JP2000054239A - ポリエステル混繊糸の製造方法 - Google Patents

ポリエステル混繊糸の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】ランダムな太細斑をもつ糸条を含む異収縮ポリ
エステル混繊糸 【解決手段】紡糸口金1,2 から2つのポリエステルフィ
ラメント群A,B を溶融紡糸して冷却した後、一のフィラ
メント群A は加熱延伸せずに油剤付与装置3 により油剤
を付与して未延伸の糸条A'に集束する。他のフィラメン
ト群B は筒状加熱帯域4 を通過させ加熱延伸した後、油
剤付与装置5 により油剤を付与して糸条B'に集束する。
未延伸の糸条A'は、ローラ6 、7 を経て太細斑を形成す
る。ローラ8 により引き取られた加熱延伸された糸条B'
をローラ7 の前流側で交絡処理装置9 により糸条A'と交
絡し、巻取り速度2500m/分以上で巻き取り、混繊糸が製
造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱収縮性の低いフ
ィラメント糸と熱収縮性の高いフィラメント糸とを使用
したポリエステル混繊糸の製造方法、及び熱伸長性をも
つフィラメント糸と熱収縮性をもつフィラメント糸とを
使用したポリエステル混繊糸の製造方法に関し、特に、
一構成要素として太細斑を有する糸を採用したポリエス
テル混繊糸を一工程により製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来か
ら、熱収縮性の低いフィラメント糸と熱収縮性の高いフ
ィラメント糸とを使用したポリエステル混繊糸は、これ
を布帛にした後、かかる布帛に加熱処理などを施すこと
によってソフト感に富んだ膨らみのある良好な風合いを
もつ布帛とすることができることから、婦人衣料を中心
とした衣料全般の素材として広く使用されている。
【0003】より優れた膨らみを発現させ、ソフト感に
富んだ風合いを布帛に付与するために、低収縮性フィラ
メント糸と高収縮性フィラメント糸とからなる混繊糸の
各フィラメント糸の熱収縮差を大きくすることが要求さ
れている。かかる要求に対し、例えば、沸水収縮率の相
違する延伸糸を混繊して製造されたポリエステル混繊糸
が提案されている。しかしながら、沸水収縮率の相違す
る延伸糸を使用して混繊糸を製造する方法は、ポリエス
テルの未延伸糸を一旦巻き取った後に、それぞれ相違す
る延伸条件によって延伸処理を施すことにより、沸水収
縮率の相違する延伸糸とし、しかる後にかかる沸水収縮
率の相違する延伸糸を混繊処理するものであるため、そ
の製造工程が煩雑となり、製造コストも高くなってしま
うといった問題がある。
【0004】そこで、例えば特開平7−243144号
公報に開示されたポリエステル混繊糸の製造方法では、
二つの紡糸口金から吐出された各ポリエステルフィラメ
ント群のうち、一方のフィラメント群には水を付与して
集束させた後、加熱筒へ導入し、他方のフィラメント群
には水を付与せず非集束状態で、前記加熱筒と同一温度
に設定された他の加熱筒へと導入し、その後、両フィラ
メント群を所定の速度で引き取った後、合糸混繊してい
る。このように二台の加熱筒は同一温度に設定されてい
るが、一方のフィラメント群にのみ前記加熱筒へ導入す
る前に水を付与することにより、二つのフィラメント群
の物性や結晶構造を異ならせ、高収縮成分の熱収縮率が
より高いポリエステル混繊糸を得ることができる。
【0005】しかしながら、上述したポリエステル混繊
糸の製造方法は、いずれも高収縮成分の熱収縮率がより
高いポリエステル混繊糸を得るために提案されたもので
あり、かかる混繊糸を布帛にした後に加熱処理による高
収縮成分の収縮率を高め、布帛に膨らみを現出させるも
のである。従って、これらのポリエステル混繊糸による
布帛に熱処理を施して膨らみのある布帛にしようとする
と、布帛全体が収縮してしまい、ソフトな風合いの布帛
を得ようとする意向とは反対に、布帛の風合いが硬くな
る傾向を示すこととなる。
【0006】一方、従来から、太細糸はシックアンドシ
ン糸ともいわれ、特にポリエステル太細糸は、その太細
に起因する効果から、布帛としたときに独特の風合いや
太部と細部との染色性の差異による霜降り調等の外観を
与えることが知られており、衣料用素材として広く用い
られている。
【0007】ポリエステル太細糸を製造する方法として
は、紡糸して一旦、未延伸糸として巻き取り、次いで、
延伸処理を施す際に未延伸糸の供給量を変化させること
により延伸倍率の不規則性を糸に与えて不均一延伸する
方法が知られている。しかしながら、この方法では紡糸
した後、一旦、未延伸糸として巻き取り、その後、延伸
処理を施すため、製造工程数が増加して必然的に製造コ
ストが高くなる。また、更にこの太細糸と沸水収縮率の
異なる延伸糸とを混繊処理する場合にも、その製造工程
が煩雑となり、更に製造コストを高沸させることとな
る。
【0008】これに対して、未延伸糸を一旦巻き取るこ
となく、紡糸工程に連続して引取りローラ間で延伸処理
を行い、太細糸を製造する方法が種々提案されている。
例えば、特開平5−98510号公報には、オイリング
ローラと第1ゴデットローラとの間に引取ローラを配
し、溶融紡糸されたポリエステル未延伸糸に油剤を付与
した後、延伸処理を施し、その後、同引取ローラと第1
ゴデットローラとの間で糸条交絡処理を行うポリエステ
ル太細糸の製造方法が開示されている。また、同公報に
は、引取速度と紡糸孔からの吐出速度との比を150〜
250として溶融紡糸されたポリエステル未延伸糸に油
剤を付与した後、オイリングローラと第1ゴデットロー
ラとの間で糸条交絡を施し、その後、延伸処理を施すポ
リエステル太細糸の製造方法が開示されている。
【0009】更に同公報には上述の方法で製造された太
細糸に、高収縮糸をスピンドロー法により連続して混繊
する混繊糸の製造方法が開示されている。即ち、同方法
では、先ず溶融紡糸されたポリエステル未延伸糸にオイ
リングローラにより油剤を付与する。ここで、一方の糸
条群にはインターレースノズルにより糸条交絡処理を施
した後、低温の第1ゴデットローラと低温の第2ゴデッ
トローラとの間で低倍率による延伸を施して太細を発現
させ、他方の糸条群は交絡処理を施すことなく、高温の
第1ゴデットローラと前記第2ゴデットローラとの間で
延伸処理を施す。その後、前記一方の糸条群と前記他方
の糸条群とをインターレースノズルにより再度混繊交絡
を施し、異収縮混繊糸が製造される。
【0010】このように同公報の混繊糸の製造方法によ
れば、太細糸の製造に連続して一工程内で混繊糸を製造
することができるため製造効率が向上するが、太細を形
成するためにインターレースノズルによる交絡処理を施
しており、同処理において糸切れが発生する危険性があ
るため、紡糸安定性に問題がある。
【0011】本発明はかかる従来の問題を解決すべくな
されたものであり、ランダムな太細斑を有する糸条を含
む異収縮ポリエステル混繊糸を、一工程で容易に且つ安
定して製造することのできるポリエステル混繊糸の製造
方法を提供することを第1の目的としている。
【0012】更に、例えば布帛とした際などの前記混繊
糸を製造した後の熱処理によってソフトな風合いを呈
し、且つ良好な膨らみを発現するポリエステル混繊糸
を、煩雑な工程を経ることなく容易に、且つ安定して製
造することのできるポリエステル混繊糸の製造方法を提
供することを第2の目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記第1の目的を達成す
るために、本発明は、複数のポリエステルフィラメント
群を溶融紡糸し、各フィラメント群を冷却する工程、1
以上のフィラメント群(A) を加熱延伸せずに各フィラメ
ント群(A) ごとに未延伸の糸条(A′) に集束する工程、
他のフィラメント群(B) を加熱延伸した後、各フィラメ
ント群(B) ごとに加熱延伸された糸条(B′) に集束する
工程、前記未延伸の各糸条(A′) を、第1引取ローラと
第2引取ローラとにより引き取り、太細斑を形成する工
程、及び太細斑を有する前記未延伸の各糸条(A′) と、
前記加熱延伸された各糸条(B′)とを交絡した後、交絡
糸条を巻き取る工程を備えてなり、前記第1引取ローラ
のローラ面の摩擦係数が0.6以上、前記第2引取ロー
ラのローラ面の摩擦係数が0.4以下であり、前記第1
引取ローラ及び/又は第2引取ローラが加熱ローラであ
って、前記第1引取ローラの加熱温度は120〜250
℃、前記第2引取ローラの加熱温度は140〜250℃
であり、前記第1引取ローラの引取り速度が4500m
/分以下であり、前記交絡糸条の巻き取り速度が250
0m/分以上であることを特徴とするポリエステル混繊
糸の製造方法を第1の主要な構成としている。
【0014】本発明では加熱延伸を行わず集束した未延
伸の各糸条(A′) が第1及び第2引取ローラにより引き
取られる際に、同第1及び第2引取ローラーの引取り速
度を同一にし、見かけ上、延伸が行われない条件で引き
取った場合でも、得られた糸条(A′) には太細斑が形成
される。このことから、前記糸条(A′) は第1及び第2
引取ローラ間での延伸により太細斑が形成されるのでは
なく、前記第1及び第2引取ローラのローラ面をそれぞ
れ上述した摩擦係数としているため、糸条(A′) が第1
及び/又は第2引取ローラにより熱を受けて収縮する時
に、摩擦係数の低い第2引取ローラのローラ面でランダ
ムにスリップし、糸条(A′) に働く張力が微妙に変化す
ることで繊維長手方向に太細斑が生じるものと考えられ
る。
【0015】本発明の第1の構成を備えた製造方法にあ
っては、上述のようにして太細斑が形成された未延伸の
糸条(A′) と、加熱延伸された糸条(B′) とを交絡して
巻き取り、一工程により混繊糸を製造することができ、
製造効率が向上する。また、かかる方法により製造され
た混繊糸からなる布帛は、従来の熱収縮の差のみを利用
した混繊糸からなる布帛に比べ、太細斑に起因する繊維
間の空隙により、膨らみ感やソフト感が向上され、一構
成要素である太細糸における太部と細部とのコントラス
トが大きくなり、両部の染色性の差異により霜降り調等
の外観を付与することが可能となる。
【0016】本発明にあっては、前記第1引取ローラ及
び/又は第2引取ローラが加熱ローラである。前記第1
引取ローラのみを加熱ローラとする場合は、温度が12
0〜250℃であることが好ましい。120℃未満では
前記糸条(A′) の加熱が不十分となり、第2引取ローラ
での前記糸条(A′) のスリップによる張力の変化では目
的とする太細斑が得られない。一方、250℃を超える
と、第2引取ローラ上での糸揺れが大きくなり製糸安定
性が悪くなる。
【0017】また、第2引取ローラのみを加熱ローラと
する場合は、温度が140〜250℃であることが特に
好ましく、140℃未満では前記糸条(A′) の加熱が不
十分となり、第2引取ローラでの前記糸条(A′) のスリ
ップによる張力の変化では目的とする太細斑が得られ
ず、250℃を超えると、糸切れや融着等により製糸安
定性が悪くなる。
【0018】更に、前記第1及び第2引取ローラの両方
を加熱ローラとする場合は、第1及び第2引取ローラの
少なくともいずれか一方を上述したそれぞれの温度範囲
に設定し、他方を250℃以下で室温より高温に設定す
ればよい。他方の加熱ローラの温度が250℃を超える
と、製糸安定性が悪くなる。このとき、第1及び第2引
取ローラの温度により、第2引取ローラのローラ面での
前記糸条(A′) のスリップ状態が異なり、同糸条(A′)
に働く張力が変化することにより太細の形態も変化する
が、上述の範囲内で温度が高い程、得られた太細糸は繊
維長手方向の太部及び細部の分散がランダムになる傾向
がある。
【0019】また、加熱延伸を行わず集束した前記未延
伸の各糸条(A′) を引き取る第1引取ローラでの引取り
速度が4500m/分を超える場合は、前記糸条(A′)
の配向及び結晶化が進み、前記糸条(A′) に明瞭な太部
と細部とを形成することが困難となり、太部と細部との
コントラストが弱くなる。そのため得られた混繊糸を布
帛とした場合にソフトな風合いや太細斑パターンを得る
ことができない。
【0020】上述した本発明の第1の構成を備えた製造
方法においては、未延伸の各糸条(A′) を引き取る第2
引取ローラの引取り速度は、太細斑の形成上、前記第1
引取ローラの引取り速度と同じか又はそれ以上に大きく
する必要があるが、前記第2引取ローラの引取り速度は
安定に製糸できる範囲で任意に設定することができる。
好ましくは、前記第2引取ローラの引取り速度が前記第
1引取ローラの引取り速度以上である。
【0021】また、巻取り機の速度は巻取り時の巻取り
張力が0.05〜0.3g/dtexになるように調整するこ
とが好ましく、前記巻取り速度は2500m/分以上に
設定される。前記巻取り速度が2500m/分未満で
は、前記加熱延伸した各糸条(B′) の繊維構造が十分に
形成されていないため、得られた混繊糸の伸度及び沸水
収縮が高くなり、その布帛は硬く、またアルカリ減量工
程により脆化する等の問題がある。
【0022】上述した第2の目的を達成するために、本
発明者らが鋭意検討を行ったところ、太細斑を有する一
方の糸条に自発伸長性を付与する、即ち、熱収縮率を0
%以下とすることにより、他方の熱収縮性をもつ糸条と
の熱収縮率の差が更に拡大して、得られたポリエステル
糸条を布帛とした際の熱処理によってソフトな風合いや
良好な膨らみを発現させることができるものと考え、以
下の本発明の第2の構成を得るに至った。
【0023】即ち、本発明は、複数のポリエステルフィ
ラメント群を溶融紡糸し、各フィラメント群を冷却する
工程、1以上のフィラメント群(A) を加熱延伸せずに各
フィラメント群ごとに未延伸の糸条(A′) に集束する工
程、他のフィラメント群(B)を加熱延伸した後、各フィ
ラメント群ごとに加熱延伸された糸条(B′) に集束する
工程、前記未延伸の各糸条(A′) を、第1引取ローラと
第2引取ローラとにより引き取り、太細斑を形成する工
程、及び太細斑を有する前記未延伸の各糸条(A′) と、
前記加熱延伸された各糸条(B′) とを交絡した後、交絡
糸条を巻き取る工程を備えてなり、前記第1引取ローラ
のローラ面の摩擦係数が0.6以上、前記第2引取ロー
ラのローラ面の摩擦係数が0.4以下であり、前記第1
引取ローラ及び/又は第2引取ローラは加熱温度が25
0℃以下の加熱ローラであり、前記交絡糸条を巻取り速
度2500〜4000m/分で巻き取った後、同交絡糸
条にポリエステルのガラス転移温度以上の加熱温度下で
定長熱処理を施し、前記未延伸の糸条(A′) を自発伸長
性を示す伸長糸となり、前記加熱延伸された糸条(B′)
が熱収縮性を示す収縮糸となることを特徴とするポリエ
ステル混繊糸の製造方法を、第2の主要な構成としてい
る。
【0024】本発明の第2の主要な構成を備えた上述の
製造方法にあっては、上述した第1の構成を備えた製造
方法と同様に、前記未延伸の各糸条(A′) とを引き取る
第1引取ローラ及び第2引取ローラのいずれか一方、或
いは両方が加熱ローラであり、前記糸条(A′) が前記加
熱ローラに接触し熱を受けて収縮するときに、摩擦係数
の低い第2引取ローラの表面で前記糸条(A′) がランダ
ムにスリップし、前記糸条(A′) に働く張力が微妙に変
化する。それにより、前記糸条(A′) には繊維長手方向
に太細斑が生じるものと考えられる。
【0025】上述のように太細斑が生じた前記未延伸の
各糸条(A′) と、前記加熱延伸された各糸条(B′) とを
交絡し、ポリエステルのガラス転移温度以上の加熱温度
下で定長熱処理を施して得られたポリエステル混繊糸
は、前記未延伸の各糸条(A′)が自発伸長性を示す伸長
糸となり、前記加熱延伸された糸条(B′) が熱収縮性を
示す収縮糸となっている。そのため、例えば布帛とした
後など、ポリエステル混繊糸の製造後に更に熱処理が施
されると、伸長糸である前記未延伸の糸条(A′)が、そ
の後の前記熱処理前の長さよりも伸長される。一方、収
縮糸である前記加熱延伸された糸条(B′) は前記熱処理
により収縮して同熱処理前の長さよりも短くなる。この
ようにポリエステル混繊糸の製造後に熱処理が施される
ことよって、収縮糸である前記加熱延伸された糸条
(B′) が収縮して芯側を構成し、太細斑を有する伸長糸
である前記未延伸の糸条(A′) が自発伸長して、芯側を
構成する前記加熱延伸された糸条(B′) の外側をループ
状に覆って鞘側を構成する。そのため、布帛にはソフト
で膨らみのある良好な風合いが発現する。
【0026】なお、前記未延伸の各糸条(A′) が伸長糸
となり、前記加熱延伸された各糸条(B′) が収縮糸とな
って、ポリエステル混繊糸が製造後の加熱によって前記
伸長糸において自発伸長する要因は、以下の通りである
と推定される。
【0027】即ち、紡糸口金から吐出されたポリエステ
ルフィラメント群(A) に加熱延伸を行うことなく集束し
て得られた未延伸の糸条(A′) を、巻取り速度2500
〜4000m/分で巻き取ることによって、前記未延伸
の糸条(A′) は、結晶層と、非晶層と、それらの中間の
状態にある配向中間層とを有した繊維構造となってい
る。かかる繊維構造をもつ前記未延伸の糸条(A′) にポ
リエステルのガラス転移温度以上の加熱下での定長熱処
理を施すことによって、前記未延伸の糸条(A′)の前記
非晶層内における内部の歪みは緩和されるが、前記配向
中間層は結晶化が完了していない状態で残ることにな
る。
【0028】この結晶化が不完全な前記配向中間層は更
に熱履歴を受けると結晶化が進み、このときに前記未延
伸の糸条(A′) は自発伸長するものと考えられる。この
ように、前記未延伸の糸条(A′) は自発伸長性をもつ伸
長糸となり、かかる伸長糸と収縮糸とから構成される前
記ポリエステル混繊糸は上述の製造方法により製造され
た後、更に加熱処理が施されると、同加熱処理の際に受
けるの熱履歴によって、前記伸長糸は上記配向中間層の
結晶化が進み、自発伸長し、一方で前記収縮糸は熱収縮
するため、前記ポリエステル混繊糸からなる布帛には、
ソフトで膨らみのある風合いが付与される。
【0029】ポリエステルフィラメント群の紡糸に際し
て、1以上のフィラメント群(A) を溶融吐出するための
紡糸口金と、1以上の他のフィラメント群(B) を溶融吐
出するための他の紡糸口金とを備えた紡糸装置により、
各紡糸口金からポリエステルフィラメント群(A,B) を吐
出させると共に、これらの各フィラメント群(A,B) を冷
却する。その後、前記フィラメント群(A) を加熱延伸せ
ずに前記未延伸の糸条(A′) に集束すると共に、前記他
のフィラメント群(B) を加熱延伸して前記加熱延伸され
た糸条(B′) に集束し、前記未延伸の糸条(A′) と前記
加熱延伸された糸条(B′) とを合糸して巻き取る際に、
本発明の第2の構成を備えたポリエステル混繊糸の製造
方法においては、前記未延伸の糸条(A′) を引き取る第
1引取ローラのローラ面の摩擦係数が0.6以上、記未
延伸の糸条(A′) を引き取る第2引取ローラのローラ面
の摩擦係数が0.4以下とし、前記第1及び第2引取ロ
ーラのいずれか一方或いは両方を加熱ローラとすること
が必要である。
【0030】また、上述の第2の構成を備えた製造方法
にあっては、前記未延伸の糸条(A′) と前記加熱延伸さ
れた糸条(B′) とを合糸して巻き取るに際し、紡糸速度
2500〜4000m/分で巻き取ることが必要であ
る。紡糸速度が2500m/分未満になると、前記加熱
延伸された糸条(B′) の繊維構造が十分に形成されてお
らず、太細斑を有する前記未延伸の糸条(A′) と前記加
熱延伸された糸条(B′)とからなるポリエステル混繊糸
において、前記加熱延伸された糸条(B′) の伸度や沸水
収縮が高くなりすぎるために、前記混繊糸から得られた
布帛は熱処理により硬くなったり、或いはアルカリ減量
により脆化する等の問題を生じることがある。
【0031】一方、前記紡糸速度が4000m/分を越
えると、前記未延伸の糸条(A′) の配向結晶化が進んで
しまうために、同糸条(A′) は太部と細部との明瞭な形
成が困難となり太部と細部とのコントラストが弱くな
る。また、配向結晶化が進むことにより、太細斑を有す
る前記未延伸の糸条(A′) は前記定長熱処理を施した後
に示す自発伸長性が低下し、ソフトで膨らみのある良好
な風合いが得られ難くなる。
【0032】なお、本発明の第2の構成を備えた製造方
法にあっては、上述の2500〜4000m/分の紡糸
速度で巻き取った太細斑を有する前記未延伸の糸条
(A′) と前記加熱延伸された糸条(B′) からなるポリエ
ステル混繊糸を、更にポリエステルのガラス転移温度以
上の加熱下での定長熱処理を施すことが必要である。こ
の定長熱処理によって上述したように太細斑をもつ前記
未延伸の糸条(A′) に自発伸長性が付与され、例えば布
帛の精練やリラックス処理などで熱履歴を受けたとき
に、この太細斑を有する前記未延伸の糸条(A′) が自発
伸長する。
【0033】また、前記第1引取ローラが温度120〜
230℃の加熱ローラであり、及び/又は前記第2引取
ローラが温度140〜230℃の加熱ローラであること
が好ましい。
【0034】更に、前記定長熱処理はポリエステルのガ
ラス転移温度以上120℃以下の加熱温度下でなされる
ことが好ましい。処理温度がポリエステルのガラス転移
温度未満であると、太細斑を有する前記未延伸の糸条
(A′) における内部歪みが緩和されないままで残るため
に、前記糸条(A′) が後に熱履歴を受けたときに自発伸
長性を示すことなく収縮してしまう。一方、処理温度が
120℃を越えると、太細斑を有する前記未延伸の糸条
(A′) における配向中間層の結晶化が進んで安定な構造
になるために、前記糸条(A′) が後工程で熱履歴を受け
たときの自発伸長性能が小さくなる。
【0035】なお、定長熱処理ではなく前記未延伸の糸
条(A′) と前記加熱延伸された糸条(B′) とが自由に収
縮し得る状態でポリエステルのガラス転移温度以上〜1
20℃以下の加熱下での熱処理を行うと、前記未延伸の
糸条(A′) は前記加熱延伸された糸条(B′) よりも熱収
縮率が大きくなっているために、前記未延伸の糸条
(A′) が芯側に位置するようになってしまい、しかも太
細斑を有する同糸条(A′)は非晶層のみでなく前記配向
中間層の歪みまでもが緩和されて安定な構造となるため
に、同糸条(A′) は後に熱履歴を受けたときに十分な自
発伸長性を示さなくなる。
【0036】なお、前記定長熱処理は、ポリエステル混
繊糸の撚糸後の撚り止めセット工程や、サイジング工程
で行うことが可能である。或いは、太細斑を有する前記
未延伸の各糸条(A′) と、前記加熱延伸された各糸条
(B′) とを交絡した後、交絡糸条を巻き取って得られた
交絡糸条を布帛に形成した後に、同布帛をポリエステル
のガラス転移温度以上の加熱下での定長熱処理を施すこ
とも可能である。
【0037】また、本発明の第2の構成を備えたポリエ
ステル混繊糸の製造方法にあっては、前記未延伸の糸条
(A′) と、前記加熱延伸された糸条(B′) は、下記の式
(1)及び式(2)を満足していることが望ましい。即
ち、 D(A′) /D(B′) ≧1・・・(1) 1≦d(A′) ≦6 ・・・(2) である。但し、上記式中、D(A′) は前記未延伸の糸条
(A′) の総繊度、D(B′) は前記加熱延伸された糸条
(B′) の総繊度、d(A′) は前記未延伸の糸条(A′) の
単繊維繊度(dtex)である。
【0038】前記未延伸の糸条(A′) の総繊度D(A′)
と、前記加熱延伸された糸条(B′)の総繊度D(B′) と
の関係が、D(A′) /D(B′) <1であると、自発伸長
性をもつ伸長糸である前記未延伸の糸条(A′) と、熱収
縮性をもつ収縮糸である前記加熱延伸された糸条(B′)
とから構成されるポリエステル混繊糸を、後に熱処理し
たときに、伸長して鞘側に位置する前記未延伸の糸条
(A′) が芯側に位置する前記加熱延伸された糸条(B′)
を十分に覆うことができなくなり、ソフトで膨らみのあ
る良好な風合いが得られ難くなる。
【0039】また、前記未延伸の糸条(A′) の単繊維繊
度d(A′) が1dtexよりも小さくなると、前記未延
伸の糸条(A′) の配向結晶化が進んでしまうために、こ
れをポリエステルのガラス転移温度以上の加熱下で定長
熱処理を施した後に得られる自発伸長性能が低下する。
一方、前記未延伸の糸条(A′) の単繊維繊度d(A′)が
6dtexを越えると、前記未延伸の糸条(A′) の単糸
繊度も太くなり、得られる布帛の風合いが硬くなる。
【0040】なお、上述した本発明の第1及び第2の主
要な構成において、前記未延伸の各糸条(A′) を引き取
る前記第1引取ローラの摩擦係数0.6未満では、同第
1引取ローラ上での前記糸条(A′) の把持力が小さいた
め糸揺れが大きくなり、製糸安定生が低下する。また、
前記未延伸の各糸条(A′) を引き取る第2引取ローラの
摩擦係数0.4を超えると、同第2引取ローラのローラ
面で前記糸条(A′) がランダムにスリップせず、同糸条
(A′) に目的とする太細斑を形成することができず、得
られた混繊糸からなる布帛がソフト感及び膨らみ感が不
十分となる。
【0041】また、本発明においては、前記未延伸の各
糸条(A′) が前記第1引取ローラ及び前記第2引取ロー
ラにより引き取られる際に、両第1及び第2引取ローラ
間で張力を受けるとき、摩擦係数の小さい前記第2引取
ローラの表面でランダムにスリップし、更に、前記第1
及び第2引取ローラのいずれか一方或いは両方を加熱ロ
ーラとすることにより、糸条(A′) に働く張力を微妙に
変化させることで、同糸条(A′) は繊維長手方向に太細
斑が形成される。
【0042】このとき、前記未延伸の各糸条(A′) が第
1及び第2引取ローラにより引き取られる際に、第1引
取ローラのみを加熱ローラとする場合、第2引取ローラ
のみを加熱ローラとする場合、或いは第1及び第2引取
ローラの両方を加熱ローラとする場合のそれぞれの場合
で、第2引取ローラのローラ面での糸条のスリップ状態
が異なり、糸条に働く張力が各場合で変化する。更に
は、前記第1及び/又は第2引取ローラを加熱ローラと
する場合の加熱温度を変えることにより、また、前記第
1及び第2引取ローラの設置位置を変えたり、或いは第
1及び第2引取ローラ間で前記糸条(A′) に交絡を付与
することなどにより、前記第2引取ローラ表面でのスリ
ップの状態を異ならせることができ、糸条(A′) に作用
する張力を変化させて種々の太細形態を付与することが
できる。
【0043】例えば、前記第1引取ローラのみを加熱ロ
ーラとする場合は、得られた太細糸の太部及び細部の長
さがランダムになリ、繊維長手方向の太部及び細部の分
散もランダムな形態の太細糸となる。また、第2引取ロ
ーラのみを加熱ローラとする場合は、太細糸における太
部の長さが長く、細部の長さが短くなり、繊維長手方向
の太部が占める割合の大きな形態の太細糸が得られる。
第1及び第2引取ローラの両方を加熱ローラとする場合
は、太細糸の太部及び細部の長さがランダムになり、繊
維長手方向の太部及び細部の分散が前述した第1引取ロ
ーラのみを加熱ローラとする場合よりも更にランダムな
形態の太細糸となる。
【0044】このように、前記第1及び第2引取ローラ
の温度及びその組み合わせにより、加熱延伸を行わずに
集束した未延伸の各糸条を様々な太細形態を有する太細
糸に容易に変更することができ、加熱延伸された各糸条
と混繊した場合に、ソフトな風合いや種々の太細パター
ンを付与することができる。
【0045】なお、前記未延伸の各糸条(A′) を引き取
る第1及び第2引取ローラと、加熱延伸された各糸条
(B′) を引き取る引取ローラとは、それぞれ別個のロー
ラを使用し、巻取り機で巻き取る直前に合糸してもよ
い。或いは、第1引取ローラで引き取った未延伸の糸条
(A′) と、別個の第3引取ローラで引き取った加熱延伸
された糸条(B′) とを合糸し、その後、共通の前記第2
引取ローラにより引き取った後、巻き取っても良い。
【0046】更に、前記複数のポリエステルフィラメン
ト群は同一材質のポリエステルであり、或いは、前記複
数のポリエステルフィラメント群の少なくとも1群が他
の群とは異なる材質のポリエステルであることが好まし
い。
【0047】例えば、本発明において複数のポリエステ
ルフィラメント群として、異なる3種類のポリエステル
フィラメント群を採用する場合、1種を未延伸の糸条
(A′)とし他の2種を加熱延伸された糸条(B′) とし
て、上述の方法により混繊糸を製造することができ、或
いは2種を未延伸の糸条(A′) とし、他の1種を加熱延
伸された糸条(B′) として上述の方法により混繊糸を製
造することもできる。更には、より多種のポリエステル
フィラメント群を採用することも可能であり、その数に
ついては特に限定されるものではない。
【0048】本発明で用いるポリエステルは、エチレン
テレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステ
ルであり、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体
を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるアル
コール成分とするポリエステルであって、酸成分及び/
又はアルコール成分の一部が他の酸成分及び/又はアル
コール成分で置き換えられたポリエステルであってもよ
い。
【0049】置き換え可能な他の酸成分としては、イソ
フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカル
ボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、アジピン
酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン
酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウ
ムスルホイソフタル酸、1,8−ジカルボキシナフタレ
ン−3−スルホン酸ナトリウム、p−β−オキエトキシ
安息香酸或いはこれらのエステル形成性誘導体等が挙げ
られる。また、置き換え可能な他のアルコール成分とし
てはプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,
4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコ
ール、1,4−ビス(β−オキシエトキシ)ベンゼン、
ビスフェノールAのビスグリコールエーテル等が挙げら
れる。
【0050】かかるポリエステルは、公知の任意の方法
により合成することができる。例えばポリエチレンテレ
フタレートについて説明すれば、テレフタル酸とエチレ
ングリコールとのエステル化反応、或いはテレフタル酸
ジメチルとエチレングリコールとのエステル交換反応に
より、テレフタル酸のグリコールエステル又はその低重
合体を生成させ、次いでその生成物を重縮合させること
により得ることができる。なお、ポリエステルの合成に
際しては、触媒、艶消剤、抗酸化剤、着色防止剤、エー
テル結合副生防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤等が適宜添
加することができる。
【0051】また、本発明のポリエステル混繊糸の製造
方法においては、複数のポリエステルフィラメント群を
溶融紡糸する際に、公知の紡糸口金を使用することがで
き、そのノズル孔の形状は、円形、三角形、多角形、十
字形などの従来から公知の形状を、適宜採用することが
できる。
【0052】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態
について、図面を参照して具体的に説明する。図1は本
発明の第1の構成を備えたポリエステル混繊糸の製造方
法と、本発明の第2の構成を備えた製造方法とにおい
て、共通に適用される紡糸装置の一例を示す概略図であ
る。
【0053】前記紡糸装置は、2つの紡糸口金1,2を
備え、互いに同一種類の、或いは別の種類のポリエステ
ルフィラメント群A,Bが溶融紡糸される。前記紡糸口
金1,2の紡糸孔は、通常は円形のものが用いられる
が、三角形、十字形等の形状のものを用いることもでき
る。また、原料であるポリエステルポリマーの種類、紡
糸孔の形状、吐出量を変えることにより、種々の太細斑
パターンや風合いを得ることができる。
【0054】前記紡糸口金1,2の下流には図示せぬ冷
却部が配されており、各口金1,2から吐出されたフィ
ラメント群A,Bが冷却風により冷却される。その後、
一方の紡糸口金1から紡糸されたフィラメント群Aは、
前記冷却部の下方に配された油剤付与装置3により油剤
が付与されると共に、同フィラメント群Aは未延伸の糸
条A′に集束される。他方の紡糸口金2から紡糸された
フィラメント群Bは、前記冷却部で冷却された後、同冷
却部の下流側に配された筒状加熱帯域4において加熱延
伸処理が施される。その後、加熱延伸されたフィラメン
ト群Bは更に下流側に配された油剤付与装置5により油
剤が付与されると共に糸条B′に集束される。
【0055】未延伸の糸条A′は、油剤が付与された
後、摩擦係数が0.6以上のローラ面を有する第1引取
ローラ6で引き取られ、更に摩擦係数が0.4以下のロ
ーラ面を有する第2引取ローラ7へと送られる。前記第
2引取ローラ7は前記第1引取ローラ6と同一か或いは
それ以上の引取り速度に設定される。また、前記第1引
取ローラ6又は第2引取ローラ7のいずれか、或いは第
1及び第2ローラ6,7の双方が、加熱ローラとなって
いる。
【0056】一方、加熱延伸が施された糸条B′は第3
引取ローラ8で引き取られ、続いて前記第2引取ローラ
7へと送られる。前記第3引取ローラ8は巻取機10の
巻取り速度2500〜4500m/分の間で安定して紡
糸可能な速度に設定されており、従って前記糸条B′は
前記第3引取ローラ8と前記第2引取ローラ7との間で
は延伸等のいかなる処理も施されることがない。また、
前記第2引取ローラ7が加熱されている場合であっても
既に糸条B′はかかるローラ7へ至る前に加熱延伸が施
されているため、前記第2引取ローラ7により前記糸条
B′が加熱されても物性に格別な影響はない。
【0057】太細斑が形成された未延伸の糸条A′と加
熱延伸された糸条B′とは、第1引取ローラ6及び第3
引取ローラ8と第2引取ローラ7との間に配された交絡
処理装置9により交絡処理が施されて交絡糸条に形成さ
れ、更に巻取り機10により所定の巻取り速度で巻き取
られる。
【0058】本発明の第1の構成にあっては、前記第1
引取ローラ6は引取り速度が4500m/分以下に設定
されており、前記第2引取ローラ7は前記第1引取ロー
ラ6と同一か或いは速い引取り速度で、且つ安定に製糸
可能な引取り速度に設定されている。更に、前記第1引
取ローラ6のみを加熱ローラとする場合は、前記第1引
取ローラ6の温度を120〜250℃に設定する。ま
た、前記第2引取ローラ7のみを加熱ローラとする場合
は、前記第2引取ローラ7の温度を140〜250℃に
設定する。第1及び第2引取ローラ6,7の双方を加熱
ローラとする場合には、一方の引取ローラを上述の各ロ
ーラの温度範囲に設定し、他方の引取ローラを250℃
以下で室温より高温に設定する。また、前記巻取り機1
0は、巻取り張力が0.05〜0.3g/dtexにな
るよう、巻取り速度を2500m/分以上に調整され
る。
【0059】本発明の第2の構成にあっては、加熱ロー
ラである前記第1引取ローラ6及び/又は前記第2引取
ローラ7の温度を250℃以下に設定している。更に、
前記第1引取ローラ6を加熱ローラとする場合には、温
度を120〜250℃、好ましくは120〜230℃に
設定する。また、前記第2引取ローラ7を加熱ローラと
する場合は、前記第2引取ローラ7の温度を140〜2
50℃、好ましくは140〜230℃に設定する。ま
た、前記巻取り機10は巻取り速度が2500〜400
0m/分に調整される。
【0060】なお、本発明の第1の構成及び第2の構成
のいずれにあっても、上述したポリエステル混繊糸の紡
糸装置を用いて紡糸すると、例えば、前記第2引取ロー
ラ7は前記第1引取ローラ6以上の引取り速度に設定し
た場合には、前記未延伸の糸条A′は前記第1引取ロー
ラ6と第2引取ローラ7との間で張力を受けた状態で、
加熱されて収縮しようとする。このとき、前記糸条A′
は摩擦係数の低いローラ面を有する第2引取ローラ7の
表面でランダムにスリップし、糸条A′に働く張力が微
妙に変化しながら加熱されるため、糸条A′の繊維長手
方向にランダムに収縮が生じ、太細斑が形成される。こ
のとき、第1引取ローラ6のみを加熱ローラとするか、
第2引取ローラ7のみを加熱ローラとするか、或いは第
1及び第2引取ローラ6,7の両方を加熱ローラとする
かにより、前記第2引取ローラ7の表面でのスリップ状
態が異なり、糸条A′に働く張力を変更することができ
る。
【0061】更に、第1引取ローラ6のみを加熱ローラ
とする場合は、未延伸の糸条A′に形成された太部及び
細部の長さがランダムになり、糸条A′は繊維長手方向
における太部及び細部の分散もランダムな形態の太細糸
となる。第2引取ローラ7のみを加熱ローラとする場合
は、糸条A′に形成された太部の長さが長く、細部の長
さが短くなり、糸条A′は繊維長手方向における太部の
占める割合が大きい形態の太細糸となる。また、第1及
び第2引取ローラ6,7の両方を加熱ローラとする場合
は、糸条A′に形成された太部及び細部の長さがランダ
ムになり、糸条A′の繊維長手方向の太部及び細部の分
散も、上述した第1引取ローラ6のみを加熱ローラとす
る場合よりもさらにランダムな形態の太細糸となる。
【0062】このように第1及び第2引取ローラ6,7
の加熱の有無により、加熱延伸を行わずに集束した前記
未延伸の糸条A′の太細形態を容易に種々に変更するこ
とができ、加熱延伸された糸条B′と混繊した混繊糸に
ソフトな風合い及び種々の太細パターンを付与できる。
【0063】なお、上述の混繊糸製造装置では2つの紡
糸口金を用いているが、更に多数の紡糸口金を使用して
多種のポリエステルフィラメント群を紡糸することも可
能である。その場合には、1以上のポリエステルフィラ
メント群を上述の糸条Aの工程により、1以上の他のポ
リエステルフィラメント群を上述の糸条Bの工程により
処理し、得られた複数の糸条を前記交絡付与装置9によ
り交絡して巻き取り、混繊糸を製造する。
【0064】また、上述の混繊糸製造装置では2種の糸
条A′と糸条B′とを交絡処理装置9により交絡した
後、共通の第2引取ローラ7により引き取っているが、
それぞれ別個の第2引取ローラで引き取った後、交絡処
理装置9により交絡することもできる。
【0065】更に、本発明の第2の構成にあっては、上
述の紡糸装置により巻き取られた混繊糸に、更にポリエ
ステルのガラス転移温度以上の加熱下、好ましくはガラ
ス転移温度以上120℃以下の加熱下で、定長熱処理を
施す。なお、この定長熱処理は前記混繊糸に撚り止めセ
ットを施す際や、サイジング工程において同時に行うこ
とができる。或いは、前記混繊糸を布帛に織編成した後
に行うこともできる。
【0066】以下、本発明の第1の構成及び第2の構成
を備えたポリエステル混繊糸の製造方法によって製造さ
れた混繊糸について、それぞれ、具体的な実施例及び比
較例を挙げて説明する。
【0067】なお、以下の各実施例及び比較例での各特
性値の測定、評価は次に示す方法により行った。 <太細糸の太細斑パターン>太細斑を有する糸条A′を
加熱延伸された糸条B′と交絡せずに単独で巻き取り、
得られた太細糸A′を筒編みにして、染料としてテラシ
ール(日本チバガイギー(株)製分散染料)を用い染色
した後、濃淡のコントラストを目視評価した。
【0068】<引取ローラのローラ面の摩擦係数>引取
ローラに1/2周だけ糸を接触させ、ローラ入口側の張
力を20gとした状態で1300m/分の速度で糸を走
行させたときの出口側の張力を測定し、次式から摩擦係
数μを求めた。また糸には油剤を滴下し濡れた状態で測
定を行った。 μ=(InT1 −InT2 )/π なお、上記式においてμは摩擦係数、T1 はローラ入口
側の張力(g)、T2はローラ出口側の張力(g)であ
る。
【0069】<布帛風合い>第1の構成を備えた製造方
法により製造された実施例及びその比較例にあっては、
得られた混繊糸により平織りの織物を形成した後、2重
量%のNaOH溶液により100℃、90分の減量処理
を施した後、更に130℃、60分間の染色処理を施
し、次いで150℃、1分間の乾熱処理を行い、これに
よって得られた布帛の風合いを評価した。第2の構成を
備えた製造方法により製造された実施例及びその比較例
にあっては、太細斑を有する未延伸の糸条A′と加熱延
伸された糸条B′とを交絡して得られた混繊糸により平
織りの織物を形成した後、この織物を枠に固定して定長
状態として表2に示す条件で定長熱処理を施した。それ
により得られた布帛を上述の第1の構成と同様に2重量
%のNaOH溶液により100℃、90分の減量処理を
施した後、更に130℃、60分間の染色処理を施し、
次いで150℃、1分間の乾熱処理を行い、これによっ
て得られた布帛の風合いを評価した。
【0070】<伸長率>自発伸長性の指標として、伸長
率を測定した。前記伸長率は、太細斑を有する糸条A′
を加熱延伸された糸条B′と交絡せずに単独で巻き取
り、得られた太細糸A′を一定の長さに固定した状態で
表2に示す条件で定長熱処理を施した後、熱機械的分析
装置(セイコー電子株式会社製 TMA120C)によ
り応力一定で30℃から230℃まで昇温した場合の、
前記太細糸A′の長さの変化を測定し、150℃におけ
る伸長率を次式より求めた。 伸長率=(L1 −L0 )/L0 ×100 % 但し、上記式のL0 は室温での試料(太細糸A′)の長
さ、L1 は150℃での試料(太細糸A′)の長さであ
る。
【0071】以下、本発明の第1の構成を備えたポリエ
ステル混繊糸の製造方法により製造された実施例1〜5
と、その比較例1〜7とについて説明する。
【0072】実施例1〜5及び比較例1〜7はいずれ
も、上述した図1に示す製造装置において第1引取ロー
ラ6、第2引取ローラ7、及び第3引取ローラ8を表1
に示す条件に設定して紡糸した。285℃で溶融した固
有粘度が0.72dl/ gのポリエチレンテレフタレー
トを、孔径0.25mmの吐出孔を36個有する紡糸口
金1及び紡糸口金2を使用し、それぞれ50dtexの
フィラメントを吐出した。なお、実施例3及び比較例
2,3では、後に加熱延伸を行わないポリエステルフィ
ラメント群Aについては、それぞれ75dtexのフィ
ラメントを吐出した。更に、紡糸口金1,2の下流側に
1mの範囲で設けた冷却部において温度23℃、風速
0.3m/分の冷却風により口金1,2から吐出された
フィラメント群を冷却し、油剤付与装置により油剤を付
与して糸条A′,B′に集束した。その後、第1〜第3
引取ローラにより引き取った後、交絡処理装置によりエ
ア圧400kpaで糸条A′,B′に交絡処理を施し、
巻き取った。
【0073】
【表1】
【0074】(実施例1及び2、比較例1)第1引取ロ
ーラ及び第2引取ローラの温度は各実施例及び比較例で
同一温度に設定し、前記第1引取ローラの引取り速度を
変更して比較した。なお、第1引取ローラの引取り速度
に合わせて第2及び第3引取ローラの引取り速度も適宜
変更した。その結果、第1引取ローラの引取り速度が4
500m/分を超える5000m/分である比較例1
は、得られた太細糸の太部と細部とのコントラストが弱
く、太細糸としての特徴が小さいものとなり、得られた
混繊糸を布帛とした場合に膨らみ感が小さい。
【0075】(実施例3、比較例2及び3)第1〜第3
引取ローラの引取り速度及び温度を各実施例及び比較例
で同一に設定し、第1及び第2引取ローラのローラ面の
摩擦係数を表1に示す条件に変更して混繊糸を得た。比
較例2は第1引取ローラの摩擦係数が0.6未満である
ため、ローラ表面での糸揺れが大きく、ローラヘの巻き
付き、糸切れが発生して製糸安定性が低下する。また、
比較例3では第2引取ローラの摩擦係数が0.4を超え
るため、糸条A′に明瞭な太細斑が形成されず、糸条
A′は太細糸とはならずに布帛のソフト感も向上しな
い。
【0076】(実施例4、比較例4〜6)第1及び第2
引取ローラの温度を表1に示す条件に変更して混繊糸を
得た。比較例4は加熱ローラである第1引取ローラの温
度が低すぎるため、また比較例6は第1及び第2引取ロ
ーラを加熱ローラとしているが、いずれかを本発明の温
度範囲内の高温としていないため、未延伸の糸条A′に
は明瞭な太細斑が形成されずに太細糸とはならず、風合
いも改善されない。また、比較例5は加熱ローラである
第2引取ローラの温度が高すぎるため、毛羽や糸切れが
発生して製糸安定性が悪くなる。
【0077】(実施例5、比較例7)巻取り速度を表1
に示す条件に変更して混繊糸を得た。比較例7は巻取り
速度が2500m/分未満であるため、加熱延伸が施さ
れた糸条B′の繊維構造が十分に形成されず、得られた
混繊糸の伸度及び沸水収縮が高くなり、その布帛は硬い
風合いとなる。
【0078】次に、本発明の第2の構成を備えたポリエ
ステル混繊糸の製造方法により製造された実施例6〜8
と、その比較例8〜15とについて説明する。
【0079】実施例6〜8及び比較例8〜15はいずれ
も、上述した図1に示す製造装置を用いて、第1、第2
及び第3引取ローラを表2に示す条件に設定して紡糸し
た。285℃で溶融した固有粘度が0.72dl/ gの
ポリエチレンテレフタレートを、加熱延伸を行わないポ
リエステルフィラメント群Aは、孔径0.25mmの吐
出孔を36個有する紡糸口金1から80dtexのフィ
ラメントとして吐出した。一方、加熱延伸されるポリエ
ステルフィラメント群Bは、孔径0.25mmの吐出孔
を18個有する紡糸口金2から35dtexのフィラメ
ントとして吐出された。その後、前記紡糸口金1,2の
それぞれの直下位置に1mの領域で配された冷却装置に
より、23℃、風速0.3m/秒の冷風を吹き付けて前
記フィラメント群A,Bを冷却した。
【0080】次いで、前記フィラメント群Aは油剤付与
装置3により油剤を付与して集束させて未延伸糸条A′
を形成し、第1引取ローラ6で引き取った。一方、前記
フィラメント群Bは200℃の加熱筒4を通過させて加
熱延伸した後に、油剤付与装置5により油剤を付与して
集束させ加熱延伸糸条B′を形成し、第3引取ローラ8
で引き取った。引き続いて、前記未延伸糸条A′と前記
加熱延伸糸条B′とに交絡付与装置9によりエア圧4k
paにて流体交絡処理を施し、更に、第2引取ローラ7
を経て巻取り機10により巻き取り、未延伸糸条A′と
加熱延伸糸条B′とからなる混繊糸を得た。
【0081】
【表2】
【0082】(実施例6〜実施例8)本発明の第2の構
成を備えた製造方法により製造された実施例6〜8のポ
リエステル混繊糸は、太細斑をもつ未延伸の糸条A′が
伸長率が2.3〜4.2と十分な自発伸長性をもつ伸長
糸であるため、後の熱処理により太細斑パターンの発現
性が向上し、それに伴ってソフト感や膨らみ感に優れた
ものである。また、得られた布帛も風合いに優れたもの
である。
【0083】(比較例8〜比較例15)比較例8は、未
延伸の糸条A′を引き取る第1引取ローラのローラ面の
摩擦係数が0.6未満であるため、同ローラ上での前記
糸条A′の把持力が小さく、ローラへの巻き付きや糸切
れが発生し、製糸安定性が悪い。また、比較例9は、未
延伸の糸条A′を引き取る第2引取ローラのローラ面は
摩擦係数が0.4を超えるため、前記糸条A′に目的と
する太細斑を付与することができず、膨らみ感が不足す
る。
【0084】比較例10は、未延伸の糸条A′を引き取
る第1引き取りローラ及び第2引取ローラの何れも加熱
ローラとしていないため、前記糸条A′には目的とする
太細斑が発生せず、膨らみ感が不足する。比較例11に
おいては、未延伸の糸条A′を引き取る第1引取ローラ
の温度が250℃を越えるため、未延伸の糸条A′は第
2引取ローラ上での糸揺れが大きくなり製糸安定性が悪
く、毛羽や糸切れが発生する。また、比較例12は、未
延伸の糸条A′を引き取る第2引取ローラの温度が25
0℃を越えるため、前記糸条A′の糸切れや融着などが
発生し製糸安定性が悪くなる。
【0085】比較例13においては、未延伸の糸条A′
と加熱延伸されたB′とを交絡して巻き取るに際し、巻
取り速度が2500m/分未満であるため、得られた混
繊糸を布帛としたときの布帛の風合いが硬いものにな
る。また、比較例14は、未延伸の糸条A′と加熱延伸
されたB′とを交絡して巻き取るに際し、巻取り速度が
4000m/分を越えているため、自発伸長性が低下し
て収縮性を示すようになり、ソフトで膨らみのある良好
な風合いが得られない。
【0086】比較例15においては、定長熱処理の温度
がポリエステルのガラス転移温度未満であるために、未
延伸の糸条A′には自発伸長性を付与することができ
ず、同糸条A′が収縮性をもつ糸条となってしまうた
め、得られた混繊糸からなる布帛は膨らみ感に劣るもの
となる。
【0087】
【発明の効果】本発明の第1の構成を備えた製造方法に
よれば、溶融紡糸した未延伸糸を一旦巻き取ることなく
太細斑を形成した糸条と、溶融紡糸して加熱延伸した糸
条とを、連続して交絡処理し、一工程で太細糸を含むポ
リエステル混繊糸を容易に且つ安定して製造することが
できる。また、本発明により得られたポリエステル混繊
糸を布帛としたときに、ソフト感や膨らみ感、色差等の
優れた風合いを付与することができることから、衣料用
素材として好適に用いられる。
【0088】本発明の第2の構成を備えた製造方法によ
れば、太細斑をもつ糸条と加熱延伸した糸条とを交絡し
て得られた混繊糸に、更に定長熱処理を施すことによ
り、得られた混繊糸は太細斑を形成した糸条が自発伸長
性をもつ伸長糸となるため、その後の熱処理によるソフ
ト感や膨らみ感の発現性が著しく向上し、色差等の風合
いが更に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の構成を備えたポリエステル混繊
糸の製造方法及び第2の構成を備えた製造方法において
共通に使用される好適な製造装置を示す概略図である。
【符号の説明】
1 紡糸口金 2 紡糸口金 3 油剤付与装置 4 筒状加熱帯域 5 油剤付与装置 6 第1引取ローラー 7 第2引取ローラー 8 第3引取ローラー 9 交絡処理装置 10 巻取り機 A 第1フィラメント群 A′ 未延伸の糸条 B 第2フィラメント群 B′ 加熱延伸された糸条
【手続補正書】
【提出日】平成11年3月8日(1999.3.8)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正内容】
【0027】即ち、紡糸口金から吐出されたポリエステ
ルフィラメント群(A) に加熱延伸を行うことなく集束し
て得られた未延伸の糸条(A′) を、巻取り速度2500
〜4000m/分で巻き取ることによって、前記未延伸
の糸条(A′) は、結晶と、非晶と、それらの中間の
状態にある配向中間とを有した繊維構造となってい
る。かかる繊維構造をもつ前記未延伸の糸条(A′) にポ
リエステルのガラス転移温度以上の加熱下での定長熱処
理を施すことによって、前記未延伸の糸条(A′)の前記
非晶内における内部の歪みは緩和されるが、前記配向
中間は結晶化が完了していない状態で残ることにな
る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正内容】
【0028】この結晶化が不完全な前記配向中間は更
に熱履歴を受けると結晶化が進み、このときに前記未延
伸の糸条(A′) は自発伸長するものと考えられる。この
ように、前記未延伸の糸条(A′) は自発伸長性をもつ伸
長糸となり、かかる伸長糸と収縮糸とから構成される前
記ポリエステル混繊糸は上述の製造方法により製造され
た後、更に加熱処理が施されると、同加熱処理の際に受
る熱履歴によって、前記伸長糸は上記配向中間の結
晶化が進み、自発伸長し、一方で前記収縮糸は熱収縮す
るため、前記ポリエステル混繊糸からなる布帛には、ソ
フトで膨らみのある風合いが付与される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正内容】
【0034】更に、前記定長熱処理はポリエステルのガ
ラス転移温度以上120℃以下の加熱温度下でなされる
ことが好ましい。処理温度がポリエステルのガラス転移
温度未満であると、太細斑を有する前記未延伸の糸条
(A′) における内部歪みが緩和されないままで残るため
に、前記糸条(A′) が後に熱履歴を受けたときに自発伸
長性を示すことなく収縮してしまう。一方、処理温度が
120℃を越えると、太細斑を有する前記未延伸の糸条
(A′) における配向中間の結晶化が進んで安定な構造
になるために、前記糸条(A′) が後工程で熱履歴を受け
たときの自発伸長性能が小さくなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正内容】
【0035】なお、定長熱処理ではなく前記未延伸の糸
条(A′) と前記加熱延伸された糸条(B′) とが自由に収
縮し得る状態でポリエステルのガラス転移温度以上〜1
20℃以下の加熱下での熱処理を行うと、前記未延伸の
糸条(A′) は前記加熱延伸された糸条(B′) よりも熱収
縮率が大きくなっているために、前記未延伸の糸条
(A′) が芯側に位置するようになってしまい、しかも太
細斑を有する同糸条(A′)は非晶のみでなく前記配向
中間の歪みまでもが緩和されて安定な構造となるため
に、同糸条(A′) は後に熱履歴を受けたときに十分な自
発伸長性を示さなくなる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正内容】
【0080】次いで、前記フィラメント群Aは油剤付与
装置3により油剤を付与して集束させて未延伸糸条A′
を形成し、第1引取ローラ6で引き取った。一方、前記
フィラメント群Bは200℃の加熱筒4を通過させて加
熱延伸した後に、油剤付与装置5により油剤を付与して
集束させ加熱延伸糸条B′を形成し、第3引取ローラ8
で引き取った。引き続いて、前記未延伸糸条A′と前記
加熱延伸糸条B′とに交絡付与装置9により流体交絡処
理を施し、更に、第2引取ローラ7を経て巻取り機10
により巻き取り、未延伸糸条A′と加熱延伸糸条B′と
からなる混繊糸を得た。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数のポリエステルフィラメント群を溶
    融紡糸し、各フィラメント群を冷却する工程、 1以上のフィラメント群(A) を加熱延伸せずに各フィラ
    メント群(A) ごとに未延伸の糸条(A′) に集束する工
    程、 他のフィラメント群(B) を加熱延伸した後、各フィラメ
    ント群(B) ごとに加熱延伸された糸条(B′) に集束する
    工程、 前記未延伸の各糸条(A′) を、第1引取ローラと第2引
    取ローラとにより引き取り、太細斑を形成する工程、及
    び太細斑を有する前記未延伸の各糸条(A′) と、前記加
    熱延伸された各糸条(B′) とを交絡した後、交絡糸条を
    巻き取る工程を備えてなり、 前記第1引取ローラのローラ面の摩擦係数が0.6以
    上、前記第2引取ローラのローラ面の摩擦係数が0.4
    以下であり、 前記第1引取ローラ及び/又は第2引取ローラが加熱ロ
    ーラであって、前記第1引取ローラの加熱温度は120
    〜250℃、前記第2引取ローラの加熱温度は140〜
    250℃であり、 前記第1引取ローラの引取り速度が4500m/分以下
    であり、 前記交絡糸条の巻き取り速度が2500m/分以上であ
    る、ことを特徴とするポリエステル混繊糸の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記第2引取ローラの引取り速度が前記
    第1引取ローラの引取り速度以上である請求項1記載の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 複数のポリエステルフィラメント群を溶
    融紡糸し、各フィラメント群を冷却する工程、 1以上のフィラメント群(A) を加熱延伸せずに各フィラ
    メント群ごとに未延伸の糸条(A′) に集束する工程、 他のフィラメント群(B) を加熱延伸した後、各フィラメ
    ント群ごとに加熱延伸された糸条(B′) に集束する工
    程、 前記未延伸の各糸条(A′) を、第1引取ローラと第2引
    取ローラとにより引き取り、太細斑を形成する工程、及
    び太細斑を有する前記未延伸の各糸条(A′) と、前記加
    熱延伸された各糸条(B′) とを交絡した後、交絡糸条を
    巻き取る工程を備えてなり、 前記第1引取ローラのローラ面の摩擦係数が0.6以
    上、前記第2引取ローラのローラ面の摩擦係数が0.4
    以下であり、 前記第1引取ローラ及び/又は第2引取ローラは加熱温
    度が250℃以下の加熱ローラであり、 前記交絡糸条を巻取り速度2500〜4000m/分で
    巻き取った後、同交絡糸条にポリエステルのガラス転移
    温度以上の加熱温度下で定長熱処理を施し、前記未延伸
    の糸条(A′) は自発伸長性を示す伸長糸となり、前記加
    熱延伸された糸条(B′) が収縮糸となることを特徴とす
    るポリエステル混繊糸の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記第1引取ローラが温度120〜23
    0℃の加熱ローラであり、及び/又は前記第2引取ロー
    ラが温度140〜230℃の加熱ローラである請求項3
    記載のポリエステル混繊糸の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記定長熱処理はポリエステルのガラス
    転移温度以上120℃以下の加熱温度下でなされてなる
    請求項3又は4記載のポリエステル混繊糸の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記未延伸の糸条(A′) と、前記加熱延
    伸された糸条(B′) は、下記の式(1)及び式(2)を
    満足してなる請求項3〜5のいずれかに記載のポリエス
    テル混繊糸の製造方法。 D(A′) /D(B′) ≧1・・・(1) 1≦d(A′) ≦6 ・・・(2) 但し、上記式中、D(A′) は前記未延伸の糸条(A′) の
    総繊度、D(B′) は前記加熱延伸された糸条(B′) の総
    繊度、d(A′) は前記未延伸の糸条(A′) の単繊維繊度
    (dtex)である。
  7. 【請求項7】 前記未延伸の糸条(A′) と、前記加熱延
    伸された糸条(B′) とは、流体交絡処理により交絡され
    てなる請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル混
    繊糸の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記複数のポリエステルフィラメント群
    は同一材質のポリエステルである請求項1〜7のいずれ
    かに記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記複数のポリエステルフィラメント群
    の少なくとも1群が他の群とは異なる材質のポリエステ
    ルである請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
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