JP2000144370A - 接触疲労寿命強度に優れた駆動伝達系部品の製造方法 - Google Patents
接触疲労寿命強度に優れた駆動伝達系部品の製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 自動車部品の小型軽量化,高出力化にとも無
い、歯車等の駆動伝達系部品では負荷面圧が高くなり、
ピッチング疲労寿命向上が課題である。 【解決手段】 粗成形された鋼材を浸炭焼入れし、その
後200〜600℃高周波加熱し直ちに加工を加え、不
完全焼入れ層を15μm以上、表面での圧縮残留応力を
25kgf/mm2 以上、表面粗さRmax を3μm以上、X線
回折半価幅をその鋼材焼鈍後の半価幅で無次元化した値
β’と表面粗さRmax との関係式β’≦2.29−0.
40ln (Rmax )、残留オーステナイトを10%以下
とすることを特徴とする接触疲労寿命強度に優れた駆動
伝達系部品の製造方法。
い、歯車等の駆動伝達系部品では負荷面圧が高くなり、
ピッチング疲労寿命向上が課題である。 【解決手段】 粗成形された鋼材を浸炭焼入れし、その
後200〜600℃高周波加熱し直ちに加工を加え、不
完全焼入れ層を15μm以上、表面での圧縮残留応力を
25kgf/mm2 以上、表面粗さRmax を3μm以上、X線
回折半価幅をその鋼材焼鈍後の半価幅で無次元化した値
β’と表面粗さRmax との関係式β’≦2.29−0.
40ln (Rmax )、残留オーステナイトを10%以下
とすることを特徴とする接触疲労寿命強度に優れた駆動
伝達系部品の製造方法。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車及び工作機
械などの摺動部品に係わり、特に自動車トランスミッシ
ョン等に使用される鋼製の高強度歯車他、接触疲労が課
題となる駆動伝達系の部品に関するものである。
械などの摺動部品に係わり、特に自動車トランスミッシ
ョン等に使用される鋼製の高強度歯車他、接触疲労が課
題となる駆動伝達系の部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】歯車に代表される駆動伝達系部品は、熱
間鍛造で成形された後に表面を硬化させるために浸炭焼
入れ焼戻し処理が行われることが多い。自動車では軽量
化のため部品サイズの小型化が要望され、駆動系に用い
られる部品は使用時の負荷が大きくなるとともに、曲げ
疲労向上、及び部品同士の接触時に生じるピッチング疲
労寿命向上が要望されている。
間鍛造で成形された後に表面を硬化させるために浸炭焼
入れ焼戻し処理が行われることが多い。自動車では軽量
化のため部品サイズの小型化が要望され、駆動系に用い
られる部品は使用時の負荷が大きくなるとともに、曲げ
疲労向上、及び部品同士の接触時に生じるピッチング疲
労寿命向上が要望されている。
【0003】曲げ疲労向上に対しては、”日本機械学会
論文集C編,55巻520号3034頁(1989)”
に報告されているように浸炭焼入れ焼戻し後に、ショッ
トピーニング処理を行い圧縮残留応力を付与する対策が
とられている。しかし、ピッチング寿命はその発生メカ
ニズムが不明であり、各種の対策が提案されている。特
開平1−264727号公報に開示されるように熱処理
後にショットピーニングを行い圧縮残留応力を付与する
方法が提案されている。しかし、特開平3−10741
8号公報にはショットピーニングによりピッチング疲労
はかえって低下するとの記載もある。また、ショットピ
ーニングは表面を荒らすため、駆動伝達部品では使用時
の騒音問題も有している。
論文集C編,55巻520号3034頁(1989)”
に報告されているように浸炭焼入れ焼戻し後に、ショッ
トピーニング処理を行い圧縮残留応力を付与する対策が
とられている。しかし、ピッチング寿命はその発生メカ
ニズムが不明であり、各種の対策が提案されている。特
開平1−264727号公報に開示されるように熱処理
後にショットピーニングを行い圧縮残留応力を付与する
方法が提案されている。しかし、特開平3−10741
8号公報にはショットピーニングによりピッチング疲労
はかえって低下するとの記載もある。また、ショットピ
ーニングは表面を荒らすため、駆動伝達部品では使用時
の騒音問題も有している。
【0004】ピッチング疲労特性に優れた鋼材とし
て、”特殊鋼44巻3号39〜48頁(1995年)”
に各種鋼材が報告されている。いずれも浸炭時に生成さ
れる粒界酸化層や不完全焼入れ層の深さ、硬さ制御を目
的として合金元素の成分調整が行われている。しかし、
粒界酸化層、及び不完全焼入れ層はそもそも初期欠陥が
あり、また軟質化した層であることから成分調整を行っ
ても特性が出しにくい部分である。また、合金成分の添
加はコストアップを招くことになる。
て、”特殊鋼44巻3号39〜48頁(1995年)”
に各種鋼材が報告されている。いずれも浸炭時に生成さ
れる粒界酸化層や不完全焼入れ層の深さ、硬さ制御を目
的として合金元素の成分調整が行われている。しかし、
粒界酸化層、及び不完全焼入れ層はそもそも初期欠陥が
あり、また軟質化した層であることから成分調整を行っ
ても特性が出しにくい部分である。また、合金成分の添
加はコストアップを招くことになる。
【0005】この様に、高負荷荷重下における駆動伝達
系部品でのピッチング疲労特性に関して、その疲労強度
を向上させる工業的に有益な技術は、未だ見出されてい
ないのが実状である。
系部品でのピッチング疲労特性に関して、その疲労強度
を向上させる工業的に有益な技術は、未だ見出されてい
ないのが実状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、自動車のト
ランスミッション等に使用される歯車などの駆動伝達系
部品におけるピッチング疲労強度を向上せんとするもの
である。
ランスミッション等に使用される歯車などの駆動伝達系
部品におけるピッチング疲労強度を向上せんとするもの
である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述の課
題に対して研究を重ねた結果以下の新知見を見出した。
標準的なピッチング性能評価試験であるローラーピッチ
ング試験において、浸炭処理時に発生する不完全焼入れ
層(軟化部)で摩耗が発生することにより、寿命が大幅
に向上することを見出した。摩耗の発生原因は、不完全
焼入れ層のベイナイト組織がショットピーニングなどで
付与される加工ひずみにより脆化したためである。摩耗
によりピッチング寿命が向上するのは、不完全焼入れ層
及びその中の粒界酸化部で発生する初期亀裂が摩耗によ
り除去されピッチング発生が抑制されるため、また、摩
耗することで接触面積が増加し実質面圧が低下するため
であった。
題に対して研究を重ねた結果以下の新知見を見出した。
標準的なピッチング性能評価試験であるローラーピッチ
ング試験において、浸炭処理時に発生する不完全焼入れ
層(軟化部)で摩耗が発生することにより、寿命が大幅
に向上することを見出した。摩耗の発生原因は、不完全
焼入れ層のベイナイト組織がショットピーニングなどで
付与される加工ひずみにより脆化したためである。摩耗
によりピッチング寿命が向上するのは、不完全焼入れ層
及びその中の粒界酸化部で発生する初期亀裂が摩耗によ
り除去されピッチング発生が抑制されるため、また、摩
耗することで接触面積が増加し実質面圧が低下するため
であった。
【0008】不完全焼入れ層が摩耗される条件について
種々検討を行った。不完全焼入れ層を脆化させるために
加工ひずみを加える方法としては、浸炭焼入れ焼戻し後
にショットピーニングを行う方法が直ぐに想像されが、
工程数が増えることになる。本発明者らは特開昭59−
232642号公報で浸炭焼入れし、その後焼戻し時の
加熱を利用した焼戻し温間鍛造成形する方法を提案して
おり、本加工法を用いることにより工程数を増やすこと
なく加工ひずみを加えることができる。
種々検討を行った。不完全焼入れ層を脆化させるために
加工ひずみを加える方法としては、浸炭焼入れ焼戻し後
にショットピーニングを行う方法が直ぐに想像されが、
工程数が増えることになる。本発明者らは特開昭59−
232642号公報で浸炭焼入れし、その後焼戻し時の
加熱を利用した焼戻し温間鍛造成形する方法を提案して
おり、本加工法を用いることにより工程数を増やすこと
なく加工ひずみを加えることができる。
【0009】こうした知見を元に、以下のような達成手
段を明らかにし、本発明に至った。即ち本発明は、鋼材
を粗成形した後、浸炭焼入れを行い、しかる後200〜
600℃に1〜5分間高周波加熱して直ちに10〜60
%の加工を加えることにより、不完全焼入を層が15μ
m以上、表面での圧縮残留応力を25kgf/mm2 以上、表
面粗さRmax を3μm以上とするとともに、X線回折半
価幅をその鋼材焼鈍後の半価幅で無次元化した値β’
が、β’と表面粗さRmax との関係式β’≧2.29−
0.40ln(Rmax )を満足し、かつ、残留オーステ
ナイトを10%以下とすることを特徴とする接触疲労寿
命強度に優れた駆動伝達系部品の製造方法にある。
段を明らかにし、本発明に至った。即ち本発明は、鋼材
を粗成形した後、浸炭焼入れを行い、しかる後200〜
600℃に1〜5分間高周波加熱して直ちに10〜60
%の加工を加えることにより、不完全焼入を層が15μ
m以上、表面での圧縮残留応力を25kgf/mm2 以上、表
面粗さRmax を3μm以上とするとともに、X線回折半
価幅をその鋼材焼鈍後の半価幅で無次元化した値β’
が、β’と表面粗さRmax との関係式β’≧2.29−
0.40ln(Rmax )を満足し、かつ、残留オーステ
ナイトを10%以下とすることを特徴とする接触疲労寿
命強度に優れた駆動伝達系部品の製造方法にある。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
部品使用時に不完全焼入れ層が摩耗するように、加工ひ
ずみを加えその層を脆化させる必要がある。歯車等駆動
伝達系部品の多くはSCM 420,SCr420などの合
金鋼をオーステナイト域まで加熱して熱間鍛造した後切
削加工により所定の形状に仕上げされる。その後表面を
硬化させるため再度オーステナイト域まで加熱され浸炭
焼入れ焼戻し処理が行われる。この製造工程ではオース
テナイト域までの加熱を2度も行っている。この工程
で、摩耗を生じさせるため浸炭時の不完全焼入れ層に加
工ひずみを加えるには浸炭処理後に付与せざるを得な
い。これに対し、鋼材を浸炭焼入れした後焼戻し時に温
間鍛造成形を行う工程ではオーステナイト域までの加熱
が1回で済むとともに、温間鍛造時の加工ひずみを与え
た不完全焼入れ層が残留することになる。
部品使用時に不完全焼入れ層が摩耗するように、加工ひ
ずみを加えその層を脆化させる必要がある。歯車等駆動
伝達系部品の多くはSCM 420,SCr420などの合
金鋼をオーステナイト域まで加熱して熱間鍛造した後切
削加工により所定の形状に仕上げされる。その後表面を
硬化させるため再度オーステナイト域まで加熱され浸炭
焼入れ焼戻し処理が行われる。この製造工程ではオース
テナイト域までの加熱を2度も行っている。この工程
で、摩耗を生じさせるため浸炭時の不完全焼入れ層に加
工ひずみを加えるには浸炭処理後に付与せざるを得な
い。これに対し、鋼材を浸炭焼入れした後焼戻し時に温
間鍛造成形を行う工程ではオーステナイト域までの加熱
が1回で済むとともに、温間鍛造時の加工ひずみを与え
た不完全焼入れ層が残留することになる。
【0011】熱間鍛造に比べ焼戻し温間鍛造では加熱温
度が低いことから一般に据込み、曲げ等の適度に粗成形
された素材が用いられる。そこで本発明でも鋼材を粗成
形した後に浸炭焼入れが行われる。浸炭焼入れままでは
靭性が低いことから焼戻しを行うため加熱される。この
温度が200℃未満であると鋼材の軟質化があまりみら
れず温間鍛造時の成形性が損なわれ、600℃を越えた
温度では再結晶するため、加熱温度を200℃以上60
0℃以下とした。
度が低いことから一般に据込み、曲げ等の適度に粗成形
された素材が用いられる。そこで本発明でも鋼材を粗成
形した後に浸炭焼入れが行われる。浸炭焼入れままでは
靭性が低いことから焼戻しを行うため加熱される。この
温度が200℃未満であると鋼材の軟質化があまりみら
れず温間鍛造時の成形性が損なわれ、600℃を越えた
温度では再結晶するため、加熱温度を200℃以上60
0℃以下とした。
【0012】加熱手段として高周波を用いるため、鋼材
温度を短時間に上昇させるのが容易であり酸化スケール
の発生を抑制できる。鋼材を均一加熱するために1分以
上の加熱時間が必要である。5分を越えた加熱では加熱
時間が長く、加熱効率及び酸化スケールの発生を防止す
る上からもさけるべきである。加工率に関しては、60
%超の加工を施すと延性不足から割れを生じる。10%
未満の加工では強度を付与できないこと、及び不完全焼
入れ層へ付与される加工ひずみが小さく摩耗しないた
め、下限を10%以上とした。なお、ここでいう加工率
は、減面率或いは圧縮率を意味するものである。
温度を短時間に上昇させるのが容易であり酸化スケール
の発生を抑制できる。鋼材を均一加熱するために1分以
上の加熱時間が必要である。5分を越えた加熱では加熱
時間が長く、加熱効率及び酸化スケールの発生を防止す
る上からもさけるべきである。加工率に関しては、60
%超の加工を施すと延性不足から割れを生じる。10%
未満の加工では強度を付与できないこと、及び不完全焼
入れ層へ付与される加工ひずみが小さく摩耗しないた
め、下限を10%以上とした。なお、ここでいう加工率
は、減面率或いは圧縮率を意味するものである。
【0013】摩耗層となる不完全焼入れ層が温鍛成形後
で15μm未満であると摩耗による初期亀裂削減効果と
実質面圧低減効果が小さく、ピッチング寿命向上効果が
少ない。不完全焼入れ層が圧縮残留応力でないと、部品
同士が接触した際、摩耗が発生する前に表面での引張応
力により不完全焼入れ層に亀裂が発生、進展しピッチン
グに至ってしまう。従って、表面での圧縮残留応力が2
5kgf/mm2 以上必要である。
で15μm未満であると摩耗による初期亀裂削減効果と
実質面圧低減効果が小さく、ピッチング寿命向上効果が
少ない。不完全焼入れ層が圧縮残留応力でないと、部品
同士が接触した際、摩耗が発生する前に表面での引張応
力により不完全焼入れ層に亀裂が発生、進展しピッチン
グに至ってしまう。従って、表面での圧縮残留応力が2
5kgf/mm2 以上必要である。
【0014】焼戻し時の温鍛成形により、不完全焼入れ
層が脆化されるためには、温鍛成形時に加工ひずみが付
与される必要がある。その尺度として、表面に損傷を与
えないことを考慮してX線回折半価幅を用いることと
し、測定器,標準試料による差異が生じない様に、用い
る鋼材の焼鈍後半価幅で無次元化した値β’を用いた。
また、摩耗が生じるには表面に摩耗の起点となる凸部が
必要である。そのため焼戻し温間鍛造後の表面粗さRma
x は3μm以上必要である。しかし凸部があっても加工
ひずみが小さく脆化していないと摩耗が生じない。そこ
で、Rmax とβ’との間でβ’≧2.29−0.40l
n(Rmax )である必要がある。
層が脆化されるためには、温鍛成形時に加工ひずみが付
与される必要がある。その尺度として、表面に損傷を与
えないことを考慮してX線回折半価幅を用いることと
し、測定器,標準試料による差異が生じない様に、用い
る鋼材の焼鈍後半価幅で無次元化した値β’を用いた。
また、摩耗が生じるには表面に摩耗の起点となる凸部が
必要である。そのため焼戻し温間鍛造後の表面粗さRma
x は3μm以上必要である。しかし凸部があっても加工
ひずみが小さく脆化していないと摩耗が生じない。そこ
で、Rmax とβ’との間でβ’≧2.29−0.40l
n(Rmax )である必要がある。
【0015】さらに、残留オーステナイトが多いと塑性
変形して摩耗が生じないため、10%以下とした。
変形して摩耗が生じないため、10%以下とした。
【0016】
【実施例】浸炭部品に多く用いられるSCr420鋼を
用い、直径70mmの圧延材を直径36mm,30m
m,28mmの丸棒へ圧延した後、925℃で焼きなら
し処理した。各素材を浸炭ガス雰囲気中で930℃×5
時間加熱→130℃油焼入れを行った。その後焼戻し、
及び温間鍛造を行うため所定の温度に高周波により加熱
保持し、直径26mmの丸棒へ押出した。なお、加熱保
持は、昇温に1分,保持に2分でトータル3分とした。
用い、直径70mmの圧延材を直径36mm,30m
m,28mmの丸棒へ圧延した後、925℃で焼きなら
し処理した。各素材を浸炭ガス雰囲気中で930℃×5
時間加熱→130℃油焼入れを行った。その後焼戻し、
及び温間鍛造を行うため所定の温度に高周波により加熱
保持し、直径26mmの丸棒へ押出した。なお、加熱保
持は、昇温に1分,保持に2分でトータル3分とした。
【0017】焼戻し温間鍛造時の加工率を表す押出し減
面率は、直径36mmの圧延材を用いた場合に48%と
なる。その他、直径30mm,28mm,27mmの圧
延材を用いて、減面率はそれぞれ25%,14%,7%
となる。焼戻し温間鍛造は、負荷能力50tonfの油圧サ
ーボタイプの圧縮試験機を用い、速度150mm/s一
定で行った。金型表面粗さは0.5〜1μmであるが、
押出し材表面粗さの影響を検討するべく、表面粗さ3〜
4μmの金型を用いた押出しも行った。
面率は、直径36mmの圧延材を用いた場合に48%と
なる。その他、直径30mm,28mm,27mmの圧
延材を用いて、減面率はそれぞれ25%,14%,7%
となる。焼戻し温間鍛造は、負荷能力50tonfの油圧サ
ーボタイプの圧縮試験機を用い、速度150mm/s一
定で行った。金型表面粗さは0.5〜1μmであるが、
押出し材表面粗さの影響を検討するべく、表面粗さ3〜
4μmの金型を用いた押出しも行った。
【0018】直径26mmへ押出された丸棒からローラ
ーピッチング試験に用いる直径26mm,幅28mmを
有する小ローラー試験片を機械加工した。ローラーピッ
チング試験は、この小ローラー試験片と直径130mm
の大ローラー試験片を組み合わせて疲労試験を行う。大
ローラーは、直径70mmのSCr420圧延材を直径
150mmに鍛造した後、直径130mm,幅18m
m,R150mmのクラウンニングを有する所定形状に
機械加工し、その後浸炭ガス雰囲気中で930℃×5時
間加熱→130℃油焼入→200℃×1時間の焼戻しを
行った。
ーピッチング試験に用いる直径26mm,幅28mmを
有する小ローラー試験片を機械加工した。ローラーピッ
チング試験は、この小ローラー試験片と直径130mm
の大ローラー試験片を組み合わせて疲労試験を行う。大
ローラーは、直径70mmのSCr420圧延材を直径
150mmに鍛造した後、直径130mm,幅18m
m,R150mmのクラウンニングを有する所定形状に
機械加工し、その後浸炭ガス雰囲気中で930℃×5時
間加熱→130℃油焼入→200℃×1時間の焼戻しを
行った。
【0019】各小ローラー試験片の表面残留応力,半価
幅,残留オーステナイトを測定した。X線半価幅は測定
機械,標準試料により誤差がでやすいために各試験片の
焼鈍材での値で無次元化している。その焼鈍条件は、各
試料とも850℃×1時間保持後10℃/時間で600
℃まで徐冷した。ピッチング寿命評価として、小ローラ
ー試験片と大ローラーを組み合わせてローラーピッチン
グ疲労試験を行った。試験条件は、試験片の回転数10
00rpm,すべり率40%、潤滑剤にはオートマチッ
ク変速機用オイルを用い、油温約80℃で行った。ロー
ラーピッチング試験での設定面圧は300kgf/mm2 で行
い、小ローラーに発生するピッチングの面積率が3%以
上になった時点を疲労寿命としてそれまでの回転数で評
価した。
幅,残留オーステナイトを測定した。X線半価幅は測定
機械,標準試料により誤差がでやすいために各試験片の
焼鈍材での値で無次元化している。その焼鈍条件は、各
試料とも850℃×1時間保持後10℃/時間で600
℃まで徐冷した。ピッチング寿命評価として、小ローラ
ー試験片と大ローラーを組み合わせてローラーピッチン
グ疲労試験を行った。試験条件は、試験片の回転数10
00rpm,すべり率40%、潤滑剤にはオートマチッ
ク変速機用オイルを用い、油温約80℃で行った。ロー
ラーピッチング試験での設定面圧は300kgf/mm2 で行
い、小ローラーに発生するピッチングの面積率が3%以
上になった時点を疲労寿命としてそれまでの回転数で評
価した。
【0020】表1に温度,減面率の焼戻し温間鍛造条
件、及び鍛造後の不完全焼入れ層の厚さ,表面での粗
さ,残留応力,無次元化半価幅,残留オーステナイト,
ローラーピッチング疲労試験結果を示す。不完全焼入れ
層の深さは鍛造後の小ローラーの試験片断面組織から測
定した。また、表1中の無次元化半価幅の下限値は、
β’=2.29−0.40ln(Rmax )で求められる
必要β’の値である。なお、残留応力は負値が圧縮残留
応力であり、正値が引張残留応力である。
件、及び鍛造後の不完全焼入れ層の厚さ,表面での粗
さ,残留応力,無次元化半価幅,残留オーステナイト,
ローラーピッチング疲労試験結果を示す。不完全焼入れ
層の深さは鍛造後の小ローラーの試験片断面組織から測
定した。また、表1中の無次元化半価幅の下限値は、
β’=2.29−0.40ln(Rmax )で求められる
必要β’の値である。なお、残留応力は負値が圧縮残留
応力であり、正値が引張残留応力である。
【0021】No. 1〜9の本発明例では、いずれも10
7 回でピッチングが発生しなかったので表1中に「>10
000 」×103 と記述した。No. 1〜7において、温間
鍛造時に用いた金型の表面粗さは、0.5〜1μmであ
る。これに対して、No. 8,及びN o. 9は、表面粗さ
3〜4μmの金型を用いて温間鍛造を行った場合であ
り、鍛造後の表面粗さRmax はNo. 1〜7に比べて粗く
なっている。また、温間鍛造時の減面率が小さいために
付与されるβ’はNo. 1〜7の場合より小さい。しか
し、鍛造後の表面粗さRmax が大きいためにβ’は所定
の範囲に入っており、107 回までピッチングは発生し
なかった。
7 回でピッチングが発生しなかったので表1中に「>10
000 」×103 と記述した。No. 1〜7において、温間
鍛造時に用いた金型の表面粗さは、0.5〜1μmであ
る。これに対して、No. 8,及びN o. 9は、表面粗さ
3〜4μmの金型を用いて温間鍛造を行った場合であ
り、鍛造後の表面粗さRmax はNo. 1〜7に比べて粗く
なっている。また、温間鍛造時の減面率が小さいために
付与されるβ’はNo. 1〜7の場合より小さい。しか
し、鍛造後の表面粗さRmax が大きいためにβ’は所定
の範囲に入っており、107 回までピッチングは発生し
なかった。
【0022】また、No. 3では鍛造後の不完全焼入れ層
を深さを浅くするため、浸炭焼入れ後深さ10μmの研
削を行い、その後焼戻し温間鍛造を行ったが、107 回
までピッチングは発生しなかった。No. 10〜16が比
較法である。なお、温間鍛造時に用いた金型表面粗さ
は、0.5〜1μmである。
を深さを浅くするため、浸炭焼入れ後深さ10μmの研
削を行い、その後焼戻し温間鍛造を行ったが、107 回
までピッチングは発生しなかった。No. 10〜16が比
較法である。なお、温間鍛造時に用いた金型表面粗さ
は、0.5〜1μmである。
【0023】No. 10は押出し時の減面率が小さいので
β’も小さく、摩耗が発生しなかった。そのため、ピッ
チング寿命が低かった。No. 11は鍛造後の不完全焼入
れ層を浅くするために浸炭焼入れ後に深さ15μmの研
削を行い、その後焼戻し温間鍛造を行っている。不完全
焼入れ層の深さが浅いため摩耗代が少なくピッチング寿
命が低かった。
β’も小さく、摩耗が発生しなかった。そのため、ピッ
チング寿命が低かった。No. 11は鍛造後の不完全焼入
れ層を浅くするために浸炭焼入れ後に深さ15μmの研
削を行い、その後焼戻し温間鍛造を行っている。不完全
焼入れ層の深さが浅いため摩耗代が少なくピッチング寿
命が低かった。
【0024】No. 12も浸炭焼入れ後不完全焼入れ層が
無くなるまで30μmの研削を行い、その後焼戻し温間
鍛造を行っている。不完全焼入れ層が無いために摩耗発
生が無く、ピッチング寿命が低くなった。No. 13は、
直径70mmの圧延材を直径26mmの丸棒へ圧延した
素材を用い、浸炭焼入れ後温間鍛造せずに焼戻しだけを
行った。加工ひずみが付与されていないため、残留応力
は引張であり、β’も所定の下限値を下回っておりピッ
チング寿命は107 回に達していない。
無くなるまで30μmの研削を行い、その後焼戻し温間
鍛造を行っている。不完全焼入れ層が無いために摩耗発
生が無く、ピッチング寿命が低くなった。No. 13は、
直径70mmの圧延材を直径26mmの丸棒へ圧延した
素材を用い、浸炭焼入れ後温間鍛造せずに焼戻しだけを
行った。加工ひずみが付与されていないため、残留応力
は引張であり、β’も所定の下限値を下回っておりピッ
チング寿命は107 回に達していない。
【0025】No. 14は鍛造後の表面粗さを低くするべ
く浸炭後研磨を行い、Rmax を1.0以下とした後に焼
戻し温間鍛造を行った。表面粗さが小さいために摩耗が
発生せずピッチング寿命が低かった。No. 15は焼戻し
温間鍛造後表層10μm程度の研削を行っており、内部
の残留γの高い面が出てきた場合である。表層が塑性変
形して摩耗が発生しないため低いピッチング寿命となっ
た。
く浸炭後研磨を行い、Rmax を1.0以下とした後に焼
戻し温間鍛造を行った。表面粗さが小さいために摩耗が
発生せずピッチング寿命が低かった。No. 15は焼戻し
温間鍛造後表層10μm程度の研削を行っており、内部
の残留γの高い面が出てきた場合である。表層が塑性変
形して摩耗が発生しないため低いピッチング寿命となっ
た。
【0026】No. 16は、焼戻し温度を150℃とした
場合であるが、加熱による素材軟質化が十分でないた
め、50tonfの圧縮試験機では押出し成型ができなかっ
た。加工度の検討も行った。小ローラー作成のため圧
延、焼きならしした直径30mmのSCr 420材を用い
てφ28×42に機械加工し、これを浸炭焼入した。そ
の後所定の温度に加熱した後に単純圧縮を行った。加熱
温度550℃で60%の圧縮率までは割れも発生せずに
加工できたが、65%以上の圧縮率では側面に割れが発
生した。
場合であるが、加熱による素材軟質化が十分でないた
め、50tonfの圧縮試験機では押出し成型ができなかっ
た。加工度の検討も行った。小ローラー作成のため圧
延、焼きならしした直径30mmのSCr 420材を用い
てφ28×42に機械加工し、これを浸炭焼入した。そ
の後所定の温度に加熱した後に単純圧縮を行った。加熱
温度550℃で60%の圧縮率までは割れも発生せずに
加工できたが、65%以上の圧縮率では側面に割れが発
生した。
【0027】さらに加熱時間を検討すべく、No. 1の条
件で昇温を1分、保持5分の合計6分で高周波で加熱し
た後押出しを行った。しかし、加熱時に多く発生した酸
化スケールが押出し時に巻き込まれていた。この様な酸
化スケールで生じた巻き込みは、疲労試験での予亀裂と
なり寿命を極端に落とすことからこれ以上の検討は行わ
なかった。
件で昇温を1分、保持5分の合計6分で高周波で加熱し
た後押出しを行った。しかし、加熱時に多く発生した酸
化スケールが押出し時に巻き込まれていた。この様な酸
化スケールで生じた巻き込みは、疲労試験での予亀裂と
なり寿命を極端に落とすことからこれ以上の検討は行わ
なかった。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】本発明では、浸炭焼入れを行った後、焼
戻しの加熱を利用して加工を行い浸炭層に加工ひずみを
施すことにより使用時に表面が摩耗しピッチング寿命を
飛躍的に向上することができる。このことは駆動伝達系
部品の受ける負荷荷重を増大できる、或いは部品自体の
小型軽量化が可能となり、駆動伝達を行う部品を多く用
いる自動車、建築用機械の小型軽量化を実現し、燃費改
善など多大の効果をもたらす。
戻しの加熱を利用して加工を行い浸炭層に加工ひずみを
施すことにより使用時に表面が摩耗しピッチング寿命を
飛躍的に向上することができる。このことは駆動伝達系
部品の受ける負荷荷重を増大できる、或いは部品自体の
小型軽量化が可能となり、駆動伝達を行う部品を多く用
いる自動車、建築用機械の小型軽量化を実現し、燃費改
善など多大の効果をもたらす。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16H 55/06 F16H 55/06 // C21D 9/32 C21D 9/32 A (72)発明者 伊藤 誠司 北海道室蘭市仲町12番地 新日本製鐵株式 会社室蘭製鐵所内 Fターム(参考) 3J030 BC03 BC06 BC10 CA10 4K028 AA01 AB01 AB06 4K032 CL01 CL02 CL03 CM01 4K042 AA18 BA01 BA03 DA01 DA02 DA06 DB01 DC02 DC03
Claims (1)
- 【請求項1】 鋼材を粗成形した後、浸炭焼入れを行
い、しかる後200〜600℃に1〜5分間高周波加熱
して直ちに10〜60%の加工を加えることにより、不
完全焼入を層が15μm以上、表面での圧縮残留応力を
25kgf/mm2 以上、表面粗さRmax を3μm以上とする
とともに、X線回折半価幅をその鋼材焼鈍後の半価幅で
無次元化した値β’が、β’と表面粗さRmax との関係
式β’≧2.29−0.40ln(Rmax )を満足し、
かつ、残留オーステナイトを10%以下とすることを特
徴とする接触疲労寿命強度に優れた駆動伝達系部品の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32491198A JP2000144370A (ja) | 1998-11-16 | 1998-11-16 | 接触疲労寿命強度に優れた駆動伝達系部品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP32491198A JP2000144370A (ja) | 1998-11-16 | 1998-11-16 | 接触疲労寿命強度に優れた駆動伝達系部品の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000144370A true JP2000144370A (ja) | 2000-05-26 |
Family
ID=18171006
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP32491198A Withdrawn JP2000144370A (ja) | 1998-11-16 | 1998-11-16 | 接触疲労寿命強度に優れた駆動伝達系部品の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2000144370A (ja) |
-
1998
- 1998-11-16 JP JP32491198A patent/JP2000144370A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060207 |