JP2000178709A - 耐プラズマエロージョン性に優れる溶射被覆部材およびその製造方法 - Google Patents

耐プラズマエロージョン性に優れる溶射被覆部材およびその製造方法

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JP2000178709A
JP2000178709A JP35626598A JP35626598A JP2000178709A JP 2000178709 A JP2000178709 A JP 2000178709A JP 35626598 A JP35626598 A JP 35626598A JP 35626598 A JP35626598 A JP 35626598A JP 2000178709 A JP2000178709 A JP 2000178709A
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Yoshio Harada
良夫 原田
Junichi Takeuchi
純一 竹内
Takeshi Takahata
剛 高畠
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 半導体製造プロセス、特にドライプロセスに
おいて使用されている各種装置およびそれらの付属装置
に配設されている部材の環境成分による腐食とプラズマ
エロージョンによる損傷を防止すること。 【解決手段】 金属製または炭素製基材の表面に、非酸
化性雰囲気中での溶射などによって、気孔率 0.5〜10
%、膜厚 100〜1000μmのB4C 皮膜を形成させるか、ま
たはアンダーコートとして金属層を形成した上に前記B4
C 溶射皮膜を施工させることによって、化学的耐食性お
よび耐プラズマエロージョンに対する損傷特性に優れる
部材を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐プラズマエロー
ジョン性他の諸性質に優れる溶射被覆部材とその製造方
法に関し、とくに半導体製造装置や液晶製造装置におけ
るドライエッチング処理に際して用いられる真空チャン
バー内に配設される部材を、プラズマガスによるエロー
ジョン作用や雰囲気ガスによる腐食作用から守るための
表面処理技術について提案する。なお、この技術は、上
記技術分野の他、たとえば一般的なドライプロセスに適
用される酸化炉、CVD装置、エピタキシャル成長装
置、イオン注入装置、拡散炉、反応性イオンプレーティ
ング装置、プラズマエッチング装置、スパッタリング装
置およびこれらの付属装置部材としての、配管、給排気
ファン、真空ポンプあるいはバルブ類などに対しても適
用することができる。
【0002】
【従来の技術】一般に、半導体製造プロセスでは、各工
程でBF3 やNF3 のような弗化物、BCl3やSnCl4 などの塩
化物、HBr の如き臭化物をはじめとする有害ガスおよび
水溶液を扱うため、製造装置を構成材料が著しく腐食損
耗するという問題があった。例えば、半導体製造装置に
用いられている材料としては、炭素鋼、ステンレス鋼、
AlおよびAl合金などの金属材料、その表面に被覆したニ
ッケルめっきやクロムめっき、あるいはAl, Moなどの溶
射皮膜、Al2O3 やSi3N4 などの焼結体、さらにはふっ素
樹脂やエポキシ樹脂などの高分子材料があるが、これら
の材料が腐食性の強いハロゲンイオンに接して化学的損
傷を受けたり、SiO2, Si3N4 などの微細粒子およびプラ
ズマによって励起されたイオンに接してエロージョン損
傷を受ける。
【0003】とくに、ハロゲン化合物を用いるプロセス
では、反応のより一層の活性化を図るため、しばしばプ
ラズマが用いられるが、このプラズマ使用環境では、ハ
ロゲン化合物は電離して非常に腐食性の強い原子状の
F,Cl, Br, Iなどを発生すると同時に、その環境中
に、SiO2, Si3N4 , Si, Wなどの微粉末状固形物が存在
すると、装置に用いられている部材が化学的腐食ととも
に微粒子によるエロージョン損傷の両方の作用を強く受
けることになる。
【0004】しかも、プラズマが励起された環境という
のは、Arガスのように腐食性のない気体でもイオン化
し、これが固体面に強く衝突する現象 (イオンボンバー
ドメントと呼ばれる) が発生するから、上記装置内に配
設されている各種部材はより一層強い損傷を受けること
も知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、化学
的腐食やエロージョン損傷の激しい分野で用いられる部
材については、次のような問題点があった。 (1) 炭素鋼等の金属素材の場合、各種のハロゲンガスに
腐食され易く、その腐食生成物自体が汚染源ともなる。
これは、部材がステンレス鋼材であったとしても、たと
えば 100℃以上の環境ではふっ素ガスにより腐食を受け
る。なお、Alおよびその合金については、比較的高温状
態のハロゲンガスに耐える特性を有するが、それでも 3
00℃以上の温度域では機械的強度が著しく低下するた
め、半導体製造装置等に用いる材料としては限界があ
る。 (2) 金属材料の表面に、NiやCrなどの電気めっきを被覆
した材料の場合、ピンホールからハロゲンガスが侵入し
て母材金属を腐食するため寿命が短く、AlやMoの溶射皮
膜については、上述した腐食機構によって溶射皮膜の剥
離が短期間で発生し、しかも、プラズマで励起されたガ
スによるエロージョン損傷に対して弱いという共通した
欠点がある。 (3) 各種セラミックス焼結体については、精密な加工が
困難なうえ、たとえば半導体製造装置用真空容器であっ
たとしても、被曝温度変化による熱衝撃を受けて割れを
発生することがあり、信頼性に欠ける問題がある。 (4) その他のプラスチック材料は、耐熱性に問題がある
ほか、ガスを吸蔵, 吸着する性質があり、また、プラズ
マによって励起されたハロゲンガスに対しては化学的損
傷を受け易く、プラズマエロージョンに対しても抵抗力
が極めて小さいという欠点があった。
【0006】そこで、本発明の目的は、ハロゲンガスの
如き環境成分による腐食損傷ならびにプラズマエロージ
ョンによる損傷に対する抵抗力の大きい表面処理部材
と、この部材の有利な製造方法を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来技術が抱
えている上述した課題を、以下に要約して述べる解決手
段の採用によって克服することにしたものである。すな
わち、本発明の構成を要点整理すると次の通りになる。 (1) 金属製または炭素製基材の表面に、溶射法によって
気孔率 0.5〜10%、厚さ 100〜1000μmのB4C 溶射皮膜
のみからなる層を形成した部材であること。 (2) 環境の腐食性が強い場合には、金属製または炭素製
基材の表面に、アンダーコートとして、溶射法により、
耐食性とトップコートとして形成するB4C 溶射皮膜との
密着性に優れた、Niおよびその合金、Wおよびその合
金、Moおよびその合金、Tiおよびその合金のなかから選
ばれる1種以上の金属 (合金) の皮膜を50〜500 μmの
厚さに施工し、そしてその上にB4C 溶射皮膜を 100〜10
00μmの厚さに施工して複合層を形成した部材であるこ
と。 (3) 金属製または炭素製基材の表面に、直接またはアン
ダーコートを施工した上に形成するB4C 溶射皮膜は、粒
径 5〜70μm範囲のB4C 粉末を用い、この粉末を、実質
的に酸素を含まないArガスの減圧雰囲気下でプラズマ溶
射するか、またはAr, He, N2などの不活性ガスを用いて
溶射熱源近傍をシールドして、空気の混入を極力抑制す
るようにした大気プラズマ溶射法、あるいは高速フレー
ム溶射法などから選ばれた溶射方法を適用して、酸化物
の生成が少なく、かつ緻密なB4C単独もしくは金属層とB
4C 層との複合溶射皮膜を形成する方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】発明者らの研究によると、従来技
術が抱えている上述した課題は、主としてハロゲンガス
による腐食とプラズマエロージョンによる損傷とに分類
できるが、特に後者の損傷を防ぐことが、前者の腐食防
止に対しても有効であるとの知見を得た。すなわち、そ
の課題解決の手段として本発明は、基材表面に、溶射法
によってB4C のみからなる溶射層を形成すると、耐プラ
ズマエロージョン性が著しく向上するのである。そし
て、部材の使用環境の腐食性が強い場合には、前記B4C
溶射皮膜の下に、さらに耐ハロゲンガス腐食性の強い金
属の溶射層であるアンダーコートを施して複合化させる
方法を採用した。以下、本発明の特徴について説明す
る。
【0009】(1) 溶射材料について;本発明の特徴的な
構成は、基材表面を上記腐食環境等から保護する被覆層
の材料として、B4C (炭化ホウ素) に着目したことであ
る。このB4C は、密度約2.5、融点約2400℃、ミクロ硬
さ(Hv)2400以上の物性値を有するもので、各種の金属炭
化物中では最も密度の小さい物質である。そして、高温
環境でも安定した物性値を維持し、中性子断面積の大き
いBを多量に含むことから、プラズマエロージョンに対
して強い抵抗力を示すものである。ただし、溶射材料と
しては非常に軽いため、通常の溶射用粉末の粒径 (1 〜
5μm) 程度では溶射ガンへの供給が不連続となる傾向
があり、均等な溶射皮膜の施工が難しいことがわかっ
た。しかし、あまりに粗粒、例えば70μm以上の粒径で
は、溶射ガンへの供給は容易になるが、融点が高いため
溶射熱源中で溶融せず、そのために成膜が不可能になる
か、たとえ成膜できたとしても付着効率が悪く、その
上、多孔質で密着性に乏しい皮膜となるという欠点があ
る。このような場合には、通常、金属成分 (Ni, Co, Cr
など) をB4C に添加してサーメット化すれば、密度の適
度な上昇と、融点の低下 (金属成分) によって、緻密で
密着性に優れたサーメット溶射皮膜を形成することが可
能であるが、金属成分の混入はプラズマエロージョン性
はもとより、ハロゲンガスによる腐食に対しても弱くな
るため好ましくない。
【0010】そこで、本発明では、溶射材料としてのB4
C 粉末の平均粒径を5〜70μmの範囲に限定し、特に10
〜40μmの範囲内の大きさとし、この範囲外の粒子径の
ものが20wt%未満になるように分級した。即ち、10〜40
μmの平均粒子径のB4C 粉末が全体の約80%を占め、残
りは41〜70μm, 5 〜19μmの粒径分布をもつものを用
いることにした。このような粒径分布にした理由は、平
均粒径が5〜70μmの範囲であっても、個々の粒径が著
しく異なるB4C 粉末を混合した材料では、溶射熱源中に
おける被曝温度が著しく異なり (融点が高いため) 、細
粒は完全に溶融するのに対し、粗粒は軟化する程度にと
どまるため、溶射皮膜に気孔が多くなり、そのうえ基材
との密着性に乏しいものとなるからである。また、完全
溶融したB4C 細粒は酸化され易くなり、粒子の表面に多
量の酸化膜が生成するため粒子間結合力の低下やプラズ
マエロージョンに対し弱くなる欠点がある。この点、B4
C 溶射材料粉末の平均粒径が5〜70μmの範囲内のもの
であれば、本発明が適用されるプラズマ溶射条件 (例え
ば、プラズマ発生のための電圧と電流など) を調整する
ことによって、全粒子を均等に溶融させることが可能と
なるため、本発明の目的に適合するB4C 溶射皮膜を形成
させることができる。
【0011】(2) 施工すべき対象基材について;上記溶
射皮膜の施工対象となる基材としては、ステンレス鋼を
含む各種の鋼、アルミニウムおよびアルミニウム合金、
タングステンおよびタングステン合金、チタンおよびチ
タン合金、モリブデンおよびモリブデン合金および炭素
が好適である。なお、銅および銅合金は、B4C 溶射皮膜
の使用環境において環境汚染の原因となる銅がプラズマ
エロージョンやハロゲン化合物による腐食作用によって
放出されるおそれがあるので好ましくない。装置の構成
上、銅および銅合金の使用が必要な場合は、電気めっ
き, 化学めっき, 蒸着などの手段でCr, Niなどの皮膜を
施しておく必要がある。
【0012】(3) 溶射方について;上記基材上へのB4C
溶射皮膜の溶射施工は、基材の上に直接溶射して成膜す
るか、または、基材表面にひとまず金属材料を溶射して
アンダーコートを形成し、その上に溶射して複合層にす
る。この場合において、前記金属溶射皮膜のアンダーコ
ートは、膜厚を50〜500 μmの範囲内とする。この理由
は、アンダーコート厚が50μmより薄いとアンダーコー
トとしての作用効果が弱く、一方、500 μmを超える厚
さでは効果が飽和するので肥厚化の意味がなく、得策で
ないからである。かかるアンダーコート用金属材料とし
ては、ニッケルおよびニッケル合金、タングステンおよ
びタングステン合金、モリブデンおよびモリブデン合
金、チタンおよびチタン合金などが好適である。B4C 溶
射皮膜は、基材表面に直接施工したものであれ、また、
前記アンダーコートの上に溶射して複合層にしたもので
あれ、100 〜1000μmの厚さに施工することが好まし
い。その理由は、100 μmより薄い層では、プラズマエ
ロージョンによる損傷の阻止に対して効果が乏しく、一
方、1000μmより厚くしても効果が飽和して経済的でな
いからである。
【0013】(4) B4C 溶射皮膜について;このようにし
て形成されるB4C 溶射皮膜は、次のような特性を示すこ
とが必要である。 皮膜気孔率:0.5 〜10% (この理由は、そもそも
0.5%以下の皮膜は溶射法で形成するのは難しく、一
方、10%以上では耐プラズマエロージョン用としての作
用が低下する。) 皮膜断面硬さ:マイクロビッカース硬さ(Hv)=1500
〜1900 基材もしくはアンダーコートとの密着強さ:40 MPa
以上 これらの皮膜特性を有するB4C 溶射皮膜は、BCl3を含む
ハロゲン化合物雰囲気中では、プラズマエロージョンを
受けても1ヵ月間で1〜2μmの損傷を受ける程度にと
どまり、十分な抵抗力を発揮するものである。
【0014】なお、本発明のB4C 溶射皮膜を形成するた
めの溶射法としては、実質的に酸素を含まない減圧プラ
ズマ溶射法を最適とするが、大気中においても熱源中に
酸素の混入を少なくする、不活性ガスによるシール機構
を有する大気プラズマ溶射法、あるいは大気中で溶射す
る場合でも、被曝時間が短く熱源中における溶射粒子の
酸化反応が短い高速フレーム溶射や爆発溶射などの溶射
法によっても施工が可能である。
【0015】
【実施例】実施例1 この実施例では、粒径の異なるB4C 溶射材料を、減圧プ
ラズマ溶射法によって、ステンレス鋼基材(SUS304 、寸
法 幅50mm×長100 mm×厚さ8mm) の表面に直接 (アン
ダーコートなし) 、200 μmの厚さに溶射し、得られた
皮膜の気孔率と基材との密着性について調査した。同時
に溶射材料の溶射ガンへの供給特性についても調べた。
この実施例で用いた減圧プラズマ溶射法の作業条件は、
雰囲気Arガスの圧力 100hPa 、プラズマ作動ガスとして
ArとH2 の混合ガス (容量比95:5)であり、また溶射皮
膜の密着力はJIS H 8664規定の密着性試験方法に準拠し
て行った。
【0016】表1は、以上の結果を要約したものであ
る。表1に示す結果から明らかなように、微細な材料を
溶射して得られる皮膜(No.1, 2) は気孔率が低く、密着
力も比較的強く、全体としては良好な性能を示すことが
わかる。しかし、溶射ガンへの供給が平均して行われ難
く、ときには粉末材料が供給装置内でブリッジを形成し
て、溶射ガンへの供給が不連続となり、作業性の点で問
題があった。また、粗粒材料 (No. 5)の場合には、溶射
ガンへの供給は円滑に行われたものの、形成された溶射
皮膜の気孔率が大きいという欠点が認められた。これに
対し、溶射材料の粒子径が 5〜20μm (No.3) 、30〜70
μm (No.4) のものでは、溶射ガンへの供給が容易なう
え、形成された溶射皮膜も比較的緻密で良好な密着性を
有するものが得られた。
【0017】
【表1】
【0018】実施例2 この実施例では、実施例1と同じ溶射材料を用い、大気
プラズマ溶射法によって、SUS304ステンレス鋼基材上に
100μm厚の溶射皮膜を形成し、得られた溶射皮膜の気
孔率と密着力を実施例1と同じ要領で調査した。なお、
大気プラズマ溶射法を施工するに当たり、溶射ガンおよ
びプラズマジェツトの周囲にはArガスを流して、雰囲気
中の空気の混入を極力避ける手段の影響についても検討
した。
【0019】表2は、このときの結果を示したものであ
り、微細粒 (No.1, 2)溶射粒子では、ここでも溶射ガン
への供給特性が悪いうえ、得られた皮膜中には多くの酸
化物が認められ、空気によるB4C の酸化が顕著であっ
た。このため気孔率も実施例1の場合に比較すると大き
く、密着力も悪くなっている。一方、溶射粒子径の大き
いB4C (No.5) で得られる皮膜にも、空気による酸化と
気孔率の増加が認められ、密着力が低下している様子が
見られた。また、粒子径5 〜20μm (No.3) 、20〜45μ
m (No.4) の溶射材料で得られる皮膜も、大気溶射の影
響を受けて気孔率が高く多孔質な皮膜となった。これに
対し、大気プラズマ溶射時に不活性ガスによって溶射ガ
ンおよびプラズマジェット雰囲気を保護した環境下で
は、溶射粒子の酸化が抑制され、皮膜の気孔率の低下、
密着力の向上などが明瞭に認められ、大気プラズマ溶射
においても不活性ガスシールによってB4C の酸化を抑制
できるとともに、高い密着力を確保できることが判明し
た。なお、微細粒 (No.6, 7)の溶射に際し、Arガスでシ
ールすると、皮膜の気孔率, 密着力とも比較的良好な性
能を発揮した。しかし、ここでも溶射材料の流動性が悪
く、しばしば溶射ガンへの供給が不連続になったので、
膜厚が不均等となり、生産性と品質の点で問題があっ
た。
【0020】
【表2】
【0021】実施例3 この実施例では、本発明に適合する条件で成膜したB4C
溶射皮膜のハロゲンガスを用いた耐腐食特性について調
査した。図1は、腐食試験装置の概要を示すものであ
る。この装置は、電気炉2の中心部を貫通するように設
けられた試験管3内の設置台4上に試験片1を静置し、
その試験管3の一方側より腐食性ガス5を流通させると
同時に、この試験管3の上流側にはマイクロ波発生装置
6を配設して出力 600Wのマイクロ波を負荷することに
よって、腐食性ガスを活性化できるようになっており、
その活性化した腐食性のガスを前記試験片1に流して、
該試験片1を腐食した後、他方の管端部から系外へ排出
するように構成したものである。試験に当たっては、試
料温度を 180℃とし、腐食性ガスとしてはCF4 を用い
てこれを150 ml/min, O2 75 ml/min の割合にて試験管
3中に流しつつ10時間の腐食試験を行った。
【0022】この例において、供試材料としては、ステ
ンレス鋼基材 (幅15mm×長50mm、厚5mm) に次のような
条件でB4C 溶射皮膜を形成したものを用いた。 (1) 粒径5〜20μm (80%) のB4C 粉末を減圧プラズマ
溶射法によって施工。 (2) 粒径20〜40μm (80%) のB4C 粉末を不活性ガスで
シールド化した大気プラズマ溶射法で施工。 (3) (2) のB4C 粉末を高速フレーム溶射法によって施
工。ただし、アンダーコートとして80wt%Ni−20wt%Cr
を80μm厚に施工してある。なお、比較例として、下記
方法 (酸化性雰囲気溶射) でB4C 粉末を150 μm厚に施
工したものを用いた。 (4) 粒径20〜40μm (80%) のB4C 粉末を大気プラズマ
溶射法で施工。 (5) 粒径40〜70μm (80%) のB4C 粉末を大気プラズマ
溶射法で施工。ただし、80wt%Ni−20wt%Crのアンダー
コート100 μm厚に施工。 (6) 粒径80〜120 μm (80%) と粒径 5〜20μm (80
%) のB4C 粉末をそれぞれ容量で1:1になるように混
合したものを高速フレーム溶射法で施工。
【0023】表3は、この腐食試験結果を示したもので
ある。この結果から明らかなように、No.4〜6 の比較例
であるB4C 溶射皮膜は、酸化物を多量に含むうえ、大き
な気孔が存在しているため、腐食性のCF4 ガスによって
B4C 溶射皮膜とともに皮膜の貫通孔を通して内部の基材
も腐食される結果、顕著な重量減少が認められた。これ
に対し、No.1〜3 の本発明に適合するB4C 溶射皮膜は、
酸化物量が少なく、また、比較的緻密であるため重量変
化が少なく、優れた耐食性を発揮していることがわかっ
た。また、80wt%Ni−20wt%Crのアンダーコートを施工
した皮膜 (No.3) では、同じ溶射法で形成された溶射皮
膜でもアンダーコートのない (No.6) 場合に比較して腐
食量が少なくなっている。
【0024】
【表3】
【0025】実施例4 この実施例では、実施例3の腐食試験に用いたB4C 溶射
皮膜のハロゲンガス中における耐スパッタリング性を調
査した。図2は、試験に用いたスパッタリング装置を示
したものである。この装置には、真空容器21中にターゲ
ットとしての溶射皮膜試験片22と被処理体23が配設さ
れ、両者は真空容器外に設けられた直流電源24に接続さ
れ、ターゲット22は−極、被処理体23は+極となるよう
にして両極間に電圧が負荷されるようになっている。真
空容器21には腐食性のガスやアルゴンガスを供給する導
管25が取り付けられる一方、真空ポンプ26によって系外
へ排出できるようになっている。試験は真空ポンプ26に
よって真空容器21中の空気を排出した後、Arガスによっ
て圧力を10-2hPa にする一方、直流電圧2KVを負荷して
スパッタリングを行った。なお、27は被処理体表面に付
着するB4C 粒子、28は励起されたガスの状態を示したも
のである。ターゲットとしてB4C 溶射皮膜などを用い、
また、腐食性のガスとしてArとともにCF4 を1分間に10
ppm を連続的に真空容器内に導入した。
【0026】表4は、スパッタリングを10時間実施した
後の溶射皮膜の表面粗さを測定した結果である。Arガス
のみのスパッタリングでは、すべての供試皮膜の表面粗
さの変化は少ないが、CF4, Cl2などの腐食性ガスが存在
すると著しく表面が粗となり、化学的な作用によって溶
射皮膜の損傷が促進されている様子がうかがえる。た
だ、本発明に適合するB4C 溶射皮膜は、このような環境
下においても最も平滑な状態を維持しており、すぐれた
耐スパッタリング性を発揮した。なお、上記試験装置の
ような真空容器内ではターゲット材料に限らず、その周
辺に配設されている部材に対しても、Arプラズマに励起
されたArイオン、CF4 イオンなどが衝突して損傷を与え
るが、このような現象に対しても本発明のB4C 溶射皮膜
は1年間の曝露試験後1〜2μmの損傷を受けるにとど
まった。これに対し、無処理のSUS 304 鋼の表面は55〜
70μm、比較例のB4C (実施例3のの皮膜) は15〜21
μmの損傷が認められた。
【0027】
【表4】
【0028】実施例5 この実施例では、プラズマエッチング装置に本発明のB4
C 溶射皮膜を適用した結果を紹介する。図2の+極に炭
素板、−極として本発明の溶射皮膜をはじめ比較例の皮
膜を配設した後、真空容器内の圧力をArガスで0.01〜0.
02 hPa程度に維持した後、両極間に2〜2.5KV の電圧を
負荷できるようにし、5時間連続してスパッタリングを
実施した。 (1) B4C 溶射皮膜 実施例4と同じB4C 皮膜 上記B4C 皮膜のアンダーコートとして80wt%Ni−20
wt%Cr、Moをそれぞれ80μm厚に施工したもの。 (2) 比較例として 実施例4記載の溶射皮膜 連続5時間にわたるプラズマエッチングにおいても、本
発明のB4C 溶射皮膜はアンダーコートの有無に拘わら
ず、1μm前後の減少にとどまり、ほぼ完全な耐プラズ
マエッチング性を発揮した。これに対し、比較例の溶射
皮膜はすべて8〜18μm厚のエッチングを受け、エッチ
ングによって飛散した微細な皮膜材料によって真空容器
内が汚染されているのが認められた。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、半
導体製造装置などに用いられる部材の損傷、とくにプラ
ズマエロージョンによる損傷やハロゲンガスなどによる
化学的腐食に対する抵抗が大きく、長期にわたって安定
して使用できる溶射被覆部材の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】マイクロ波で活性化させたハロゲンガスによる
腐食試験装置を示したものである。
【図2】スパッタリング装置の概要を示したものであ
る。
【符号の説明】 1 溶射皮膜試験片 2 電気炉 3 試験管 4 試験片設置台 5 腐食性のハロゲンガス 6 マイクロ波発生装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高畠 剛 兵庫県明石市和坂稲荷町46 セジュール明 石201号 Fターム(参考) 4K029 AA02 AA04 BA55 BC01 BD01 CA05 DC05 DC08 DC34 4K030 BA36 CA02 LA00 4K031 AA08 AB03 AB06 AB09 CB18 CB21 CB31 CB33 CB34 CB39 CB44 CB45 CB50 DA01 DA04 EA10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製または炭素製基材の表面が、B4C
    溶射皮膜のみからなる層によって被覆されていることを
    特徴とする耐プラズマエロージョン性に優れる溶射被覆
    部材。
  2. 【請求項2】 金属製または炭素製基材の表面が、金属
    皮膜であるアンダーコートと、さらにその上に被覆した
    B4C 溶射皮膜のオーバーコートからなる複合層によって
    被覆されていることを特徴とする耐プラズマエロージョ
    ン性に優れる溶射被覆部材。
  3. 【請求項3】 B4C 溶射皮膜は、気孔率が 0.5〜10%、
    膜厚 100〜1000μmの範囲にあることを特徴とする請求
    項1または2に記載の溶射被覆部材。
  4. 【請求項4】 金属のアンダーコートは、Niおよびその
    合金、Wおよびその合金、Moおよびその合金、Tiおよび
    その合金から選ばれたいずれか1種以上の金属, 合金を
    用いて50〜500 μm厚に形成した層であることを特徴と
    する請求項2に記載の溶射被覆部材。
  5. 【請求項5】 金属製または炭素製基材の表面に、非酸
    化性雰囲気下で、粒径5〜70μmのB4C 粉末を溶射する
    ことにより、膜厚100 〜1000μmのB4C 溶射皮膜を形成
    することを特徴とする耐プラズマエロージョン性に優れ
    る溶射被覆部材の製造方法。
  6. 【請求項6】 金属製または炭素製基材の表面に、非酸
    化性雰囲気下で、先ず金属のアンダーコートを50〜500
    μmの厚さに溶射し、次いでその上に粒径5〜70μmの
    B4C 粉末を100 〜1000μmの厚さに溶射して複合層を形
    成することを特徴とする耐プラズマエロージョン用溶射
    被覆部材の製造方法。
  7. 【請求項7】 金属のアンダーコートは、Niおよびその
    合金、Wおよびその合金、Moおよびその合金、Tiおよび
    その合金から選ばれたいずれか1種以上の金属, 合金を
    用いて50〜500 μmの厚さに溶射して形成することを特
    徴とする請求項6に記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 非酸化性雰囲気下の溶射が、実質的に酸
    素を含まない減圧プラズマ溶射法、熱源近傍を不活性ガ
    スでシールドして空気の混入を抑制した大気プラズマ溶
    射法あるいは高速フレーム溶射法から選ばれたいずれか
    一の溶射法であることを特徴とする請求項5または6に
    記載の製造方法。
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CN108715557A (zh) * 2018-08-30 2018-10-30 东莞市鸿亿导热材料有限公司 具有导电和氧化稳定性涂层的石墨片的制造方法

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