JP2000091673A - 固体レ―ザおよびその制御方法 - Google Patents

固体レ―ザおよびその制御方法

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JP2000091673A
JP2000091673A JP19831899A JP19831899A JP2000091673A JP 2000091673 A JP2000091673 A JP 2000091673A JP 19831899 A JP19831899 A JP 19831899A JP 19831899 A JP19831899 A JP 19831899A JP 2000091673 A JP2000091673 A JP 2000091673A
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JP19831899A
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Akio Miyamoto
晃男 宮本
Taisei Matsumoto
大成 松本
Hidenobu Ishida
英伸 石田
Satoshi Makio
諭 牧尾
Masazumi Sato
正純 佐藤
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低ノイズ固体レーザを長時間動作させた場合
に一般に発生するレーザ出力と波長の不安定性、出力光
に含まれる高周波ノイズの出現を防ぐとともに、レーザ
動作を開始してから所定のレーザ出力を得るまでの立ち
上がり時間を従来の低ノイズ固体レーザよりも短縮する
ことを目的とする。 【解決手段】 レーザ共振器の温度制御素子12に対す
るヒートシンク13の温度制御をおこなう第2の温度制
御素子14を設けることで、温度制御素子12およびヒ
ートシンク13にかかる歪の経時変化を抑制し、レーザ
共振器に対する歪の経時変化を抑制して、共振器内の各
光学部品の相対的位置関係を実質的に一定とすること。
また共振器ベース厚さを適当な厚さに設定することによ
っても、レーザ出力、波長の安定性、高周波ノイズの出
現を抑制できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体レーザーに係
るものであり、特に出力の安定と低ノイズ化を図ると共
に、レーザ出力の立ち上がり時間を大幅に短縮した単一
の縦モードで発振可能な固体レーザーに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】固体レーザーは気体レーザー等の従来の
レーザーに比べて、長寿命、低消費電力、メンテナンス
フリーの特徴があり、また高周波ノイズを低くできる等
の有望なレーザであるため、近年その開発が大いに進め
られている。なかでも、発振が困難な緑から青、紫外領
域の短波長のレーザービームを得るために、その共振器
内に非線形光学材料からなる光波長変換素子を内蔵した
内部共振器型の第2高調波固体レーザが実用化されてい
る。
【0003】図4に従来から用いられている内部共振型
の第2高調波固体レーザの代表的な構成例を示す。半導
体レーザ1は固体レーザ結晶5の励起光源として用いて
おり、半導体レーザ1から発せられた発散ビームは集光
光学系2を通過して、固体レーザ結晶5に集光される。
励起された固体レーザ結晶5から発せられた光は、共振
器ミラー3と第2高調波を発生する非線形光学結晶9の
端面にコーティングされたミラー3’との間で構成され
たレーザ共振器中を往復することで増幅され、レーザ光
が発振するに至る。この例のように、発振したレーザ光
の波長を別の波長に変換する場合、発振したレーザ光は
変換される前段階の基本光という意味で基本波と一般に
呼ばれる。基本波は波長制御機構7によりその波長を制
御され、所定の波長成分を有するよう制御される。基本
波はレーザ共振器の中に配置した第2高調波を発生する
非線形光学結晶9によりその波長が半分の値に変換さ
れ、第2高調波としてレーザ共振器よりレーザビーム1
6として出射される。
【0004】また、第2高調波レーザ光16の出力は、
レーザ発振動作時の温度に関し相当敏感である。それ
は、レーザ共振器を構成する各光学部品、特にレーザ結
晶5、波長制御機構7、非線形光学結晶9の機能は温度
依存性が非常に強いものであるため、第2高調波レーザ
出力も当然温度に依存することになる。そのため、温度
依存性をなくしレーザ出力の安定化を図るために、レー
ザ共振器を構成する各光学部品はベース上に固定される
と共に、ペルチェ素子などの温度制御素子を設けること
により一定温度に制御される。この温度制御素子は放熱
特性を良好にするために、ヒートシンクが一般的に設け
られる。このヒートシンクはレーザ装置内の不要な熱を
外部に持ち去る。
【0005】このように共振器内に非線形光学材料を配
置した第2高調波固体レーザーでは、レーザ共振器内に
存在する各波長(縦モード)の強度が非線形光学素子の
働きに起因したモード競合現象を起こし、正味のレーザ
出力の時間変化がカオスとなり、高周波ノイズが発生し
易いことが一般に広く知られている。ここで、高周波ノ
イズの具体的な周波数域は、各縦モードの時間変化の原
因となるレーザ結晶の蛍光寿命、あるいはレーザ共振器
における各光学部品の表面における損失や非線形光学変
換に伴う損失等の時定数で決まる。この時定数τは標準
的な固体レーザの場合で、τ=10nsから100μsの範囲に
ある。そのため、ノイズ周波数を単純に時定数τの逆数
で近似すると、周波数帯域幅は10kHzから100MHz程度の
高周波域となる。このようなモード競合による高周波ノ
イズを抑制する方法が提案されている。例えば、平行平
板であるエタロン板などの波長制御素子をレーザ共振器
内に導入することにより、レーザ共振器内の基本波を単
一縦モード発振とすることで、モード競合現象そのもの
をなくす方法、あるいは特開平10−65254号公報
に開示されているように、非線形光学結晶における和周
波変換作用を考慮してレーザ共振器を設計することによ
り、モード競合現象を安定化させる方法などがある。
【0006】しかしながら、上述したレーザー装置には
多くの場合レーザー出力を一定に保つことが要請され、
その調節とメンテナンスに関しては多大の労力が費やさ
れているのが現状である。例えば、特開平7−1540
14号公報には、光変換素子から出射した波長変換波の
一部を分岐させ半導体レーザーにフィードバック信号と
して与えて、出力を一定値に維持するAPC(Automati
c Power Control)回路を付加した技術が開示されてい
る。
【0007】しかし、APC動作を充分に発揮させるた
めに、クリアしなければならない条件がいくつかある。
APC動作時には、レーザ装置の出力の増減が起こって
も、その増減をモニタすることによってレーザ共振器内
に照射励起光に比例する半導体レーザの入力電流を、モ
ニタ検出信号の増減に応じて制御することによってレー
ザ装置の出力を一定にすることが行われる。このような
条件を満足するには、予め励起入力である半導体レーザ
の入力電流が、高い電流値までレーザ装置の出力に対し
て増加関数の関係となっていることが必要である。
【0008】しかしながら一般に低ノイズ固体レーザで
は、低ノイズを実現できる励起入力エネルギの範囲が狭
い。さらに、励起入力エネルギに対してレーザ装置の出
力は単純な増加関数とはならず、傾きが負である減少関
数となる領域が含まれることも多い。そのため、APC
動作中に励起入力エネルギが増加方向に変化していく
と、低ノイズ状態が崩れたり、APC動作が正常に動作
せず出力のドリフトが生じることが多い。このように低
ノイズ状態が崩れたり、APC動作域から外れる場合に
は、オペレータがレーザ共振器の温度などを別の値に再
調整して低ノイズ状態でのAPCの可制御域に戻す方法
が採られていた。
【0009】さらに、レーザー出力が変化する要因とし
て、発振波長の変動がある。特に、非線形光学材料から
なる波長変換素子を組み込んだ装置においては、その波
長変換効率が波長に強く依存するため、波長変化による
出力変化が顕著に現れる。また、低ノイズ状態が維持し
ているための波長範囲は一般に非常に狭いため、低ノイ
ズ状態での発振を保持することが困難である。即ち、発
振波長の固定が必要である。固体レーザーの発振波長は
レーザ共振器の設定に影響されるため、一対のミラー間
隔で決まる共振器長あるいは各光学部品の位置関係を一
定化することが必要である。
【0010】たとえば、典型的な固体レーザであるNd:Y
AGレーザを共振器長50mmで構成した場合、波長は1064n
m、縦モード間隔は0.01nmとなる。ここで縦モード間隔
は波長と共振器長で決まる。低ノイズの維持のために許
容される波長の変化を大きく見積もって、安全側にこの
縦モード間隔0.01nmとすることができる。この場合、レ
ーザ共振器内部の電場の定在波の個数は、共振器長を波
長で換算すると約50000個と評価できる。共振器長の変
動許容幅は1波長分の許容幅に波の個数を掛ければ求め
られる。即ち、0.01nmに50000をかけて、0.5μmという
値が得られる。この値が共振器長の変動許容幅である。
このように、発振波長を固定して所要の出力と低ノイズ
状態を維持するには共振器長の変動は少なくとサブミク
ロン0.1μmオーダーの範囲内に収める必要があることが
わかる。
【0011】また、従来技術では特開平7−30642
9号公報に記載されているペルチェ素子による吸熱量ま
たは発熱量を制御することによって、熱膨張、あるいは
熱収縮によって部材の間隔を制御する方法が開示されて
いる。また、特開平10−22559号公報には、外部
共振器型波長変換装置において出力を安定化するため
に、半導体レーザーと共振器間の距離の変動を抑制する
方法が記載されている。開示されている外部共振器と
は、その共振器の中にレーザ光そのものを発生させる媒
体、すなわちレーザ結晶を含まず、最低限二つのミラー
とその間の波長変換素子で構成されるものである。従っ
て、本発明が対象としている共振器内にレーザ結晶を含
む構成とは根本的に異なるものである。さらに、これら
の従来技術では、共振器長および共振器内の各光学部品
の相対的位置関係を一定に保つという目的のために、部
品の温度を一定に維持することで一見満足されているよ
うにみえる。しかしながら、一定温度に保たれているベ
ースに接する他の部材からの応力によって、そのベース
にかかる歪みが変化する可能性があり、共振器長および
/あるいは共振器内の各光学部品の相対的位置関係を一
定に保つのに十分な方法ではない。従って前述したよう
に出力と波長の変化を抑えることはできない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】このように、上述した
従来技術の方法では共振器のベースの温度を一定に制御
していても、長時間に渡るAPCによるレーザ動作中に
おいては、レーザ共振器にかかる応力や歪の経時変化に
より、励起源である半導体レーザの駆動電流が定格電流
値を上回り、またAPC動作から逸脱して出力低下を起
こし、縦モード状態が変化して低ノイズ状態が崩れてし
まうことが多い。温度制御素子であるペルチェ素子とヒ
ートシンクで生じる複雑な歪みに着目し、その歪が発振
状態に強く影響していることを実験的に見出し本発明を
想到したものである。さらに、この歪はレーザ装置のス
イッチを入れて所要の出力が得られるまでの定常状態到
達時間内にかなり変化するため、低ノイズ固体レーザの
立ち上がり時間を長引かせる原因にもなる。そこで、出
力と縦モードの長時間にわたる安定化、およびレーザ共
振器に励起入力を投入してから所要の出力と波長を得る
までの時間の短縮を目的として、温度制御素子とそのヒ
ートシンクで生じている歪みの経時変化を精度よく抑制
することが本発明の目的である。
【0013】
【課題を解決するための手段】以上述べた従来技術の課
題を精細に検討し、光学部品の相対的位置変化あるいは
変動は、レーザ共振器全体を固定配置しているベースに
起因する歪が主要なものであり、これはベースの加工歪
みあるいはベース上に固定する方法および構成などによ
る先天的に持つ歪みと、時間の経過および/あるいは加
熱昇温等の複合作用の結果による後天的な歪みが複雑に
複合した結果であることを突き止めたものである。これ
らは実験により検証した結果が本発明である。
【0014】さらに、本発明の具体的な解決手段につい
てその技術思想を以下述べることにする。部材に存在す
る歪みの経時変化を引き起こす主な要因は、外部応力と
温度変化を挙げることができる。前者に関しては、共振
器を構成するベースに起因するところがあることがわか
った。従来の共振器ベースとしては削り出しのバスタブ
型を用いることが多かったが、これだと部品の取り付け
や調整に手間取り好ましいものとは言えなかった。そこ
で本発明では、ベースの形状を単純な略長方体となした
が、他方で剛性に起因する外部応力について考慮する必
要が生じたのでこれを解消できるベース厚さの条件を本
発明では提案している。即ち、共振器を構成する共振器
ベースの厚さを15〜70mmとすることが望ましいの
である。
【0015】共振器のベース下に設置した温度制御用の
ペルチェ素子は環境温度が変動した場合にベース温度を
一定となるように素子内部に温度勾配を設けるものであ
る。ここで、ベース厚さを15mm以下とした場合は、
温度勾配が生じることによってペルチェ素子はバイメタ
ルのように曲げ応力を発生させ、その応力がベースに作
用し共振器ベースも曲げられる結果となる。これによっ
て共振器の状態が変化しレーザ発振状態が不安定とな
る。一方、ベース厚さを70mm以上としたのでは、高
さが高くなり過ぎ、ペルチェ素子からの距離が遠くな
る。よって、多くの外部からの温度擾乱要因が共振器内
部及びベースに作用する。その結果、ペルチェ素子の容
量が不足し、結果、環境温度によるレーザ共振器の状態
が変化してしまうのである。また、ベースの熱容量も大
きくなり、ペルチェ素子による制御に対して十分早い応
答がなされないことも要因の一つである。そこで、ペル
チェ素子を大型で容量の大きいものとすることが出来れ
ば、単に上記容量不足は解消できるかもしれない。しか
し、共振器ベースの底面積は通常、常識的な寸法に限ら
れていることから、大型のペルチェ素子を用いても共振
器やベースの寸法を超えてしまい、現実的な対策とはな
らない。
【0016】さて、後者に関しては、その部材の熱膨張
が引き金になり歪みが生じる。そのため、ヒートシンク
を構成している材質の熱膨張率を、ヒートシンクの温度
上昇に起因したレーザー発振波長の変動を引き起こさな
い程度に小さくすることによって、出力の安定化と低ノ
イズ化を実現できる。以下、上記の要求を満たす線膨張
率の上限値の算定の根拠を示すことにする。
【0017】低ノイズであるためのレーザ共振器長の許
容幅ΔLは、大きく見積もって縦モード間隔1つ分であ
るといえるため、以下の式が成立する。 ΔL=Δλcavity/2×Nintensity (1) ここで、Δλcavityは縦モード間隔1つ分の波長間隔、
Nintensityは、共振器の中の光強度の波数であり、それ
ぞれ、以下のように表現できる。 Δλcavity=λ2/(2Lc) (2) Nintensity=λ/(2Lc) (3) ここで、λはレーザ光の中心波長、Lcは共振器長であ
る。一方、線膨張係数βの許容範囲は、前記の共振器長
の許容幅ΔLを用いて以下の式で表される。 β < (1/Lc)×(ΔL)/(ΔTh) (4) ここで、ΔThは、ヒートシンクの温度変化である。
(1)、(2)、(3)式を(4)式に代入すると以下の式が得られ
る。、 β < λ/(2Lc×ΔTh) (5) この(5)式が、ヒートシンク材に要求される線膨張率の
許容幅の範囲である。線膨張率の上限値、すなわちこの
式の右辺の値のオーダーを評価するため、典型的な値λ
=1064nm、Lc=10mm、ΔTh=5℃、を代入すると、 β < 10×10-6 [℃-1] (6) が選られる。このように、ヒートシンク材の線膨張率を
(5)式もしくは(6)式で示される値にまで低く押さえるこ
とで、ヒートシンクの温度変化が起きても歪を押さえ
て、共振器における各光学部品の相対的位置関係を実質
的に一定にし、レーザ光の発振波長変動を押さえること
ができる。
【0018】また、上記の式(5)もしくは式(6)の値より
大きい線膨張率をもつヒートシンク材を使用した場合で
も、歪の抑制はヒートシンクの温度をある所定値もしく
は範囲に制御する手段を備えることによっても可能であ
る。例えば異種の金属等を接合して電子的に冷却を行う
素子であるペルチェ素子を用いることで、ヒートシンク
の温度変動を±0.01℃オーダーに収めることが可能とな
る。以上述べたように、目的とする発振波長の安定化、
出力の安定化、低ノイズ状態の維持などの従来技術の課
題はこのヒートシンクの温度を制御することによって、
充分にその効果を得ることができる。
【0019】さらに、以上述べたレーザ光の波長変動抑
制の方法はレーザ動作の立ち上がり時間の短縮にもつな
がる。レーザ装置のスイッチを入れることで、励起源か
らレーザ共振器にエネルギーが投入されてレーザ発振が
起こり所定のレーザ出力が得られるまでの時間、即ち立
ち上がり時間は、低ノイズ固体レーザでは一般に約1時
間以上の長時間を要していた。しかし共振器内の各光学
素子の相対的位置関係を一定にできる本発明の制御方法
を採用することで、レーザの立ち上がり付近においても
所定の波長と出力を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明による一実施例を図1に示
す。図1に示す固体レーザ17の光学系は半導体レーザ
1、集光光学系2、共振器ミラー3、固体レーザ結晶
5、波長制御機構7、非線形光学結晶9で主に構成され
る。半導体レーザ光により励起された固体レーザ結晶5
から発せられた光は、レーザ共振器の中を往復しながら
増幅され基本波となる。基本波は波長制御機構7により
その波長が選択され、たった一つの波長成分、すなわち
単一縦モードとなるように調整する。その波長は860nm
とすることにより、第2高調波レーザ出力光の波長は精
確にその半分の430nmとなる。
【0021】励起光源である半導体レーザ1には定格光
出力500mWで中心波長670nmの赤色半導体レーザを使用し
た。固体レーザ結晶5として1.5%Cr濃度を有する3×3×
5mmサイズのCr:LiSAF(Cr:LiSrAlF6)単結晶を用いた。
非線形光学結晶9には第2高調波発生素子である3×3×
5mmサイズのLBO(LiBO)単結晶を用いた。また、図1
に示すようにレーザ共振器を構成する各部品、すなわち
共振器ミラー3とそのホルダー4、Cr:LiSAF単結晶5と
そのホルダー6、波長制御機構7とそのホルダー8、LB
O結晶9とそのホルダー10に関しては、ベース11の
上に固定した。ベース11は、インバー材とした。共振
器ベース11の下には温度制御素子であるペルチェ素子
12を配置した。レーザ共振器全体の温度をこのペルチ
ェ素子12により20℃に保持した。ペルチェ素子12の
下には、銅製のヒートシンク13を配置した。
【0022】以上の説明したレーザ装置の基本構成は従
来と同様なものである。次に、本発明の請求項1に記し
たように、光学部品の相対的位置関係を一定にする手段
として、前記ヒートシンク13に接して第2の温度制御
素子であるペルチェ素子14を配置した。このペルチェ
素子14は、レーザ動作中においてヒートシンク13の
温度分布の経時変化を小さくすることで、ヒートシンク
13及びペルチェ素子12における歪の経時変化を小さ
くできるものであり、本発明の要である。ヒートシンク
13の材質は銅を使用したが、銅の線膨張係数は室温で
約17×10−6(℃−1)である。この値は、式(6)で判
明したような小さい線膨張係数とはいえないが、従来技
術の課題を解決するための手段の項で述べたように、ペ
ルチェ素子14を用いてヒートシンク13の温度分布を
精密に一定に制御することで、歪の経時変化をなくして
いる。このようにヒートシンク13に接したペルチェ素
子14の効果は、レーザ共振器に対する歪の経時変化の
抑制に決定的な解決手段であり、従来技術にはない極め
て重要かつ新規な方法である。なお、ペルチェ素子14
の放熱側には第2のヒートシンク15を配置した。第2
のヒートシンクの材質はアルミニウムとした。アルミニ
ウムの線膨張係数は室温で約23×10−6[℃−1]であ
り、小さくはないが、共振器から十分離れた位置にあ
り、歪の伝達はほとんど無視できる。
【0023】次に図1に示した装置の構成を用いて半導
体レーザ1を駆動させ、実際にレーザ発振させ、レーザ
出力の安定性の実験評価をおこなった。比較として、ヒ
ートシンク13の温度制御をおこなうペルチェ素子14
を動作させない場合とペルチェ素子14を動作させてヒ
ートシンク13を一定温度に保持した場合に関して、2
時間の間半導体レーザ1を駆動させてレーザ動作を行っ
た場合の第2高調波16の出力の測定値をそれぞれ図2
に示す。この1時間の測定においては、図2に示すよう
に、このレーザの環境温度を故意に8回程、単純な一次
式の組み合わせである3角波状に温度TとT(>
T)の間で周期変化させた。
【0024】ヒートシンク13の温度制御をしていない
場合は、図2に示したように、環境温度を増加させると
ほぼ同期して第2高調波16の出力増加が観察された。
これは、装置内部の温度変化が引き起こされることでヒ
ートシンク13の温度分布が変化し、それに応じてヒー
トシンク13とペルチェ素子12に存在する歪が変化す
ることでレーザ共振器にかかる歪も変化し、レーザ出力
が変化したと考えられる。このように、ヒートシンク1
3の温度制御をしていない場合は、環境温度変化に対し
てレーザ出力の安定性はとれない結果が得られた。
【0025】ヒートシンク13の温度制御をした場合に
は同図2に示したように、装置内部の温度を同様に変化
させても、レーザ出力に顕著な変化は観察されなかっ
た。これは、ヒートシンク13の温度をペルチェ素子1
4により強制的に一定に保持することにより、装置内部
の温度が変化してもヒートシンク13の温度分布がほぼ
一定に保たれ。レーザ共振器にかかる歪がほぼ一定に保
たれたためである。このように、レーザ共振器に対する
歪の経時変化をなくす目的で、ヒートシンク13の温度
を一定制御することで、レーザ出力の安定性が向上する
ことが実証された。さらに、ノイズについての測定結果
を図3に示す。図示するように5Mhz以下のノイズが、従
来に比べて本発明の実施によって大幅に低減される。こ
のノイズ分は出力光に対して1%rms以下であり、従来と
比較して数分の1以下にすることができた。
【0026】次に、ベース11の厚みの影響について実
施例を下記する。図1に示すレーザ共振器において共振
器全体の温度をペルチェ素子12により意図的に所定量
だけ変動させたときのノイズ発生の有無を調べたもので
ある。尚、ベースは長さ57.4mm、幅50.5mm
の略長方体形状であり同じインバー材を用いた。結果は
表1に示すようにベース厚みによるノイズ発生の影響が
認められ、概略15〜70mmの間で安定することが分
かった。厚さが比較的薄いと、環境温度が変動すること
によるペルチェ素子の温度勾配が生じ、このペルチェ素
子がバイメタルのように曲げ応力を発生させる。この応
力はベースにも作用するからベースが曲げられる結果と
なり、結果、レーザ発振状態が不安定となる。逆に厚い
場合はペルチェ素子の容量が不足し環境温度の変動によ
りレーザ発振状態が不安定となることからレーザ発振状
態が不安定となったものと考えられる。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】以上詳しく述べたように、レーザ共振器
のベースの温度を一定に制御していても、長時間に渡る
APCによるレーザ動作中においては、レーザ共振器に
かかる応力や歪の経時変化により、励起源である半導体
レーザの駆動電流が定格電流値を上回り、またAPC動
作から逸脱して出力低下を起こし、縦モード状態が変化
して低ノイズ状態が崩れてしまうことを本発明の実施に
よって解決することができる。さらに、この歪はレーザ
装置のスイッチを入れて所要の出力が得られるまでの定
常状態到達時間内にかなり変化するため、低ノイズ固体
レーザの立ち上がり時間を大幅に短縮可能である。同時
に、出力と縦モードの長時間にわたる安定化を得ること
が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施例の固体レーザの構成であ
る。
【図2】本発明によるレーザ出力の安定性向上を示す測
定結果である。
【図3】本発明と従来のノイズの測定結果を示す。
【図4】従来技術におけるレーザの基本構成である。
【符号の説明】
1 半導体レーザ、2 集光光学系、3,3´ 共振器
ミラー、4 共振器ミラー用ホルダー、5 レーザ結
晶、6 レーザ結晶用ホルダー、7 波長制御機構、8
波長制御機構用ホルダー、9 非線型光学結晶、10
非線型光学結晶用ホルダー、11 ベース、12 ベ
ース温度制御用ペルチェ素子、13 ヒートシンク、1
4 ヒートシンク用ペルチェ素子、15 ヒートシン
ク、16 レーザビーム出力、17 固体レーザ装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 牧尾 諭 埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地日立金属株式 会社磁性材料研究所内 (72)発明者 佐藤 正純 埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地日立金属株式 会社磁性材料研究所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒートシンクを持つ温度制御素子をベー
    スに設け、一対のミラーの間に少なくともレーザ結晶を
    有するレーザ共振器を前記ベース上に載置する固体レー
    ザにおいて、前記共振器内のレーザ結晶等の光学部品の
    相対的位置関係を実質的に一定にする手段を有すること
    を特徴とする固体レーザ。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記ベースが受ける
    先天的あるいは後天的な歪み、即ち組立および方法に起
    因する歪み、温度、気圧、湿度等の環境変化による歪
    み、もしくは重力の大きさ向きで影響される設置場所方
    法等に依存する歪みの単独もしくは複合された作用によ
    り、その大きさを少なくとも経時的な変化を考慮して実
    質的に一定に制御する手段を前記ベースに設けたことを
    特徴とする固体レーザ。
  3. 【請求項3】 請求項1または2のいずれかにおいて、
    前記ヒートシンクはヒートシンクの温度分布あるいはそ
    の変化によりレーザ光の発振波長変動が誘起されること
    のない程度の線膨張率を有することを特徴とする固体レ
    ーザ。
  4. 【請求項4】 請求項1から3のいずれかにおいて、前
    記温度制御素子に接触する部材の線膨張率およびそれら
    の値の相互の差が、レーザ光の発振波長が変化しない程
    度に小さいことを特徴とする固体レーザ。
  5. 【請求項5】 請求項3または4のいずれかにおいて、
    前記線熱膨張係数は10×10−6(℃−1)以下であるこ
    とを特徴とする固体レーザ。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかにおいて、前
    記ベースは温度制御素子により一定の温度に制御され、
    さらに前記ヒートシンクを所定の温度範囲に制御する第
    2の温度制御素子を有することを特徴とする固体レー
    ザ。
  7. 【請求項7】 請求項3から6のいずれかにおいて、前
    記ベースとヒートシンクとは所要の相対温度差以内にあ
    るように前記手段を制御することを特徴とする固体レー
    ザ。
  8. 【請求項8】 請求項1から7のいずれかにおいて、前
    記ベースは略長方体形状となし、その厚さを15〜70
    mmとしたことを特徴とする固体レーザ。
  9. 【請求項9】 請求項1から8のいずれかにおいて、前
    記固体レーザーの出力光に含まれるノイズが出力光に対
    して1%rms以下であることを特徴とする固体レーザ。
  10. 【請求項10】 請求項1から9のいずれかにおいて、
    前記固体レーザの出力光は単一縦モードであることを特
    徴とする固体レーザ。
  11. 【請求項11】 請求項6または7において、前記レー
    ザ共振器に励起エネルギーを投入してレーザ動作を開始
    させ、所定のレーザ出力を得るまでの間は少なくとも、
    前記温度制御素子と第2の温度制御素子を動作させて前
    記ベースとヒートシンクとの相対温度差が所定の範囲に
    達するように制御していることを特徴とする固体レーザ
    の制御方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2592057C1 (ru) * 2015-01-23 2016-07-20 Российская Федерация, от имени которой выступает Государственная корпорация по атомной энергии "Росатом" (Госкорпорация "Росатом") Универсальный излучатель твердотельного лазера
US20160349493A1 (en) * 2014-02-17 2016-12-01 Sony Corporation Scanning unit, laser scanning microscope, and temperature adjustment method
JP2019008332A (ja) * 2018-10-18 2019-01-17 ソニー株式会社 医療用システム及び温度調節方法

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