JP2000108897A - 車両における長尺状部材の凍結防止方法およびその凍結防止装置 - Google Patents
車両における長尺状部材の凍結防止方法およびその凍結防止装置Info
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Abstract
て、鉄道などの車両の乗降口ドアが凍結することがあ
る。複数の客車の乗降口ドアは、乗務員の遠隔操作によ
って一斉に開閉されるが、凍結によって開閉しなくなる
場合がある。乗降口ドアを凍結防止ヒータで温めて凍結
を防止しているが、凍結防止ヒータの温度が上がりすぎ
ると、乗客が焼傷する危険がある。 【解決手段】 凍結防止ヒータに自己温度制御型シーズ
ヒータ4を用い、該ヒータと乗降口ドア12用のガイド
レール2との間に銅の板状部材3を介層することによ
り、温度制御装置を用いることなしに、所定の温度で、
かつ、均一に、ガイドレール2を温め、凍結を防止す
る。また、凍結防止のために最適な温度を設定する。
Description
ける長尺状部材の凍結を防止する方法、およびその装
置、特には鉄道車両の客車の乗降口を開閉するドアのガ
イドレール又はガイドのような長尺状部材の凍結を防止
する方法およびその凍結防止装置に関する。
いては、着雪や凍結さらには融雪水の凍結等々が交通手
段である車両の運転に障害を与える場合が多い。特に問
題となるのは、鉄道等の公的社会的性質の大量輸送交通
機関での障害であり、不特定多数の乗客の安全で確実な
輸送を確保する上では重要な問題である。
の遠隔操作によって客車の多数の乗降口ドアを一斉に開
閉する場合である。この乗降口ドアは、乗客を所定の地
点間で輸送する場合に確実に開閉することが求められ
る。しかし、降雪や積雪のある地域および寒冷地では、
乗降口ドアに着雪を生じたり凍結を生じたりして当該乗
降口ドアが開閉しない場合がある。
中に雪を巻き上げて着雪する。また、わずかな水分があ
るだけでも凍結する。さらには、車両内の暖房等により
車両内に浸入した雪が融けてその融水が走行中の風、す
なわち走行風を受けて凍結する。そして、これらの着雪
や凍結により、乗降口ドアが車掌等の乗務員の遠隔操作
によって開閉しなくなるのである。
全ての乗降口ドア数は30(左右合計60)にも及ぶ
が、不特定多数の乗客の安全で確実な輸送を確保する上
ではこのうちの1つとして、凍結による開閉障害を生じ
てはならない。
るための手段が用いられている。凍結は、乗降口ドアと
そのガイドレール又はガイドとの間において発生する。
る長尺状部材の凍結防止方法およびその装置を説明す
る。
閉ドアの概要を示す図で、(a)は鉄道車両(以下、車
両という)の側面図、(b)は車両の1つの乗降口ドア
についてそのガイド機構を示す側面図である。図におい
て、車両11の乗降口ドア12は図示しないアクチュエ
ータにより駆動されて乗降口14のガイドレール2に沿
って、さらに戸袋13内のガイド15に沿って矢印X方
向にスライド移動し、開閉する仕組みであり、その開閉
指令は車掌等の乗務員の遠隔操作によりー括して行われ
る。なお、床1は乗客の搭乗床である。
斜視図である。図において、床1に設けたガイドレール
2と乗降口ドア12に設けてある凹条溝16が嵌め合わ
されていて、このガイドレール2に沿って乗降口ドア1
2は矢印X方向に移動し開閉する。
である。図において、乗降口ドア12は、断面が「コ」
の字状の2つのガイド15によって挟まれて案内され、
このガイド15に沿って乗降口ドア12は矢印X方向に
移動し開閉する。
結を防止するためのヒータ(以下、凍結防止ヒータとい
う)の配置を示す図で、(a)は乗降口のガイドレール
や戸袋内のガイドにヒータを設けている状態を示す図、
(b)は(a)において凍結防止ヒータの温度制御を行
う場合の構成を示すブロック図である。
2や戸袋13内のガイド15にそれぞれシーズヒータ1
0を設けて加熱し、凍結を防止する仕組みである。それ
ぞれのシーズヒータ10の取り付けは、押さえ板5でシ
ーズヒータ10を押さえて数個の固定ねじ6で固定して
いる。なお、乗降口14のガイドレール2は床1を介し
てシーズヒータ10により加熱される。シーズヒータ1
0の発熱線10aには図示しない電源から電力が与えら
れる。
防止する必要から、シーズヒータ10のみではなく、加
熱部分の温度を温度センサ17で検出し、該加熱部分の
温度を予め決めた所定の温度に維持させるための温度制
御装置18を備える場合もある。図7(b)はその際の
構成を示すブロック図であり、通常のフィードバック制
御が用いられている。
されるそれぞれの被加熱部、すなわちガイドレール2や
ガイド15に設けた温度センサ17の温度検出信号TF
を温度制御装置18に入力し、この温度制御装置18の
温度設定部19に予め設定された温度になるようにシー
ズヒータ10に供給される電力PH が制御される仕組み
である。
用せずにシーズヒータ10のみをガイドレール2やガイ
ド15に設けた場合には、シーズヒータ10の電力(あ
るいはガイドレール2やガイド15の単位長さ当たりの
シーズヒータ10の電力)の選定が極めて難しい。例え
ば、降雪量が多く気温も最も低い凍結し易い場合にも確
実に凍結を防止できる程度のシーズヒータ10の発熱
量、すなわち、電力の大きさを選定すると、降雪量が少
なく気温も相対的に高い場合にはガイドレール2の温度
が過度に上昇し、乗客の乗降に際して熱的ショックを受
けるなどの危険を生じる可能性があるからである。
降口ドア12やその戸袋13に走行風すなわち外気が吹
き当たり、当該部分が急速に冷却されて温度が低下する
ので、シーズヒータ10の電力を選定する際にはこれに
よる温度低下も見込んでおく必要があり、これにより前
記の危険はさらに大きいものとなる。
ズヒータ10の電力を小さく選定すると、降雪量が多
く、気温が低下した際に乗降口ドア12に凍結を生じ、
乗客を安全かつ確実に乗降させることができなくなる。
温度制御装置18を設けることは必ずしも合理的な選択
とはならない。それは、全ての乗降口ドア12のガイド
レール2およびガイド15に対して、温度センサ17と
温度制御装置18を設ける必要があるからであり、その
分だけ車両の購入コストが上昇し、また、車両運行の信
頼性の上から行われる、それら温度制御装置18のメン
テナンス作業に要するコストも大きな負担となるからで
ある。
ガイド15等のように、凍結を防止するべき部分が長尺
状の場合にあっては、さらに別の問題が発生する。
イドレール2およびガイド15の温度分布を示す図であ
り、図7に示すようにガイドレール2やガイド15の中
央位置に温度センサ17を設けて、温度制御装置18に
より当該箇所の温度を所定の温度に維持するようにした
場合の各位置における温度実測例である。図8(a)は
乗降口14のガイドレール2の例を示し、(b)は戸袋
13内のガイド15の例を示している。なお、図中の記
号A,B,C,D,E,Fは、図7(a)において記号
A,B,C,D,E,Fが指し示す部分の位置を示して
いる。
両の走行により乗降口14の両側端部位置A,Cに着雪
が集中し易く、当該位置A,Cの温度が低下し易い。す
なわち、図8(a)に示すように、ガイドレール2の位
置Bにおける温度が予め決めた所定の温度Tgに維持さ
れているが、両側端部位置A,Cにおける温度はTl,
T2 に低下してしまう。そのため、当該位置A,Cに凍
結を生じる可能性がある。
内のガイド15部分の位置Eにおける温度は予め決めた
所定の温度Tg に維持されているが、戸袋13の入口位
置Dでは温度T3 に低下し、戸袋13内の奥の位置Fで
は温度T4 に上昇してしまう。すなわち、戸袋13の入
口位置Dでは着雪が発生し、また走行風も吹き当たって
温度が低下し、凍結を生じる可能性がある。
て説明したような問題を解消するためには、乗降口ドア
12のガイドレール2では位置A,B,Cに、それぞれ
温度センサ17を設ける必要があり、戸袋13内のガイ
ド15では位置D,E,Fに、それぞれ温度センサ17
を設ける必要がある。そして、各温度センサ17の検出
温度の平均値で温度制御を行う等の複雑な処理を必要と
する。なお、これによっても図8(a)、(b)に示す
温度差の発生を解消することはできない。
り、複雑な温度制御処理を行わなくても、前記のガイド
レールやガイドのような、車両における長尺状部材の凍
結を防止できるようにして、特には、不特定多数の乗客
を輸送する車両において、その多数の乗降口ドアを遠隔
操作によって確実に開閉させ、所定運行時間に則って、
それら乗客を安全かつ確実に、乗客が希望する所定区間
を輸送できるようにすることにある。
のヒータ電力の決定方法を確立し、さらに、鉄道のよう
に公的社会的性質の輸送機関の車両に用いられて、運行
の信頼性を確実に保証できる凍結防止装置を得ることに
ある。
を介して自己温度制御型ヒータにより車両のガイドレー
ルなどの長尺状部材を加熱することにより凍結を防止す
るように構成したところに特徴があり、さらには車両に
おいて、そのヒータの電力を決定する際の基準を確立し
て、安全かつ確実に凍結を防止できるようにしたところ
に特徴がある。
る自己温度制御型ヒータは、所定の電圧において、ヒー
タ自体の温度によりその抵抗値が変化し、つまり該温度
を所定の温度範囲に維持するようにその抵抗値が変化し
てその消費電力が変化する。
なく長尺状部材を加熱して所定の温度範囲に維持し、当
該部材を過度に加熱することなく、また凍結する程度に
温度低下させることなく、その凍結を防止することがで
きる。さらに、自己温度制御されるので必要以上に被凍
結防止部分である長尺状部材の温度が上昇することもな
い。
分がその温度により部分的に抵抗値が変化し当該部分の
電力を変化させることができる並列型のヒータと、部分
的に抵抗値が変化してもヒータ全体としてその電力を変
化させる直列型のヒータとがある。そして、並列型のヒ
ータは部分的な温度低下に対しても当該部分の温度を所
定の温度に維持しようとするため、長尺状部材の凍結防
止には好適である。また、直列型のヒータも長尺状各部
間に長尺状の銅板を介するなどの熱伝導率を特に良好に
するための手段を用いることにより、前記のような部分
的な温度低下を防止して所定の温度に維持し、その凍結
を効果的に防止することができる。
尺部材の凍結防止方法は、それぞれが複数の乗降口ドア
12を有する複数の車両11の所定数の前記乗降口ドア
を遠隔操作によって一斉に開閉する前記各車両に備えら
れている前記乗降口ドアをガイドする長尺状のガイドレ
ール2又はガイド15に沿って長尺状のヒータをそれぞ
れ設け、前記ヒータに電力を供給して前記ガイドレール
又はガイドを熱伝導により加熱して凍結を防止する車両
における長尺状部材の凍結防止方法であって、前記ヒー
タとして自己温度制御型ヒータ4を用い、前記各自己温
度制御型ヒータと前記各ガイドレール又はガイドとの間
に銅の板条部材3を介して該各ガイドレール又はガイド
を熱伝導により加熱して凍結を防止することである。
ドアが車掌等の乗務員の遠隔操作により一斉に開閉する
仕組みとなっている。したがって、不特定多数の乗客を
安全、かつ確実にその運行時間に合わせて所定区間に輸
送するためには、いずれの乗降口ドアも凍結することな
く、安全かつ確実に開閉する必要がある。しかも、乗客
に対する高温度の危険はあってはならない。さらに、車
両コストやメンテナンスコストの上昇は即運賃の上昇と
いう乗客の負担となって跳ね返ってしまうので、それは
避ける必要がある。
雪や走行風の影響を排除して常に確実に前記の事項を満
足する必要がある。
ちPTC特性のある自己温度制御型ヒータは、ヒータ自
体の温度によりその抵抗値が変化し、つまり印加する電
圧が一定であっても該温度を所定の温度範囲に維持する
ようにその抵抗値が変化してその消費電力が変化する。
用いることによって温度制御装置を使用することなく前
記ガイドレール等の長尺状部材を加熱して所定の温度範
囲に維持し、当該部材を必要以上に加熱することなく、
また凍結する程度に温度低下させることなく、その凍結
を防止することができる。
降口ドアのそれぞれの凍結を確実に防止し、しかも乗客
に対する高温度の危険性もなく安全である。したがっ
て、所定の運行を維持することが可能となり、また、温
度制御装置等も不要であり車両コストやメンテナンスコ
ストの上昇もない。
しては耐環境性が優れていることからステンレス部材が
使用されている。また、車両の構造物は基本的に鉄や鋼
材が使用されている。例えば、車両の乗降口ドアのガイ
ドレールやその床には構造部材として鉄部材が使用され
ている。
mh℃であり、鋼は約37kcal/mh℃である。と
ころで、ニッケルと鉄との合金系の自己温度制御型発熱
線7を内部に有するシーズヒータは、直列型の自己温度
制御型ヒータであり、部分的な温度低下や上昇に対して
ヒータ全体の電力を上昇させたり低下させたりするよう
に作用する。
部材において、部分的に温度の低い部分や温度の高い部
分を生じないようにするためには、好ましくは各部相互
間の熱伝導率を良好にすることである。すなわち、銅の
板条部材を介して凍結防止ヒータを設けることである。
銅の熱伝導率は約332kca1/mh℃であり、ステ
ンレスや鋼の約10〜20倍の熱伝導率である。この熱
伝導率の良好な層をヒータとガイドレールとの間に設け
たことによりガイドレールの一部分が温度低下したり上
昇したりすることがなくなる。銅の板条部材を介するこ
とは、シーズヒータ以外の凍結防止ヒータについても同
様の効果が生じる。
尺状部材の凍結防止方法において、前記車両が使用され
る地域の平均温度をTd(℃)とした際に、ガイドレー
ル2又はガイド15の表面温度Tg(℃)を55(℃)
>〔Tg(℃)+Td(℃)〕>45(℃)とするよう
に前記ガイドレール又はガイドの単位長さ当たりにおけ
る前記自己温度制御型ヒータの電力を決めることであ
る。
25℃の際に、着雪があり、さらに走行速度60〜90
km/h相当の走行風すなわち風速約16〜25m/s
ecの風がある環境において、乗降口ドアがガイドレー
ルに凍結しないようにするためには、着雪と走行風が無
い状態において前記ガイドレールの表面温度が少なくと
も約70℃程度必要である。この温度は実際に北海道に
おいて実験により確認された値である。この温度以下で
は乗降口ドアが凍結する場合がある。また、この温度が
高すぎる場合には乗客に対する危険性があり、したがっ
て、この温度は着雪と走行風が無い状態において80℃
程度に設定することが望ましい。
熱伝導率は一定であるから、対象となる最低気温が上昇
すればそれに合わせてガイドレールの表面温度も低くて
も良い。したがって、車両11が使用される地域の過去
10年間の平均最低気温をTd(℃)とした際に、ガイ
ドレールの表面温度Tg(℃)を、55℃<(Tg+T
d)<45℃とするように該ガイドレールの単位長さ当
たりにおける自己温度制御型ヒータの電力を決めること
により、車両の客車においてその乗降口ドアを安全かつ
確実に凍結防止することができる。ガイドについても同
様に温度設定をすることができる。
(2)の車両における長尺状部材の凍結防止方法におい
て、前記自己温度制御型ヒータとして、ニッケルと鉄と
の合金系である自己温度制御型発熱線7を使用した自己
温度制御型シーズヒータ4を使用することである。
は、振動等の過酷な加速度に対する耐久性が必要であ
る。また、外部から加わる力に対しても強固である必要
がある。
てはシーズヒータが好適である。さらに、ニッケルと鉄
との合金系の発熱線は自己温度制御性があり、シーズヒ
ータ内に用いられる発熱線として好適である。
材の凍結防止装置は、それぞれが複数の乗降口ドア12
を有する複数の車両の所定数の前記乗降口ドアを遠隔操
作によって一斉に開閉する前記各車両に備えられている
前記乗降口ドアをガイドする長尺状のガイドレール2又
はガイド15に沿ってそれぞれ設けられた長尺状のヒー
タと、前記ヒータに電力を供給する電源とを備えた車両
における長尺部材の凍結防止装置であって、前記ヒータ
が自己温度制御型ヒータであり、前記各自己温度制御型
ヒータと前記各ガイドレール又はガイドとの間に銅の板
条部材3を設け、前記各ガイドレール又はガイドを熱伝
導により加熱して凍結を防止するものである。
る車両における長尺部材の凍結防止装置である。
尺状部分の凍結防止装置は、前記自己温度制御型ヒータ
が、ニッケルと鉄との合金系である自己温度制御型発熱
線7を使用した自己温度制御型シーズヒータ4であるこ
とである。
る車両における長尺部材の凍結防止装置である。
一例において実施することができる。
型シーズヒータであり、その発熱線にはニッケルと鉄と
の合金系の発熱線を使用する。ニッケルと鉄との合金系
の発熱線は自己温度制御性がある。
用される自己温度制御型ヒータの抵抗変化率を説明す
る。
率の一例を示す図で、図1(a)は直列型の自己温度制
御型ヒータに用いられるニッケルと鉄との合金系の発熱
線の例を示し、図1(b)は並列型の自己温度制御型ヒ
ータである高分子化合物系ヒータの例を示す。なお、図
1(a)、(b)において横軸はヒータ温度を表し、縦
軸はヒータの抵抗変化率を表している。
度制御型ヒータは温度の上昇に合わせて抵抗値が上昇す
る。すなわち、自己温度制御型ヒータは、所定の電圧
(一定)を印加して使用する場合においては、その消費
電力が温度上昇にともなって減少するように作用して発
熱温度が所定の範囲に収斂するように作動する。なお、
図1の例では高分子化合物系ヒータの方の抵抗変化率が
大きい。
た本実施形態のシーズヒータ、すなわち自己温度制御型
シーズヒータ4は、従来例と同じ位置に、すなわち図7
(a)に示すように車両(鉄道車両の客車)の乗降口1
4にある乗降口ドア12のガイドレール2の下部と、戸
袋13内のガイド15に取り付ける。また、本実施形態
の一例の凍結防止ヒータの外形は、図7(a)に示すシ
ーズヒータ10と同じように、「U」字型のシーズヒー
タである。
における自己温度制御型シーズヒータとその取り付け構
造を説明する。
の取り付け構造を示す図で、図2(a)は、図7(a)
における乗降口ドア12のガイドレール2付近の断面
図、図2(b)は、(a)のI−I′拡大断面図であ
る。図2において、ガイドレール2は、図7と同様に車
両11の乗降口14の床1に乗降口ドア12をガイドす
るために設けられている。ガイドレール2が設けられて
いる床1の下側には、自己温度制御型シーズヒータ4が
ガイドレール2よりやや長い銅の板条部材3を介して押
え板5によって押えられ、固定ねじ6によって床1に固
定されている。この自己温度制御型シーズヒータ4は、
図2(a)の右側で折り返されていて、図2(b)にお
いては2条になって表われている。凍結防止ヒータとし
て用いる自己温度制御型ヒータに直列型の自己温度制御
型シーズヒータを使用し、自己温度制御型シーズヒータ
4とガイドレール2との間に銅の板条部材3を介層して
いる。
ガイドレール2との間には床1があるが、凍結防止上で
はこの床1もガイドレール2の一部と考えられる。
御型シーズヒータ4を取り付ける点は従来例と同様であ
る。また、図面は省略するが、図7に示す戸袋13内の
ガイド15に設ける凍結防止ヒータの取り付け構造につ
いても、図1のガイドレール2の場合と同様に銅の板条
部材3を介層する。
ータに用いる自己温度制御型シーズヒータ4の外装パイ
プ部材として使用されるステンレスの熱伝導率は約14
kca1/mh℃であり、床1やガイドレール2に使用
されている鉄部材の熱伝導率は約37kca1/mh℃
であるのに対し、銅の熱伝導率は約332kca1/m
h℃であり、ステンレスや鉄、鋼等の約10〜20倍の
熱伝導率である。
は直列型の自己温度制御型シーズヒータ4であるが、長
尺状の被加熱部材であるガイドレール2との間に熱伝導
率の極めて良好な銅の板条部材3を介層させたことによ
り、部分的な温度低下は自己温度制御型シーズヒータ4
全体の消費電力の増加により補完されて温度制御が効果
的に行なわれる。
として、例えば実公平7−49759号公報に記載され
たヒータがある。このヒータは、長手方向に延在する2
つの電極間に帯状に充填された導電性の高分子化合物の
PTC組成物が、その温度によりPTC組成物自体の導
電率が変化して、電流が制御され消費電力すなわち発熱
量が変化する。このような働きは、2つの電極間の長手
方向の一部分においても行われるので、部分的な温度低
下に対しては部分的な消費電力の増大として発熱量が増
大し、その部分の温度が所定の範囲に収斂するように作
用する。
も凍結防止ヒータとして使用することができる。そし
て、その取り付け構造も図2に示す直列型の自己温度制
御型シーズヒータ4の場合と同様で良い。この並列型の
自己温度制御型ヒータは部分的に多量の着雪が生じた場
合や車両の走行風により部分的に温度低下を生じる場合
においては、特別に有効である。すなわち、当該部分の
みの発熱量の増大によってその温度低下ひいては当該部
分の凍結を防止するように作用するからである。
は、車両のように振動等による激しい加速度を受ける環
境の中では、その耐久性がシーズヒータよりも劣ってい
る。
の動作を説明する。
おける、長尺状のガイドレール2の各位置における温度
分布を測定した一例を示す図である。なお、横軸は位置
を表し記号A,B,Cは図7(a)の乗降口14におけ
るガイドレール2の位置と同じ位置を表している。
金系の発熱線による自己温度制御型シーズヒータ4を凍
結防止ヒータとして使用した場合の例、すなわち直列型
の自己温度制御型シーズヒータ4を使用した例であり、
図3(b)は高分子化合物による並列型の自己温度制御
型ヒータを使用した例である。
部分すなわち位置A,Cにおいて着雪と走行風により温
度低下を生じた場合に、凍結防止ヒータがどのように作
動するかを示している。温度Tgは予め決められたガイ
ドレール2の温度であり、T1 ,T2 は着雪と走行風に
より低下した位置A,Cにおける温度を表している。
の両側端に着雪を生じやすくまた走行風も吹き当たるの
で、該両側端A,Cの温度が低下しやすく、凍結も相対
的に生じ易い。
ズヒータ4の場合、すなわち本発明の実施形態の一例の
シーズヒータの場合では、同図の破線に例示したように
位置A,BおよびCにおける温度はそれぞれTl ,Tg
およびT2 となるが、低下した温度Tl ,T2 により、
自己温度制御型シーズヒータ4の消費電力が増大して、
その温度が一点鎖線で示すように△Tだけ上昇する。こ
れにより、乗降口両側端の位置A,Cのガイドレール2
の温度もそれぞれ△Tだけ上昇し、Tl +△TおよびT
2 +△Tとなる。さらに、銅の板条部材3による熱伝導
により、位置A,Cの温度がdTl ,dT2 だけ上昇
し、最終的には乗降口両側端の位置A,Cのガイドレー
ル2の温度は実線で示すようにTl +△T+dTl およ
びT2 +△T+dT2 に上昇し、当該位置における凍結
が防止される。この場合、ガイドレール2と自己温度制
御型シーズヒータ4との間に銅の板条状部材3を介層さ
せているので、乗降口両側端の位置A,Cのガイドレー
ル2の温度低下は自己温度制御型シーズヒータ4の温度
の上昇で補完される。
表面温度Tgは、車両の場合にあっては、その車両の運
行状態やその走行する地域の気象条件等の環境条件によ
り決める。例えば、気温や車両の走行速度、着雪状態等
により設定する。
乗せて運行する条件において、乗客に対する高温での安
全性を考慮して実験的に求めた。
て気温が−25℃の際に、着雪があり、さらに走行速度
60〜90km/h相当の走行風すなわち風速約16〜
25m/secの風がある環境において、乗降口ドア1
2がガイドレール2に凍結しない条件を求めた。そして
このような条件で凍結を生じないようにするためには、
着雪と走行風が無い状態において前記ガイドレール2の
表面温度が少なくとも約70℃程度必要であることが確
認された。
て実験により確認された値である。この温度以下では乗
降口ドア12が凍結する場合がある。また、この温度が
高すぎる場合には乗客に対する危険性があり、したがっ
て、この温度は着雪と走行風が無い状態において80℃
程度に設定することが望ましい。
レール2に至る熱伝導の経路における熱伝導率は一定で
あるから、対象となる最低気温が上昇すればそれに合わ
せてガイドレール2の表面温度も低くても良い。したが
って、車両11が使用される地域の年間の最低気温の数
年(10年程度)間の平均最低気温をTd(℃)とした
際に、ガイドレール2の表面温度Tg(℃)を、55℃
>〔Tg(℃)+Td(℃)〕>45℃とするように該
ガイドレール2の単位長さ当たりにおける自己温度制御
型シーズヒータ4の電力を決めることにより、車両11
の客車においてその乗降口ドア12を安全かつ確実に凍
結防止することができる。
は、70℃>Tg>60℃となるように、ガイドレール
2の単位長さ当たりひいては自己温度制御型シーズヒー
タ4の単位長さ当たりの電力を決めればよい。ここで、
単位長さ当たりの電力で規定しているのは、凍結を防止
するべき長尺状のガイドレール2の長さに合わせて自己
温度制御型シーズヒータ4の長さも決めるからであり、
総電力では規定できないためである。
全長140cmのガイドレールの場合における自己温度
制御型シーズヒータ4の定格総電力は700Wであっ
た。したがって、凍結防止に必要となる長尺状のガイド
レール2の単位長さあたりの自己温度制御型シーズヒー
タ4の電力は5W/cmとなる。
制御型ヒータの場合について説明する。すなわち、この
場合は同図の破線に例示したように位置A,Cの温度は
Tl,T2 に低下することにより、同位置A,C部分に
おける自己温度制御型ヒータ4の消費電力が部分的に増
大し、位置Aではその温度が△Tl だけ上昇し、位置C
ではその温度が△T2 だけ上昇する。
A,Cのガイドレール2の温度はTl+△Tl およびT2
+△T2 に上昇し、さらに、銅の板条部材3による熱
伝導により、温度がそれぞれdT3 およびdT4 だけ上
昇し、最終的には乗降口14の両側端の位置AおよびC
のガイドレール2の温度はTl +△Tl +dT3 および
T2 +△T2 +dT4 に上昇し、当該位置における凍結
が防止される。
度制御型ヒータの場合は、位置Bにおける温度はTgの
まま殆んど変化しない。この点が、自己温度制御型ヒー
タ4の優れた特徴点である。これに対し図3(a)に例
示した直列型の自己温度制御型シーズヒータ4の場合
は、位置Bにおける温度はTgからTg+△Tに若干上
昇する。
動の激しい加速度の環境に曝される場合にあっては、自
己温度制御型シーズヒータ4の方が堅牢であり耐久性に
優れており車両に用いるには好適である。特に、不特定
多数の乗客を所定の運行時間に則って所定の区間に安全
確実に輸送する公的社会的性格の強い鉄道車両にあって
は、このことは極めて重要な事項である。
合においても、ガイドレールの表面温度の選択やヒータ
電力の選択は直列型の場合と同様である。
したように、温度制御装置を使用することなく所定の温
度で安全かつ確実に凍結を防止することができるように
なる。また、部分的な温度低下に対しても、多数の温度
センサを使用して平均値処理等の複雑な処理を行う必要
もない。
することができ、有効な温度補正を行うことができる。
両の環境においては、電子回路からなる複雑な温度制御
装置や長尺状部材の各部に多数のセンサを配置すること
は、その耐久性から信頼性が低下し易く、信頼性維持の
ためのメンテナンス作業が煩雑となり好適ではなかっ
た。
の凍結防止方法およびその凍結防止装置によれば、温度
制御装置や多数の温度センサ、また各温度センサの平均
値処理等の複雑な処理を使用しなくても、車両における
長尺状部材の各部の凍結を確実に防止することができ
る。
有する複数の車両の所定数の前記乗降口ドアを遠隔操作
によって一斉に開閉する前記各車両に備えられている前
記乗降口ドアをガイドする長尺状のガイドレール又はガ
イドに沿って長尺状のヒータをそれぞれ設け、前記ヒー
タに電力を供給して前記ガイドレール又はガイドを熱伝
導により加熱して凍結を防止する車両における長尺状部
材の凍結防止方法であって、前記ヒータとして自己温度
制御型ヒータを用い、前記各自己温度制御型ヒータと前
記各ガイドレール又はガイドとの間に銅の板条部材を介
して前記各ガイドレール又はガイドを熱伝導により加熱
して凍結を防止するようにしたので、複数の客車を連結
した車両の複数の乗降口ドアの凍結を防止する場合にあ
っては好適である。これらの乗降口ドアは車掌等の乗務
員の遠隔操作によって一斉に開閉されるが、決められた
運行時間に則って不特定多数の乗客を所定区間に安全か
つ確実に、しかもできるだけ低コストで輸送する社会的
責務があるからである。
ドレールやガイドの凍結防止方法として、温度制御装置
やドアごとに複数の温度センサを使用することも不要で
あり、車両の走行という特有な環境において発生する部
分的な温度低下、すなわち部分的な凍結を生じやすい場
合において、銅の板条部材を介して自己温度制御型ヒー
タを設置するのみでそれらの凍結を防止することができ
る。しかも乗客に対する高温の危険性もない。したがっ
て、車両コストやメンテナンスコストを低く抑えて、安
全で確実かつ低運賃の輸送が可能となる。
低温度をTd(℃)とした際に、ガイドレール又はガイ
ドの表面温度Tg(℃)を、55(℃)>〔Tg(℃)
+Td(℃)〕>45(℃)とするように該ガイドレー
ル又はガイドの単位長さ当たりにおける前記自己温度制
御型ヒータの電力を決めるようにしたので、走行する車
両において安全で確実に凍結防止をするためのヒータ電
力の選択方法を確立し、長尺状のガイドレールの凍結を
防止する際の工学的利用が可能となり、客車等の設計作
業が容易となる。
タとして、ニッケルと鉄の合金系である自己温度制御型
発熱線を使用した自己温度制御型シーズヒータを使用す
るので、車両のように、絶えず発生する振動の激しい加
速度の環境に曝される場合に、堅牢であり耐久性に優れ
ている。
の凍結防止装置は、それぞれが複数の乗降口ドアを有す
る複数の車両の所定数の前記乗降口ドアを遠隔操作によ
って一斉に開閉する前記各車両に備えられている前記乗
降口ドアをガイドする長尺状のガイドレール又はガイド
に沿ってそれぞれ設けられた長尺状のヒータと、前記ヒ
ータに電力を供給する電源とを備えた車両における長尺
状部材の凍結防止装置であって、前記ヒータが自己温度
制御型ヒータであり、前記各自己温度制御型ヒータと前
記各ガイドレール又はガイドとの間に銅の板条部材を設
け、前記各ガイドレール又はガイドを熱伝導により加熱
して凍結を防止するようにしたので、温度制御装置が不
要で、均一で安全かつ確実にガイドレール又はガイドの
温度の低下をより一層良好に防止して所定の値に保っ
て、凍結防止をすることができる。
凍結防止装置は、前記自己温度制御型ヒータが、ニッケ
ルと鉄との合金系である自己温度制御型発熱線を使用し
た自己温度制御型シーズヒータであるので、車両のよう
に、絶えず発生する振動の激しい加速度の環境に対して
好適な装置である。
す図である。
造を示す図である。
布を測定した一例を示す図である。
す図である。
ある。
の配置を示す図である。
よびガイドの温度分布を示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 それぞれが複数の乗降口ドアを有する複
数の車両の所定数の前記乗降口ドアを遠隔操作によって
一斉に開閉する前記各車両に備えられている前記乗降口
ドアをガイドする長尺状のガイドレール又はガイドに沿
って長尺状のヒータをそれぞれ設け、前記ヒータに電力
を供給して前記ガイドレール又はガイドを熱伝導により
加熱して凍結を防止する車両における長尺状部材の凍結
防止方法であって、 前記ヒータとして自己温度制御型ヒータを用い、前記各
自己温度制御型ヒータと前記各ガイドレール又はガイド
との間に銅の板条部材を介して前記各ガイドレール又は
ガイドを熱伝導により加熱して凍結を防止することを特
徴とする車両における長尺状部材の凍結防止方法。 - 【請求項2】 前記車両が使用される地域の平均最低気
温をTd(℃)とした際に、前記ガイドレール又はガイ
ドの表面温度Tg(℃)を、55(℃)>〔Tg(℃)
+Td(℃)〕>45(℃)とするように前記ガイドレ
ール又はガイドの単位長さ当たりにおける前記自己温度
制御型ヒータの電力を決めることを特徴とする請求項1
に記載された車両における長尺状部材の凍結防止方法。 - 【請求項3】 前記自己温度制御型ヒータとして、ニッ
ケルと鉄との合金系である自己温度制御型発熱線を使用
した自己温度制御型シーズヒータを使用することを特徴
とする請求項1又は2に記載された車両における長尺状
部材の凍結防止方法。 - 【請求項4】 それぞれが複数の乗降口ドアを有する複
数の車両の所定数の前記乗降口ドアを遠隔操作によって
一斉に開閉する前記各車両に備えられている前記乗降口
ドアをガイドする長尺状のガイドレール又はガイドに沿
ってそれぞれ設けられた長尺状のヒータと、前記ヒータ
に電力を供給する電源とを備えた車両における長尺状部
材の凍結防止装置であって、 前記ヒータが自己温度制御型ヒータであり、前記各自己
温度制御型ヒータと前記各ガイドレール又はガイドとの
間に銅の板条部材を設け、前記各ガイドレール又はガイ
ドを熱伝導により加熱して凍結を防止することを特徴と
する車両における長尺状部材の凍結防止装置。 - 【請求項5】 前記自己温度制御型ヒータが、ニッケル
と鉄との合金系である自己温度制御型発熱線を使用した
自己温度制御型シーズヒータであることを特徴とする請
求項4に記載された車両における長尺状部材の凍結防止
装置。
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