JP2000051755A - ピエゾ式薬液噴霧装置 - Google Patents

ピエゾ式薬液噴霧装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】使用場面及び状況に応じて薬液噴霧を安定して
行うことのできる、汎用性の高いピエゾ式薬液噴霧装置
を提供すること、並びにかかるピエゾ式薬液噴霧装置に
適した薬液容器を提供すること。 【解決手段】噴霧装置本体に着脱自在に収納される薬液
容器を備え、ピエゾ噴霧部に吸液芯を用いて薬液を供給
するピエゾ式薬液噴霧装置において、該ピエゾ噴霧部及
び吸液芯が前記薬液容器に付設されてなり、薬液容器と
共に噴霧装置本体に着脱自在に収納されることを特徴と
するピエゾ式薬液噴霧装置、並びにピエゾ式薬液噴霧装
置用の薬液容器において、ピエゾ噴霧部及び吸液芯が付
設されてなることを特徴とする薬液容器。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、殺虫、殺ダニ、昆
虫成長阻害、忌避、芳香、消臭、除菌、医療用吸入治療
等を目的とした薬液を放出するためのピエゾ式薬液噴霧
装置に関する。さらに本発明は、ピエゾ式薬液噴霧装置
に好適に用いられる薬液容器に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、薬液等の液体の噴霧方法として、
特表平7−501481号公報等に記載されたピエゾ式
噴霧方法が注目されている。この方法は、液体の噴霧の
ために熱や噴射ガスを必要としない点で、使用性、安全
性及び環境問題の面から好適な液体の噴霧方法といえ、
さらに携帯に便利な電池駆動が行えるという点でも好適
な方法である。そのため、この方法を利用した薬液の噴
霧装置(ピエゾ式薬液噴霧装置)の開発も行われている
(特開平4−298262号公報等)。
【0003】上記のような利点が多いことから、ピエゾ
式噴霧方法には種々の使用場面、使用状況についての展
開が期待される。しかしながら、以下に示す理由から、
ピエゾ式薬液噴霧装置は汎用性に乏しく、そのため、消
費者はそれぞれの目的に対応して多くの異なる商品群か
ら型式の異なる多数の商品を買い求めざるを得ないのが
実情である。
【0004】即ち、1)振動する部材と該部材に液体を
供給する部材との間隔又は接触状態が、噴霧する薬液の
種類を変更する際の薬液容器の着脱によっても変動しな
いこと、2)異なる種類の薬液を使用する場合におけ
る、例えば殺虫剤を使用した後に人体塗布用の忌避剤
等、目的の異なる薬液を使用する場合における、先に使
用した薬液の装置内への残留の程度が充分に小さいこ
と、3)薬液の効果を充分に発揮させるために、用いる
薬液の種類に応じて薬液の噴霧量、噴霧パターン、噴霧
粒子の粒子径等を調節し得る自由度を有すること、等の
事項が、従来のピエゾ式薬液噴霧装置では達成され得な
い、という理由からである。
【0005】取り分け、1)の事項はピエゾ式薬液噴霧
装置において重要である。というのは、振動する部材と
該部材に液体を供給する部材とが弱接触しない程度に広
い間隔を有する場合、振動する部材への液体の供給がう
まく行われず、噴霧粒子そのものが発生しないからであ
り、また、両部材が強く接触し過ぎる場合、振動する部
材の所期の振動を妨げたり、振動する部材の寿命が短く
なる傾向があるからである。したがって、ピエゾ式薬液
噴霧装置による液体の噴霧の安定化を図るためには、使
用条件等に左右されることなく、両部材の間隔又は接触
状態が常に一定であることが求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目
的は、使用場面及び状況に応じて薬液噴霧を安定して行
うことのできる、汎用性の高いピエゾ式薬液噴霧装置を
提供することにある。さらに本発明の目的は、かかるピ
エゾ式薬液噴霧装置に適した薬液容器を提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 噴霧装置本体に着脱自在に収納される薬液容
器を備え、ピエゾ噴霧部に吸液芯を用いて薬液を供給す
るピエゾ式薬液噴霧装置において、該ピエゾ噴霧部及び
吸液芯が前記薬液容器に付設されてなり、薬液容器と共
に噴霧装置本体に着脱自在に収納されることを特徴とす
るピエゾ式薬液噴霧装置、〔2〕 ピエゾ式薬液噴霧
装置用の薬液容器において、ピエゾ噴霧部及び吸液芯が
付設されてなることを特徴とする薬液容器、に関するも
のである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明のピエゾ式薬液噴霧装置
は、主に、噴霧装置本体と薬液容器とから構成される。
本発明の薬液容器は噴霧装置本体に着脱自在に収納され
る構造であり、さらにピエゾ噴霧部及び吸液芯が付設さ
れてなる。従って、これらピエゾ噴霧部及び吸液芯は、
薬液容器と共に噴霧装置本体に着脱自在に収納される。
【0009】ピエゾ噴霧部としては、少なくとも、ピエ
ゾ発振子と、多数の孔を有する又は網状の振動板又は薄
板とから構成されるものが好ましい。かかる構成のもの
の他に、公知のピエゾ噴霧部を用いることもできる。前
記部材によって構成されるピエゾ噴霧部は、薬液容器の
小型化や電池の駆動時間の長時間化を図ることができ、
部品も安価なことから好ましいものである。ピエゾ噴霧
部における、吸液芯の他端が弱接触する又は接触する部
材としては、具体的には、振動板、薄板又はピエゾ発振
子、さらには薬液通路壁等が挙げられる。
【0010】振動板又は薄板とピエゾ発振子とは直接固
着していても良く、金属基板等を介して間接的に固着し
ていても良い。固着の態様としては、これら部材の形状
にもよるが、その一辺もしくはその周縁をエポキシ接着
剤等で接着する例や、ピエゾ発振子に振動板又は薄板を
載置してその周縁を弾性支持体で取り囲んで一体的に保
持して固着する例等を挙げることができる(例えば、特
表平7−501481号公報、特開平7−63379号
公報、特開平4−298262号公報、実開平5−44
257号公報等が挙げられる。)。
【0011】図1は薬液容器の一態様を示す図である。
本態様は、矩形状のピエゾ発振子2の一端に多孔を有す
る矩形状の振動板1が直接固着されている例である(T
ype1)。ピエゾ発振子2は固定部材15を介して薬
液容器に固定されている。ピエゾ発振子2への電気信号
の供給は、接点部材9を介して行われる。薬液収納部2
2の薬液5は、吸液芯4を経て、ピエゾ噴霧部21の振
動板1に直接的に供給される。図2は薬液容器の一態様
を示す図である。本態様は、円環状のピエゾ発振子2と
多孔を有する円形の振動板1が円環状の金属基板3を介
して固着されている例であり、吸液芯4から振動板1に
直接薬液が供給される(Type2)。図3は薬液容器
の一態様を示す図である。本態様は、円環状のピエゾ発
振子2と多孔を有する円形の振動板1が円環状の金属基
板3を介して固着されている例であり、吸液芯4から振
動板1に微小間隙13を介して間接的に薬液が供給され
る(Type3)。図4は薬液容器の一態様を示す図で
ある。本態様は、円板状のピエゾ発振子2に多孔を有す
る矩形の薄板12が微小間隙13を介して固着されてい
る例であり、吸液芯4から薄板12に微小間隙13を介
して間接的に薬液が供給される(Type4)。
【0012】振動板の孔又は網目形状は特に限定されな
いが、振動板の表裏における開口サイズが、一方が他方
よりも大きい形状が好適である。この開口サイズも特に
限定されないが、例えばφ1〜100μm程度の間で適
宜設定される。また、駆動時の消費電力は5W以下であ
ることが望まれる。
【0013】本発明に用いられる振動板及び薄板の材料
としては、ニッケル、ニッケル化合物、ステンレス等の
金属が好ましい。また、これらの厚さは20〜100μ
mが好ましい。振動板及び薄板は、例えばエレクトロフ
ォーミング等によって製造できる。
【0014】吸液芯は、薬液容器中の薬液を吸収し、ピ
エゾ噴霧部に薬液を伝達するための媒体としての、及び
薬液容器が横転した場合でも薬液がこぼれないようにす
るための簡易栓としての機能を有する部材である。した
がって、本発明における、吸液芯の設けられる位置とし
ては、吸液芯の一端が薬液容器の薬液に接する位置に、
かつ吸液芯の他端がピエゾ噴霧部に弱接触する位置又は
接触する位置が好ましい。
【0015】本発明に用いられる吸液芯としては、ピエ
ゾ式薬液噴霧装置に通常用いられる公知の吸液芯を使用
することができる。取り分け、連通孔を有する多孔質
体、連続気泡を有する樹脂体又は樹脂繊維の集合体から
構成されるものが好ましいものとして例示できる。具体
的には、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリビニルホルマール、ポリ塩化ビニ
ル、ポリスチレン等からなる発泡体(フォーム)、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレー
ト、ナイロン等の樹脂粉末を主成分として成形焼結させ
た有機多孔焼結体、ポリエステル、ポリプロピレン、ナ
イロン、アクリル、レーヨン、ウール等からなるフェル
ト部材、あるいはポリオレフィン繊維、ポリエステル繊
維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、ビニ
ロン繊維、ポリフラール繊維、アラミド繊維等からなる
不織布等が例示できる。さらに、セラミック等の無機粉
体を主成分として成形焼結した無機多孔焼結体等も例示
できる。
【0016】使用場面及び状況に応じた薬液噴霧を行う
ためには、吸液芯は各種薬液を安定してピエゾ噴霧部に
供給することが要求され、さらに種々の噴霧量に対応し
得る薬液供給能力も要求される。したがって、吸液芯と
しては薬液の浸透性が高いものが好ましい。具体的に
は、吸液芯に使用する部材の薬液の吸い上げ速度が8分
間以内のものが好ましく、5分間以内のものがより好ま
しい。さらに、吸液芯の薬液吸い上げ能力としては、4
0mm以上のものが好ましく、より好ましくは50mm
以上のものである。本発明において薬液吸い上げ速度と
は、室温25℃において、薬液中に幅5mm、厚み5m
m、長さ60mmの部材をその下部より10mmの位置
まで浸漬し、薬液面から上方30mmの位置に薬液が到
達するまでの時間を意味する。また、薬液吸い上げ能力
とは、前記吸い上げ速度と同じ方法において、浸漬開始
から60分後に到達した薬液の高さを意味する。ここ
で、吸液芯に用いられる材料が不織布等の薄肉材料であ
って、これらの厚み寸法が確保できないものにあって
は、幅5mm、長さ70mmの部材で厚みは特に規定し
ない。薬液の吸い上げ速度及び吸い上げ能力の測定は、
噴霧しようとする薬液を用いて行う。
【0017】本発明に用いられる吸液芯には、細孔の目
詰まりを防止する観点から、酸化防止剤が配合されてい
てもよい。酸化防止剤の具体例としては、例えば、特開
平5−58806号公報に記載された公知の酸化防止剤
が挙げられる。かかる酸化防止剤は単独で用いても良
く、2種類以上を組み合わせて混合使用しても良い。
【0018】かかる酸化防止剤の配合量は特に限定され
るものではない。なお、吸液芯にはその特性を損なわな
い範囲で紫外線吸収剤、界面活性剤、顔料、色素等の他
の添加剤を配合、処理してもよく、吸液芯の表面を親水
処理してもよい。
【0019】かかる吸液芯は、通常用いられる公知の方
法によって製造することができる。本発明においては、
かかる性質を有する吸液芯を用いることが好ましく、吸
液芯の形状等は特に限定されるものではない。
【0020】本発明においては、吸液芯及びピエゾ噴霧
部は薬液容器に付設されている。ピエゾ噴霧部の薬液容
器への付設の態様は特に限定されるものではなく、薬液
びんと直接的に一体化した態様等が挙げられる。本発明
では、このようにピエゾ噴霧部と吸液芯とを薬液容器に
付設して一体化することにより、薬液容器の着脱の際に
ピエゾ噴霧部と吸液芯との位置が変わることがないた
め、吸液芯の他端とピエゾ噴霧部との間隔又は接触状態
の一定化を図ることができる。したがって、薬液容器の
着脱があっても噴霧を安定的に行うことができる。
【0021】このように、ピエゾ噴霧部と吸液芯とが付
設されて一体化された、本発明の薬液容器を用いること
により、薬液容器の着脱操作が必要な場合、ピエゾ噴霧
部と吸液芯とが付設された薬液容器ごと着脱されるた
め、噴霧される薬液の種類の変更を極めて容易に行うこ
とができる。即ち、この場合、吸液芯、ピエゾ噴霧部ご
と交換されるため、これらの部材における薬液の残留性
を何ら考慮する必要性がなく、薬液の種類の変更によっ
ても高い安全性が確保される。
【0022】かかる構成の薬液容器を用いるピエゾ式薬
液噴霧装置の例を図により説明する。図5は、本発明の
ピエゾ式薬液噴霧装置の一態様の断面図である。図5に
示される装置には、図1に示される薬液容器が装置本体
に収納されている。駆動発振回路6で発生した電気信号
は、接点部材8、9を経てピエゾ発振子2に供給され
る。本装置の動作により、噴霧口14を経て、空間へ薬
液が噴霧される。装置本体にはスリット11が設けられ
ており、薬液の量を容易に確認することができる。
【0023】吸液芯からピエゾ噴霧部への薬液供給につ
いては、吸液芯からピエゾ噴霧部における振動板又は薄
板に直接供給してもよいし、微小な間隙を介して間接的
に供給してもよい。例えば、ピエゾ噴霧部における振動
板に吸液芯から直接薬液を供給する場合は、振動板と吸
液芯の接触状態は、吸液芯の接触部が振動板の振動を妨
げない程度に軽く接触した状態、又は吸液芯と振動板の
間に形成される薬液の液膜が振動板に接触する程度にわ
ずかな間隔を有した状態が好ましい。また、ピエゾ噴霧
部に設けた微小な間隙を介して間接的に薬液を供給する
場合は、例えば前記振動板の下方に微小な間隙で形成さ
れた空間を設け、これに通ずる位置に吸液芯の他端を配
置し、薬液が毛細管現象で該空間に供給される構成とし
てもよい。
【0024】本発明のピエゾ式薬液噴霧装置において、
振動板が具備されたピエゾ噴霧部を用いる態様において
は、ピエゾ噴霧部と吸液芯の他端との接触状態は、該他
端がピエゾ噴霧部に弱接触する程度とすることが好まし
い。ここで「弱接触」とは、吸液芯の他端が振動板又は
ピエゾ発振子の振動を妨げない程度に軽く接触した状
態、又は吸液芯の他端の上面部に形成される薬液の液膜
が振動板等のピエゾ噴霧部に接触する程度にわずかな間
隔を有した状態をいう。このように、ピエゾ噴霧部と吸
液芯の他端とが弱接触することにより、薬液を噴霧する
ための振動板及びピエゾ発振子の振動が妨げられること
なく、吸液芯からピエゾ噴霧部へ薬液が安定供給され
る。
【0025】上記の弱接触における「わずかな間隔」
は、ピエゾ噴霧部の形状や吸液芯の上面部に形成される
薬液の液膜厚さ等に依存し、特に液膜厚さは薬液の表面
張力と吸液芯の表面エネルギーによる影響を受けるため
一概には言えないが、例えば多数の孔が設けられた振動
板の振動幅を最小間隔として、最大間隔は例えば0.5
mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、
0.1mm以下が特に好ましい。また、上記の弱接触に
おいて、ピエゾ噴霧部と吸液芯とが「軽く接触した状
態」である場合、吸液芯が比較的柔軟な材質であるとさ
らに好ましい。
【0026】また、多孔状又は網状の薄板が具備された
ピエゾ噴霧部を有する態様の薬液噴霧装置では、ピエゾ
噴霧部と吸液芯の他端との接触状態を、該他端がピエゾ
噴霧部と接触する程度とする。かかる態様におけるピエ
ゾ噴霧部の具体例としては、特開平4−298262号
公報に開示されているような、円板状のピエゾ発振子の
噴霧部側(例えば上面)に多孔状又は網状の円形薄板が
載置され、これら周縁部分を弾性環状の固定部で一体的
に保持し、この一部に吸液芯の他端が接触するよう配設
されたものが例示される。このとき、該ピエゾ発振子の
噴霧部側と該薄板の下面との間で微小な間隙が形成さ
れ、吸液芯から供給された薬液が該間隙に入って広がっ
ていく。したがって、吸液芯は、該他端がピエゾ噴霧部
に確実に接触していることで安定した薬液供給が可能に
なる。
【0027】本発明の薬液容器には、薬液の液面よりも
高い位置に孔の面積が1mm2 以下のベント孔(開口
部)を設けてもよい。該ベント孔は薬液容器内の圧力を
常に外圧と一定に保つ働きをし、薬液を吸液芯、ひいて
はピエゾ噴霧部に安定供給したり、容器保管時の液漏れ
を防止するために機能するため、かかるベント孔が薬液
容器に設けられた薬液噴霧装置は好ましいものと言え
る。一般にこのような薬液容器においては、気温の上昇
や低気圧の接近等により容器内の圧力が外気圧に対して
上昇し、吸液芯からの薬液供給量が極端に増加したり、
さらには大量の薬液が溢れたりする現象が生じることが
あり、これらを防止するためには1mm2 以下で開口す
る前記ベント孔が有用である。また、放出量を変動させ
て使用する場合、例えば連続的に多量の薬液を放出させ
る場合において、薬液容器の急激な内圧低下による放出
不能を防止する意味でも該ベント孔は有用である。転倒
時のベント孔からの液漏れを防止する観点から、孔の開
口面積は1mm2 以下が好ましい。
【0028】ピエゾ発振子に電気信号を供給するための
駆動発振回路は、所望の噴霧が行えるような回路であれ
ば特に限定されず、公知の回路設計が利用できる。この
ような駆動発振回路は、噴霧装置本体及び薬液容器のい
ずれに設けても良い。噴霧装置本体に該回路が設けられ
た態様においては、噴霧装置本体への薬液容器の装着時
に接点部材を介して接するように、薬液容器側及び噴霧
装置本体側にそれぞれ接点部材が設けられたものが好ま
しい。かかる構成とすることにより、薬液容器の噴霧装
置本体への装着時に、該回路から引き出された噴霧装置
本体側の接点部材が薬液容器側の接点部材と接続し、ピ
エゾ発振子に電気信号が供給される。
【0029】本発明において、駆動発振回路には、薬液
の噴霧量等を自由に調節し得るために、複数の噴霧プロ
グラムが記憶されていることが好ましい。これら複数の
噴霧プログラムとしては、連続的噴霧プログラムと間欠
的噴霧プログラムが例示できる。ここで、連続的噴霧と
は、スイッチ操作時(オン時)に連続的に継続する噴霧
をいい、間欠的噴霧とは、噴霧と休止とが周期的に繰り
返す噴霧をいう。また、複数の噴霧プログラムの選択に
ついては、例えば、切り替えスイッチを人為的に操作し
たり、薬液容器の形状の違いを識別させたり、薬液容器
側に設けた接点部材と噴霧装置本体側に設けた接点部材
の接続箇所の設定によって行うことができる。
【0030】間欠的噴霧の態様においては、噴霧時間及
び/又は休止時間を変動させて単位時間(例えば1時
間)当りの薬液噴霧量を任意設定することができる。ま
た、タイマー機能を併設して、所定時間後に単位時間当
りの噴霧量を変化させたり、噴霧を終了させることもで
きる。
【0031】また、粒子径をピエゾ噴霧部の構成によっ
て制御する場合、ピエゾ噴霧部の構成に対応して、ピエ
ゾ発振子が効果的に振動するように、駆動発振回路の出
力(電圧や周波数)を変動させるような設定にすること
もできる。
【0032】本発明の装置は多種類の薬液に対応できる
ものである。しかもそれだけではなく、噴霧される薬液
の粒子径、噴霧出力、噴霧量及び出力タイミング等を薬
液ごとに設定することにより、噴霧効果を薬液ごとに最
適化することもできる。本発明の装置においては、粒子
径についてはピエゾ発振子の駆動周波数及び電圧、振動
板又は薄板の孔サイズ等を調節することにより、噴霧量
については出力タイミング、粒子径、振動板又は薄板の
孔数及び有効噴霧面積等を調節することにより、出力タ
イミングについては噴霧時間、休止時間等を調節するこ
とにより、所望の程度に設定することができる。
【0033】本発明の薬液噴霧装置を用いることによ
り、噴霧される薬液の粒子径を所望の程度とすることが
できる。噴霧される薬液の好適な粒子径としては、薬液
の効果のみの面から見れば、その種類により異なるた
め、一概には言えない。ただし、所定の薬液を空間に噴
霧する場合において、床面や装置表面を汚染させない観
点からは、粒子径が体積積算分布(体積累積パーセン
ト)で示す90%粒子径で20μm以下になるよう設定
することが好ましい。また、薬液を空間に噴霧するので
はなく、対象物に対して直接塗布して効力を得る場合、
上記の90%粒子径を15μm以上に設定することが好
ましい。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はかかる実施例により何ら制限される
ものではない。
【0035】以下の実施例で用いたピエゾ式薬液噴霧装
置は、噴霧装置本体と該本体に着脱自在に収納される薬
液容器から構成される装置であった。その断面図を図5
に示す。噴霧装置本体には、駆動発振回路6、接点部材
8が設けられていた。薬液容器には吸液芯4、ピエゾ噴
霧部21、接点部材9が設けられていた。また、吸液芯
4とピエゾ噴霧部21の振動板1とは、両者が弱接触す
るように固定されていた。なお、実験で用いた薬液容器
には0.8mm2 のベント孔が設けられていた。吸液芯
4の長さは30mmであった。
【0036】薬液容器のピエゾ噴霧部は図1に示すTy
pe1の構造であった。振動板1には直径数μmの多数
の孔が規則的な配列で設けられていた。該孔は振動板に
おいて、その薬液供給面(裏面)から薬液噴霧面(表
面)に向けて縮径する構造であり、ここでいう孔径は表
面側の開口サイズである。
【0037】ピエゾ発振子2の駆動は電池(DC3V:
図示せず)を使用し、装置内の駆動発振回路6において
周波数113KHz、電圧43Vに制御し、さらに噴霧
タイミング(噴霧時間と休止時間)を調整して以下の試
験を実施した。
【0038】試験例1(実施例1〜7) 前述の噴霧装置本体及び薬液容器において、特性の異な
る吸液芯を用いて噴霧タイミングの変動に対する噴霧安
定性を調査した。試験条件の詳細及び結果を表1に示
す。
【0039】
【表1】
【0040】なお、噴霧薬液は、有効成分としてd・d
−T80−プラレトリン(エトック)を2.0%(w/
v)含有するn−パラフィン溶液であった。このn−パ
ラフィンは炭素数12の脂肪族飽和炭化水素を主に含有
していた。また、噴霧粒子の90%粒子径が10〜30
μmとなるように振動板の孔サイズを設定し、噴霧の休
止時間を変動させることにより噴霧タイミングの調整を
図った。休止時間は約30秒、約15秒及び0秒とし、
このときの単位時間(1分間)当りの噴霧容量が、それ
ぞれ約2μL、約4μL及び約300μLになるような
構成とした。それぞれの条件で噴霧させ、継続的に安定
した噴霧が得られたものを○、噴霧しなくなったり、極
端な噴霧量低下を生じたものを×として評価した。
【0041】試験例2(実施例8〜13) 試験例1の薬液を用い、粒子径、試験空間、噴霧間隔
(噴霧から次の噴霧までの時間)及び単位時間当りの処
理薬剤量(ai.量)を表2に示す条件に設定し、居室
におけるアカイエカに対する空間効力を調査した。
【0042】
【表2】
【0043】ここで、粒子径は噴霧粒子の体積積算分布
における90%粒子径で示し、粒子径は主に薬液容器に
設けた振動板の孔サイズによって調整される構成とし
た。粒子径は、ピエゾ噴霧部(振動板)の約50mm上
方において、レーザー光散乱による粒子分布測定装置
(LDSA−1400A:東日コンピューターアプリケ
ーションズ(株))を用いて測定した。
【0044】そして、効力評価は8畳(約30m3 )又
は16畳(約60m3 )の居室試験室において、各条件
で装置を作動させてから30分後に100個体の供試虫
(アカイエカ)を放ち、蚊を放ってからの経時的なノッ
クダウン数をカウントした結果からBissのProb
it法によって求めたKT50値を比較することで行っ
た。KT50値は、供試虫の50%をノックダウンさせる
のに要する時間を示し、この数値が小さいほどノックダ
ウン効果、つまり対象害虫の防除効果が高いことを意味
する。また、それぞれの条件で360時間噴霧させたと
きの装置表面の汚染状況を目視で確認し、汚染をほとん
ど認めないものを○、わずかに薬液の付着を有する汚染
を△、ベタつくほどの汚染を×として評価した。
【0045】試験例3(実施例14、15) 噴霧薬液としては、有効成分としてd−T80−シフェ
ノトリン(ゴキラート)を1.5%(w/v)含有する
n−パラフィン溶液を用いた。このn−パラフィンは炭
素数12の脂肪族飽和炭化水素を主に含有していた。こ
こでは供試虫をゴキブリ(クロゴキブリとチャバネゴキ
ブリ)とし、試験例2と同様に、表3に示す条件に設定
して試験した。
【0046】試験は8畳(約30m3 )において、供試
虫を入れたポリカップ(逃亡を防ぐため内面にワセリン
を塗布したもの)を部屋の四隅に配置し、その上から6
cm×6cmの穴を設けた箱型覆(30cm×30cm
×48cm)を被せた。ノックダウン数の測定ポイント
は試験開始から6時間後と12時間後とした。
【0047】
【表3】
【0048】上記の結果から、 (1)吸い上げ速度が8分間以内の吸液芯を用いること
で、噴霧タイミングの変動に対する噴霧安定性が向上し
た。 (2)空間噴霧時の最適粒子径としては、効力から推定
される粒子拡散性及び汚染性の点で体積積算分布におけ
る90%粒子径が20μm以下であることが好ましいこ
とが分かった。 (3)同一薬剤の同一薬量処理においては、空間が広が
れば当然効力も低下するが、噴霧量を適切に設定するこ
とで使用空間(広さ)が異なる場合においてもほぼ同等
の効力を得ることができた。 (4)ゴキブリに対する効力において、試験例2で用い
た薬剤(エトック)では期待する効力は得られなかっ
た。薬液を用途に応じて適宜設定することで同一の装置
を用いて、期待する効力を得ることができた。
【0049】試験例4(実施例16、比較例1) 実施例1で用いた装置(実施例16)、及びピエゾ噴霧
部を噴霧装置本体側に設けた以外は実施例1と同じ装置
(比較例1)を用いて、以下に示す薬液噴霧試験を行っ
た。比較例1では、吸液芯とピエゾ噴霧部とは、初回取
り付け時において、薬液容器を噴霧装置本体内の所定の
位置に装着した際に、両者が弱接触するようにその間隔
を調整した。
【0050】薬液容器を噴霧装置本体に装着して装置を
24時間作動させ、初回の薬液噴霧量を求めた。次い
で、薬液容器を噴霧装置本体から取り外し、再び取り付
ける操作を繰り返した。これを所定回数(10回、20
回、30回)行った時点で、装置を24時間作動させて
薬液噴霧量を求めた。それぞれについて装置を24時間
作動させた時の薬液減少重量から1時間当りの噴霧量
(容量)を算出した。
【0051】試験においては、初期の1時間当りの噴霧
量を約30μLに設定した。結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】表4より、薬液容器の着脱にかかわらず、
本発明の装置の噴霧量は非常に安定していることが分か
った。一方、比較例の装置は、薬液容器の着脱によって
噴霧量が大きくばらついていた。これは、本発明の装置
は、薬液容器の着脱にかかわらず、ピエゾ噴霧部と吸液
芯との接触状態が常に一定であるのに対し、比較例の装
置は薬液容器の着脱毎にその接触状態にぶれが生じるこ
とによるものと思われる。
【0054】
【発明の効果】本発明のピエゾ式薬液噴霧装置は、吸液
芯及びピエゾ噴霧部が共に薬液容器に付設され一体化さ
れているため、薬液容器の着脱操作や交換を伴っても、
ピエゾ噴霧部と吸液芯との位置が変わることがないた
め、安定した薬液の噴霧が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、薬液容器の一態様を示す断面図であ
る。
【図2】図2は、薬液容器の一態様を示す断面図であ
る。
【図3】図3は、薬液容器の一態様を示す断面図であ
る。
【図4】図4は、薬液容器の一態様を示す断面図であ
る。
【図5】図5は、本発明のピエゾ式薬液噴霧装置の一態
様の断面図である。
【符号の説明】
1 振動板 2 ピエゾ発振子 3 金属基板 4 吸液芯 5 薬液 6 駆動発振回路 8 (噴霧装置本体側の)接点部材 9 (薬液容器側の)接点部材 11 スリット 12 薄板 13 微小間隙 14 噴霧口 15 固定部材 21 ピエゾ噴霧部 22 薬液収納部

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 噴霧装置本体に着脱自在に収納される薬
    液容器を備え、ピエゾ噴霧部に吸液芯を用いて薬液を供
    給するピエゾ式薬液噴霧装置において、該ピエゾ噴霧部
    及び吸液芯が前記薬液容器に付設されてなり、薬液容器
    と共に噴霧装置本体に着脱自在に収納されることを特徴
    とするピエゾ式薬液噴霧装置。
  2. 【請求項2】 吸液芯の一端が薬液容器の薬液に接する
    位置に、かつ吸液芯の他端がピエゾ噴霧部に弱接触する
    位置又は接触する位置に設けられてなる、請求項1記載
    の薬液噴霧装置。
  3. 【請求項3】 吸液芯に用いる部材の薬液吸い上げ速度
    が8分間以内である請求項1又は2記載の薬液噴霧装
    置。
  4. 【請求項4】 ピエゾ噴霧部が少なくともピエゾ発振子
    と、多数の孔を有する又は網状の振動板又は薄板とから
    構成される請求項1〜3いずれか記載の薬液噴霧装置。
  5. 【請求項5】 噴霧装置本体に駆動発振回路が設けら
    れ、かつ該噴霧装置本体への薬液容器の装着時に接点部
    材を介して接するように、薬液容器側及び噴霧装置本体
    側にそれぞれ接点部材が設けられてなる請求項1〜4い
    ずれか記載の薬液噴霧装置。
  6. 【請求項6】 駆動発振回路に複数の噴霧プログラムが
    記憶されている請求項5記載の薬液噴霧装置。
  7. 【請求項7】 ピエゾ式薬液噴霧装置用の薬液容器にお
    いて、ピエゾ噴霧部及び吸液芯が付設されてなることを
    特徴とする薬液容器。
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