JP2000048765A - 飛行時間型質量分析計 - Google Patents

飛行時間型質量分析計

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JP2000048765A
JP2000048765A JP10209678A JP20967898A JP2000048765A JP 2000048765 A JP2000048765 A JP 2000048765A JP 10209678 A JP10209678 A JP 10209678A JP 20967898 A JP20967898 A JP 20967898A JP 2000048765 A JP2000048765 A JP 2000048765A
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ion
ions
pulse
spectrum
sequence
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Yoshihiro Nukina
義裕 貫名
Hiroshi Kato
裕志 加藤
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Jeol Ltd
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/0027Methods for using particle spectrometers
    • H01J49/0031Step by step routines describing the use of the apparatus
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/26Mass spectrometers or separator tubes
    • H01J49/34Dynamic spectrometers
    • H01J49/40Time-of-flight spectrometers
    • H01J49/403Time-of-flight spectrometers characterised by the acceleration optics and/or the extraction fields

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Abstract

(57)【要約】 【課題】試料のマススペクトルをより正確に再現でき、
疑似ピークを混在させないようにするとともに、デュー
ティサイクルを大幅に向上させる。 【解決手段】PNシーケンス発生器15の±1の符号の疑
似ランダムパルス列により第1、第2パルス電源18,19
がイオン押出パルス電圧を発生し、第1、第2グリッド
20,21がイオン溜13から一定サイクルでイオンを吐き出
す。第1、第2TOFMS分光部22,23はイオンを加速し、第
1、第2イオン検出器24,25はイオンを検出して±1に
対応した多重スペクトルAi,Biを出力し、第1、第2
アベレージャ30,31は多重スペクトルAi,Biを積算し蓄
える。相関器16は、結合器14で得たΣAiとΣBiとを結
合したデータS(i)と±1を持つパルスシーケンスの
関数との相互相関をディコンボリューション処理してマ
ススペクトルデータを得、このデータがホストコンピュ
ータ17に供給される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試料からイオンを
発生させるとともに、このイオンを加速することによ
り、試料のイオンを質量の大きなイオンと質量の小さな
イオンとに分離してイオン検出器に導入し、試料の質量
分析を行う飛行時間型質量分析計の技術分野に属し、特
に、イオン溜内に外部イオン源からイオンを一旦滞留
し、このイオンをイオン溜から所定のデューティサイク
ルで押し出してイオン検出器に収束させるようになって
いる飛行時間型質量分析計の技術分野に属するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、質量分析計として、試料から発生
させたイオンを加速することにより、試料のイオンを質
量の大きなイオンと質量の小さなイオンとに分離して質
量分析器に導入し、試料の質量分析を行う飛行時間型質
量分析計(TOFMS)が提案されている。この飛行時間型
質量分析計は、イオンに同一運動エネルギを与えたと
き、イオンの質量電荷比(m/e、M:質量数、e:素
電荷)が小さいものほど、イオン検出器に早く到達する
ことを利用している。
【0003】このような飛行時間型質量分析計として、
従来、イオンを連続的に出射する連続イオン化法を用い
た垂直加速型飛行時間型質量分析計(Orthogonal Accel
eration TOFMS:OA/TOFMS)が提案されている。
【0004】図3は、このOA/TOFMSの一例を模式的に示
す図である。図中、1は外部イオン源、2はビーム規制
スリット、3は長さy0のイオン溜、4はイオン押出プ
レート、5はイオン溜3のイオン放出口に設けられた第
1グリッド、6は後述するTOFMS分光部7の入口に設け
られた第2グリッド、7はTOFMS分光部、8はイオン検
出器、9は2段加速部である。
【0005】電圧V1が印加されている外部イオン源1
からのイオンは、運動エネルギ(eV1)でイオン規制
スリット2を通ってイオン溜3に導入される。そして、
このイオンが長さy0のイオン溜3を充満した状態で、
イオン押出プレート4に高圧パルス電圧(振幅電圧=V
2)を印加すると、第1グリッド5が接地電位または接
地電位近傍の電位に保持されているので、イオン溜3内
のイオンは、運動エネルギ(eV2)でイオン溜3内の
イオンの飛行方向と垂直方向(TOFMSの光軸方向)に加
速され、イオン溜3から排出される。更に、イオン溜3
から排出されたイオンは、第1および第2グリッド5,
6を通って2段加速部9で更に加速されて、TOFMS分光
部7内を飛行した後、イオン検出器8に到達するように
なっている。
【0006】ところで、このようなOA/TOFMSにおいて
は、イオン溜13内のイオンの滞留時間tirとイオンの
全飛行時間ttofとの比であるデューティサイクルは、
分析対象質量範囲や分光系等の設計値に依存するが、通
常10%前後となっている。このデューティサイクル
は、分析対象となる最大質量のイオンが、検出するイオ
ンのうち最も速度が遅く、ゆっくり飛行する。この最大
質量のイオンがイオン検出器8に到達するのを待って、
次のイオンパルスをスタートさせることになるため、デ
ューティサイクルは限定されてしまう。
【0007】このデューティサイクルを改良するための
方法として、従来、イオン押出パルス電圧V2をイオン
押出プレート4に必要最小限の時間間隔で断続的に与え
て、イオン溜3に蓄積されたイオンを、分析対象となる
試料のマスピーク内で最大のイオンMがイオン検出器8
に到達するのを待つことなく、イオン溜3から押し出
し、この操作を複数回行って複数回の試料由来のマスス
ペクトルが重畳したスペクトルを測定し、この重畳スペ
クトルをディコンボリューション処理して試料分析を行
うことにより、デューティサイクルを向上させる方法が
ある。
【0008】そして、このようにして得られたスペクト
ルのディコンボリューション処理する方法の1つとし
て、相関法を用いる方法が種々の文献や特開平6−21
5730号公報等により知られている。この相関法を用
いる場合、繰り返し断続的に発生するパルス列として
は、符号化された疑似ランダム雑音シーケンス(Pseudo
-random noise sequence ; PN sequence、PNシーケン
ス)を装置関数とすることが望ましい。
【0009】これらの文献や公報等においては、PNシ
ーケンスに基づいて発生するパルス列について、次のよ
うに定義がなされている。すなわち、一定時間間隔で+
1か−1の値のいずれかの値をランダムにとるN個のパ
ルスからなるPNシーケンスを{f(t)=F(i)}
と表すと、この和は、式
【0010】
【数1】
【0011】で示すように必ず+1か−1になる。ま
た、このパルス列の自己相関関数をK(i)とすると、
【0012】
【数2】
【0013】で表される。この数式2は、PNシーケン
スからなるN回のパルシングで得られたN回の重畳した
観測スペクトルをディコンボリューション(重畳をほど
く)すると、N回の積算したイオン強度でスペクトルが
得られることを示している。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
のPNシーケンスを使用するにあたっては、実際にはOA
/TOFMS固有のイオン溜3の機能を考慮する必要があり、
このため、次の2点を考慮しなければならない。
【0015】1. 外部イオン源1からイオン溜3にイオ
ンをある一定時間ドリフトさせる時間tirを考慮する必
要がある。 2. この時間tir後のOA/TOFMSのイオン溜3内には、分
析試料に依存するある質量範囲にわたる異なるイオンが
滞留している。これらのイオンはイオン押出パルス電圧
2でTOFMS分光部7の光軸方向に押し出されるが、この
とき、質量電荷比(m/e)の最大のイオンがイオン溜
3から完全に排出されるために必要な時間(イオン溜3
内での最大イオンの飛行時間)tpは、
【0016】
【数3】
【0017】で与えられ、対象となる最大質量電荷比
(m/e)の値により設定されることになる。すなわ
ち、OA/TOFMSにおいて、これらの1と2項を考慮した場
合、PNシーケンスの、各符号の時間間隔tsは、ts
ir+tp の周期を持つ必要がある。
【0018】仮に、時間tirを考慮しない時間tsを持
ったPNシーケンスを使用した場合は、実際にOA/TOFMS
観測されたN回の各パルシングによる多重スペクトルに
は、スペクトル分解能が悪化したS/N比の低いマスピ
ークが混じったり、N回での各パルシングで、各試料イ
オンのそれぞれのマスピークのイオン検出器8に到達す
べき時間は定まっていることが前提であるディコンボリ
ューション法に対して、これらのマスピークが異なった
時間に観測されると、これらはノイズと同様の扱いにさ
れてしまう。これらの理由により、ディコンボリューシ
ョンで得られた最終結果は、試料のマススペクトルを正
確に再現できない、または疑似ピークが混在する等の問
題が発生してしまう。
【0019】更に、図3に示す従来のOA/TOFMSでは、時
間tsを考慮してN回の各パルシングを行っても、次の
ような問題がある。N個のPNシーケンスでイオンのパ
ルシングを行い、観測されたスペクトルは、一定時間間
sずれたN回の多重スペクトルとなって観測される。
しかしながら、Nの値が増加するにつれて、PNシーケ
ンスとの相関によるディコンボリューション処理後のス
ペクトル上に、ハ−モニックな疑似ピーク本数が増大す
る可能性が高くなる。これを回避または緩和するために
は、+1のみの符号か、−1のみの符号のいずれか一方
に対応したパルス列を使用して得られたスペクトルをデ
ィコンボリューションすればよいことになるが、この場
合には、N個のPNシーケンスに対して、(N+1)/
2か、あるいは(N−1)/2のデューティしか得られ
ないことになる。すなわち、N個のPNシーケンスのパ
ルス列の半数が無駄になり、OA/TOFMSのデューティサイ
クルは50%を超えられなくなって制限されてしまい、
イオン検出効率が半減するという問題がある。
【0020】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであって、その目的は、試料のマススペクトルを
より正確に再現でき、疑似ピークを混在させないように
するとともに、デューティサイクルを大幅に向上させる
ことのできる飛行時間型質量分析計を提供することであ
る。
【0021】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
めに、本発明は、イオンを出射するイオン源と、第1お
よび第2グリッドから構成され、前記イオンが導入され
るとともに、このイオンを第1および第2グリッドにパ
ルス電圧を印加することにより放出するイオン溜と、こ
のイオン溜を挟む両サイドに配置された一対の第1およ
び第2スペクトル観測系と、これらの両スペクトル観測
系の観測スペクトルのデータを結合して、同一時間軸に
対して上下または左右に表示可能なデータを得るスペク
トルデータ結合器と、一定サイクルで、符号化された疑
似ランダム雑音シーケンス(PNシーケンス)における
+1と−1の符号の疑似ランダムパルス列を発生させる
PNシーケンス発生器と、前記スペクトルデータ結合器
からのデータのスペクトルと±1を持つパルスシーケン
スの関数との相互相関を高速演算してディコンボリュー
ション処理されたマススペクトルデータを得るディコン
ボリューション用相関器と、この相関器で得られたマス
スペクトルデータが供給されるホストコンピュータ17
とを少なくとも備え、前記一対の第1および第2スペク
トル観測系が、それぞれ、PNシーケンス発生器15か
らの疑似ランダムなパルス列にしたがって、それぞれ選
択的にイオン押出パルス電圧を断続的に発生するイオン
押出用の第1および第2パルス電源と、前記イオン溜を
構成するとともに、それぞれ前記第1および第2パルス
電源からの前記イオン押出パルス電圧を断続的に印加さ
れたとき、前記イオン溜から一定サイクルでイオンを吐
き出す第1および第2グリッドと、これらの第1および
第2グリッドによってそれぞれ吐き出されたイオンを加
速しかつ収束する第1および第2TOFMS分光部と、これ
らの第1および第2TOFMS分光部によってそれぞれ表面
に収束されたイオンを検出して、PNシーケンスの+1
と−1の符号に対応した一対の多重スペクトルを出力す
る第1および第2イオン検出器24,25と、これらの
多重スペクトルを所定回数積算するとともに、積算した
データをデータ保存用のメモリに蓄える第1および第2
アベレージャとからなることを特徴としている。
【0022】
【作用】このような構成をした本発明の飛行時間型質量
分析計においては、イオン溜内に滞在するイオンのう
ち、質量電荷比(m/e)が最大のイオンがイオン溜か
ら排出される時間を考慮して、N個のPNシーケンスに
基づいて+1と−1の符号の2系統のパルス列が作られ
る。そして、これらのパルス列を用いてイオンのパルシ
ングが行われるとともに、N個のPNシーケンスと各系
統における多重マススペクトルとの相互相関がディコン
ボリューション処理により取られることにより、N回の
パルシングに対してデューティサイクル=100%が得
られるようになる。したがって、OA/TOFMSシステムのデ
ューティサイクルは、従来型のOA/TOFMSよりも約2倍高
くなる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて本発明の実施
の形態を説明する。図1は、本発明にかかる飛行時間型
質量分析計の実施の形態の一例を示す図である。
【0024】図1に示すように、この例の飛行時間型質
量分析計は、試料のイオンを放射する外部イオン源11
と、このイオンを規制するイオン規制ブレード12と、
このイオン規制ブレード12で規制されたイオンが導入
されるイオン溜13と、イオン溜13を挟む両サイドに
配置された一対の第1および第2スペクトル観測系A,
Bと、これらの両スペクトル観測系A,Bの観測スペク
トルのデータを結合して、同一時間軸に対して上下(ま
たは左右に)に表示可能なデータ{S(i)}を得るス
ペクトルデータ結合器14と、一定サイクルtsでPN
シーケンスにおける+1と−1の疑似ランダムなパルス
列を発生させるPNシーケンス発生器15と、スペクト
ルデータ結合器14からのデータ{S(i)}のスペク
トルと±1を持つパルスシーケンスの関数との相互相関
を高速演算してディコンボリューション処理されたマス
スペクトルデータを得る、高速プロセッサ(または専用
高速プロセッサ)からなるディコンボリューション用の
相関器16と、この相関器16で得られた最終結果のマ
ススペクトルデータが供給されるホストコンピュータ1
7を備えている。
【0025】また、一対の第1および第2スペクトル観
測系A,Bは、それぞれ、PNシーケンス発生器15か
らの疑似ランダムなパルス列にしたがって、それぞれ選
択的にイオン押出パルス電圧(VP)を断続的に発生す
るイオン押出用の第1および第2パルス電源(VG1,V
G2)18,19と、イオン溜13を構成するとともに、
それぞれ前記第1および第2パルス電源18,19から
のイオン押出パルス電圧(VP)を断続的に印加された
とき、イオン溜13から一定サイクルtsでイオン溜1
3内のイオンを吐き出す第1および第2グリッド20,
21と、これらの第1および第2グリッド20,21に
よってそれぞれ吐き出されたイオンを加速しかつ収束す
る第1および第2TOFMS分光部22,23と、これらの第
1および第2TOFMS分光部22,23によってそれぞれ表
面に収束されたイオンを検出して、PNシーケンスの+
1と−1に対応した一対の多重スペクトルAi,Biを出
力する第1および第2イオン検出器24,25と、第1
および第2プリアンプ26,27と、第1および第2A
Dコンバータ28,29と、それぞれ多重スペクトル
i,Biをm回積算するとともに、積算したΣAiおよび
ΣBiをデータ保存用のメモリに蓄える第1および第2
アベレージャ30,31とから構成されている。
【0026】なお、第1および第2イオン検出器24,
25と第1および第2プリアンプ26,27の各ゲイン
を、第1および第2スペクトル観測系A,Bのいずれも
同一のゲインに設定することが原理上望ましい。
【0027】また、イオン溜13を挟む両サイドのTOFM
S分光部22,23を有するイオン加速系として、イオン
を空間収束させる多段加速系を採用することが有利であ
ることは言うまでもない。
【0028】更に、プリアンプ26,27、ADコンバ
ータ28,29、およびアベレージャ30,31等は、マ
ルチプレクサを使用することで同一の構成を1系統にし
てそれぞれ1個ずつ削減することができるが、スペクト
ルのサンプリングが2倍の荒さになるので、この例のよ
うに2系統で構成することが望ましい。
【0029】図2は、PNシーケンスに基づく疑似ラン
ダムなパルス列の一例とこのパルス列によるパルス電圧
Pを示し、(a)はPNシーケンスに基づく±の符号
のパルス列を示す図、(b)は+1の符号のパルス列を
示す図、(c)は+1の符号のパルス列にしたがって第
1パルス電源(VG1)8によって発生されたイオン取出
し用パルス電圧VPを示す図、(d)は−1の符号のパ
ルス列を示す図、(e)は−1の符号のパルス列にした
がって第2パルス電源(VG2)19によって発生された
イオン取出し用パルス電圧VPを示す図である。
【0030】PNシーケンス発生器15によって発生さ
れるパルス列は、PNシーケンスに基づくパルス列であ
る。図2(a)に示すように、このパルス列は、一定時
間間隔(ts≧tir+tp)で+1か−1のいずれかの値
をとるN個のランダムパルスからなるパルス列である。
すなわち、+1か−1のいずれかの値をランダムにとる
N個のパルスからなるPNシーケンスを{f(t)=F
(i)}と表すと、この和は、前述の数式1で示すよう
に必ず+1か−1になり、この図ではΣF(i)=+1
を示している。また、この関数の自己相関関数K(i)
は、前述の数式2で表されて、白色ノイズをフーリエ変
換した結果、ディラクのδ関数にきわめて近い特性をも
つようになる。
【0031】そして、PNシーケンス発生器15からの
図2(b)に示す+1の符号のみのパルス列にしたがっ
て、第1パルス電源(VG1)18は、図2(c)に示す
イオン押出パルスVPを第1グリッド20に印加するよ
うになる。また、PNシーケンス発生器15からの図2
(d)に示す−1の符号のみのパルス列にしたがって、
第2パルス電源(VG2)19は、図2(e)に示すイオ
ン押出パルスVPを第2グリッド21に印加するように
なる。
【0032】次に、相関器14における相関法の原理に
ついて説明する。PNシーケンスによるイオンのパルシ
ングによって得られた観測スペクトルS(i){=ΣY
(i)}とF(i)との積算結果{G(i)}がスペク
トルを復元するのが相関法の原理であり、この{G
(i)}は、
【0033】
【数4】
【0034】に従い、PNシーケンスの+1の符号との
相関は、
【0035】
【数5】
【0036】に従い、PNシーケンスの−1の符号との
相関は、
【0037】
【数6】
【0038】に従う。ここで、第2スペクトル観測系B
の第2イオン検出器25によって得られた観測スペクト
ルは、−1の符号に対応したパルス列で発生したマスス
ペクトルが重畳したものに限定されるため、数式6は、
【0039】
【数7】
【0040】に変換される。この結果、最終的には、
【0041】
【数8】
【0042】となり、N回のスペクトル{Y(i)
*N}が再生できることになる。こうして、相関器14
による相関法に基づくディコンボリューション処理が行
われる。
【0043】このように構成されたこの例の飛行時間型
質量分析計においては、PNシーケンス発生器15か
ら、一定サイクルtsでPNシーケンスにおける+1と
−1の疑似ランダムなパルス列が、第1および第2パル
ス電源(VG1,VG2)18,19とディコンボリューショ
ン用相関器16に出力される。+1の符号のパルス列に
したがって、第1パルス電源(VG1)18が第1グリッ
ド20にイオン押出パルスVPを断続的にかつランダム
に出力し、また第2パルス電源(VG2)19が第2グリ
ッド21にイオン押出パルスVPを断続的にかつランダ
ムに出力する。このとき、第1グリッド20にイオン押
出パルスVPが印加される場合は、第2グリッド21は
接地電位(または接地電位近傍の値)に保持され、また
第2グリッド21にイオン押出パルスVPが印加される
場合は、第1グリッド20は接地電位(または接地電位
近傍の値)に保持される。そして、第1グリッド20に
は+1の符号のパルス列が対応し、第2グリッド21に
は−1の符号のパルス列が対応しているが、1つのグリ
ッドに+1と−1の符号のパルス列が混在させることは
許されない。
【0044】第1および第2グリッド20,21は、そ
れぞれイオン押出パルスVPにしたがってイオン溜13
内のイオンを押し出し、これらのイオンはそれぞれ第1
および第2TOFMS分光部22,23内で加速されて第1お
よび第2イオン検出器24,25に収束され、これらの
第1および第2イオン検出器24,25によって検出さ
れる。
【0045】第1および第2イオン検出器24,25
は、それぞれイオンを検出すると、+1と−1に対応し
た一対の多重スペクトルAi,Biを出力し、これらの多
重スペクトルAi,Biは、それぞれ第1および第2プリ
アンプ26,27と第1および第2ADコンバータ28,
29を介して第1および第2アベレージャ30,31に
供給される。これらの多重スペクトルAi,Biは、必要
に応じて第1および第2アベレージャ30,31によっ
て、それぞれm回積算されるようにして測定され、積算
されたΣAiおよびΣBiは、第1および第2アベレージ
ャ30,31のメモリのΣAiおよびΣBiデータエリア
に一旦蓄えられる。このように積算することは、イオン
押出電圧パルスVPのジッタによる揺らぎや、ADコン
バータ28,29のサンプリングによる1ビットのディ
ジタル誤差等による各マスピークの観測時間の揺らぎ等
の平滑化やノイズの平均化によって、相関誤差の解消あ
るいは減少させるという効果が期待できる。
【0046】更に、第1および第2アベレージャ30,
31で積算されたΣAiおよびΣBiは、一定時間毎にス
ペクトルデータ結合器14に送られ、このスペクトルデ
ータ結合器14はこれらのΣAiおよびΣBiを結合し
て、同一時間軸に対して上下(または左右に)に表示可
能なデータ{S(i)}を得るとともに、このデータ
{S(i)}をディコンボリューション用相関器16に
送る。そして、ディコンボリューション用相関器16
は、スペクトルデータ結合器14からのデータ{S
(i)}のスペクトルとPNシーケンス発生器15から
の±1を持つ疑似ランダムパルス列によるパルスシーケ
ンスの関数との相互相関を高速演算することにより一定
時間毎にディコンボリューション処理を行い、PNシー
ケンスにより得られたN×m回(m≧1の整数)の積算
データの最終結果としてのマススペクトルデータが得ら
れる。このように積算結果を一定時間毎にディコンボリ
ューションすることは、プロセッサの演算上でも効果的
であり、現実的である。このマススペクトルデータが逐
次データバスを経由してホストコンピュータ17に転送
される。
【0047】このように、この例の飛行時間型質量分析
計によれば、イオン溜13内に滞在するイオンのうち、
質量電荷比(m/e)が最大のイオンがイオン溜13か
ら排出される時間tpを考慮し、N個のPNシーケンス
に基づいて+1と−1の符号の2系統のパルス列を作
り、これらのパルス列を用いてイオンのパルシングを行
うとともに、N個のPNシーケンスと各系統における多
重マススペクトルとをディコンボリューション処理によ
り相互相関を取ることにより、N回のパルシングに対し
てデューティサイクル=100%が得られるようにな
る。したがって、従来型のOA/TOFMSよりもデューティサ
イクルが約2倍高いOA/TOFMSシステムが得られる。
【0048】また、PNシーケンスのパルス列として、
イオン溜13のイオンの滞在時間と最大質量イオンの、
パルス電圧による押し出し開始後からのイオン溜13内
の滞在時間とを考慮したパルス列を使用すれば、ディコ
ンボリューション処理後のマススペクトルにおいて、ピ
ークが一部欠落することなく、測定対象範囲全域のマス
スペクトルがより確実に復元・再生できるようになる。
【0049】なお、前述の例の飛行時間型質量分析計で
は、イオン検出器24,25とプリアンプ28,29の各
ゲインを同一のゲインに設定することが望ましいことを
述べたが、ディコンボリューション用の相関器16で演
算する前に、スペクトルデータ結合器14においてΣA
iとΣBiとの強度比が同一になるように計数Cを求め
て掛け合わせることにより、ΣAi=C・ΣBiを得る
ことができるようにすることも可能である。
【0050】また、PNシーケンスは、前述の図2に示
す例に限定されることはなく、任意のN個のパルス列に
おいて最も不規則性(ランダム性)を持つものがベスト
である。このパルス列のランダム性に応じて、各ピーク
の再生・復元形状が決定されるようになる。
【0051】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の飛行時間型質量分析計によれば、イオン溜内に滞在す
るイオンのうち、質量電荷比(m/e)が最大のイオン
がイオン溜から排出される時間を考慮し、N個のPNシ
ーケンスに基づいて+1と−1の符号の2系統のパルス
列を作り、これらのパルス列を用いてイオンのパルシン
グを行うとともに、N個のPNシーケンスと各系統にお
ける多重マススペクトルとをディコンボリューション処
理により相互相関を取るようにしているので、N回のパ
ルシングに対してデューティサイクル=100%を得る
ことができるようになる。したがって、従来型のOA/TOF
MSよりもデューティサイクルが約2倍高いOA/TOFMSシス
テムを得ることができる。
【0052】また、PNシーケンスのパルス列として、
イオン溜のイオンの滞在時間と最大質量イオンの、パル
ス電圧による押し出し開始後からのイオン溜内の滞在時
間とを考慮したパルス列を使用すれば、ディコンボリュ
ーション処理後のマススペクトルにおいて、ピークが一
部欠落することなく、測定対象範囲全域のマススペクト
ルがより確実に復元・再生できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる飛行時間型質量分析計の実施
の形態の一例を模式的に示す図である。
【図2】 PNシーケンスおよびこれに基づくイオン押
出パルスを示す図である。
【図3】 イオンを連続的に出射する連続イオン化法を
用いた従来の垂直加速型飛行時間型質量分析計の一例を
模式的に示す図である。
【符号の説明】
11…外部イオン源、12…ビーム規制スリット、13
…イオン溜、14…スペクトルデータ結合器、15…P
Nシーケンス発生器、16…ディコンボリューション用
相関器、17…ホストコンピュータ、18…第1パルス
電源(VG1)、19…第2パルス電源(VG2)、20…
第1グリッド、21…第2グリッド、22…第1TOFMS
分光部、23…第2TOFMS分光部、24…第1イオン検
出器、25…第2イオン検出器、26…第1プリアン
プ、27…第2プリアンプ、28…第1ADコンバー
タ、29…第2ADコンバータ、30…第1アベレージ
ャ、31…第2アベレージャ、A…第1スペクトル観測
系、B…第2スペクトル観測系

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオンを出射するイオン源と、第1およ
    び第2グリッドから構成され、前記イオンが導入される
    とともに、このイオンを第1および第2グリッドにパル
    ス電圧を印加することにより放出するイオン溜と、この
    イオン溜を挟む両サイドに配置された一対の第1および
    第2スペクトル観測系と、これらの両スペクトル観測系
    の観測スペクトルのデータを結合して、同一時間軸に対
    して上下または左右に表示可能なデータを得るスペクト
    ルデータ結合器と、一定サイクルで、符号化された疑似
    ランダム雑音シーケンス(PNシーケンス)における+
    1と−1の符号の疑似ランダムパルス列を発生させるP
    Nシーケンス発生器と、前記スペクトルデータ結合器か
    らのデータのスペクトルと±1を持つパルスシーケンス
    の関数との相互相関を高速演算してディコンボリューシ
    ョン処理されたマススペクトルデータを得るディコンボ
    リューション用相関器と、この相関器で得られたマスス
    ペクトルデータが供給されるホストコンピュータ17と
    を少なくとも備え、 前記一対の第1および第2スペクトル観測系は、それぞ
    れ、PNシーケンス発生器15からの疑似ランダムなパ
    ルス列にしたがって、それぞれ選択的にイオン押出パル
    ス電圧を断続的に発生するイオン押出用の第1および第
    2パルス電源と、前記イオン溜を構成するとともに、そ
    れぞれ前記第1および第2パルス電源からの前記イオン
    押出パルス電圧を断続的に印加されたとき、前記イオン
    溜から一定サイクルでイオンを吐き出す第1および第2
    グリッドと、これらの第1および第2グリッドによって
    それぞれ吐き出されたイオンを加速しかつ収束する第1
    および第2TOFMS分光部と、これらの第1および第2TOF
    MS分光部によってそれぞれ表面に収束されたイオンを検
    出して、PNシーケンスの+1と−1の符号に対応した
    一対の多重スペクトルを出力する第1および第2イオン
    検出器24,25と、これらの多重スペクトルを所定回
    数積算するとともに、積算したデータをデータ保存用の
    メモリに蓄える第1および第2アベレージャとからなる
    ことを特徴とする飛行時間型質量分析計。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2001096861A1 (en) * 2000-06-14 2001-12-20 Jan Eriksson System for molecule identification
JP2010516032A (ja) * 2007-01-15 2010-05-13 マイクロマス ユーケー リミテッド 質量分析計

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