JP2000123719A - 電子放出部形成用材料並びに該材料を用いた電子放出素子、電子源、表示素子および画像形成装置の製造方法 - Google Patents

電子放出部形成用材料並びに該材料を用いた電子放出素子、電子源、表示素子および画像形成装置の製造方法

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JP2000123719A
JP2000123719A JP30956398A JP30956398A JP2000123719A JP 2000123719 A JP2000123719 A JP 2000123719A JP 30956398 A JP30956398 A JP 30956398A JP 30956398 A JP30956398 A JP 30956398A JP 2000123719 A JP2000123719 A JP 2000123719A
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Nobutsugu Yamada
修嗣 山田
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    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J2201/00Electrodes common to discharge tubes
    • H01J2201/30Cold cathodes
    • H01J2201/316Cold cathodes having an electric field parallel to the surface thereof, e.g. thin film cathodes
    • H01J2201/3165Surface conduction emission type cathodes

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  • Cold Cathode And The Manufacture (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 水溶性および熱分解特性が良好な有機金属錯
体を含有する電子放出部形成用材料、並びに該材料を用
いて、工程が簡素、低コスト、かつ電子放出特性の良好
な電子放出素子、電子源、表示パネルおよび画像形成装
置の製造方法を提供する。 【解決手段】 有機金属錯体: 【化1】 (式中、R1 は水素またはC1〜4のアルキル基、R2
はC5以上のアルキル基、R3 はC5以上のポリメチレ
ン基で、R2 およびR3 の合計炭素数が17以下、lは
2〜4、mは1〜4、nは1〜2、kは0〜1、Mは金
属イオン)を含有する電子放出部形成用材料、並びにこ
の材料を用いる電子放出素子、電子源、表示素子および
画像形成装置の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出素子の電
子放出部形成用有機金属錯体および該有機金属錯体を主
成分とする電子放出部形成用材料、並びに電子放出素
子、該素子を用いた電子源、表示素子および画像形成装
置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子には大別して熱
電子放出素子と冷陰極電子放出素子の2種類が知られて
いる。冷陰極電子放出素子には電界放出型(以下、「F
E型」という。)、金属/絶縁層/金属型(以下、「M
IM型」という。)や表面伝導型電子放出素子等があ
る。FE型の例としてはW.P.Dyke&W.W.D
oran,“Field Emissin”,Adva
nce in Electron Physics,
8,89(1956)あるいは、C.A.Spind
t,“Physical Properties of
thin−filmfieldemission c
athodes with molybdenium
cones”,J.Appl.Phys.,47,52
48(1976)等に開示されたものが知られている。
MIM型ではC.A.Mead,“Operation
of Tunnel−Emission Devic
es”,J.Appl.Phys.,32,646(1
961)等に開示されたものが知られている。
【0003】表面伝導型電子放出素子型の例としては、
M.I.Elinson,Radio Eng.Ele
ctron Phys.,10,1290(1965)
等に開示されたものがある。
【0004】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことによ
り、電子放出が生ずる現象を利用するものである。この
表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等に
よるSnO2 薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの
[G.Dittmer:Thin Solid Fil
ms,9,317(1972)]、In23 /SnO
2 薄膜によるもの[M.Hartwell and
C.G.Fonstad:IEEE Trans.ED
Conf.,519(1975)]、カーボン薄膜に
よるもの[荒木久他:真空、第26巻、第1号、22頁
(1983)]等が報告されている。
【0005】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な例として、前述のM.ハートウェルの素子構成を図1
3、14に模式的に示す。同図において1は基板であ
る。4は導電性膜で、H型形状のパターンにスパッタで
形成された金属酸化物薄膜等からなり、後述の通電フォ
ーミングと呼ばれる通電処理により電子放出部5が形成
される。なお、図中の素子電極間隔Lは0.5〜1m
m、Wは0.1mmで設定されている。
【0006】従来、これらの表面伝導型電子放出素子に
おいては、電子放出を行う前に導電性膜4を予め通電フ
ォーミングと呼ばれる通電処理によって電子放出部5を
形成するのが一般的であった。即ち、通電フォーミング
とは、導電性膜4両端に直流電圧あるいは非常にゆっく
りとした昇電圧をたとえば1V/min程度で印加通電
し、導電性膜を局所的に破壊、変形もしくは変質せし
め、電気的に高抵抗な状態にした電子放出部5を形成す
ることである。なお、電子放出部5は導電性膜4の一部
に発生した亀裂であり、その亀裂付近から電子放出が行
われる。前記通電フォーミング処理をした表面伝導型電
子放出素子は、導電性膜4に電圧を印加し、素子に電流
を流すことにより、電子放出部5より電子を放出せしめ
るものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従来の導電性薄膜4
(電子放出部形成用薄膜)は、有機金属化合物を有機溶
媒に溶解した溶液を基板に塗布乾燥後、加熱焼成により
有機成分を熱分解除去して金属、もしくは金属酸化物と
して製作していた。しかし、導電性薄膜の製作工程に有
機溶媒を用いることは低コスト化、地球環境保護の面な
どから好ましくなく水に容易に溶解する有機金属化合物
の開発が望まれていた。また、素子の製作工程上、加熱
焼成に非常に高い温度が必要になるような有機金属化合
物であっては、焼成装置が設計上非常に高価になり、ま
たエネルギー効率の面などからも低コストな電子放出素
子を提供することが困難となる。
【0008】一方、これらの導電性薄膜を形成する手段
として、よくバブルジェット(BJ)方式の液滴付与手
段が用いられる。これは原理・構成が非常に簡単であ
り、高速化、液滴の微小化が容易であるなどの多くの利
点を持つ為である。この方法は、バブル(気泡)を発生
せしめるために溶液を局所的に面ヒーターで加熱し突沸
させる。この際、ヒーター面は瞬間的に200℃以上に
なり溶液中の有機金属化合物がヒーター上に析出し、い
わゆるこげが発生する場合がある。このこげは徐々に面
ヒーター上に堆積し溶液への熱伝導率を下げバブルの発
生を妨げるようになったり、また一時に剥離して均一な
導電性薄膜を形成するのに妨げとなる。特に有機成分の
分解温度を下げる方向で開発された有機金属化合物を含
有した電子放出部形成用材料を用いた場合には、このこ
げの発生が顕著となる傾向が見られた。
【0009】本発明の目的は水溶性が高くかつ熱分解特
性が良好な有機金属化合物を含有する電子放出部形成用
材料、並びに該材料を用いて、工程が簡素、低コスト、
かつ電子放出特性の良好な電子放出素子、電子源、表示
パネルおよび画像形成装置の製造方法を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、上述
した課題を解決するために鋭意検討を行って成されたも
のであり、下述する構成のものである。すなわち、本発
明の電子放出素子の電子放出部形成用材料は、式Iで表
される有機金属化合物:
【0011】
【化2】 (式中、R1 は水素または炭素数1から4のアルキル
基、R2 は炭素数5以上のアルキル基、R3 は炭素数5
以上のポリメチレン基で、R2 およびR3 の合計炭素数
が17以下、lは2から4の整数、mは1から4の整
数、nは1または2、kは0または1、Mは金属イオ
ン)を含有することを特徴とする。
【0012】本発明の電子放出部形成用材料は、式Iで
表される有機金属錯体を単独、または複数種類含有する
ことを特徴とし、通常溶液、特に水溶液とすることが望
ましい。
【0013】有機金属化合物の中心金属イオンMとして
は、電圧印加により電子を放出しやすいもの、すなわち
仕事関数の比較的小さな元素で、かつ安定なもの、たと
えば白金、パラジウムなどの白金族イオン、金、銀、
銅、クロム、タンタル、鉄、タングステン、鉛、亜鉛、
すずなどの金属イオンが挙げられる。
【0014】該溶液中の有機金属化合物の濃度範囲は、
用いる金属元素の種類や金属塩の種類によって最適な範
囲が多少異なるが、一般には重量分率で0.01%から
10%の範囲が適当である。金属濃度が少なすぎる場合
には、基板に必要量の金属元素を付与するのに多くの水
溶液の付与が必要となる。その結果付与に要する時間が
長くなるばかりでなく、水溶液の体積が無用に大きくな
り目的とする位置への正確な付与ができなくなる。
【0015】逆に水溶液中の金属濃度が高すぎる場合に
は、基板に付与された液滴を乾燥、焼成する工程で膜厚
の不均一な薄膜が生じ、そこから得られる電子放出素子
の特性が悪くなる。また、金属イオン濃度が高い水溶液
をバブルジェット方式で液滴付与する場合、面ヒーター
上に金属イオンが容易に析出、いわゆるこげが発生して
しまい安定な液滴の発生、付与ができなくなる。
【0016】また、本発明者らの実験結果からすると、
2 、R3 の炭素数の合計が18以上の前記有機金属化
合物は水溶性がかなり悪くなり、インクジェット方式で
液滴を付与することが困難になる。これは水溶液中にエ
タノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコー
ルを5ないし35重量%濃度となる様に添加することに
よって溶解度を多少上げることができるが、炭素数があ
まり高くないほうが実用性は高いようである。
【0017】また、本発明の電子放出部形成用材料溶液
には水溶性ポリマーを添加することによって、基板に付
与された溶液の液滴の凝集を防止することができる。そ
の水溶性ポリマーとして、例えばポリビニルアルコー
ル、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポ
リビニルピロリドンが用いられる。該溶液中の水溶性ポ
リマーの濃度としては、0.01ないし10重量%が好
ましく、0.01重量%未満では凝集防止効果が得られ
ず、10重量%を超えると電子放出部形成用材料の粘度
が高くなり、インクジェット方式での取り扱いが困難に
なる。
【0018】さらに、この水溶性ポリマーを含んだ電子
放出部形成用材料溶液に1価の低級アルコールを添加す
ることによって、水溶性ポリマーの添加によって高くな
った電子放出部形成用材料の粘度を効果的に下げ、取り
扱いを容易にすることが可能である。1価の低級アルコ
ールとしては炭素数1〜4のものが好ましく、具体的に
はメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プ
ロパノール、2−ブタノールなどが用いられる。この溶
液中の1価低級アルコールの濃度としては、1ないし3
5重量%が好ましく、1重量%未満では粘性低下効果が
あまり得られず、35重量%を超えると基板に付与され
た後の乾燥、焼成工程で有機金属錯体が著しく不均一化
して、電子放出部を形成する導電性薄膜が不均一になり
電子放出特性が悪くなってしまう。
【0019】いずれにしても、水溶性ポリマーと1価の
低級アルコールの濃度は、その効果と溶液の粘度を鑑み
て最適な範囲に決定されるべきである。さらに、溶液の
最適粘度範囲はその液滴を付与する方式によつて異な
る。本発明はさらに電子放出素子、電子源、表示パネル
および画像形成装置の製造方法をも含むものである。
【0020】本発明の電子放出素子の製造方法は、基板
上に一対の対向する電極を形成し、該対向電極間に有機
金属化合物を含む溶液を液滴の状態で付与し、加熱焼成
し、得られた導電性薄膜の一部に電子放出部を形成する
工程を含むものであり、前記有機金属化合物が前記本発
明に係る有機金属化合物であることを特徴とする。本発
明における電子放出素子は、表面伝導型の電子放出素子
であることが好ましい。
【0021】本発明の電子源の製造方法は、電子放出素
子と該素子への電圧印加手段を具備する電子源の製造方
法であって、該電子放出素子を本発明の製造方法で製造
することを特徴とする。
【0022】本発明の表示素子の製造方法は、電子放出
素子と該素子への電圧印加手段を具備する電子源と、該
素子から放出される電子を受けで発光する発光体とを具
備する表示素子の製造方法であって、該電子放出素子を
本発明の製造方法で製造することを特徴とする。
【0023】本発明の画像形成装置の製造方法は、電子
放出素子と該素子への電圧印加手段を具備する電子源
と、該素子から放出される電子を受けて発光する発光体
と、外部信号に基づいて該素子へ印加する電圧を制御す
る駆動回路を具備する画像形成装置の製造方法であっ
て、該電子放出素子を本発明の製造方法で製造すること
を特徴とする。
【0024】本発明の製造方法において、有機金属化合
物を含有する水溶液の付与膜を加熱焼成する過程で有機
物が分解する時に、必要に応じて酸素あるいは窒素など
のガスを供給して、有機金属化合物を無機金属あるいは
無機金属酸化物、無機金属窒化物などの金属無機化合物
とし、図3(c)に示すような電子放出部形成用薄膜4
とする。
【0025】上記の有機金属水溶液を基板に塗布する手
段は、液滴を形成して付与することが可能であれば任意
の方法でかまわないが、特に微小な液滴を効率よく適度
な精度で発生付与するためにはインクジェット方式が非
常に便利である。インクジェット方式にはピエゾ素子な
どを用いて機械的な衝撃により液滴を発生させるピエゾ
ジェット方式や、微小なヒーターで液を加熱沸騰させて
液滴を発生させるバブルジェット方式などがあるが、い
ずれの方法においても十ngから数十ngまでの微小液
滴を再現性良く基板に付与塗布することができる。
【0026】しかし素子の作成工程上、有機成分を熱分
解して金属あるいは金属酸化物となる温度が低い有機金
属錯体を求めていった場合、バブルジェット方式でこの
水溶液を付与しようとすると、気泡を発生させるために
ヒーターで加熱したときに金属錯体の一部が分解し、均
一な電子放出部形成用薄膜ができないという問題が発生
することがあった。
【0027】そのために本発明では、構造式Iで表され
る有機金属化合物を含有する水溶液の液滴の、より好ま
しい基板への付与方法として、機械的な衝撃で液滴を発
生させるピエゾ式(圧電素子を用いた)インクジェット
方法を採用している。また液滴付与工程において、液滴
を連続的に付与して、前記電導性薄膜を線状または面状
に形成することも出来る。
【0028】上記手段で基板に付与された溶液は乾燥、
焼成工程を経て導電性無機微粒子膜とすることにより、
基板上に電子放出のための無機微粒子膜が形成される。
なおここで述べる微粒子膜とは複数の微粒子が集合した
膜であり、微視的に微粒子が個々に分散配置した状態の
みならず、微粒子が互いに隣接あるいは重なり合った状
態(島状も含む)の膜をさす。また微粒子膜の粒径と
は、前記状態で粒子形状が認識可能な微粒子についての
径を意味する。
【0029】乾燥工程は通常用いられる自然乾燥、送風
乾燥、熱乾燥を用いればよい。焼成工程は通常用いられ
る加熱手段を用いれば良い。乾燥工程と焼成工程とは必
ずしも区別された別工程として行なう必要はなく連続し
て同時に行ってもかまわない。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明を適用し得る表面伝導型電
子放出素子の基本的構成を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子の
構成を示す模式図であり、同図中(a)は平面図、
(b)は断面図である。また1は基板、2と3は素子電
極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。
【0031】基板1としては、石英ガラス、Na等の不
純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラス
にスパッタ法等により形成したSiO2を積層したガラ
ス基板等及びアルミナ等のセラミックス及びSi基板等
を用いることができる。
【0032】対向する素子電極2、3の材料としては、
一般的な導体材料を用いることができる。これは例えば
Ni,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,C
u,Pd等の金属或は合金およびPd,Ag,Au,R
uO2 ,Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等
から構成される印刷導体、In23−SnO2等の透明
導電体およびポリシリコン等の半導体材料等より適宜選
択することができる。
【0033】素子電極間隔L、素子電極長さW、導電性
薄膜4の形状等は、応用される形態等を考慮して設計さ
れる。素子電極間隔Lは、数千Åから数百μmの範囲と
することができ、素子電極間に印加する電圧等を考慮し
て好ましくは数μmから数十μmの範囲とすることがで
きる。素子電極長さWは、電極の抵抗値、電子放出特性
を考慮して、数μmから数百μmの範囲とすることがで
きる。素子電極2、3の膜厚dは、数百Åから数μmの
範囲とすることができる。尚、図1に示した構成だけで
なく、基板1上に、導電性薄膜4、対向する素子電極
2、3の順に積層した構成とすることもできる。
【0034】導電性薄膜4には、良好な電子放出特性を
得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが
好ましい。その膜厚は、素子電極2、3へのステップカ
バレージ、素子電極2、3間の抵抗値及び後述するフォ
ーミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は数
Åから数千Åの範囲とすることが好ましく、より好まし
くは10Åから500Åの範囲とするのが良い。その抵
抗値は、RSが102から107Ω/□の値である。なお
Sは、厚さがt、幅がwで長さがlの薄膜の抵抗R
を、R=RS(l/w)とおいたときに現れる値であ
る。本明細書において、フォーミング処理については、
通電処理を例に挙げて説明するが、フォーミング処理は
これに限られるものではなく、膜に亀裂を生じさせて高
抵抗状態を形成する処理を包含するものである。
【0035】導電性薄膜4を構成する材料は、Pd,P
t,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,Cr,F
e,Zn,Sn,Ta,W,Pb等の金属、PdO,S
nO2,In23,PbO,Sb23等の金属酸化物等
の中から適宜選択される。
【0036】ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子
が集合した膜であり、微視的に微粒子が個々に分散配置
した状態のみならず、微粒子が互いに隣接あるいは重な
り合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体として
島状構造を形成している場合も含む)の膜をも指す。ま
た微粒子膜の粒径とは、前記状態で粒子形状が認識可能
な微粒子についての径を意味し、数Åから数千Åの範
囲、好ましくは10Åから200Åの範囲である。な
お、本明細書では頻繁に「微粒子」という言葉を用いる
ので、その意味について説明する。
【0037】小さな粒子を「微粒子」と呼び、これより
も小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」より
もさらに小さく原子の数が数百個程度以下のものを「ク
ラスター」と呼ぶことは広く行われている。
【0038】しかしながら、それぞれの境は厳密なもの
ではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変
化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微
粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに
沿ったものである。
【0039】「実験物理学講座14 表面・微粒子」
(木下是雄 編、共立出版 1986年9月1日発行)
では次のように記述されている。「本稿で微粒子と言う
ときにはその直径がだいたい2〜3μm程度から10n
m程度までとし、特に超微粒子と言うときは粒径が10
nm程度から2〜3nm程度までを意味することにす
る。両者を一括して単に微粒子と書くこともあってけっ
して厳密なものではなく、だいたいの目安である。粒子
を構成する原子の数が2個から数十〜数百個程度の場合
はクラスターと呼ぶ」(195ページ 22〜26行
目)。
【0040】付言すると、新技術開発事業団の“林・超
微粒子プロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径
の下限はさらに小さく、次のようなものであった。「創
造科学技術推進制度の“超微粒子プロジェクト”(19
81〜1986)では、粒子の大きさ(径)がおよそ1
〜100nmの範囲のものを“超微粒子”(ultra
fine particle )と呼ぶことにした。
すると1個の超微粒子はおよそ100〜108個くらい
の原子の集合体という事になる。原子の尺度でみれば超
微粒子は大〜巨大粒子である。」(「超微粒子−創造科
学技術−」林主税、上田良二、田崎明編;三田出版 1
988年 2ページ1〜4行目)。「超微粒子よりさら
に小さいもの、すなわち原子が数個〜数百個で構成され
る1個の粒子は、ふつうクラスターと呼ばれる」(同書
2ページ12〜13行目)。
【0041】上記のような一般的な呼び方をふまえて、
本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集
合体で、粒径の下限は数Å〜10Å程度、上限は数μm
程度のものを指すこととする。
【0042】電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形
成された高抵抗の亀裂により構成され、導電性薄膜4の
膜厚、膜質、材料及び後述する通電フォーミング等の手
法等に依存したものとなる。電子放出部5の内部には、
数Åから数百Åの範囲の粒径の導電性微粒子が存在する
場合もある。この導電性微粒子は、導電性薄膜4を構成
する材料の元素の一部、あるいは全ての元素を含有する
ものとなる。電子放出部5及びその近傍の導電性薄膜4
には、炭素及び炭素化合物を有することもできる。
【0043】上述の表面伝導型電子放出素子の製造方法
としては様々な方法があるが、その一例を図3に模式的
に示す。以下、図1及び図3を参照しながら製造方法の
一例について説明する。図3においても、図1に示した
部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付
している。
【0044】1)基板1を洗剤、純水および有機溶剤等
を用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等によ
り素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー
技術を用いて基板1上に素子電極2、3を形成する(図
3(a))。
【0045】2)素子電極2、3を設けた基板1に、イ
ンクジェット方式により有機金属化合物溶液を液滴の状
態で付与して(図3(b))、有機金属薄膜を形成する
(図3(c))。
【0046】インクジェット方式としてはバブルジェッ
ト(BJ)またはピエゾジェット等により液滴を吐出
し、基板上の導電性薄膜が形成されるべき位置に付着さ
せる方法が好ましい。この方法で使用されるインクジェ
ットのヘッドの例を図2に示す。図2(a)は単発ヘッ
ド、図2(b)は単発ヘッドを並列に配置し、液滴の吐
出及び基板への付着に要する時間を短縮しようとするも
のであり、ノズル数は特に限定されない。
【0047】有機金属化合物溶液には、前述の導電性薄
膜4の材料の金属を主元素とする有機金属化合物の溶液
を用いることができ、特に水溶液が望ましい。有機金属
薄膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチング等によ
りパターニングし、導電性薄膜4を形成する。
【0048】3)つづいて、フォーミング工程を施す。
このフォーミング工程の方法の一例として通電処理によ
る方法を説明する。素子電極2、3間に不図示の電源を
用いて通電を行うと、導電性薄膜4の部位に、構造の変
化した電子放出部5が形成される(図3(d))。通電
フォーミングによれば導電性薄膜4を局所的に破壊、変
形もしくは変質等の構造の変化した部位が形成される。
該部位が電子放出部5を構成する。通電フォーミングの
電圧波形の例を図4に示す。
【0049】電圧波形は、パルス波形が好ましい。これ
にはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加
する図4(a)に示した手法と、パルス波高値を増加さ
せながら電圧パルスを印加する図4(b)に示した手法
がある。
【0050】図4(a)におけるT1及びT2は電圧波
形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μ秒〜
10m秒、T2は10μ秒〜100m秒の範囲で設定さ
れる。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク電
圧)は、表面伝導型電子放出素子の形態に応じて適宜選
択される。このような条件の下、例えば、数秒から数十
分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に限定される
ものではなく、矩形波など所望の波形を採用することが
できる。
【0051】図4(b)におけるT1及びT2は、図4
(a)に示したのと同様とすることができる。三角波の
波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例えば
0.1Vステップ程度ずつ、増加させることができる。
【0052】通電フォーミング処理の終了は、パルス間
隔T2中に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない
程度の電圧を印加し、電流を測定して検知することがで
きる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子
電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示
した時、通電フォーミングを終了させる。
【0053】4)フォーミングを終えた素子には活性化
工程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活性化工程と
は、この工程により、素子電流If、放出電流Ieが、
著しく変化する工程である。
【0054】活性化工程は、例えば、有機物質のガスを
含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パル
スの印加を繰り返すことで行うことができる。この雰囲
気は例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用い
て真空容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機
ガスを利用して形成することができる他、イオンポンプ
などにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質
のガスを導入することによっても得られる。このときの
好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空
容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場
合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、ア
ルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香
族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン
類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の
有機酸類等を挙げることができ、具体的には、メタン、
エタン、プロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水
素、エチレン、プロピレンなどCn2n等の組成式で表
される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノー
ル、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒ
ド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エ
チルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等
が使用できる。この処理により、雰囲気中に存在する有
機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積
し、素子電流If、放出電流Ieが、著しく変化するよ
うになる。
【0055】活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと
放出電流Ieを測定しながら、適宜行う。なお、パルス
幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0056】炭素及び炭素化合物とは、グラファイト
(いわゆるHOPG,PG(GC)を包含する、HOP
Gはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒
が200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結
晶粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きく
なったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルファス
カーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラファイ
トの微結晶の混合物を指す。)であり、その膜厚は、5
00Å以下の範囲とするのが好ましく、300Å以下の
範囲とするのがより好ましい。
【0057】5)このような工程を経て得られた電子放
出素子は、安定化工程を行うことが好ましい。この工程
は、真空容器内の有機物質を排気する工程である。真空
容器を排気する真空排気装置は、装置から発生するオイ
ルが素子の特性に影響を与えないように、オイルを使用
しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ソープ
ションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装置を挙げる
ことが出来る。
【0058】前記活性化の工程で、排気装置として油拡
散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生する
オイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成
分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有
機成分の分圧は、上記の炭素及び炭素化合物がほぼ新た
に堆積しない分圧で1×10-8Torr以下が好まし
く、さらには1×10-10Torr以下が特に好まし
い。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全
体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着し
た有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。この
ときの加熱条件は、80〜200℃で5時間以上が望ま
しいが、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の
大きさや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により
適宜選ばれる条件により行う。真空容器内の圧力は極力
低くすることが必要で、1〜3×10-7Torr以下が
好ましく、さらに1×10-8Torr以下が特に好まし
い。
【0059】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な
特性を維持することが出来る。
【0060】このような真空雰囲気を採用することによ
り、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、
結果として素子電流If、放出電流Ieが、安定する。
【0061】上述した工程を経て得られた本発明を適用
可能な電子放出素子の基本特性について図5、図6を参
照しながら説明する。
【0062】図5は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。図5においても、図1に示した部
位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付し
ている。図5において、55は真空容器であり、56は
排気ポンプである。真空容器55内には電子放出素子が
配されている。即ち、1は電子放出素子を構成する基体
であり、2及び3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電
子放出部である。51は電子放出素子に素子電圧Vfを
印加するための電源、50は素子電極2・3間の導電性
薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、
54は素子の電子放出部より放出される放出電流Ieを
捕捉するためのアノード電極である。53はアノード電
極54に電圧を印加するための高圧電源、52は素子の
電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するた
めの電流計である。一例として、アノード電極の電圧を
1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子放出
素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定を行
うことができる。
【0063】真空容器55内には、不図示の真空計等の
真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、
所望の真空雰囲気中での測定評価を行えるようになって
いる。排気ポンプ56は、ターボポンプ、ロータリーポ
ンプからなる通常の高真空装置系と更に、イオンポンプ
等からなる超高真空装置系とにより構成されている。こ
こに示した電子源基板を配した真空処理装置の全体は、
不図示のヒーターにより200℃まで加熱できる。従っ
て、この真空処理装置を用いると、前述の通電フォーミ
ング以降の工程も行うことができる。
【0064】図6は、図5に示した真空処理装置を用い
て測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧V
fの関係を模式的に示した図である。図6においては、
放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいの
で、任意単位で示している。尚、縦、横軸ともリニアス
ケールである。
【0065】図6からも明らかなように、本発明を適用
可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関し
て三つの特徴的性質を有する。
【0066】即ち、(i)本素子はある電圧(しきい値
電圧と呼ぶ、図6中のVth)以上の素子電圧を印加す
ると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧V
th以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つ
まり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vth
を持った非線形素子である。
【0067】(ii)放出電流Ieが素子電圧Vfに単
調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制
御できる。
【0068】(iii)アノード電極54に捕捉される
放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。
すなわち、アノード電極54に捕捉される電荷量は、素
子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0069】以上の説明により理解されるように、本発
明を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に
応じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。
この性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成
した電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能と
なる。
【0070】図6においては、素子電流Ifが素子電圧
Vfに対して単調増加する(以下、「MI特性」とい
う。)例を実線に示した。素子電流Ifが素子電圧Vf
に対して電圧制御型負性抵抗特性(以下、「VCNR特
性」という。)を示す場合もある(不図示)。これら特
性は、前述の工程を制御することで制御できる。
【0071】本発明を適用可能な電子放出素子の応用例
について以下に述べる。本発明を適用可能な表面伝導型
電子放出素子の複数個を基板上に配列すると、例えば電
子源あるいは画像形成装置が構成できる。
【0072】電子放出素子の配列については、種々のも
のが採用できる。一例として、並列に配置した多数の電
子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を
多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直行する方向
(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制
御電極(グリッド電極とも呼ぶ)により、電子放出素子
からの電子を制御駆動するはしご状配置のものがある。
これとは別に、電子放出素子をX方向及びY方向に行列
状に複数配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の
電極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に
配された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の
配線に共通に接続するものが挙げられる。このようなも
のはいわゆる単純マトリクス配置である。まず単純マト
リクス配置について以下に詳述する。
【0073】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素
子については、前述したとおり(i)〜(iii)の特
性がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放出電
子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間に印
加するパルス状電圧の波高値と巾で制御できる。一方、
しきい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特性に
よれば、多数の電子放出素子を配置した場合において
も、個々の素子に、パルス状電圧を適宜印加すれば、入
力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電
子放出量を制御できる。
【0074】以下この原理に基づき、本発明を適用可能
な電子放出素子を複数配して得られる電子源について、
図7を用いて説明する。図7において、71は電子源基
板、72はX方向配線、73はY方向配線である。74
は表面伝導型電子放出素子、75は結線である。尚、表
面伝導型電子放出素子74は、平面型あるいは垂直型の
どちらであってもよい。
【0075】m本のX方向配線72はDx1,Dx2,
・・・Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ
法等を用いて形成された導電性金属等で構成することが
できる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設定される。Y
方向配線73はDy1,Dy2,・・・Dynのn本の
配線よりなり、X方向配線72と同様に形成される。こ
れらm本のX方向配線72とn本のY方向配線73との
間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を
電気的に分離している(m,nは、共に正の整数)。
【0076】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2等で構成
される。例えば、X方向配線72を形成した基板71の
全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配
線72とY方向配線73の交差部の電位差に耐え得るよ
うに、膜厚、材料、製法が適宜設定される。X方向配線
72とY方向配線73は、それぞれ外部端子として引き
出されている。
【0077】表面伝導型放出素子74を構成する一対の
素子電極(不図示)は、m本のX方向配線72とn本の
Y方向配線73と、導電性金属等からなる結線75によ
って電気的に接続されている。
【0078】配線72と配線73を構成する材料、結線
75を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料
は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であって
も、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例え
ば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極
を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子
電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0079】X方向配線72には、X方向に配列した表
面伝導型放出素子74の行を選択するための走査信号を
印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。一
方、Y方向配線73には、Y方向に配列した表面伝導型
放出素子74の各列を入力信号に応じて変調するため
の、不図示の変調信号発生手段が接続される。各電子放
出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される
走査信号と変調信号の差電圧として供給される。上記構
成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個別の
素子を選択し、独立に駆動可能とすることができる。
【0080】このような単純マトリクス配置の電子源を
用いて構成した画像形成装置について、図8〜10を用
いて説明する。図8は、画像形成装置の表示パネルの一
例を示す模式図であり、図9は、図8の画像形成装置に
使用される蛍光膜の模式図である。図10はNTSC方
式のテレビ信号に応じて表示を行うための駆動回路の一
例を示すブロック図である。
【0081】図8において、71は電子放出素子を複数
配した電子源基板、81は電子源基板71を固定したリ
アプレート、86はガラス基板83の内面に蛍光膜84
とメタルバック85等が形成されたフェースプレートで
ある。82は支持枠であり、該支持枠82には、リアプ
レート81、フェースプレート86がフリットガラス等
を用いて接続されている。88は外囲器であり、例えば
大気中あるいは、窒素中で、400〜500度の温度範
囲で10分以上焼成することで、封着して構成される。
【0082】74は電子放出素子に相当する。72、7
3は、表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続
されたX方向配線及びY方向配線である。
【0083】外囲器88は上述の如く、フェースプレー
ト86、支持枠82、リアプレート81で構成される。
リアプレート81は主に基板71の強度を補強する目的
で設けられるため、基板71自体で十分な強度を持つ場
合は別体のリアプレート81は不要とすることができ
る。即ち、基板71に直接支持枠82を封着し、フェー
スプレート86、支持枠82及び基板71で外囲器88
を構成しても良い。一方、フェースプレート86、リア
プレート81間に、スペーサーとよばれる不図示の支持
体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度を
もつ外囲器88を構成することもできる。
【0084】図9は、蛍光膜を示す模式図である。蛍光
膜84は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成す
ることができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配
列によりブラックストライプあるいはブラックマトリク
スなどと呼ばれる黒色導電材91と蛍光体92とから構
成することができる。ブラックストライプ、ブラックマ
トリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要とな
る三原色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒くす
ることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84に
おける外光反射によるコントラストの低下を抑制するこ
とにある。ブラックストライプの材料としては、通常用
いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性があ
り、光の透過及び反射が少ない材料を用いることができ
る。
【0085】ガラス基板83に蛍光体を塗布する方法は
モノクローム、カラーによらず、沈殿法、印刷法等が採
用できる。蛍光膜84の内面側には通常メタルバック8
5が設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光体
の発光のうち内面側への光をフェースプレート86側へ
鏡面反射することにより輝度を向上させること、電子ビ
ーム加速電圧を印加するための電極として作用させるこ
と、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメージ
から蛍光体を保護すること等である。メタルバックは、
蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通
常、「フィルミング」と呼ばれる)を行い、その後Al
を真空蒸着等で堆積することで作製できる。またフェー
スプレート86には、更に蛍光膜84の導電性を高める
ため、蛍光膜84の外面側に透明電極(不図示)を設け
てもよい。
【0086】前述の封着を行う際には、カラーの場合は
各色蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、
十分な位置合わせが不可欠となる。
【0087】図8に示した画像形成装置は、例えば以下
のようにして製造される。外囲器88は、前述の安定化
工程と同様に、適宜加熱しながら、イオンポンプ、ソー
プションポンプなどのオイルを使用しない排気装置によ
り不図示の排気管を通じて排気し、10-7Torr程度
の真空度の有機物質の十分少ない雰囲気にした後、封止
が成される。外囲器88の封止後の真空度を維持するた
めに、ゲッター処理を行うこともできる。これは、外囲
器88の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あ
るいは高周波加熱等を用いた加熱により、外囲器88内
の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加熱
し、蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常Ba
等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、たとえ
ば1×10-5ないしは1×10-7Torrの真空度を維
持するものである。ここで、表面伝導型電子放出素子の
フォーミング処理以降の工程は、適宜設定できる。
【0088】次に、単純マトリクス配置の電子源を用い
て構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に
基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例
について、図10を用いて説明する。図10において、
101は画像表示パネル、102は走査回路、103は
制御回路、104はシフトレジスタである。105はラ
インメモリ、106は同期信号分離回路、107は変調
信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。
【0089】表示パネル101は、端子Dox1〜Do
xm、端子Doy1〜Doyn、及び高圧端子Hvを介
して外部の電気回路と接続している。端子Dox1〜D
oxmには、表示パネル内に設けられている電子源、即
ち、M行N列の行列状にマトリクス配線された表面伝導
型電子放出素子群を一行(N素子)ずつ順次駆動する為
の走査信号が印加される。
【0090】端子Dy1〜Dynには、前記走査信号に
より選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各素子
の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加され
る。高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば1
0k[V]の直流電圧が供給されるが、これは表面伝導
型電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体を励
起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧で
ある。
【0091】走査回路102について説明する。同回路
は、内部にM個のスイッチング素子を備えたもので(図
中、S1〜Smで模式的に示している)ある。各スイッ
チング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは0
[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、表
示パネル101の端子Dx1〜Dxmと電気的に接続さ
れる。S1〜Smの各スイッチング素子は、制御回路1
03が出力する制御信号Tscanに基づいて動作するもの
であり、例えばFETのようなスイッチング素子を組み
合わせるごとにより構成することができる。
【0092】直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝
導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基
づき、走査されていない素子に印加される駆動電圧が電
子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力す
るよう設定されている。
【0093】制御回路103は、外部より入力する画像
信号に基づいて適切な表示が行われるように各部の動作
を整合させる機能を有する。制御回路103は、同期信
号分離回路106より送られる同期信号Tsyncに基づい
て、各部に対してTscanおよびTsftおよびTmryの各制
御信号を発生する。
【0094】同期信号分離回路106は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と
輝度信号成分とを分離する為の回路で、一般的な周波数
分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期信
号分離回路106により分離された同期信号は、垂直同
期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜
上、Tsync信号として図示した。前記テレビ信号から分
離された画像の輝度信号成分を便宜上DATA信号と表
した。該DATA信号はシフトレジスタ104に入力さ
れる。
【0095】シフトレジスタ104は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路103より送られる制御信号Tsftに基づいて動
作する(すなわち、制御信号Tsftは、シフトレジスタ
104のシフトクロックであると言うこともできる)。
シリアル/パラレル変換された画像1ライン分(電子放
出素子N素子分の駆動データに相当)のデータは、Id
1〜IdnのN個の並列信号として前記シフトレジスタ
104より出力される。
【0096】ラインメモリ105は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路103より送られる制御信号Tmryに従っ
て適宜Id1〜Idnの内容を記憶する。記憶された内
容は、Id’1〜Id’nとして出力され、変調信号発
生器107に入力される。
【0097】変調信号発生器107は、前記画像データ
Id’1〜Id’nの各々に応じて、表面伝導型電子放
出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であり、
その出力信号は、端子Doy1〜Doynを通じて表示
パネル101内の表面伝導型電子放出素子に印加され
る。
【0098】前述したように、本発明を適用可能な電子
放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有し
ている。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vth
があり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出
が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素
子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。こ
のことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、
例えば電子放出しきい値以下の電圧を印加しても電子放
出は生じないが、電子放出しきい値以上の電圧を印加す
る場合には電子ビームが出力される。その際、パルスの
波高値Vmを変化させることにより出力電子ビームの強
度を制御する事が可能である。また、パルスの幅Pwを
変化させることにより出力される電子ビームの電荷の総
量を制御する事が可能である。
【0099】従って、入力信号に応じて、電子放出素子
を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調
方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器107として、一定長さの電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波
高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いること
ができる。
【0100】パルス幅変調方式を実施するに際しては、
変調信号発生器107として、一定の波高値の電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルス
の幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いる
ことができる。
【0101】シフトレジスタ104やラインメモリ10
5は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のもの
でも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や
記憶が所定の速度で行われれば良いからである。
【0102】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これは106の出力部にA/D変換
器を設ければ良い。これに関連してラインメモリ105
の出力信号がデジタル信号かアナログ信号かにより、変
調信号発生器107に用いられる回路が若干異なったも
のとなる。即ち、デジタル信号を用いた電圧変調方式の
場合、変調信号発生器107には、例えばD/A変換回
路を用い、必要に応じて増幅回路などを付加する。パル
ス幅変調方式の場合、変調信号発生器107には、例え
ば、高速の発振器および発振器の出力する波数を計数す
る計数器(カウンタ)及び計数器の出力値と前記メモリ
の出力値を比較する比較器(コンパレータ)を組み合せ
た回路を用いる。必要に応じて、比較器の出力するパル
ス幅変調された変調信号を表面伝導型電子放出素子の駆
動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加すること
もできる。
【0103】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器107には、例えばオペアンプなど
を用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフ
ト回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式
の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)を
採用でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動
電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもで
きる。
【0104】このような構成をとり得る本発明を適用可
能な画像表示装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dox1〜Doxm、Doy1〜Doynを介し
て電圧を印加することにより、電子放出が生ずる。高圧
端子Hvを介して、メタルバック85、あるいは透明電
極(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。
加速された電子は、蛍光膜84に衝突し、発光が生じて
画像が形成される。
【0105】ここで述べた画像形成装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技
術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号に
ついては、NTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに
限られるものではなく、PAL、SECAM方式などの
他、これよりも、多数の走査線からなるTV信号(例え
ば、MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも
採用できる。
【0106】次に、はしご型配置の電子源及び画像形成
装置について図11、図12を用いて説明する。図11
は、はしご型配置の電子源の一例を示す模式図である。
図11において、110は電子源基板、111は電子放
出素子である。112、Dx1〜Dx10は、電子放出
素子111を接続するための共通配線である。電子放出
素子111は、基板110上に、X方向に並列に複数個
配されている(これを素子行と呼ぶ)。この素子行が複
数個配されて、電子源を構成している。各素子行の共通
配線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に
駆動させることができる。即ち、電子ビームを放出させ
たい素子行には、電子放出しきい値以上の電圧を、電子
ビームを放出しない素子行には、電子放出しきい値以下
の電圧を印加する。各素子行間の共通配線Dx2〜Dx
9は、例えばDx2、Dx3を同一配線とすることもで
きる。
【0107】図12は、はしご型配置の電子源を備えた
画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図で
ある。120はグリッド電極、121は電子が通過する
ための空孔、122はDox1,Dox2・・・Dox
mよりなる容器外端子である。123はグリッド電極1
20と接続されたG1、G2・・・Gnからなる容器外
端子、110は各素子行間の共通配線を同一配線とした
電子源である。図12においては、図8、11に示した
部位と同じ部位には、これらの図に付したのと同一の符
号を付している。ここに示した画像形成装置と図8に示
した単純マトリクス配置の画像形成装置との大きな違い
は、電子源基板110とフェースプレート86の間にグ
リッド電極120を備えているか否かである。
【0108】図12においては、基板110とフェース
プレート86の間には、グリッド電極120が設けられ
ている。グリッド電極120は、表面伝導型放出素子か
ら放出された電子ビームを変調するためのものであり、
はしご型配置の素子行と直交して設けられたストライプ
状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応
して1個ずつ円形の空孔121が設けられている。グリ
ッドの形状や設置位置は図12に示したものに限定され
るものではない。例えば、空孔としてメッシュ状に多数
の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導型放
出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0109】容器外端子122およびグリッド容器外端
子123は、不図示の制御回路と電気的に接続されてい
る。
【0110】本例の画像形成装置では、素子行を1列ず
つ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。
【0111】本発明の画像形成装置は、テレビジョン放
送の表示装置、テレビ会議システムやコンピューター等
の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて構成された光
プリンターとしての画像形成装置等としても用いること
もできる。
【0112】
【実施例】以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳し
く説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもの
ではなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素
の置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0113】実施例1 電子放出素子として図1に示すタイプの電子放出素子を
作成した。図1(a)は本素子の平面図を、図1(b)
は断面図を示している。また、図1(a)、(b)中の
符号1は絶縁性基板、2および3は素子に電圧を印加す
るための一対の素子電極、4は電子放出部を含む薄膜、
5は電子放出部を示す。なお、図中のLは素子電極2と
3の素子電極間隔、Wは素子電極の幅、dは素子電極の
厚さを表している。
【0114】図3を用いて、本実施例の電子放出素子の
作成方法を述べる。絶縁性基板1として石英ガラス基板
を用い、これを有機溶剤により充分に洗浄後、基板面上
にNiからなる素子電極2、3を形成した(図3
(a))。素子電極間隔Lは30μmとし、素子電極の
幅Wを500μm、その厚さdを1000Åとした。
【0115】酢酸パラジウム(5−アミノペンタノー
ル)をパラジウム重量濃度で0.2%、ポリビニルアル
コールを0.1重量%、イソプロピルアルコールを25
重量%となるように水に混ぜ、電子放出部形成用材料水
溶液を作成した。この酢酸パラジウム(5−アミノペン
タノール)は、5−アミノペンタノール100ml中に
酢酸パラジウム5gを加え、約90℃で数十分間加熱し
た溶液をろ過、濃縮することによって得た。
【0116】上記の水溶液をピエゾ素子方式のインクジ
ェット装置(キヤノン製FP−510)の吐出ヘッド部
に充填し、外部より30Vの直流電圧を5μ秒印加する
ことによって石英基板1の上に電極2、3にまたがるよ
うに液滴を付与し、80℃で2分間乾燥させた後に25
0℃で12分焼成して無機微粒子膜4を形成した(図3
(c))。この薄膜を観察したところ、ほぼ円形で直径
約100μm、厚さのむらもなく析出物もなく均一な膜
が得られた。
【0117】次に、真空容器中で素子電極2および3の
間に電圧を印加し、電子放出部形成用薄膜4を通電処理
(フォーミング処理)することにより、電子放出部5を
作成した(図3(d))。フォーミング処理の電圧波形
を図4に示す。
【0118】本実施例では電圧波形のパルス幅T1を1
ミリ秒、パルス間隔T2を10ミリ秒として、三角波の
波高値(フォーミング時のピーク電圧)は5Vとし、フ
ォーミング処理は約1×10-6Torrの真空雰囲気下
で60秒間行った。続いて、アセトンを10-4Torr
導入し、フォーミングと同様のパルスで、電圧15Vを
30分間印加し、活性化工程を行った。このように作成
された電子放出部5は、パラジウム元素を主成分とする
微粒子が分散配置された状態となり、その微粒子の平均
粒径は50Åであった。
【0119】以上のようにして作成された素子につい
て、その電子放出特性を図5の構成の測定評価装置によ
り測定した。本電子放出素子およびアノード電極54は
真空装置内に設置されており、その真空装置には排気ポ
ンプ56および真空計等の真空装置に必要な機器が具備
されており、所望の真空下で本素子の測定評価を行える
ようになっている。なお本実施例では、アノード電極と
電子放出素子間の距離Hを4mm、アノード電極の電位
を1kV、電子放出特性測定時の真空装置内の真空度を
1×10-6Torrとした。
【0120】以上のような測定評価装置を用いて、本電
子放出素子の電極2および3の間に素子電圧を印加し、
その時に流れる素子電流Ifおよび放出電流Ieを測定
したところ、図6に示したような電流−電圧特性が得ら
れた。本素子では、素子電圧7V程度から急激に放出電
流Ieが増加し、素子電圧12Vでは素子電流Ifが
0.8mA、放出電流Ieが0.4μAとなり、電子放
出効率η=Ie/If(%)は0.05%であった。
【0121】以上説明した実施例中、電子放出部を形成
する際に、素子の電極間に三角波パルスを印加してフォ
ーミング処理を行っているが、素子の電極間に印加する
波形は三角波に限定することなく矩形波など所望の波形
を用いても良く、その波高値およびパルス幅・パルス間
隔等についても上述の値に限ることなく電子放出部が良
好に形成されれば所望の値を選択することができる。
【0122】実施例2 プロピオン酸パラジウム(6−アミノヘキサノール)を
パラジウム重量濃度で0.2%、ポリエチレングリコー
ル3重量%、イソプロピルアルコールを30重量%とな
るように水に混ぜ、電子放出部形成用材料水溶液を作成
した。
【0123】プロピオン酸パラジウム(6−アミノヘキ
サノール)は、6−アミノヘキサノール100ml中に
プロピオン酸パラジウム5gを加え、約80℃で数十分
間加熱した溶液をろ過、濃縮することによって得られ
た。
【0124】上記水溶液を用いて、実施例1と同様にピ
エゾジェット方式で、白金電極間に電子放出部形成用薄
膜を作成し、260℃で焼成、フォーミング、活性化工
程をした後電子放出特性を測定したところ、素子電圧1
2Vでは素子電流Ifが0.9mA、放出電流Ieが
0.5μAとなり、電子放出効率η=Ie/If(%)
は0.05%であった。
【0125】実施例3 実施例1で用いた電子放出部作成用材料水溶液をバブル
ジェット方式のインクジェット装置(キヤノン製BJ−
10V)によって、電極2、3を形成した石英基板の上
に電極2、3にまたがるように液滴付与し、80℃で2
分間乾燥させた後に250℃で12分焼成して無機微粒
子膜4を形成した(図3(c))。この薄膜を観察した
ところ、ほぼ円形で直径約100μm、厚さのむらもな
く、析出物もなく均一な膜が得られた。また、同インク
ジェット装置によりさらに数分間液滴を吐出し続けた後
に吐出へッドを分解してヒーター面を詳細に観察したと
ころ、ヒーター面に微小な析出物が観察された。この程
度の析出ではインクの吐出性能に影響を与えるほどでは
ない。しかしこのような吐出を長時間繰り返して行った
場合には、こげが堆積して吐出性能に変化を及ぼす可能
性を否定できない。
【0126】実施例4 16行16列の256個の素子電極とマトリクス状配線
とを形成した基板(図7)の各対向電極に対して、実施
例1と同様にして有機金属化合物溶液液滴をピエゾ方式
のインクジェット装置により付与し、焼成したのち、フ
ォーミング処理を行い電子源とした。
【0127】この電子源にリアプレート81、支持枠8
2、フェースプレート86を接続し真空封止して図8の
概念図に従う画像形成装置を作成した。端子Dox1な
いしDox16と端子Doy1ないしDoy16を通じ
て各素子に時分割で所定電圧を印加し端子Hvを通じて
メタルバック85に高電圧を印加することによって、任
意のマトリクス画像パターンを表示することができた。
【0128】
【発明の効果】本発明の電子放出部形成用材料を用いる
ことにより、従来と比較して低い温度の焼成で導電性薄
膜を形成することができ、安定な電子放出特性と高い電
子放出効率とを有する電子放出素子を低コストで提供で
きる。また本発明の方法によれば、高輝度で動作安定性
に優れた画像を形成可能な画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子
の構成を示す模式図である。
【図2】 本発明に適用可能な電子源形成用吐出ヘッド
の構成を示す模式図である。
【図3】 本発明の表面伝導型電子放出素子の製造方法
の一例を示す模式図である。
【図4】 本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子
の製造に際して採用できる通電フォーミングの処理にお
ける電圧波形の一例を示す模式図である。
【図5】 測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を
示す模式図である。
【図6】 本発明の適用可能な表面伝導型電子放出素子
についての放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vf
の関係の一例を示すグラフである。
【図7】 本発明の適用可能な単純マトリクス配置の電
子源の一例を示す模式図である。
【図8】 本発明の適用可能な単純マトリクス配置の画
像形成装置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図9】 蛍光膜の一例を示す模式図である。
【図10】 画像形成装置にNTSC方式のテレビ信号
に応じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロッ
ク図である。
【図11】 本発明の適用可能な梯子配置の電子源の一
例を示す模式図である。
【図12】 本発明の適用可能な梯子配置の画像形成装
置の表示パネルの一例を示す模式図である。
【図13】 従来の表面伝導型電子放出素子の一例を示
す模式図である。
【図14】 従来の表面伝導型電子放出素子の一例を示
す模式図である。
【符号の説明】
1:基板、2、3:素子電極、4:導電性薄膜、5:電
子放出部、21:ヘッド本体、22:ヒーター又はピエ
ゾ素子、23:インク流路、24:ノズル、25:イン
ク供給管、26:インク溜め、50:素子電極2、3間
の導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための
電流計、51:電子放出素子に素子電圧Vfを印加する
ための電源、52:電子放出部5−アノード電極54間
を流れる放出電流Ieを測定するための電流計、53:
アノード電極54に電圧を印加するための高圧電源、5
4:素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを
捕捉するためのアノード電極、55:真空装置、56:
排気ポンプ、71:電子源基板、72:X方向配線、7
3:Y方向配線、74:表面伝導型電子放出素子、7
5:結線、81:リアプレート、82:支持枠、83:
ガラス基板、84:蛍光膜、85:メタルバック、8
6:フェースプレート、87:高圧端子、88:外囲
器、91:黒色導電材、92:蛍光体、101:表示パ
ネル、102:走査回路、103:制御回路、104:
シフトレジスタ、105:ラインメモリ、106:同期
信号分離回路、107:変調信号発生器、VxおよびV
a:直流電圧源、110:電子源基板、111:電子放
出素子、112:Dx1〜Dx10は、電子放出素子1
11を配線するための共通配線、120:グリッド電
極、121:電子が通過するための空孔、122:Do
x1〜Doxmよりなる容器外端子、123:グリッド
電極120と接続されたG1〜Gnよりなる容器外端
子。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式Iで表される有機金属化合物: 【化1】 (式中、R1 は水素または炭素数1から4のアルキル
    基、R2 は炭素数5以上のアルキル基、R3 は炭素数5
    以上のポリメチレン基で、R2 およびR3 の合計炭素数
    が17以下、lは2から4の整数、mは1から4の整
    数、nは1または2、kは0または1、Mは金属イオ
    ン)を含有することを特徴とする、電子放出素子の電子
    放出部形成用材料。
  2. 【請求項2】 基板上に一対の対向する電極を形成し、
    該対向電極間に有機金属化合物を含む溶液を液滴の状態
    で付与し、加熱焼成し、得られた導電性薄膜の一部に電
    子放出部を形成する工程を含む電子放出素子の製造方法
    において、前記有機金属化合物が請求項1記載のもので
    あることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記溶液中の前記有機金属化合物の重量
    濃度が0.01〜10%であることを特徴とする請求項
    2に記載の電子放出素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記溶液が水溶性ポリマーを含有するこ
    とを特徴とする請求項2または3に記載の電子放出素子
    の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記水溶性ポリマーがポリビニルアルコ
    ール、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、
    ポリビニルピロリドンのいずれかであることを特徴とす
    る請求項4記載の電子放出素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記溶液中の前記水溶性ポリマーの濃度
    が0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項
    4または5に記載の電子放出素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記溶液が、炭素数1〜4の低級一価ア
    ルコールを含有することを特徴とする請求項4〜6のい
    ずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記低級アルコールが、メタノール、エ
    タノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−
    ブタノールのいずれかであることを特徴とする請求項7
    記載の電子放出素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記溶液中の前記低級アルコールの濃度
    が1〜35重量%であることを特徴とする請求項7また
    は8記載の電子放出素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記液滴の付与方法がインクジェット
    方式であることを特徴とする請求項2〜9いずれかに記
    載の電子放出素子の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記液滴の付与方法が圧電素子を用い
    たインクジェット方式であることを特徴とする請求項1
    0に記載の電子放出素子の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記液滴付与工程において、液滴を連
    続的に付与して、前記電導性薄膜を線状または面状に形
    成することを特徴とする請求項2〜11いずれかに記載
    の電子放出素子の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記電子放出素子が表面伝導型である
    ことを特徴とする請求項2〜12のいずれかに記載の電
    子放出素子の製造方法。
  14. 【請求項14】 電子放出素子と該素子への電圧印加手
    段を具備する電子源の製造方法であって、該電子放出素
    子を請求項2〜13のいずれかに記載の方法で製造する
    ことを特徴とする電子源の製造方法。
  15. 【請求項15】 電子放出素子と該素子への電圧印加手
    段を具備する電子源と、該素子から放出される電子を受
    けで発光する発光体とを具備する表示素子の製造方法で
    あって、該電子放出素子を請求項2〜13のいずれかに
    記載の方法で製造することを特徴とする表示素子の製造
    方法。
  16. 【請求項16】 電子放出素子と該素子への電圧印加手
    段を具備する電子源と、該素子から放出される電子を受
    けて発光する発光体と、外部信号に基づいて該素子へ印
    加する電圧を制御する駆動回路を具備する画像形成装置
    の製造方法であって、該電子放出素子を請求項2ないし
    13のいずれかに記載の方法で製造したことを特徴とす
    る電子源の製造方法。
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