JP2000191408A - 被覆農薬粒剤、それを用いた苗床及び該苗床を用いた水稲の栽培方法 - Google Patents

被覆農薬粒剤、それを用いた苗床及び該苗床を用いた水稲の栽培方法

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JP2000191408A
JP2000191408A JP10370027A JP37002798A JP2000191408A JP 2000191408 A JP2000191408 A JP 2000191408A JP 10370027 A JP10370027 A JP 10370027A JP 37002798 A JP37002798 A JP 37002798A JP 2000191408 A JP2000191408 A JP 2000191408A
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Shigetoshi Kimoto
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 農薬製剤散布作業の省力化と、散布作業時の
作業者の安全性確保を達成する被覆農薬粒剤、苗床、及
び水稲の栽培方法を提供する。 【解決手段】 稲紋枯病防除成分を含有する農薬粒剤の
表面を、樹脂で被覆した被覆農薬粒剤、該被覆農薬粒剤
を含有する苗床、及び該苗床を用いた水稲の栽培方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は被覆農薬粒剤、それ
を用いた苗床及び該苗床を用いた水稲の栽培方法に関す
る。更に詳しくは、稲紋枯病防除成分を含有する被覆農
薬粒剤、該被覆農薬粒剤を含有する苗床、及び該苗床を
用いた水稲の栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、水稲の紋枯病の防除は、稲紋
枯病防除成分を含有する農薬製剤を、粒剤、粉剤、若し
くは水和剤の状態で、発生時期に合わせて施用すること
により行われてきた。通常、稲紋枯病防除成分を含有す
る農薬製剤が粒剤の場合には、該粒剤を水田に均一散布
する方法が採られており、該防除成分を含有する農薬製
剤が粉剤若しくは水和剤の場合には、該粉剤若しくは水
和剤を茎葉に直接散布する方法が採られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これら農薬製剤の施用
時期は出穂から収穫前までであり、施用は発病時期に合
わせ、全栽培期間中に1〜3回程度行われている。この
作業は、粒状、粉状若しくは液状(水和剤)の農薬製剤
を、散布作業者が直接水田に持ち込んで実施する必要が
あるため、非常に重労働であった。特に、近年の農業環
境においては就農人口が減少し、且つ就農者が高齢化し
ており、稲紋枯病の防除作業(農薬製剤の施用)の省力
化・効率化が求められていた。従来の稲紋枯病の防除作
業は、前述のように粒状、粉状若しくは液状の農薬製剤
を、散布作業者が直接水田に持ち込むため、散布作業者
自身が施用(散布)時に、該粒剤を口若しくは鼻腔から
体内に吸引してしまう恐れがあり、危険な作業であっ
た。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、省力的かつ
安全性の高い稲紋枯病の防除方法を開発すべく鋭意研究
を行った結果、稲紋枯病防除成分を含有する農薬粒子の
表面を、樹脂で被覆した被覆農薬粒剤、該被覆農薬粒剤
を含有してなる苗床、及び該苗床を用いた水稲の栽培方
法であれば、農薬製剤散布作業の省力化と、散布作業時
の作業者の安全性確保が達成されることを知見し、この
知見に基づいて本発明を完成させた。
【0005】本発明は下記の(1)〜(6)の構成を有
する。 (1)稲紋枯病防除成分を含有する農薬粒子の表面を、
樹脂で被覆した被覆農薬粒剤。 (2)施用後一定期間稲紋枯病防除成分の放出が抑制さ
れた放出抑制期間と、該放出抑制期間経過後該防除成分
の放出が持続する放出期間とからなる時限放出型の徐放
機能を有することを特徴とする前記第1項記載の被覆農
薬粒剤。 (3)放出抑制期間が積算温度換算で1000〜300
0日℃の範囲であることを特徴とする前記第2項記載の
被覆農薬粒剤。 (4)浸透移行性を有することを特徴とする前記第1〜
3項記載の何れか1項記載の被覆農薬粒剤。 (5)前記第1〜4項の何れか1項記載の被覆農薬粒剤
を含有する苗床。 (6)前記第5項記載の苗床を用いて栽培することを特
徴とする水稲の栽培方法。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明に
おいて、農薬粒子に配合する稲紋枯病防除成分とは、稲
紋枯病の防除に有効な成分である。その具体例として
は、O,O−ジイソプロピル−S−ベンジルチオホスフ
ェート(一般名:IBP)、(RS)−5−クロロ−N
−(1,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチルイソベ
ンゾフラン−4−イル)−1,3−ジメチルピラゾール
−4−カルボキサミド(一般名:フラメトピル)、α,
α,α−トリフルオロ−3´−イソプロポキシ―ο―ト
ルアニリド(一般名:フルトラニル)、1−(4−クロ
ロベンジル)−1−シクロペンチル−3−フェニル尿素
(一般名:ペンシクロン)等を挙げることができる。
【0007】稲紋枯病防除成分の中でも、該防除成分が
薬効発現の過程において主に根から吸収され、この吸収
された該防除成分が植物体内に移行してはじめて防除効
果を発揮する、いわゆる浸透移行性を有しているもの
は、本発明において特に好ましく用いることができる。
【0008】更に本発明では、本発明の効果を損なわな
い範囲で、他の病害虫に対して有効な成分、例えば稲い
もち病防除成分やウンカ類防除成分、コブノメイガ防除
成分等を農薬粒子に配合してもよい。
【0009】本発明に用いる農薬粒子は、少なくとも1
種類の稲紋枯病防除成分を含有しているものであり、そ
の他の組成は特に限定されるものではない。該粒子は稲
紋枯病防除成分単独で造粒されたものであってもよく、
クレー、カオリン、タルク、ベントナイト、炭酸カルシ
ウム、肥料などの担体や、ポリビニルアルコール、カル
ボキシメチルセルロースナトリウム、澱粉などの結合剤
を用いて造粒されたものであってもよい。更に、必要に
応じ該粒子に界面活性剤、薬害軽減剤、安定剤などを添
加しても構わない。
【0010】該粒子の粒径は0.3mm以上であること
が好ましく、さらに好ましくは0.7〜5.0mmであ
る。粒径0.3mm未満では被膜材料の被覆が困難とな
る。製造時あるいは施用時の取り扱い易さ等を考慮する
と、0.7〜5.0mmであることが好ましい。
【0011】本発明に用いる樹脂としては、オレフィン
重合体、オレフィン共重合体、塩化ビニリデン重合体、
塩化ビニリデン共重合体、ジエン系重合体、ワックス
類、ポリエステル、石油樹脂、天然樹脂、油脂およびそ
の変性物等の熱可塑性樹脂、及び該樹脂から選ばれた2
種以上の混合物、並びにウレタン樹脂、アルキド樹脂等
の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【0012】本発明の被覆農薬粒剤に、長い徐放期間、
若しくは後述の時限放出型の徐放機能を付与するために
は、上記樹脂の中でもオレフィン重合体、オレフィン共
重合体、塩化ビニリデン重合体及び塩化ビニリデン共重
合体で該粒子を被覆することが有効である。その中で
も、特にポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プ
ロピレン共重合体、エチレン−一酸化炭素共重合体が特
に好ましい。
【0013】更に、本発明の被覆農薬粒剤は、前述の樹
脂にフィラーや親水性付与のための界面活性剤などを分
散させたもので、該粒子表面を被覆したものであっても
良い。フィラーとしてはタルク、クレー、カオリン、ベ
ントナイト、白雲母、金雲母、雲母状酸化鉄、金属酸化
物、珪酸質、ガラス及びアルカリ土類金属の炭酸塩、硫
酸塩、澱粉等を挙げることができ、界面活性剤として
は、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等を挙
げることができる。
【0014】樹脂で該粒子を被覆する方法としては、転
動状態、流動状態若しくは噴流状態にある該粒子に、溶
融若しくは有機溶剤に溶解した樹脂を噴霧若しくは塗布
した後、乾燥若しくは固化させる方法や、溶融若しくは
有機溶剤に溶解した樹脂に農薬粒剤を浸漬させた後、乾
燥若しくは固化させる方法等を挙げることができる。
【0015】本発明の被覆農薬粒剤は、施用直後から稲
紋枯病防除成分の放出を開始する徐放機能を有するもの
であってもよく、施用後一定期間は該防除成分の放出が
抑制された放出抑制期間(以下「d1」と記述する)
と、該一定期間経過後該成分の放出が持続する放出期間
(以下「d2」と記述する)とからなる時限放出型の徐
放機能を有するものであってもよい。本発明において云
うところの時限放出型の徐放機能とは、被覆農薬粒剤を
水中若しくは土壌中に施用した時点から、被覆農薬粒剤
中の該防除成分の放出が10重量%放出に達するまでの
期間をd1とし、10重量%放出から90重量%放出に
至るまでの期間をd2とした場合、d1/d2の比率が
0.2以上となる徐放機能を意味する。
【0016】本発明被覆農薬粒剤の徐放機能が、施用直
後から該防除成分の放出を開始するタイプであっても、
時限放出型のものであっても本発明の効果は得られる
が、稲紋枯病が発生しやすい時期に合わせて該防除成分
を放出させる方が薬効の発現上好ましく、また、種子や
幼植物体に対する薬害の回避等を考慮すると時限放出型
の徐放機能を有する被覆農薬粒剤である方が好ましい。
【0017】時限放出型の徐放機能を達成する被膜構成
としては、特開平6−9303号公報に開示された高吸
水膨潤性物質層とオレフィン系重合体層とからなる多層
被膜、特開平6−9304号公報に開示されたアルカリ
物質層とオレフィン系樹脂およびアルカリ水可溶性重合
体の混合物層とからなる多層被膜、特開平6−7280
5号公報に開示されたアルカリ物質層と縮合系重合体お
よびアルカリ水可溶性重合体の混合物層とからなる多層
被膜、特開平6−80514号公報に開示された高吸水
膨潤性物質層と縮合系重合体層とからなる多層被膜等を
挙げることができる。
【0018】また、特開平9−77608号公報に開示
の被覆農薬粒剤、即ち少なくとも1種類の農薬成分と少
なくとも1種類の水膨潤性物質とからなる農薬粒子の表
面に樹脂を主成分とする被膜で被覆した被覆農薬粒剤
は、一層からなる被膜で時限放出型の徐放機能を達成で
き、被覆操作が簡便で且つ製造設備も安価であり、本発
明に特に好ましく利用できる。この組成の被覆農薬粒剤
においては、圃場等に施用後圃場の水分が被膜を透過し
て内部の農薬粒子に到達し、水膨潤性物質を膨潤させ、
この膨潤によって生じる力により、施用後一定期間経過
した後に被膜が崩壊し、被膜内部の有効成分が被膜外部
の環境(土壌、水など)に放出されることになる。
【0019】時限放出型の徐放機能を有する被覆農薬粒
剤の中でも、d1が積算温度換算(以下「D1」と表記
する)で1000〜3000日℃の間である被覆農薬粒
剤は、効果的に稲紋枯病防除成分の薬効を発現させるこ
とができ、好ましい被覆農薬粒剤である。更に、D1は
1500〜2500日℃の範囲であることが好ましい。
【0020】積算温度とは日平均温度と日数の積であ
る。D1が上記範囲内であれば、稲紋枯病の発生時期
に、該成分の放出が開始されるため、省力かつ効率的な
防除が可能となる。但し、D1が3000日℃を上回る
と放出開始のタイミングが遅れ、植物体に該防除成分が
残留するおそれがあり、1000日℃を下回る場合に
は、稲紋枯病がほとんど発生しない時期に、該防除成分
の放出が起こる可能性がある。
【0021】D1は、本発明被覆農薬粒剤の被覆率を変
えることにより、若しくは、稲紋枯病防除成分を含有す
る農薬粒子の表面を被覆する樹脂に、フィラーや界面活
性剤を添加し、その添加量を変えることによって制御す
ることが出来る。具体的には、D1を延ばす場合には、
被覆率を増やすか、該添加量を減らせば良い。D1を短
くする場合にはその反対を行えばよい。また、ベントナ
イトなどの水膨潤性物質を、該粒子に添加することによ
って、D1を短くすることも可能である。この場合、水
膨潤性物質の添加量が増えるほどD1は短くなる傾向に
ある。更に、被覆に用いる樹脂の種類を変えることによ
っても、D1を制御することが可能である。この場合、
透湿性が小さい樹脂を用いた方が、D1は長くなる傾向
にあり、透湿性が大きい樹脂を用いた方がD1は短くな
る傾向にある。
【0022】更に、本発明においては、時限放出型の徐
放機能を有する被覆農薬粒剤におけるd1の温度依存性
を示す係数が、1.1〜3.0の範囲であることが好ま
しく、更には1.5〜2.5の範囲であることが好まし
い。温度依存性とは、温度の変化に伴いd1が変動する
ことであり、その指標としては温度が10℃変化した際
のd1の変動割合(温度依存係数(Q10))で示され
る。例えば、温度が10℃上昇若しくは下降して、d1
が2倍若しくは1/2になった場合には、温度依存係数
が2であると云う。従って温度依存係数の最小値は1で
ある。
【0023】一般に植物の生育における温度依存係数は
2前後であり、温度依存係数が1.1を下回る場合に
は、d1の変化が温度変動に対し小さすぎるため、温度
の変動に応じた病害発生時期のずれに、稲紋枯病防除成
分の放出が対応できない場合がある。また、3.0を越
える場合には、d1の変化が温度変動に対して大きく、
気象変動に応じた病害発生時期のずれによりも、該成分
の放出時期の変動が大きすぎ、放出のタイミングが大き
くずれる可能性がある。
【0024】本発明でいう温度依存係数は、25℃およ
び35℃の水中に被覆農薬粒剤を浸漬してd1を測定
し、算式[温度依存係数=(25℃水中でのd1
(日))/(35℃水中でのd1(日))]で算出した
ものである。
【0025】苗床とは、作物の苗を育てるための培地で
あり、保水材を育苗容器に充填したものを云う。本発明
の苗床は前述のものであって、稲紋枯病防除成分を含有
する農薬粒子の表面を、樹脂で被覆した被覆農薬粒剤を
含有したものである。
【0026】本発明の苗床における該被覆農薬粒剤の存
在位置は、特に限定されるものではないが、該被覆農薬
粒剤を床土(苗床における下層部分であり、通常この表
面に播種する)か覆土(苗床における上層部分であり、
床土の上に播種された種籾を覆い隠す部分)の何れか一
方、若しくはその両方に分散させても良く、該被覆農薬
粒剤と種籾とを、床土と覆土との間に挟み込んでも良
い。その際、該被覆農薬粒剤と種籾とは均一に混合され
た状態であっても良く、そのどちらかが上若しくは下に
なるような状態であっても良い。種籾と該被覆農薬粒剤
とが接触している状態にあれば、該被覆農薬粒剤から放
出された稲紋枯病防除成分の薬効効率が高くなることか
ら、本発明の苗床においては、種籾と該被覆農薬粒剤と
が接触した状態であることが好ましい。
【0027】本発明の苗床は、稲紋枯病防除成分を含有
する農薬粒子の表面を、樹脂で被覆してなる被覆農薬粒
剤であれば、異なる稲紋枯病防除成分を2種以上含有す
る被覆農薬粒剤を含有する苗床であっても良く、時限放
出機能が異なる該被覆農薬粒剤を、2種以上混合したも
のを含有する苗床であっても良い。また、本発明の効果
を損なわない範囲であれば、稲紋枯病防除成分以外の農
薬成分を含有する被覆農薬粒剤や、被覆されていない農
薬粒剤を該苗床に添加しても構わない。添加する農薬成
分は殺菌剤、殺虫剤、除草剤の何れでもよい。
【0028】苗床に用いる保水材は、特に限定されるも
のではないが、具体的には、バーミキュライト、パーラ
イト、ゼオライト等の粘土鉱物や、ピートモス、ヤシガ
ラ等の植物繊維材料や土壌、及びそれらの混合物を挙げ
ることができる。また、本発明においては、市販されて
いる育苗用培土を用いても良い。
【0029】更に、本発明の苗床には、肥料として被覆
粒状肥料を添加することが好ましい。被覆粒状肥料とし
ては、例えば「苗箱まかせ NK301−100」(商
品名、チッソ旭肥料)を挙げることができる。該肥料を
本発明の苗床へ添加すれば、施肥作業の大幅削減が可能
となる。また、本発明の苗床は、慣行の播種機を用いれ
ば容易につくることができる。
【0030】本発明の水稲の栽培方法は、本発明の苗床
を用いたものであれば、特定の方法に限定されるもので
はなく、何れの栽培方法、何れの品種に使用しても、本
発明の効果を得ることが出来る。
【0031】
【実施例】以下、実施例によって本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
尚、以下の実施例における「%」は特に断りがない限り
「重量%」である。 「被覆農薬粒剤の製造」 1.農薬粒剤A、Bの製造 1)農薬粒剤A 稲紋枯病防除成分としてα,α,α−トリフルオロ−3
´−イソプロポキシ―ο―トルアニリドを用い、該成分
を50%含む原料粉末(モンカット水和剤50、日本農
薬製)25重量部、ベントナイト60重量部、クレー1
5重量部の組成で各原料をミキサーで均一に混合し、続
いてニーダーで加水混練した。得られた混練物を二軸ス
クリュー押し出し式造粒機(スクリーンダイス径φ0.
8mm)で造粒し、該造粒物を、回転円盤式整粒機(不
二パウダル製、マルメライザーQJ400)で、円形度
係数が0.7以上になるまで平滑化処理を行った。具体
的には、該造粒物を計量して回転円盤式整粒機に供給
し、下記の運転条件で整粒した。該整粒物を80℃の条
件下で熱風循環乾燥機を用いて乾燥後、篩い分けするこ
とによって、粒径1.0〜1.4mmの農薬粒剤Aを得
た。
【0032】円形度係数は、ランダムに取り出した農薬
粒剤A100粒を用い、株式会社ピアス製のPIAS−
IVで測定した。農薬粒剤Aの円形度係数は0.9であ
った。 運転条件 運転方式 :回分式 運転時間 :3min 目皿ピッチ:1mm 回転数 :788r/min 仕込量 :2リットル(1回当たり)
【0033】2)農薬粒剤B 稲紋枯病防除成分としてα,α,α−トリフルオロ−3
´−イソプロポキシ―ο―トルアニリドを用い、該成分
を50%含む原料粉末25重量部、ベントナイト50重
量部、クレー25重量部とするほかは農薬粒剤Aと同様
に製造し、粒径1.0〜1.4mmの農薬粒剤Bを得
た。円形度係数は、ランダムに取り出した農薬粒剤B1
00粒を用い、株式会社ピアス製のPIAS−IVで測
定した。農薬粒剤Bの円形度係数は0.9であった。
【0034】2.被覆農薬粒剤の被覆(実施例1、2の
製造) 1)実施例1 図1に示した噴流層被覆装置(直径250mm、高さ2
000mm、熱風噴出口径50mm、円錐角50度)を
用い、熱風温度:100±5℃、熱風風量:70m3/
hrの条件下に農薬粒剤A3kgを投入し、噴流中の農
薬粒剤温度が70℃に達した時点から、下記の被膜材料
溶解液を0.2kg/minのスプレー流速で、被覆率
が20重量%なるまで噴霧した後スプレーを停止し、引
き続き30分間乾燥を行い、実施例1の被覆農薬粒剤を
得た。
【0035】ここで被覆率とは、農薬粒子の重量(a)
と被膜の重量(b)との和に対する被膜の重量(b)の
比率であり、式:[100b/(a+b)]で求められ
る。被膜材料溶解液は、エチレン−一酸化炭素共重合体
(MI=0.75、CO=0.95重量%)36重量%
とタルク(平均粒径5μm)64重量%とからなる被膜
材料を、テトラクロロエチレンに90〜100℃で溶解
撹拌し、被膜材料の濃度が被膜材料溶解液に対して3.
0重量%となるよう調整した。スプレーノズルは開口
0.4mmフルコーン型の一流体ノズルを用いた。
【0036】2)実施例2 実施例1と同じ条件で農薬粒剤Bを被覆し、実施例2の
被覆農薬粒剤を得た。
【0037】3.放出機能確認試験 被覆農薬粒剤を水中に浸漬し、被覆農薬粒剤の被膜が破
壊されることにより、内部の稲紋枯病防除成分が外部に
放出される状況を観察した。キャップ付試験管(12m
m×72mm)に、前述の「被覆農薬粒剤の製造」で得
られた被覆粒を1粒と水1.5mLを入れたものを、被
覆粒A及びBをそれぞれ200本ずつ準備した。該試験
管のうち、被覆粒A及びBを入れたそれぞれの試験管1
00本を25℃の水槽に浸し、残りの試験管100本を
35℃の水槽に浸し放置し、被膜の崩壊した被覆粒の個
数をカウントした。観察は試験開始から毎日行った。
【0038】縦軸に累積放出率(=累積崩壊数)、横軸
に経過日数をとり、観察結果をプロットしたグラフを作
成し、試験開始から累積放出率が10%に至るまでの日
数(=放出抑制期間「d1」)と、その後累積放出率が
90%に至るまでの日数(=放出期間「d2」)とを求
めた。このグラフに基づいて、d1の温度依存係数を算
出した。算出方法は算式[(温度依存係数)=(25℃
のd1)/(35℃のd1)]で行った。また、D1を
d1(日)×25(℃)で算出した。以上の結果を表1
に示した。
【0039】
【表1】
【0040】「苗床の作成」(実施例3〜6、比較例
1、2) 実施例3 くみあい黒粒培土(くみあい協友社製)3000gを床
土として、内寸が縦58cm,横28cm,深さ3cm
の水稲用育苗箱に入れ、表面を平らにし、この表面に水
稲の催芽種籾(品種:森のくまさん)150gを均一か
つ層状に播種した。引き続き、被覆農薬粒剤として実施
例1の被覆農薬粒剤100gを均一かつ層状に施用し
た。この上に、床土と同じくみあい黒粒培土1000g
を用いて覆土し、本発明の苗床を作成した。該苗床は5
月28日に作成した。育苗箱をグロースキャビネット中
に設置し、明期12時間、暗期12時間、気温25℃、
相対湿度80〜90%の一定温度条件下で18日間育苗
を行った。光源には蛍光灯を用い、光源から育苗箱表層
までの距離は30cmであった。培土表層が乾燥しない
ように適宜潅水を行った以外は、慣行法に準じて育苗管
理を行なった。
【0041】実施例4 実施例1の被覆農薬粒剤を80gとした以外は、実施例
3と同様に苗床の作成及び育苗を行った。
【0042】実施例5 くみあい黒粒培土(くみあい協友社製)2000gを床
土として、内寸が縦58cm,横28cm,深さ3cm
の水稲用育苗箱に入れ、表面を平らにし、この表面に
「苗箱まかせ NK301−100」(商品名、チッソ
旭肥料)650gを均一かつ層状に施肥した。続いて、
水稲の催芽種籾(品種:森のくまさん)150gを均一
かつ層状に播種した後、被覆農薬粒剤として実施例1の
被覆農薬粒剤80gを均一かつ層状に施用した。この上
に、床土と同じくみあい黒粒培土1000gを用いて覆
土し、本発明の苗床を作成した。更に、実施例3と同じ
条件で育苗を行った。
【0043】実施例6 被覆農薬粒剤として、実施例1の被覆農薬粒剤80gと
実施例2の被覆農薬粒剤20gとの均一混合物を用いる
以外は、実施例3と同様に苗床の作成及び育苗を行っ
た。
【0044】比較例1 くみあい黒粒培土(くみあい協友社製)3000gを床
土として、内寸が縦58cm,横28cm,深さ3cm
の水稲用育苗箱に入れ、表面を平らにし、この表面に水
稲の催芽種籾(品種:森のくまさん)150gを均一か
つ層状に播種した。引き続き、この上に床土と同じくみ
あい黒粒培土1000gを用いて覆土し、本発明の苗床
を作成した。該苗床は5月28日に作成した。育苗箱を
グロースキャビネット中に設置し、明期12時間、暗期
12時間、気温25℃、相対湿度80〜90%の一定温
度条件下で18日間育苗を行った。光源には蛍光灯を用
い、光源から育苗箱表層までの距離は30cmであっ
た。培土表層が乾燥しないように適宜潅水を行った以外
は、慣行法に準じて育苗管理を行なった。
【0045】比較例2 くみあい黒粒培土(くみあい協友社製)2000gを床
土として、内寸が縦58cm,横28cm,深さ3cm
の水稲用育苗箱に入れ、表面を平らにし、この表面に
「苗箱まかせ NK301−100」(商品名、チッソ
旭肥料)650gを均一かつ層状に施肥した。続いて、
水稲の催芽種籾(品種:森のくまさん)150gを均一
かつ層状に播種した。この上に、床土と同じくみあい黒
粒培土1000gを用いて覆土し、本発明の苗床を作成
した。培土表層が乾燥しないように適宜潅水を行った以
外は、慣行法に準じて育苗管理を行なった。以上、実施
例3〜6、比較例1、2で育苗した苗の薬害発生状況の
調査観察結果を表2に示した。
【0046】
【表2】
【0047】「本圃での栽培試験」(実施例7〜10、
比較例3、4) 実施例3〜6、比較例1、2で育苗した苗を、6月15
日に水田に移植した。実施例3〜6で得られた苗を用い
た試験区を、実施例7〜10とし、比較例1〜2で得ら
れた苗を用いた試験区を、比較例3、4とした。比較例
3、4に対しては、市販のモンカット粉剤DL(商品
名、日本農薬)を8月1日に慣行法に準じて散布した。
併せて稲紋枯病防除成分を含む薬剤を一切施用しない無
処理区も設けた。無処理区に用いた苗は、比較例1で得
られた苗を用いた。実施例7〜10の各試験区において
は、被覆農薬粒剤から放出される稲紋枯病防除成分以外
は、一切該防除成分の散布は行わなかった。その他肥培
管理は、慣行法に準じて行った。
【0048】栽培試験の開始と同時に、地表下5cmに
温度計を設置し、連続的に地温を測定した。栽培期間中
の日平均気温は約27℃であった。地温はほぼ気温に近
似していた。播種後80日目でD1は約2100日℃、
播種後95日目で約2500日℃であった。表1の結果
により、実施例1の被覆農薬粒剤は播種後約55日目、
実施例2の被覆農薬粒剤は播種後約85日目に放出開始
したものと予測できる。8月16日(播種後80日
目)、8月31日(播種後95日目)に、任意の3ヶ所
から50株を選び(合計150株)、稲紋枯病の発病調
査を行った。調査結果を表3に示した。
【0049】
【表3】
【0050】本試験結果により、実施例7〜10、比較
例3、4を用いた区では、何ら薬害が発生することな
く、無処理区と同様に健苗を育成できた。播種後80日
目、実施例7〜10を用いた区では比較例3、4と同等
の薬効を示した。特に、実施例7は肥料との併用で実施
例6よりも薬効が向上していた。播種後95日目、実施
例7〜10を用いた区では比較例3、4と同等の薬効を
示した。特に実施例10の薬効は比較例3、4と比べて
優れていた。
【0051】
【発明の効果】本発明の被覆農薬粒剤を用いて水稲を栽
培した場合には、以下のような効果が得られる。本発明
の被覆農薬粒剤は、薬害を起こすことなく種籾と同時に
施用できるため、稲紋枯病防除が省力的にできる。本発
明の苗床であれば、稲苗の根元に有効成分があるため有
効成分の利用効率が高く、高い防除効果を安定して発揮
できる。被覆された被覆農薬粒剤を施用することになる
ので、粉剤、水和剤、未被覆の粒剤の散布と比べて製剤
表面に有効成分が露出していないため散布時の安全性が
高い。少ない防除成分量でも慣行並の防除効果が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】噴流層の断面図
【符号の説明】
噴流塔 スプレーノズル 農薬粒子(農薬粒剤) 熱風導入管 被膜材料導入管 ガイド管
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // A01N 57/14 A01N 57/14 H

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 稲紋枯病防除成分を含有する農薬粒子の
    表面を、樹脂で被覆した被覆農薬粒剤。
  2. 【請求項2】 施用後一定期間稲紋枯病防除成分の放出
    が抑制された放出抑制期間と、該放出抑制期間経過後該
    防除成分の放出が持続する放出期間とからなる時限放出
    型の徐放機能を有することを特徴とする請求項1記載の
    被覆農薬粒剤。
  3. 【請求項3】 放出抑制期間が積算温度換算で1000
    〜3000日℃の範囲であることを特徴とする請求項2
    記載の被覆農薬粒剤。
  4. 【請求項4】 浸透移行性を有することを特徴とする請
    求項1〜3記載の何れか1項記載の被覆農薬粒剤。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4の何れか1項記載の被覆農
    薬粒剤を含有する苗床。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の苗床を用いて栽培するこ
    とを特徴とする水稲の栽培方法。
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