の上にバッファ層として窒化ガリウム層を形成し、
さらにその上に窒化アルミ単結晶層を形成するものであ
るが、このウエファの表面を、R(1-102)面より[11-20
]軸を中心として所定の角度だけ回転させてオフアン
グルを持たせた面とする。
【0019】図4はサファイア単結晶のR(1-102)面およ
びa軸として表示した[11-20 ]軸を示すものである。
本発明では、上述したようにR面をa軸を中心として回
転させてオフアングルを持たせた面を使用するが、この
回転方向は両矢印で示すように二つある。図5は、上述
したR面のa軸を中心とする回転の方向を定義する線図
であり、時計方向に回転する場合を+とし、反時計方向
に回転する場合を−とする。図5には、c軸も示してあ
り、このc軸とR面との成す角度を図6に示す。図6B
はオフアングルを持たせない場合を示し、図6AはR面
を−方向に回転させた場合を示し、図6CはR面を+方
向に回転させた場合を示すものである。後述するように
本発明においてはR面を−方向に回転させることにより
クラックの発生を有効に抑止できることを確かめた。
【0020】上述したように、R(1-102)面より[11-20
]軸を中心として所定の角度だけ回転させてオフアン
グルを持たせた面を表面としたサファイア単結晶ウエフ
ァ1の表面に、図2に示すようにバッファ層として作用
する窒化ガリウム層2をMOCVD法により堆積形成す
る。上述したように、この窒化ガリウム層2の表面には
凹凸が存在しており、その膜厚が薄い場合には、窒化ガ
リウムが堆積されていない部分もある。このような凹凸
を有する窒化ガリウム層2の膜厚は平均膜厚として示
す。本例では、この窒化ガリウム層2の平均膜厚を0.
13μmとするが、本発明では後述するように0.1μ
m以上とするのが次に成膜する窒化アルミ単結晶層での
クラックの発生を抑止する上で好適である。
【0021】次に、図3に示すように窒化ガリウム層2
の上に窒化アルミ単結晶層3を同じくMOCVD法によ
って形成する。すなわち、本発明においては、サファイ
ア単結晶ウエファ1の表面にバッファ層として窒化ガリ
ウム層2を形成し、さらにその上に窒化アルミ単結晶層
3を形成する。上述したように、この窒化アルミ単結晶
層3の表面にもバッファ層として作用する窒化ガリウム
層2の表面に対応した凹凸がある。このままでは弾性表
面波デバイスの電極を形成することができないので、表
面を平坦に研磨する。この研磨した後の窒化アルミ単結
晶層3の膜厚の平均値を平均膜厚として示す。上述した
ようにオフアングルを持たせたサファイア単結晶ウエフ
ァ1の表面上に堆積形成される窒化アルミ単結晶層3の
表面は(1-210) 面から基板のオフアングルに対応した角
度だけずれた面となる。図4には、この窒化アルミ単結
晶層の(1-210) 面も示した。本例では、この窒化アルミ
単結晶層2の平均膜厚を約2.3μm とするが、所望の
弾性表面波特性を得るにはほぼ2μm 以上とするのが好
適である。このようにして窒化ガリウム層2および窒化
アルミ単結晶層3をMOCVDによって順次に堆積形成
した後に、窒化アルミ単結晶層の上に通常のように所望
の電極パターンを形成した後、所望の大きさのチップが
得られるようにスライスし、このようにして得られるチ
ップをパッケージに入れ、所望の配線を施した後に、気
密に封止して弾性表面波装置を得ることができる。
【0022】本発明においては、上述したように窒化ガ
リウム層2および窒化アルミ単結晶層3をMOCVD法
によって順次に堆積して形成するが、この成膜処理条件
について次に説明する。図7に示すように、先ず、上述
したようにオフアングルを持たせたサファイア単結晶ウ
エファ1をCVD装置内に装填し、サファイア単結晶ウ
エファ1を約1000℃の温度に加熱して水素ガスを導入
し、約30分間水素アニールを行なう。なお、成膜処理
中CVD装置の圧力はほぼ15Torrに保つ。その後、サ
ファイア単結晶ウエファ1の表面温度をほぼ950 ℃の温
度まで下げるとともに水素あるいは窒素ガスをキャリア
ガスとしてアンモニア(NH3) を1〜5リットル毎分の流
量で約5分間導入して初期窒化処理を施す。この初期窒
化処理によってサファイア単結晶ウエファ1の表面には
平均膜厚が数十Åのきわめて薄いAlNO膜が形成される
が、図2では示していない。
【0023】次に、トリメチルガリウム(TMG) を25μ
mol 毎分とアンモニア(NH3) を2リットル毎分の流量で
約10分間導入して窒化ガリウムを堆積させて平均膜厚
がほぼ0.13μm の窒化ガリウム層2を形成する。そ
の後、トリメチルガリウム(TMG) に代えてトリメチルア
ルミニウム(TMA) を30μmol 毎分とアンモニア(NH3)
を1〜5リットル毎分の流量でほぼ120分間に亘って
導入して厚さが約2.3μm の窒化アルミ単結晶層3を
堆積形成する。その後、キャリア水素ガスのみを導入し
ながらサファイア単結晶ウエファ1の温度を常温まで徐
々に低下させる。
【0024】このようにして、サファイア単結晶ウエフ
ァ1をCVD装置から取り出すことなく、窒化ガリウム
層2および窒化アルミ単結晶層3を連続して堆積させる
ことができ、しかもサファイア単結晶基板1の表面温度
は一定に保ったままであるので、プロセスは簡単にな
る。
【0025】本発明では、上述したように、R(1-102)面
より[11-20 ]軸を中心として所定の角度だけ回転させ
てオフアングルを持たせた面としたサファイア単結晶基
板1を用いるが、この回転角とクラックの発生状況との
関係を調べた結果を次に説明する。図8の横軸は上述し
た回転角度を示し、R(1-102)面より[11-20 ]軸を中心
として+方向に4°まで、−方向に4°まで回転させた
ときのクラックの発生率を縦軸に取って示すものであ
る。図8から明らかなように、回転角度零度のとき、す
なわち回転をさせないときにはクラックの発生率はほぼ
70%と大きく、+方向に回転させるとクラック発生率
はさらに増大するが、─方向に回転させるとクラック発
生率は急激に減少する。この−方向へは、2°以上回転
させることによってクラックの発生率はほぼ零となるこ
とが分かった。
【0026】図9は上述した窒化ガリウム層2の平均膜
厚を変化させたときのクラック発生状況を示すグラフで
ある。サファイア単結晶基板1としてはオフアングルを
−4°とした表面に平均膜厚を種々に変化させた窒化ガ
リウム層2を成膜し、さらにその上に平均膜厚が2μm
の窒化アルミ単結晶層3を成膜したものである。また、
クラックの発生状況は、3インチのウエファ内に発生し
たクラックの本数で表した。
【0027】図9から明らかなように、バッファ層とし
て作用する窒化ガリウム層2の平均膜厚を0.1μm よ
りも薄くすると、実用上障害となる可能性のある本数の
クラックが発生するが、0.1μm 以上とするとクラッ
クの発生は著しく抑止されることが分かった。また、窒
化ガリウム層2の平均膜厚を0.2μm よりも厚くして
もクラック発生の抑止効果には差がないので、窒化ガリ
ウム層2の平均膜厚は0.1〜0.2μm とするのが好
適であることが分かった。
【0028】図10は、サファイア単結晶基板の上に
0.1μm の平均膜厚の窒化ガリウム層を成膜し、さら
にその上に2.3μm の平均膜厚の窒化アルミ単結晶層
を成膜した弾性表面波装置用基板の上にインターディジ
タル型の電極を形成して構成したトランスデューサを具
える弾性表面波装置の一例である弾性表面波フィルタを
示す平面図である。本例では隣接する電極指を交叉させ
た正規型のインターディジタル電極21および22を対向配
設して入力側トランスデューサ23を構成し、このトラン
スデューサと所定の間隔を置いて同じく隣接する電極指
を交叉させた正規型の一対の電極24および25を配置して
出力側のトランスデューサ26を構成する。本発明による
弾性表面波装置用の基板の窒化アルミ単結晶層は弾性表
面波の伝播速度が5000m/sec 以上と高いので、電極21,
22, 24, 25の巾および電極指間の間隔を適当に設定する
ことによりGHz オーダーのきわめて高い動作周波数を有
する弾性表面波フィルタを実現することができる。
【0029】図11は、図10に示した弾性表面波装置
の中心周波数の温度係数TCF(Temperature Coeffici
ent of Frequency) を示すものである。本例では、弾性
表面波フィルタの設計中心周波数を2500MHz とし、波長
λを2.25μm としたものである。またTCF特性は、上
述した設計中心周波数を f0 とするとき、(f-f0)/f0(pp
m)で表わされるものである。このグラフから明らかなよ
うに、本発明による弾性表面波装置用基板によれば、理
論的なTCFに近い-20 ppm/℃が得られている。
【0030】本発明は上述した実施例にのみ限定される
ものではなく、幾多の変更や変形が可能である。例え
ば、上述した実施例においては、バッファ層として窒化
ガリウム層を用いたが、窒化アルミ・ガリウム(Al-Ga-
N) 層を用いることもできる。この場合、アルミとガリ
ウムとの組成比は、MOCVD処理におけるNH 3, TMGお
よびTMA の導入割合を調整することによって種々に変化
させることができる。さらに、このバッファ層の組成を
その平均膜厚方向に一定とせずに徐々に変化させること
もできる。この場合には、例えばTMG の導入割合を徐々
に減少させるとともにTMA の導入割合を徐々に増大させ
ることができる。このような窒化アルミ・ガリウム(Al-
Ga-N) 層をバッファ層として用いる場合にも上述した実
施例と同様の効果を得ることができる。
【0031】さらに、サファイア単結晶ウエファとして
直径が3インチのものを使用したが、それ以上の大きい
ウエファやそれよりも小さなサファイア単結晶基板を用
いることもできる。しかし、大きなサファイア単結晶基
板を用いる場合に本発明の効果がより効果的となるの
で、2インチ以上のサファイア単結晶ウエファを用いる
のが好適である。また、上述した弾性表面波装置の実施
例では、正規型の電極を用いた弾性表面波フィルタとし
たが、他の型式の電極や重み付けした電極などを用いる
こともできる。さらに、弾性表面波装置としては、弾性
表面波フィルタの他に弾性表面波共振器、ディレーライ
ンなどの他の弾性表面波装置とすることもできる。
【0032】
【発明の効果】上述したように、本発明による弾性表面
波装置用基板およびその製造方法によれば、2インチ以
上の大きなサファイア単結晶ウエファを用いても、クラ
ックの発生がなく、しかも弾性表面波装置としての重要
な特性である電気−機械結合係数K2が十分に大きく、中
心周波数の温度係数TCFも非常に小さくかつ弾性表面
波の伝播速度の高い窒化アルミ単結晶層を得ることがで
き、これによって特に高周波数で動作する特性の優れた
弾性表面波装置を低コストで提供することができる。ま
た、バッファ層の平均膜厚を容易かつ正確に制御するこ
とができる程度に厚くすることができるとととも高温で
の成膜が可能であるので、製造プロセスは簡単になり、
製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による弾性表面波装置用基板の
製造方法の最初の工程を示す断面図である。
【図2】図2は、同じくその次の工程を示す断面図であ
る。
【図3】図3は、同じくその次の工程を示す断面図であ
る。
【図4】図4は、サファイア単結晶のR(1-102)面と窒化
アルミ単結晶層の(1-210) 面とを示す線図である。
【図5】図5は、サファイア単結晶のR面のa軸を中心
とした回転の方向を示す線図である。
【図6】図6A,B,Cは、サファイア単結晶のR面の
a軸を中心として回転したときのR面とc軸との関係を
示す線図である。
【図7】図7は、本発明による弾性表面波装置用基板の
製造方法の一実施例におけるサファイア単結晶ウエファ
の表面温度の変化を示すグラフである。
【図8】図8は、サファイア単結晶のR面のa軸を中心
とした回転の角度とクラック発生率との関係を示すグラ
フである。
【図9】図9は、窒化ガリウム層の平均膜厚とクラック
の発生状況との関係を示すグラフである。
【図10】図10は、本発明による弾性表面波装置用基
板を具える弾性表面波フィルタの構成を示す平面図であ
る。
【図11】図11は、本発明による弾性表面波装置用基
板の中心周波数の温度係数を示すグラフである。
【符号の説明】
1 サファイア単結晶ウエファ、 2 窒化ガリウム
層、3 窒化アルミ単結晶層、 21, 22, 24, 25 イン
ターディジタル型電極、 23 入力側トランスデュー
サ、 26 出力側トランスデューサ

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】α-Al2O3のサファイア単結晶基板の表面
    に、バッファ層として作用する窒化ガリウム層を形成
    し、その上に前記窒化ガリウム層よりも平均膜厚の厚い
    窒化アルミ単結晶層を形成したことを特徴とする弾性表
    面波装置用基板。
  2. 【請求項2】α-Al2O3のサファイア単結晶基板の表面
    に、バッファ層として作用する窒化アルミ・ガリウム層
    を形成し、その上に前記窒化アルミ・ガリウム層よりも
    平均膜厚の厚い窒化アルミ単結晶層を形成したことを特
    徴とする弾性表面波装置用基板。
  3. 【請求項3】前記サファイア単結晶基板の表面を、R(1-
    102)面より[11-20 ]軸を中心として回転させてオフア
    ングルを持たせた面としたことを特徴とする請求項1ま
    たは2に記載の弾性表面波装置用基板。
  4. 【請求項4】前記サファイア基板の表面を、R(1-102)面
    より[11-20 ]軸を中心としてマイナス側に回転させた
    面としたことを特徴とする請求項3に記載の弾性表面波
    装置用基板。
  5. 【請求項5】前記サファイア基板の表面を、R(1-102)面
    より[11-20 ]軸を中心として−側にほぼ2°以上回転
    させた面としたことを特徴とする請求項4に記載の弾性
    表面波装置用基板。
  6. 【請求項6】前記バッファ層として作用する窒化ガリウ
    ム層または窒化アルミ・ガリウム層の平均膜厚をほぼ
    0.1〜0.2μm としたことを特徴とする請求項1〜
    5の何れかに記載の弾性表面波装置用基板。
  7. 【請求項7】前記バッファ層として作用する窒化ガリウ
    ム層または窒化アルミ・ガリウム層の上に形成される窒
    化アルミ単結晶層の平均膜厚をほぼ2μm 以上としたこ
    とを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の弾性表面
    波装置用基板。
  8. 【請求項8】弾性表面波特性として電気−機械結合係数
    k2がほぼ0.8%で、中心周波数の温度係数TCFがほ
    ぼ−20ppm/℃であることを特徴とする請求項1〜
    7の何れかに記載の弾性表面波装置用基板。
  9. 【請求項9】α-Al2O3のサファイア単結晶基板のR(1-10
    2)面を、[11-20 ]軸を中心として回転させてオフアン
    グルを持たせた面上にMOCVDによりバッファ層とし
    て作用する窒化ガリウム層を堆積形成し、さらにこの窒
    化ガリウム層の表面にMOCVDにより窒化アルミ単結
    晶層を堆積形成することを特徴とする弾性表面波装置用
    基板の製造方法。
  10. 【請求項10】α-Al2O3のサファイア単結晶基板のR(1-
    102)面を、[11-20 ]軸を中心として回転させてオフア
    ングルを持たせた面上にMOCVDによりバッファ層と
    して作用する窒化アルミ・ガリウム層を堆積形成し、さ
    らにこの窒化アルミ・ガリウム層の表面にMOCVDに
    より窒化アルミ単結晶層を堆積形成することを特徴とす
    る弾性表面波装置用基板の製造方法。
  11. 【請求項11】前記サファイア基板の表面を、R(1-102)
    面より[11-20 ]軸を中心として−側にほぼ2°以上回
    転させた面とすることを特徴とする請求項9または10
    に記載の弾性表面波装置用基板の製造方法。
  12. 【請求項12】前記バッファ層および窒化アルミ単結晶
    層をMOCVDで堆積形成する際に、前記サファイア単
    結晶基板を900℃以上の温度に加熱することを特徴と
    する請求項9〜11の何れかに記載の弾性表面波装置用
    基板の製造方法。
  13. 【請求項13】前記バッファ層をほぼ0.1〜0.2μ
    m の平均膜厚に形成し、前記窒化アルミ単結晶層をほぼ
    2μm 以上の平均膜厚に形成することを特徴とする請求
    項9〜11の何れかに記載の弾性表面波装置用基板の製
    造方法。
  14. 【請求項14】前記バッファ層をMOCVDによって形
    成するに先立って、水素アニールを行った後、初期窒化
    処理を行なうことを特徴とする請求項9〜13の何れか
    に記載の弾性表面波装置用基板の製造方法。
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