JP2000046778A - 局部腐食モニタリング用模擬電極および当該電極を用いた局部腐食モニタリング方法 - Google Patents

局部腐食モニタリング用模擬電極および当該電極を用いた局部腐食モニタリング方法

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JP2000046778A
JP2000046778A JP10226574A JP22657498A JP2000046778A JP 2000046778 A JP2000046778 A JP 2000046778A JP 10226574 A JP10226574 A JP 10226574A JP 22657498 A JP22657498 A JP 22657498A JP 2000046778 A JP2000046778 A JP 2000046778A
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local corrosion
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Shukuji Asakura
祝治 朝倉
Takaaki Nagai
崇昭 永井
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MARUISHI KOGYO
TOKYO SENJIRUSHI SHOTEN KK
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TAC Corp
Yamazaki Tekkosho KK
Nippon Polyester Co Ltd
Toyoda Kogyo Co Ltd
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MARUISHI KOGYO
TOKYO SENJIRUSHI SHOTEN KK
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Nippon Polyester Co Ltd
Yamazaki Machinery Works Ltd
Toyoda Kogyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 最大の局部腐食速度もしくは最大の腐食孔深
さを評価でき、かつその場での測定が可能な局部腐食モ
ニタリング用模擬電極および当該電極を用いた局部腐食
モニタリング方法を提供する。 【解決手段】 測定対象となる金属構造体5等と同じ材
質の平板状金属片1の側面および底面に絶縁被覆ないし
絶縁被膜3を形成する。金属を露出させた面にはゲル化
等により腐食性溶液4を固定ないし定着させることで常
に活性化させる。当該モニター電極6を湿潤環境中にあ
る金属構造体5等の測定しようとする任意の部分に載置
する。金属構造体5等と無抵抗電流計7を介して短絡さ
せ腐食電池による電池電流を測定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海水や淡水中およ
び土壌中等の湿潤環境中にある金属構造体ないし金属装
置に生じた局部腐食の進展速度および腐食孔深さのモニ
タリングに関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属構造体等の腐食劣化が引き起こす予
期せぬ事故を未然に防いだり、腐食による経済的損失を
最小にするためには、適切な時期と場所に、防食対策ま
たは更新を行うことが重要である。実際に問題となる腐
食事例のほとんどは局部腐食であるため、局部腐食の進
展速度、腐食深さ、発生や位置の検知等に関するモニタ
リングが必要とされている。
【0003】局部腐食には、孔食、すきま腐食、粒界腐
食、応力腐食割れ、異種金属接触腐食等の様々な形態が
あり、そのモニタリング方法には研究段階のものも含め
ると多くの手法が提案されている。本発明は、金属表面
で腐食孔を生じる形態の局部腐食に関して、その最大腐
食速度および腐食孔の最大深さをモニタリングしようと
するものである。以下、本発明方法に関連すると思われ
る従来の腐食モニタリング方法について述べる。
【0004】まず始めに、腐食速度のモニタリングに関
しては、電気抵抗法、ターフェル外挿法、分極抵抗法が
代表的な測定法である。しかしながら、いずれの方法に
よっても得られる腐食速度は均一腐食に関したものであ
り、平均の腐食速度は得られるが局部腐食に関する直接
的な情報は得ることができない。分極抵抗法により局部
腐食速度をモニタリングしようという試みも多数なされ
ているが、原理的な可能性を示すのみで実用的に使用さ
れるところまでには至っていない。
【0005】また、ノイズ解析による方法は、現時点で
は、実験的に局部腐食速度との関係が示されている程度
である。また、極微小な電位または電流のゆらぎを測定
するものであるため、実構造物への適用を考えた場合、
環境ノイズの除去が大きな問題となる。さらに、走査振
動電極法は、局部腐食1つ1つの腐食速度および位置が
測定できる方法であるが、振動電極を走査して腐食表面
の微小な領域の電流分布を測定するものであるため、広
い範囲のモニタリングが必要な実構造物への適用には本
質的に不向きといえる。また、多くの場合、実構造物の
表面には腐食生成物の堆積等による凹凸があるため、表
面を走査する際に振動電極が破壊される危険性が高く、
適用が容易ではない。
【0006】最後に、局部腐食の進展が腐食孔内部の溶
液組成によって定まる局部アノードの反応抵抗もしくは
腐食孔内部から孔間口にかけて堆積するさび層の電気的
な抵抗によってコントロールされるという考えから、金
属に人工的な腐食孔を取り付けることによって局部腐食
を模擬した電極を用いる手法について述べる。この手法
は、局部腐食の模擬電極を例えばテスト配管等特定の場
所に取り付けて用いるようになっているため、電極を取
り付けた部分の情報しか得ることができない。
【0007】この点が問題となるのは、中性環境中の炭
素鋼に生じる局部腐食のように、いわゆる活性態型の局
部腐食では、アノードの反応抵抗よりむしろ、カソード
の反応抵抗および電流経路の電気的な抵抗によってコン
トロールされることを考慮することの方が重要である場
合が多いと考えられるためである。カソードの反応抵抗
の大きさは表面の腐食状態で変化し、また電流経路の電
気的な抵抗は環境の電気伝導度や腐食孔のさび層の電気
的抵抗だけでなくアノードとカソード間の距離や配置に
よっても影響を受けるので、構造物が一定の環境にあっ
ても場所によって異なり、その結果として局部腐食度速
度は場所によって著しく違ってくる。
【0008】従って、局部腐食モニタリングは任意の場
所での、その場測定ができるものでなくてはならない。
しかしながら、金属に人工的な腐食孔を取り付けて局部
腐食を模擬した電極を用いる従来の手法によった場合
は、その場測定の要請に応えることができないという問
題点がある。さらに、この従来法では電極を取り付ける
ための特別な作業が必要であるため、簡便なモニタリン
グ法とはいい難い面がある。
【0009】次に、腐食孔深さのモニタリングに関して
は、腐食深さが腐食速度の積分値であることから、局部
腐食速度を継続的にモニタリングして積算し推定する方
法が可能であるが、これは上述したとおりである。な
お、埋設管の土壌腐食の分野では、分極抵抗、配管の電
位、配管と電極との間に流れる電流等の測定値を所定の
推定式に代入して配管の最大孔食深さを推定しようとす
る方法があり、専用の計器も市販されている。ただし、
このような推定式はいくつも示されていることから明ら
かなように、いずれも経験的に整理されたものであっ
て、測定因子と最大の孔食深さとの関係が原理的に明ら
かではないため、普遍的に用いることができない。
【0010】腐食深さを測定する方法としては、超音波
やX線を用い方法等があるが、いずれも局部腐食を捉え
るためには、細かなピッチで測定する必要がある点が欠
点である。超音波厚さ計を用いた場合には、1mmピッ
チで測定する必要があり、自走式の板厚計の開発が必要
とも指摘されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】このように、局部腐食
モニタリングについては様々な方法が提案されている
が、それぞれに欠点があるために、未だ実用的に十分な
手法が確立されていないのが現状である。しかし、その
中にあって、局部腐食の模擬電極を用いる手法は、局部
腐食に関する情報を直接的に測定できるという点で優れ
ている。さらにもう一つ注目すべきことは、報告例にも
あるように、この手法では、局部腐食の最大速度がモニ
タリングできる可能性があるという点である。一般に、
局部腐食では、金属が一定の腐食環境に置かれても、局
部腐食速度が一義的に定まらず、ある時刻における腐食
孔深さは著しいばらつきを生じることになる。このう
ち、一番最初に貫通する腐食孔が金属装置や金属構造体
全体の寿命を決定するので、最大の局部腐食速度もしく
は最大深さの腐食孔を検知することが最も重要であると
されている。
【0012】そこで、本発明者らは、局部腐食の模擬電
極を用いる手法は優れた局部腐食モニタリング法となり
得ると考え、従来法の上述した欠点を解消すると共に、
最大の局部腐食速度および最大の腐食孔深さをモニタリ
ングできる手法につき鋭意研究した結果、本発明を完成
するに至った。従って、本発明は、最大の局部腐食速度
もしくは最大の腐食孔深さを評価でき、かつその場での
測定が可能な局部腐食モニタリング用模擬電極および当
該電極を用いた局部腐食モニタリング方法を提供するこ
とを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明の構成につき詳述すれば、請求項1に係る発明
は、測定対象となる金属構造体ないし金属装置と同じ材
質の金属片の側面および底面に絶縁被覆ないし絶縁被膜
を形成し、金属を露出させた表面には腐食性溶液を固定
ないし定着させることで常に活性化させるようにしたこ
とを特徴とする局部腐食モニタリング用模擬電極であ
る。
【0014】また、請求項2に係る発明は、請求項1記
載の電極を、絶縁被覆ないし絶縁被膜を形成した底面を
下にして湿潤環境中にある金属構造体ないし金属装置の
測定しようとする任意の部分に置き、金属構造体ないし
金属装置と無抵抗電流計を介して短絡させ腐食電池によ
る電池電流を測定することで、その場でかつ瞬時にモニ
タリングすることを可能とした局部腐食モニタリング方
法である。
【0015】本発明に係る局部腐食モニターは上記した
とおり、測定対象となる金属構造体等と同じ材質の平板
状金属片の側面および底面をエポキシ系樹脂等の絶縁塗
料で被覆ないし被膜を形成し、金属を露出させた面に
は、例えばゲル化等により腐食性溶液を固定ないし定着
させることで常に活性化させると共に、腐食性溶液の固
定ないし定着厚みを薄くすることで全体として平板状に
したモニター電極を、絶縁被覆ないし絶縁被膜を形成し
た面を下にして水溶液または土壌中等の湿潤環境中にあ
る金属構造体等の測定しようとする任意の部分に載置
し、金属構造体等と無抵抗電流計を介して短絡させて腐
食電池による電池電流を測定するようにしたものであ
る。
【0016】本発明方法をさらに詳述すると、局部腐食
モニタリングの原理は、次のような局部腐食のメカニズ
ムに基づいている。腐食速度は、腐食電池を形成したア
ノードとカソードの反応抵抗および環境の電気伝導度、
アノードとカソード間の距離や配置等によって定まる電
流経路の電気的な抵抗によってコントロールされる。ま
ず、カソードの反応抵抗について考えると、中性環境中
の炭素綱に生じる局部腐食のように、カソード反応が溶
解度の極めて小さい酸素の消費反応であればその反応抵
抗は大きい。しかも、カソードの反応抵抗の大きさは、
さびの堆積や流速等様々な要因によって著しく変化す
る。つまり、カソードの反応抵抗はその場の環境やさら
には腐食状態によっても大きく影響を受ける。
【0017】一方、アノードの反応抵抗については、腐
食孔内の液性によってのみ定まる。一般に、局部腐食で
は、腐食孔内で溶液の酸性化と腐食性アニオンの濃縮が
生じ、溶存酸素濃度はほぼ0まで低下する。その結果、
腐食孔内の金属は表面に腐食生成物が形成されず活性な
状態となるために、その周囲よりも溶解速度が速くな
り、局部腐食の進展が持続するとされている。従って、
腐食孔内の金属表面が十分に活性化したときにアノード
の反応抵抗は最小となり、局部腐食は最大速度に到達す
る。十分に活性化し最小となったアノードの反応抵抗の
大きさは、その場の環境や腐食状態によって影響を受け
ることはほとんどないと考えられる。
【0018】従って、アノードとカソードの反応抵抗を
比較すると、局部腐食速度におよぼす影響はカソードの
反応抵抗の方が大きいとみなせる。また、金属構造体等
が淡水中にあれば環境の電気伝導度は小さいので、電流
経路の電気的抵抗も大きくなる。このような場合には、
局部腐食のアノードの反応抵抗の寄与は相対的にさらに
小さくなる。故に、アノードが十分に活性化した局部腐
食が形成されれば、局部腐食速度は最大となり、その大
きさは、その場の環境や腐食状態等によって定まるカソ
ードの反応抵抗および電流経路の電気的な抵抗によって
コントロールされるといえる。言い換えると、局部腐食
が取り得る腐食速度の上限値は、カソードの反応抵抗お
よび電流経路の電気的な抵抗によってコントロールされ
ており、その場の環境および腐食状態等によって定まる
ということである。
【0019】そうであるならば、この上限値は、十分に
活性化させて局部腐食を模擬した電極を測定部分の表面
に置き、測定対象と短絡して測定できる電池電流で評価
できると考えたわけである。なぜなら、この電池電流の
大きさも、実際の局部腐食速度をコントロールしている
カソードの反応抵抗および電流経路の電気的な抵抗によ
って定まるからである。このように、局部腐食のメカニ
ズムに基づいて、その場で取り得る局部腐食の最大速度
(上限値)をモニタリングしようとするところに本発明
方法の最大の特徴がある。
【0020】次に、モニター電極を構成する腐食性溶液
について述べる。本発明に係るモニター電極は局部腐食
を模擬しようとするものであるから、腐食性溶液は酸性
とし、溶存酸素を除去する。溶存酸素は、例えば、腐食
性溶液を沸騰させて除去した後、ゲル化して固化すれば
よい。容液をゲル化して固めれば、溶存酸素が金属表面
に拡散到達することを抑制できる。あるいは、ゲル化以
外にも、溶存酸素を除去した腐食性溶液の表面を、ガス
遮断性を有する合成樹脂フィルム等で覆って金属片の表
面に定着させ、湿潤環境中の溶存酸素が金属表面に到達
するのを防ぐようにすることもできる。
【0021】また、金属構造体等の置かれた環境に腐食
性アニオンがある場合には、これを適量加える。例え
ば、環境中のアニオンとして塩素イオンの割合が大きい
場合には、塩化カリウム等の塩化物を腐食性溶液に加え
ればよい。測定対象が炭素鋼であれば、腐食性溶液のp
Hは4〜5とする。炭素鋼の場合、強酸にすると水素発
生のカソード反応によりモニター電極に気泡が溜まって
測定に支障をきたすので、pHは4以下にしない。
【0022】モニター用の模擬電極は腐食性溶液によっ
てあらかじめ活性化されているため、金属構造体等と短
絡すると、電極をアノード、金属構造体等をカソードと
する腐食電池による電池電流が瞬時に測定できる。上述
したように、測定される電池電流は局部腐食の最大速度
(上限値)に相当する。また、電極は任意の場所に置く
ことができるので、本発明に係る局部腐食モニターを用
いれば、最大の局部腐食速度(上限値)がその場でモニ
タリングできる。さらに、腐食深さは腐食速度の積分値
であから、局部腐食の最大深さ(上限値)も評価でき
る。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る局部腐食モニ
タリング用模擬電極の構成、原理及び特徴を図示の実施
例に基づき詳細に説明する。図1は模擬電極の構成を示
す上面図および断面図、図2は本発明に係る模擬電極を
用いて局部腐食をモニタリングする際の構成を示す概略
図、図3は塗装した鋼構造物に局部腐食が生じた場合の
一例を示す説明図、図4は測定電流と孔食進展速度の関
係を示すグラフ、図5は電池電流密度と局部腐食深さの
関係を示すグラフである。
【0024】図1において、1は測定対象と同じ材質を
用いた電極本体をなす金属片である。図示する実施例の
金属片1は円板状に形成してあるが、測定対象と同じ金
属を用いる限りその形態は任意であり、正方形ないし矩
形状等とすることができる。2は当該金属片1に繋げた
リード線である。金属片1は例えば表面部を除いて、他
の底面部および全側面部にエポキシ系樹脂塗料等を用い
て絶縁被覆ないし絶縁被膜3を形成する。絶縁被覆ない
し絶縁被膜3を形成せず、金属面を露出させた表面部に
は、腐食性溶液4を固定ないし定着させる。
【0025】露出させた金属面に腐食性溶液4を固定す
るには、例えば腐食性溶液をゲル化させる方法等によっ
て容易に実現することができる。また、このゲル化以外
にも、金属面に保持させた腐食性溶液4の表面を、ガス
遮断性を有する合成樹脂フィルム等で覆って金属片1の
表面に腐食性溶液4を定着させるようにすることもでき
る。
【0026】次に、図2において、5は測定対象とな金
属構造体ないし金属装置であり、6は図1に示したモニ
ター電極を示す。金属構造体等5に生じた局部腐食をモ
ニタリングするには、無抵抗電流計7を介してモニター
電極6と金属構造体等5を短絡させ、腐食電池による電
池電流を無抵抗電流計7により読み取ることによって達
成される。このとき、図の矢印で示したように、モニタ
ー電極6は絶縁被覆ないし絶縁被膜を施した底面部を下
にして金属構造体等5の調査したい部分に置くようにす
る。
【0027】次に、より実際的な金属構造体への実施例
を示すことで本発明の原理および特徴を説明する。一般
に、塗装された鋼構造物では、ピンホール等塗装の欠陥
部分を起点として局部腐食を生じる場合が多い。図3に
おいて、8は塗装が施された金属構造体としての鋼構造
物であり、9は当該鋼構造物8に生じた局部腐食であ
る。局部腐食9が鋼構造物8のコーナー部10の近くで
生じ、塗装が劣化してカソードとなる部分11と腐食電
池を形成すると、矢印で示したような電流12が水溶液
等の湿潤環境13中に流れる。
【0028】局部腐食速度は、電流12が大きいほど速
くなる。そこで、局部腐食を模擬した電極を用いて、こ
の電流12を測定しようとするのが本発明における局部
腐食モニタリングの原理である。すなわち、局部腐食9
が生じている付近に局部腐食を模擬したモニター電極6
を置き、鋼構造物8と短絡することにより電流12を直
接測定しようとするものである。
【0029】ここで、重要なことは、モニター電極の形
状を平板状にしたという点にある。従来のように、人工
的な腐食孔を保持させた局部腐食模擬電極の場合には、
これを金属構造体表面に置いて同様のモニタリングを行
おうとしても、孔の分だけ電極には厚みがあるので、こ
れが電流分布を乱し実際とは異なる電流値が測定され得
る。これを避けるためには、電極を金属構造体等に埋め
込む必要があるので、実用的とはいい難い。
【0030】また、局部腐食速度は場所によって著しく
異なることが知られている。既に詳述したように、局部
腐食速度はカソードの反応抵抗および電流経路の電気的
な抵抗によってコントロールされる。例えば、局部腐食
9が生じた場所によって、腐食電池を形成するカソード
11の全面積や局部腐食9に対する相対的位置が異なれ
ば、電流12の大きさは違ってくる。従って、局部腐食
モニタリングは任意の場所での、その場測定ができるも
のでなくてはならない。しかし、従来法の模擬電極で
は、たとえ金属構造体等に埋め込むことができたとして
も、任意の場所でモニタリングするためには多数の地点
に埋め込む必要があって現実的ではない。
【0031】これに対して、平板状にした本発明に係る
模擬電極であれば、金属構造体等に埋め込む必要がない
ので任意の場所に置くことができ、しかも電流分布を乱
すことなく電流12を測定することができる。本発明に
おいて、ゲル化すること等により腐食性溶液を金属に固
定ないし定着させることで電極を平板状にした理由がこ
こにある。
【0032】さらにもう一つ重要なことは、モニター電
極は腐食性溶液を固定ないし定着することによってあら
かじめ活性化されているため、金属構造体等と短絡する
と、電極をアノード、金属構造体等をカソードとする電
池電流が瞬時に測定できるという点である。従来の電極
では、人工的な孔を保持させるだけであるから、電極が
活性化するまでにかなりの時間を必要とする。
【0033】また、本発明方法では、モニター電極を金
属構造体等に置くだけであるから、操作は極めて簡単で
あり、しかも、L字状のようなコーナー部10等の複雑
な形状をした部分に生じた局部腐食9のモニタリングも
可能である。
【0034】以上、本発明に係る局部腐食モニターは、
測定に要する時間が極めて短時間であり、かつ任意の場
所での、その場測定ができるので、モニター電極を移動
させつつ測定を行うことにより広い面積範囲で局部腐食
のモニタリングができる。
【0035】最後に、本発明による局部腐食モニタリン
グの実験例および実施例を挙げてその効果を明らかにす
る。実験は、pHが4で0.1Mの塩化カリウム溶液を
ゲル化してSM490鋼に固定させた電極を用いて、p
H8の塩化カリウム溶液中のSM490鋼に生じる孔食
に対してモニタリングを行った。図4に実際の孔食の最
大進展速度と測定した電池電流密度の関係を示す。電流
密度は、無抵抗電流計により測定した電流値をモニター
の電極面積で除して求めた。また、最大の孔食進展速度
は、光学顕微鏡で測定した最大の局部腐食深さより求め
た実測値である。電流密度と最大の孔食進展速度は比例
関係にあり、比例定数は1.9であった。この結果は、
モニター電極を用いて測定される電池電流が、孔食の最
大進展速度に相当することを示している。
【0036】次に、局部腐食モニターを、内部に水道用
水が通流している鋼製水路内面に生じたさびこぶ下の局
部腐食に適用した結果を示す。この鋼製水路は全長40
0mで、鋼製水路内面の20箇所でモニタリングを行っ
た。また、モニタリングした各地点では内面の調査も行
い、1.8m四方の範囲で実際に生じている局部腐食の
腐食孔深さをデプスゲージにより実測した。局部腐食深
さの程度は、場所によって様々に異なっていた。図5
に、局部腐食モニターを用いて測定した電池電流とゲー
ジを用いて実測した局部腐食深さの関係を示す。
【0037】縦軸は局部腐食深さを示し、横軸は電池電
流を密度に換算して示した。電流密度は測定した電流値
をモニターの電極面積で除して求めた。縦に並んだプロ
ットは、それぞれのプロット列が各地点で測定された局
部腐食の深さの分布を示している。従って、縦に並んだ
プロットの最大値は、各地点で観察された最大の局部腐
食深さである。また、縦に並んだプロットの横軸の読み
値は、その地点において測定された電池電流を密度に換
算した値である。
【0038】図5の直線で示したように、測定した電流
は実際に生じている局部腐食深さの上限値と関係づけら
れる。従って、本発明に係る局部腐食モニターを用いれ
ば、局部腐食深さの程度が評価できることが判る。この
ように、場所によって著しく異なる局部腐食深さの上限
値を実際の鋼構造体についてモニタリングできた実施結
果は、従来の局部腐食モニタリングの報告例では見当た
らない。
【0039】なお、測定された電流値が大きくても実際
に生じていた局部腐食深さが小さい地点もある。この理
由については、次の二つが考えられる。一つには、測定
された電流値は局部腐食の取り得る最大速度(上限値)
に相当するものであるため、その積分値である腐食深さ
については取り得る最大深さ(上限値)と関連づけられ
る。従って、局部腐食が最大速度に到達していない場合
には、その局部腐食深さは図5の直線より下側の値とな
る。もう一つには、現時点での腐食速度が速くても、局
部腐食が進展した期間が短いという場合がこれに当ては
まる。このような場合であっても、局部腐食モニタリン
グを定期的に行い測定電流を積分すれば、局部腐食深さ
のより正確な評価を行うことができることは云うまでも
ない。いずれにしても、図5に示したように、局部腐食
深さの上限値が評価できれば、局部腐食による損傷の評
価を行うために十分に有効である。
【0040】
【発明の効果】本発明局部腐食モニタリング用模擬電極
および当該電極を用いた局部腐食モニタリング方法は以
上説明したように、測定対象となる金属構造体等と同じ
材質の平板状金属片の側面および底面をエポキシ樹脂等
の絶縁塗料で絶縁被覆し、金属を露出させた面にはゲル
化等により腐食性溶液を固定ないし定着させることで常
に活性化させると共に、腐食性溶液の固定物の厚みを薄
くすることで平板状にしたモニター電極を、被覆等によ
り絶縁した底面を下にして水溶液または土壌中等の湿潤
環境中にある金属構造体等の測定しようとする任意の部
分に置き、金属構造体等と無抵抗電流計を介して短絡さ
せ電池電流を測定するようにしたことを特徴とし、局部
腐食を受けている金属構造体等の腐食損傷評価もしくは
局部腐食の取り得る最大速度(上限値)を推定するもで
ある。
【0041】モニタリングの原理は局部腐食のメカニズ
ムに基づいているので、これに該当する局部腐食事例に
対しては普遍的に適用することができる。また、測定に
要する時間は極短時間であり、かつ任意の場所での、そ
の場測定ができるので、この局部腐食モニターを移動さ
せつつ用いれば、広い面積をモニタリングすることがで
きる。従って、局部腐食速度の上限値が大きい場所もし
くは局部腐食の最大深さが深いと予想される場所を特定
するために用いることも可能である。さらに、測定は極
めて簡便であり、複雑な形状の金属構造体に対しても適
用することができる等の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】模擬電極の構成を示す上面図および断面図であ
る。
【図2】本発明に係る模擬電極を用いて局部腐食をモニ
タリングする際の構成を示す概略図である。
【図3】塗装した鋼構造物に局部腐食が生じた場合の一
例を示す説明図である。
【図4】測定電流と孔食進展速度の関係を示すグラフで
ある。
【図5】電池電流密度と局部腐食深さの関係を示すグラ
フである。
【符号の説明】
1:金属片 2:リード線 3:絶縁被覆ないし絶縁被膜 4:腐食性溶液 5:金属構造体ないし金属装置 6:モニター電極 7:無抵抗電流計 8:鋼構造物 9:局部腐食 10:鋼構造物のコ
ーナー部 11:腐食電池のカソード 12:電流 13:湿潤環境
フロントページの続き (71)出願人 000110310 トヨタ工業株式会社 東京都江戸川区松江5丁目10番16号 (71)出願人 595085619 株式会社東京仙印商店 東京都江東区東陽1丁目19番3号 (71)出願人 390018050 日本ポリエステル株式会社 大阪府大阪市北区芝田2丁目8−33 (71)出願人 597001039 株式会社タック 東京都目黒区碑文谷2丁目11番19号 (71)出願人 597155789 丸石工業株式会社 東京都江東区豊洲1丁目2番34号 (72)発明者 朝倉 祝治 神奈川県横浜市旭区中沢町1丁目31番3号 (72)発明者 永井 崇昭 神奈川県横浜市保土ヶ谷区釜台町36番31号 Fターム(参考) 2G050 AA01 BA01 CA04 DA01 EA02 EB03 EC06

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 測定対象となる金属構造体ないし金属装
    置と同じ材質の金属片の側面および底面に絶縁被覆ない
    し絶縁被膜を形成し、金属を露出させた表面には腐食性
    溶液を固定ないし定着させることで常に活性化させるよ
    うにしたことを特徴とする局部腐食モニタリング用模擬
    電極。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電極を、絶縁被覆ないし
    絶縁被膜を形成した底面を下にして湿潤環境中にある金
    属構造体ないし金属装置の測定しようとする任意の部分
    に置き、金属構造体ないし金属装置と無抵抗電流計を介
    して短絡させ腐食電池による電池電流を測定すること
    で、その場でかつ瞬時にモニタリングすることを可能と
    した局部腐食モニタリング方法。
JP10226574A 1998-07-28 1998-07-28 局部腐食モニタリング用模擬電極および当該電極を用いた局部腐食モニタリング方法 Withdrawn JP2000046778A (ja)

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