JP2000174394A - 半導体レーザ - Google Patents

半導体レーザ

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JP2000174394A
JP2000174394A JP10343281A JP34328198A JP2000174394A JP 2000174394 A JP2000174394 A JP 2000174394A JP 10343281 A JP10343281 A JP 10343281A JP 34328198 A JP34328198 A JP 34328198A JP 2000174394 A JP2000174394 A JP 2000174394A
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quantum well
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semiconductor laser
type cladding
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Yoshihiro Sasaki
善浩 佐々木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 量子井戸層への光の閉じこめ係数を低く抑え
た低ロスの半導体レーザにおいても、光フィールドをn
型クラッド層側にシフトさせ、p型クラッド層内での価
電子帯間吸収を極力抑えた高出力可能な半導体レーザを
提供することを目的とする。 【解決手段】 半導体基板101上に、p型クラッド層102
とn型クラッド層104とにはさまれた歪多重量子井戸103
を有する半導体レーザであって、n型クラッド層104の
内部に、少なくとも1層からなる光フィールド制御層5
を有し、この光フィールド制御層5の屈折率が、n型ク
ラッド層104の屈折率よりも大きく、かつ光フィールド
制御層5のバンドギャップエネルギーが、レーザ発振光
のエネルギーより大きいことを特徴とする半導体レー
ザ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、活性層に歪量子井
戸を用いた半導体レーザに関し、特に量子井戸層への光
の閉じこめ係数を小さくし、量子井戸層でのロスを低減
しつつ高利得を保ち、低しきい値、高効率を実現した半
導体レーザに関する。
【0002】
【従来の技術】活性層に歪多重量子井戸を用いることで
半導体レーザの特性は飛躍的に向上した。InP系の化合
物半導体を用いる1.3μm以上の波長帯では薄い量子井戸
でも大きな利得が得られるため、量子井戸層への閉じこ
め係数を小さくすることで量子井戸層でのロスを低減し
つつ高利得を保ち低閾値、高効率の半導体レーザが実現
できるようになってきている。
【0003】例えば、EDFA (Erbium doped fiber a
mplifier)の励起光源に用いられる1.48μmの高出力光源
や光ファイバの破断点検知に用いられるOTDR (Optical
time domain reflectometor)の光源である1.55μm
や1.65μmの高出力光源では高電流注入時の発熱などを
考慮し長共振器が用いられるため更に量子井戸層への光
閉じこめを下げて内部ロスの低減が図られている。
【0004】しかしながら、量子井戸層への光閉じ込め
を下げるということは導波光がクラッド側に大きくしみ
出すことを意味しておりクラッド層での価電子帯間吸収
が問題になる。
【0005】例えば、"The Effect of Intervalence
Band Absorption on the Thermal Behavior of
InGaAsP Lasers"(IEEE J. Quantum Electronic
s., Vol. QE-19, pp947-952, 1983)に示されるよう
に室温におけるp-InP(キャリア濃度1x1018cm-3)におけ
る価電子帯間吸収は1.48μm帯で約20cm-1、1.65μm帯で
約25cm-1にも及ぶ。p-InPクラッド層への光のしみだし
が例えば45%あるとするとp-InPの価電子帯間吸収だけで
1.48μm帯では約9cm-1、1.65μm帯では約11cm-1のロス
が発生してしまうという問題があった。
【0006】すなわち、キャリア濃度を低減すればこの
価電子帯間吸収は低減することが出来るものの素子の直
列抵抗が増大し大電流注入時に発熱し光出力の低下を招
くためこの方法は採用できず更なる高出力化は困難であ
った。
【0007】図4に従来構造の一例を模式図を示す。第
一導電型半導体基板101上に、第一導電型クラッド層10
2、歪多重量子井戸からなる活性層103、第二導電型クラ
ッド層104からなる導波路層を有し、該導波路以外の部
分が第二導電型ブロック層105、第一導電型ブロック層1
06で埋め込まれ、更に全体が第二導電型クラッド層10
7、第二導電型キャップ層108で埋め込まれ、両側に電極
109、110が配置された構造となっている。
【0008】このような従来構造では、図4に示すよう
に、光のフィールドの中心は多重量子井戸層の中心にあ
るため、p型クラッド層への光の閉じこめも多く、価電
子帯間吸収が多く、ロスが発生してしまう。
【0009】具体的な組成としては、例えば、第一導電
型クラッド層102をn-InPクラッド層(濃度1x1018cm-3
厚さ150nm)、第二導電型クラッド層104をp-InPクラッド
層(濃度7x1017cm-3:厚さ150nm)、活性層を図5に示す様
にn-InGaAsP SCH層(波長組成1.13μm、濃度1x1018c
m-3、厚さ33nm)1、un-InGaAsPバリア層(波長組成1.2μ
m、厚さ7nm)2、un-InGaAsP歪量子井戸層(波長組成1.47
μm、歪量1%、厚さ4nm)3、un-InGaAsP SCH層(波長組成
1.13μm、厚さ33nm)4とし、この歪量子井戸層の層数は5
とする。また、p-InPクラッド層107の厚さは2.5μmであ
る。
【0010】この具体例においては、量子井戸層への光
閉じ込め係数は1.68%、p-InPクラッド層への閉じ込め係
数は44.8%となり、価電子帯間の吸収による光の損失も
高い。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題に
鑑みなされたものであり、量子井戸層への光の閉じこめ
係数を低く抑えた低ロスの半導体レーザにおいても、光
フィールドをn型クラッド層側にシフトさせ、p型クラ
ッド層内での価電子帯間吸収を極力抑えた高出力可能な
半導体レーザを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、p型クラッド
層とn型クラッド層とにはさまれた歪多重量子井戸を有
する半導体レーザであって、前記n型クラッド層の内部
に、少なくとも1層からなる光フィールド制御層を有
し、該光フィールド制御層の屈折率が、前記n型クラッ
ド層の屈折率よりも大きく、かつ前記光フィールド制御
層のバンドギャップエネルギーが、レーザ発振光のエネ
ルギーより大きいことを特徴とする半導体レーザに関す
る。
【0013】さらに本発明は、p型クラッド層とn型ク
ラッド層とにはさまれた歪多重量子井戸を有する半導体
レーザであって、前記n型クラッド層の内部に、多重量
子井戸から構成される光フィールド制御層を有し、該光
フィールド制御層の屈折率が、前記n型クラッド層の屈
折率よりも大きく、かつ前記多重量子井戸の電子及びホ
ールの第一量子井戸準位間のエネルギー差が、レーザ発
振光のエネルギーより大きいことを特徴とする半導体レ
ーザに関する。
【0014】さらに本発明は、p型クラッド層とn型ク
ラッド層とにはさまれた歪多重量子井戸を有する半導体
レーザであって、前記n型クラッド層の内部に、多重量
子井戸から構成される光フィールド制御層を有し、かつ
該量子井戸の厚さが電子の第一量子準位が存在しない厚
さであって、該光フィールド制御層の屈折率が、前記n
型クラッド層の屈折率よりも大きく、かつ前記多重量子
井戸を構成する障壁層のバンドギャップエネルギーが、
レーザ発振光のエネルギーより大きいことを特徴とする
半導体レーザに関する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態について図面を
参照して説明する。図1は本発明の半導体レーザの一実
施形態を示す。
【0016】第一導電型半導体基板101上に、第一導電
型クラッド層102、歪多重量子井戸からなる活性層103、
第二導電型クラッド層104からなる導波路層を有し、該
導波路以外の部分が第二導電型ブロック層105、第一導
電型ブロック層106で埋め込まれ、更に全体が第二導電
型クラッド層107、第二導電型キャップ層108で埋め込ま
れ、両側に電極109、110を備えて半導体レーザを構成し
ている。
【0017】前記第一導電型クラッド層(n型クラッド
層)102の一部に光フィールド制御層5を有し、その屈折
率がクラッド層よりも大きく且つそのバンドギャップエ
ネルギーが活性層のバリア層のバンドギャップエネルギ
-より大きい構成となっている。
【0018】本図では、第一導電型クラッド層は、n型
クラッド層を示し、第二導電型クラッド層は、p型クラ
ッド層を示すが、逆の組合わせであってもよい。
【0019】図1に示すように、n型クラッド層側に屈
折率の大きな光フィールド制御層があるために活性層に
垂直方向の光のフィールドは大きくn側に引き寄せら
れ、フィールドの中心は光フィールド制御層の内部に移
る。
【0020】このように、光のフィールドの中心が、n
型クラッド層側にシフトすることにより、量子井戸層へ
の閉じ込め係数は従来構造の場合と同程度でも、p-InP
クラッド層への閉じ込め係数は相対的に低下することに
なり、その結果、p型クラッド層内で発生する価電子帯
間の吸収も低下する。
【0021】光フィールド制御層のバンドギャップエネ
ルギーが活性層のバリア層のバンドギャップエネルギ-
より大きいことが必要であるが、光フィールド制御層の
波長組成を発振波長を無視できる程度にとることにより
光フィールド制御層での光の損失をさらに抑えることが
可能となる。
【0022】一般に半導体の基礎吸収端より短い波長の
光の吸収Kは(式-1)に示されるアーバック則に従う。
【0023】 アーバック則:K=K0exp(-σ(E0-E)/kT) (式-1) ここでK0、σは物質固有の定数であり、kはボルツマン
定数、Tは絶対温度である。σはスティープネス因子と
呼ばれ1程度の値である。
【0024】上式により、基礎吸収端(E0)とレーザ光の
エネルギー(E)の差を熱エネルギーkTの3倍以上に取れ
ば、その吸収は基礎吸収端の5%程度にすることができ
る。
【0025】室温の熱エネルギ-は26meV程度であり、発
振波長と光フィールド制御層のエネルギー差を75meV以
上取れば光フィールド制御層の発振レーザ光に対する影
響は十分無視しうるものとなる。
【0026】このように、光フィールド制御層のバンド
ギャップエネルギーが、発振波長エネルギーより大きけ
れば本発明の効果を得ることができるが、さらに、発振
波長と光フィールド制御層のエネルギー差を75meV以上
取れば、そこでのロスを十分抑制することができ好まし
い。また、光フィールド制御層のバンドギャップエネル
ギーは、最も大きくても、クラッド層のバンドギャップ
を超えることはない。しかしながら、InP系の半導体
レーザの場合、バンドギャップが大きい方が屈折率が小
さくなるため、光フィールド制御層とクラッド層のバン
ドギャップと同じにする(すなわち、光フィールド層と
クラッド層の組成を合わせる)と、光フィールドにほと
んど影響を与えることができなくなってしまう。より効
果的に光フィールドを制御するために、光フィールド制
御層の屈折率が、クラッド層の屈折率より0.2以上大
きいことが好ましく、そのためには、光フィールド制御
層のバンドギャップエネルギーから発振波長エネルギー
を引いた差が約250meV以下であることが好ましい。
【0027】以上は、光フィールド制御層が、1層の場
合について述べたが、2層以上であってもよく、また多
重量子井戸構造をとってもよい。
【0028】また、光フィールド制御層は、n型クラッ
ド層の内部にあればよく、内部とは、活性層とn型電極
の間にあれば、本発明の効果を得ることができる。
【0029】[実施形態1]本発明の半導体レーザの一
実施形態について、図1を用いて説明する。第一導電型
半導体基板101((100)n-InP基板)上に、第一導電型ク
ラッド層(n-InPクラッド層)102、歪多重量子井戸から
なる活性層103、第二導電型クラッド層(p-InPクラッド
層)104からなる導波路層を有し、該導波路以外の部分
が第二導電型ブロック層(p-InPブロック層)105、第一
導電型ブロック層(n-InPブロック層)106で埋め込ま
れ、更に全体が第二導電型クラッド層(p-InPクラッド
層)107、第二導電型キャップ層(p-InGaAsキャップ
層)108で埋め込まれ、両側に電極109、110を備えて半
導体レーザを構成している。
【0030】前記第一導電型クラッド層(n型クラッド
層)102の一部に光フィールド制御層(n-InGaAsP)5を
有し、その屈折率がクラッド層よりも大きく且つそのバ
ンドギャップエネルギーが活性層のバリア層のバンドギ
ャップエネルギ-より75meV以上大きい構成になってい
る。
【0031】次に具体的に説明する。(100)n-InP基板10
1上に(011)方向に一対のSiO2ストライプマスク21を形成
する(図2-a)。このときSiO2マスクの幅は5μm程度で一
対のSiO2マスクの間の開口部の幅は2μm程度である。次
に有機金属気相成長法により内部にn-InGaAsP光フィー
ルド制御層(波長組成1.2μm、厚さ200nm、濃度1x1018cm
-3)5を備えるn-InPクラッド層(濃度1x1018cm-3:トータ
ルの厚さ50nm)102、及び多重量子井戸からなる活性層10
3、p-InPクラッド層(濃度7x1017cm-3:厚さ150nm)104で
構成される光導波路層を成長する(図2-b)。活性層103は
図3に示す様にn-InGaAsP SCH層(波長組成1.13μm、濃
度1x1018cm-3、厚さ33nm)1、un-InGaAsPバリア層(波長
組成1.2μm、厚さ7nm)2、un-InGaAsP歪量子井戸層(波長
組成1.47μm、歪量1%、厚さ4nm)3、un-InGaAsP SCH層
(波長組成1.13μm、厚さ33nm)4からなり歪量子井戸層の
層数は3とする。この様な多重量子井戸構造を取ること
で波長1.48μmでレーザ発振する。また、n-InPクラッド
層内部にあるn-InGaAsP光フィールド制御層5とn-InGaAs
P SCH層1との間のn-InPクラッド層(濃度1x1018cm -3)10
2の厚さは20nmとする。次に活性層を含む導波路層の直
上にのみSiO2マスク21を形成したあと(図2-c)、有機金
属気相成長法によりp-InPブロック層(濃度7x1017 c
m-3:厚さ600nm)105、n-InPブロック層(濃度1x1018c
m-3:厚さ600nm)106を形成し(図2-d)、SiO2マスク21を
除去し(図2-e)、全体をp-InPクラッド層(濃度1x1018cm
-3:厚さ1.5μm)107、p-InGaAsキャップ層(濃度5x1018c
m-3:厚さ0.2μm)108で埋め込み、n側、p側に電極109、
110を形成する(図2-d)。共振器長1200μmに劈開し、SiO
2の無反射膜(反射率6%)、SiO2とα-Siの多層膜からなる
高反射膜(反射率95%)を両端面に形成して半導体レーザ
とする。
【0032】この構成においては、量子井戸層への閉じ
込め係数は1.5%、p-InPクラッド層への閉じ込め係数は2
7.3%であった。
【0033】図4に示した従来構造では、量子井戸層へ
の光閉じ込め係数は1.68%、p-InPクラッド層への閉じ込
め係数は44.8%であり、量子井戸層への光閉じ込めがほ
ぼ同程度でもp-InPクラッド層への閉じ込め係数は約17.
5%程減少したことがわかった。
【0034】[実施形態2]本発明の半導体レーザの第
二の実施形態について、図1及び図6を用いて説明する
説明する。この第二の実施形態で特徴的なことは光フィ
ールド制御層が多重量子井戸で構成されている点であ
る。光フィールド制御層の構成及び各層の厚みを調整し
た以外は、図1に示した第一の実施形態と同様であり、
1.625μm帯の高出力レーザについて具体的に説明する。
【0035】光導波路層はn型クラッド層102{n-InPク
ラッド層(濃度1x1018cm-3、厚さ20nm)}、光フィールド
制御層5、n型クラッド層102{n-InPクラッド層(濃度1x
1018cm-3、厚50nm)}、歪多重量子井戸活性層103、p型
クラッド層104{p-InPクラッド層(濃度1x1018cm-3、厚5
0nm)}からなる。
【0036】歪量子井戸活性層103は、n-InGaAsP SCH
層(波長組成1.2μm、濃度1x1018cm-3、厚さ33nm)51、un
-InGaAsPバリア層(波長組成1.4μm、厚さ7nm)52、un-In
GaAsP歪量子井戸層(波長組成1.55μm、歪量1%、厚さ5.2
nm)53、un-InGaAsP SCH層(波長組成1.2μm、厚さ33nm)
54、p型クラッド層104{p-InPクラッド層(濃度1x1018c
m-3、厚50nm)}からなり、活性層の歪量子井戸層の層数
は3である。
【0037】また、n-InPクラッド層内部にある光フィ
ールド制御層5はInGaAsP量子井戸層(波長組成1.625μ
m、厚さ3nm、濃度1x1018cm-3)55、InGaAsPバリア層(波
長組成1.4μm、厚さ3nm、濃度1x1018cm-3)56からなり、
層数は14層である。
【0038】この光フィールド制御層を構成する量子井
戸層に出来る電子とホールの第一量子準位間のエネルギ
ー差は波長換算で約1.48μmでありレーザ発振波長エネ
ルギーより約75meV大きい。
【0039】製造方法は、光フィールド制御層を多重量
子井戸層として製造した以外は、第一の実施形態と同様
である。
【0040】第二の実施形態と光フィールド制御層を有
せず、量子井戸層数が5層であること以外は全く同じ構
成の従来構造の1.625μm帯の半導体レーザの場合、量子
井戸層への光閉じこめは1.84%であり、p型クラッド層へ
の光のしみだしは45.4%であるのに対し、第二実施形態
の半導体レーザの場合は量子井戸層への光閉じこめは1.
69%で、p型クラッド層への光のしみだしは36%になる。
光フィールド制御層を持たない従来例に比べp型クラッ
ド層への光のしみだしは約10%減少していることが判明
した。
【0041】1.625μm帯でのp-InP(濃度1x1018cm-3)の
価電子帯間吸収は約25cm-1であるから (IEEE J. Qua
ntum Electronics., Vol. QE-19, pp947-952, 198
3)p-InPへの光のしみだしを約10%減少することで内部ロ
スを約2.5cm-低減することが出来る。この結果、第二の
実施形態の半導体レーザではスロープ効率が従来構造の
0.35W/Aより0.4W/Aまで向上した。すなわち本実施形態
では、光フィールド制御層として多重量子井戸を用いて
いるため、レーザ発振光にとってロスにならずに屈折率
が大きな組成を使用できるため光フィールド制御層全体
の厚さが薄くても(この実施形態の場合は87nm)光フィー
ルドを大きく制御できることに特徴がある。
【0042】[実施形態3]次に第三の実施形態につい
て説明する。図7は第三の実施形態を説明するための模
式図である。この第三の実施形態の特徴はp-InP基板上
に導波路を形成していることである。
【0043】具体的に層構成を説明する。p型半導体基
板201{(100)p-InP基板(濃度1x1018cm-3)}上にp型バ
ッファー層202{(p-InPバッファ層(濃度7x1017cm-3
厚さ1μm)}202を成長し、その上に(011)方向へ一対のS
iO2ストライプマスク23を形成する(図8-a)。このときSi
O2マスクの幅は5μm程度一対のSiO2マスクの間の開口部
の幅は2μm程度である。
【0044】次に有機金属気相成長法によりp型クラッ
ド層104{p-InPクラッド層(濃度1x10 18cm-3:厚さ50n
m)}104、及び多重量子井戸からなる活性層103、内部に
多重量子井戸からなる光フィールド制御層5を備えるn
型クラッド層104{n-InPクラッド層濃度7x1017cm-3:ト
ータルの厚さ30nm)}で構成される光導波路層を成長す
る(図8-b)。
【0045】活性層103及び光フィールド制御層5を含む
光導波路層のバンド構造は図9に示すようにun-InGaAsP
SCH層(波長組成1.13μm、厚さ33nm)102、un-InGaAsP
バリア層(波長組成1.2μm、厚さ7nm)2、un-InGaAsP歪量
子井戸層(波長組成1.55μm、歪量1%、厚さ4nm)57、n-In
GaAsP SCH層(波長組成1.2μm、濃度1x1018cm-3、厚さ3
3nm)4及びn-InGaAsPバリア層(波長組成1.4μm、厚さ5n
m、濃度1x1018cm-3)58、n-InGaAsP歪量子井戸層(波長組
成1.55μm、厚さ1.2nm、濃度1x1018cm-3、)59、からな
り活性層を構成する歪量子井戸層の層数は3とし、光フ
ィールド制御層を構成する多重量子井戸の層数は16とす
る。
【0046】n-InPクラッド層内部にあるn-InGaAsP光フ
ィールド制御層5とn-InGaAsP SCH層1との間のn-InPク
ラッド層(濃度1x1018cm-3)102の厚さは15nmとする。こ
の様な多重量子井戸構造を取ることで波長1.55μmでレ
ーザ発振する。
【0047】また、光フィールド制御層での量子井戸層
の厚みは、電子の量子準位が存在しない量子井戸層厚と
なっているために、発振波長に最も近いエネルギーを持
つ層は光フィールド制御層内の1.4μm組成のバリア層で
あり、発振波長より約85meV離れているためロスにはな
らない。
【0048】本実施形態の場合は、光フィールド制御層
での量子井戸層の厚みは、電子の量子準位が存在しない
量子井戸層厚となっていればよく、この厚みは、量子井
戸層の組成、バリア層の組成に合わせて適宜きめること
ができる。
【0049】このような構成を取ることにより活性層の
量子井戸層に対する光閉じ込めは1.58%となり、pクラッ
ド層への光のしみだしは33.6%であった。光フィールド
制御層を持たずに、活性層の量子井戸層数が5層で、バ
リア層の厚さが9nmの従来構造の場合、活性層の量子井
戸層への光閉じ込めは1.58%、pクラッド層への光のしみ
だしは約45%であり、光フィールド制御層を設けること
で活性層への光閉じこめは変えずにp型クラッド層への
光のしみだしを約10%程度低減できた。
【0050】次に活性層を含む導波路層の直上にのみSi
O2マスク24を形成したあと、有機金属気相成長法により
p型ブロック層203{p-InPブロック層(濃度7x1017c
m-3:厚さ100nm)}、n型ブロック層106{n-InPブロッ
ク層(濃度1x1018cm-3:厚さ600nm)}、p型ブロック層2
03{p-InPブロック層(濃度7x1017cm-3:厚さ100nm)}を
形成し(図8-c)、SiO2マスク24を除去し、全体をp型ブ
ロック層204{n-InPクラッド層(濃度1x1018cm-3:厚さ
1.5μm)}で埋め込む(図8-d)。n側、p側に電極109、110
を形成する。
【0051】共振器長900μmに劈開し、SiO2の無反射膜
(反射率6%)、SiO2とα-Siの多層膜からなる高反射膜(反
射率95%)を両端面に形成して半導体レーザとする。上述
したようにp型クラッド層への光のしみだしは従来より
も約10%程度低減するため、ロスは約2cm-1程低減しそ
の結果スロープ効率は0.4W/Aから0.42W/Aに向上した。
【0052】[実施形態4]次に第四の実施形態につい
て説明する。図10は第四の実施形態を説明するための模
式図である。p型基板上に活性層を構成するため作製方
法は第三の実施形態とほぼ同様であり、最後のn-InPク
ラッド層204を形成する前に光フィールド制御層を形成
するところに特徴がある。
【0053】p型半導体基板201{(100)p-InP基板(濃度
1x1018cm-3)}上にp型バッファー層202{(p-InPバッ
ファ層(濃度7x1017cm-3、厚さ2μm)}202を成長し、そ
の上p型クラッド層104{p-InPクラッド層(濃度5x1018cm
-3:厚さ1000nm)}104、及び実施形態1と全く同様の層
構成を有する歪多重量子井戸からなる活性層103、n型
クラッド層102{n-InPクラッド層濃度1x1018cm-3:トー
タルの厚さ50nm)}で構成される光導波路層を形成す
る。
【0054】次に、p-InPブロック層(濃度5x1017cm-3
厚さ0.2μm)203、n-InPブロック層(濃度1x1018c
m-3:厚さ0.6μm)106、p-InPブロック層(濃度1x1018cm
-3:厚さ0.6μm)105を導波路層脇に形成する。
【0055】さらに、n-InGaAsP(濃度1x1018cm-3:厚さ
0.2μm、組成1.2μm)5、n-InP(濃度1x1018cm-3:厚
さ4μm)204で全体を埋め込む。
【0056】本実施形態においては、p型基板を用いて
いるためにp側のコンタクト抵抗が小さくなるという利
点を持つ。
【0057】
【発明の効果】以上述べたように、n型クラッド層の内
部に光フィールド制御層を設けることによって、光のフ
ィールドがn側に引き寄せられ、p型クラッド層へのし
み出しを抑制することができる。このp側へのしみ出し
の防止により価電子帯間の吸収を抑えることができる。
【0058】また、p側への光のしみ出しが少なくなっ
た分、p型クラッド層の層厚を薄くできるため、直列抵
抗が下がり、更には熱抵抗も低減することができる。そ
の結果、スロープ効率の向上、光出力の向上を図ること
が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザの一実施形態を示す断面
図である。
【図2】実施形態1の半導体レーザの製造方法を示す工
程断面図である。
【図3】実施形態1の半導体レーザのバンドダイアグラ
ムを示す。
【図4】従来構造の多重量子井戸レーザの断面図を示
す。
【図5】従来構造の多重量子井戸レーザのバンドダイア
グラムを示す。
【図6】実施形態2の半導体レーザのバンドダイアグラ
ムを示す。
【図7】実施形態3の半導体レーザの断面図を示す。
【図8】実施形態1の半導体レーザの製造方法を示す工
程断面図である。
【図9】実施形態3の半導体レーザのバンドダイアグラ
ムを示す。
【図10】実施形態4の半導体レーザの断面図を示す。
【符号の説明】
1、51 n型SCH層 2、52 活性層のバリア層 3、53 活性層の歪量子井戸層 4、54 p型SCH層 5 光フィールド制御層 21、22、23、24 SiO2膜 56 光フィールド制御層のバリア層 57 光フィールド制御層の量子井戸層 101 半導体基板 102、204 n型クラッド層 103 歪多重量子井戸活性層 104 p型クラッド層 105、203 pブロック層 106 nブロック層 107 p型クラッド層 108 p型キャップ層 119、110 電極 201 p型半導体基板 202 p型バッファ層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 p型クラッド層とn型クラッド層とには
    さまれた歪多重量子井戸を有する半導体レーザであっ
    て、前記n型クラッド層の内部に、少なくとも1層から
    なる光フィールド制御層を有し、該光フィールド制御層
    の屈折率が、前記n型クラッド層の屈折率よりも大き
    く、かつ前記光フィールド制御層のバンドギャップエネ
    ルギーが、レーザ発振光のエネルギーより大きいことを
    特徴とする半導体レーザ。
  2. 【請求項2】 前記光フィールド制御層のバンドギャッ
    プエネルギーが、レーザ発振光のエネルギーより75meV
    以上大きいことを特徴とする請求項1記載の半導体レー
    ザ。
  3. 【請求項3】 p型クラッド層とn型クラッド層とには
    さまれた歪多重量子井戸を有する半導体レーザであっ
    て、前記n型クラッド層の内部に、多重量子井戸から構
    成される光フィールド制御層を有し、該光フィールド制
    御層の屈折率が、前記n型クラッド層の屈折率よりも大
    きく、かつ前記多重量子井戸の電子及びホールの第一量
    子井戸準位間のエネルギー差が、レーザ発振光のエネル
    ギーより大きいことを特徴とする半導体レーザ。
  4. 【請求項4】 前記電子及びホールの第一量子井戸準位
    間のエネルギー差が、レーザ発振光のエネルギーより75
    meV以上大きいことを特徴とする請求項3記載の半導体
    レーザ。
  5. 【請求項5】 p型クラッド層とn型クラッド層とには
    さまれた歪多重量子井戸を有する半導体レーザであっ
    て、前記n型クラッド層の内部に、多重量子井戸から構
    成される光フィールド制御層を有し、かつ該量子井戸の
    厚さが電子の第一量子準位が存在しない厚さであって、
    該光フィールド制御層の屈折率が、前記n型クラッド層
    の屈折率よりも大きく、かつ前記多重量子井戸を構成す
    る障壁層のバンドギャップエネルギーが、レーザ発振光
    のエネルギーより大きいことを特徴とする半導体レー
    ザ。
  6. 【請求項6】 障壁層のバンドギャップエネルギーが、
    レーザ発振光のエネルギーより75meV以上大きいことを
    特徴とする請求項5記載の半導体レーザ。
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