JP2000104248A5 - - Google Patents
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Description
【書類名】 明細書
【発明の名称】 地中構造体築造工法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 地中にソイルセメントを斜め壁状に施工し、
このソイルセメントが柔らかい状態でソイルセメント中に有形壁部材を挿入することにより地中構造体を斜めに築造する
ことを特徴とする地中構造体築造工法。
【請求項2】 有形壁部材は、プレキャストコンクリート部材を用いることを特徴とする請求項1記載の地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法。
【請求項3】 地中にソイルセメントを斜め壁状に施工し、
このソイルセメントが柔らかい状態でソイルセメント中に、補強材が内蔵された袋材を挿入し、
この袋材の内部にモルタルおよびコンクリートのいずれか一方を注入して有形壁部材を成形することにより地中構造体を斜めに築造する
ことを特徴とする地中構造体築造工法。
【請求項4】 ソイルセメントおよび有形壁部材を、河川の法面に沿って斜めに施工した
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法。
【請求項5】 河川の近傍で連続斜め形のソイルセメントを河川に沿って造成し、
ソイルセメントが固化しない柔らかい状態のうちに有形壁部材をソイルセメント内に施工することにより地中式控え護岸を築造する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソイルセメントと有形壁部材とで斜めに施工する地中構造体の築造工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の護岸築造工法は、河川を仮締切りし、法面を整形し、この法面にコンクリートブロックを積上げるか、コンクリートを現場打ちして護岸構造体を築造し、その後に河川の仮締切りを解除する工法が通常用いられている。
【0003】
また、河川の法面に沿って地中にソイルセメント壁を地盤改良工法で築造し、これを地中式控え護岸とする工法も考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の河川法面に護岸構造体を築造する護岸築造工法では、河川を仮締切りする必要があり、増水期の施工が困難で、施工時期が制限される。河川の仮締切り時に河川が汚濁される。機械化施工できる範囲が少なく、多くの労力、費用および工期を要する。人工護岸であるため、自然の景観を阻害するなどの問題点がある。
【0005】
一方、ソイルセメント壁を地中式控え護岸とする工法では、河川法面に護岸構造体を築造する工法の問題点は解決できるが、対象とする地盤土質により、強度および止水性が大きく影響され、目標とする断面形状、強度および止水性が得られない場合があり、強度および止水性のばらつきが大きくなる問題点がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、地中に構造体を斜めに築造する工法であって、断面形状、強度および止水性のばらつきが少ない地中構造体築造工法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された発明は、地中にソイルセメントを斜め壁状に施工し、このソイルセメントが柔らかい状態でソイルセメント中に有形壁部材を挿入することにより地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法である。
【0008】
これにより、地中に均一な断面形状、強度および止水性を有する地中構造体を、傾斜壁として形成する。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の地中構造体を斜めに築造する工法に用いられる有形壁部材を、プレキャストコンクリート部材とした地中構造体築造工法である。
【0010】
すなわち、斜め壁状に施工された柔らかい状態のソイルセメント中に有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材を挿入する。
【0011】
請求項3に記載された発明は、地中にソイルセメントを斜め壁状に施工し、このソイルセメントが柔らかい状態でソイルセメント中に、補強材が内蔵された袋材を挿入し、この袋材の内部にモルタルおよびコンクリートのいずれか一方を注入して有形壁部材を成形することにより地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法である。
【0012】
これにより、有形壁部材を未完成状態で施工現場まで運搬して、施工現場で斜めに完成させる。
【0013】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の地中構造体を斜めに築造する工法におけるソイルセメントおよび有形壁部材を、河川の法面に沿って斜めに施工した地中構造体築造工法である。
【0014】
これにより、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保できる地中構造体を河川の法面に沿って傾斜壁として形成する。
【0015】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の地中構造体を斜めに築造する工法において、河川の近傍で連続斜め形のソイルセメントを河川に沿って造成し、ソイルセメントが固化しない柔らかい状態のうちに有形壁部材をソイルセメント内に施工することにより地中式控え護岸を築造する地中構造体築造工法である。
【0016】
これにより、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保できる地中式控え護岸を形成する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、地中護岸築造工法に適用した場合の第1実施形態を図1および図2を参照しながら、第2実施形態を図3を参照しながら、第3実施形態を図4を参照しながら、第4実施形態を図5および図6を参照しながら説明する。
【0018】
図1(A)に示されるように、油圧ショベル11により、河川12に沿って表層溝13を掘削し、図1(B)に示されるように、ソイルセメント溝造成機14の掘削・撹拌装置15を、表層溝13から河川12の法面16に沿って斜めに地中へ挿入し、掘削しながらその掘削溝17にセメントミルクを注入して掘削土壌と撹拌混合し、これを河川12に沿って横行しながら行うことにより、ソイルセメント18を地中19に傾斜連壁状に施工する。
【0019】
次に、図1(C)に示されるように、油圧ショベル21のバケットに代えて取付けられたクランプ22により、有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材23を把持して、柔らかい状態のソイルセメント18中にプレキャストコンクリート部材23を斜めに挿入する。
【0020】
図2に示されるように、ソイルセメント18およびプレキャストコンクリート部材23は、河川12の法面16に沿って連続的に施工することにより連続壁としての地中構造体24となり、地中式控え護岸を築造形成する。
【0021】
ここで、ソイルセメント18は、固化する前はプレキャストコンクリート部材23が挿入される掘削溝17の崩落を防止する機能を有するとともに、固化した後は個々のプレキャストコンクリート部材23の接合材および保持材として機能し、また、プレキャストコンクリート部材23は、機械化施工が容易で、労力、費用および工期を軽減短縮できるとともに、連続壁として施工されたプレキャストコンクリート部材23は、対象地盤の土質に関係なく、地中構造体24の必要な断面形状、強度および止水性を確保する機能を有する。
【0022】
プレキャストコンクリート部材23の上端部は表層溝13の内部まで押込み、この表層溝13は、ソイルセメント18中にプレキャストコンクリート部材23を挿入したときに、地表面側に押出されたソイルセメント18a で満たされるから、この表層溝13内のソイルセメント18a を地表面25と面一に整形することにより、プレキャストコンクリート部材23を地表面内に埋設できる。
【0023】
図2に示されたプレキャストコンクリート部材23は、板状のものであるが、図3(A),(B)に示されるように角柱形に形成された有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材31を、図3(C)に示されるように連壁構成部材として、柔らかい状態のソイルセメント18中に連続して多数挿入することにより、連続壁を形成しても良い。
【0024】
このプレキャストコンクリート部材31は、中央部に遠心成形により形成された中空部32を有し、一側面および他側面に複数の凹溝33を有する。図3(C)に示されるようにこれらの凹溝33が相互に対向するように、各プレキャストコンクリート部材31を配列する。
【0025】
さらに、図4(A),(B)に示されるように矢板形に形成された有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材34を、図4(C)に示されるように連壁構成部材として、柔らかい状態のソイルセメント18中に連続して多数挿入することにより、連続壁を形成しても良い。
【0026】
この矢板形のプレキャストコンクリート部材34は、一側面にV形の凹溝35を有し、他側面にV形の凸部36を有するので、図4(C)に示されるように隣接する各プレキャストコンクリート部材34のV形の凹溝35とV形の凸部36とを相互に嵌合させることにより、各プレキャストコンクリート部材34間の位置決めを容易にでき、連続壁を容易に形成できる。
【0027】
また、有形壁部材としては、図5に示されるように補強材41が内蔵された袋材42を前記ソイルセメント18中に挿入し、この袋材42の内部に図6に示されるようにモルタルまたはコンクリート43を注入して成形した現場施工型壁部材44でも良い。
【0028】
すなわち、図5(A),(B)に示されるように、補強材41は、スペーサ45が嵌着された縦筋46と、横筋47とを格子状に組んで形成し、この補強材41を包込むように前記袋材42を形成する。
【0029】
この袋材42は、止水性を有する合成樹脂フィルムなどで形成しても良いが、若干の透水性を有する布などで形成しても良い。この袋材42の上部には、モルタルまたはコンクリート43を注入するための注入口48が設けられている。
【0030】
そして、図5(A),(B)に示されるように補強材41を内蔵した中空状態の袋材42を、柔らかい状態のソイルセメント18中に挿入した後、これらの袋材42の内部に、注入口48よりモルタルまたはコンクリート43を注入して充填することにより、ソイルセメント18中で図6(A),(B),(C)に示されるように袋材42を膨張させ、そのまま固化させることにより、現場施工型壁部材44をソイルセメント18中に施工する。
【0031】
このとき、図6(C)に示されるように隣接する現場施工型壁部材44の袋材42が接触する。そして、固化したソイルセメント18と現場施工型壁部材44とにより連続壁状の地中構造体49を築造する。
【0032】
前記現場施工型壁部材44は、プレキャストコンクリート部材と比べると、補強材41および袋材42を工場で一体的に構成した場合であっても、軽量で施工現場までの運搬を容易に行える。さらに、補強材41および袋材42をそれぞれ未完成状態で施工現場まで運搬して、施工現場で溶接などにより完成させるようにすると、さらに運搬しやすい利点がある。
【0033】
以上のように、本実施形態は、河川12の近傍で、地盤と同程度以上の強度を有する連続斜め形のソイルセメント18を河川12に沿って造成し、ソイルセメント18が固化しない柔らかい状態のうちに、プレキャストコンクリート部材23,31,34または現場施工型壁部材44などの有形壁部材をソイルセメント18内に施工することにより、地中式控え護岸を築造するものである。
【0034】
このように、護岸を河川近傍での地中式とすることで河川の締切りを不要とし、施工時期に制限を受けず、河川を汚濁することがない。また、連続斜めソイルセメント溝の掘削、プレキャストコンクリート部材などの挿入のように、機械化施工できる範囲が多く、労力、費用および工期を軽減短縮できる。さらに、護岸構造体が河川の法面に露出しないため、法面での植生を自然状態で残すことが可能である。また、護岸構造体としてソイルセメントのみではなく、プレキャストコンクリート部材などを用いることで、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保することが可能である。
【0035】
なお、本発明は、地中に護岸を築造する場合に限定されるものではなく、例えば、地中に均一な断面形状、強度および止水性を有する地中構造体を、傾斜壁として形成できる。
【0036】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、ソイルセメントが柔らかい状態でその中に有形壁部材を施工するから、有形壁部材により地盤条件に左右されない断面形状、強度および止水性を有する地中構造体を築造できる。ソイルセメントは、固化する前は有形壁部材の挿入を受入れる掘削溝の崩落を防止するとともに、固化した後は個々の有形壁部材の接合材および保持材として機能する。すなわち、地中の地盤条件に左右されない断面形状、強度および止水性を有する地中構造体を傾斜壁として形成できる。
【0037】
請求項2記載の発明によれば、有形壁部材をプレキャストコンクリート部材とし、このプレキャストコンクリート部材は柔らかい状態のソイルセメントに対し機械化施工しやすいので、労力、費用および工期を軽減短縮できるとともに、プレキャストコンクリート部材によって、目標とする傾斜壁の断面形状、強度および止水性を持つ地中構造体を確保できる。
【0038】
請求項3記載の発明によれば、有形壁部材を、補強材が内蔵された袋材をソイルセメント中に挿入し、この袋材の内部にモルタルおよびコンクリートのいずれか一方を注入して成形するから、有形壁部材を未完成状態のまま施工現場まで運搬してソイルセメント中で斜めに完成させることができ、運搬性が良いなどの利点も有する。
【0039】
請求項4記載の発明によれば、河川の法面に沿って斜めに施工したソイルセメントおよび有形壁部材により、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保できる地中構造体を河川の法面に沿って傾斜壁として形成できる。
【0040】
請求項5記載の発明によれば、河川の近傍で連続斜め形のソイルセメントを河川に沿って造成し、ソイルセメントが固化しない柔らかい状態のうちに有形壁部材をソイルセメント内に施工するので、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保できる地中式控え護岸を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る地中構造体築造工法の実施の一形態を示す断面図であり、(A)は表層溝の掘削例を、(B)はソイルセメントの施工例を、(C)はプレキャストコンクリート部材の施工例を示す。
【図2】
同上地中構造体築造工法により河川の法面に沿って連続的に施工された地中式控え護岸の構造を示す断面図である。
【図3】
同上地中構造体築造工法に用いられる角柱形のプレキャストコンクリート部材を示し、(A)はその平面図、(B)はその正面図、(C)はそのソイルセメント中への施工例を示す断面図である。
【図4】
同上地中構造体築造工法に用いられる矢板形のプレキャストコンクリート部材を示し、(A)はその平面図、(B)はその正面図、(C)はそのソイルセメント中への施工例を示す断面図である。
【図5】
同上地中構造体築造工法に用いられる現場施工型壁部材を示し、(A)はその補強材および袋材の水平断面図、(B)はその垂直断面図である。
【図6】
図5に示された現場施工型壁部材の袋材にモルタルなどを充填した例を示し、(A)はその水平断面図、(B)はその垂直断面図、(C)はそのソイルセメント中への施工例を示す断面図である。
【符号の説明】
12 河川
16 法面
18 ソイルセメント
23 有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材
24 地中構造体
31 有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材
34 有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材
41 補強材
42 袋材
43 モルタルまたはコンクリート
44 有形壁部材としての現場施工型壁部材
【発明の名称】 地中構造体築造工法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 地中にソイルセメントを斜め壁状に施工し、
このソイルセメントが柔らかい状態でソイルセメント中に有形壁部材を挿入することにより地中構造体を斜めに築造する
ことを特徴とする地中構造体築造工法。
【請求項2】 有形壁部材は、プレキャストコンクリート部材を用いることを特徴とする請求項1記載の地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法。
【請求項3】 地中にソイルセメントを斜め壁状に施工し、
このソイルセメントが柔らかい状態でソイルセメント中に、補強材が内蔵された袋材を挿入し、
この袋材の内部にモルタルおよびコンクリートのいずれか一方を注入して有形壁部材を成形することにより地中構造体を斜めに築造する
ことを特徴とする地中構造体築造工法。
【請求項4】 ソイルセメントおよび有形壁部材を、河川の法面に沿って斜めに施工した
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法。
【請求項5】 河川の近傍で連続斜め形のソイルセメントを河川に沿って造成し、
ソイルセメントが固化しない柔らかい状態のうちに有形壁部材をソイルセメント内に施工することにより地中式控え護岸を築造する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソイルセメントと有形壁部材とで斜めに施工する地中構造体の築造工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の護岸築造工法は、河川を仮締切りし、法面を整形し、この法面にコンクリートブロックを積上げるか、コンクリートを現場打ちして護岸構造体を築造し、その後に河川の仮締切りを解除する工法が通常用いられている。
【0003】
また、河川の法面に沿って地中にソイルセメント壁を地盤改良工法で築造し、これを地中式控え護岸とする工法も考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の河川法面に護岸構造体を築造する護岸築造工法では、河川を仮締切りする必要があり、増水期の施工が困難で、施工時期が制限される。河川の仮締切り時に河川が汚濁される。機械化施工できる範囲が少なく、多くの労力、費用および工期を要する。人工護岸であるため、自然の景観を阻害するなどの問題点がある。
【0005】
一方、ソイルセメント壁を地中式控え護岸とする工法では、河川法面に護岸構造体を築造する工法の問題点は解決できるが、対象とする地盤土質により、強度および止水性が大きく影響され、目標とする断面形状、強度および止水性が得られない場合があり、強度および止水性のばらつきが大きくなる問題点がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、地中に構造体を斜めに築造する工法であって、断面形状、強度および止水性のばらつきが少ない地中構造体築造工法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された発明は、地中にソイルセメントを斜め壁状に施工し、このソイルセメントが柔らかい状態でソイルセメント中に有形壁部材を挿入することにより地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法である。
【0008】
これにより、地中に均一な断面形状、強度および止水性を有する地中構造体を、傾斜壁として形成する。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載の地中構造体を斜めに築造する工法に用いられる有形壁部材を、プレキャストコンクリート部材とした地中構造体築造工法である。
【0010】
すなわち、斜め壁状に施工された柔らかい状態のソイルセメント中に有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材を挿入する。
【0011】
請求項3に記載された発明は、地中にソイルセメントを斜め壁状に施工し、このソイルセメントが柔らかい状態でソイルセメント中に、補強材が内蔵された袋材を挿入し、この袋材の内部にモルタルおよびコンクリートのいずれか一方を注入して有形壁部材を成形することにより地中構造体を斜めに築造する地中構造体築造工法である。
【0012】
これにより、有形壁部材を未完成状態で施工現場まで運搬して、施工現場で斜めに完成させる。
【0013】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の地中構造体を斜めに築造する工法におけるソイルセメントおよび有形壁部材を、河川の法面に沿って斜めに施工した地中構造体築造工法である。
【0014】
これにより、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保できる地中構造体を河川の法面に沿って傾斜壁として形成する。
【0015】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の地中構造体を斜めに築造する工法において、河川の近傍で連続斜め形のソイルセメントを河川に沿って造成し、ソイルセメントが固化しない柔らかい状態のうちに有形壁部材をソイルセメント内に施工することにより地中式控え護岸を築造する地中構造体築造工法である。
【0016】
これにより、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保できる地中式控え護岸を形成する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、地中護岸築造工法に適用した場合の第1実施形態を図1および図2を参照しながら、第2実施形態を図3を参照しながら、第3実施形態を図4を参照しながら、第4実施形態を図5および図6を参照しながら説明する。
【0018】
図1(A)に示されるように、油圧ショベル11により、河川12に沿って表層溝13を掘削し、図1(B)に示されるように、ソイルセメント溝造成機14の掘削・撹拌装置15を、表層溝13から河川12の法面16に沿って斜めに地中へ挿入し、掘削しながらその掘削溝17にセメントミルクを注入して掘削土壌と撹拌混合し、これを河川12に沿って横行しながら行うことにより、ソイルセメント18を地中19に傾斜連壁状に施工する。
【0019】
次に、図1(C)に示されるように、油圧ショベル21のバケットに代えて取付けられたクランプ22により、有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材23を把持して、柔らかい状態のソイルセメント18中にプレキャストコンクリート部材23を斜めに挿入する。
【0020】
図2に示されるように、ソイルセメント18およびプレキャストコンクリート部材23は、河川12の法面16に沿って連続的に施工することにより連続壁としての地中構造体24となり、地中式控え護岸を築造形成する。
【0021】
ここで、ソイルセメント18は、固化する前はプレキャストコンクリート部材23が挿入される掘削溝17の崩落を防止する機能を有するとともに、固化した後は個々のプレキャストコンクリート部材23の接合材および保持材として機能し、また、プレキャストコンクリート部材23は、機械化施工が容易で、労力、費用および工期を軽減短縮できるとともに、連続壁として施工されたプレキャストコンクリート部材23は、対象地盤の土質に関係なく、地中構造体24の必要な断面形状、強度および止水性を確保する機能を有する。
【0022】
プレキャストコンクリート部材23の上端部は表層溝13の内部まで押込み、この表層溝13は、ソイルセメント18中にプレキャストコンクリート部材23を挿入したときに、地表面側に押出されたソイルセメント18a で満たされるから、この表層溝13内のソイルセメント18a を地表面25と面一に整形することにより、プレキャストコンクリート部材23を地表面内に埋設できる。
【0023】
図2に示されたプレキャストコンクリート部材23は、板状のものであるが、図3(A),(B)に示されるように角柱形に形成された有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材31を、図3(C)に示されるように連壁構成部材として、柔らかい状態のソイルセメント18中に連続して多数挿入することにより、連続壁を形成しても良い。
【0024】
このプレキャストコンクリート部材31は、中央部に遠心成形により形成された中空部32を有し、一側面および他側面に複数の凹溝33を有する。図3(C)に示されるようにこれらの凹溝33が相互に対向するように、各プレキャストコンクリート部材31を配列する。
【0025】
さらに、図4(A),(B)に示されるように矢板形に形成された有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材34を、図4(C)に示されるように連壁構成部材として、柔らかい状態のソイルセメント18中に連続して多数挿入することにより、連続壁を形成しても良い。
【0026】
この矢板形のプレキャストコンクリート部材34は、一側面にV形の凹溝35を有し、他側面にV形の凸部36を有するので、図4(C)に示されるように隣接する各プレキャストコンクリート部材34のV形の凹溝35とV形の凸部36とを相互に嵌合させることにより、各プレキャストコンクリート部材34間の位置決めを容易にでき、連続壁を容易に形成できる。
【0027】
また、有形壁部材としては、図5に示されるように補強材41が内蔵された袋材42を前記ソイルセメント18中に挿入し、この袋材42の内部に図6に示されるようにモルタルまたはコンクリート43を注入して成形した現場施工型壁部材44でも良い。
【0028】
すなわち、図5(A),(B)に示されるように、補強材41は、スペーサ45が嵌着された縦筋46と、横筋47とを格子状に組んで形成し、この補強材41を包込むように前記袋材42を形成する。
【0029】
この袋材42は、止水性を有する合成樹脂フィルムなどで形成しても良いが、若干の透水性を有する布などで形成しても良い。この袋材42の上部には、モルタルまたはコンクリート43を注入するための注入口48が設けられている。
【0030】
そして、図5(A),(B)に示されるように補強材41を内蔵した中空状態の袋材42を、柔らかい状態のソイルセメント18中に挿入した後、これらの袋材42の内部に、注入口48よりモルタルまたはコンクリート43を注入して充填することにより、ソイルセメント18中で図6(A),(B),(C)に示されるように袋材42を膨張させ、そのまま固化させることにより、現場施工型壁部材44をソイルセメント18中に施工する。
【0031】
このとき、図6(C)に示されるように隣接する現場施工型壁部材44の袋材42が接触する。そして、固化したソイルセメント18と現場施工型壁部材44とにより連続壁状の地中構造体49を築造する。
【0032】
前記現場施工型壁部材44は、プレキャストコンクリート部材と比べると、補強材41および袋材42を工場で一体的に構成した場合であっても、軽量で施工現場までの運搬を容易に行える。さらに、補強材41および袋材42をそれぞれ未完成状態で施工現場まで運搬して、施工現場で溶接などにより完成させるようにすると、さらに運搬しやすい利点がある。
【0033】
以上のように、本実施形態は、河川12の近傍で、地盤と同程度以上の強度を有する連続斜め形のソイルセメント18を河川12に沿って造成し、ソイルセメント18が固化しない柔らかい状態のうちに、プレキャストコンクリート部材23,31,34または現場施工型壁部材44などの有形壁部材をソイルセメント18内に施工することにより、地中式控え護岸を築造するものである。
【0034】
このように、護岸を河川近傍での地中式とすることで河川の締切りを不要とし、施工時期に制限を受けず、河川を汚濁することがない。また、連続斜めソイルセメント溝の掘削、プレキャストコンクリート部材などの挿入のように、機械化施工できる範囲が多く、労力、費用および工期を軽減短縮できる。さらに、護岸構造体が河川の法面に露出しないため、法面での植生を自然状態で残すことが可能である。また、護岸構造体としてソイルセメントのみではなく、プレキャストコンクリート部材などを用いることで、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保することが可能である。
【0035】
なお、本発明は、地中に護岸を築造する場合に限定されるものではなく、例えば、地中に均一な断面形状、強度および止水性を有する地中構造体を、傾斜壁として形成できる。
【0036】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、ソイルセメントが柔らかい状態でその中に有形壁部材を施工するから、有形壁部材により地盤条件に左右されない断面形状、強度および止水性を有する地中構造体を築造できる。ソイルセメントは、固化する前は有形壁部材の挿入を受入れる掘削溝の崩落を防止するとともに、固化した後は個々の有形壁部材の接合材および保持材として機能する。すなわち、地中の地盤条件に左右されない断面形状、強度および止水性を有する地中構造体を傾斜壁として形成できる。
【0037】
請求項2記載の発明によれば、有形壁部材をプレキャストコンクリート部材とし、このプレキャストコンクリート部材は柔らかい状態のソイルセメントに対し機械化施工しやすいので、労力、費用および工期を軽減短縮できるとともに、プレキャストコンクリート部材によって、目標とする傾斜壁の断面形状、強度および止水性を持つ地中構造体を確保できる。
【0038】
請求項3記載の発明によれば、有形壁部材を、補強材が内蔵された袋材をソイルセメント中に挿入し、この袋材の内部にモルタルおよびコンクリートのいずれか一方を注入して成形するから、有形壁部材を未完成状態のまま施工現場まで運搬してソイルセメント中で斜めに完成させることができ、運搬性が良いなどの利点も有する。
【0039】
請求項4記載の発明によれば、河川の法面に沿って斜めに施工したソイルセメントおよび有形壁部材により、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保できる地中構造体を河川の法面に沿って傾斜壁として形成できる。
【0040】
請求項5記載の発明によれば、河川の近傍で連続斜め形のソイルセメントを河川に沿って造成し、ソイルセメントが固化しない柔らかい状態のうちに有形壁部材をソイルセメント内に施工するので、対象地盤の土質に関係なく、必要な断面形状、強度および止水性を確保できる地中式控え護岸を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係る地中構造体築造工法の実施の一形態を示す断面図であり、(A)は表層溝の掘削例を、(B)はソイルセメントの施工例を、(C)はプレキャストコンクリート部材の施工例を示す。
【図2】
同上地中構造体築造工法により河川の法面に沿って連続的に施工された地中式控え護岸の構造を示す断面図である。
【図3】
同上地中構造体築造工法に用いられる角柱形のプレキャストコンクリート部材を示し、(A)はその平面図、(B)はその正面図、(C)はそのソイルセメント中への施工例を示す断面図である。
【図4】
同上地中構造体築造工法に用いられる矢板形のプレキャストコンクリート部材を示し、(A)はその平面図、(B)はその正面図、(C)はそのソイルセメント中への施工例を示す断面図である。
【図5】
同上地中構造体築造工法に用いられる現場施工型壁部材を示し、(A)はその補強材および袋材の水平断面図、(B)はその垂直断面図である。
【図6】
図5に示された現場施工型壁部材の袋材にモルタルなどを充填した例を示し、(A)はその水平断面図、(B)はその垂直断面図、(C)はそのソイルセメント中への施工例を示す断面図である。
【符号の説明】
12 河川
16 法面
18 ソイルセメント
23 有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材
24 地中構造体
31 有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材
34 有形壁部材としてのプレキャストコンクリート部材
41 補強材
42 袋材
43 モルタルまたはコンクリート
44 有形壁部材としての現場施工型壁部材
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