JP2000055068A - 等速ジョイント - Google Patents

等速ジョイント

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JP2000055068A
JP2000055068A JP10223302A JP22330298A JP2000055068A JP 2000055068 A JP2000055068 A JP 2000055068A JP 10223302 A JP10223302 A JP 10223302A JP 22330298 A JP22330298 A JP 22330298A JP 2000055068 A JP2000055068 A JP 2000055068A
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roller
controller
center
curvature
constant velocity
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JP10223302A
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English (en)
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Takemi Konomoto
武美 此本
Shigeyoshi Ishiguro
重好 石黒
Hiromichi Bando
広道 阪東
Hisaaki Kura
久昭 藏
Kazuhiko Yoshida
和彦 吉田
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NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
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  • Friction Gearing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ケージを廃止して低発熱で小型・軽量な等速
ジョイントの機構を提供する。 【解決手段】 アウタ部材20、インナ部材30、ローラ4
0、コントローラ50により等速ジョイント10を構成し、
球面接触するアウタ部材20の部分球状内周面24とインナ
部材30の部分球状外周面32にローラトラック溝25,33 と
コントローラトラック溝26,34 からなる複合溝を形成
し、ローラトラック溝25,33 にローラ20を収容させ、ロ
ーラ20の通り穴21に相対運動可能にコントローラ50を挿
入してローラ40から突出したコントローラ50の両端をコ
ントローラトラック溝26,34 に収容させ、ローラトラッ
ク溝25,33 とコントローラトラック溝26,34 を互いに逆
向きのくさび形とすることによってローラ40とコントロ
ーラ50に逆向きの軸力を作用させ、ローラ中心をジョイ
ント平面P に保持して等速性を確保する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車や各種産
業機械の動力伝達系において使用される等速ジョイント
に関するもので、より詳しくは、駆動側の回転軸と従動
側の回転軸とがどのような角度(作動角)をとっても常
に滑らかにトルク伝達を行えるようにした等速ジョイン
トのうち、軸方向にスライド(プランジング)しないタ
イプの等速ジョイントに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車のドライブシャフト(図9、図1
0参照)等で使用されている等速ジョイントにはボール
タイプが最も多い。図12、図13、図14に示すよう
に、ボールタイプの等速ジョイント(1)は外輪
(2)、内輪(3)、ボール(4)、ケージ(5)から
構成されている。外輪(2)と内輪(3)との間にケー
ジ(5)が介在し、ケージ(5)は外輪(2)の内球面
(2a)および内輪(3)の外球面(3a)とそれぞれ
球面接触している。
【0003】たとえばBJ(ボール・フィクスト・ジョ
イント)は、外輪(2)の内球面(2a)と内輪(3)
の外球面(3a)にそれぞれ複数の円弧状のトラック溝
(2b,3b)が形成されており、外輪(2)と内輪
(3)のトラック溝(2b,3b)の曲率中心(Oo,
Oi)はそれぞれジョイントセンタ(O:外輪内球面
(2a)および内輪外球面(3a)の曲率中心に同じ)
に対して対称な位置にある。換言すれば、曲率中心(O
o)と曲率中心(Oi)はジョイントセンタ(O)から
逆方向に等距離、軸方向にオフセットしている。このた
め、外輪(2)のトラック溝(2b)と内輪(3)のト
ラック溝(3b)とで形成されるトラックは、軸方向の
一方から他方へ向かって徐々に広がったくさび状を呈す
る。各ボール(4)はこのくさび状のトラック内に収容
され、外輪(2)と内輪(3)との間で負荷を伝達す
る。すべてのボール(4)をジョイント平面(P:作動
角の二等分線に垂直な平面)に保持するためケージ
(5)が組み込まれている。
【0004】トラック溝(2b,3b)にオフセットが
付与されているため、ボール(4)が負荷を伝達する
時、ボール(4)に軸力が作用し、その結果ボール
(4)は、トラック溝(2b,3b)の開口している方
向、つまり、上記くさび状トラック空間の広がった方向
に飛び出そうとする。それに伴いケージ(5)にも軸力
が作用し、ケージ(5)は外輪(2)の内球面(2a)
と内輪(3)の外球面(3a)に強く押し当てられる。
【0005】ボール(4)に作用する軸力は、負荷と作
動角が増加するほど大きくなる特性を有する。よって、
負荷を伝達しながらジョイントが作動するためには、ケ
ージ(5)は十分な強度が必要であり、外輪(2)およ
び内輪(3)と接触しながら滑り運動するため、ケージ
(5)は十分な耐摩耗性と耐熱性も具備する必要があ
る。
【0006】ジョイント平面(P)にボール(4)を確
実に保持するため、ボール(4)はケージ(5)の窓穴
(5a)内に圧入されることが多く、この圧入面内でボ
ール(4)は運動する。圧入代の大小はジョイントの作
動性に大きく影響を及ぼす。また、予圧状態でボール
(4)がケージ(5)の窓穴(5a)内を運動するた
め、発熱とケージ(5)の摩耗を伴う。
【0007】以上のようにケージ(5)は十分な強度、
耐熱性と耐摩耗性が必要である。また、トラック溝(2
b,3b)はオフセットを有するため、トラック溝(2
b,3b)の深さは軸方向で均一でない。それゆえ、ト
ラック溝(2b,3b)の浅いところでボール(4)が
高負荷を伝達する時、ボール(4)の接触楕円が大きく
なり、応力が集中するトラック溝肩部に接触楕円が乗り
上げ、肩部に欠けが生じるおそれがある。
【0008】これの対策として、ボール(4)の径やピ
ッチ円直径を大きくして面圧を低下させることが考えら
れるが、外輪(2)の外径が増加してジョイントが大き
くなるという不都合が生じる。また、オフセット量を小
さくすれば、当然トラック溝(2b,3b)の深さは軸
方向でより均一になるが、作動性が低下するという問題
が残り、得策ではない。ケージ(5)の肉厚を薄くすれ
ばトラック溝(2b,3b)は深くなるが、ケージ
(5)の強度が低下する。このように、通常、ケージ
(5)の肉厚とトラック溝(2b,3b)の深さは互い
に取り合いする関係にある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように従来のボー
ルタイプの等速ジョイントはケージ(5)が不可欠なた
め発熱が増加し、高常用角では使用できなかった。ボー
ル(4)の入るケージ(5)の窓穴の寸法管理に多くの
労力を必要とし、ケージ窓穴寸法のばらつきにより作動
性が左右され、作動不良が生じたり異音が発生するおそ
れもある。
【0010】ジョイントの高角強度はケージの強度で決
定され、設計の自由度が大幅に制限減少される。また、
ケージの強度を確保する必要から、トラックの深さを十
分に深く取れないため、ジョイントの耐久性の低下が生
じ、作動不良を招く可能性がある。
【0011】また、ケージの組込みを可能にするため複
雑な設計が強いられ、それに伴い組立て作業も複雑で多
くの工程を必要としている。
【0012】すなわち、図15に二点鎖線で示すよう
に、まず内輪(3)の軸線をケージ(5)の軸線に対し
て90°交差させ、その状態で内輪(3)をケージ
(5)の内径部に収容して内輪(3)の一つの外球面
(3a)をケージ(5)の窓穴(5a)に挿入する(A
≧B)。その後、内輪(3)を90°回転させて内輪
(3)とケージ(5)の軸線を一致させ、内輪(3)の
トラック(3b)とケージ(5)の窓穴(5a)の位相
合わせを行って両者をユニット化する。
【0013】次に、ユニット化した内輪(3)とケージ
(5)を、外輪(2)に対して90°回転させるととも
にケージ(5)の窓穴(5a)部分を外輪(2)のトラ
ック溝(2b)間のランド部(2c)に合わせた状態で
外輪(2)のマウス部に挿入し(図16(B))、続い
て90°回転させて球面接触状態にし(図16
(C))、さらに外輪(2)のトラック溝(2b)とケ
ージ(5)の窓穴(5a)の位相合わせを行う。次に、
外輪(2)に対し内輪(3)とケージ(5)を傾けて、
外輪(2)のマウス部端面から露出したケージ(5)の
窓穴(5a)にボール(4)を押し込む(図16
(D))。すべての窓穴(5a)に順次ボール(4)を
入れ終わった時点で組立てを完了する。
【0014】また、ケージ組込みの必要上(図16
(C)参照)、外輪(2)のマウス部の空洞部は深くな
らざるをえず、バックフェース(2d)〜ジョイントセ
ンタ(O)間距離が増加する(図9(B)参照)。その
結果、ジョイントの重量が増加するばかりでなく、自動
車のドライブシャフト用として適用する場合には車両の
転舵回転半径を増加させる場合がある(図10参照)。
【0015】さらに、内外輪(3,2)間に介在したケ
ージ(5)が内外輪(3,2)とそれぞれ滑り接触して
いることに加えて、ケージ(5)の窓穴(5a)にボー
ル(4)を圧入していることから、人手で折り曲げるに
は硬く、車両に組み付ける際に労力を要する場合もあ
る。
【0016】以上のように従来のボールタイプの等速ジ
ョイントは、ケージを不可欠とし、ケージがあるために
上述のような多くの問題点が内在している。
【0017】この発明の目的は上述の問題点を除去する
ことにあり、換言すれば、ケージを廃止して、低発熱で
小型・軽量であり、しかも安定した動力伝達を行うこと
ができる等速ジョイントの機構を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明の等速ジョイントは、アウタ部材、インナ
部材、ローラ、コントローラを主要な構成要素とし、ア
ウタ部材およびインナ部材のいずれか一方が駆動側とな
り他方が従動側となる。アウタ部材およびインナ部材は
それぞれ、ジョイントセンタを曲率中心とする部分球面
状内周面および部分球面状外周面を有し、ジョイントセ
ンタのまわり全方位に角度変位可能にすべり接触してい
る。
【0019】アウタ部材の部分球面状内周面とインナ部
材の部分球面状外周面にローラとコントローラを収容す
るための軸方向に延びたトラックが複数対形成されてい
る。各対のトラックは、ローラトラックとコントローラ
トラックとからなり、ローラトラックはアウタ部材のロ
ーラトラック溝とインナ部材のローラトラック溝とで構
成され、コントローラトラックはアウタ部材のコントロ
ーラトラック溝とインナ部材のコントローラトラック溝
とで構成される。コントローラトラック溝はローラトラ
ック溝の底面の中央にローラトラック溝と平行に配置さ
れている。
【0020】ローラはローラトラックに収容され、コン
トローラはローラの中央にローラの軸方向に貫通した通
り穴にローラの軸方向に移動可能に挿入され、ローラの
端面から突出したコントローラの両端部がコントローラ
トラックに収容される。ローラとコントローラはトラッ
クの長手方向に連動し、その際、コントローラはローラ
の軸方向に相対運動をする。たとえばアウタ部材からイ
ンナ部材にトルクを伝達する場合を考えると、トルクは
主にアウタ部材のローラトラック溝→ローラ→インナ部
材のローラトラック溝という経路で伝達される。
【0021】アウタ部材のローラトラック溝の曲率中心
とインナ部材のローラトラック溝の曲率中心は、ジョイ
ントセンタから互いに反対方向に等距離オフセットした
軸線上にある。したがって、これらのローラトラック溝
の対で構成されるローラトラックの軸方向断面は、軸方
向の一方が狭く他方が広くなったくさび形を呈する。
【0022】アウタ部材のコントローラトラック溝の曲
率中心とインナ部材のコントローラトラック溝の曲率中
心は、ジョイントセンタから互いに反対方向に等距離オ
フセットした軸線上にある。したがって、これらのコン
トローラトラック溝の対で構成されるコントローラトラ
ックの軸方向断面は、軸方向の一方が狭く他方が広くな
ったくさび形を呈する。
【0023】ローラトラックのくさび形とコントローラ
トラックのくさび形とは開口方向が互いに逆向きであ
る。そのため、負荷を伝達する時、ローラとコントロー
ラに互いに逆向きの軸力が作用する。すなわち、ローラ
にはローラトラックのくさび形の狭い方から広い方に向
かう向きの軸力が作用し、コントローラにはコントロー
ラトラックのくさび形の狭い方から広い方に向かう向き
の軸力が作用する。したがって、ローラトラックとコン
トローラトラックのオフセット量等を適正に設定するこ
とにより、二つの軸力をバランスさせることが可能とな
り、そうすることによって、ローラ(ローラ中心)が常
にジョイント平面に保持され、等速な固定式ジョイント
の機構が構成される。このような機構を採用することに
より、従来のボールタイプの等速ジョイントにおけるボ
ールをジョイント平面に保持するためのケージを廃止す
ることができるのである。
【0024】また、駆動側と従動側の間に両者間の動力
伝達を安定化させる安定化手段を設けることにより、作
動角をとった状態でも安定したトルク伝達が行える。
【0025】請求項2の発明は、コントローラの両端部
の形状を、アウタ部材およびインナ部材のコントローラ
トラック溝間に一個のボールを適用した場合の当該ボー
ルの半径と等しい曲率半径の曲面としたことを特徴とす
る。請求項1のジョイントにおいてローラトラックの溝
底とローラとの間にすきまがあるとローラが傾斜し、そ
れと共にコントローラが傾き、このすきまが増加すると
コントローラによるコントロールがしにくくなる。その
ため、コントローラの両端部の形状をアウタ部材および
インナ部材のコントローラトラック溝間に一個のボール
を適用した場合の当該ボールの半径と等しい曲率半径の
曲面とすることにより、コントローラが傾いてもコント
ローラトラック溝との間のすきまが増加しないため、コ
ントローラによるコントロール機能を安定させることが
できる。
【0026】コントローラは単一体に限らず複数の構成
要素からなるものであってもよい。請求項3の発明は、
コントローラを複数の円柱体で構成したことを特徴とす
るものである。たとえば、一本のコントローラを二分割
して二個の円柱体でコントローラを構成することができ
る。各円柱体(コントローラ構成要素)が互いに独立し
て運動できるため、コントローラ全体として滑らかな運
動が可能となる。また、請求項4の発明のように、コン
トローラを複数のボールで構成することもできる。転が
り軸受用などの高精度の鋼球を利用することによってコ
ントローラの加工に要する労力や時間を節約でき、低コ
スト化が実現する。
【0027】コントローラを複数の要素で構成する場
合、請求項5の発明のように、コントローラ構成要素間
に間座を介在させてもよい。間座の寸法や数を調整する
ことにより同一の構成要素で異なる軸方向寸法のコント
ローラが得られるので、部品(コントローラ構成要素)
の共用化によるコスト低減が可能となる。
【0028】請求項6の発明は、アウタ部材およびイン
ナ部材のローラトラック溝の底面の曲率中心をアウタ部
材およびインナ部材のローラトラックの曲率中心と同様
にオフセットさせたことを特徴とする。ローラトラック
溝の底面とローラとの間のすきまが増加するとローラの
軸方向移動量が増加するため、ローラトラック溝の底面
の曲率中心をローラトラックの曲率中心と同様にオフセ
ットさせることにより、作動角全域で当該すきまを小さ
くするのが好ましい。
【0029】請求項7の発明は、ローラの上面および下
面の当たりを線接触としたことを特徴とする。ローラの
上面および下面を、曲率中心がローラの中心にある球面
の一部とした場合、ローラトラック溝の底面に対するロ
ーラの当たりが点接触となり、ローラの姿勢が不安定と
なる。そこで、ローラの上面および下面の当たりを線接
触とし、ローラの姿勢を安定させるのが好ましい。
【0030】請求項8の発明は、安定化手段として、コ
ントローラに一つのボールを使用したものである。ボー
ルは何れの方向にも転がることができるので、ローラト
ラック溝でのローラの移動がスムーズになる。従って、
トルク変動等を防止でき、動力伝達を安定化させること
が可能となる。
【0031】請求項9の発明は、安定化手段として、ロ
ーラの上面と下面をその中心線に対して対称形状とした
ものである。特にローラの下面をローラトラック底に対
して凸球面状に形成すれば、ローラの食い込みを防止す
ることができ、ローラの移動の安定化が図れる。
【0032】請求項10の発明は、安定化手段として、
ローラの軸方向貫通穴を凸球面状に形成し、ローラ中心
でコントローラに接触させたものである。この構造とす
ることで、ローラは傾かずにコントローラのみ傾くこと
が可能となり、ローラが移動しやすくなる。
【0033】請求項11の発明は、安定化手段として、
コントローラオフセット角を7°〜16°(好ましくは
9°〜11°)、ローラトラック底オフセット角および
ローラトラックオフセット角を4°〜20°(好ましく
は15°〜18°)に設定したものである。この角度で
あれば、ローラ中心をジョイント平面(P)に保持する
ことが容易となり、トルク変動等の少ない安定した動力
伝達が可能となる。
【0034】請求項12の発明は、安定化手段として、
コントローラとコントローラトラックの接触角を0°〜
10°、ローラとローラトラックの接触角を45°〜7
5°(好ましくは55°〜60°)としたものである。
この接触角であれば、請求項11と同様にローラ中心を
ジョイント平面(P)に保持することが容易となる。
【0035】請求項13の発明は、安定化手段として、
コントローラとコントローラトラックの接触率を1〜
1.8(好ましくは1.2〜1.4)、ローラとローラ
トラックの接触率を1〜1.4(好ましくは1.02〜
1.12)に設定したもので、これにより、コントロー
ラおよびローラがそれぞれのトラックに対して移動しや
すくなる。
【0036】請求項14の発明は、安定化手段として、
コントローラ中心とローラ中心とがローラ軸方向にずれ
たことに起因するモーメントを、コントローラトラック
とローラトラックの両方で受けるための受け構造を具備
するものである。これにより、コントローラおよびロー
ラの相対的な傾きが防止されるので、安定した動力伝達
が確保される。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を添
付の図面に従って詳細に説明する。
【0038】図1に示す等速ジョイント(10)は、ア
ウタ部材(20)、インナ部材(30)、ローラ(4
0)、コントローラ(50)を主要な構成要素としてい
る。
【0039】図1は作動角(θ)をとった状態の等速ジ
ョイント(10)の縦断面図である。アウタ部材(2
0)は回転軸(X)を有し、インナ部材(30)は回転
軸(Y)を有する。アウタ部材(20)かインナ部材
(30)かのいずれか一方が駆動側となり、他方が従動
側となる。ここで、作動角(θ)とは、アウタ部材(2
0)の回転軸(X)とインナ部材(30)の回転軸
(Y)とがなす角を意味するものとする。また、アウタ
部材(20)の回転軸(X)とインナ部材(30)の回
転軸(Y)が0°以外のある作動角(θ)をとったとき
両回転軸(X,Y)のなす角(θ)の二等分線に垂直な
平面をジョイント平面(P)と呼ぶこととする。作動角
(θ)をとったとき、すべてのローラ(40)がジョイ
ント平面(P)にあれば、ローラ中心から両回転軸
(X,Y)までの距離が相等しく、したがって、両回転
軸(X,Y)間で等速度で回転運動の伝達が行われる。
ジョイント平面(P)と回転軸(X,Y)との交点
(O)をジョイントセンタと呼ぶこととする。プランジ
ング運動を行なわない等速ジョイントでは、作動角
(θ)にかかわりなくジョイントセンタ(O)は固定さ
れている。
【0040】図2(A)は等速ジョイント(10)のロ
ーラ(40)中心を通る横断面を示し、図2(B)は図
2(A)のB−B断面を示す。図2(B)は、等速ジョ
イント(10)の作動角(θ)が0°、つまり、アウタ
部材(20)の回転軸(X)とインナ部材(30)の回
転軸(Y)が同軸上にある状態を示している。
【0041】アウタ部材(20)は軸部(21)とマウ
ス部(23)とからなり、軸部(21)にて動力伝達系
と結合するようになっている(図1参照)。マウス部
(23)は部分球面状内周面(24)を備えたカップ状
を呈している。軸部(21)とマウス部(23)との境
界をなす位置に、回転軸(X)に垂直なバックフェース
(22)が形成されている。
【0042】アウタ部材(20)はその部分球面状内周
面(24)の円周方向等間隔位置(図面には6ヶ所の場
合を例示している。)に、ローラトラック溝(25)と
コントローラトラック溝(26)とからなる複合溝を備
えている。
【0043】ローラトラック溝(25)は互いに平行
で、アウタ部材(20)の軸方向に延びている。ローラ
トラック溝(25)は内周面(24)から所定の深さで
形成されているが、その深さは軸方向に徐々に変化して
いる。すなわち、図示例の場合、縦断面(図3)で見る
と、ローラトラック溝の中心線(Ox)と底面(25
a)はいずれも、アウタ部材(20)の回転軸(X)上
に曲率中心(OOL)をもつ円弧である。また、横断面
(図2(A))で見ると、ローラトラック溝(25)の
底面 (25a)はジョイントセンタ(O)に曲率中心
をもつ円弧であり、側壁面(25b)は後述するローラ
(40)の外周面(42)の曲率とほぼ同じか僅かに大
きな曲率の円弧である。ローラトラック溝(25)の側
壁面(25b)は、図2(C)に例示するように、ロー
ラ(40)の外周面(42)に対して接触角をもった形
状とすることもできる。
【0044】ローラトラック溝(25)の中央にローラ
トラック溝(25)と平行にコントローラトラック溝
(26)が形成されている。コントローラトラック溝
(26)はローラトラック溝(25)の底面(25a)
から所定の深さで形成されており、その深さは軸方向に
徐々に変化している。すなわち、縦断面(図3)で見る
と、コントローラトラック溝(26)の溝底はアウタ部
材(20)の回転軸(X)上に曲率中心(OOC)をもつ
円弧である。コントローラトラック溝(26)の横断面
形状は、後述するコントローラ(50)の端部の断面と
ほぼ同じかそれよりも大きな曲率の円弧である(図2
(A))。コントローラトラック溝(26)の横断面
は、コントローラ(50)の端面に対して接触角をもっ
た形状とする場合もある。
【0045】インナ部材(30)は、動力伝達系に結合
するための嵌合穴(31)と、部分球面状外周面(3
2)を備えており、部分球面状外周面(32)にてアウ
タ部材(20)の部分球面状内周面(24)と接触す
る。アウタ部材の部分球面状内周面とインナ部材の部分
球面状外周面が直接接触するため、従来のようにケージ
が介在する場合に比べて接触する部分の面積が半減す
る。また、ケージを廃止したことによって、ケージの肉
厚相当分だけ、アウタ部材の外径を小さくするか、ある
いは、ローラトラック溝の深さを大きくするか、または
その両方が可能となる。いずれにしても設計の自由度が
大幅に増す。
【0046】インナ部材(30)は、その部分球面状外
周面(32)の円周方向等間隔位置に、アウタ部材(2
0)の複合溝(25,26)と対応する複合溝(33,
34)を備えている。ローラトラック溝(33)はイン
ナ部材(30)の外周面(32)から所定の深さで形成
され、その深さは軸方向に徐々に変化している。すなわ
ち、縦断面(図3)で見ると、ローラトラック溝(3
3)の底面(33a)はインナ部材(30)の回転軸
(Y)上に曲率中心(OIL)をもつ円弧である。ここで
もローラトラック溝(33)の中心線(Oy)の曲率中
心と底面(33a)の曲率中心は同じ位置(OIL)にあ
る。また、横断面(図2(A))で見ると、ローラトラ
ック溝(33)の底面(33a)はジョイントセンタ
(O)を曲率中心とする円弧であり、側壁面(33b)
は後述するローラ(40)の外周面の曲率とほぼ同じか
それよりも僅かに大きな曲率の円弧である。アウタ部材
(20)の場合と同様に、ローラトラック溝(33)の
側壁面(33b)はローラ(40)の外周面(42)に
対して接触角をもった形状とすることもできる(図2
(C))。
【0047】コントローラトラック溝(34)はローラ
トラック溝(33)の底面(33a)から所定の深さで
形成されているが、その深さは軸方向で徐々に変化して
いる。すなわち、縦断面(図3)で見ると、コントロー
ラトラック溝(34)の溝底はインナ部材(30)の回
転軸(Y)上に曲率中心(OIC)をもつ円弧である。ま
た、コントローラトラック溝(34)の横断面形状は後
述するコントローラ(50)の端部の断面とほぼ同じか
それより大きい曲率の円弧である(図2(A))。コン
トローラトラック溝(34)の横断面は、コントローラ
(50)の端面に対して接触角をもった形状とする場合
もある。
【0048】コントローラトラック溝(26,34)と
コントローラ(50)との間、および、ローラトラック
溝(25,33)の側壁面(25b,33b)とローラ
(40)の外周面(42)との間に接触角をもたせる場
合、その接触角は、前者では0°〜10°程度に、後者
では45°〜75°程度(好ましくは55°〜60°)
に設定するのがよい。この接触角であれば、ローラ中心
をジョイント平面(P)に保持させることが容易とな
る。
【0049】コントローラトラック溝(26,34)と
コントローラ(50)とは、接触率1〜1.8、好まし
くは1.2〜1.4の範囲で接触させるのがよい。ここ
で「接触率」とは、コントローラトラック溝(26,3
4)の横断面長さとコントローラ(50)との接触域の
長さとの比率をいい、接触率1とはコントローラトラッ
ク溝(26,34)の横断面の全部がコントローラ(5
0)の端面と接触している状態を指す。同様に、ローラ
(40)の外周面(42)とローラトラック溝(25,
33)とは、接触率1〜1.4、好ましくは1.02〜
1.12の範囲で接触させるのがよい。これらの範囲で
あれば、ローラ(40)およびコントローラ(50)の
何れもそれぞれのトラック溝(25,33・26,3
4)に対して移動しやすくなる。
【0050】アウタ部材(20)のローラトラック溝
(25)とインナ部材(30)のローラトラック溝(3
3)は対をなし、各対のローラトラック溝(25,3
3)で形成されるローラトラックにローラ(40)が収
容される。ローラ(40)は中央に通り穴(41)を備
え、外周面(42)は軸線上に曲率中心をもった球面で
ある。換言すれば、ローラ(40)の外周面(42)の
母線は軸線上に曲率中心をもった円弧である。
【0051】コントローラ(50)はローラ(40)の
通り穴(41)内にローラの軸方向に移動可能に挿入さ
れる。コントローラ(50)はローラ(40)をローラ
の軸方向に貫通し、ローラ(40)から突出した両端部
がそれぞれコントローラトラック溝(26,34)内に
進入する。
【0052】ここで、図3を参照して説明すると、アウ
タ部材(20)の部分球面状内周面(24)の曲率中心
と、インナ部材(30)の部分球面状外周面(32)の
曲率中心は、いずれも、ジョイントセンタ(O)と一致
している。アウタ部材(20)の、ローラトラック溝
(25)の曲率中心(OOL)とコントローラトラック溝
(26)の曲率中心(OOC)は、ジョイントセンタ
(O)から軸方向に逆向きにオフセットしている。イン
ナ部材(30)の、ローラトラック溝(33)の曲率中
心(OIL)とコントローラトラック溝(34)の曲率中
心(OIC)は、ジョイントセンタ(O)から軸方向に逆
向きにオフセットしている。
【0053】アウタ部材(20)のローラトラック溝
(25)の曲率中心(OOL)と、インナ部材(30)の
ローラトラック溝(33)の曲率中心(OIL)とは、ジ
ョイント中心(O)から等距離だけ軸方向に逆向きにオ
フセットしている。インナ部材(30)のコントローラ
トラック溝(34)の曲率中心(OIC)と、アウタ部材
(20)のコントローラトラック溝(26)の曲率中心
(OOC)とは、ジョイントセンタ(O)から逆向きに等
距離だけ軸方向にオフセットしている。
【0054】図22に示すように、コントローラ(5
0)のコントローラ中心(OC:コントローラの半径方
向および円周方向の中心をいう)と、コントローラトラ
ック溝(26,34)の曲率中心(OOC,OIC)とがな
す角α(コントローラトラックオフセット角)は、7°
〜16°、好ましくは9°〜11°とする。また、図2
3に示すように、ローラ中心(OL:ローラの外周面の
中心をいう)とローラトラック溝(25,33)の底面
(25a、33a)の曲率中心(OOL,OIL)とがなす
角β(ローラトラック底オフセット角)は、4°〜20
°、好ましくは15°〜18°とする(ローラ中心OL
とローラトラック中心Ox,Oyの曲率中心(OOL,O
IL)とがなす角(ローラトラックオフセット角)も同様
である)。これにより、コントローラ中心Ocおよびロ
ーラ中心OLを図1のジョイント平面(P)上に保持さ
せることが容易となる。
【0055】ローラ(40)の両端面すなわち上面(4
3)および下面(44)はそれぞれローラ(40)の軸
線(の延長線)上に曲率中心をもった球面の一部とする
こともできるが、その場合、ローラ(40)とローラト
ラック底面(25a)との当たりが点接触となってロー
ラ(40)の姿勢が不安定となる。そこで、ローラ(4
0)とローラトラック底面(25a)との当たりを線接
触となすことができればローラ(40)の姿勢を安定さ
せる上で有利である。図4はその対策の一例を示すもの
で、ローラ(40)の下面(44)が、インナ部材(3
0)のローラトラック(33)の底面(33a)と同じ
曲率半径(Ri)をもった凹曲面となっている。換言す
れば、ローラ(40)の下面(44)は、ローラトラッ
ク(33)の底面(33a)の曲率中心(OIL)に曲率
中心をもち、当該底面(33a)と同じ曲率半径(R
i)の円弧を母線とする曲面である。ローラ(40)の
上面(43)は、アウタ部材(20)のローラトラック
(25)の底面(25a)と同じ曲率半径(Ro)をも
った凸曲面となっている。換言すれば、ローラ(40)
の上面(43)は、ローラトラック(25)の底面(2
5a)の曲率中心(OOL)に曲率中心をもち、当該底面
(25a)と同じ曲率半径(Ro)の円弧を母線とする
曲面である。
【0056】アウタ部材(20)およびインナ部材(3
0)のローラトラック(25,33)底面(25a,3
3a)の曲率中心をローラトラック(25,33)の曲
率中心(OOL,OIL)と同様にオフセットさせてある。
ローラトラック(25,33)の底面(25a,33
a)とローラ(40)との間のすきまが増加するとロー
ラ(40)の軸方向移動量が増加することになる。それ
ゆえ、ローラトラック(25,33)の底面(25a,
33a)をオフセットさせることにより作動角(θ)全
域で当該すきまを小さくするのが好ましい。
【0057】コントローラ(50)は図5から図8に示
す種々変形態様を取り得る。図5は、コントローラ(5
0)の両端面の形状を、コントローラ(50)の全長よ
り短い曲率半径(r)の部分球面とした場合を示してい
る。
【0058】図6は、コントローラ(50)の両端面の
形状を、アウタ部材(20)およびインナ部材(30)
のコントローラトラック溝(26,34)間に破線で示
すように1個のボールを適用した場合の当該ボールの半
径(R)と等しい曲率半径の曲面とした場合を示してい
る。ローラ(40)とローラトラック底面(25a,3
3a)との間にすきまがあるとローラ(40)が傾斜
し、それと共にコントローラ(50)が傾き、そのすき
まが増加するとコントローラ(50)によるコントロー
ルがしにくくなる。そのため、破線で示すように、コン
トローラ(50)の両端面の形状を、アウタ部材(2
0)およびインナ部材(30)のコントローラトラック
(26,34)間に1個のボールを適用した場合の当該
ボールの半径(R)と等しい曲率半径の曲面とすること
により、コントローラ(50)が傾いてもすきまが増加
しないようにすることができる。
【0059】図7は、コントローラ(50)を二分割し
た構成を示している。この場合、コントローラ(50)
は二つの円柱体(51)で構成され、各円柱体(51)
がコントローラ構成要素となる。各コントローラ構成要
素(51)が互いに独立に運動できるため滑らかな運動
が可能となる。図8は、コントローラ(50)を二個の
ボール(52)で構成した場合を示す。転がり軸受用な
どの高精度の鋼球を利用することによってコントローラ
の加工に要する労力や時間を節約でき、低コスト化が実
現する。コントローラを複数の要素で構成する場合、コ
ントローラ構成要素間に間座を介在させてもよい。間座
の寸法や数を調整することによって同一の構成要素で異
なる軸方向寸法のコントローラが得られるので、部品
(コントローラ構成要素)の共用化によるコスト低減が
可能となる。
【0060】図19は、コントローラ(50)として1
個のボールを使用したものである。この場合、ボールは
どの方向にも転動可能であるので、コントローラ(5
0)とコントローラトラック溝(26)との間に自由度
を持たせ、ローラ(40)の移動をスムーズに行うこと
ができる。
【0061】図20は、ローラ(40)の上面(43)
と下面(44)とを円周方向の中心線に対して対称に形
成したものである。特に図示のように、ローラ(40)
の上下面を半径r1 ,r2 の凸球面とすれば、この部分
がローラトラック溝(25,33)の底面(25a,3
3a)に食い込むのを防止でき、ローラ(40)が移動
しやすくなる。上面の曲率中心は、ジョイントセンタ
(O)に一致している。
【0062】図21(A)(B)は、ローラ(40)の
通り穴(41)の内周面を凸球面とし、ローラ(40)
を常にローラ中心でコントローラ(50)と接触させる
ようにしたものである。この場合、ローラ(40)が傾
かずにコントローラ(50)のみが傾くので、ローラ
(40)が移動しやすくなる。(A)図は図7と同様に
コントローラ50を二分割にしたもの、(B)図は一体
のものを例示する。
【0063】図24および25は、コントローラ中心O
Cとローラ中心OLとがローラ軸方向にずれたことに起
因するモーメントを、コントローラトラックとローラト
ラックの両方で受けるための受け構造を具備するもので
ある。この実施形態では、ローラ外周面の曲率中心(O
CL)をローラ軸上の離隔位置に設けると共に、コントロ
ーラの曲率中心をローラ外周面の曲率中心(OCL)に一
致させ、かつこの中心(OCL)をコントローラ中心OC
およびローラ中心OLに対して軸方向に等距離オフセッ
ト(オフセット量f)したものを例示する。この構造で
あれば、コントローラトラックとローラトラックの双方
で上記モーメントを受けることができ、コントローラ
(50)およびローラ(40)の傾きを抑えることが可
能となる。
【0064】この発明の等速ジョイントを組み立てるに
当たっては、まず、図11(A)に示すように、アウタ
部材(20)に対してインナ部材(30)を、アウタ部
材(20)のローラトラック溝(25)とインナ部材
(30)の隣り合ったローラトラック溝(33)間のラ
ンド部(35)とを同位相に合わせた状態で、アウタ部
材(20)のマウス部(23)にインナ部材(30)を
挿入する。続いてアウタ部材(20)に対してインナ部
材(30)を回し、ローラトラック(25,33)同士
およびランド部(27,35)同士を同位相に合わせ
る。次に、ローラ(40)の通り穴(41)にコントロ
ーラ(50)をセットしておき、図11(B)に示すよ
うにアウタ部材(20)に対してインナ部材(30)を
傾けた状態で、ローラトラック(25,33)にローラ
(40)を挿入するとともに、ローラ(40)から突出
したコントローラ(50)の両端をコントローラトラッ
ク(26,34)に挿入する。このときインナ部材(3
0)を傾ける度合は最大作動角より少し大きい程度でよ
い(図1参照)。
【0065】図9に、この発明による等速ジョイントを
使用したドライブシャフトユニット(A)と、従来の等
速ジョイントを使用したドライブシャフトユニット
(B)とを対比して示す。同図からわかるように、ケー
ジを廃止したこの発明の等速ジョイントでは、組立の際
にケージを外輪に組み込む(図16(C)参照)必要が
ないため、それに対応してマウス部(23)の深さも浅
くなっている。その結果、従来の等速ジョイント(図9
(B))における外輪(2)のバックフェース(2d)
からジョイントセンタ(O)までの距離に比べて、この
発明による等速ジョイント(図9(A))におけるアウ
タ部材(20)のバックフェース(22)からジョイン
トセンタ(O)までの距離が短縮される。
【0066】バックフェース〜ジョイントセンタ間距離
の短縮は、ジョイントの小型化、軽量化といった利点に
加えて、前輪駆動車のドライブシャフトに適用した場合
にはキングピンセンターの位置にジョイントセンタを合
わせやすくなるため車両の最小回転半径を小さくできる
という有利さをも発揮する。図10に示すように、キン
グピンセンターの位置にジョイントセンタが一致するの
が望ましいが、バックフェース〜ジョイントセンタ間距
離が大きくなると(図9(B))、ジョイントセンタを
キングピンセンターの位置に一致させるのが難しく、結
果として車両の転舵回転半径がそれだけ大きくならざる
をえない。
【0067】図17および図18に、車軸軸受とユニッ
ト化した等速ジョイントの実施の形態を示す。図17で
は、等速ジョイント(10)のアウタ部材(20)をそ
の軸部(21)にて車軸軸受(60)の内輪(61)と
結合している。車軸軸受(60)は、車輪を取り付ける
ためのフランジ(62)を備えた内輪(61)と、車体
に取り付けるためのフランジ(64)を備えた外輪(6
5)と、内・外輪間に介在する複列の転動体(66)と
で構成される。複列の転動体(66)のためのインナレ
ースのうちの一つは内輪(61)に形成され、他の一つ
は内輪(61)と嵌合した環状部材(63)に形成され
ている。内輪(61)および環状部材(63)の端面が
等速ジョイント(10)のアウタ部材(20)のバック
フェース(22)に当接している。ABS(アンチロッ
クブレーキシステム)用の車輪速度センサを構成する電
磁ピックアップ(67)とパルサーリング(68:斜線
部)が、それぞれ、外輪(62)と環状部材(66)に
取り付けられている。ABS用のパルサーリング(6
8)を使用するタイプの場合、ジョイントセンターとキ
ングピンセンターを一致させる必要上、パルサーリング
(68)を取り付けるスペース分、等速ジョイント(1
0)の軸方向長さを短くしたいという要望があるが、図
9に関連して述べたようにバックフェース〜ジョイント
センタ間距離が短縮されているため、かかる要望を無理
なく満たすことができる。図18は、等速ジョイント
(10)のアウタ部材(20’)と車軸軸受(60)の
内輪(61’)を一体化させた構成を例示したものであ
る。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は、次に
述べるような著しい効果を奏するものである。
【0069】すなわち、アウタ部材とインナ部材の間に
ケージが介在しないため、発熱の原因となる摩擦領域が
大幅に減少した。また、ジョイント内の摩擦部分が大幅
に減少する結果、従来のケージでボールをジョイント平
面に配向せしめる場合に比べて、より小さな力でローラ
をジョイント平面に配向せしめることができる。このこ
とは、ローラに軸力を作用させるためのくさび形の度合
も小さくてよいことを意味し、それゆえ、トラックのオ
フセット量を減少させることができる。トラックのオフ
セット量が減少すると、トラック深さの軸方向での不均
一さが緩和され、特にアウタ部材のマウス部奥側のトラ
ック深さが増加するため、ローラの接触楕円がトラック
の肩部に乗り上げてトラック肩部に盛り上がりを生じさ
せるという問題も解消し、ジョイントの耐久性が大幅に
向上した。
【0070】したがって、この発明の等速ジョイントは
高常用角での使用が可能で、自動車の動力伝達系に適用
した場合、車両設計自由度の大幅な向上に寄与する。ま
た、この発明の等速ジョイントは、ケージを廃止したこ
とによってアウタ部材の外径を大きく減少でき、小型・
軽量化の要請にマッチした設計を可能にする。
【0071】さらに、駆動側と従動側の間に、動力伝達
を安定化させる安定化手段を組み込んだから、動力伝達
が安定化され、自動車に適用した場合でも安定した走行
性能の実現に寄与することができる。
【0072】この発明の等速ジョイントはケージ組込み
を必要としないため、ケージ組込みを必要とした従来の
ボールタイプの等速ジョイントに比較して、バックフェ
ース〜ジョイントセンタ間距離を大幅に減少できた。そ
れゆえ、小型・軽量化に資するのみならず、前輪駆動車
のドライブシャフトに適用した場合には、キングピンセ
ンターの位置にジョイントセンタを合わせやすくなるた
め車両回転半径の減少を可能とし、車両の高付加価値化
に大きく貢献する。
【0073】さらに、ケージを廃止したことによって複
雑であった組立工程も大幅に減少し、作業性が大幅に向
上する。アウタ部材とインナ部材の間にケージが介在せ
ず摩擦が少なくなったことに対応して作動性が大幅に改
善され、ジョイントの屈曲が少ない抵抗でできるため、
車両への組付け作業が容易になるほか、エンジンからジ
ョイントを経由してサスペンションへ伝達される振動も
減少し、車両のNVHが大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】等速ジョイントの縦断面図である。
【図2】(A)は横断面図、(B)は(A)のB−B断
面図、(C)はローラトラック溝の変形例を示す断面図
である。
【図3】等速ジョイントの縦断面略図である。
【図4】ローラの縦断面図である。
【図5】コントローラの一つの態様を示す模式図であ
る。
【図6】コントローラの別の態様を示す模式図である。
【図7】コントローラの別の態様を示す模式図である。
【図8】コントローラの別の態様を示す模式図である。
【図9】(A)は本発明品の縦断面図、(B)は従来品
の縦断面図である。
【図10】自動車のドライブシャフトを示す説明図であ
る。
【図11】組立過程を示す工程図である。
【図12】従来の技術を示す横断面図である。
【図13】図12のジョイントの縦断面図である。
【図14】図13の拡大略図である。
【図15】従来のジョイントの組立過程を示す工程図で
ある。
【図16】従来のジョイントの組立過程を示す工程図で
ある。
【図17】等速ジョイントと車軸軸受をユニット化した
実施の形態を示す縦断面図である。
【図18】等速ジョイントと車軸軸受をユニット化した
実施の形態を示す縦断面図である。
【図19】コントローラの別の態様を示す断面図であ
る。
【図20】ローラの別の態様を示す模式図である。
【図21】ローラの別の態様を示す断面図である。
【図22】等速ジョイントの縦断面略図である。
【図23】等速ジョイントの縦断面略図である。
【図24】等速ジョイントの縦断面図である。
【図25】等速ジョイントの横断面図である。
【符号の説明】
10 等速ジョイント O ジョイントセンタ P ジョイント平面 20 アウタ部材 X 回転軸 21 軸部 22 バックフェース 23 マウス部 24 内周面 25 ローラトラック溝 25a 底面 OOL 曲率中心 25b 側壁面 26 コントローラトラック溝 OOC 曲率中心 30 インナ部材 Y 回転軸 31 通り穴 32 外周面 33 ローラトラック溝 33a 底面 OIL 曲率中心 33b 側壁面 34 コントローラトラック溝 OIC 曲率中心 40 ローラ 41 通り穴 42 外周面 43 上面 44 下面 50 コントローラ 51 円柱体(コントローラ構成要素) 52 ボール(コントローラ構成要素) 60 車軸軸受
フロントページの続き (72)発明者 阪東 広道 静岡県磐田市東貝塚1578番地 エヌティエ ヌ株式会社内 (72)発明者 藏 久昭 静岡県磐田市東貝塚1578番地 エヌティエ ヌ株式会社内 (72)発明者 吉田 和彦 静岡県磐田市東貝塚1578番地 エヌティエ ヌ株式会社内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)を
    具備した等速ジョイント。 (イ)アウタ部材 ・ジョイントセンタを曲率中心とする部分球面状内周面
    を備えている。 ・内周面の円周方向等間隔位置に、内周面から所定の深
    さで軸方向に延びたローラトラック溝を備えている。 ・ローラトラック溝の底面から所定の深さで軸方向に延
    びたコントローラトラック溝を備えている。 ・縦断面で見て、ローラトラック溝の曲率中心とコント
    ローラトラック溝の曲率中心はジョイントセンタから軸
    方向に互いに逆向きにオフセットしている。 (ロ)インナ部材 ・ジョイントセンタを曲率中心とする部分球面状外周面
    を備える。 ・外周面の円周方向等間隔位置に、外周面から所定の深
    さで軸方向に延びたローラトラック溝を備えている。 ・ローラトラック溝の底面から所定の深さで軸方向に延
    びたコントローラトラック溝を備えている。 ・縦断面で見て、ローラトラック溝の曲率中心とコント
    ローラトラック溝の曲率中心はジョイントセンタから軸
    方向に互いに逆向きにオフセットしている。 ・アウタ部材のローラトラック溝の曲率中心とインナ部
    材のローラトラック溝の曲率中心は互いに逆向きにジョ
    イントセンタから等距離オフセットしている。 ・アウタ部材のコントローラトラック溝の曲率中心とイ
    ンナ部材のコントローラトラック溝の曲率中心は互いに
    逆向きにジョイントセンターから等距離オフセットして
    いる。 (ハ)ローラ 対をなすアウタ部材のローラトラック溝とインナ部材の
    ローラトラック溝とで形成されたローラトラックに収容
    されている。 (ニ)コントローラ ローラをローラの軸方向に貫通する穴にローラの軸方向
    に移動可能に挿入され、両端部がアウタ部材およびイン
    ナ部材のコントローラトラック溝に収容されている。 (ホ)安定化手段 駆動側と従動側の間に設けられ、両者間の動力伝達を安
    定化させる。
  2. 【請求項2】 コントローラの両端部の形状を、アウタ
    部材およびインナ部材のコントローラトラック溝間に一
    個のボールを適用した場合の当該ボールの半径と等しい
    曲率半径の曲面としたことを特徴とする請求項1の等速
    ジョイント。
  3. 【請求項3】 コントローラを複数の円柱体で構成した
    ことを特徴とする請求項1または2の等速ジョイント。
  4. 【請求項4】 コントローラを複数のボールで構成した
    ことを特徴とする請求項1の等速ジョイント。
  5. 【請求項5】 コントローラ構成要素間に間座を介在さ
    せたことを特徴とする請求項3または4の等速ジョイン
    ト。
  6. 【請求項6】 アウタ部材およびインナ部材のローラト
    ラック溝底面の曲率中心をローラトラックの曲率中心と
    同様にオフセットさせたことを特徴とする請求項1、
    2、3、4または5の等速ジョイント。
  7. 【請求項7】 ローラの上面および下面の当たりを線接
    触としたことを特徴とする請求項6の等速ジョイント。
  8. 【請求項8】 安定化手段として、コントローラに一つ
    のボールを使用した請求項1記載の等速ジョイント。
  9. 【請求項9】 安定化手段として、ローラの上面と下面
    をその中心線に対して対称形状に形成した請求項1乃至
    6の何れか、または請求項8記載の等速ジョイント。
  10. 【請求項10】 安定化手段として、ローラの軸方向貫
    通穴を凸球面状に形成し、かつローラ中心をコントロー
    ラに接触させた請求項1、2、6、7、9何れか記載の
    等速ジョイント。
  11. 【請求項11】 安定化手段として、コントローラオフ
    セット角を7°〜16°、ローラトラック底オフセット
    角およびローラトラックオフセット角を4°〜20°に
    設定した請求項1乃至10何れか記載の等速ジョイン
    ト。
  12. 【請求項12】 安定化手段として、コントローラとコ
    ントローラトラックの接触角を0°〜10°、ローラと
    ローラトラックの接触角を45°〜75°に設定した請
    求項1乃至11何れか記載の等速ジョイント。
  13. 【請求項13】 安定化手段として、コントローラとコ
    ントローラトラックとの接触率を1〜1.8、ローラと
    ローラトラックとの接触率を1〜1.4に設定した請求
    項1乃至12何れか記載の等速ジョイント。
  14. 【請求項14】 安定化手段として、コントローラ中心
    とローラ中心とがローラ軸方向にずれたことに起因する
    モーメントを、コントローラトラックとローラトラック
    の両方で受けるための受け構造を具備する請求項1乃至
    13何れか記載の等速ジョイント。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006266459A (ja) * 2005-03-25 2006-10-05 Ntn Corp 高角固定式等速自在継手
US8147342B2 (en) 2005-03-22 2012-04-03 Ntn Corporation Fixed-type constant-velocity universal joint

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