JP2000096162A - アルミニウム基複合材およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム基複合材およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウムのマトリックス中に分散する低
融点金属などの粒子が微細で、分散度が均一且つ密であ
り、強度特性に優れ、耐摩耗性、摺動性、切削性などに
優れた性能が期待できるアルミニウム基複合材およびそ
の製造方法を提供する。 【解決手段】 アルミニウムまたはアルミニウム合金の
粉末と低融点金属および/または低融点合金の酸化物粉
末を混合し、混合粉を圧縮成形後、熱間で成形加工する
ことにより、アルミニウムのマトリックス中に、低融点
金属の粒子、低融点合金の粒子や低融点金属とアルミニ
ウムとの金属間化合物の粒子が微細に分散した材料とな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム基複
合材、詳しくは、マトリックス中に低融点金属などの粒
子を分散させたアルミニウム基複合材およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、アルミニウムと低融点金属と
の合金を通常の溶解鋳造法(IM法)により製造するこ
とは困難である。これは、両者の融点差および比重差が
大きく、しかも固相アルミニウムと液相低融点金属との
2相領域が広い温度範囲にわたって存在するため、凝固
後に低融点金属の偏析が生じ易く、また低融点金属自体
が粗大な塊となって生成するためであり、製造された合
金は、組織は不均一で、機械的強度も低いものとなる。
【0003】アルミニウムをべースとし、低融点金属を
含有する摺動材や軸受材などを製造する場合、アルミニ
ウムに低融点金属、例えば、Sn、Pbなどを配合して
溶解し、溶湯を噴霧、急冷凝固させて合金粉末を製造
し、この合金粉末を成形加工する方法(PM法)、アル
ミニウム粉末またはアルミニウム合金粉末にPbやPb
−Sn合金などの粉末を配合して、メカニカルアロイン
グ処理などの方法で混合し、混合粉末を真空ホットプレ
スなどの手段で熱間成形加工する方法が提案されてい
る。(例えば、特開平7−9051号公報、特開平7−
300644号公報、特開平8−13074公報など)
【0004】これらの方法によれば、アルミニウムまた
はアルミニウム合金のマトリックス中に分散する低融点
金属、合金を、例えば10μm〜数十μmと、ある程度
まで微細に生成させることができ、かなりの強度、耐摩
耗性、摺動性、切削性などの特性を有する材料が得られ
るが、耐摩耗性、切削性などにより高性能を得るために
は、分散粒子の凝集、偏在がなく、さらに微細、均一且
つ密に分散していることが必要であり、低融点金属を含
有するアルミニウム合金の粉末や低融点金属、合金の粉
末を使用する従来の方法では、かかる分散性状を備えた
材料を製造することが困難であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、マトリック
ス中に低融点金属などの粒子を分散させたアルミニウム
基複合材における上記従来の問題点を解消するためにな
されたものであり、その目的は、マトリックス中に分散
する低融点金属などの粒子が微細で、粒子の分散度が均
一且つ密であり、強度特性に優れ、耐摩耗性、摺動性、
切削性などに優れた性能が期待されるアルミニウム基複
合材およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の請求項1に係るアルミニウム基複合材は、
アルミニウムまたはアルミニウム合金の粉末成形体から
なり、マトリックス中に、低融点金属の粒子、低融点合
金の粒子、および該低融点金属とアルミニウムとの金属
間化合物の粒子のうちの少なくとも1種の粒子が微細に
分散しており、分散粒子の平均径が5μm以下、平均粒
子間隔が5μm以下であることを特徴とする。
【0007】請求項2に係るアルミニウム基複合材は、
請求項1の構成に加え、低融点金属が、Bi、In、P
b、SbまたはSnであり、低融点合金がこれらの低融
点金属からなるものであることを特徴とする。
【0008】請求項3に係るアルミニウム基複合材は、
上記の構成に加えて、低融点金属が5〜30%含有され
ていることを特徴とする。
【0009】また、請求項4に係るアルミニウム基複合
材の製造方法は、低融点金属および/または低融点合金
の酸化物粉末を混合したアルミニウムまたはアルミニウ
ム合金の粉末を圧縮成形後、熱間で成形加工することを
特徴とする。
【0010】請求項5に係るアルミニウム基複合材の製
造方法は、低融点金属および/または低融点合金の酸化
物粉末を配合したアルミニウムまたはアルミニウム合金
の粉末にメカニカルアロイング処理を行い、処理された
粉末を圧縮して圧粉体を形成した後、熱間で成形加工す
ることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明のアルミニウム基複合材の
製造工程について説明すると、まず、アルミニウム(ア
ルミニウム合金を含む、以下同じ)の粉末を公知の急冷
凝固法により作製し、これに低融点金属および/または
低融点合金の酸化物粉末を配合して混合する。耐摩耗性
を要求される場合には、アルミニウム合金として、Al
−Si系合金、Al−Cu系合金など、高温強度を要求
される場合には、Al−Fe系合金などを選択するのが
好ましい。
【0012】耐摩耗特性を改善するために、AlN、S
iC、Al2 3 、その他の窒化物、炭化物、酸化物、
ホウ化物や硬質金属などの硬質粒子を加えることもで
き、また、摺動性を高めるために、黒鉛、二硫化モリブ
デン、フッ素樹脂などの軟質材の粒子を添加してもよ
い。
【0013】粉末の混合には、ボールミルの鋼球と原料
粉末を充填してミリング処理を行うメカニカルアロイン
グ処理(MA処理、以下同じ)を適用するのが好まし
く、この処理により、低融点金属、合金の酸化物は鋼球
間で粉砕されて、アルミニウム粉末中に押し込まれ、マ
トリックス中への微細且つ均一分散が促進される。MA
処理中に酸化物が還元されて低融点金属が生成する場合
もある。
【0014】処理後の混合粉は、ついで粉末冶金的手法
(PM法)に従って緻密化され、アルミニウム基複合材
となる。緻密化のためには、公知のホットプレスや熱間
押出などの熱間加工が適用され、例えば、混合粉末をア
ルミニウムの缶に充填して冷間プレスを行って圧粉体と
し、真空脱ガス処理を行った後、加熱し、好ましくは真
空中でホットプレスを行い、さらに熱間押出により成形
加工する。
【0015】上記の工程により、アルミニウムのマトリ
ックス中に、低融点金属の粒子、低融点合金の粒子、お
よび該低融点金属とアルミニウムとの金属間化合物の粒
子のうちの少なくとも1種の粒子が均一、微細且つ密に
分散したアルミニウム基複合材が得られる。
【0016】本発明において適用される低融点金属のう
ち、好ましい低融点金属は、Bi、In、Pb、Sb、
Snであり、Cdも好適に使用できる。好ましい低融点
合金としては、これらの低融点金属からなるPb−Sn
合金、Pb−Sn−Sb合金、Pb−Sn−Cd合金な
どが適用される。この場合、アルミニウムのマトリック
ス中に分散する粒子としては、これらの低融点金属、合
金の単体および低融点金属とアルミニウムとの金属間化
合物、例えばAlSbなどである。
【0017】アルミニウムに対する低融点金属の含有量
は5〜30%の範囲が好ましく、5%未満では、低融点
金属、合金の分散量が少ないため十分な切削性、摺動性
などの特性が得られない場合があり、30%を越えて含
有すると強度が低下し易くなり、強度を必要とする用途
には適しなくなる。
【0018】本発明によれば、分散粒子の平均径が5μ
m以下、平均粒子間隔が5μm以下のものが得易く、ま
た平均径が2μm以下、平均粒子間隔が2μm以下のも
のも得ることができ、従来の方法によるものに比べ、ア
ルミニウムのマトリックス中に低融点金属、合金の粒子
がきわめて微細、均一且つ密に分散した粉末成形体の製
造が可能となる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 実施例1 アルミニウム(純度99.99%)の溶湯をエアアトマ
イズ法により急冷凝固させ、平均粒径が20μmのアル
ミニウム粉末を得た。このアルミニウム粉末に低融点金
属の酸化物粉末(純度99.9%)を配合してMA処理
を施した。配合された粉末の組成を表1に示す。なお、
各低融点金属の酸化物は、低融点金属が複合材の製造工
程中に還元されて、それぞれ10%の低融点金属が生成
されるように配合した。
【0020】
【表1】
【0021】MA処理は、乾式高エネルギーボールミル
(商品名:アトライター、三井三池製作所(株)製)を
使用し、容量5リットルのタンク内にステンレス鋼(S
UJ−2)のボールを17.5kgと原料粉末を1チャ
ージ分(700g)充填し、ボールと粉末との焼き付き
を防止するための助剤としてメタノールを添加して、ア
ルゴンガス雰囲気中、インペラー回転数120rpm、
30時間の条件で処理した。
【0022】MA処理後、処理された粉末をA6061
合金の円筒缶(外形33.5mm、内径30mm)に充
填して、50トンのアムスラー型万能試験機で冷間プレ
ス(550MPa、1分)を行い圧粉体とした。つい
で、温度673K(但し、試験材No.2については6
23K)、真空度1.33×10-3〜10-4Paで1時
間の脱ガス処理を行って不純物を除去した。
【0023】脱ガス処理後、脱缶して、温度673K、
圧力100MPaでホットプレスを行い、ホットプレス
した成形体を、空気炉で673Kの温度(但し、試験材
No.2については623K)に30分予備加熱した
後、押出プレス(コンテナ内径30mm、ダイス孔径7
mm)で熱間押出成形(押出比25)を行い、直径7m
mの棒材を作製した。
【0024】得られた棒材について組織観察、X線回折
を行い、棒材から試験片を採取して、常温および高温の
硬度、引張強さを測定した。また、上記製造工程中のM
A処理材、ホットプレス材についても組織観察、X線回
折を行い、低融点金属の酸化物の変化状況を調べた。こ
れらの結果を表2、表3に示す。
【0025】
【表2】
【0026】表2に示すように、試験材No.1、試験
材No.2では、ホットプレス以後の段階でマトリック
ス中にそれぞれBi、Inが確認され、Bi、Inの酸
化物が還元されたことを示す。試験材No.3において
は、MA処理後にPbが確認され、MA段階でPbの酸
化物がAlにより還元されたことが認められた。試験材
No.4では、ホットプレス以後の段階で、固相反応に
より生成した金属間化合物AlSbの生成が認められ
た。試験材No.5では、ホットプレス以後の段階でS
nが確認され、Snの酸化物がAlにより還元されたこ
とがわかる。
【0027】
【表3】
【0028】試験材No.5の最終熱間押出材(押出方
向に垂直な断面)についての顕微鏡組織を、図1に示
す。図1にみられるように、アルミニウムマトリックス
中に平均直径5μm以下、粒子間の平均間隔5μm以下
のAlSb粒子が分散した粉末成形体が得られる。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、アルミニウムのマトリ
ックス中に分散する低融点金属などの粒子が微細で、分
散度が均一且つ密であり、強度特性に優れ、耐摩耗性、
摺動性、切削性などに優れた性能が期待できるアルミニ
ウム基複合材およびその製造方法が提供される。当該ア
ルミニウム基複合材は、アルミニウム合金ベースを選択
することにより、上記の特性を必要とされる摺動材、軸
受材、VTRシリンダ材、その他の材料として有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による複合材を熱間押出により製造した
場合の押出断面の顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 亀井 礼 千葉県習志野市泉町1−2−1 日本大学 生産工学部機械工学科内 Fターム(参考) 4K018 AA14 AA15 AA16 AA17 AB01 AB02 AB03 AB04 AB05 AB07 AC01 BA08 BA20 BB04 BC12 BC13 BC16 CA11 DA13 DA14 DA21 DA32 EA02 EA32 KA02 KA03 KA51 4K020 AA22 AA23 AA24 AC01 BB28 BC01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウムまたはアルミニウム合金の
    粉末成形体からなり、マトリックス中に、低融点金属の
    粒子、低融点合金の粒子、および該低融点金属とアルミ
    ニウムとの金属間化合物の粒子のうちの少なくとも1種
    の粒子が微細に分散しており、分散粒子の平均径が5μ
    m以下、平均粒子間隔が5μm以下であることを特徴と
    するアルミニウム基複合材。
  2. 【請求項2】 低融点金属が、Bi、In、Pb、Sb
    またはSnであり、低融点合金がこれらの低融点金属か
    らなるものであることを特徴とする請求項1記載のアル
    ミニウム基複合材。
  3. 【請求項3】 低融点金属が5〜30%(重量%、以下
    同じ)含有されていることを特徴とする請求項1または
    2記載のアルミニウム基複合材。
  4. 【請求項4】 低融点金属および/または低融点合金の
    酸化物粉末を混合したアルミニウムまたはアルミニウム
    合金の粉末を圧縮成形後、熱間で成形加工することを特
    徴とするアルミニウム基複合材の製造方法。
  5. 【請求項5】 低融点金属および/または低融点合金の
    酸化物粉末を配合したアルミニウムまたはアルミニウム
    合金の粉末にメカニカルアロイング処理を行い、処理さ
    れた粉末を圧縮して圧粉体を形成した後、熱間で成形加
    工することを特徴とするアルミニウム基複合材の製造方
    法。
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