JP2000178778A - 過酸化水素の製造方法 - Google Patents

過酸化水素の製造方法

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JP2000178778A
JP2000178778A JP10363266A JP36326698A JP2000178778A JP 2000178778 A JP2000178778 A JP 2000178778A JP 10363266 A JP10363266 A JP 10363266A JP 36326698 A JP36326698 A JP 36326698A JP 2000178778 A JP2000178778 A JP 2000178778A
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cathode
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exchange membrane
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Nobuo Yamada
信夫 山田
Tokiya Yaguchi
時也 矢口
Genzo Yamane
源三 山根
Shuhei Wakita
修平 脇田
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Permelec Electrode Ltd
Oji Paper Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】長期間継続的に電解槽を運転しても、陽極成分
が溶出して、溶出した成分が電解槽の性能を劣化させる
ことなく、安定して過酸化水素を製造することが可能な
方法を提供すること。 【解決手段】 陰極室と陽極室とがカチオン交換膜で隔
てられた電解槽を用い、陰極において酸素を還元して過
酸化水素を製造する方法であって、陽極の少なくとも一
部が発泡金属である過酸化水素の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、過酸化水素の製造
方法に関する。特に、本発明は、アルカリ水溶液中に過
酸化水素を電気化学的に長期間安定して合成する方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】化学パルプ漂白における塩素の使用の歴
史は古く、すでに1930年にはその使用が始まってい
る。現在でも塩素はもっとも効果的な漂白剤の一つであ
る。パルプ産業における塩素の使用量はわが国における
全塩素使用料の約10%を占めている。しかしながら塩
素漂白に伴い生成する有機塩素による環境汚染が社会的
な問題として取り上げられている。このような社会的背
景から、代表的な非塩素系漂白剤として過酸化物、特に
過酸化水素が注目されている。
【0003】過酸化水素は、紙パルプ産業ではもっとも
使用例の多い非塩素系漂白剤である。漂白は通常アルカ
リ側で行われるためアニオンであるHOO- が親核的な
攻撃試薬となる。したがってキノンあるいはカルボニル
化合物を酸化分解し、パルプを淡色化させることができ
る。
【0004】過酸化水素は、現在殆どアンスラキノンの
水添、酸化により製造されている。製造された過酸化水
素は、ユーザーへの輸送を効率的に行うため、約50〜
60%にまで濃縮される。そのため、メーカーでは濃縮
設備が必要である。しかも、過酸化水素は高濃度では危
険物であるため、貯蔵のためのタンクや輸送のための取
扱いには細心の注意が必要である。
【0005】ところが、過酸化水素を使用するユーザー
にとっては、上記のような高濃度は必要ない。むしろ、
通常は、用途に応じ数%程度に希釈して使用する。従っ
て、危険物の範囲外となる中・低濃度の過酸化水素を、
使用時に使用場所で簡便に生産でき、かつそのまま使用
できれば、危険物を扱う必要がなく、安全性、至便性の
上で極めて有益である。
【0006】そこで、本発明者等は、上記のような観点
から、簡便な過酸化水素の製造法として、ガス拡散陰極
中へ酸素を吹き込み、電解還元してアルカリ性の過酸化
水素を製造する方法(特開平6−200389号、特開
平6−88273号)を提案した。そして本発明者等
は、上記電解法による過酸化水素の製造について、実用
化をすべくさらに検討を進めた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】パルプを過酸化水素で
漂白する場合に最適なアルカリ比(NaOH/HO、g/g)
は一般に0.2 〜2 程度である。従って、電解法によって
生成する過酸化水素水溶液をパルプの漂白に使用する場
合も、生成液のアルカリ比がこの範囲内またはこの範囲
に近い値であることが望ましい。過酸化水素の電解法に
よる製造において、上記アルカリ比は理論上2.35
(80/34)である。これは、陰極において1モル
(34g)の過酸化水素の生成に伴い、2モルの1価の
陽イオン(例えば、ナトリウムイオン)が陽極から陰極
にカチオン交換膜を介して移動して、ナトリウムイオン
の場合、水酸化ナトリウム(2モル、80g)が生成す
るためである。
【0008】過酸化水素水溶液のアルカリ比を上記理論
値に近づけるためには、電流効率が100%に近いこ
と、および、陽極液からイオン交換膜を介して陰極液
にアルカリ(NaOH) が拡散しないことが必要である。電
流密度が比較的低い場合には、100%に近い電流効率
を得ることができる。
【0009】アルカリのイオン交換膜を介しての拡散
は、陽極液中のアルカリ(NaOH) 濃度が高くなればそれ
だけ生じ易い。そこで、陽極液中のアルカリ濃度はでき
るだけ低く、例えば、10重量%以下であることが望ま
しい。陽極液中のアルカリ濃度を10重量%以下にすれ
ば、電解条件にもよるが、アルカリ比を2.5以下にす
ることができる。
【0010】本発明者らは、電解法による過酸化水素の
製造方法を実用化する目的で、生産効率の向上のため、
従来法に比べて高い電流密度での過酸化水素の製造を試
みた。その結果、一定以上の電流密度になると、経時的
に電流効率が低下し、アルカリ比が2.5を超えて上昇
することが判明した。本発明者らは、初め、陰極が電流
効率低下の原因であると考え種々検討した。しかし、陰
極は多孔質の材料からなり、表面積は大きい。そのた
め、見掛けの電流密度に比べて実際の電流密度はかなり
小さく、陰極が電流効率の低下の原因ではなかった。
【0011】従来は、過酸化水素が生成する電極である
ガス拡散電極の物性や性能に多くの関心が払われてい
た。しかし、上記のように電流効率の低下がガス拡散電
極の性能によるものでないことが判明し、本発明者ら
は、陽極の素材や構造に注目して種々検討した。
【0012】過酸化水素の製造方法における陽極は、酸
素発生過電圧の低い金属陽極であることが望ましい。そ
こでこれまでも酸素発生過電圧の低いニッケル板が用い
られている。これは、陽極上の反応が、以下の式で表さ
れる酸素発生反応だからである。 2OH- → 1/2O+HO +2e 又は HO →1/2O +2
H+2e
【0013】これまで陽極として用いられているニッケ
ル板は、その形態から、見掛けの電流密度と実際の電流
密度に大差はなかった。そして、本発明者らの検討の結
果、アルカリ濃度が10%以下の陽極液中で、電流密度が
高くなると、陽極の劣化が原因で上記のように電流効率
が低下することが判明した。即ち、上記条件下では、陽
極は、表面が酸化されて不働態化が生じて電流が流れに
くくなる。
【0014】この原因は定かでないが、アルカリ濃度が
低いと陽極反応によって陽極酸化が生じたり、あるいは
水素イオンによる部分的な酸性状態による腐食が生じる
ためと考えられる。この傾向は電極の表面積が比較的小
さく、従って実電流密度が大きく、陽極としての電位が
高い場合に、より顕著に現れることがわかった。さら
に、表面の不働態化が進行すると実表面積が更に小さく
なるためか、不働態化による酸化皮膜の成長が速まり加
速度的に通電が困難になることもわかった。
【0015】このような見地に基づき、電流効率の低下
を防止する方法として、発明者らは先に、陰極室と陽極
室とがカチオン交換膜で隔てられた電解槽を用い、陰極
において酸素を還元して過酸化水素を製造する方法であ
って、陽極の見掛けの電流密度が400A/m 以上であ
り、かつ前記陽極の実面積が見かけの面積の3倍以上と
する過酸化水素の製造方法を提案した(特開平9−78
281号公報)。特に、上記方法においては、陽極の実
面積が見かけの面積の3倍以上となるようにするため、
陽極の少なくとも一部に繊維状金属集合体を用いた。こ
の方法では、陽極の見掛けの電流密度が大きくても、陽
極として繊維状金属集合体を用い、陽極の実面積を調整
することで、陽極表面の酸化を防止でき、その結果、従
来の方法に比べて、長時間安定的に過酸化水素を製造す
ることが可能になった。
【0016】しかしながら、上記方法を実用するに当た
り、より長時間、継続的に過酸化水素の製造試験を行っ
たところ、上記方法でも、電流効率が徐々に低下するこ
とが判明した。上記方法での電流効率の低下は、長期間
継続的に電解槽の運転を行うことで、陽極を構成する成
分、例えば、ステンレススチールの場合であれば鉄等が
溶出し、溶出した成分が膜や陰極に移行して電解槽の性
能が劣化することが原因であることが判明した。
【0017】そこで、本発明の目的は、長期間継続的に
電解槽を運転しても、陽極成分が溶出して、溶出した成
分が電解槽の性能を劣化させることなく、安定して過酸
化水素を製造することが可能な方法を提供することにあ
る。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明は、陰極室と陽極
室とがカチオン交換膜で隔てられた電解槽を用い、陰極
において酸素を還元して過酸化水素を製造する方法であ
って、陽極の少なくとも一部が発泡金属であることを特
徴とする過酸化水素の製造方法に関する。以下本発明に
ついて説明する。
【0019】本発明者らは、陰極室と陽極室とがカチオ
ン交換膜で隔てられた電解槽を用い、陰極において酸素
を還元して過酸化水素を製造する方法において、陽極の
少なくとも一部を発泡金属とすることで、長期間使用時
における陽極成分の溶出及び溶出による電解槽の性能の
劣化を防止して、安定して過酸化水素を製造することが
できることを見いだして本発明を完成した。
【0020】本発明においては、陽極の少なくとも一部
に発泡金属を用いる。本明細書において、「発泡金属」
とは、三次元不規則網状構造を有する多孔体をいう。即
ち、発泡金属は、網状構造の多孔体の骨格が連続した構
造を有する。発泡金属は、電池のマトリックスや工業用
フィルターとして市販され、汎用されている。発泡金属
は、例えば、発泡樹脂の表面に金属成分をめっきなどを
施した後、芯材である樹脂を熱分解させる方法、金属繊
維をフェルト状に焼結する方法又は発泡ポリウレタン樹
脂の骨格に金属粉末を塗布焼結する方法などにより製造
される。
【0021】本発明の陽極として使用する発泡金属は、
陽極の実面積が見かけの面積の3倍以上なるようなもの
であることが実電流密度を有効に低下させるという観点
から好ましい。このような観点から、発泡金属は、90
%以上、好ましくは、90〜98%の空孔率を有するも
のであり、比表面積が0.001m/g 以上であることが好
ましい。このような発泡金属は、上記製造方法におい
て、めっき又は塗布等をする金属の厚さを、例えば、0.
005〜1mmの範囲で適宜調整することで得られる。実電流
密度を低下させることができれば、陽極反応による酸化
を抑制し、または水素イオンによる部分的な酸性状態に
よる腐食を抑制することができる。このような観点か
ら、発泡金属の比表面積は、より好ましくは0.01m/g
以上である。比表面積の上限は、特にないが、発泡金属
の成形性を考慮すると0.1m/gである。また、発泡金属
の孔径は、特に限定されないが、0.01〜10mmの範囲、好
ましくは0.1〜1mmの範囲とすることができる。
【0022】このような発泡金属を従来法で用いられて
きた繊維状金属集合体とを比較すると、発泡金属は、三
次元的に不規則網状構造の多孔体の骨格が連続している
点で、部分的に不連続となる繊維状金属集合体と異な
る。このような違いから発泡金属を用いた場合、陽極成
分である鉄等の溶出を抑制しつつ、長期間安定して過酸
化水素を製造することができる。
【0023】発泡金属に用いられる金属としては、原則
としてめっきが可能な金属であれば特に限定されない。
このような金属として、例えば、ニッケル、白金、銅、
亜鉛及びそれらの合金などを挙げることができる。長期
にわたり安定して過酸化水素を製造するという観点か
ら、発泡金属に用いられる金属には、好ましくは、ニッ
ケル又はニッケル合金を挙げることができる。また、セ
ル電圧を長期にわたり低減することができるという観点
から、発泡金属の表面に触媒を担持しても良い。このよ
うな触媒として、パラジウムなどのガス拡散電極用の触
媒等を挙げることができる。触媒の担持は、パラジウム
超微粉末を発泡金属の表面に塗布又はめっき等により行
うことができる。
【0024】本発明の製造方法に用いる陽極は、少なく
ともその一部が発泡金属からなるものである。陽極の全
部を発泡金属としてもよいが、陰極やイオン交換膜の支
持体としての剛直を備えるという観点からは、陽極は、
発泡金属のシートと金属多孔板とからなることが好まし
い。そして、前記発泡金属のシートがカチオン交換膜と
密着した状態で電解槽内に設置されていることが、陰極
との極間距離を短縮して、槽電圧を低下させるという観
点から特に好ましい。
【0025】また、本発明において陽極として用いる金
属多孔性板は、電極の表面積を増加させ、かつ酸素ガス
の排出性を良くすることができれば、その形状や材質に
は特に制限はない。但し、金属多孔性板としては、セル
全体の溶液の流れ及び電流分布が均一に維持されるとい
う観点から、平面性のある打ち抜き板を用いることが好
ましい。セル全体の溶液供給が不足すると金属の溶解や
不動態化が進行するため、膜との境界面への溶液の供給
経路を十分に確保する必要がある。
【0026】金属多孔板を支持電極として、発泡金属の
シートをカチオン交換膜と密着した状態で電解槽内に設
置した状態の一例を図1に示す。
【0027】図中、1は金属発泡体、2は金属多孔板、
3はカチオン交換膜、4は陰極(カーボン材)、5はガ
スケットである。金属発泡体1は一方の面から金属多孔
板2、他方の面にカチオン交換膜3が配置され、金属多
孔板2の金属発泡体1と接する面は、直径1〜10mmの孔
が多数設けられた多孔部6となっている。金属発泡体1
の外縁は、ガスケット5で密閉されている。カチオン交
換膜3の金属発泡体1と反対側には陰極4が設けられ、
陰極4の外縁は、ガスケット5で密閉されている。
【0028】金属多孔板2と陰極4は、図示されていな
いが、電解用の電源と接続されている。金属発泡体1は
金属多孔板2と接触しており、陽極として機能する。金
属発泡体1には金属多孔板2の多孔部6を介して陽極液
(アルカリ水溶液)が供給され、また、電解後の液およ
び酸素ガスは、再度、多孔部6を介して、外部に排出さ
れる。上記構成にすることにより、陽極としては極めて
表面積を大きくとれるとともに、金属発泡体1をイオン
交換膜に密着させて支持することができる。
【0029】図2は本発明の電解槽10の断面説明図で
ある。電解槽10はカチオン交換膜3により分けられた
陰極室7と陽極室8を有する。陰極室7には陰極4であ
るガス拡散電極が充填されている。又、陰極室7の下部
には陰極液の供給口11及び酸素含有ガスの供給口12
があり、上部には電解生成液の排出口13がある。一方
陽極室8内には陽極が設けられ、陽極室8の下部には、
陽極液の供給口14があり、上部には排出口15があ
る。
【0030】本発明の製造方法は、陰極室と陽極室とが
カチオン交換膜で隔てられた電解槽を用い、陰極におい
て酸素を還元して過酸化水素を製造する方法である。酸
素の電気化学的還元による過酸化水素の製造は公知の方
法であり、例えば特開平6−88273号、特開平6−
200389号及び特開平9−78281号公報に記載
の方法がある。本発明の製造方法においては、陽極の少
なくとも一部に発泡金属を用いること以外は、公知の方
法、特に特開平9−78281号公報に記載をそのまま
利用することができる。
【0031】イオン交換膜としては、陰極においてアル
カリ性の過酸化水素水溶液を得るので、カチオン交換膜
を使用する。耐薬品性を考慮するとフッ素樹脂系のイオ
ン交換膜を使用することが好ましい。陰極室及び陽極室
に供給されるアルカリ水溶液としては、通常水酸化ナト
リウム水溶液が用いられるが、他に水酸化カリウム等の
水溶液を用いることもできる。陰極に供給される酸素と
しては、酸素以外に酸素を含有する空気等の酸素混合ガ
スであっても良い。
【0032】陰極で得られたアルカリ性の過酸化水素水
溶液はそのまま、希釈又は濃縮することなしに使用され
ることが好ましく、従って、運転条件も過酸化水素の使
用目的に応じて適宜変動させることができる。例えば、
パルプの漂白に使用する場合、過酸化水素水溶液中のア
ルカリ比率は漂白の使用条件に近い方が好ましい。従っ
て、陰極室に供給されるアルカリ水溶液濃度は高くない
ことが望ましく、陽極室に供給されるアルカリ水溶液濃
度より低いことが好ましい。具体的には陰極室のアルカ
リ濃度は0.6モル以下、好ましくは0.4モル以下が
適当であり、より好ましくは、アルカリを含まない、例
えば、イオン交換水であることが適当である。また、陽
極室のアルカリ濃度は10重量%以下とすることができ
るが、低すぎると電解液の抵抗損失が大きくなるばかり
か、前述の理由から陽極の劣化が生じ易くなる。そこ
で、陽極室のアルカリ濃度は、10重量%以下で、0.
6モル(2.4 重量%)以上、好ましくは0.9モル(3.
6 重量%)以上であることが適当である。電解液の濃度
及び供給量、酸素の供給量並びに電流は電解槽の規模に
より適宜設定することができる。
【0033】電解液の濃度及び供給量、酸素の供給量並
びに電流は電解槽の規模により適宜設定することができ
る。但し、本発明では生産効率を高めるという観点か
ら、見掛けの電流密度(電流/電極投影面積)を400
A/m以上とする。見掛けの電流密度(電流/電極投
影面積)は、好ましくは800A/m以上である。
尚、見掛けの電流密度に上限はない。しかし、見掛けの
電流密度が上昇すると、槽電圧も上昇し、その結果、電
力原単位も上昇する。そこで、槽電圧を考慮して経済的
に有利な見掛けの電流密度を適宜選択することができ
る。但し、実際上は、最高でも5000A/mであり、好
ましくは、1000A/m以下であることが適当である。
電解液の温度は、電解による発熱を考慮して、供給液が
高温にならないようにすることが好ましい。特に陰極室
の電解生成液の温度は、過酸化水素を含有することか
ら、40℃以下の温度になるように制御することが好ま
しい。
【0034】陰極は、アルカリ水溶液中の酸素を還元し
て過酸化水素を製造する方法において用いられるガス拡
散電極をそのまま用いる。例えば、特開平6−2003
89号に記載の充填密度0.3以上の炭素繊維材料を挙
げることができる。炭素繊維材料としては、炭素繊維の
編物を例示することができ、炭素繊維の編物としては、
例えば市販のグラファイトクロスを挙げることができ
る。グラファイトクロス以外の炭素繊維材料であっても
良い。
【0035】さらに、陰極として、多孔質の無定形炭素
材料を例示することもできる。多孔質の無定形炭素材料
は、非結晶質で実質的に無配向、即ち異方性のない多孔
質の炭素材料である。そのような炭素材料としては、例
えば、多孔質の無定形炭素繊維材料及び多孔質の無定形
炭素成形体を挙げることができる。
【0036】上記多孔質の炭素繊維材料は、以下のよう
にして得られる。ノボラック型のフェノール樹脂を溶融
紡糸し、これをホルマリンで熱処理すると分子間に僅か
な三次元架橋を形成した非結晶、無配向のフェノール繊
維が得られる。この繊維は、防炎性、耐熱性、耐薬品性
の繊維で、これを加熱するとその形態のまま炭素化し炭
素含有率の高い無定形構造の炭素繊維となる。この際、
溶融したり収縮したりすることがないため、フェノール
繊維をフェルトやクロスに加工してから炭化すると、そ
のまま無定形炭素繊維のフェルトやクロスを得ることが
できる。これはグラファイトの如き結晶構造を持たない
ものの、僅かに架橋しているために柔軟で、無定形のグ
ラッシーカーボン(ガラス状炭素)として電極に最適で
ある。
【0037】多孔質の炭素繊維材料は、電極としての形
状を保持するためには、クロス状である方が好ましく、
このクロスを所定の面積、厚みになるよう電極保持枠の
中に充填することが好ましい。充填密度は電解効率に大
きく影響し、密度が低いと電極と酸素、アルカリ電解液
との接触が不充分で電解効率が悪く、密度が高すぎると
酸素、アルカリ電解液の流れが妨げられて電解効率が落
ちる。このような観点から、充填密度は0.3以上1.
5以下、好ましくは0.4以上1.0以下とすることが
適当である。
【0038】又、本発明で用いるのガス拡散電極として
例示した多孔質の炭素成形体は以下のようにして得るこ
とができる。懸濁重合法による微粒球状のフェノール樹
脂を架橋密度をコントロールして、炭素化後に適当な多
孔性となるように調整する。この微粒球状のフェノール
樹脂は、フェノール繊維と同じく僅かな架橋を行い、次
いで架橋した微粒球状のフェノール樹脂を焼結成形して
炭素化すると、多孔質のグラッシーカーボン成形体を得
ることができる。この時の樹脂の粒径、成形圧力等を選
ぶことにより、空孔径、空孔率を適宜コントロールする
ことが可能である。
【0039】多孔質の炭素成形体は、微粒球状フェノー
ル樹脂の焼結成形による炭素化の際に任意の電極の形状
に成形することができる。電極の形状は、炭素繊維材料
(クロス)の場合と同じく、電解槽中の形状及び大きさ
を考慮して適宜決定できる。多孔質の炭素成形体の密度
(炭素成形体の真の密度ではなく、見かけの密度)は、
炭素繊維材料の場合と同じく、電解効率に影響し、例え
ば約0.9〜1.4の範囲とすることが適当である。
【0040】尚、前記の特開平6−200389号にお
いて用いた炭素繊維は、無定形の炭素繊維ではなく、ピ
ッチ系又はアクリル系の炭素繊維である。一般に、ピッ
チ系の炭素繊維は、グラファイト構造(無定形炭素を高
温に加熱して生じる層状の結晶構造)であり、異方性が
大きく結晶方向により電気抵抗値も異なる。アクリル系
の炭素繊維は、結晶構造を有する繊維をそのまま炭素化
しているのでグラファイトよりも更に結晶性が高い。
【0041】また、本発明の製造方法においては、酸素
の電気化学的還元による過酸化水素の製造と、活性の低
下した炭素を主成分とするガス拡散電極である陰極の賦
活とを交互に繰り返し行うこと、及び陰極の賦活を後述
の賦活方法により行うことができる。
【0042】ガス拡散電極である陰極の賦活とを交互に
繰り返し行うことにより、高い電流効率を維持する事が
できる。但し、陰極のガス拡散電極の賦活は頻度が高す
ぎると生産に影響を及ぼすし、低すぎると電流効率が低
下し過ぎる。従って生産性と電流効率を考慮しながら、
例えば、電流効率が80%以下になった時点で行うこと
もできるし、一日に1回か2回等、時間を決めて定期的
に行うこともできる。
【0043】さらに、本発明の製造方法において、陽極
液にキレート剤を含有させることもできる。キレート剤
の種類は、陽極液中に存在する金属イオンの種類とpH
に合わせて適宜選択することができる。例えば、アルカ
リ土類金属はキレートされにくい金属で、これらの金属
に適したキレート剤としてはEDTA、DTPA、NT
A、HEDTA、およびそれらのナトリウム塩等が挙げ
られる。さらに、電解中に及ぼされる電気的な負荷に耐
えうるキレート剤が望ましい。
【0044】さらにキレート剤の併用も可能である。工
業的に安価に入手できる水酸化マグネシウムや水ガラス
などもキレート助剤として組み合わせが可能である。
【0045】本発明の製造方法において、陰極室には、
酸素もしくは酸素含有ガス、空気等の酸素源を供給す
る。この酸素源として、二酸化炭素を除去した酸素もし
くは酸素含有ガス、空気を使用することが好ましい。二
酸化炭素を除去した酸素含有ガスとして、空気より窒素
ガスを吸着して除去し、酸素分を取り出したPSA酸素
を使用することが工業的には好ましい。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、長期間、陽極成分の溶
出及び溶出による電解槽の性能劣化を防止し、かつ、安
定して過酸化水素を製造することが可能である。また、
繊維状金属を用いた過酸化水素の製造方法と比較して
も、槽電圧を低減化及び電流効率の増大を図ることがで
きる点でも有利である。さらに、最適な漂白効果を発揮
するためにアルカリ比も向上させることができるという
有利な効果を奏する。
【0047】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に説明する。 実施例1 図2に示した電解槽を用いて、図1に示した厚さ0.2cm
、面積125cm、密度0.5g/cmの住友電気工業(株)
製の金属発泡体(ニッケル単体)のシートを使用した。
比表面積は、0.01m/gであった。陰極のカーボン材
料、イオン交換膜、次にこの金属発泡体を積層した。イ
オン交換膜にはカチオン交換膜(ナフィオン117:デュポ
ン社製膜厚0.2mm)を用いた。陰極には充填密度を1.46と
した面積125cmのグラファイトフェルト(GF20−
5)を用いた。上記金属発泡体の周囲にはガスケットと
して厚さ1.5mmのテフロンシートを積層した。そして、
前記金属発泡体の上に、多孔部分の面積125cm(陽極
の見掛けの面積)の開口率が40%の金属多孔板(孔径3m
m、板厚1mm)を重ね、2層構造の陽極とした。
【0048】陽極液として、アルカリ水溶液 (NaOH濃度
2.0mol/l(8%)) にキレート剤としてEDTAを 250
ppm を加えたものを用いた。陽極液の流量は3.0ml/min
とした。陰極液としては、イオン交換水を用い、流量を
1.0ml/min とした。さらに、電解すべき酸素源として、
CO2を除去した加湿PSA酸素を2.5l/minで陰極室に供
給した。電流値5.0Aで定電流電解を行った。槽電圧、電
流効率及びアルカリ比の経時変化を表1に示す。
【0049】比較例1 電解槽に金属発泡体を用いず、金属ウエッブ(繊維状:
ステンレス316製)5.6gを用いた以外は、実施例1と
同様の条件で電解を行った。槽電圧、電流効率及びアル
カリ比の経時変化を表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】表1及び表2の結果を比較すると、本発明
の金属発泡体を用いた方法では、槽電圧を低減すること
ができ、電流効率も高く、かつ、アルカリ比も漂白に最
適な値(0.2〜2)に近いことが分る。従って、金属ウエ
ッブを用いた方法と比較して本発明の金属発泡体を用い
た方法が経済的にも優れているのが分る。表には示さな
いが、陽極に金属ウエッブを用いた方法では、500時間
以上継続的に電解槽を運転した結果、陽極成分の溶出が
確認され溶出により電解槽の性能の劣化が認められた。
これに対し、金属発泡体を用いた本発明の方法では、50
0時間以上継続的に電解槽を運転しても、陽極成分の溶
出は確認されなかった。
【0053】実施例2 電流値を10.0A とした以外は、実施例1 と同様の条件で
定電流電解を行った。槽電圧、電流効率及びアルカリ比
の経時変化を表3に示す。
【0054】比較例2 電流値を10.0A とした以外は、比較例1 と同様の条件で
定電流電解を行った。槽電圧、電流効率及びアルカリ比
の経時変化を表4に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】表3及び表4の結果を比較すると、電流値
を10.0Aとした場合においても、本発明の金属発泡体を
用いた方法では、槽電圧を低減することができ、電流効
率も高く、かつ、アルカリ比も漂白に最適な値(0.2〜
2)に近いことが分る。従って、電流値を10.0Aとした場
合でも、金属ウエッブを用いた方法と比較して本発明の
金属発泡体を用いた方法が経済的にも優れているのが分
る。
【0058】表には示さないが、陽極に金属ウエッブを
用いた方法では、500時間以上継続的に電解槽を運転し
た結果、陽極成分の溶出が確認され溶出により電解槽の
性能の劣化が認められた。これに対し、金属発泡体を用
いた本発明の方法では、500時間以上継続的に電解槽を
運転しても、陽極成分の溶出が確認されず良好に電解槽
が機能し、安定して過酸化水素を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いる電解槽の中心部の断面説明図
である。
【図2】 本発明で用いる電解槽の断面説明図である。
【符号の説明】
1・・金属発泡体 2・・金属多孔板 3・・カチオン交換膜 4・・陰極 5・・ガスケット 6・・金属多孔板の多孔部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 矢口 時也 東京都江東区東雲1−10−16 王子製紙株 式会社研究開発本部内 (72)発明者 山根 源三 神奈川県藤沢市石川1145、B203号 (72)発明者 脇田 修平 神奈川県藤沢市辻堂元町5−5−9、II −3 Fターム(参考) 4K011 AA02 AA16 AA17 DA01 4K021 AB15 BA01 BA02 BB03 DB12 DB16 DB19 DB31 DB53

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陰極室と陽極室とがカチオン交換膜で隔
    てられた電解槽を用い、陰極において酸素を還元して過
    酸化水素を製造する方法であって、 陽極の少なくとも一部が発泡金属であることを特徴とす
    る過酸化水素の製造方法。
  2. 【請求項2】 発泡金属がニッケル又はその合金からな
    り、比表面積が0.001m/g以上である請求項1記載の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 陽極が発泡金属のシートと金属多孔性板
    からなり、前記発泡金属のシートがカチオン交換膜と密
    着した状態で電解槽内に設置されている請求項1また2に
    記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 陽極の見掛けの電流密度が400A/m
    上であり、かつ陽極の実面積が見かけの面積の3倍以上
    とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003097535A1 (fr) * 2002-05-17 2003-11-27 Nippon Oil Corporation Solution aqueuse pour dilution d'un fluide de travail metallique hydrosoluble, dispositif de fabrication de ladite solution, refrigerant liquide fluide et dispositif de production du refrigerant liquide
JP2010024550A (ja) * 2008-07-17 2010-02-04 Hoffmann & Co Elektrokohle Ag 電解用電極
MD4207C1 (ro) * 2011-10-10 2013-09-30 Государственный Университет Молд0 Procedeu de confecţionare a electrodului combinat volumic poros penetrabil şi procedeu de obţinere electrolitică a hidrogenului
CN112779558A (zh) * 2020-12-22 2021-05-11 哈尔滨工业大学 一种利用ptfe部分疏水改性石墨毡阴极电合成过氧化氢的方法
WO2023119730A1 (ja) * 2021-12-24 2023-06-29 住友電気工業株式会社 電極および水電解装置

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