JP2000119299A - 新規ペプチド及びそれを含有するエイズウイルス(hiv−1)プロテアーゼ阻害剤 - Google Patents

新規ペプチド及びそれを含有するエイズウイルス(hiv−1)プロテアーゼ阻害剤

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【解決手段】 特定のアミノ酸配列からなるペプチド、
ならびに同上アミノ酸配列において1若しくは数個のア
ミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列か
らなり、かつエイズウイルス(HIV-1)プロテアーゼ阻
害活性を有するペプチド、および該ペプチドを有効成分
として含有することを特徴とするエイズウイルス(HIV-
1)プロテアーゼ阻害剤。 【効果】 本発明によれば、HIV-1プロテアーゼ阻害活
性を有する新規ペプチドが提供される。本発明のペプチ
ドは、HIV-1プロテアーゼやエイズウイルスの性質を研
究する研究用試薬として、あるいは新しい化合物をデザ
インするリード化合物としての試薬として利用すること
ができる。また、その機能が臨床的に十分に評価されれ
ば、エイズの治療に利用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カキ(牡蠣)の加
熱変性蛋白の加水分解物中に存在する新規ペプチド、お
よび該ペプチドを有効成分として含有することを特徴と
するエイズウイルス(HIV-1)プロテアーゼ阻害剤に関
する。
【0002】
【従来の技術】エイズウイルス(HIV-1)プロテアーゼ
はHIV-1の前駆体蛋白質を切断し、ウイルス自体の酵素
と構造蛋白質を生成する。この過程はウイルス粒子の形
成に必須であり、HIV-1プロテアーゼ阻害剤はエイズの
治療に役立つとされている。HIV-1プロテアーゼは99個
のアミノ酸からなる蛋白質がホモ2量体を形成し、その
蛋白質分解活性を発現する。該酵素は活性中心にAsp-Th
r-Gly配列を有するなどのアスパラギン酸プロテアーゼ
としての特徴を有するため、ペプスタチンやアセチルペ
プスタチン(Ki=35nM, pH5.0)により阻害されるとされ
ている(FEBS Letters,Vol.2 47, p.113, 1989)。ま
た、HIV-1プロテアーゼはPhe-ProおよびTyr-Proの構造
を有する基質切断部位を特異的に認識して該プロリン残
基のイミノ基側のペプチド結合を切断するという、哺乳
動物の酵素にはない特徴を有するエンド型ペプチダーゼ
である(Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol. 156,
p297, 1988)。この点に着目して、Phe-Proを含む基質
の遷移状態を模倣した構造のインヒビターである Ro31-
8959(Saquinavir, IC50 <0.4 nM)、KNI-272(Ki=0.00
55 nM)などが多数合成されている(Science, Vol.248,
p358, 1990、医学のあゆみ,Vol.177, p.962, 1996、蛋
白質核酸酵素,Vol. 43, p.725, 1998、蛋白質核酸酵素,
Vol.43, p744, 1998)。
【0003】このように、エイズ治療を目的として様々
な合成HIV-1プロテアーゼ阻害剤についての研究がなさ
れ、その中には医薬として承認されているものもある。
しかし、これまでに開発された阻害剤の多くはペプスタ
チンや基質の遷移状態を模倣して合成されたペプチドで
あり、天然物中に見出されたものではない。また、それ
らに対する耐性ウイルスの出現もあり、阻害活性につい
て必ずしも十分満足なものとはいえず、より強力なHIV-
1プロテアーゼ阻害剤が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、エイズ関連の研究用試薬、医薬として利用すること
ができる、新規なHIV-1プロテアーゼ阻害剤を提供する
ことである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、新規なHI
V-1プロテアーゼ阻害物質を探索する対象として各種天
然物材料を検討した結果、カキが感染性の生物に汚染さ
れているケースが希にあり、免疫力の弱いエイズ感染者
がカキを生食することの危険性が指摘されている(Gastr
oenterology, Vol.92, p.796, 1987、J.Am.Diet.Asso
c., Vol.94, p.312, 1994)ことに着目し、かかる感染性
の生物に汚染された場合の防御としてカキが何らかの抗
ウイルス、抗菌性物質を生産している可能性があるので
はないかと考えた。そこで、本発明者らは、カキを加熱
処理して変性蛋白を得、それをさらにプロテアーゼによ
り加水分解したところ、その加水分解物中にHIV-1プロ
テアーゼ阻害活性を有する低分子ペプチドを見出し、該
ペプチドを単離精製してそのアミノ酸配列を決定するこ
とに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0006】すなわち、本発明は、以下の(a)または
(b)のペプチド; (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプ
チド、(b)配列番号1のアミノ酸配列において1若し
くは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加された
アミノ酸配列からなり、かつエイズウイルス(HIV-1)
プロテアーゼ阻害活性を有するペプチド、である。上記
のアミノ酸の欠失、置換、付加は、公知技術(例えば固
相合成法)により実施することができる。
【0007】かかるペプチドとして具体的には、配列番
号1のアミノ酸配列において、C末端のイソロイシンが
ロイシンに置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、
または、配列番号1のアミノ酸配列において、C末端の
イソロイシンが欠失したアミノ酸配列からなるペプチド
が挙げられる。本発明はまた、上記ペプチドを有効成分
として含有することを特徴とするエイズウイルス(HIV-
1)プロテアーゼ阻害剤である。以下、本発明を詳細に
説明する。
【0008】
【本発明の実施の形態】本発明のペプチドは、例えば加
熱変性させたカキ蛋白質の加水分解物より単離すること
ができる。ここで、該ペプチドを単離するカキの種類
は、特に限定はされないが、マガキ(Crassostrea giga
s)、スミノエガキ(C.ariakensis)、イタボガキ(Ostrea
denselamellosa)等が好適に用いられる。また、本発明
のペプチドと同一のアミノ酸配列部分を有する他の生物
の蛋白質の加水分解物より単離することもできる。その
ような生物として、トウモロコシ(Zea mays)、酵母(Sac
charomyces cerevisiae)、Photobacterium leiognathi
等が例示される。
【0009】また、本発明のペプチドは有機化学的な合
成方法によりアミノ酸を段階的に導入する通常のペプチ
ド合成法や、あるいは遺伝子工学的手法を用いても生産
することができる。以下に、本発明のペプチドをカキよ
り単離精製する方法を具体的に説明する。殻をむいたカ
キを蒸留水に入れ、80〜100℃で5〜15分加熱変性処理し
た後に、ホモジェナイズ処理する。
【0010】得られたホモジェネートにトリス塩酸緩衝
液を加え、さらにホモジェネートに対し、0.1〜10重量
%、好ましくは1〜4重量%のプロテアーゼを添加し、20
〜70℃で0.5〜24時間攪拌して酵素による加水分解反応
を行なわせる。反応により生じた沈殿物をろ過して除去
し、ろ過液をさらに限外ろ過膜を使用してろ過し、分子
量10,000以下の低分子量物質を回収する。使用する限外
ろ過膜としては、例えばYM-10(アミコン社)が挙げら
れる。
【0011】上記低分子量物質をカラムに負荷し、30%
メタノールで溶出してHIV-1プロテアーゼ阻害活性を有
する画分を回収する。次いで、この画分をカラムに負荷
して、蒸留水で溶出される画分を回収し、さらに得られ
た画分をカラム負荷して、0〜1 Mの塩化ナトリウムの直
線濃度勾配により溶出される活性画分を回収する。
【0012】上記活性画分をHPLCに供し、0〜63%のメ
タノール直線濃度勾配溶出により分画する。活性画分を
さらに0〜63%のアセトニトリル直線濃度勾配によりHPL
Cで分画し、アセトニトリル42%付近に溶出される活性
画分を回収する。回収した活性画分を減圧乾固すること
により、HIV-1プロテアーゼ阻害活性を有する本発明の
ペプチドを得ることができる。
【0013】上記プロテアーゼとしては、微生物由来の
プロテアーゼ、例えば、Bacillus thermoproteolyticu
s、Bacillus subtilis、Bacillus megaterium、Pseudom
onasaeruginosa等を由来とするプロテアーゼが挙げられ
る。具体的には、Bacillus thermoproteolyticus由来の
サーモリシン(シグマ社製)、Bacillus subtilis由来
の中性プロテアーゼ等が好適に使用されうる。
【0014】得られた加水分解物は、例えば、限外濾過
膜、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、逆相カ
ラムによる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の常套
的手段にて精製することにより得ることができる。本発
明のペプチドをペプチド合成法によって得る場合は、固
相ペプチド合成法または液相ペプチド合成法を用いれば
よく、例えば泉屋信夫著「ペプチド合成の基礎と実験」
(丸善発行)などに記載されている方法に準じて行えばよ
い。
【0015】また、加水分解酵素の逆反応を利用したペ
プチド合成法により行うこともでき、この場合は、例え
ば、一島英治編「プロテアーゼ」(学会出版センター発
行)などに記載されている方法に準じて行えばよい。本
合成法では、サーモリシン、カルボキシペプチダーゼY
等の酵素を使用し、一般に酵素、原料の保護アミノ酸と
も、分解反応における値よりも高濃度を添加し、必要に
応じてメタノール、ジメチルホルムアルデヒド等の有機
溶媒を添加した状態で反応させてアミノ酸のペプチド結
合を順次形成させる。
【0016】また、本発明のペプチドを、遺伝子工学的
方法により得る場合は、該ペプチドをコードする遺伝子
を含むDNAを挿入した組み換え体DNAにより、宿主
細胞を形質転換または形質導入し、得られた組み換え宿
主を用いて生産させるという自体公知の手法により行う
ことができる。
【0017】上記のようにして得られた本発明のペプチ
ドのプロテアーゼ阻害活性は、次の方法で測定すること
ができる。すなわち、HIV-1プロテアーゼに緩衝液を加
えたものを酵素溶液、またHis-Lys-Ala-Arg-Val-Leu-p-
nitro-Phe-Glu-Ala-Nle-Ser-NH2を蒸留水に溶解したも
のを基質溶液とし、本発明のペプチド試料溶液と前記基
質溶液とを混合し、さらに上記酵素溶液を加えて酵素反
応させて、反応停止後に遊離してくるp-nitro-Phe-Glu-
Ala-Nle-Ser-NH2をHPLCにより定量し、阻害率を算出す
ればよい。
【0018】本発明のペプチドまたはその塩は、そのま
まで、または通常用いられる固体担体、液体担体、乳化
分散剤等により錠剤、粉剤、水和剤、乳剤、カプセル剤
等の形に製剤化してHIV-1プロテアーゼ阻害剤として使
用することができる。上記担体としては、水、ゼラチ
ン、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、ラクトース、ア
ラビアゴム、植物油等が挙げられる。
【0019】上記本発明のペプチドの塩としては、製剤
学上許容されうる酸付加塩および塩付加塩である。製剤
学上許容されうる酸付加塩として、例えば、塩酸、硫
酸、硝酸、リン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、プロ
ピオン酸、グリコール酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石
酸、クエン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸との塩等が
挙げられ、また製剤学上許容されうる塩付加塩として
は、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属
塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウ
ム、エタノールアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘ
キシルアミン等のアミン類との塩等が挙げられる。
【0020】本発明のペプチドを有効成分として含有す
るエイズウイルス(HIV-1)プロテアーゼ阻害剤の使用
形態としては、例えば静脈注射、直腸投与等の非経口的
投与、あるいは経口的投与が例示される。HIV-1プロテ
アーゼ阻害剤中における本発明のペプチドの含有量は、
その投与経路、剤形によって適宜変更しうるが、例え
ば、製剤全重量に対して本発明のペプチドを5〜90重量
%、好ましくは10〜60重量%含有させる。あるいは、血
液中における本発明のペプチドの濃度が0.005〜0.05μM
の範囲となるように製剤を設計することが好ましい。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例、試験例に基づいて説
明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではな
い。 [実施例1] (HIV-1プロテアーゼ阻害物質の単離精
製) 殻を剥いだ日本産マガキ(Crassostrea gigas)100gを蒸
留水300mlに入れ、10分間沸騰させて熱変性させた後、
ポリトロンを用いてホモジェナイズ処理した。体積30ml
のホモジェネートに50mlのトリス塩酸緩衝液(100mM, p
H8.2、10mM塩化カルシウムを含む)を加え、さらにプロ
テアーゼとして32mgのサーモリシン(シグマ社製)を添
加し、37℃で4.5時間撹拌した。ろ紙で沈殿物を除去し
た後、ろ過液を分画分子量10,000の限外濾過膜YM-10
(アミコン社)に付して、膜を通過する低分子量の物質
を回収した。この試料をセファデックスLH-20カラム
(ファルマシア社、26× 900 mm)に負荷し、30%メタ
ノールで溶出し、HIV-1プロテアーゼに対する阻害活性
(測定法については後記試験例1に記載)を有する画分
(即ち、254〜267mlの画分)を回収した。次いで、この
画分をSPトヨパール650Sカラム(東ソー社、16× 650 m
m)に負荷し、蒸留水で溶出される素通り画分(95〜100
mlに溶出)を回収した。これを更に、スーパーQトヨパ
ール650Sカラム(東ソー社、16× 650 mm)に負荷し、0
〜1Mの塩化ナトリウムの直線濃度勾配により溶出される
活性画分(185〜190mlに溶出)を回収した。この活性画
分を更にμBondapak C18カラム(ウォーターズ社3.9 ×
300 mm)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
で、0〜63%のメタノールの直線濃度勾配溶出により分
画した。活性画分を更に、μBondasphere C18カラム
(ウォーターズ社3.9 × 150 mm)を用いたHPLC(0.1%
トリフルオロ酢酸を含む0〜63%のアセトニトリルによ
り溶出)で分画し、アセトニトリル濃度42%付近に溶出
される活性画分(ピークの形状には僅かに肩がある)を
得た。回収した物質を減圧乾固して最終標品とした。
【0022】阻害活性物質の構造をヒューレットパッカ
ード社プロテインシークエンサーG1000Aにより解析した
ところ、配列番号1および2のそれぞれで表されるアミ
ノ酸配列を有する2種のペプチドの混合物と推定され
た。
【0023】[実施例2] (ペプチドの化学合成) まず、実施例1において推定した配列番号1で表される
アミノ酸配列(Leu-Leu-Glu-Tyr-Ser-Ile)を有するペ
プチド(以下、ペプチド1という)を、以下の手順によ
り合成した。また、同じく実施例1において推定した配
列番号2で表されるアミノ酸配列(Leu-Leu-Glu-Tyr-Se
r-Leu)を有するペプチド(以下、ペプチド2とい
う)、および、配列番号3で表されるアミノ酸配列(Le
u-Leu-Glu-Tyr-Ser)を有するペプチド(以下、ペプチ
ド3という)についてもこれに準じて合成した。
【0024】まず、アプライド・バイオシステムズ社製
ペプチド合成装置(430A型)に、0.5ミリモルのBoc-Ile
-O-CH2-PAM樹脂および各2ミリモルのBoc-Leuカートリッ
ジ2本、及びBoc-Glu(OBzl)、Boc-Tyr(Br-Z)、Boc-Ser(B
zl)カートリッジを装填し、DCCによる無水対称法により
Leu-Leu-Glu(OBzl)-Tyr(Br-Z)-Ser(Bzl)-Ile-O-CH2-PAM
を合成した。なお、Bocはt-ブチルオキシカルボニル
基、Obzlはベンジルオキシ基、Br-Zはブロモベンジルオ
キシカルボニル基、Bzlはベンジル基を示す。また、こ
こで用いるアミノ酸は全てL体である。次に、ペプチド
研究所製フッ化水素装置に上記合成ペプチド樹脂を導入
し、アニソール1.5mlを添加後、フッ化水素10mlを導入
した。-2℃、1時間の反応後、フッ化水素を減圧化に除
去し、ペプチドを無水エーテル、クロロホルムで交互に
3回洗浄し、2N酢酸60mlにペプチドを溶解させ、凍結
乾燥した。次いで、該ペプチドを下記条件下でHPLCによ
り精製した。HPLC条件: カラム:メルク社製 LiChrospher RP-18(e)(10× 250
mm) 溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸を含む3.5〜67%アセト
ニトリルの直線濃度勾配 流速:6ml/min
【0025】上記で精製したペプチドを減圧下で乾燥し
たところ、いずれのペプチドについても約25mgの白色粉
末を得た。さらに、合成したペプチドを110℃で24時
間、4Nメタンスルホン酸により加水分解後、日立L-850
0Aアミノ酸分析装置によりアミノ酸分析を行うことによ
りその構造を確認した。
【0026】ペプチド1の下記条件下でのHPLCによる保
持時間は13.3分であり、上記実施例1でカキの酵素加水
分解物から精製した物質のHPLCピークの保持時間と一致
した。また、ペプチド2についても下記HPLC条件下での
HPLCによる保持時間は13.5分であり、実施例1でカキの
酵素加水分解物から精製した物質のHPLCピークの僅かな
肩の部分の保持時間と一致した。HPLC条件: カラム:μBondasphere C18(ウォーターズ社3.9 × 15
0 mm) 溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸を含む0〜63%のアセト
ニトリルの直線濃度勾配(20分) 流速:1ml/min
【0027】[試験例1] (HIV-1プロテアーゼ阻害活
性の測定) (1)阻害活性試験法 実施例1の精製過程におけるHIV-1プロテアーゼ阻害活
性の測定は下記の方法により行い、実施例2により合
成した各ペプチドのHIV-1プロテアーゼ阻害活性の測定
は下記の方法により行った。
【0028】 精製過程に於けるHIV-1プロテアーゼ
阻害活性の測定 バケム社より購入したHIV-1プロテアーゼ(遺伝子組み
換えにより大腸菌で生産させたもの)を緩衝液(100mM
酢酸ナトリウム緩衝液、pH 4.9、200mM 塩化ナトリウ
ム、5mM ジチオトレイトール、10%(V/V)グリセロールを
含む)に溶解し0.020mg/mの酵素溶液とした。また、1mg
/mlのHis-Lys-Ala-Arg-Val-Leu-p-nitro-Phe-Glu-Ala-N
le-Ser-NH2(バケム社製)を蒸留水に溶解し基質溶液と
した。0.5ml容量のプラスチックチューブに、上記緩衝
液100μl、基質溶液10μl、試料溶液10μlを入れ、37℃
で5分間保温した後、上記酵素溶液25μlを加えよく混合
して、37℃で15分の反応を行った。その後、10%トリフ
ルオロ酢酸15μlを添加することにより反応を停止させ
た。反応停止後酵素反応により遊離してくるp-nitro-Ph
e-Glu-Ala-Nle-Ser-NH2を、下記条件下でHPLCにより定
量した。
【0029】HPLC条件: カラム:μBondasphere 5μC8 300Å(ウォーターズ社
3.9 × 150 mm) 溶出液:0.1%トリフルオロ酢酸を含む0〜63%のアセト
ニトリルの直線濃度勾配(20分) 流速:1ml/min 検出:300 nmにおける吸収を測定 このような実験を複数回行い、阻害率を次の式より算出
した。
【0030】
【式1】阻害率= (A−B) / A × 100 (%) 〔式中、A:阻害剤を含まない場合のp-nitro-Phe-Glu-
Ala-Nle-Ser-NH2のピーク面積、B:阻害剤添加の場合
のp-nitro-Phe-Glu-Ala-Nle-Ser-NH2のピーク面積〕
【0031】 合成ペプチドのHIV-1プロテアーゼ阻
害活性の測定 と同様にバケム社より購入したHIV-1プロテアーゼ
(遺伝子組み換えにより大腸菌で生産させたもの)を緩
衝液(100mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH 4.9、200mM 塩
化ナトリウム、5mM ジチオトレイトール、10%(V/V)グリ
セロールを含む)に溶解し0.020mg/mの酵素溶液とし
た。また、1mg/mlのHis-Lys-Ala-Arg-Val-Leu-p-nitro-
Phe-Glu-Ala-Nle-Ser-NH2(バケム社製)を蒸留水に溶
解し基質溶液とした。0.5ml容量のプラスチックチュー
ブに、上記緩衝液100μl、試料溶液10μl、酵素溶液25
μlを入れ、37℃で5分間保温した後、基質溶液10μlを
加えよく混合して、37℃で20分の反応を行った。その
後、10%トリフルオロ酢酸15μlを添加することにより
反応を停止させた。以下と同様に反応停止後酵素反応
により遊離してくるp-nitro-Phe-Glu-Ala-Nle-Ser-NH2
をHPLCにより定量し、阻害率を算出した。
【0032】(2)精製した阻害物質および合成ペプチ
ドのHIV-1プロテアーゼ阻害活性 実施例1において最終的にμBondasphere C18カラムで
精製した阻害物質のHIV-1プロテアーゼ阻害活性を前記
(1)に準じて測定した結果、該阻害物質は0.034μM
の濃度で79%のHIV-1プロアーゼ阻害活性を示した。
【0033】また、実施例2で合成したペプチド1〜3、
および実施例2に準じて合成した比較用ペプチド1:Leu
-Leu-Glu-Tyr(配列番号4)および比較用ペプチド2: Leu
-Glu-Tyr-Ser(配列番号5)のHIV-1プロアーゼ阻害活性を
前記(1)に準じて測定し、その阻害率が50%になる
ペプチド濃度をさらにIC50値で表した。また、ペプチド
1、2について、前記(1)の測定法に準じて、添加す
る基質濃度を0.65〜5.3 mg/mlの間で5段階に変化させ
た際のHIV-1プロテアーゼの反応速度の変化を測定する
実験を行なった。得られた結果をLineweaver-Burkプロ
ットで表すことにより、ペプチド−酵素複合体の解離定
数Kiの値を求めた。得られたIC50値およびKi値を表1に
示す。
【0034】
【表1】
【0035】表1に示されるように、ペプチド1とペプ
チド2はほぼ同等なHIV-1プロテアーゼ阻害活性を示し
た。また、これらのペプチドのC末端アミノ酸Ileまた
はLeuが欠失したペプチド3にも弱いHIV-1プロテアーゼ
阻害活性が認められた。比較用ペプチド1および2につ
いては、両者とも非常に弱い活性しか認められなかっ
た。
【0036】次に実施例2に準じた方法で、比較用のペ
プチドLeu-Leu-Gluを合成し、また、市販のLeu-Leu(シ
グマ社製)、Leu-Glu(バケム社製)、Leu-Leu-Tyr(シ
グマ社製)、Leu-Leu-Val-Tyr(バケム社製)も含め、H
IV-1プロテアーゼ阻害活性を前記(1)に準じて測定し
た。結果は表2に示したが、いずれのペプチドも殆ど活
性は認められなかった。
【0037】
【表2】
【0038】[試験例2] 合成ペプチドの他のプロテア
ーゼ、ペプチドに対する効果 実施例2にて合成したペプチド1(Leu-Leu-Glu-Tyr-Se
r-Ile:配列番号1)、ペプチド2(Leu-Leu-Glu-Tyr-Ser
-Leu:配列番号2)、ペプチド3(Leu-Leu-Glu-Tyr-Se
r:配列番号3)の酵素特異性について、表3に示す代表
的なプロテアーゼを用いて酵素阻害率を調べた。結果を
表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】ペプチド1はアンジオテンシンI変換酵素
を僅かに(31%)阻害したが、これは該ペプチドがアンジ
オテンシンI変換酵素の基質となっているためと推定さ
れる。HIV-1プロテアーゼと同様に活性中心にアスパラ
ギン酸を有するアスパラギン酸プロテアーゼであるペプ
シンおよびレニンはペプチド1、2および3によっては
阻害されず、ペプチド1、2および3は何れもHIV-1プロ
テアーゼを選択的に阻害することがわかる。
【0041】
【発明の効果】本発明により、HIV-1プロテアーゼ阻害
活性を有する新規ペプチドが提供される。本発明のペプ
チドは、HIV-1プロテアーゼやエイズウイルスの性質を
研究する研究用試薬として、あるいは新しい化合物をデ
ザインするリード化合物としての試薬として利用するこ
とができる。また、その機能が臨床的に十分に評価され
れば、エイズの治療に利用できる。
【0042】
【配列表】SEQUENCE LISTING <110> Director-General of Agency of Industrial S
cience and Technology <120> Novel peptides and HIV-1 virus protease in
hibitor containing thesame <130> 11900228 <160> 5 <210> 1 <211> 6 <212> PRT <213> Crassostrea gigas <400> 1 <210> 2 <211> 6 <212> PRT <213> Crassostrea gigas <400> 2 <210> 3 <211> 5 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 3 <210> 4 <211> 4 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 4 <210> 5 <211> 4 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 5
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年10月6日(1999.10.
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正内容】
【0006】すなわち、本発明は、以下の(a)または
(b)のペプチド; (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプ
チド、(b)配列番号1のアミノ酸配列において1個の
アミノ酸が、欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配
列からなり、かつエイズウイルス(HIV-1)プロテアー
ゼ阻害活性を有するペプチド。または、配列番号1のア
ミノ酸配列において数個のアミノ酸が置換もしくは付加
されたアミノ酸配列からなり、かつエイズウイルス(HI
V-1)プロテアーゼ阻害活性を有するペプチド。であ
る。上記のアミノ酸の欠失、置換、付加は、公知技術
(例えば固相合成法)により実施することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正内容】
【0042】
【配列表】SEQUENCE LISTING <110> Director-General of Agency of Industrial S
cience and Technology <120> Novel peptides and HIV-1 virus protease in
hibitor containing thesame <130> 11900228 <160> 5 <210> 1 <211> 6 <212> PRT <213> Crassostrea gigas <400> 1 <210> 2 <211> 6 <212> PRT <213> Crassostrea gigas <400> 2 <210> 3 <211> 5 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 3
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C12N 9/99 C12N 15/00 A Fターム(参考) 4B024 AA11 AA20 BA19 4H045 AA10 AA30 BA13 BA14 CA52 DA56 EA50 FA34 FA61 FA65 FA70 GA10 GA22 GA23 GA25

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の(a)または(b)のペプチド; (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプ
    チド、(b)配列番号1のアミノ酸配列において1若し
    くは数個のアミノ酸が、欠失、置換若しくは付加された
    アミノ酸配列からなり、かつエイズウイルス(HIV-1)
    プロテアーゼ阻害活性を有するペプチド。
  2. 【請求項2】 配列番号1のアミノ酸配列において、C
    末端のイソロイシンがロイシンに置換されたアミノ酸配
    列からなる、請求項1記載のペプチド。
  3. 【請求項3】 配列番号1のアミノ酸配列において、C
    末端のイソロイシンが欠失したアミノ酸配列からなる、
    請求項1記載のペプチド。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のペプチ
    ドを有効成分として含有することを特徴とするエイズウ
    イルス(HIV-1)プロテアーゼ阻害剤。
JP28898698A 1998-10-12 1998-10-12 新規ペプチド及びそれを含有するエイズウイルス(hiv−1)プロテアーゼ阻害剤 Expired - Lifetime JP3362178B2 (ja)

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