JP2000144139A - コークス炉における炭化室炉壁荷重または圧力のシミュレーション方法およびコークス炉の操業方法 - Google Patents

コークス炉における炭化室炉壁荷重または圧力のシミュレーション方法およびコークス炉の操業方法

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JP2000144139A
JP2000144139A JP10322026A JP32202698A JP2000144139A JP 2000144139 A JP2000144139 A JP 2000144139A JP 10322026 A JP10322026 A JP 10322026A JP 32202698 A JP32202698 A JP 32202698A JP 2000144139 A JP2000144139 A JP 2000144139A
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coke
load
pressure
furnace
furnace wall
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Izumi Shimoyama
泉 下山
Shozo Itagaki
省三 板垣
Kiyoshi Fukada
喜代志 深田
Hidenori Sumiya
秀紀 角谷
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 実炉における炉壁荷重または圧力を直接推算
すること、および炉壁にかかる局部荷重または圧力を推
算することができるコークス炉における炭化室炉壁荷重
または圧力のシミュレーション方法、およびそれに基づ
いて効果的なコークス炉の操業を行うことができるコー
クス炉の操業方法を提供すること。 【解決手段】 水平室炉式コークス炉において製造され
たコークスを押出し機により炭化室から押出す際に炭化
室の少なくとも一方側の炉壁全体にかかる荷重または圧
力、および、炭化室炉壁の局部にかかる荷重または圧力
を、離散要素法を用いた計算によりシミュレーションす
る。また、これらのシミュレーション値が炭化室炉壁の
状態によって決まる許容荷重または許容圧力値以下にな
るように操業条件を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は水平室炉式コーク
ス炉において石炭を乾留してコークスを製造するに際
し、コークス炉壁の損傷を防止し、炉の安定操業を可能
とする、コークス炉における炭化室炉壁荷重または圧力
のシミュレーション方法およびコークス炉の操業方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】水平室炉式コークス炉において、石炭を
乾留してコークスを製造するに際して、石炭が装入され
る炭化室の炉壁レンガの損傷を防ぐことは、その補修が
容易でないことから極めて重要なことといえる。また、
コークス炉を安定的に操業するためには操業中断をもた
らすような押詰まり、すなわち炭化室からコークスが押
出せなくなる状態を防ぐことも重要である。
【0003】このような炉壁損傷や押詰まりをもたらす
原因の一つとして、コークス押出し時において押出しラ
ムによってコークスに与えられた荷重が炉壁に伝わり、
炉壁がコークスから過剰な荷重を受け炉壁損傷が発生し
たり、ラムによる荷重が分散する結果スムーズな押出し
が行なえなくなることが知られている。
【0004】このような現象による炉壁の損傷を防ぎ、
また、押出し不能な状態に至ることを防ぐことを目的と
するいくつかの技術が公知である。例えば、特開平07
−278562号公報には、装入石炭の膨張圧を制御す
ることにより押し詰まりを防止する技術が開示されてい
る。特開平09−249882号公報、特開平09−2
68291号公報には、炭化室の炉長方向に異なった品
質の石炭を装入することで押詰まりを防止する技術が開
示されている。特開平08−283728号公報には押
出し機側コークスケーキの端部の温度を制御することに
より押詰まりを防止する技術が開示されている。特開平
08−283729号公報には、押出しラムの速度を制
御することにより押出し不良を防止する技術が開示され
ている。特開平05−339580号、特開平06−2
71865号、特開平08−283730号および特開
平08−283732号の各公報には、コークス炉にお
ける必要押出し力と焼減り率の関係に基づいて、装入石
炭の焼減り率を制御することで押詰まりを防止する技術
が開示されている。特開平08−283731号公報に
は、コークス塊の長さと必要押出し圧力の関係に基づい
て、塊の長さを調整することにより押詰まりを防止する
方法が開示されている。特開平09−143473号公
報には、実験あるいは計算によって、コークスケーキ圧
縮中の一定押力に対する側壁荷重の比(炉壁負荷指数)
を求め、それを指標として操業を行い、コークスの押出
し性を改善する方法が開示されている。
【0005】これらの公知技術はすべて、ある制御因子
と押出し性の相関をあらかじめ求め、それに基づいて操
業を行なおうとするものである。押詰まりと炉壁損傷の
関連は経験的に指摘されているため、これらの技術は、
押出しトラブルによる炉壁の損傷を防止するという観点
からは効果があるといえる。しかし、押詰まりを起こさ
ない場合でも過大な荷重が炉壁に作用する可能性がある
ことを考慮すると、炉壁損傷を防止するという目的のた
めには不十分なものである。
【0006】こうした不十分さの原因は、コークス押出
し時において炉壁にどの程度の荷重がかかっているかを
精度よく推定する技術が知られていなかったためであ
る。
【0007】押出し時に炉壁にかかる荷重の推定を試み
た例は既にあり、例えば、A. E. HortonらはThe Coke O
ven Managers' Year-book、1979年、p.209においてコー
クスケーキを圧縮した場合の側壁にかかる荷重を300
kgの試験炉で測定している。また、特開平09−14
3473号公報における技術もこれと同様であり、実験
あるいは計算によって、コークスケーキ圧縮中の一定押
力に対する側壁荷重の比(炉壁負荷指数)を求めてお
り、その値を指標として操業を行い、コークスの押出し
性を改善する方法が示されている。また、特開平08−
283730号公報においても同様の計測が行なわれて
いる。
【0008】しかしながら、これらの例には以下の問題
点がある。すなわち、何れの例でも炉壁にかかる圧力は
実炉の1/50から1/100の大きさの試験炉で求め
られているという点であり、その結果が実炉に適用でき
るという確証はない。また、何れの技術においても用い
た試験炉の炉壁全面にかかる圧力しか計測されておら
ず、炉壁のごく狭い範囲にかかる荷重を測定するもので
はない。炉内のコークスが炉壁に接する表面には凹凸が
あるので、コークスのごく一部が炉壁に接する場合もあ
り、その場合にはその点に荷重が集中することがあるた
め、こうした局部荷重の評価も重要であり、全体荷重の
みの評価では不十分といわざるをえない。
【0009】このような問題点は、実炉における炉壁荷
重の測定が困難であること、および、試験炉においても
局部荷重の測定は困難であることに起因している。その
ため、実験によって炉壁荷重を測定するのではなく、計
算によって炉壁荷重を求めようとする試みも報告されて
いる。実炉において炉壁に働く荷重の分布を求める計算
方法としては、J. Tuckerらは1991 Ironmaking Confere
nce Proceedings, p.211において、炉壁を細かく分割し
て、ある区間にかかるコークス押出し方向の圧力からそ
の区間での炉壁荷重を推算する方法を述べている。ま
た、福田らは、CAMP-ISIJ、vol.10、p.155、(1997)に
おいて、上記Tuckerらの方法と本質的に同様の方法でコ
ークスにかかる圧力バランスを定式化し、3次元有限要
素法を用いて炉壁荷重の分布を推算している。しかしな
がら、これらの方法であっても、コークスケーキの微小
部分が炉壁に作用する荷重は実験に基づいて得られた指
数(コークスにかかる押出し方向圧力の炉壁圧力に対す
る比)によって求められるものである。すなわち、コー
クスケーキそのものは、連続体として考えられており、
実際のコークスケーキに存在する亀裂構造や表面の凹凸
は計算には組み込まれておらず、実炉での炉壁荷重を推
算するためには、試験炉による炉壁荷重の測定は不可欠
であって、実炉と試験炉の差に起因する問題点は解決さ
れていない。また、コークスケーキをどのように細かく
分割したとしても、全体を連続体として考えている以
上、コークス塊1個が炉壁に作用するような局部的な現
象の表現は不可能である。
【0010】なお、上述の特開平08−283730号
公報に開示されている炉壁負荷指数を計算によって求め
る方法は、実質的に試験炉によって求められた結果から
得た実験式を用いて計算するものであり、試験炉を用い
て実験することの問題点を解決し得るものではない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
鑑みてなされたものであって、実炉における炉壁荷重ま
たは圧力を直接推算すること、および炉壁にかかる局部
荷重または圧力を推算することができるコークス炉にお
ける炭化室炉壁荷重または圧力のシミュレーション方
法、およびそれに基づいて効果的なコークス炉の操業を
行うことができるコークス炉の操業方法を提供すること
を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
め、発明者らは、実炉におけるコークスケーキ、コーク
ス塊の挙動をよく表現する種々の方法を検討した。その
結果、水平室炉式コークスにおいて製造されたコークス
を押出し機により炭化室から押出す際にコークス炉壁に
かかる荷重または圧力を離散要素法を用いた計算により
推算した結果を用いることにより上記課題を解決するこ
とができることを見出した。
【0013】本発明はこのような知見に基づいて完成さ
れたものであって、第1に、水平室炉式コークス炉にお
いて製造されたコークスを押出し機により炭化室から押
出す際に炭化室の少なくとも一方側の炉壁全体にかかる
荷重または圧力、および、炭化室炉壁の局部にかかる荷
重または圧力を、離散要素法を用いた計算によりシミュ
レーションすることを特徴とするコークス炉における炭
化室炉壁荷重または圧力のシミュレーション方法を提供
するものである。
【0014】また、第2に、水平室炉式コークス炉にお
いて製造されたコークスを押出し機により炭化室から押
出す際に炭化室の少なくとも一方側の炉壁全体にかかる
荷重または圧力、および、炭化室炉壁の局部にかかる荷
重または圧力を、離散要素法を用いた計算によりシミュ
レーションし、これらのシミュレーション値が炭化室炉
壁の状態によって決まる許容荷重または許容圧力値以下
になるように操業条件を制御することを特徴とするコー
クス炉の操業方法を提供するものである。
【0015】コークス炉の炭化室内で生成するコークス
ケーキは、粒径30〜200mm程度の不定型かつ亀裂
を含んだコークス塊の集合体である。そのコークスケー
キを炉から押出す際にはケーキに作用する力によってそ
れぞれの塊が運動し、ケーキ全体としては圧縮され、炉
壁方向に広がり、移動することが知られている。本発明
が解決しようとする課題は、炉壁荷重をより正確に推算
することでコークス炉の操業をより望ましい状態で行な
う、というものであるから、炉内の個々のコークス塊の
動きを理解することが必要である。従来の方法の最大の
問題点は、このような個々のコークス塊の動きを明らか
にすることができなかった点である。その理由はコーク
スケーキ全体をひとつの大きな物体(連続体)として解
釈していたことに起因しており、そうせざるを得なかっ
たのは、個々のコークス塊の運動を理解するためのよい
方法が知られていなかったからと考えられる。
【0016】これに対し、本発明は、離散要素法を用い
ることを最大の特徴としており、これによって初めて個
々のコークス塊の動きを推定できるようになった。すな
わち、コークスケーキを圧縮した場合に起こる、圧縮に
よる亀裂幅の減少、塊の移動、新たな亀裂の発生現象な
どは、連続体として解析するのは不可能か、あるいは多
くの仮定を必要とするため、このような方法は現実の現
象をよく表現するものとはいえないのに対し、離散要素
法は非連続体の挙動を解析するのに適した方法であっ
て、分離した個々の塊の動きを評価できるものである。
すなわち、本発明の方法は、従来の方法と単に計算方法
が異なるということではなく、異なった物理現象を評価
しているものであって、このような観点からのコークス
ケーキの挙動を明らかにすることによって、より現実に
近い現象の理解が可能になったわけである。
【0017】この点が、従来技術である有限要素法を用
いた解析手法やコークスケーキを小部分に区分して解析
する方法と大きく異なる点であり、本発明の特徴的な点
である。
【0018】また、本発明の方法においてはコークス塊
の物性を与えれば、コークスケーキの挙動を計算するこ
とができる。コークス塊の物性としては剛性、摩擦係
数、表面の粗度、亀裂の形状および密度などであり、こ
れらはコークス塊個々を計測することないしは計算によ
って求めうるものである。もちろん、小型乾留炉により
製造したコークスケーキを計測することでこのようなパ
ラメーターを求めることも可能であるが、いずれにせ
よ、従来技術のようなケーキを圧縮する試験は必ずしも
必要でない。
【0019】さらに、本発明で採用する離散要素法で
は、解析するコークスケーキの大きさは自由に変更でき
るので、実炉大のコークスケーキを解析することがで
き、試験炉と実炉の相関の妥当性を問題にすることなく
実炉における現象のシミュレーションが可能となる。
【0020】このようにして、あるコークスケーキにつ
いて、それを押出した(圧縮した)場合の炉壁にかかる
荷重を推定することができれば、その数値が炉壁の耐圧
限界を超えないように管理することができる。炉壁がど
の程度の荷重、圧力に対して耐えることができるかの限
界値は炉の大きさや構造、炉壁の状態などにより変ると
考えられるが、健全な状態の炉であっても、炉壁全体に
作用する圧力としては200kPa以下、局部的に作用
する圧力としては2MPa以下とするのが常識的であ
る。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。図1は、本発明が適用される水平室炉式コーク
ス炉の一例を示す垂直断面図であり、図2はその水平断
面図である。この水平室炉式コークス炉は、炭化室1と
細かく区切られたフリュー2が多数配置された燃焼室5
とが交互に複数配置されている。燃焼室5はレンガ構造
体であり、その炭化室1に面した部分が炉壁3である。
炭化室1の上部には石炭を装入するための装入孔4が1
つの炭化室あたり4〜5個設けられている。また、炭化
室1の両側端には炉蓋6が開閉自在に設けられている。
【0022】このようなコークス炉でコークスを製造す
るに際しては、一般に、装入孔4の蓋を開けて装入孔4
から炭化室1内に石炭を装入した後、装入孔蓋を閉じ、
各フリュー2でガスを燃焼させてフリュー2からの熱に
より石炭を乾留する。乾留後、炉蓋6を開け、炭化室1
内で形成されたコークスを一端側から押出し機により押
出す。
【0023】本発明では、このようにしてコークスを押
出し機により炭化室1から押出す際に炭化室1の少なく
とも一方側の炉壁3全体にかかる荷重または圧力、およ
び、炭化室炉壁3の局部にかかる荷重または圧力を、離
散要素法を用いた計算によりシミュレーションする。
【0024】ここで、離散要素法という計算手法は、個
別要素法、離散剛体要素法、個別剛要素法、Distinct E
lement Method (DEM)、Discrete Block Method (DBM)、
など種々の名称で呼ばれているが、これらは本質的に同
じものであり、本発明ではこれらを代表して「離散要素
法」と表現する。解析は3次元、2次元のどちらで行な
うことも可能である。
【0025】コークス塊は小粒子の集合体であるから、
離散要素法プログラムとしては例えばPFC2D(Part
icle Flow Code in 2 Dimensions)が好適である。PF
は、粒子形状を円形に限定して、剛体粒子の運動
と相互作用を2次元離散要素法により解析する粒状体挙
動解析コードである。基本的には要素は剛体と仮定さ
れ、要素間の接触にせん断および引張剛性を与えて全体
としての変形を表現する。任意の位置に配置した粒子要
素を互いに接着させることにより固体材料をモデル化す
ることが可能であり、接着強度を与えることで、固体材
料の変形から破壊、亀裂の進展、崩壊といった非連続体
挙動を解析することが可能となる。
【0026】ここで、計算に用いられる基本式は、ニュ
ートンの運動の第2法則と力・変位関係である。時間に
関して陽な解法により、運動法則と力・変位関係を各ス
テップごとに交互に行い、粒子の変位や接触力等を時々
刻々と求める。この際の計算アルゴリズムを図3に模式
的に示す。
【0027】次に、コークス塊の挙動を離散要素法を用
いてシミュレーションするための手順について説明す
る。コークス塊の挙動を離散要素法を用いてシミュレー
ションするためには、上述のように、1個以上の計算要
素の集合体としてコークス塊を表現する必要がある。最
も単純な場合では1個の計算要素で1個のコークス塊を
表現することも可能であるが、実際の現象をよりよくシ
ミュレートするためには、図4に示すように、小さな計
算要素の10個以上の集合体としてコークス塊を表現す
ることが望ましい。要素粒子を多数組み合わせて塊を表
現する場合、要素粒子の大きさが大きすぎると実際の塊
との差が大きくなるが、小さすぎると計算時間がかかっ
てしまうため、適当な大きさを選ぶ必要がある。
【0028】要素粒子の大きさとしては1〜10mm程
度が通常適当である。各々の塊の形状は実際のコークス
の形状と同じ形にしてもよいし、近似的な形状にしても
よい。コークス表面の凹凸、粗度も表現できるようにす
る。コークスに荷重が加えられた場合にコークスが破壊
する現象を表現するには、結合している要素粒子がある
荷重下において離れるように設定するか、または、破壊
を起こす場所が事前に推定できている場合には1個の塊
を亀裂が発生する場所で接する2個の塊として表現する
ことで可能となる。
【0029】次いで、こうして作成したコークス塊を配
置してコークスケーキのモデルを作成する。この際に
は、実際のコークスケーキ中に存在するコークス塊間の
間隙を表現するようにする。
【0030】コークスケーキのモデルの外側には炉壁を
配置する。この際、実炉の現象に近づけるため、コーク
スと炉壁の間隔(クリアランス)、炉壁のテーパー、炉
壁の凹凸などを設定することもできる。実際の押出し現
象をシミュレートする場合には、図5に示すように、コ
ークスの出口側には拘束を設けず、その反対側からコー
クスケーキを押すように荷重および変位を与える。押し
詰まり現象をシミュレートする場合には、出口側を塞ぐ
ように拘束を設けて、その反対側から荷重および変位を
与えて、コークスケーキの圧縮に伴う現象をシミュレー
トする。炉底とコークスケーキの間の摩擦抵抗、コーク
スケーキと炉壁の間の摩擦抵抗も考慮できる。なお、図
6に図5のコークス炉炭化室内の部分Aに配置されたコ
ークス塊モデルの例を拡大して示す。
【0031】このような設定を行い、必要な物性値を与
えた後、実炉での押し出し現象や押し詰まり現象をシミ
ュレートするよう、コークスケーキに押し出し荷重およ
び変位を加えると、個々のコークス塊の動き、炉壁との
接触点、その荷重などが出力される。
【0032】出力された情報のうち、コークス炉の操業
上最も重要なものは、炭化室壁全体(片側全体)に作用
する荷重または圧力、および、局部に作用する荷重また
は圧力である。したがって、本発明では炭化室片側の炉
壁全体にかかる荷重または圧力、および、炭化室炉壁の
局部にかかる荷重または圧力を、離散要素法を用いた計
算によりシミュレーションする。なお、これら圧力は、
荷重がかかった面積で荷重を割ることによって求めるこ
とができる。
【0033】また、本発明では、以上のようなシミュレ
ーション値が炭化室炉壁の状態によって決まる許容荷重
または許容圧力値以下になるように操業条件を制御す
る。この場合に、コークス炉の許容圧力は、健全な炉で
あっても炉壁全体に作用する圧力としては200kPa
以下、局部的に作用する圧力としては2MPa以下とす
るのが常識であるが、実際の許容圧力は、炉体構造やレ
ンガの損耗、亀裂発生などにより影響を受けるので、こ
れらを加味した構造理論や、実験によって求めた値に、
安全係数を考慮して設定されるのが一般的である。
【0034】また、実炉操業結果の解析を行なって、炉
壁圧力と操業トラブル(例えば、押詰まり頻度や炉壁損
傷発生頻度)の相関を求めることにより、許容荷重また
は圧力を決定することも可能である。
【0035】このようにして、ある与えられた製造条件
により得られるコークスの押出し時における炉壁荷重ま
たは圧力をシミュレーションし、その値を設定された許
容荷重または圧力と比較して、シミュレーション値が許
容値を超えないように操業条件の制御を行う。
【0036】具体的には、シミュレーション値(推定
値)が許容値を超えた場合、原料の配合を変更したり、
乾留条件を変更したりすることで、コークス塊の粒度や
亀裂パターンを制御し、推定される値を修正して、その
値を許容値内とする。これにより、実際の操業において
炉壁荷重または圧力を許容値以下にすることが可能とな
る。
【0037】また、同じコークスケーキであっても押出
し条件を変更することで、炉壁にかかる圧力を制御する
ことができる。例えば、炉壁に圧力の加わりやすいコー
クスケーキを製造している場合には、押出し時にかける
ラム荷重の最大値を低めに設定することによって炉壁の
損傷を未然に防ぐことが可能となる。もちろん、この場
合には押詰まりの頻度は増加する可能性があるが、従来
の方法の欠点であった、押詰まりを起こさない条件であ
っても炉壁に過大な圧力がかかってしまうという危険を
防止することができる。
【0038】また、コークスケーキから炉壁への荷重の
発生はコークス押出し抵抗の増大をもたらし、押詰まり
をもたらすことが知られているため、この解析により得
られた炉壁にかかる圧力の推定値を利用し、押詰まり頻
度の低い操業を行なうことも可能となる。
【0039】
【実施例】まず、本発明に基づいてシミュレーションを
行った解析例について説明する。 (解析例1)離散要素法解析ソフトとして、PFC2D
を用いコークスケーキの水平断面モデルを作成した。要
素粒子の大きさを10mmとし、約100個の要素粒子
をもって1個のコークス塊を表現した。コークス塊は外
形が実際のコークスの形状とほぼ同一になるように要素
粒子を組み合わせて表現した。塊を組み合わせて実炉大
のコークスケーキモデルを作成、塊の間に存在する亀裂
パターンは、250kg試験炉で乾留したコークスケー
キをケーキの形状を保ったまま乾式冷却して得たサンプ
ルの亀裂パターンと同様になるように設定した。コーク
スケーキと炉壁の間のクリアランスは片側5mmとし
た。
【0040】実炉における押詰まりの状態を表現するた
め、実炉においてコークスが排出される側に相当する炭
化室の出口部に固定壁を設定し、作成したコークスケー
キに対し、固定壁の反対側から実炉における押出しラム
の進行速度に相当する速度で荷重を与え、その際の炉壁
にかかる圧力を計算した。その結果、200kPaのラ
ムからの圧力を与えた場合の炉壁全体にかかる圧力は
7.2kPa(片側)となった。またこの場合、コーク
スは、押出し方向に対して右側の炉壁に対し53ケ所、
押出し方向に対して左側の炉壁に対し46ケ所で接して
おり、その局部圧力は最小1.5kPa、最大320k
Paであった。これらの炉壁全体にかかる圧力、局部に
かかる圧力とも、事前に設定した炉壁の許容圧力以下で
あり、この条件で安全に操業を行うことが可能なことを
示している。
【0041】(解析例2)コークス塊を約20〜50個
の要素粒子を用いて構成した他は、解析例1と同様の方
法により計算を行なった。その結果、炉壁全体の圧力は
9.5kPaであったが、局部圧力のバラツキが大きく
なり、押出しラムの近傍において2.1MPaの最大局
部圧力が算出された。この局部圧力は炉壁の許容圧力以
上と考えられるため、このような条件での操業は好まし
くないと判断された。
【0042】(解析例3)コークスケーキと炉壁のクリ
アランスを0.5mmとした他は、解析例1と同様の方
法により計算を行なった。その結果、炉壁全体の圧力が
120kPa、局部圧力は50〜530kPaとなっ
た。この結果のみからもこの条件はあまり好ましくない
ものといえるが、この条件で、ラムの圧力を400kP
aにした場合は炉壁全体の圧力が200kPaとなっ
た。この結果より、押出しラムから与える圧力の上限値
を400kPaより低く設定する必要があると判断され
た。
【0043】(解析例4)炭化室の出口部に固定壁を置
かない他は、解析例1と同様の方法により計算を行っ
た。その結果、ラムにかかる荷重はラムがコークスケー
キと接触しはじめると上昇し、全体のコークスケーキが
動き出すと減少することが認められた。この傾向は実炉
において押出し時に観測される押出し反力の挙動と同様
であった。また、この際のラム荷重最大値は実炉におい
て33トンの押出し荷重の場合と同じであり、その時点
での炉壁全体にかかる圧力は4kPa、局所圧力は1.
1kPa〜150kPaと算出された。
【0044】(解析例5)炭化室の出口部に固定壁を置
かず、クリアランスを0.1mmとした他は、解析例2
と同様の方法により計算を行った。その結果、200k
Paのラム荷重を与えても、コークス塊間の隙間が減少
することによるコークスケーキ全体の圧縮は進行する
が、ケーキ全体は動き出さないことがわかった。すなわ
ち、計算上で押詰まり現象をシミュレートすることがで
きた。
【0045】(解析例6)コークスケーキの大きさを幅
40cm、長さ100cmとした他は解析例1と同様の
方法で計算を行った。その結果、炉壁全体にかかる圧力
が6.5kPa、局部圧力が10〜420kPaであっ
た。このケーキの大きさは、乾留試験炉の大きさと同じ
であり、試験炉で製造された小さなコークスケーキを用
いて実際に圧縮試験を行なった場合のデータとの比較を
行なった。実際の圧縮試験で得られた値は、炉壁全体に
かかる圧力が6.0kPa、局部圧力が6〜510kP
aであり、実験誤差の範囲で計算による推定値と実験に
より求めた値はよく一致していた。
【0046】次に、本発明に基づいたシミュレーション
結果を実炉操業へ反映させた例について説明する。
【0047】1.シミュレーション例 実炉において押出しトラブルが発生した時の配合炭を用
い、250kg試験炉を用いて、実炉の操業に対応する
乾留条件で乾留し、乾式消火して得たコークスケーキの
亀裂のパターンを調査し、その亀裂パターンを再現する
モデルを作成し、コークスケーキと炉壁の間のクリアラ
ンスを1mm(実炉条件での推定値)として解析例1の
方法と同様にシミュレーション計算を行なったところ、
炉壁全体にかかる圧力が250kPa、局部圧力最大値
が2.2MPaとなった。この結果より、この条件で操
業を行なうことは好ましくなかったものと判断された。
【0048】2.改善例1 この状況に対し、原料石炭の種類を一部変更して同様に
試験炉で乾留を行なって得られた亀裂パターンにより再
度シミュレーションを行なったところ、炉壁全体にかか
る圧力が80kPa、局部圧力最大値が0.7MPaと
なり、この配合炭で操業を行なうことができることが推
定され、実操業を行なった結果、問題なく操業可能であ
った。
【0049】3.改善例2 各コークス塊の構成粒子の数を増やすことによって塊の
炉長方向の長さを計算例よりも10%大きくする以外は
上記シミュレーション例と同様の条件を用いて計算を行
なったところ、炉壁全体にかかる圧力が110kPa、
局部圧力最大値が1.1MPaとなった。従来の操業上
の知見によれば、乾留温度を80℃低下させればコーク
スの粒径が約10%増加することが知られているため、
シミュレーション例の場合よりも乾留温度を80℃低下
させた条件で実炉操業を行なったところ、問題なく操業
可能であった。
【0050】4.改善例3 クリアランスを3mmとした他は上記シミュレーション
例と同じ条件で計算を行なったところ、炉壁全体にかか
る圧力が90kPa、局部圧力最大値が0.6MPaと
なった。従来の操業上の知見によればクリアランスを約
2mm増加させるには置き時間を2時間延長すればよい
ことが知られていたため、実炉において置き時間を2時
間延長して操業を行なったところ問題なく操業可能であ
った。
【0051】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、コーク
ス押出し時に炭化室壁にかかる荷重または圧力を離散要
素法を用いた計算によりシミュレーションすることによ
り、実炉における炉壁荷重または圧力を直接推算するこ
と、および炉壁にかかる局部荷重または圧力を推算する
ことが可能になる。また、これらのシミュレーション値
が炭化室炉壁の状態によって決まる許容荷重または許容
圧力値以下になるように操業条件を制御する効果的なコ
ークス炉の操業を行うことができる。このことにより、
実炉における炉壁圧力の推定精度が従来の方法に比べて
向上し、炉壁に損傷をもたらすような過大な圧力がかか
ることを防止でき、また、炉壁にかかる荷重ないしは圧
力の増大によって引き起こされる押詰まりを未然に予測
することも可能となり、コークス炉の安定操業に寄与す
るという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される水平室炉式コークス炉の一
例を示す垂直断面図。
【図2】図1の水平室炉式コークス炉の水平断面図。
【図3】離散要素法プログラムの計算アルゴリズムを模
式的に示す図。
【図4】要素粒子の組み合わせて作成したコークス塊モ
デルの例。
【図5】コークス炉炭化室のモデルの例(コークス出口
側を塞いだ例)。
【図6】コークス炉炭化室内に配置されたコークス塊モ
デルの例(拡大図)。
【符号の説明】
1……炭化室 2……フリュー 3……炉壁 4……装入孔 5……燃焼室 6……炉蓋
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 深田 喜代志 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 角谷 秀紀 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水平室炉式コークス炉において製造され
    たコークスを押出し機により炭化室から押出す際に炭化
    室の少なくとも一方側の炉壁全体にかかる荷重または圧
    力、および、炭化室炉壁の局部にかかる荷重または圧力
    を、離散要素法を用いた計算によりシミュレーションす
    ることを特徴とするコークス炉における炭化室炉壁荷重
    または圧力のシミュレーション方法。
  2. 【請求項2】 水平室炉式コークス炉において製造され
    たコークスを押出し機により炭化室から押出す際に炭化
    室の少なくとも一方側の炉壁全体にかかる荷重または圧
    力、および、炭化室炉壁の局部にかかる荷重または圧力
    を、離散要素法を用いた計算によりシミュレーション
    し、これらのシミュレーション値が炭化室炉壁の状態に
    よって決まる許容荷重または許容圧力値以下になるよう
    に操業条件を制御することを特徴とするコークス炉の操
    業方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2003041263A (ja) * 2001-07-30 2003-02-13 Kawasaki Steel Corp 冶金用コークスの冷間強度の推定方法
JP2008095121A (ja) * 2008-01-04 2008-04-24 Nippon Steel Corp 高炉用コークス製造用の原料配合炭の評価方法
JP2008189772A (ja) * 2007-02-02 2008-08-21 Nippon Steel Corp コークス押出し負荷の評価方法

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