JP2000087747A - サクションパイプを備えたエンジンの冷却装置 - Google Patents

サクションパイプを備えたエンジンの冷却装置

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JP2000087747A
JP2000087747A JP10258032A JP25803298A JP2000087747A JP 2000087747 A JP2000087747 A JP 2000087747A JP 10258032 A JP10258032 A JP 10258032A JP 25803298 A JP25803298 A JP 25803298A JP 2000087747 A JP2000087747 A JP 2000087747A
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suction pipe
cooling
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修 五十嵐
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勝弘 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷却水のラジエータからの取入れ室とウォー
タポンプへの送出室との間の境界領域に,冷却水の流れ
を案内するガイドを設けることで冷却性能を向上したサ
クションパイプを備えたエンジンの冷却装置を提供す
る。 【解決手段】 温間時にラジエータからの冷却水が取り
入れられる取入れ室5から,ウォータポンプへの送り口
10が形成されている送出室6への冷却水の流れは,両
室5,6間の境界壁部に形成されたガイド14の傾斜面
15から成る流れガイドによって,バイパス通路28か
らのバイパス戻り口7と干渉しない方向に案内される。
ウォータポンプへ戻る冷却水の通路抵抗と圧力損失が少
なくなり,ウォータポンプへ還流する充分な水量が確保
され,水冷式冷却装置の冷却性能を向上させることがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,エンジンを構成
するシリンダボディに形成されている冷却水通路に冷却
水をウォータポンプで強制的に循環させると共に,ウォ
ータポンプへ冷却水を戻すサクションパイプを備えたエ
ンジンの冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来,水冷の強制循環式エンジンにおい
ては,図5及び図6に示されるような冷却水通路を通じ
て冷却水が強制的に循環されている。図5はエンジンの
冷却装置の概略を示しており,図6は図5示すエンジン
の冷却装置についての冷却系統の概略を示している。エ
ンジン20の冷却水は,エンジン20の端部に取付けら
れ且つエンジン20の出力軸の回転によって駆動される
ウォータポンプ21によって送り出され,シリンダボデ
ィ22,オイルクーラ24及びヒータ25に供給され
る。シリンダボディ22に供給された冷却水は,シリン
ダボディ22内に設けられたウォータジャケット(図示
せず)等の冷却水通路を通り,エンジン20の運転によ
って温度上昇したシリンダボディ22を冷却し,オイル
クーラ24では高温になったエンジンオイルを冷却す
る。ヒータ25は,昇温した冷却水から熱エネルギを得
て運転室等の室内の暖房を行うのに使用される。
【0003】シリンダボディ22,及びオイルクーラ2
4にそれぞれ供給された冷却水は,シリンダヘッド23
内に形成された冷却水通路(図示せず)を通ってシリン
ダヘッド23を冷却した後,サーモスタット26に至
る。冷却水の水温が低い(例えば,90℃未満)暖機運
転状態の場合には,冷却水は,サーモスタット26の作
動によってラジエータ27に至らずにバイパス通路28
を通ってサクションパイプ30に至る。冷却水の水温が
高い温間時(例えば,90℃以上)の場合には,冷却水
は,バイパス通路28を通らずにサーモスタット26か
ら通路29を経てラジエータ27,通路31,及びサク
ションパイプ30に至り,エンジンを冷却することによ
り昇温した冷却水は,ラジエータ27で放熱して冷却さ
れる。ウォータポンプ21から通路32を通じてヒータ
25に供給された冷却水は,通路33を通じてサクショ
ンパイプ30に戻る。ラジエータ27,バイパス通路2
8及びヒータ25からサクションパイプ30に戻った冷
却水は,図7に示すように,シリンダボディ22内に形
成されているボディ通路34を通じてウォータポンプ2
1に還流する。
【0004】サクションパイプ30は,ラジエータ27
から放熱し冷却されて戻る冷却水をエンジン側へ取り入
れる機能と,冷間時(冷却水の温度が90°未満であ
り,暖機運転が行われている時)において冷却水を放熱
することなくバイパス通路28を通じて戻し,更に,取
り入れた冷却水及び戻された冷却水をウォータポンプに
戻す機能を奏する。サクションパイプ30は,ヒータ2
5,ラジエータ27から戻る冷却水,及びバイパス通路
28から戻る冷却水を,大きな圧力損失なくスムーズに
ウォータポンプ21へ導くことが求められている。
【0005】図8には,従来のサクションパイプ30の
断面斜視図が示されている。サクションパイプ30は,
パイプ本体35の下方にラジエータ27からの通路31
が接続される取入れ口36が開口している。パイプ本体
35の上方には,バイパス通路28が下方に向かって開
口するバイパス戻り口37が形成されている。パイプ本
体35の中央部には,ヒータ25からの冷却水が戻る通
路33が開口するヒータ戻り口38が形成されている。
サクションパイプ30の内部には,特段の壁等の手段が
形成されていないので,サクションパイプ30の内部の
通路抵抗が小さい。したがってウォータポンプ21に戻
る圧力損失が少なく,ウォータポンプ21の回転羽根に
対するキャビテーションが良好である。エンジンで受熱
した冷却水の水温が高いためにラジエータ27が作動す
る場合には,ラジエータ27で放熱して冷却された後に
通路31から取入れ口36を通じて流入した冷却水は,
ストレートにサクションパイプ30内を流れて,図の上
方手前側に開口した送出口(図示せず)からウォータポ
ンプ21に向かって流れ出る。冷却水の水温が低い場合
には,サーモスタット26の作動によりラジエータ27
からの冷却水の流れは停止されると共にバイパス通路2
8から冷却水が戻る。バイパス通路28から戻る冷却水
は,点線で示すように,取入れ口36に滞留する冷却水
に衝突した後,上昇して送出口からウォータポンプ21
に向かって流れ出る。更に,ヒータ25を通り通路33
から戻った冷却水は,一点鎖線で示すように図で上方に
向かい,送出口からウォータポンプ21に向かって流れ
出る。
【0006】このサクションパイプ30においては,温
間時には,ラジエータ27から取入れ口36を経て流入
する冷却水がバイパス通路28からのバイパス戻り口3
7と干渉して損失が発生し,冷却水流量が低下するとい
う問題がある。また,冷間時には,サーモスタット26
が閉じており,ラジエータ27を巡る冷却水の流れはな
いので,ラジエータ27に繋がる取入れ口36付近及び
ラジエータ27内には最も冷たい冷却水が滞留してい
る。バイパス通路28のバイパス戻り口37から戻る比
較的高い温度の冷却水が取入れ口36付近及びラジエー
タ27内に滞留する冷たい冷却水に接して多量の熱を奪
われるため,ウォータポンプ21に戻る冷却水の温度が
低下することになり,暖機性能が悪化するという問題が
ある。
【0007】このような不具合を解消するため,図9に
示されているような内部に仕切り壁41が形成されたサ
クションパイプ40が考えられている。図9は,内部に
仕切り壁41が形成されたサクションパイプの一部を破
断して示す斜視図である。図8に示すサクションパイプ
30と同等の部位には同じ符号を付して示してあるの
で,再度の説明を省略する。サクションパイプ40は,
ラジエータ27から流入する冷却水と,バイパス通路2
8のバイパス戻り口37から流入する冷却水とが互いに
干渉しないように仕切り壁41が形成されている点で,
サクションパイプ30と異なる。
【0008】冷間時においては,エンジン20内を巡り
バイパス通路28のバイパス戻り口37からサクション
パイプ40に戻る温度が高い冷却水は,仕切り壁41に
よって規制されて,図で上方手前側に開口する送出口に
直接流れ出るので,取入れ口35付近に滞留する冷却水
と混流することがない。バイパス通路28からの冷却水
は,温度低下が大きくなることなくウォータポンプ21
に戻って再びエンジンを巡るので,エンジンの暖機性が
向上することになる。しかしながら,仕切り壁41自体
の肉厚によって通路断面が減少しており,温間時におい
ては,仕切り壁41はラジエータ27から取入れ口36
を通じて流入する冷却水の通路抵抗を大きくしている。
この抵抗により流れる冷却水の圧力損失が大きくなり,
暖機終了後の温間時,即ち,エンジンが高温,高圧,高
回転で運転されている状態では,ウォータポンプ21へ
の入口圧力が低下し,そのために,ウォータポンプ21
の回転羽根にキャビテーションが発生し易くなると共
に,適正な冷却水流量の確保が困難になるという問題が
ある。更に,ヒータ25にも常に冷却水が送られてお
り,ヒータ25からヒータ戻り口38を通じて流入する
冷却水は,仕切り壁41に形成した開口42を通じて,
バイパス通路28のバイパス戻り口37から流入する冷
却水と合流するので,バイパス通路28から流入する冷
却水の流量が低下するという問題もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】サクションパイプを備
えたエンジンの冷却装置においては,ラジエータに接続
されるサクションパイプの取入れ室からウォータポンプ
へ冷却水を送出する送出室への冷却水の流れが,仕切り
壁のような手段を用いずとも,バイパス通路のバイパス
戻り口から流入する冷却水と互いに干渉しないようにす
ると共に,冷却水の圧力損失を少なくし,ウォータポン
プへ送る冷却水の流量を確保する点で解決すべき課題が
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は,取入
れ口を通じてラジエータから流入する冷却水が,送出室
に形成されたバイパス通路の戻り口と干渉するのを防止
すると共に,仕切り壁の存在に起因した通路抵抗の増大
による流量の低下と圧力損失の増大によるキャビテーシ
ョンの発生とを回避することができるサクションパイプ
を備えたエンジン冷却装置を提供することである。
【0011】この発明は,エンジンに形成される冷却水
通路に冷却水を強制的に循環させるウォータポンプ,前
記エンジンを冷却して昇温した冷却水を冷却するラジエ
ータ,前記エンジンを冷却した冷却水の温度に応じて前
記ラジエータへの通路と前記ラジエータを迂回するバイ
パス通路とのいずれか一方を前記冷却水通路の一部とし
て選択するサーモスタット,及び前記ラジエータからの
冷却水を取り入れる取入れ室と前記取入れ室に接続し且
つ前記ウォータポンプへ冷却水を送る送出室とから成る
中空部がパイプ本体に形成されていると共に前記送出室
に前記バイパス通路を通じての冷却水が戻るバイパス戻
り口が開口しているサクションパイプを具備し,前記パ
イプ本体の前記取入れ室と前記送出室との境界領域に
は,前記取入れ室から前記送出室への冷却水の取入れ流
れが前記バイパス戻り口と干渉するのを防止するため冷
却水の前記取入れ流れの向きを変える流れガイドが形成
されていることから成るサクションパイプを備えたエン
ジンの冷却装置に関する。
【0012】上記のように構成されたサクションパイプ
を備えたエンジンの冷却装置は,温間時にラジエータか
ら取入れ室に流入した冷却水は,仕切り壁がなくとも,
流れガイドによって,バイパス通路を通じての冷却水が
戻るバイパス戻り口と干渉しないように案内されて送出
室に流入する。冷却水は,従来のサクションパイプの場
合に仕切り壁に起因して生じていたような通路抵抗や圧
力損失を生じることなくウォータポンプへと送り出され
るので,ウォータポンプへ流出する充分な流量が確保さ
れ,したがって大型エンジンに対しても冷却効率が確保
されると共に,ウォータポンプにキャビテーションを生
じさせることがない。
【0013】前記流れガイドは前記取入れ室から前記送
出室に向かう冷却水の前記取入れ流れの方向に従って次
第に高さを増す傾斜面である。取入れ室から送出室に向
かう冷却水の取入れ流れは,次第に高さを増す傾斜面に
よって,案内されつつ送出室に送り込まれ,バイパス通
路のバイパス戻り口に向かわないように,確実に案内さ
れる。また,流れガイドは,サクションパイプのパイプ
本体の壁部の一部に傾斜面を形成することにより形成さ
れるので,鋳造等による製作上も有利である。
【0014】前記パイプ本体の前記取入れ室と前記送出
室との間の境界領域には,前記取入れ室内における冷却
水との接触を防止するため前記バイパス戻り口から前記
送出室に流入した冷却水のバイパス流れの向きを変える
サブガイドが形成されている。冷間時には,バイパス通
路の戻り口を通じて送出室に流入する冷却水がサブガイ
ドに案内されて,ラジエータに通じる取入れ口付近に滞
留する冷却水と接触するのが極力防止される。その結
果,バイパス通路から戻る昇温した冷却水から奪われる
熱量が少なくなり,暖機性の低下が防止される。また,
バイパス通路やヒータから戻る冷却水は従来の仕切り壁
によって制限されることなく,充分な流量が確保され
る。
【0015】前記サブガイドは前記バイパス通路からの
冷却水の前記バイパス流れの方向に従って次第に高さを
増すサブ傾斜面又は前記バイパス流れが衝突する段部で
あり,前記傾斜面と前記サブ傾斜面又は前記段部とは冷
却水の前記取入れ流れ及び前記バイパス流れの方向に対
して実質的に直交する稜線で交差している。流れガイド
とサブガイドとは,パイプ本体の中空室の,取入れ室と
送出室の境界領域に互いに隣接して形成される。流れガ
イドとサブガイドとによって,サクションパイプの内部
は仕切り壁による2室に分離されることなく1室であり
ながら,ラジエータからの取入れ口側の取入れ室と,バ
イパス通路及びヒータからの戻り口側の送出室部とが事
実上分離される。冷間時にバイパス通路が開口する戻り
口から流入する冷却水は,サブガイドに向かって流れ,
サブ傾斜面に沿って流れるか又は段部と衝突して取入れ
室に滞留する冷却水と接触する機会が減少し,送出室か
らウォータポンプへと流れる。したがって,取入れ室内
の冷たい冷却水によって多量の熱を奪われることがな
く,暖機性が向上する。流れガイドとサブガイドとは,
隣接して形成されるので,鋳造等による成形が簡単にな
る。
【0016】前記ウォータポンプはヒータに冷却水を供
給しており,前記サクションパイプの前記送出室には,
前記サブガイドに隣接した領域において,前記ヒータか
らの冷却水を戻すヒータ戻り口が前記バイパス戻り口に
正対することなく開口している。ウォータポンプは,冷
間時と温間時とにかかわらず,冷却水を常にヒータに供
給しており,ヒータから戻る冷却水は,ヒータ戻り口か
ら,バイパス戻り口を外して送出室に流入するので,取
入れ室からの冷却水の流れ,又はバイパス通路からバイ
パス戻り口を通じて戻る冷却水の流れとの干渉が回避さ
れる。
【0017】前記ウォータポンプ及び前記サクションパ
イプはそれぞれ前記シリンダボディの,互いに交差する
取付け面に取付けられており,前記サクションパイプの
前記送出室の送出口は前記シリンダボディ内に湾曲して
形成され且つ前記ウォータポンプに繋がるボディ通路に
接続されており,前記サクションパイプの前記パイプ本
体には,前記取入れ室から前記送出室に流入した冷却水
の流れを前記ボディ通路の湾曲方向に滑らかに連なる湾
曲方向に沿って前記ボディ通路に送り込む湾曲ガイドが
形成されている。取入れ室から送出室に流入した冷却水
は,送出室に形成されている湾曲ガイドによってボディ
通路の湾曲方向に滑らかに連なる湾曲方向に沿って流れ
て,スムーズにボディ通路に送り出されるので,冷却水
の圧力損失が一層低減される。
【0018】
【発明の実施の形態】以下,図面を参照して,この発明
によるサクションパイプを備えたエンジンの冷却装置の
実施例について説明する。図1はこの発明によるサクシ
ョンパイプを備えたエンジンの冷却装置に適用されるサ
クションパイプの一実施例を示す一部断面正面図,図2
は図1に示したサクションパイプの矢視Aの方向から見
た底面図,図3は図1に示したサクションパイプの矢視
B−Bについて見た側面部分断面図,図4は図1〜図3
に示したサクションパイプの斜視図である。サクション
パイプ自体の構造を除くエンジンの冷却装置について
は,図5及び図6に示したものをそのまま用いることが
できるので,同じ構成要素及び部位には同じ符号を用い
ると共に,再度の詳細な説明を省略する。
【0019】図1〜図4に示すサクションパイプ1は,
筒部3を備えたパイプ本体2を有しており,パイプ本体
2の内部には中空部13が形成されている。筒部3の開
口端は,ラジエータ27からの通路31が接続される取
入れ口4となっている。中空部13には,筒部3の内部
において取入れ口4に繋がる筒状の取入れ室5と,パイ
プ本体2の内部においては取入れ室5に繋がる送出室6
とが形成されている。送出室6には,バイパス通路28
が開口するバイパス戻り口7とヒータ25からの通路3
3が開口するヒータ戻り口8が開口している。サクショ
ンパイプ1をエンジン20のシリンダヘッド23に取り
付けるため,パイプ本体2の一側には平坦に形成された
取付け面9が形成されており,取付け面9には,ウォー
タポンプ21に接続する送出口10が大きく開口してい
る。パイプ本体2には,取付けボルト(図示せず)を挿
通するため,取付け面9に開口する取付け孔11が複数
箇所(図示の例では3か所)において形成されている。
また,シリンダボディ20には,図7に基づいて既に説
明したように,側面から90°屈曲してエンジン20の
前方に向かうように形成されたボディ通路34が形成さ
れており,送出口10は,ボディ通路34のシリンダボ
ディ20の側面に開口する開口部に液密状態に接続され
ている。なお,パイプ本体2には,バイパス通路28が
接続されるボス2a,ヒータ25からの通路33が接続
されるボス2b,取付け孔11が形成される取付けボス
2c等が形成されている。
【0020】ヒータ25からの通路33が開口するヒー
タ戻り口8は,バイパス通路28が開口するバイパス戻
り口7に対して筒状の取入れ室5の軸線の延長方向に若
干ずれて,即ち,正対せずに開口している。取入れ室5
と送出室6との境界領域12には,通路33が開口する
ヒータ戻り口8の近傍においてガイド14が形成されて
いる。ガイド14は,取入れ室5側において緩やかに傾
斜した舌状の傾斜面15と送出室6側において緩やかに
傾斜した舌状のサブ傾斜面16とから形成されている。
傾斜面15は,この発明における流れガイドを構成して
おり,ラジエータ27からの冷却水の取入れ室5から送
出室6への流れを案内している。また,ガイド14のサ
ブ傾斜面16は,この発明におけるサブガイドを構成し
ており,バイパス通路28が開口するバイパス戻り口7
と対向して配置されている。送出室6において,バイパ
ス通路28が開口するバイパス戻り口7の近傍には,ラ
ジエータ27からの冷却水が取入れ室から送出室6に向
かって流れるときに送出口10に向かって案内する湾曲
ガイド17が形成されている。湾曲ガイド17は,ラジ
エータ27からの冷却水にひねりを加えて,送出口10
からシリンダボディ20に形成されたボディ通路34の
屈曲方向に方向付けられた流れに変換する。
【0021】以上のように構成されたサクションパイプ
1において,温間時には,サーモスタット26の作動に
よって,バイパス通路28への冷却水の流れは停止して
おり,ラジエータ27からサーモスタット26を通過す
る冷却水は,サクションパイプ1を経てウォータポンプ
21に流れている。ラジエータ27からの昇温した冷却
水は,取入れ口4から筒部3の内部に形成されている筒
状の取入れ室5に流入し,ガイド14の傾斜面15によ
って案内された後,送出室6に流れ込む。即ち,取入れ
室5を流れる冷却水の流れは,一部がガイド14で流れ
の向きが変更され,残りの流れが直進して送出室6に流
入する。ガイド14はバイパス通路28が開口するバイ
パス戻り口7に対向した位置に形成されているので,ガ
イド14によって取入れ室5の軸線方向から傾く流れ
は,バイパス戻り口7に干渉することがない。冷却水が
バイパス戻り口7に干渉すると冷却水の流れは乱流とな
って圧力損失が大きくなるが,上記のように,冷却水の
バイパス戻り口7との干渉が防止されるため,冷却水の
流れは層流を維持して圧力損失が抑えられる。
【0022】ガイド14で流れが傾いた冷却水の流れ及
び直進した冷却水の流れは,送出室6の湾曲ガイド17
に案内されて送出口10から流出する。また,サクショ
ンパイプ1の内部には仕切り壁等が存在しないので,大
きな通路抵抗や圧力損失が生じることなく,冷却水の流
れは送出室6から送出口10を通じてスムーズに流出す
る。湾曲ガイド17のひねり作用によって,冷却水に
は,シリンダボディ20に形成されたボディ通路34の
湾曲方向に滑らかに連なる湾曲方向に沿う向きの速度成
分が与えられ,ウォータポンプ21にスムーズに送り込
まれる。したがって,サクションパイプ1からボディ通
路34を経てウォータポンプ21に流入する間の冷却水
には更に圧力損失が少なく,ウォータポンプ21の回転
羽根にキャビテーションを発生させることが少ない。温
間時にヒータ25から戻る冷却水は,ヒータ戻り口8か
ら送出室6に流入するが,ヒータ25からの冷却水の流
れ込み方向はラジエータ27からの冷却水の流れに沿う
方向であり,ラジエータ27からの冷却水と干渉せず,
いずれの冷却水もスムーズに流れる。
【0023】冷間時には,サーモスタット26の作動に
よって,ラジエータ27からの冷却水の流れは停止して
おり,バイパス通路28を流れる冷却水の流れが存在し
ている。バイパス通路28を流れる冷却水は,バイパス
戻り口7から送出室6に流入する。バイパス戻り口7
は,ガイド14のサブ傾斜面16に対向しているので,
バイパス戻り口7から送出室6に流入した冷却水の一部
は,そのままウォータポンプ21へ流れるが,一部は図
4の矢印Dで示すように,ガイド14のサブ傾斜面16
によって流れの向きを変え,取入れ室5に滞留する低温
の冷却水に対して多量の熱を奪われるような接触を防止
することができる。また,バイパス戻り口7から送出室
6に流入する冷却水の流量は仕切り壁を有する従来のも
のよりも増加しているので,総合的には暖機性能の大き
な低下を防止することができる。
【0024】冷間時にヒータ25から通路33を通って
サクションパイプ1に戻る冷却水は,サクションパイプ
1においてヒータ戻り口8から送出室6に戻る。ヒータ
戻り口8は,バイパス戻り口7に対して向きが正対して
いないので,ヒータ25からヒータ戻り口8を通じて戻
る冷却水とバイパス通路28からバイパス戻り口7を通
じて戻る冷却水とは,互いに干渉することなく,送出口
10からウォータポンプ21へと還流する。このとき,
送出室6には従来のサクションパイプに用いられていた
ような仕切り壁が存在していないので,バイパス通路2
8及び通路33から送出室6内に流入する冷却水の流量
は充分に確保することができるので,エンジン20の放
熱性と暖機性能とが良くなる。
【0025】上記の実施例では,サブガイドはサブ傾斜
面16によって構成されているが,図4の想像線で示す
ように,傾斜面ではなく段部16aによって構成するこ
ともできる。段部16aによってサブガイドを構成した
場合も,流れガイドである傾斜面15とは,図4に示さ
れている取入れ流れCやバイパス流れDの方向に対して
実質的に直交する稜線14aで交差している。冷間時
に,バイパス通路28からバイパス戻り口7を通じて戻
る冷却水は,サブ傾斜面16によってスムーズに案内さ
れることはないが,サブ傾斜面16の場合と同様に,段
部16aによって取入れ室5に滞留する低温の冷却水に
対して多量の熱を奪われるような接触を防止することが
できる。
【0026】
【表1】 表1は,図1〜図4に示すこの発明によるサクションパ
イプ1,図8に示すサクションパイプ30,及び図9に
示すサクションパイプ40との特性を比較した表であ
る。表1において,S1,S30,又はS40は,それ
ぞれサクションパイプ1,サクションパイプ30及びサ
クションパイプ40の略である。先ず,冷却水流量につ
いて見ると,バイパス通路28を流れる冷却水の流量と
ヒータ25からの冷却水の流量とは,仕切り壁41が存
在するサクションパイプ40が最も少なく,仕切り壁4
1が存在しないサクションパイプ1とサクションパイプ
30とでは同程度に多い。ラジエータ27からの流量
は,仕切り壁41が存在するサクションパイプ40が最
も少なく,バイパス戻り口7と干渉する可能性があるサ
クションパイプ30が次に少なく,湾曲ガイド17で案
内される本発明のサクションパイプ1が最も多い。次
に,冷間時における冷却水の干渉性,即ち,取入れ室に
滞留する冷却水とバイパス通路28からの冷却水の流れ
との干渉は,バイパス通路28からの冷却水が取入れ室
に滞留する冷却水とストレートに対向するサクションパ
イプ30が最も生じやすく,ガイド14があるサクショ
ンパイプ1が次に生じやすく,仕切り壁41が存在して
いるサクションパイプ40が最も干渉を防止することが
できる。更に,冷間時の暖機性については,バイパス通
路28から戻る冷却水が取入れ室に滞留する冷却水と干
渉するサクションパイプ30が最も低く,サクションパ
イプ1においては,取入れ室に滞留する冷却水とバイパ
ス通路28からの冷却水の流れとの干渉があるものの,
バイパス通路28からの冷却水の流量がサクションパイ
プ40よりも多いため,サクションパイプ1とサクショ
ンパイプ40とでは暖機性が同程度となる。
【0027】
【発明の効果】この発明によるサクションパイプを備え
たエンジンの冷却装置においては,ラジエータに接続さ
れるサクションパイプの取入れ室からバイパス通路に接
続されるサクションパイプの送出室への冷却水の流れを
変更する流れガイドを設けたので,温間時には,ラジエ
ータから流入しサクションパイプの取入れ室から送出室
へ流れる冷却水の流れは,バイパス通路及びヒータから
の通路が開口する戻り口への干渉が生じず,通路抵抗や
圧力損失の低下を少なくすることができる。したがっ
て,従来のサクションパイプにおいて仕切り壁の存在に
起因していた通路抵抗や圧力損失の増大とウォータポン
プの回転羽根におけるキャビテーションの発生とを回避
することができる。また,バイパス通路の戻り口を通じ
て送出室に流入する冷却水の流れを案内するサブガイド
を設けた場合には,冷間時において,バイパス通路から
送出室に流入しウォータポンプへ送られる冷却水の流量
が増加すると共に,バイパス通路の戻り口を通じて送出
室に流入する冷却水がラジエータに通じる取入れ口付近
に滞留する冷却水に対して多量の熱を奪われるような接
触をするのを回避するが可能となり,仕切り壁を設けた
サクションパイプを備えるものと同等の暖機性を維持す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるエンジンの冷却装置に適用され
るサクションパイプの一部断面正面図である。
【図2】図1に示したサクションパイプの矢視Aの方向
から見た底面図である。
【図3】図1に示したサクションパイプの矢視B−Bで
見た一部断面図である。
【図4】図1〜図3に示したサクションパイプの一部断
面で示す斜視図である。
【図5】エンジンの冷却装置の概略図である。
【図6】図5に示すエンジンの冷却装置の系統図であ
る。
【図7】サクションパイプとウォータポンプとを接続す
るボディ通路を示す概略図である。
【図8】従来のサクションパイプの一例を示す断面斜視
図である。
【図9】従来のサクションパイプの別の例を示す一部断
面斜視図である。
【符号の説明】
1 サクションパイプ 2 パイプ本体 3 筒部 4 取入れ口 5 取入れ室 6 送出室 7 バイパス戻り口 8 ヒータ戻り口 9 燃料噴射ノズル 10 送出口 12 境界領域 13 中空部 14 ガイド 15 傾斜面 16 サブ傾斜面 17 湾曲ガイド 20 エンジン 21 ウォータポンプ 22 シリンダボディ 23 シリンダヘッド 24 オイルクーラ 25 ヒータ 26 サーモスタット 27 ラジエータ 28 バイパス通路 34 ボディ通路

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンに形成される冷却水通路に冷却
    水を強制的に循環させるウォータポンプ,前記エンジン
    を冷却して昇温した冷却水を冷却するラジエータ,前記
    エンジンを冷却した冷却水の温度に応じて前記ラジエー
    タへの通路と前記ラジエータを迂回するバイパス通路と
    のいずれか一方を前記冷却水通路の一部として選択する
    サーモスタット,及び前記ラジエータからの冷却水を取
    り入れる取入れ室と前記取入れ室に接続し且つ前記ウォ
    ータポンプへ冷却水を送る送出室とから成る中空部がパ
    イプ本体に形成されていると共に前記送出室に前記バイ
    パス通路を通じての冷却水が戻るバイパス戻り口が開口
    しているサクションパイプを具備し,前記パイプ本体の
    前記取入れ室と前記送出室との境界領域には,前記取入
    れ室から前記送出室への冷却水の取入れ流れが前記バイ
    パス戻り口と干渉するのを防止するため冷却水の前記取
    入れ流れの向きを変える流れガイドが形成されているこ
    とから成るサクションパイプを備えたエンジンの冷却装
    置。
  2. 【請求項2】 前記流れガイドは前記取入れ室から前記
    送出室に向かう冷却水の前記取入れ流れの方向に従って
    次第に高さを増す傾斜面であることから成る請求項1に
    記載のサクションパイプを備えたエンジンの冷却装置。
  3. 【請求項3】 前記パイプ本体の前記取入れ室と前記送
    出室との間の境界領域には,前記取入れ室内における冷
    却水との接触を防止するため前記バイパス戻り口から前
    記送出室に流入した冷却水のバイパス流れの向きを変え
    るサブガイドが形成されていることから成る請求項1又
    は2に記載のサクションパイプを備えたエンジンの冷却
    装置。
  4. 【請求項4】 前記サブガイドは前記バイパス通路から
    の冷却水の前記バイパス流れの方向に従って次第に高さ
    を増すサブ傾斜面又は前記バイパス流れが衝突する段部
    であり,前記傾斜面と前記サブ傾斜面又は前記段部とは
    冷却水の前記取入れ流れ及び前記バイパス流れの方向に
    対して実質的に直交する稜線で交差していることから成
    る請求項3に記載のサクションパイプを備えたエンジン
    の冷却装置。
  5. 【請求項5】 前記ウォータポンプはヒータに冷却水を
    供給しており,前記サクションパイプの前記送出室に
    は,前記サブガイドに隣接した領域において,前記ヒー
    タからの冷却水を戻すヒータ戻り口が前記バイパス戻り
    口に正対することなく開口していることから成る請求項
    3又は4に記載のサクションパイプを備えたエンジンの
    冷却装置。
  6. 【請求項6】 前記ウォータポンプ及び前記サクション
    パイプはそれぞれ前記シリンダボディの,互いに交差す
    る取付け面に取付けられており,前記サクションパイプ
    の前記送出室の送出口は前記シリンダボディ内に湾曲し
    て形成され且つ前記ウォータポンプに繋がるボディ通路
    に接続されており,前記サクションパイプの前記パイプ
    本体には,前記取入れ室から前記送出室に流入した冷却
    水の流れを前記ボディ通路の湾曲方向に滑らかに連なる
    湾曲方向に沿って前記ボディ通路に送り込む湾曲ガイド
    が形成されていることから成る請求項1〜5のいずれか
    1項に記載のサクションパイプを備えたエンジンの冷却
    装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AT517125B1 (de) * 2015-05-07 2019-07-15 Avl List Gmbh Kühlmittelpumpe für eine brennkraftmaschine

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