JP2000096453A - 透湿防水ラミネート布帛の製造方法 - Google Patents

透湿防水ラミネート布帛の製造方法

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JP2000096453A
JP2000096453A JP10275848A JP27584898A JP2000096453A JP 2000096453 A JP2000096453 A JP 2000096453A JP 10275848 A JP10275848 A JP 10275848A JP 27584898 A JP27584898 A JP 27584898A JP 2000096453 A JP2000096453 A JP 2000096453A
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moisture
water
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polyurethane
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Kenichi Kamemaru
賢一 亀丸
Kiyoshi Nakagawa
清 中川
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Unitika Ltd
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  • Synthetic Leather, Interior Materials Or Flexible Sheet Materials (AREA)
  • Manufacturing Of Multi-Layer Textile Fabrics (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 縫製した際の縫い目の防水性に優れた透湿防
水ラミネート布帛の製造方法を提供する。 【解決手段】 裏地の片面に、ポリウレタン樹脂を主体
とする合成重合体溶液を塗布して積層物を得る。この積
層物を、水中に導入し、合成重合体溶液中の溶媒を水中
に溶出させて、ポリウレタン樹脂を凝固させ、裏地の片
面にポリウレタン樹脂を主体とする樹脂膜を生成させ
る。この際、水中で巻き取るか、又は積層物を長手方向
に折り畳まれた状態で遊動させ、積層物に次工程へ搬送
するための積極的な張力が負荷されない状態とするのが
好ましい。また、合成重合体溶液中には、平均粒径1μ
m以下でN,N−ジメチルホルムアミドの吸着量が20
0ミリリットル/100g以上の無機微粉末が含有され
ているのが好ましい。そして、この樹脂膜表面にポリウ
レタン系接着剤等の接着剤を介して表地を貼合し、透湿
防水ラミネート布帛を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、雨衣、上衣、登山
衣等の各種衣料用として用いられる透湿防水性能に優れ
たラミネート布帛の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】透湿性と防水性を併せ持つ透湿防水布帛
は、身体からの発汗による水蒸気を衣服外へ放出する機
能と、雨が衣服内に侵入するのを防ぐ機能とを有するも
のである。このような透湿防水布帛は、スポーツ衣料や
防寒衣料等の素材として使用され、その中でも、運動に
伴う発汗量の比較的多いスポーツやアウトドアのための
衣料用素材として多く用いられており、特に、スキー,
アスレチック,登山分野においては必要不可欠な衣料用
素材となっている。
【0003】このような透湿防水布帛としては、糸を高
密度に織り込んだ高密度織物や、ポリウレタン系樹脂,
ポリアミノ酸系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリアミド
系樹脂,ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の合成重合
体よりなる樹脂膜を、表地用繊維布帛(以下、単に「表
地」と言う。)にコーティング又はラミネート等の手段
で貼合した積層布帛が良く知られている。この中でも、
特に、微多孔質のポリウレタン系樹脂膜を表地に貼合し
た積層布帛は、透湿性及び防水性に優れており、好まし
いものである。
【0004】微多孔質のポリウレタン系樹脂膜を表地に
貼合してなる積層布帛は、従来より、種々の方法で製造
されている。例えば、ポリウレタン樹脂がN,N−ジメ
チルホルムアミド等の溶媒に溶解されてなる合成重合体
溶液を、表地面に塗布した後、これを水浴中に導入し、
溶媒を水中に溶出させてポリウレタン樹脂を凝固させ、
微多孔質のポリウレタン樹脂膜を生成させるという方法
(いわゆるダイレクトコーティング法)が用いられてい
る。また、次のような、いわゆる転写法による方法も提
案されている。即ち、ポリウレタン樹脂がN,N−ジメ
チルホルムアミド等の溶媒に溶解されてなる合成重合体
溶液を、離型性基布表面に塗布した後、これを水浴中に
導入し、溶媒を水中に溶出させてポリウレタン樹脂を凝
固させ、微多孔質のポリウレタン樹脂膜を生成させる。
そして、このポリウレタン樹脂膜表面に、接着剤を部分
的に塗布し、この接着剤を介して表地をポリウレタン樹
脂膜に貼合する。そして、ポリウレタン樹脂膜から離型
性基布を剥離することにより、微多孔質のポリウレタン
系樹脂膜が表地に貼合されてなる透湿防水積層布帛を得
る方法が提案されている。
【0005】これらの方法によって、ある程度透湿性及
び防水性に優れた積層布帛を得ることができ、特に後者
の方法では比較的高い透湿性及び防水性に優れた積層布
帛を得ることができる。しかし、これらの積層布帛を用
いて、裏地と共に縫製して衣料を製造した場合、縫製し
た縫い目部分から雨水が裏地に侵入するということがあ
った。例えば、ズボンや上衣を縫製する場合、この縫い
目部分から、雨水が裏地に侵入するということがあっ
た。また、縫い目部分に更に感熱性接着テープを用いて
縫製(縫着)しても、該テープが裏地を介し樹脂膜面ま
で十分密着しない場合があり、裏地に雨水が侵入すると
共に裏地中を拡散し、結局内部に雨水が侵入するという
ことがあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等
は、縫い目部分の耐水性に優れた透湿防水布帛を得るべ
く、種々研究を行った。この結果、予期せぬことに、裏
地用繊維布帛(以下、単に「裏地」と言う。)に合成重
合体溶液を塗布して、湿式製膜を施せば、縫い目部分の
耐水性に優れた透湿防水布帛が得られることを見出し、
本発明に到ったのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、裏地の
片面に、ポリウレタン樹脂を主体とする合成重合体溶液
を塗布してなる積層物を、水中に導入し、該合成重合体
溶液中の溶媒を該水中に溶出させて、該ポリウレタン樹
脂を凝固させ、該裏地の片面に該ポリウレタン樹脂を主
体とする樹脂膜を生成させる湿式製膜工程を経た後、該
樹脂膜表面に表地を貼合することを特徴とする透湿防水
ラミネート布帛の製造方法に関するものである。
【0008】まず、本発明においては、裏地を準備す
る。裏地としては、従来裏地として用いられている任意
の布帛を用いることができる。具体的には、ナイロン
6,ナイロン66で代表されるポリアミド系合成繊維、
ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル
系合成繊維、ポリアクリロニトリル系合成繊維、ポリビ
ニルアルコール系合成繊維、トリアセテート等の半合成
繊維、ナイロン6/木綿やポリエチレンテレフタレート
/木綿等の混合繊維からなる織物、編物、不織布等を用
いることができる。本発明においては、裏地への感熱性
接着テープの接着性、裏地としての風合い及び価格面等
から鑑みて、ポリアミド系合成繊維或いはポリエステル
系合成繊維からなる編物を用いるのが、好ましい。な
お、本発明における裏地は、芯地をも含むものである。
【0009】裏地は、そのまま用いても良いが、撥水処
理を施したものを用いても良い。撥水処理された裏地
は、合成重合体溶液を塗布した場合、裏地内部への過剰
な溶液の浸透を防止することができ、好ましいものであ
る。撥水処理の具体的方法としては、裏地に、パラフィ
ン系撥水剤,フッ素系撥水剤,ポリシロキサン系撥水剤
等の撥水剤を、パディング法やスプレー法等の公知の方
法で付与すれば良い。特に良好な撥水処理法としては、
例えばアサヒガード730(旭硝子株式会社製、フッ素
系撥水剤エマルジョン)等のフッ素系撥水剤を使用し、
この5重量%水分散液を裏地に含浸させてパッディング
(絞り率40%)した後、170℃で1分間の熱処理を
行う方法が挙げられる。
【0010】この裏地の片面に、ポリウレタン樹脂を主
体とする合成重合体溶液を塗布して、積層物を得る。こ
こで、ポリウレタン樹脂を主体とする合成重合体溶液と
しては、樹脂成分としてポリウレタン樹脂を50〜10
0重量%含む合成重合体溶液が好適に用いられる。ポリ
ウレタン樹脂以外の樹脂成分としては、ポリアクリル
酸,ポリ塩化ビニル,ポリスチレン,ポリブタジエン,
ポリアミノ酸,ポリカーボネート等やこれらの共重合体
を50重量%未満の範囲で含んでいてもよく、勿論、フ
ッ素やシリコーン等で変成した重合体も含んでいてもよ
い。合成重合体溶液中の溶媒としては、ポリウレタン樹
脂を溶解又は分散させやすい有機溶媒であれば、どのよ
うなものでも用いることができる。一般的に、N,N−
ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性有機溶媒を用
いるのが好ましい。
【0011】ポリウレタン樹脂は、イソシアネート成分
とポリオール成分とを反応させて得られる重合体であ
る。イソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネ
ート,脂肪族ジイソシアネート,脂環族ジイソシアネー
ト等が単独で又は混合して用いられる。具体的には、ト
リレン−2,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェ
ニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソ
シアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート
等を主成分として用い、必要に応じ3官能以上のイソシ
アネートを使用してもよい。一方、ポリオール成分とし
ては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオー
ル等が用いられる。ポリエーテルポリオールとしては、
例えば、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリ
コール,ポリテトラエチレングリコール等が用いられ
る。ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレ
ングリコールやプロピレングリコール等のジオールと、
アジピン酸やセバチン酸等の二塩基酸との反応生成物、
又はカプロラクトン等の開環重合物を用いることがで
き、勿論、オキシ酸モノマー或いはそのプレポリマーの
重合物も用いることができる。
【0012】また、合成重合体溶液中には、平均粒径1
μm以下でN,N−ジメチルホルムアミドの吸着量が2
00ミリリットル/100g以上の無機微粉末が1重量
%以上含有されているのが好ましい。このような無機微
粉末が存在すると、凝固して生成したポリウレタン樹脂
膜の無機微粉末周囲に、微細孔が生じやすくなり、透湿
性が向上するからである。無機微粉末の平均粒径は、1
μm以下であるのが好ましく、特に平均粒径0.1μm
以下のものがより好ましい。平均粒径が1μmを超える
と、無機微粉末の存在する箇所に比較的大きな孔が形成
されることがあり、防水性が低下する恐れがある。な
お、ここで言う平均粒径とは、メジアン径のことであ
り、また無機微粉末の一次粒子の径であることは言うま
でもない。また、無機微粉末は実質的に無孔であるのが
好ましい。無機微粉末中に内部に繋がる細孔が存在する
と、この箇所にN,N−ジメチルホルムアミドが吸収さ
れてゆき、無機微粉末表面におけるN,N−ジメチルホ
ルムアミドの濃度が高くならない傾向が生じる。
【0013】この無機微粉末は、N,N−ジメチルホル
ムアミドの吸着量が200ミリリットル/100g以上
であることが好ましく、特に、250ミリリットル/1
00g以上であるのがより好ましい。N,N−ジメチル
ホルムアミドの吸着量が200ミリリットル/100g
未満であると、無機微粉末表面のポリウレタン樹脂濃度
があまり低くならず、高透湿性を持つ積層布帛が得られ
ないので、好ましくない。ここで、N,N−ジメチルホ
ルムアミドの吸着量は、以下の如き方法で測定されるも
のである。即ち、無機微粉末5gをガラス平板上にお
き、N,N−ジメチルホルムアミドを1滴滴下するごと
にステンレス製のへらを用いて練り合わせる作業を繰り
返し、N,N−ジメチルホルムアミドの1滴で急激に柔
らかくなる直前までに要したN,N−ジメチルホルムア
ミドの体積(単位:ミリリットル)を意味しており、J
IS K−5101Kに記載の煮あまに油の代わりに
N,N−ジメチルホルムアミドを用いたものである。上
述したような、平均粒径1μm以下でN,N−ジメチル
ホルムアミドの吸着量が200ミリリットル/100g
以上の無機微粉末の具体例としては、無水二酸化珪素微
粉末や三酸化二アルミニウム微粉末等を用いることがで
きる。
【0014】合成重合体溶液中の無機微粉末の含有量
は、1重量%以上であることが好ましく、特に、3重量
%以上であるのがより好ましい。無機微粉末の含有量が
1重量%未満であると、ポリウレタン樹脂膜中に占める
無機微粉末の割合が少なくなりすぎで、高透湿性を持つ
樹脂膜が得られない傾向となる。
【0015】この無機微粉末を使用する際には、合成重
合体溶液中の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムア
ミド(DMF)を用いる。これは、ポリウレタン樹脂を
溶解させやすい極性有機溶媒であり、また無機微粉末が
N,N−ジメチルホルムアミドを多量に吸着させやすい
性質を持っているからである。
【0016】裏地の片面に、合成重合体溶液を塗布する
方法としては、ナイフコータ,コンマコータ,リバース
コータ等を用いる通常のコーティング法により、塗布す
れば良い。また、塗布量は任意であるが、一般的に、得
られる樹脂膜の乾燥重量が10g/m2以上であるのが
好ましく、15g/m2以上になるようにするのがより
好ましい。
【0017】以上のようにして、裏地の片面に合成重合
体溶液が塗布されてなる積層物を、水中に導入する。具
体的には、5〜60℃の水浴中に、積層物を浸漬すれば
良い。そうすると、塗布された合成重合体溶液中の溶媒
が、水浴中に溶出し、合成重合体溶液中に溶解又は分散
していたポリウレタン樹脂及びその他の重合体が凝固
し、微多孔質の樹脂膜が生成する。そして、樹脂膜の凝
固を完全なものとするために、更に水浴中で脱溶媒及び
必要により水洗を行う。一般に、このような方法で微多
孔質の樹脂膜を生成させる工程は、湿式製膜工程と呼ば
れている。本発明においては、このように従来公知の湿
式製膜工程を採用すれば良い。
【0018】しかしながら、特に好ましくは、この湿式
製膜工程で、次工程へ搬送するための積極的な張力を負
荷しない状態で、樹脂膜を生成させるのが良い。即ち、
従来法では、この湿式製膜工程は、機械方向に搬送する
ための張力、つまり次工程へ搬送するための張力を積層
物に負荷しながら(従って、積層物にはその長手方向に
搬送するための張力が負荷される。)行っていたのを、
このような積極的な張力を負荷させないで、湿式製膜工
程を行うのが好ましい。この理由は、裏地は一般的に薄
手のタイプが多く、積極的な張力を負荷すると、端縁が
まくれあがり(カーリングしたり)、湿式製膜でトラブ
ルが生じるからである。また、目ずれが生じて、合成重
合体溶液が、塗布面の反対側に漏れてしまうからであ
る。勿論、裏地として、形態安定性の良好なものや目ず
れの生じにくいものを採用すれば、積極的な張力を負荷
して、湿式製膜を行っても良く、従来公知の湿式製膜法
を採用しても良い。
【0019】上記した、次工程へ搬送するための積極的
な張力を負荷させない状態で行う湿式製膜工程の具体的
態様としては、以下のようなものが挙げられる。例え
ば、積層物を水中に導入し、その後、その水中で積層物
を巻き取るという態様が挙げられる。即ち、この態様で
は、巻き取りによってある程度の張力は負荷されるが、
これは、次工程へ搬送するための張力ではないので、低
い張力でも巻き取ることができる。この程度の張力であ
れば、裏地にカーリングや目ずれは生じにくい。このよ
うな態様の場合、積層物を水中に導入した時点で、ある
程度、塗布された合成重合体溶液が凝固し、次いで、巻
き取った後にも凝固が進むことになる。この態様におい
て、積層物を水中に導入し、水中で巻き取るという意味
は、積層物全体が水と接した状態で巻き取るという意味
である。従って、積層物を水浴中に導入して巻き取り、
巻き取られた巻物全体が水中に浸漬された状態であって
も良いし、巻物の一部が水中に浸漬されると共に巻物が
回転しており、全体が常に水と接している状態であって
も良い。また、シャワー等で積層物に水を噴霧する態様
も、積層物を水中に導入するという内容に包含されるも
のである。従って、シャワー等で積層物に水が噴霧さ
れ、その状態で積層物が巻き取られる態様は、積層物を
水中に導入し、水中で巻き取るという内容に包含される
のである。
【0020】また、他の態様としては、J−ボックス、
L−ボックス等の精練漂白装置を用いた場合も、次工程
へ搬送するための積極的な張力を負荷させない状態で湿
式製膜工程を行うことができる。J−ボックス或いはL
−ボックスを用いる態様の場合、積層物は、次工程へ搬
送されてはいるが、一定の区域で張力が長手方向に殆ど
負荷されないで、積層物が長手方向に折り畳まれた状態
(長手方向に張力が殆ど負荷されていないので、積層物
が長手方向に滞留し、折り畳み状態となる。)となって
いる。そして、次工程へ搬送されているので、折り畳み
状態で機械方向に遊動しているのである。この遊動は、
主として前工程から押し出されるため、次工程へ向けて
搬送されるが如く動くのであり、積極的な張力が負荷さ
れて搬送されているのではない。この態様の場合、積層
物をJ−ボックス或いはL−ボックスに導入し、このボ
ックス中で積層物を水中に導入すれば良い。なお、水中
に導入するという意味は、上記の場合と同様に、水と接
触させるという意味である。
【0021】更に、他の態様としては、水を張った水槽
中に、積層物を振り落とすという態様も用いることがで
きる。積層物は単に振り落とされるだけであるから、次
工程へ搬送するための張力は負荷されない。また、ジッ
ガ染色機を用いた態様も用いることができる。この態様
は、水中に配設された二本のロール間で、積層物を交互
に巻き取るという態様である。積層物は、巻き取りによ
って張力が負荷されるが、次工程へ搬送するための高い
張力ではないので、裏地にカーリングや目ずれが生じに
くいのである。
【0022】以上の方法により、裏地の片面に塗布され
た合成重合体溶液の溶媒が水中に溶出して凝固し、ポリ
ウレタン樹脂を主体とする微多孔質の樹脂膜が生成する
のである。溶媒の溶出(脱溶媒)は、一般的に、積層物
を水中に導入しこれを水中から取り出すまでの工程で完
了する。しかし、この工程で脱溶媒が完全に完了してい
なくても良く、この場合は、水中から取り出した積層物
を、ジッガ染色機等の任意の装置を用いて、脱溶媒を完
了させても良い。脱溶媒が完了した後は、公知の方法
で、乾燥すれば良い。勿論、乾燥前に、必要であれば水
洗しても良い。
【0023】本発明においては、裏地の片面に合成重合
体溶液を塗布する前に、この塗布面に、実質的に無孔の
ポリウレタン樹脂膜を塗布しておいても良い。即ち、裏
地本体の片面に、ポリウレタン樹脂を含有する溶液を塗
布し、乾燥して、実質的に無孔のポリウレタン樹脂膜を
形成しておいても良い。このポリウレタン樹脂膜は、ポ
リウレタン樹脂を含有する溶液を塗布し、乾燥して得ら
れるもので、前述した水中凝固による湿式製膜とは異な
り、微細孔が実質的に形成されないものである。このよ
うな方法は、乾式コーティング法と呼ばれている。乾式
コーティング法で、実質的に無孔のポリウレタン樹脂膜
を塗布した裏地は、防水性がより向上するので、好まし
いものである。なお、乾式コーティング法で用いられる
ポリウレタン樹脂を含有する溶液の組成は、湿式製膜法
で用いるポリウレタン樹脂を主体とする合成重合体溶液
の組成と同一であって良い(但し、無機微粉末は含有さ
れていない。)。
【0024】裏地の片面に設けられた、水中凝固による
微多孔質の樹脂膜表面に、表地を貼合すれば、本発明に
係る透湿防水ラミネート布帛を得ることができる。貼合
する手段は、従来用いられている任意の方法が採用され
る。例えば、樹脂膜表面に接着剤を塗布した後、これを
表地に貼合しても良いし、表地に接着剤を塗布した後、
これを樹脂膜に貼合しても良い。本発明においては、貼
合する具体的手段として、以下の如き方法を採用するの
が好ましい。
【0025】まず、裏地の片面に形成された樹脂膜の表
面に、ポリウレタン系接着剤を非全面に均一に塗布す
る。ここで、ポリウレタン系接着剤が用いられる理由
は、ポリウレタン樹脂を主体とする樹脂膜との接着性に
優れているからである。また、非全面に均一に塗布する
とは、塗布されている部分と塗布されていない部分とが
あり、これが全面に亙って均一に存在するということで
ある。具体的には、散点状,等間隔に設けられた線状,
市松模様,亀甲模様等の如き形態で塗布されているとい
うことである。ポリウレタン系接着剤の占有面積(接着
剤が塗布されている部分の総面積)は、樹脂膜の表面積
に対して、20〜60%が好ましく、25〜50%がよ
り好ましい。占有面積が20%未満になると、樹脂膜と
表地との接着性が不十分となり、両者が剥離しやすくな
る傾向が生じる。また、占有面積が60%を超えると、
透湿性に乏しいポリウレタン系接着剤の占める面積が多
くなり、全体として透湿性が低下する傾向が生じる。ま
た、接着剤の存在により、全体としての風合いが低下す
る傾向も生じる。
【0026】ポリウレタン系接着剤は、どのような形態
で塗布されても差し支えないが、一般的に溶液形態で塗
布される。溶液形態のポリウレタン系接着剤としては、
イソシアネート化合物とポリオール化合物との反応物を
主体とする溶液及び/又はイソシアネート化合物とポリ
オール化合物との混合物を主体とする溶液が用いられ
る。また、この溶液中には、接着性改良のために、他の
樹脂が含有されていても良い。例えば、樹脂膜を貼合す
る表地が、ポリアミド系繊維布帛であれば、ダイマー酸
系ポリアミド樹脂や一般的なポリアミドホットメルト樹
脂等を含有させておけば、表地と接着剤との接着性が向
上するので、好ましい。また、表地がポリエステル系繊
維布帛であれば、ポリエステル系ホットメルト樹脂等を
含有させておけば、表地と接着剤との接着性が向上する
ので、好ましい。なお、溶液形態のポリウレタン系接着
剤を樹脂膜表面に塗布する具体的方法としては、公知の
グラビアコータ,ロータリースクリーン,フラットスク
リーン等を用いて、散点状,等間隔に設けられた線状,
市松模様,亀甲模様等の所望のパターンで全面に亙って
均一に塗布し、続いて、50〜150℃の温度で0.5
〜5分間乾燥すれば良い。そして、この後、ポリウレタ
ン系接着剤が塗布された樹脂膜面に、表地を貼合すれば
良い。
【0027】本発明において、表地としては、どのよう
なものでも用いることができる。例えば、ナイロン6,
ナイロン66で代表されるポリアミド系合成繊維、ポリ
エチレンテレフタレートで代表されるポリエステル系合
成繊維、ポリアクリルニトリル系合成繊維、ポリビニル
アルコール系合成繊維、トリアセテート等の半合成繊
維、木綿等の天然繊維を単独で又は混合してなる織物、
編物、不織布等を用いることができる。表地を貼合する
ための接着剤として、ポリウレタン系接着剤を用いた場
合、これは一般的に粘着性を呈しているので、表地を積
層した後、圧着又は所望により熱を与えながら熱圧着す
れば、樹脂膜と表地を貼合することができる。以上のよ
うにして、裏地/ポリウレタン樹脂膜/表地の順で積層
貼合された透湿防水ラミネート布帛を得ることができ
る。
【0028】そして、この透湿防水ラミネート布帛は、
スポーツ衣料や防寒衣料等の素材として好適に用いられ
る。各種衣料を縫製する際には、感熱接着性テープを用
いるのが好ましい。感熱接着性テープとは、低融点ポリ
エステル樹脂やポリウレタン樹脂等からなる感熱性接着
剤で構成されたテープ、テープ状の離型紙上にこれらの
感熱性接着剤が塗布されたもの、或いはテープ状の基布
上にこれらの感熱性接着剤が塗布されたものであり、衣
料を縫製或いは縫着する際に用いられるものである。
【0029】
【実施例】以下、実施例により、本発明を更に具体的に
説明する。実施例における透湿防水ラミネート布帛の各
性能の測定は、次の方法で行った。 (1)耐水圧:JIS L−1092(高水圧法) (2)透湿度:JIS L−1099(A−1法) (3)シーム部(縫い目部分)の耐水圧:所望の大きさ
の透湿防水ラミネート布帛を二枚用意し、片倒しこばス
テッチ縫い(図1に示す縫製方法)で縫製した。そし
て、この縫製部分の縫い目に、裏地側から、市販の感熱
接着性テープ(第一レース株式会社製のシームテープα
E−300、22mm巾のシームテープ)を、温度14
0℃,圧力3kgf/cm2で20秒間プレスして熱圧
着した。このようにして得られた縫い目部分の耐水圧
を、上記(1)に示す方法で測定した。
【0030】実施例1 ナイロンフィラメント40デニール/48フィラメント
を用いて、32ゲージのトリコットハーフ地を編成し、
編地を得た。この編地に通常の方法により精練及び染色
(日本化薬株式会社製、Kayanol Blue N
2G 2%owf)を行った後、アサヒガードLS−3
17の2重量%水分散液を含浸及びパッディング(絞り
率40%)し、乾燥後、温度170℃で45秒間の熱処
理を行った。続いて、鏡面ロールを持つカレンダー加工
機を用いて、温度160℃,圧力20kgf/cm2
速度20m/分の条件でカレンダー加工を行い、裏地を
得た。
【0031】次に、下記処方1に示す組成で、固形分濃
度27重量%,粘度11000mPa・s(25℃)の
ポリウレタン樹脂を主体とする合成重合体溶液を、ナイ
フオーバーロールコータを用いて、上述の裏地のカレン
ダー面に、塗布量100g/m2にて塗布した積層物
を、直ちに15℃の水中に導入し、全てが浸漬される状
態で巻き取り、その状態で5分間放置させることで、ポ
リウレタン樹脂の完全な凝固及び脱溶媒(脱DMF)を
ほぼ完了させた。この後、オーバーフローする常温の水
浴中に完全に浸漬したロールに巻き取ることで、脱溶媒
を確実に完了させた後、乾燥を行った。以上のようにし
て、裏地の片面にポリウレタン樹脂を主体とする微多孔
質の樹脂膜を形成した。なお、この樹脂膜中には、無機
微粉末(二酸化珪素微粉末)が13重量%含有されてい
た。 〔処方1〕 ラックスキン1740−29B 100重量部 (セイコー化成株式会社製、エステル型ポリウレタン樹脂) レザミンX 1重量部 (大日精化工業株式会社製、イソシアネート化合物) N,N−ジメチルホルムアミド 35重量部 アエロジルR−972 5重量部 (日本アエロジル株式会社製、平均粒径0.016μm、N,N−ジメチルホ ルムアミド吸着量350ミリリットル/100gの疎水性二酸化珪素微粉末)
【0032】次に、経糸及び緯糸の双方にナイロンマル
チフィラメント70デニール/68フィラメントを用い
て、経糸密度120本/インチ,緯糸密度95本/イン
チの平織物を製織し、通常の方法により精練及び染色
(日本化薬株式会社製、Kyanol Navy Bl
ue R 3%owf)を行い、アサヒガードLS−3
17の7重量%水分散液を含浸及びパッディング(絞り
率35%)し、乾燥後、温度170℃で45秒間の熱処
理を行い、表地を得た。
【0033】ここで、25メッシュ,深度180μm,
円形ドット状(ドット幅0.7mm,ドット間隔0.3
5mm,接着剤占有面積約40%)のグラビアロールを
用いて、下記処方2に示す組成で固形分37重量%のポ
リウレタン系接着剤溶液を、上記表地面に、塗布量60
g/m2で非全面に均一に塗布し、100℃で2分間乾
燥させた。 〔処方2〕 UD108 100重量部 (セイコー化成株式会社製、エステル型ポリウレタン系接着剤) コロネートHL 7重量部 (日本ポリウレタン工業株式会社製、イソシアネート化合物) UY−5 0.5重量部 (セイコー化成株式会社製、有機錫系反応促進剤) メチルエチルケトン 20重量部
【0034】その後、直ちに、裏地の片面に形成された
ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔質の樹脂膜面に、
ポリウレタン系接着剤溶液が塗布された表地面を当接
し、3kgf/cm2の圧力で圧着した。以上のように
して、透湿防水ラミネート布帛を得た。
【0035】参考例1 積層物を水中で巻き取らずに、積層物を15℃の水中に
1分間浸漬して樹脂分を凝固させ、積層物を機械方向に
搬送して、複数回のマングル絞りを行いながら、常温で
の脱溶媒及び水洗工程をする通常の湿式コーティング法
(通常の湿式製膜法)を採用する他は、実施例1と同一
の方法で透湿防水ラミネート布帛を製造することを試み
た。しかし、脱溶媒及び水洗工程で、裏地に長手方向に
比較的大きな張力が負荷されており、裏地が長手方向に
引っ張られた。その結果、裏地に目ずれが発生し、裏地
の非塗布面への合成重合体溶液の漏れが見られた。ま
た、裏地の長手端縁がまくれ上がり(カーリングを起こ
し)、最終的な巻き取りが不可能となり、製造時にトラ
ブルが発生した。これは、裏地として編物を使用してお
り、形態安定性が不良であるためである。従って、通常
の湿式コーティング法を採用する場合は、裏地として、
形態安定性の良好なものを使用する必要があることが分
かった。
【0036】実施例2 実施例1において、処方1で用いたアエロジルR−97
2を省く他は、実施例1と同一の方法により透湿防水ラ
ミネート布帛を得た。
【0037】実施例3 実施例1において、処方1で用いたアエロジルR−97
2に代えて、クリスタライトVX−X(白石カルシウム
株式会社製、平均粒径1.8μm、N,N−ジメチルホ
ルムアミド吸着量60ミリリットル/100gの二酸化
珪素微粉末)を5重量部用いる他は、実施例1と同一の
方法により透湿防水ラミネート布帛を得た。この樹脂膜
中には、クリスタライトVX−X微粉末が13重量%含
有されていた。
【0038】比較例1 実施例1で用いた撥水処理した表地を、鏡面ロールを持
つカレンダー加工機を用いて、温度170℃,圧力30
kgf/cm2,速度30m/分の条件でカレンダー加
工を行い、表地として用い、このカレンダー面に、実施
例1で用いた処方1の合成重合体溶液を、実施例1と同
一条件で塗布して積層物を得た。その後、この積層物を
水中で巻き取らずに、15℃の水中に1分間浸漬して樹
脂分を凝固させ、積層物を機械方向に搬送して、複数回
のマングル絞りを行いながら、常温での脱溶媒及び水洗
工程をする通常の湿式コーティング法を採用して、湿式
製膜を行った。次いで、実施例1で用いた処方2のポリ
ウレタン系接着剤溶液を、湿式製膜により形成された樹
脂膜面に、実施例1と同一条件で塗布した。最後に、ポ
リウレタン系接着剤溶液の塗布面に、実施例1で用いた
裏地を当接積層し、3kgf/cm2の圧力で圧着し
た。以上のようにして、透湿ラミネート布帛を得た。即
ち、比較例1の方法は、表地に合成重合体溶液を塗布
し、表地上で湿式製膜させるものであり、裏地上で湿式
製膜させる実施例1の方法と、この点で相違する。
【0039】実施例1〜3に係る方法で得られた透湿防
水ラミネート布帛と、比較例1に係る方法で得られた透
湿ラミネート布帛の各性能を測定し、その結果を表1に
示した。 〔表1〕 実施例1 実施例2 実施例3 比較例1 ─────────────────── 耐水圧(kgf/cm2 ) 1.37 1.38 1.13 1.36 ────────────────────────────────── 透湿度(g/m2・24hrs) 8250 2480 2890 8230 ────────────────────────────────── シーム部の耐水圧(kgf/cm2 ) 1.52 1.46 1.50 0.58 ────────────────────────────────── 表1の結果から明らかなとおり、実施例1〜3に係る方
法で得られた透湿防水ラミネート布帛は、比較例1に係
る方法で得られた透湿ラミネート布帛に比べて、シーム
部の耐水圧が格段に向上していることが分かる。また、
実施例1に係る方法で得られた透湿防水ラミネート布帛
は、実施例2及び3に係る方法で得られた透湿防水ラミ
ネート布帛に比べて、透湿度が一段と向上していること
が分かる。これは、実施例1で用いた処方1の合成重合
体溶液が、特定の無機微粉末を含んでいるからである。
【0040】実施例4 実施例1で用いた処方1の合成重合体溶液に代えて、下
記処方3に示す組成で、固形分濃度26%,粘度110
00mPa・s(25℃)の合成重合体溶液を用いる他
は、実施例1と同一条件で透湿防水ラミネート布帛を得
た。なお、この透湿防水ラミネート布帛の樹脂膜中に
は、無機微粉末(三酸化二アルミニウム微粉末)が9重
量%含有されていた。 〔処方3〕 ラックスキン1740−29B 100重量部 (セイコー化成株式会社製、エステル型ポリウレタン樹脂) レザミンX 1重量部 (大日精化工業株式会社製、イソシアネート化合物) N,N−ジメチルホルムアミド 35重量部 アルミナAKP−G015 3重量部 (住友化学工業株式会社製、平均粒径0.03μm、N,N−ジメチルホルム アミド吸着量310ミリリットル/100gの疎水性三酸化二アルミニウム微粉 末)
【0041】実施例5 実施例4において、処方3で用いたアルミナAKP−G
015に代えて、アルミナA−42−6(昭和電工株式
会社製、平均粒径5μm、N,N−ジメチルホルムアミ
ド吸着量32ミリリットル/100gの三酸化二アルミ
ニウム微粉末)を3重量部用いる他は、実施例4と同一
の方法により透湿防水ラミネート布帛を得た。透湿防水
ラミネート布帛の樹脂膜中には、アルミナA−42−6
微粉末が9重量%含有されていた。
【0042】実施例4及び5に係る方法で得られた透湿
防水ラミネート布帛の各性能を測定し、その結果を表2
に示した。 表2の結果から明らかなとおり、実施例4及び5に係る
方法で得られた透湿防水ラミネート布帛は、シーム部の
耐水圧が高いことが分かる。また、実施例4に係る方法
で得られた透湿防水ラミネート布帛は、実施例5方法で
得られた透湿防水ラミネート布帛に比べて、耐水圧及び
透湿度共に向上していることが分かる。これは、実施例
4で用いた無機微粉末が、実施例5で用いた無機微粉末
に比べて、その粒径が細かく且つN,N−ジメチルホル
ムアミド吸着量が多いからである。
【0043】実施例6 実施例1で用いた裏地のカレンダー面に、下記処方4に
示す組成で、固形分濃度26%,粘度11000mPa
・s(25℃)のポリウレタン樹脂を含有する溶液を、
乾式コーティング法により、フローティングナイフコー
ターを用いて、塗布量20g/m2 にて塗布した後、
80℃で2分間の乾燥を行った。これによって、裏地の
カレンダー面に、実質的に無孔のポリウレタン樹脂膜が
塗布された。このポリウレタン樹脂膜が形成されたもの
を裏地として用い、ポリウレタン樹脂膜上に、実施例1
で用いた処方1の合成重合体溶液を、実施例1と同一条
件で塗布し、その後も、実施例1と同一の方法で透湿防
水ラミネート布帛を得た。 〔処方4〕 ラックスキンU2514−1 100重量部 (セイコー化成株式会社製、無黄変型ポリウレタン樹脂) イソプロピルアルコール 5重量部 トルエン 15重量部
【0044】比較例2 比較例1の湿式コーティング法により得られた樹脂膜面
に、実施例6と同一の方法で乾式コーティングを行うこ
とによって、樹脂膜面に実質的に無孔のポリウレタン樹
脂膜を形成させた。そして、ポリウレタン樹脂膜上に、
比較例1と同一の方法でポリウレタン系接着剤溶液を塗
布し、裏地をラミネートして、透湿ラミネート布帛を得
た。即ち、比較例2の方法は、表地に合成重合体溶液を
塗布し、表地上で湿式製膜させた後、湿式製膜により形
成された樹脂膜面に、実質的に無孔のポリウレタン樹脂
膜を乾式コーティングするものであるのに対し、実施例
6に係る方法は、裏地上で乾式コーティングしてポリウ
レタン樹脂膜を形成させた後、このポリウレタン樹脂膜
上に合成重合体溶液を塗布して湿式製膜させるものであ
り、この点で両者は相違する。
【0045】実施例6に係る方法で得られた透湿防水ラ
ミネート布帛と、比較例2に係る方法で得られた透湿ラ
ミネート布帛の各性能を測定し、その結果を表3に示し
た。 表3の結果から明らかなとおり、実施例6に係る方法で
得られた透湿防水ラミネート布帛は、比較例2に係る方
法で得られた透湿ラミネート布帛に比べて、シーム部の
耐水圧が格段に向上していることが分かる。
【0046】
【作用】本発明に係る方法は、裏地の片面に合成重合体
溶液を塗布し、これを水中に導入し、湿式凝固させて透
湿性に優れた樹脂膜を得た後、この樹脂膜面に表地を貼
合して、透湿防水ラミネート布帛を得るというものであ
る。従って、裏地の片面へある程度合成重合体溶液が侵
入し、裏地内部にも樹脂膜が侵入した状態となってい
る。そして、この透湿防水ラミネート布帛を用いて衣料
を縫製する際には、裏地に片ステッチ縫い等を施した
後、この裏地の他面(合成重合体溶液が塗布された面と
は反対の面)に、縫製を補強するため及び縫い目から雨
水等の侵入を防止するため、感熱性接着テープを熱圧着
するのが一般的である。そうすると、感熱性接着テープ
を構成している感熱性接着剤が裏地の他面から、裏地内
部に侵入し、裏地内部で、樹脂膜と感熱性接着剤とが強
固に接着する。これに対して、本発明に係る方法とは逆
に、表地の片面に合成重合体溶液を塗布し、これを水中
に導入し、湿式凝固させて透湿性に優れた樹脂膜を得た
後、この樹脂膜面に裏地を貼合して、透湿ラミネート布
帛を得ると、合成重合体溶液は表地には侵入するが、裏
地には侵入しない。従って、裏地の他面に感熱性接着テ
ープを熱圧着しても、裏地内部で、樹脂膜と感熱性接着
剤とが強固に接着しないのである。
【0047】
【発明の効果】従って、本発明に係る方法で得られた透
湿防水ラミネート布帛は、裏地内部で湿式製膜により得
られた樹脂膜と感熱性接着テープを構成している感熱性
接着剤とが強固に接着している。依って、片ステッチ縫
い等により、樹脂膜に若干の引き裂き等が生じても、樹
脂膜と感熱性接着剤との接着により、縫い目からの雨水
等の侵入を防止しうるという効果を奏する。
【0048】また、本発明に係る方法において、湿式製
膜工程で、積層物を水中で巻き取ったり或いは水中で長
手方向に折り畳んで遊動させる等して、次工程へ搬送す
るための積極的な張力を負荷しない状態で、樹脂膜を生
成させると、裏地の目ずれやカーリングが生じにくく、
形態安定性に乏しい裏地であっても、効率良く、透湿防
水ラミネート布帛を得ることができるという効果を奏す
る。
【0049】また、本発明に係る方法において、樹脂膜
を形成させるための合成重合体溶液として、特定の無機
微粉末が含有されているものを用いると、より透湿性に
優れた透湿防水ラミネート布帛を得ることができるとい
う効果も奏する。更に、裏地として、その片面に実質的
に無孔のポリウレタン樹脂膜を、乾式コーティング法で
形成させたものを用いれば、より防水性に優れた透湿防
水ラミネート布帛を得ることができるという効果も奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】片倒しこばステッチ縫いを模式的に示した図で
ある。
フロントページの続き Fターム(参考) 4F055 AA30 BA02 BA12 CA05 CA14 DA10 EA05 EA11 EA22 EA30 EA37 FA15 FA40 GA02 GA32 HA07 4L032 AA06 AB01 AB07 AC01 BA05 BD01 BD03 EA01 EA02 4L033 AB01 AB04 AC07 BA09 BA71 CA17 CA22 CA50 CA69 CA70 DA06

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 裏地用繊維布帛の片面に、ポリウレタン
    樹脂を主体とする合成重合体溶液を塗布してなる積層物
    を、水中に導入し、該合成重合体溶液中の溶媒を該水中
    に溶出させて、該ポリウレタン樹脂を凝固させ、該裏地
    用繊維布帛の片面に該ポリウレタン樹脂を主体とする樹
    脂膜を生成させる湿式製膜工程を経た後、該樹脂膜表面
    に表地用繊維布帛を貼合することを特徴とする透湿防水
    ラミネート布帛の製造方法。
  2. 【請求項2】 湿式製膜工程において、水中に導入した
    積層物に、次工程へ搬送するための積極的な張力を負荷
    しない状態で、樹脂膜を生成させる請求項1記載の透湿
    防水ラミネート布帛の製造方法。
  3. 【請求項3】 湿式製膜工程において、水中に導入した
    積層物を、該水中で巻き取ることにより、該積層物に次
    工程へ搬送するための積極的な張力を負荷しない状態と
    する請求項2記載の透湿防水ラミネート布帛の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 湿式製膜工程において、水中に導入した
    積層物を、長手方向に折り畳まれた状態で遊動させるこ
    とにより、該積層物に次工程へ搬送するための積極的な
    張力を負荷しない状態とする請求項2記載の透湿防水ラ
    ミネート布帛の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリウレタン樹脂を主体とする合成重合
    体溶液として、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒と
    し、且つ平均粒径1μm以下でN,N−ジメチルホルム
    アミドの吸着量が200ミリリットル/100g以上の
    無機微粉末を1重量%以上含有するものを用いる請求項
    1乃至4のいずれか一項に記載の透湿防水ラミネート布
    帛の製造方法。
  6. 【請求項6】 樹脂膜表面に表地用繊維布帛を貼合する
    際、該樹脂膜表面に、ポリウレタン系接着剤を非全面に
    均一に塗布した後、該ポリウレタン系接着剤を介して該
    表地用繊維布帛を貼合する請求項1乃至5のいずれか一
    項に記載の透湿防水ラミネート布帛の製造方法。
  7. 【請求項7】 裏地用繊維布帛として、裏地用繊維布帛
    本体の片面に、乾式コーティング法によって得られた実
    質的に無孔のポリウレタン樹脂膜が塗布されてなるもの
    を用いる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の透湿防
    水ラミネート布帛の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の
    方法で得られた透湿防水ラミネート布帛を用い、且つ、
    該透湿防水ラミネート布帛中の裏地用繊維布帛に感熱性
    接着テープを熱圧着することによって縫製されたことを
    特徴とする衣料。
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