JP2000125499A - 絶縁コイルの固定部材、該固定部材を備えた回転電機及び絶縁コイルの固定方法 - Google Patents

絶縁コイルの固定部材、該固定部材を備えた回転電機及び絶縁コイルの固定方法

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JP2000125499A JP10291072A JP29107298A JP2000125499A JP 2000125499 A JP2000125499 A JP 2000125499A JP 10291072 A JP10291072 A JP 10291072A JP 29107298 A JP29107298 A JP 29107298A JP 2000125499 A JP2000125499 A JP 2000125499A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱伝導性を高めて絶縁コイルの温度上昇を抑
制し、絶縁コイルの性能低下を防ぐ。 【解決手段】 本発明の絶縁コイルの固定部材5は、補
強シート層であるアラミド繊維紙18とゴム状弾性体層
である高熱伝導性シリコーンゴム19との積層シートか
らなる。このため、ゴム状の弾性体層若しくは無機粉体
を充填した弾性体層のみからなる固定部材と比較して強
度が高く、鉄心を構成する薄い鋼板のエッジとの接触に
よって引き裂けが生じることによる絶縁コイルからの剥
離、脱落の発生が低減する。また、補強シート層とゴム
状弾性体層とからなるため、スロット内面の凹凸に追従
して隙間が生じにくく確実に絶縁コイルを保持できると
共に、熱伝導効率が優れている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転電機における
絶縁コイルの固定部材、該固定部材を備えた回転電機及
び絶縁コイルの固定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電動機や発電機等の回転電機は、絶縁物
と導体とからなる絶縁コイルを、鉄心のスロット内に収
納して構成されている。この絶縁コイルには、運転中、
主として、半径方向に作用する電磁力や長手方向に作用
する熱伸縮力等の各種の力が作用する。このため、通常
は、これら各種の力に耐えて、絶縁コイルの機能を維持
する目的で、電動機や小容量の発電機では、絶縁コイル
を鉄心のスロット内に収納した後に、樹脂の含浸・硬化
処理を行うようにしている。
【0003】しかしながら、サイズの大きな発電機で
は、コイル収納後の樹脂の含浸が困難であるため、樹脂
の含浸・硬化等の処理を予め行った絶縁コイルを鉄心の
スロット内に収納するようにしている。
【0004】図8は、この種の従来の回転電機のステー
タの一例を示す部分断面斜視図であり、予め樹脂の含浸
・硬化等の処理を行った、絶縁物26と導体27とから
なる絶縁コイル28を、複数の鋼板1を積層してなる鉄
心2のスロット3内に収納している。絶縁コイル28
は、図8の上下面に位置するFRPからなるスペーサ2
9とこれらのスペーサ29に図8の上下方向に圧縮力を
与える楔30によって固定されている。また、絶縁コイ
ル28は成形寸法にばらつきがあり、また、鉄心2のス
ロット3の寸法も一様でないため、一般にスロット3は
余裕を持たせた寸法で形成されている。従って、絶縁コ
イル28の側面とスロット3の内面との間には間隙が生
じる。そのため、図8に示した従来例では、絶縁コイル
28の側面片側に残存する間隙22に、その大きさに応
じたFRPシート20を挿入することにより、絶縁コイ
ル28を固定している。
【0005】また、図9に示したように、上記FRPシ
ートに代えて波状の断面を有するFRP板21を間隙2
2に挿入し、このFRP板21の形状回復力及びその摩
擦力によって絶縁コイル28を固定している例もある。
【0006】また、図10に示したように、予め絶縁コ
イル28の側面に、無機物を充填した弾性体層31、無
機物が充填されてない弾性体層32からなる固定部材3
3を形成し、この固定部材33と共に絶縁コイル28を
スロット3内に挿入し、二つの弾性体層31,32から
なる固定部材33の反発力、及び鉄心2との摩擦力によ
って、絶縁コイル28を固定している例(カナダ特許第
932013号)や、さらに、特願平8−243780
号として提案された、無機物の形状を短繊維状にして絶
縁コイル28から鉄心2への熱伝達性能を向上させたも
のもある。
【0007】また、図11に示したように、片面を波状
に成形した弾性体のシート34を絶縁コイル28の側面
に形成し、見かけ状の弾性率を低下させて挿入を容易に
している例(米国特許第4008409号)もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】絶縁コイル28とスロ
ット3との間に生じる間隙22は、高い熱抵抗を有し、
運転中に導体27内で発生したジュール熱を鉄心2側に
伝え難くし、絶縁コイル28の温度上昇をもたらし、そ
の結果、絶縁物26を構成する有機物の電気的、機械的
特性の劣化を促進するため、上記のように間隙22を低
減することは回転電機の性能向上につながる。
【0009】しかしながら、図8に示した手段は、FR
Pシート20の剛性が高く、該FRPシート20では、
積層した薄い鋼板1から構成されることによって鉄心2
のスロット3内面に形成される凹凸に追従することがで
きない。このため、FRPシート20を充填しても微少
な空隙が残り、鉄心2への熱伝導を阻害することがあ
る。また、FRPシート20は、異なる厚さを有するの
ものを連続的に用意することは不可能であるため、実使
用上、用意した所定厚さのFRPシート20で調整でき
ない場合には、挿入しないこともある。従って、この場
合には間隙22により広範囲で熱伝導が阻害されること
になると共に、絶縁コイル28の固定力も低下させるこ
とになる。
【0010】図9に示した手段を用いた場合には、間隙
22の寸法変化に対しても十分対応することができる
が、その波状断面によって、絶縁コイル28とスロット
3との間に空隙が残ることになり、熱伝導性能の点から
は好ましくない。
【0011】図10に示した手段は、無機物を配合する
弾性体層31及び配合しない弾性体層32を用いること
により、スロット3内の凹凸に追従して空隙を残さない
構造となっているが、無機物や金属に比較して熱伝導性
に劣る有機物のみの弾性体層32が存在するため、この
弾性体層32で熱伝導が阻害されることがある。また、
絶縁コイル28に弾性体層31,32からなる固定部材
33を形成若しくは貼り付けて鉄心2のスロット3に挿
入すると、運転中に種々の振動が絶縁コイル28に加わ
った際に、薄い鋼板1のエッジによって亀裂を生じて絶
縁コイル28の表面から剥離したり脱落したりし、長期
運転することにより、結果として広い領域にわたって空
隙が生じるおそれがある。短繊維等を充填した場合も同
様で、亀裂を生じて、空隙を生じるおそれがある。
【0012】図11に示した手段の場合には、表面が波
状の弾性体層34を絶縁コイル28上に形成して挿入す
るため、絶縁コイル28と鉄心2との間に空隙が生じて
熱伝導を阻害する可能性がある。
【0013】本発明は上記した事情に鑑みなされたもの
であり、絶縁コイルの固定力を維持しつつ、熱伝導性を
高めて絶縁コイルの温度上昇を抑制し、絶縁コイルの性
能低下を防ぐことが可能で、信頼性が長期にわたって高
い回転電機における絶縁コイルの固定部材、該固定部材
を備えた回転電機及び絶縁コイルの固定方法を提供する
ことを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、請求項1記載の絶縁コイルの固定部材は、予め作製
した絶縁コイルを回転電機の鉄心のスロット内に挿入し
て固定する際、絶縁コイルの側面とスロットの内面との
間に位置して絶縁コイルをスロット内に固定する回転電
機における絶縁コイルの固定部材において、1以上の補
強シート層と、各補強シート層の少なくとも片面に積層
されるゴム状弾性体層とを有してなる積層シートであ
る。
【0015】請求項1によれば、絶縁コイルの固定部材
が、1以上の補強シート層とゴム状弾性体層との積層シ
ートからなるため、ゴム状の弾性体層若しくは無機粉体
を充填した弾性体層のみからなる固定部材と比較して強
度が高く、鉄心を構成する薄い鋼板のエッジとの接触に
よって引き裂けが生じることによる絶縁コイルからの剥
離、脱落の発生が低減する。また、補強シート層とゴム
状弾性体層とからなるため、スロット内面の凹凸に追従
して隙間が生じにくく確実に絶縁コイルを保持できると
共に、熱伝導効率が優れている。しかも、絶縁コイルか
らの剥離や脱落の発生が少ないため、長期にわたって安
定して絶縁コイルの温度上昇を抑制でき、この固定部材
を用いることにより信頼性の高い回転電機を製造するこ
とができる。
【0016】請求項2記載の絶縁コイルの固定部材は、
請求項1記載の絶縁コイルの固定部材であって、前記補
強シート層が、プラスチックフィルム、無機材料、有機
材料若しくはその両方からなる織布又は不織布、及びカ
レンダー処理を行った無機材料、有機材料若しくはその
両方からなる不織布、から選ばれる。
【0017】請求項2によれば、補強シート層として、
プラスチックフィルム、無機材料、有機材料若しくはそ
の両方からなる織布又は不織布、及び、カレンダー処理
を行った該不織布、から選ばれるものを選択することに
より、引き裂けの発生率をより低減し、より長期にわた
って安定して絶縁コイルの温度上昇を抑制することがで
きる。
【0018】請求項3記載の絶縁コイルの固定部材は、
請求項1又は2記載の回転電機における絶縁コイルの固
定部材であって、前記ゴム状弾性体層は、高熱伝導性の
無機充填材、金属粉体のうちのいずれか少なくとも一方
が充填されてなる。
【0019】請求項3によれば、ゴム状弾性体層に、高
熱伝導性の無機充填材、金属粉体のうちのいずれか少な
くとも一方が充填されているため、熱伝導性がさらに向
上する。
【0020】請求項4記載の絶縁コイルの固定部材は、
請求項1〜4のいずれか1に記載の絶縁コイルの固定部
材であって、最外層を形成するゴム状弾性体層に、スリ
ット又は窪みが設けられている。
【0021】請求項4によれば、最外層を形成するゴム
状弾性体層にスリット又は窪みが設けられているため、
見かけ上の弾性率が低下し、絶縁コイルのスロットへの
挿入が容易になる。このスリットを有する固定部材を、
絶縁コイルに、スロットへの挿入方向に対して角度を有
する方向にスリットの方向が一致するようにする被覆し
て挿入すれば、挿入時にスリットが鉄心のエッジに引っ
かからず、ゴム状弾性体層の脱落、剥離を抑制でき、未
挿入部分の発生を低減し、絶縁コイルの温度上昇をより
確実に抑制することができる。また、補強シート層を有
しているため、ゴム状弾性体のみからなるものと比較し
て挿入時の引き裂けの発生が少ない。
【0022】請求項5記載の絶縁コイルの固定部材は、
請求項1又は2記載の回転電機における絶縁コイルの固
定部材であって、積層方向の体積抵抗率が100 〜10
5 Ωcmである。
【0023】請求項5によれば、固定部材である積層シ
ートの積層方向の体積抵抗率が100 〜105 Ωcmので
あるため、絶縁コイルの最外層に同じ範囲内の体積抵抗
率を持つ半導電層を設けることにより、絶縁コイル表面
と鉄心間を同電位に保ち、両者間の部分放電を抑制する
ことができ、絶縁コイルに発生した熱をさらに効率よく
鉄心に伝導することができる。
【0024】請求項6記載の本発明の回転電機は、予め
作製した絶縁コイルが、請求項1〜5のいずれか1に記
載の絶縁コイルの固定部材によって固定されていること
を特徴とする。
【0025】請求項6によれば、絶縁コイルの固定部材
として、1以上の補強シート層とゴム状弾性体層との積
層シートからなるものを用いているため、ゴム状の弾性
体層若しくは無機粉体を充填した弾性体層のみからなる
固定部材と比較して強度が高く、鉄心を構成する薄い鋼
板のエッジとの接触によって引き裂けが生じることによ
る絶縁コイルからの剥離、脱落の発生が低減する。ま
た、補強シート層とゴム状弾性体層とからなるため、ス
ロット内面の凹凸に追従して隙間が生じにくく確実に絶
縁コイルを保持できると共に、熱伝導効率が優れてい
る。しかも、絶縁コイルからの剥離や脱落の発生が少な
いため、長期にわたって安定して絶縁コイルの温度上昇
を抑制でき、信頼性の高い回転電機を提供することがで
きる。
【0026】請求項7記載の本発明の回転電機は、請求
項6記載の回転電機であって、絶縁コイルの最外層に、
体積抵抗率が100 〜105 Ωcmである半導電層が設け
られている。
【0027】請求項7によれば、絶縁コイルの最外層
に、体積抵抗率が100 〜105 Ωcmである半導電層が
設けられているため、固定部材である積層シートとし
て、積層方向の体積抵抗率が同じ範囲内のものを使用す
れば、絶縁コイル表面と鉄心間を同電位に保ち、両者間
の部分放電を抑制することができ、絶縁コイルに発生し
た熱をさらに効率よく鉄心に伝導することができる。
【0028】請求項8記載の回転電機は、請求項7又は
8記載の回転電機であって、前記固定部材とスロット内
面との間に、高熱伝導性のグリース、オイルコンパウン
ド層、又は無機潤滑剤層が形成されている。
【0029】請求項8によれば、固定部材とスロット内
面との間に、高熱伝導性のグリース、オイルコンパウン
ド層、又は無機潤滑剤層が形成されているため、スロッ
ト内面や絶縁コイルの凹凸との密着性を高めることがで
き、熱伝導性の向上に資する。また、スロット内面と固
定部材である積層シート表面との摩擦を低減できるた
め、積層シート表面の引き裂けの発生をさらに低減する
ことができる。
【0030】請求項9記載の絶縁コイルの固定方法は、
予め作製した絶縁コイルを回転電機の鉄心のスロット内
に挿入して固定する際、請求項1〜5のいずれか1に記
載の絶縁コイルの固定部材により、絶縁コイルの少なく
とも両側面を被覆して挿入する。
【0031】請求項9によれば、予め作製した絶縁コイ
ルを回転電機の鉄心のスロット内に挿入して固定する
際、請求項1〜5のいずれか1に記載の絶縁コイルの固
定部材により、絶縁コイルの少なくとも両側面を被覆し
て挿入するため、挿入時にスロット内面との間に生じる
摩擦により、ゴム状弾性体層に引き裂けが発生すること
を抑制でき、信頼度の高い回転電機を作製することがで
きる。
【0032】請求項10記載の本発明の絶縁コイルの固
定方法は、請求項9記載の絶縁コイルの固定方法におい
て、スロット内面との対向面がゴム状弾性体層となるよ
うに被覆する。
【0033】請求項10によれば、絶縁コイルに対し、
固定部材を、スロット内面との対向面がゴム状弾性体層
となるように被覆して実施するため、スロット内面の凹
凸に追従して密着性が向上し、熱伝導性をより良好なも
のとすることができる。
【0034】請求項11記載の本発明の絶縁コイルの固
定方法は、請求項9記載の絶縁コイルの固定方法におい
て、スロット内面との対向面が補強シート層となるよう
に被覆する。
【0035】請求項11によれば、絶縁コイルに対し、
固定部材を、スロット内面との対向面が補強シート層と
なるように被覆して実施するため、挿入時や運転時の引
き裂き強度がさらに高まる。
【0036】請求項12記載の本発明の絶縁コイルの固
定方法は、請求項9又は10記載の絶縁コイルの固定方
法において、絶縁コイルの固定部材として、最外層を形
成するゴム状弾性体層にスリットが設けられているもの
を使用する際、絶縁コイルの挿入方向に対して該スリッ
トが角度を有するように被覆する。
【0037】請求項12によれば、絶縁コイルの固定部
材として、最外層を形成するゴム状弾性体層にスリット
が設けられているものを使用する際、絶縁コイルの挿入
方向に対して該スリットが角度を有するように被覆して
実施するため、挿入時にスリットが鉄心のエッジに引っ
かからず、ゴム状弾性体層の脱落、剥離を抑制でき、未
挿入部分の発生を低減し、絶縁コイルの温度上昇をより
確実に抑制することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】次に、図面に示した実施の形態に
基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本発
明の絶縁コイルの固定部材の一の実施の形態を模式的に
示す外観斜視図である。図において、5は固定部材であ
る積層シートを示す。
【0039】この積層シート5は、カレンダー処理を行
った不織布であるアラミド繊維紙18を有して構成され
る。このアラミド繊維紙18は、本実施の形態における
補強シート層を構成するものである。この補強シート層
であるアラミド繊維紙18の両面には、ゴム状弾性体層
を構成する高熱伝導性シリコーンゴム19が積層され
る。従って、本実施の形態では、アラミド繊維紙18
は、高熱伝導性シリコーンゴム19で挟み込まれた形状
となっているが、これに限定されるものではなく、片面
のみに高熱伝導性シリコーンゴム19が積層されたもの
であってもよい。また、補強シート層を複数枚使用し、
各補強シート層の少なくとも片面にゴム状弾性体層を設
けることもできる。
【0040】本実施の形態では、補強シート層としてア
ラミド繊維紙18を使用しているが、これに限定される
ものでないことはもちろんである。補強シート層は、絶
縁コイルの挿入時又は使用時におけるゴム状弾性体の引
き裂きに伴う剥離、脱落を防止に資することができ、か
つ絶縁コイルとスロットとの隙間に挿入し易いよう、柔
軟なものであればよく、例えば、無機材料、有機材料若
しくはその両方からなる織布若しくは不織布、カレンダ
ー処理を行った無機材料、有機材料若しくはその両方か
らなる不織布、又はプラスチックフィルムを用いること
ができる。また、図2に示したように、カレンダー処理
を施してないアラミド紙18’を用いることも可能であ
る。
【0041】ゴム状弾性体としては、図1及び図2に示
したような高熱伝導性シリコーンゴム19に限るもので
はない。また、高熱伝導性の無機充填材と金属粉体のい
ずれか一方若しくは両方を含有するものであることが好
ましい。
【0042】積層シート5の厚みは特に限定されるもの
ではなく、使用されるスロットの寸法、絶縁コイルの寸
法により種々の厚みが適宜選択されるものであるが、積
層方向の体積抵抗率は、100 〜105 Ωcmのであるこ
とが好ましい。絶縁コイルの最外層に、同範囲の図示し
ない半導電層を設けると、絶縁コイル表面と鉄心間を同
電位に保ち、両者間の部分放電を抑制することができ
る。
【0043】また、補強シート層とゴム状弾性体層から
なる積層シート5の最外層、すなわち、スロット内面と
接触する層がゴム状弾性体層からなる場合には、図2に
示すように、スリット25を有することが好ましい。こ
のスリット25を有することにより見かけ上の弾性率が
低下し、絶縁コイルのスロットへの挿入が容易になる。
なお、スリット25を設けた場合には、固定部材である
積層シート5を絶縁コイルに被覆する際、該絶縁コイル
のスロットへの挿入方向に対して角度を有する方向にス
リット25の形成方向が一致するように被覆して挿入す
ることが好ましい。これにより、挿入時にスリット25
が鉄心のエッジに引っかからず、ゴム状弾性体層の脱
落、剥離を抑制でき、未挿入部分の発生を低減すること
ができる。スリット25は、ゴム状弾性体層である高熱
伝導性シリコーンゴム19を厚み方向に貫通し、アラミ
ド紙18’に到達する程度の深さで設けられていること
が好ましく、本実施の形態のように補強シート層である
アラミド紙18’の両面に高熱伝導性シリコーンゴム1
9を形成した場合には、そのいずれにもスリット25を
形成することが好ましい。
【0044】このようにスリット25を設けた場合に、
絶縁コイルのスロットへの挿入方向に対して所定の角度
をなす方向に該スリット25が一致するように配設する
に当たっては、絶縁コイルに該積層シート5を被覆させ
際にこの方向性に留意すればよい。なお。絶縁コイルの
スロットへの挿入方向に対する所定の角度としては約4
5度が好ましい。
【0045】また、最外層にゴム状弾性体層が設けられ
る場合、上記したようにスリット25を形成するのでは
なく、その表面に複数の窪みを設けてもよい。これによ
っても、ゴム状弾性体層の見かけ上の弾性率を低下させ
ることができ、絶縁コイルのスロットへの挿入が容易に
なる。また、図2に示したようなスリット25を設けた
場合と比較して挿入時の鉄心のエッジへの引っかかりの
発生をより低減することができる。
【0046】上記した絶縁コイルの固定部材である積層
シート5は、予め作製した絶縁コイルの少なくとも両側
面を被覆するように設けられる。そしてこのように固定
部材により被覆された絶縁コイルが回転電機の鉄心のス
ロット内に挿入され、固定される。
【0047】積層シート5は、絶縁コイルの少なくとも
両側面を被覆する形で設けられていればよいが、絶縁コ
イルの下面も被覆するように設けてもよい。但し、本実
施の形態においても、絶縁コイル及び固定部材を配設し
た後、上記従来の技術の項で説明したように、楔を圧入
する。従って、絶縁コイルの両側面だけを被覆する構成
とすれば、絶縁コイルの上下面の両方かいずれかの面も
ゴム状弾性体層を有する積層シート5により被覆した構
成と比較して、楔の圧縮力に起因する積層シート5の絶
縁コイル上下方向のクリープ変形を抑制することがで
き、絶縁コイルをより確実に固定することができる。
【0048】積層シート5の絶縁コイルへの被覆手段は
限定されるものではなく、接着剤等のシール剤(図示せ
ず)を用いて貼り付けたり巻き付けたりしてもよいが、
このようなシール剤を設けずに被覆した場合には、接着
剤等が有する熱伝導性、機械特性あるいは耐熱性に左右
されず、信頼性の高い回転電機を作製することができ
る。
【0049】積層シート5は、上記したように補強シー
ト層に対してゴム状弾性体層が積層されて構成されてい
るが、これを絶縁コイルに被覆する際には、スロット内
面に面する側に、ゴム状弾性体層、本実施の形態では高
熱伝導性シリコーンゴム層19が位置するように被覆す
ることが好ましい。スロットを形成する鉄心は複数の鋼
板の積層体からなることから、スロットの内面には複数
の凹凸が形成されている。従って、この凹凸面に対して
ゴム状弾性体層が接すれば、その弾性力によって凹凸面
に密着し空隙が生じにくくなるという利点を有する。
【0050】一方、積層シート5を、そのゴム状弾性体
層である高熱伝導性シリコーンゴム層19がスロット内
面に面する側に位置するように設けることも可能であ
る。この場合には、絶縁コイルの周囲にこの積層シート
5を被覆してスロット内に挿入する際や運転時の振動に
より生ずるスロット内面との摩擦による積層シート層5
の引き裂き強度を、ゴム状弾性体層をスロット内面と対
面させた場合と比較して高くすることができるという利
点を有する。補強シート層とゴム状弾性体層のいずれを
スロット内面と対面させるかは、回転電機の種類、性
能、あるいは、大きさや出力などに応じて選択される。
【0051】積層シート5によって被覆した絶縁コイル
をスロット内に配設した際、該積層シート5とスロット
内面との間には、高熱伝導性のグリース、オイルコンパ
ウンド層、無機潤滑剤層のいずれかを介在させることが
好ましい。これにより、絶縁コイル表面やスロット内面
との密着性が高まり熱伝導性をより向上させることがで
きる。高熱伝導性のグリース、オイルコンパウンド層、
無機潤滑剤層のいずれかを介在させる手段としては、典
型的には、予め積層シート5の表面にこれらを塗布する
手段を用いることができる。但し、スロット内面にこれ
らを予め塗布する構成とすれば、積層シート5により被
覆された絶縁コイル自体の運搬や保管時にグリース等が
剥がれたり損傷したりすることを防止できるという利点
がある。
【0052】
【実施例】次に、図3〜図7に示した試験モデルを用い
た、本実施の形態にかかる固定部材を用いた場合の熱伝
導性及び引き裂き強度についての実施例を説明する。
【0053】(実施例1)図3は、本発明の一の実施例
にかかる固定部材を用いた回転電機の試験モデルを示す
部分断面図である。本モデルは、積層された鋼板1から
構成された鉄心2と、該鉄心2に形成されたスロット3
と、絶縁コイルを模擬したアルミブロック4と、アルミ
ブロック4に巻き付けた固定部材である積層シート5と
を有して構成されている。鉄心2及びアルミブロック4
には、熱伝導性を確認するため、図3に示すように、ア
ルミブロック4を中心として一方側に熱電対6,7,
8,9,10を設置し、他方側に熱電対11,12,1
3,14,15を設置した。また、スロット3における
アルミブロック4の上側及び下側には、熱絶縁物である
発泡ウレタン16,17をそれぞれ挿入配置した。な
お、図示しないが、アルミブロック4の長さ方向両端側
にも発泡ウレタンを配設し、アルミブロック4の側面、
すなわち測定面以外からの熱放散が極力少なくなる構成
とした。
【0054】また、本実施例では、本発明の固定部材を
用いた場合の熱伝導性を確認するに当たって、絶縁コイ
ルにおける絶縁層の影響を除去した形で測定した場合と
同等となるよう、絶縁コイルの絶縁層に相当するものを
設けないアルミブロック4を用いている。
【0055】本実施例で用いた固定部材である積層シー
ト5は、図1に示した、導電性を付与したカレンダー処
理済みのアラミド繊維紙18を高熱伝導性シリコーンゴ
ム19で挟んだ構成のものである。
【0056】そして、かかる構成の試験モデルのアルミ
ブロック4に対し、シーズヒーターを用いて300Wの
熱量を入力し、図3に示した各熱電対によって各部位の
温度を測定し、この温度から、アルミブロック4の両側
面の総合熱通過率を算出した。結果を表1に示す。
【0057】(比較例1)図4は、一の従来技術にかか
る固定部材を用いた場合の熱伝導性を確認するために行
った回転電機の試験モデルの部分断面図である。本モデ
ルでは、図3の積層シート5に代えて、FRPシート2
0をアルミブロック4の片面のみに用いているが、その
他の構成、条件は図3に示した実施例1の場合と同様で
ある。なお、FRPシート20は、積層されたガラスク
ロスとエポキシ樹脂から構成されている。
【0058】図4に示す試験モデルのアルミブロック4
に対し、シーズヒーターを用いて、300Wの熱量を入
力し、図4に示した各熱電対によって各部位の温度を測
定し、この温度から、アルミブロック4の両側面の総合
熱通過率を算出した。結果を表1に示す。
【0059】(比較例2)図5は、他の従来技術にかか
る固定部材を用いた場合の熱伝導性を確認するために行
った回転電機の試験モデルの部分断面図である。本モデ
ルでは、図4のFRPシート20に代えて、波状断面の
FRPシート21をアルミブロック4の片面のみに用い
ているが、その他の構成、条件は図4に示した比較例1
の場合と同様である。なお、波状断面のFRPシート2
1は、比較例1と同様、積層されたガラスクロスとエポ
キシ樹脂から構成されている。
【0060】図5に示す試験モデルのアルミブロック4
に対し、シーズヒーターを用いて、300Wの熱量を入
力し、図5に示した各熱電対によって各部位の温度を測
定し、この温度から、アルミブロック4の両側面の総合
熱通過率を算出した。結果を表1に示す。
【0061】(比較例3)図6は、さらに他の従来技術
にかかる固定部材を用いた場合の熱伝導性を確認するた
めに行った回転電機の試験モデルの部分断面図である。
本モデルでは、アルミブロック4の側面とスロット3の
内面との間に固定部材を配設しないで、間隙22がその
まま残されているものである。これは、製造時におい
て、FRPシートの厚さ寸法と間隙22の寸法との兼ね
合いによって部分的に挿入できなかった場合を模したも
のである。なお、間隙22は、スロット3の内面とアル
ミブロック4の側面との間に部分的にFRPシート(図
示せず)を挿入することによって形成した。
【0062】図6に示す試験モデルのアルミブロック4
に対し、シーズヒーターを用いて、300Wの熱量を入
力し、図6に示した各熱電対によって各部位の温度を測
定し、この温度から、アルミブロック4の両側面の総合
熱通過率を算出した。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】 表1から明らかなように、実施例1によれば、比較例
1,2,3に比較して、総合通過率が高く、絶縁コイル
に生じたジュール熱を効率よく鉄心に伝えて温度上昇を
抑制できることがわかる。
【0064】(実施例2)図7は、本発明の他の実施例
にかかる固定部材を用いた回転電機の試験モデルを示す
部分断面図である。本モデルは、積層された鋼板1から
構成された鉄心2と、該鉄心2に形成されたスロット3
と、絶縁コイルを模擬したアルミブロック4と、アルミ
ブロック4に巻き付けた積層シート5とを有して構成さ
れている。なお、使用した積層シート5は、実施例1と
同様、図1に示した、導電性を付与したカレンダー処理
済みのアラミド繊維紙18を高熱伝導性シリコーンゴム
19で挟んだ構成のものである。
【0065】また、本実施例では、積層シート5を設け
たアルミブロック4をスロット3内に挿入する前に、ス
ロット3の両側内面に高熱伝導性のシリコーングリース
(熱伝導率0.8W/mk)23を塗布した。従って、
アルミブロック4をスロット3内に挿入配設した場合に
は、積層シート5とスロット3との間にシリコーングリ
ース23が介在されていることになる。
【0066】熱伝導性を確認するため、鉄心2及びアル
ミブロック4に、実施例1と同様、アルミブロック4の
側面に垂直な方向に4つの熱電対からなるセット24を
設置した。この熱電対のセット24は、アルミブロック
4の長手方向に3セット、また、アルミブロック4を挟
んで反対側に3セットの計6セット設置し、アルミブロ
ック4やスロット3の寸法精度に起因する総合熱通過率
の長手方向における変化を測定した。なお、その他の試
験モデルの構成は実施例1と同様である。
【0067】そして、かかる構成の試験モデルのアルミ
ブロック4に対し、シーズヒーターを用いて300Wの
熱量を入力し、図7に示した各熱電対によって各部位の
温度を測定し、この温度から、アルミブロック4の両側
面の総合熱通過率の長手方向における変化を算出した。
結果を表2に示す。
【0068】(比較例4)スロット3の内面に高熱伝導
性のシリコーングリースを塗布しなかったことを除いて
実施例2と同様の試験モデルに対し、シーズヒートを用
いて300Wの熱量を入力し、各熱電対によって各部位
の温度を測定し、この温度から、アルミブロック4の両
側面の総合熱通過率の長手方向における変化を算出し
た。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】 表2から明らかなように、測定位置1,2においては、
総合熱通過率に顕著な違いはみられないが、測定位置3
においては、実施例2の方が高い値となっており、高熱
伝導性のグリースによって絶縁コイルに生じたジュール
熱を特に効率よく鉄心に伝えて温度上昇を抑制できるこ
とがわかる。
【0070】(実施例3)図2に示した他の実施例にか
かる積層シート5を用いてスリット25を有する場合の
引き裂き強度について試験した。この積層シート5は、
カレンダー処理を施していないアラミド紙18’を高熱
伝導性シリコーンゴム19で挟んだ構造を有している。
両面の高熱伝導性シリコーンゴム19は、アラミド紙1
8’の表面まで到達する深さで、10cm当たり20本の
スリット25を有している。
【0071】かかる構成の積層シート5を、絶縁コイル
を模擬したアルミブロック4に、スリット25の向きが
挿入方向に対して45度の角度をなすように巻き付け、
図3と同様なスロット3に挿入したところ、アルミブロ
ック4を、積層シート5の引き裂けを伴わずにスロット
3に挿入することができた。なお、アルミブロック4の
底面の角には、耐引き裂け性の有無を明らかにするため
に面取りを施さなかった。
【0072】(比較例5)実施例3の積層シート5を、
スリット25がアルミブロック4の挿入方向に対し垂直
となるようにアルミブロック4に巻き付けてスロット3
に挿入した。その他の条件は全て実施例3と同様であ
る。
【0073】この結果、アルミブロック4の挿入時に、
積層シート5は、アルミブロック4の底面の角に接触す
る部分で引き裂けを生じた。このため、挿入完了時には
積層シート5の1/5程度がはみ出て、アルミブロック
4とスロット3の内面との間に空隙を生じた。
【0074】以上のことから、積層シート5の表面にス
リット25を設け、挿入方向と45度の角度をなすよう
にアルミブロック4に巻き付けることにより、スリット
25が挿入方向と垂直である場合と比較して、アルミブ
ロック4とスリット3との間に引き裂けによる空隙が生
じにくい。従って、このような構成とすれば、絶縁コイ
ルに生じたジュール熱を効率よく伝え、温度上昇を抑制
できることが確認できた。
【0075】
【発明の効果】請求項1記載の本発明によれば、絶縁コ
イルの固定部材が、1以上の補強シート層とゴム状弾性
体層との積層シートからなるため、ゴム状の弾性体層若
しくは無機粉体を充填した弾性体層のみからなる固定部
材と比較して強度が高く、鉄心を構成する薄い鋼板のエ
ッジとの接触によって引き裂けが生じることによる絶縁
コイルからの剥離、脱落の発生が低減する。また、補強
シート層とゴム状弾性体層とからなるため、スロット内
面の凹凸に追従して隙間が生じにくく確実に絶縁コイル
を保持できると共に、熱伝導効率が優れている。しか
も、絶縁コイルからの剥離や脱落の発生が少ないため、
長期にわたって安定して絶縁コイルの温度上昇を抑制で
き、この固定部材を用いることにより信頼性の高い回転
電機を製造することができる。
【0076】請求項2記載の本発明によれば、補強シー
ト層として、プラスチックフィルム、無機材料、有機材
料若しくはその両方からなる織布又は不織布、及び、カ
レンダー処理を行った該不織布、から選ばれるものを選
択することにより、引き裂けの発生率をより低減し、よ
り長期にわたって安定して絶縁コイルの温度上昇を抑制
することができる。
【0077】請求項3記載の本発明によれば、固定部材
である積層シートの積層方向の体積抵抗率が100〜1
05Ωcmのであるため、絶縁コイルの最外層に同じ範囲
内の体積抵抗率を持つ半導電層を設けることにより、絶
縁コイル表面と鉄心間を同電位に保ち、両者間の部分放
電を抑制することができ、絶縁コイルに発生した熱をさ
らに効率よく鉄心に伝導することができる。
【0078】請求項4記載の本発明によれば、ゴム状弾
性体層に、高熱伝導性の無機充填材、金属粉体のうちの
いずれか少なくとも一方が充填されているため、熱伝導
性がさらに向上する。
【0079】請求項5記載の本発明によれば、最外層を
形成するゴム状弾性体層に、スリットが設けられている
ため、見かけ上の弾性率が低下し、絶縁コイルのスロッ
トへの挿入が容易になる。このスリットを有する固定部
材を、絶縁コイルに、スロットへの挿入方向に対して角
度を有する方向にスリットの方向が一致するように被覆
して挿入すれば、挿入時にスリットが鉄心のエッジに引
っかからず、ゴム状弾性体層の脱落、剥離を抑制でき、
未挿入部分の発生を低減し、絶縁コイルの温度上昇をよ
り確実に抑制することができる。また、補強シート層を
有しているため、ゴム状弾性体のみからなるものと比較
して挿入時の引き裂けの発生が少ない。
【0080】請求項6記載の本発明によれば、最外層を
形成するゴム状弾性体層の表面に窪みが設けられている
ため、見かけ上の弾性率が低下し、絶縁コイルのスロッ
トへの挿入が容易になると共に、スリットを設けた場合
と比較して挿入時の鉄心のエッジへの引っかかりの発生
をより低減できる。
【0081】請求項7記載の本発明によれば、絶縁コイ
ルの固定部材として、1以上の補強シート層とゴム状弾
性体層との積層シートからなるものを用いているため、
ゴム状の弾性体層若しくは無機粉体を充填した弾性体層
のみからなる固定部材と比較して強度が高く、鉄心を構
成する薄い鋼板のエッジとの接触によって引き裂けが生
じることによる絶縁コイルからの剥離、脱落の発生が低
減する。また、補強シート層とゴム状弾性体層とからな
るため、スロット内面の凹凸に追従して隙間が生じにく
く確実に絶縁コイルを保持できると共に、熱伝導効率が
優れている。しかも、絶縁コイルからの剥離や脱落の発
生が少ないため、長期にわたって安定して絶縁コイルの
温度上昇を抑制でき、信頼性の高い回転電機を提供する
ことができる。
【0082】請求項8記載の本発明によれば、絶縁コイ
ルの最外層に、体積抵抗率が100〜105Ωcmである
半導電層が設けられているため、固定部材である積層シ
ートとして、積層方向の体積抵抗率が同じ範囲内のもの
を使用すれば、絶縁コイル表面と鉄心間を同電位に保
ち、両者間の部分放電を抑制することができ、絶縁コイ
ルに発生した熱をさらに効率よく鉄心に伝導することが
できる。
【0083】請求項9記載の本発明によれば、固定部材
とスロット内面との間に、高熱伝導性のグリース、オイ
ルコンパウンド層、又は無機潤滑剤層が形成されている
ため、スロット内面や絶縁コイルの凹凸との密着性を高
めることができ、熱伝導性の向上に資する。また、スロ
ット内面と固定部材である積層シート表面との摩擦を低
減できるため、積層シート表面の引き裂けの発生をさら
に低減することができる。
【0084】請求項10記載の本発明によれば、予め作
製した絶縁コイルを回転電機の鉄心のスロット内に挿入
して固定する際、請求項1〜6のいずれか1に記載の絶
縁コイルの固定部材により、絶縁コイルの少なくとも両
側面を被覆して挿入するため、挿入時にスロット内面と
の間に生じる摩擦により、ゴム状弾性体層に引き裂けが
発生することを抑制でき、信頼度の高い回転電機を作製
することができる。
【0085】請求項11記載の本発明によれば、絶縁コ
イルに対し、固定部材を、スロット内面との対向面がゴ
ム状弾性体層となるように被覆して実施するため、スロ
ット内面の凹凸に追従して密着性が向上し、熱伝導性を
より良好なものとすることができる。
【0086】請求項12記載の本発明によれば、絶縁コ
イルに対し、固定部材を、スロット内面との対向面が補
強シート層となるように被覆して実施するため、挿入時
や運転時の引き裂き強度がさらに高まる。
【0087】請求項13記載の本発明によれば、絶縁コ
イルの固定部材として、最外層を形成するゴム状弾性体
層にスリットが設けられているものを使用する際、絶縁
コイルの挿入方向に対して該スリットが角度を有するよ
うに被覆して実施するため、挿入時にスリットが鉄心の
エッジに引っかからず、ゴム状弾性体層の脱落、剥離を
抑制でき、未挿入部分の発生を低減し、絶縁コイルの温
度上昇をより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る絶縁コイルの固定部材の一実施形
態を示す外観斜視図、
【図2】本発明に係る絶縁コイルの固定部材の他実施形
態を示す外観斜視図、
【図3】本発明に係る固定部材を用いた回転電機の試験
モデルを示す部分断面図、
【図4】従来の固定部材を用いた回転電機の試験モデル
を示す部分断面図、
【図5】従来の他固定部材を用いた回転電機の試験モデ
ルを示す部分断面図、
【図6】従来のさらに他固定部材を用いた回転電機の試
験モデルを示す部分断面図、
【図7】本発明の他の実施例にかかる固定部材を用いた
回転電機の試験モデルを示す部分断面図、
【図8】従来の絶縁コイルの固定部材及び固定方法を説
明するための回転電機の部分断面図、
【図9】従来の絶縁コイルの固定部材及び固定方法を説
明するための回転電機の部分断面図、
【図10】従来の絶縁コイルの固定部材及び固定方法を
説明するための回転電機の部分断面図、
【図11】従来の絶縁コイルの固定部材及び固定方法を
説明するための回転電機の部分断面図。
【符号の説明】
1……鋼板 2……鉄心 3……スロット 4……アルミブロック 5……積層シート 6〜15…熱電対 18……アラミド繊維紙 19……高熱伝導性シリコーンゴム 23……高熱伝導性シリコーングリース 24……熱電対のセット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H604 AA03 AA05 BB01 BB03 BB14 CC01 CC05 CC16 DA20 DA25 DB16 PB04 5H615 AA01 BB01 BB02 BB14 PP01 PP08 PP13 QQ02 RR02 SS05 SS32

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 予め作製した絶縁コイルを回転電機の鉄
    心のスロット内に挿入して固定する際に絶縁コイルの側
    面とスロットの内面との間に配置されて前記絶縁コイル
    を前記スロット内に固定する回転電機における絶縁コイ
    ルの固定部材であって、 少なくとも1つの補強シート層と前記補強シート層の少
    なくとも片面に積層されたゴム状弾性体層とを有する積
    層シートからなることを特徴とする絶縁コイルの固定部
    材。
  2. 【請求項2】 前記補強シート層が、プラスチックフィ
    ルム、無機材料、有機材料若しくはこれらの組合わせか
    らなる織布又は不織布から選ばれたものであることを特
    徴とする請求項1記載の絶縁コイルの固定部材。
  3. 【請求項3】 前記ゴム状弾性体層には、高熱伝導性の
    無機充填材および金属粉体の少なくとも一方が充填され
    てなることを特徴とする請求項1または2記載の回転電
    機における絶縁コイルの固定部材であって、絶縁コイル
    の固定部材。
  4. 【請求項4】 最外層にゴム状弾性体層が形成され、か
    つ該ゴム状弾性体層にスリットまたは窪みが形成されて
    いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記
    載の絶縁コイルの固定部材。
  5. 【請求項5】 積層方向の体積抵抗率が100 〜105
    Ω・cmであることを特徴とする請求項1乃至4のいず
    れか1項記載の絶縁コイルの固定部材。
  6. 【請求項6】 予め作製した絶縁コイルを回転電機の鉄
    心のスロット内に挿入するにあたり、絶縁コイルの側面
    とスロットの内面との間に請求項1乃至5のいずれか1
    項記載の固定部材を配置して前記絶縁コイルを回転電機
    の鉄心のスロット内に挿入し固定してなることを特徴と
    する回転電機。
  7. 【請求項7】 前記固定部材の積層方向の体積抵抗率が
    100 〜105 Ω・cmであることを特徴とする請求項6
    記載の回転電機。
  8. 【請求項8】 前記固定部材とスロット内面との間に、
    高熱伝導性のグリース、オイルコンパウンド層、又は無
    機潤滑剤層が形成されていることを特徴とする請求項6
    又は7記載の回転電機。
  9. 【請求項9】 予め作製した絶縁コイルを回転電機の鉄
    心のスロット内に挿入して固定するにあたり、前記絶縁
    コイルの少なくとも前記鉄心のスロットの壁面と対向す
    る側面を、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の固定
    部材により被覆して挿入することを特徴とする絶縁コイ
    ルの固定方法。
  10. 【請求項10】 請求項9記載の絶縁コイルの固定方法
    において、スロット内面との対向面がゴム状弾性体層と
    なるように被覆することを特徴とする絶縁コイルの固定
    方法。
  11. 【請求項11】 請求項9記載の絶縁コイルの固定方法
    において、スロット内面との対向面が補強シート層とな
    るように被覆することを特徴とする絶縁コイルの固定方
    法。
  12. 【請求項12】 請求項9又は10記載の絶縁コイルの
    固定方法において、絶縁コイルの固定部材として、最外
    層を形成するゴム状弾性体層にスリットが設けられてい
    るものを使用する際、絶縁コイルの挿入方向に対して該
    スリットが角度を有するように被覆することを特徴とす
    る絶縁コイルの固定方法。
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