JP7484481B2 - 被覆金属材の耐食性試験方法 - Google Patents

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Description

本開示は、被覆金属材の耐食性試験方法に関する。
腐食試験用センサとして、ACM型腐食センサが知られている。これは、基板となる対象金属(Fe、亜鉛メッキ鋼板など)の上に、絶縁ペーストをスクリーン印刷し、さらにその上に基板との絶縁が保たれるように導電性ペースト(Agなど)を積層印刷したものである。これを、大気中に暴露すると、降雨や結露などによって導電ペーストの金属と基板の間に薄い水膜が形成されて、腐食電流が流れる。この電流は腐食速度と相関があるので、大気環境の腐食性をモニタリングすることができる。
また、腐食試験方法の別の例が特許文献1に記載されている。これは、基板の表面の複数箇所に絶縁部を介して導電部を設けてなる腐食センサを用いる。この腐食センサは、基板が大気に晒される構造物の構成部材と同一の素材で形成され、その基板の表面が上記構成部材に施される塗膜と同一の塗膜で覆われる。腐食センサが大気に晒され、腐食因子の作用によって塗膜に亀裂が入ると、亀裂から雨水が侵入して導電部と基板が短絡し、腐食電流が流れる。これを電流計で計測することにより、塗膜の劣化が判断される。
さらに、特許文献2には、異種金属材を交互に且つその異種金属材間に電気絶縁材を挟んで積層し、この積層体の露頭をセンサ面として、湿気や腐食因子を検出する湿気センサが開示されている。この湿気センサは、センサ面に塗膜を形成することにより腐食センサとして使用できる。
特開2010-133748号公報 特開2019-200141号公報
ACM型腐食センサは、対象金属が大気に晒される状態での腐食環境強度のモニタリングに使用される。つまり、未塗装で使用される。しかし、腐食は塗膜下で進行するところ、腐食環境強度は塗膜下と塗膜の外側では必ずしも一致しない。すなわち、ACM型腐食センサでは塗膜下の腐食環境強度の評価ができない。
これに対して、特許文献1の腐食試験方法では、センサの表面を塗膜で覆った状態で腐食電流を検出するが、塗膜に亀裂を生じて雨水が浸入しなければ、腐食電流は流れない。すなわち、塗装物においては、腐食因子が塗膜に浸透して塗膜下に達したり、或いは塗膜下から塗膜外に抜け出ることが繰り返されるところ、特許文献1の腐食試験方法では、そのような腐食因子の出入りをモニタリングすることができない。
しかも、センサの表面には絶縁部と導電部の積層によって凹凸ができているから、塗膜を一定厚さで形成することができず、塗膜の厚さが耐食性に与える影響を評価することが難しい。
また、特許文献2の湿気センサは、センサ面に塗膜を形成することにより腐食センサとして使用できるが、鋼板等の金属製基材上に設けられた塗膜下の腐食環境強度の評価を行うことは困難である。
そこで、本開示は、金属製基材に表面処理膜が設けられてなる被覆金属材における表面処理膜下の腐食環境強度を簡便な構成で高い信頼性をもって評価できる耐食性試験方法をもたらすことを課題とする。
上記の課題を解決するために、ここに開示する技術は、金属製基材に表面処理膜が設けられてなる被覆金属材の耐食性試験方法であって、前記表面処理膜の表面上に、前記金属製基材と非接触状態で、前記金属製基材よりも標準電極電位が高い材料からなる導電部を配置する準備工程と、前記金属製基材と前記導電部とを、電流検出手段を備えた外部回路を介して接続させる接続工程と、前記被覆金属材に、前記表面処理膜を貫通して前記金属製基材に達する人工傷を形成する人工傷形成工程と、前記被覆金属材に腐食因子を接触させることにより、前記被覆金属材の耐食性を試験する試験工程と、を備え、前記準備工程で、前記表面処理膜の表面上に、前記導電部として、所定幅を有し且つ互いに所定間隔を空けて並設された複数の線状パターンを備えた薄膜を形成し、前記試験工程で、前記表面処理膜内に浸透した前記腐食因子により前記金属製基材と前記導電部とが電気的に短絡して流れる腐食電流に基づいて、前記被覆金属材の耐食性としての腐食進展速度を評価することを特徴とする。
一般に、表面処理膜を備えた被覆金属材では、例えば湿気、塩水などの腐食因子が表面処理膜に浸透し、金属製基材に到達することで腐食が開始する。従って、被覆金属材の腐食過程は、腐食が発生するまでの過程と腐食が進展する過程とに分けられる。腐食が発生するまでの過程は、腐食が開始するまでの期間(腐食抑制期間)を求めることにより評価できる。また、腐食が進展する過程は、腐食が進展する速度(腐食進展速度)を求めることにより評価できる。
本構成では、腐食因子を含む腐食環境に被覆金属材をさらすことや、被覆金属材に腐食因子を直接供給すること等により、被覆金属材に腐食因子を接触させると、表面処理膜内に腐食因子が浸透する。そして、表面処理膜に浸透した腐食因子が導電部と金属製基材の双方に到達すると、両者が電気的に短絡するとともに金属製基材の溶解反応が始まり腐食電流が流れ始める。すなわち、腐食電流が流れ始めたときが腐食の発生時、すなわち腐食抑制期間の終了時と考えられる。そして、腐食因子は表面処理膜にさらに浸透して広がっていく。金属製基材の溶解反応もさらに進行する。そうして、腐食電流の電流量が増加していく。これらの現象は、腐食が進展する過程を模擬的に作り出していると言える。従って、その電流量の増加過程を観測することにより、腐食進展速度を評価できる。そうして、簡便な構成で信頼性の高い耐食性試験が可能となる。
本構成では、前記準備工程で、前記表面処理膜の表面上に、前記導電部として、所定幅を有し且つ互いに所定間隔を空けて並設された複数の線状パターンを備えた薄膜を形成する。
本構成によれば、導電部が複数の線状パターンを備えた薄膜であるから、腐食が発生した位置を中心として腐食が進展したときに、腐食因子が到達した線状パターンには順次電流が流れるようになる。そうすると、複数の線状パターンの各々に腐食因子が到達するたびに、その線状パターンに流れ始めた電流が電流検出手段により検出されるから、簡便な構成で腐食進展速度を精度よく評価できる。
一実施形態では、前記所定幅は、0.5mm以上5mm以下であり、前記所定間隔は、0.5mm以上5mm以下である。
例えば、自動車が高速道路上を走行中に融雪塩等が車体に付着して水滴ができる場合がある。このように、物体の表面に塩等が付着して水滴となる場合、水滴の径は一般的に300μm程度であることが知られている。
本構成によれば、複数の線状パターンの所定幅及び所定間隔の下限値を上記の値とすることにより、腐食因子として上述のような水滴が付着した場合であっても、隣り合う線状パターンに同時に水滴が付着してしまうことを抑制できる。また、所定幅及び所定間隔の上限値を上記の値とすることにより、腐食電流の電流量の増加過程をより細かく検出できる。そうして、信頼性の高い耐食性試験が可能となる。
一実施形態では、前記導電部は、前記複数の線状パターンを接続するパッド部を備え、前記接続工程で、前記外部回路は、前記導電部における前記パッド部に接続される。
本構成によれば、複数の線状パターンの各々と金属製基材とを外部回路で接続する必要がないから、接続工程を簡素化できる。
一実施形態では、前記試験工程で、前記電流検出手段により検出された電流値の時間変化と、前記所定幅及び前記所定間隔と、に基づいて、前記腐食進展速度を算出する。
複数の線状パターンはパッド部を通じて互いに導通している状態であるから、電流計により検出される電流値は、腐食の進展に伴い、これまでに検出された電流値の積算値として検出され、階段状に増加していく。この電流値の時間変化と、線状パターンの所定幅及び所定間隔と、に基づいて、腐食進展速度を算出できる。
一実施形態では、前記複数の線状パターンは、前記表面処理膜の表面上において互いに非導通状態に形成され、前記外部回路は、前記複数の線状パターンの各々と、前記金属製基材と、を接続する複数の配線を備える。
本構成によれば、複数の線状パターンは互いに非導通状態であるから、腐食が進展して、線状パターンの各々に流れる電流を個別に検出できる。これにより、線状パターンの各々に流れる電流値を精度よく計測できるから、腐食進展速度の算出精度が向上する。
一実施形態では、前記外部回路は、配線と、該配線の先端側にハンダ付けされた金属板と、を備え、前記接続工程で、前記金属板と前記導電部とを導電ボンドを介して固定することにより、前記導電部と前記外部回路とを接続する。
導電部と外部回路との接続部分は十分に導通を確保する必要がある。しかしながら、導電部に直接配線の先端側をハンダ付けすることは、導電部の損傷を招き、導通を確保できないおそれがある。本構成によれば、配線の先端側にハンダ付けされた金属板と導電部とを導電ボンドを用いて接着固定させるから、導電部の損傷を抑制しつつ、接続部分における十分な導通を確保できる。
上記構成では、前記被覆金属材に、前記表面処理膜を貫通して前記金属製基材に達する人工傷を形成する人工傷形成工程を備える。
表面処理膜を貫通して金属製基材にまで到達する人工傷を形成すると、腐食因子は、人工傷内に侵入し、金属製基材に到達する。そうして、人工傷の部分から表面処理膜内への腐食因子の浸透が促進される。また、金属製基材も腐食因子と接触するから、金属製基材の溶解反応も開始する。このことは、人工傷の部分から腐食が開始したことを意味する。すなわち、人工傷を形成することにより、腐食抑制期間終了時の状態を模擬的に作り出すことができる。そうして、より短時間で精度よく腐食進展速度を評価できる。
一実施形態では、前記人工傷は、前記表面処理膜の表面上における前記導電部が形成された領域の中央部に形成される。
本構成によれば、腐食の起点となる人工傷を導電部が形成された領域の中央部に設けるから、導電部が形成された領域全体を耐食性試験に利用できる。
一実施形態では、前記試験工程で、前記人工傷が形成された部分に前記腐食因子を供給する。
本構成によれば、人工傷が形成された部分に腐食因子を直接供給することにより、人工傷を起点とする腐食の進展をより確実に促進できる。そうして、より短時間で信頼性の高い耐食性試験が可能となる。
一実施形態では、前記準備工程で、スクリーン印刷により前記導電部を形成する。
本構成によれば、導電部を簡便な方法で確実に形成できる。
なお、当該耐食性試験に供するに適した被覆金属材としては、例えば、金属製基材に表面処理膜として樹脂塗膜が設けられた塗装金属材がある。
金属製基材は、例えば、家電製品、建材、自動車部品等を構成する鋼材、例えば、冷間圧延鋼板(SPC)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)、高張力鋼板又はホットスタンプ材等であり、或いは軽合金材であってもよい。金属製基材は、表面に化成皮膜(リン酸塩皮膜(例えば、リン酸亜鉛皮膜),クロメート皮膜等)が形成されたものであってもよい。
樹脂塗膜としては、具体的には例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系等のカチオン電着塗膜(下塗り塗膜)があり、電着塗膜に上塗り塗膜が重ねられた積層塗膜、電着塗膜に中塗り塗膜及び上塗り塗膜が重ねられた積層塗膜等であってもよい。
塗装金属材は、例えば家電製品、建材、自動車部品等の材料として用いられる。
一実施形態では、自動車の試験対象箇所に、当該箇所を構成する塗装金属材と同一仕様の被覆金属材に前記導電部及び前記外部回路を設けてなる試験片を配置し、前記自動車がさらされる環境に対する前記被覆金属材の耐食性を試験する。
本構成によれば、自動車の使用に伴う自動車各部の塗膜下の腐食環境強度を評価することができ、防錆構造の設計や塗膜の設計に有利になる。
本明細書において開示する被覆金属材の耐食性試験方法の他の一態様は、金属製基材に表面処理膜が設けられてなる被覆金属材の耐食性試験方法であって、前記表面処理膜の表面上に、前記金属製基材と非接触状態で、前記金属製基材よりも標準電極電位が高い材料からなる導電部を配置する準備工程と、前記金属製基材と前記導電部とを、電流検出手段を備えた外部回路を介して接続させる接続工程と、前記被覆金属材に腐食因子を接触させることにより、前記被覆金属材の耐食性を試験する試験工程と、を備え、前記試験工程で、前記表面処理膜内に浸透した前記腐食因子により前記金属製基材と前記導電部とが電気的に短絡して流れる腐食電流に基づいて、前記被覆金属材の耐食性としての腐食進展速度を評価するものであり、前記導電部は、前記外部回路の一端側に設けられ且つ前記表面処理膜の表面上に当接可能なプローブであり、前記準備工程は、前記プローブを、該プローブの先端側に配置された腐食因子を介して前記表面処理膜の表面上に当接させる工程である。
腐食が発生した位置を中心としてプローブ位置を変化させると、腐食が進展している位置では、電流値が増加又は抵抗値が低下する一方、腐食が進展していない位置では、電流量が低下又は抵抗値が増加する。従って、腐食が発生した位置を中心としてプローブ位置を変化させることにより、腐食の進展度合いを観察することができ、腐食進展速度を算出できる。そうして、簡便な構成で信頼性の高い耐食性試験が可能となる。
以上述べたように、本開示によれば、被覆金属材に腐食因子を接触させると、表面処理膜内に腐食因子が浸透する。そして、表面処理膜に浸透した腐食因子が導電部と金属製基材の双方に到達すると、両者が電気的に短絡するとともに金属製基材の溶解反応が始まり腐食電流が流れ始める。すなわち、腐食電流が流れ始めたときが腐食の発生時、すなわち腐食抑制期間の終了時と考えられる。そして、腐食因子は表面処理膜にさらに浸透して広がっていく。金属製基材の溶解反応もさらに進行する。そうして、腐食電流の電流量が増加していく。これらの現象は、腐食が進展する過程を模擬的に作り出していると言える。従って、その電流量の増加過程を観測することにより、腐食進展速度を評価できる。そうして、簡便な構成で信頼性の高い耐食性試験が可能となる。
実施形態1に係る耐食性試験方法において使用される試験片の平面図である。 図1のA-A線における断面図である。 実施形態1に係る耐食性試験方法を説明するためのフローである。 接続工程を説明するための断面図である。 自動車の耐食性試験の一例を示す図である。 実験例の耐食性試験における試験片表面のデジタル顕微鏡像である。 実験例の耐食性試験における電流値の経時変化を示すグラフである。 実施形態2における試験片の図1相当図である。 実施形態3における試験片の図1相当図である。 実施形態4に係る耐食性試験方法を説明するための図であり、(a)は試験片の平面図、(b)は(a)のC-C線における断面図、(c)はプローブ位置に対する抵抗値の変化を示すグラフである。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
(実施形態1)
<試験片>
図1は、本開示の実施形態1に係る耐食性試験において使用される試験片10の平面図である。図2は、試験片10のA-A線における断面図である。
図1及び図2に示すように、試験片10は、被覆金属材1と、導電部13と、金属板15(外部回路)と、配線17(外部回路)と、電流計19(電流検出手段)と、を備える。
試験片10における被覆金属材1は、試験対象である自動車部品用の塗装金属材と同一仕様のものである。被覆金属材1は、鋼板2の表面に化成皮膜3が形成されてなる金属製基材と、該金属製基材に設けられた電着塗膜4(樹脂塗膜)を備える。試験片10における被覆金属材1は、例えば試験対象箇所を構成する塗装金属材の一部を切り出してなるサンプル等である。
導電部13は、電着塗膜4の表面上に鋼板2及び化成皮膜3と非接触状態で設けられた薄膜である。導電部13は、鋼板2の主成分であるFeよりも標準電極電位が高い、すなわちFeよりも貴な材料からなる。導電部13を構成する材料としては、さらにFeと化合物を形成しない材料であることが望ましい。そのような材料としては、具体的には例えば、Ag、C(カーボン)、Ti、Pt、Au等が挙げられ、コスト性及びハンドリング性の観点から、Ag、C(カーボン)を用いることが望ましい。
鋼板2と導電部13とは、電着塗膜4により隔てられており、直接には接触していない一方、電流計19を備えた配線17により接続されている。配線17の鋼板2側の先端は、鋼板2にハンダ付けされている。配線17の導電部13側の先端には、例えば鋼板、銅板等からなる金属板15がハンダ付けされており、金属板15が導電部13に固定されている。
導電部13は、所定幅Wを有し且つ互いに所定間隔Dを空けて並設された複数の線状パターン13Aと、これら複数の線状パターン13Aを接続するパッド部13Cと、を備える。なお、図1では、隣り合う線状パターン13A間の間隙部分を符号13Bで示している。
本構成によれば、後述する試験工程S4において、腐食が発生した位置を中心として腐食が進展したときに、腐食因子が到達した線状パターン13Aに順次電流が流れるようになる。すなわち、複数の線状パターン13Aの各々に腐食因子が到達するたびに、その線状パターンに流れ始めた電流が電流計19により検出されるから、簡便な構成で腐食進展速度を精度よく算出できる。
線状パターン13Aの所定幅Wは、好ましくは0.5mm以上5mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上3mm以下である。所定間隔Dは、0.5mm以上5mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上3mm以下である。所定幅Wと所定間隔Dとは、同一サイズであってもよいし、異なるサイズであってもよい。
所定幅W及び所定間隔Dが0.5mm未満では、腐食因子が供給されたときに、隣り合う線状パターン13Aに同時に腐食因子が付着し、試験工程S4において、電流値の経時変化の検出及び腐食進展速度の算出が困難になるおそれがある。また、所定幅W及び所定間隔Dが5mmを超えると、電流値の経時変化の検出に時間を要し、短時間での耐食性試験が困難となるおそれがある。
<耐食性試験方法>
図3に示すように、本実施形態に係る耐食性試験方法は、準備工程S1と、接続工程S2と、人工傷形成工程S3と、試験工程S4と、を備える。以下、各工程について説明する。
-準備工程-
準備工程S1では、電着塗膜4の表面上に、鋼板2及び化成皮膜3と非接触状態で、導電部13を形成する。
導電部13の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、インクジェット法、スクリーン印刷法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタリング法、めっき法等の公知技術が挙げられる。導電部13を簡便な方法で確実に形成する観点から、スクリーン印刷により形成することが望ましい。
-接続工程-
接続工程S2では、鋼板2と導電部13とを、電流計19を備えた配線17で接続する。電流計19は、鋼板2及び導電部13間に流れる電流値を検出するためのものである。
例えば図4に示すように、配線17の導電部13側の先端にはハンダ23により、金属板15が固定されている。導電部13のパッド部13Cに、導電ボンド21を塗布し、その上に金属板15を載置する。そして、導電ボンド21の硬化条件に応じた加熱、乾燥等の処理を行い、導電ボンド21を硬化させる。そうして、導電部13のパッド部13Cに金属板15が固定され、配線17は導電部13に接続される。
導電部13と配線17との接続部分は十分に導通を確保する必要がある。しかしながら、導電部13に直接配線17の先端をハンダ付けすることは、導電部13の損傷を招き、導通を確保できないおそれがある。本構成では、ある程度面積のある金属板15と導電部13とを導電ボンド21を用いて接着固定させる。また、複数の線状パターン13Aを接続するパッド部13Cに金属板15を固定する。これにより、導電部13の損傷を抑制しつつ、接続部分における十分な導通を確保できる。
なお、導電ボンド21は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂にAg、C(カーボン)等の導電性粉末を含んでなる導電性の接着剤であり、常温~120℃程度で硬化するものが望ましい。
また、図4の例では、導電ボンド21を導電部13に塗布しているが、金属板15又は両方に塗布してもよい。
-人工傷形成工程-
人工傷形成工程S3では、図1及び図2に示すように、被覆金属材1に、導電部13、電着塗膜4及び化成皮膜3を貫通して鋼板2に達する人工傷5を形成する。後述するように、人工傷5を形成することにより、腐食抑制期間終了時又はそれに近い状態を模擬的に再現でき、腐食進展速度の算出が容易となる。
人工傷5は、導電部13が形成された領域であればいずれの位置に形成してもよいが、電着塗膜4の表面上において導電部13が形成された領域の中央部に形成されることがより望ましい。具体的には例えば、図1では、複数の線状パターン13Aのうち、その幅方向における中央の線状パターン130上であって、その長さ方向における中央近傍に人工傷5は形成されている。このように、腐食の起点となる人工傷5を導電部13が形成された領域の中央部に設けると、導電部13が形成された領域全体を耐食性試験に利用できる。なお、本明細書において、「導電部13が形成された領域の中央部」とは、完全に中央の位置及びその半径約10mm程度の範囲の近傍を含む概念である。
人工傷5は、点状に形成されていることが望ましい。「点状」とは、平面視において円形、多角形等の形状であり、その最大幅と最小幅との比が2以下の形状であることをいう。
人工傷5を付ける道具の種類は特に問わないが、試験毎に人工傷5の大きさや深さにばらつきを生じないように、すなわち、定量的に傷を付ける観点から、例えば、自動傷付けポンチを用いる方法、ビッカース硬さ試験機を用いてその圧子により所定荷重で傷を付ける方法等が好ましい。
人工傷5の最大幅を人工傷5の径とすると、人工傷5の径は、好ましくは0.1mm以上5mm以下(人工傷5の表面積は0.01mm以上25mm以下)、より好ましくは0.15mm以上2.0mm以下、特に好ましくは0.2mm以上1.5mm以下とすることができる。人工傷5の径が0.1mm未満まで小さくなると、腐食で生じた錆により人工傷5が塞がれてしまい、腐食が進展しなくなるおそれがある。人工傷5の径が5mmを超えると、鋼板2の露出部分が大きくなりすぎるため、鋼板2の溶解反応が主となり、腐食因子6の電着塗膜4内への浸透が進まなくなるおそれがある。
-試験工程-
試験工程S4は、被覆金属材1に腐食因子6を接触させることにより、被覆金属材1の耐食性を試験する工程である。具体的には例えば、被覆金属材1の人工傷5が形成された部分に腐食因子6を供給する。
本実施形態に係る耐食性試験において用いられる腐食因子6は、具体的には例えば水及び支持電解質を含有してなる含水電解質材料である。
支持電解質としては、具体的には例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、酒石酸水素カリウム及び硫酸マグネシウムから選択される少なくとも一つの塩を採用することができる。支持電解質としては、特に好ましくは塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム及び塩化カルシウムから選択される少なくとも一つの塩を採用することができる。腐食因子6における支持電解質の含有量は、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは3質量%以上15質量%以下であること、特に好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
腐食因子6は、水及び支持電解質に加えて、粘土鉱物を含有してなる泥状物であってもよい。粘土鉱物は、腐食因子6を泥状にするとともに、電着塗膜4へのイオンの移動及び水の浸透を促進させ、腐食の進行を促す。粘土鉱物としては、例えば、層状ケイ酸塩鉱物又はゼオライトを採用することができる。層状ケイ酸塩鉱物としては、例えば、カオリナイト、モンモリロナイト、セリサイト、イライト、グローコナイト、クロライト及びタルクから選択される少なくとも一つを採用することができ、特に好ましくはカオリナイトを採用することができる。腐食因子における粘土鉱物の含有量は、好ましくは1質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上50質量%以下、特に好ましくは20質量%以上30質量%以下である。なお、腐食因子6が泥状物であることにより、電着塗膜4が水平になっていない場合でも、該電着塗膜4の表面に腐食因子6を配置できる。
腐食因子6は、水、支持電解質及び粘土鉱物以外の添加物を含有してもよい。このような添加物としては、具体的には例えばアセトン、エタノール、トルエン、メタノール等の有機溶剤が挙げられる。腐食因子6が有機溶剤を含有する場合は、有機溶剤の含有量は、水に対して体積比で5%以上60%以下であることが好ましい。その体積比は、10%以上40%以下であること、20%以上30%以下であることがさらに好ましい。
図1及び図2に示すように、線状パターン130の人工傷5が形成された部分に腐食因子6を供給すると、人工傷5が形成された部分から腐食が開始する。具体的に、本例において、人工傷5は電着塗膜4及び化成皮膜3を貫通して鋼板2にまで到達しているから、腐食因子6は、人工傷5内に侵入し、鋼板2に到達する。そうして、矢印6Bで示すように、人工傷5の部分から電着塗膜4内への腐食因子6の浸透が促進される。また、腐食因子6が鋼板2と接触することにより、鋼板2の溶解反応(Fe→Fe2++2e)も開始して腐食電流18が流れ始める。このように、人工傷5を形成するとともに、人工傷5が形成された部分に腐食因子6を直接供給することにより、被覆金属材1の腐食過程のうち、腐食抑制期間終了時の状態を模擬的に作り出すことができる。
そして、線状パターン130の人工傷5の位置から、腐食因子6の浸透が進むと、線状パターン130の隣の線状パターン131に腐食因子6が到達する(図2中符号61)。そうすると、腐食因子6により鋼板2と線状パターン131とが電気的に短絡するとともに鋼板2の溶解反応も進行するから、腐食電流18の電流量が増加する。線状パターン130と線状パターン131とはパッド部13Cにより接続されているから、腐食因子6が線状パターン131に到達したときに電流計19により検出される電流値は、到達前の電流値に対する積算値として検出される。同様に、腐食因子6の浸透が進み、線状パターン132~135に順に到達すると(図2中符号62~65)、それに伴って腐食電流18の電流量は順次増加する。そして、電流計19により検出される電流値は、これまでに検出された電流値の積算値として検出されるから、最終的には階段状に増加する電流波形が得られる。
このような腐食因子6の電着塗膜4内への浸透の広がり及び鋼板2の溶解反応の進行は、腐食が進展する過程を模擬していると言える。従って、電流値の時間変化と、線状パターン13Aの所定幅W及び所定間隔Dと、に基づいて、腐食進展速度を精度よく算出することができる。
また、本構成では、人工傷5が形成された部分に腐食因子6を直接供給するから、人工傷5を起点とする腐食の進展をより確実に促進できる。そうして、より短時間で信頼性の高い耐食性試験が可能となる。
なお、試験工程S4として、以下のような試験を行ってもよい。すなわち、例えば図5に示すように、自動車25の1つ又は複数の試験対象箇所(図例では、フェンダー26、フロア下面27及びリヤホイールハウス28)に、当該箇所を構成する塗装金属材と同一仕様の被覆金属材1に上述の方法で導電部13、配線17及び人工傷5を設けてなる試験片10を設置する。そうして、自動車25がさらされる環境に対する被覆金属材1の耐食性を試験してもよい。本構成によれば、自動車25の使用に伴う自動車各部の塗膜下の腐食環境強度を評価することができ、防錆構造の設計や塗膜の設計に有利になる。
<実験例>
以下、具体的な実験例について説明する。
まず、実験例の耐食性試験において使用する試験片10を作製した。
被覆金属材1の仕様は以下の通りである。すなわち、金属製基材としては、鋼板2としてのGAの表面に化成皮膜3としてのリン酸亜鉛皮膜が形成されてなるものを用いた。なお、リン酸亜鉛皮膜の形成に係る化成処理時間は120秒であった。表面処理膜としては、エポキシ系樹脂からなる電着塗膜4が設けられたものを用いた。電着焼付条件は150℃、20分、電着塗膜4の厚さは10μmであった。
上記被覆金属材1の電着塗膜4の表面上に、Agペーストを用いてスクリーン印刷により図1に示す導電部13を形成した。所定幅W及び所定間隔Dは、いずれも2mmであった。また、導電部13の厚さは50μmであった。
次に、配線17を鋼板2及び導電部13に接続した。鋼板2には、ハンダ付けにより配線17の一端を固定した。配線17の他端には、GAの金属板15をハンダ付けした。導電部13のパッド部13Cに市販のカーボン系の導電ボンド21を塗布し、その上に金属板15を配置し、常温で硬化させて、両者を固定した。
そして、ビッカース硬さ試験機を用いて、鋼板2に達する人工傷5を付与した。人工傷5の径は、1mmであった。
試験片10の人工傷5を形成した位置に、腐食因子6としての模擬泥を載置し、温度50℃、湿度98%の条件で耐食性試験を行った。模擬泥は、水1.2Lに対し、支持電解質としての塩化ナトリウム50g、塩化カルシウム50g、及び硫酸ナトリウム50g、並びに、粘土鉱物としてのカオリナイト1000gを混合させてなるものである。
図6は、耐食性試験後の試験片10の表面のデジタル顕微鏡像である。また、図7は、実験例の耐食性試験における電流値の結果を示すグラフである。図6に示すE1~E5の画像は、全て同一の画像であり、耐食性試験後に模擬泥を除去した状態の試験片10の表面を撮影したものである。これらの画像内に、白線で腐食の進展の過程を示しており、E1~E5の符号は、図7に示すE1~E5の符号に対応している。
図6のE1に示すように、導電部13が形成された領域の中央部に人工傷5を形成し、模擬泥を供給すると、図7のE1で示すように、電流値が増加する。これは、人工傷5が形成された部分で腐食が発生し、当該部分の線状パターンに電流が流れたことを示している。
次に、図6のE2に示すように、腐食が発生した部分の線状パターンの隣に位置する線状パターンにまで腐食が進展すると、図7のE2で示すように、さらに電流値が増加する。同様に、図6のE3~E5に示すように、さらに腐食が進展してより外側の線状パターンに腐食が到達すると、図7のE3~E5で示すように、階段状に電流値が増加していく。
例えば、図6及び図7のE3のデータに基づいて、腐食進展速度を算出する。図6から、E3は、人工傷5が形成された線状パターン13Aの2つ隣の線状パターン13Aに腐食が到達したことを示す。そうすると、所定幅D及び所定間隔Dはいずれも2mmであるから、E3における人工傷5から腐食が到達した位置までの距離は約8mmと算出できる。そして、最初に電流値が増加したE1の時刻(約200分)とE3の時刻(約1100分)から、腐食が発生してからE3の位置に腐食が到達するまでに要した時間は、約15時間(1100分-200分=900分)と算出できる。これらの情報から、腐食進展速度は、約0.5mm/時間と算出できる。このようにして、腐食の開始から任意の線状パターンに腐食が到達したときの電流値の時間変化と、線状パターン13Aの所定幅W及び所定間隔Dと、に基づいて、腐食進展速度を算出できる。
(実施形態2)
以下、本開示に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
実施形態1では、導電部13の複数の線状パターン13Aはパッド部13Cにより互いに接続されている構成であったが、当該構成に限られない。図8に示すように、複数の線状パターン13Aは、電着塗膜4の表面上において互いに非導通状態に形成されてもよい。
具体的に、図8の例では、4本の線状パターン13Aが形成されている。試験片10は、線状パターン13Aの各々と、鋼板2と、を接続する4本の配線17を有している。4本の配線17の各々の導電部13側の先端には、それぞれ金属板15がハンダ付けされており、当該金属板15の各々が線状パターン13Aの各々と接続されている。
そして、人工傷5は、図8に示す4本の線状パターン13Aのうち、内側の2本の線状パターン131間の間隙部分13Bに形成されている。この場合、人工傷5が形成された部分に腐食因子6を供給すると、供給直後は、電流計19により電流値はほとんど検出されない。そして、人工傷5が形成された部分を起点として腐食が進行し、符号61で示す位置まで腐食が進行した状態では、線状パターン131に電流が流れる。さらに、符号62で示す位置まで腐食が進行した状態では、線状パターン132に電流が流れる。
図8の例では、4本の線状パターン13Aは互いに非導通状態であるから、腐食が進展して、線状パターン13Aの各々に流れる電流を個別に検出できる。これにより、線状パターン13Aの各々に流れる電流値を精度よく計測できるから、腐食進展速度の算出精度が向上する。
なお、接続工程S2を簡素化させる観点からは、複数の線状パターン13Aの各々と鋼板2とを配線17で接続する必要がない実施形態1の構成が望ましい。
(実施形態3)
上記実施形態では、導電部13は、複数の線状パターンとして、直線形状のパターンを有していたが、当該構成に限られない。図9に示すように、複数の線状パターンは、曲線であってもよい。図9の例では、導電部13の中央間隙部13Dに人工傷5を形成して、耐食性試験を行えばよい。
(実施形態4)
上記実施形態では、導電部13は、電着塗膜4の表面上に形成された薄膜であったが、当該構成に限られない。
具体的には例えば、図10(a)及び図10(b)に示すように、試験片10の導電部13は、配線17の電着塗膜4側(一端側)に設けられ且つ電着塗膜4の表面上に当接可能なプローブ13Eであってもよい。この場合、配線17は、電流計19の代わりに、通電手段16を備える。通電手段16は、電着塗膜4の表面と鋼板2との間に電圧を印加する電源手段としての役割を担うとともに、両者間に流れる電流を検出する電流検出手段としての役割も担う。通電手段16としては、具体的には例えば、電圧/電流の印加法として制御可能なポテンショ/ガルバノスタット等を使用することができる。
配線17とプローブ13Eとの接続は、上記実施形態の方法を用いてもよいし、ハンダ付けしてもよい。なお、本実施形態では、接続工程S2は、準備工程S1よりも前に行うことになる。
本実施形態において、準備工程S1では、プローブ13Eを、電着塗膜4の表面上に当接させる。このとき、プローブ13Eの先端に、腐食因子6を付着させた状態で、当該先端を電着塗膜4の表面上に当接させることが望ましい。プローブ13Eの先端に腐食因子6を配置することにより、プローブ13E及び電着塗膜4間の接触抵抗を低減できる。
人工傷5を形成するとともに腐食因子6を供給して腐食を発生させると、人工傷5に侵入した腐食因子6は、人工傷5周辺の電着塗膜4内へ浸透していく(図10(b)中符号60)。通電手段16により所定の電圧を印加しつつ、図10(a)及び図10(b)中白抜き矢印で示すように、腐食が発生した位置を中心としてプローブ13Eの位置を変化させると、腐食が進展している位置では、電流値が増加する、すなわち図10(c)のグラフに示すように、抵抗値が低下する。一方、腐食が進展していない位置では、電流値が低下、すなわち抵抗値が増加する。従って、通電手段16により所定の電圧を印加するとともに、腐食が発生した位置を中心としてプローブ位置を変化させることにより、腐食の進展度合いを観察することができ、腐食進展速度を算出できる。そうして、簡便な構成で信頼性の高い耐食性試験が可能となる。
(その他の実施形態)
上記実施形態では、導電部13、電着塗膜4及び化成皮膜3を貫通して鋼板2に達する人工傷5を形成する構成であったが、鋼板2にまで達する人工傷5でなくてもよい。また、人工傷5を形成しなくてもよい。この場合、電着塗膜4に浸透した腐食因子6が導電部13と鋼板2の双方に到達して、両者が電気的に短絡し、腐食電流18が流れ始めたときが腐食の発生時、すなわち腐食抑制期間の終了時と考えられる。従って、最初に腐食が発生した部分を起点として腐食を進展させ、腐食進展速度を算出することになる。なお、所望の位置を起点として腐食を促進させる観点からは、人工傷5を形成する方が望ましい。
また、人工傷5の代わりに自然傷を利用してもよい。この場合、例えば図1、図8、図9において、人工傷5の代わりに自然傷を利用すればよい。具体的には、自然傷を備えた被覆金属材1の表面上に、自然傷がこれらの図の人工傷5の位置に配置されるように導電部13を形成すればよい。試験工程S4で、自然傷に腐食因子6を供給すれば、腐食の進展に伴う電流値の増加を検出でき、腐食進展速度を算出できる。なお、図10の例においても、人工傷5の代わりに自然傷を利用するようにしてもよい。
配線17の鋼板2及び導電部13への接続方法は上記実施形態の構成に限られず、接続部分の導通を十分に確保できれば、公知の他の方法を用いてもよい。
上記実施形態では、表面処理膜として電着塗膜4を備えた構成であったが、被覆金属材1は、表面処理膜として二層以上の多層膜を備えた構成とすることができる。具体的には例えば、電着塗膜4に加え、該電着塗膜4表面上に中塗り塗膜を備えた構成、若しくは該中塗り塗膜上にさらに上塗り塗膜等を備えた構成の多層膜とすることができる。
中塗り塗膜は、被覆金属材1の仕上り性と耐チッピング性を確保するとともに、電着塗膜4と上塗り塗膜との密着性を向上させる役割を有する。また、上塗り塗膜は、被覆金属材1の色、仕上り性及び耐候性を確保するものである。これらの塗膜は、具体的には例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アルキド等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)等の架橋剤とからなる塗料等により形成することができる。
本構成によれば、例えば自動車部材の製造工程等において、塗装工程毎に製造ラインから部品を取り出し、塗膜の品質等を確認することができる。
また、上記実施形態では、腐食因子6は電着塗膜4への水の浸透を促す機能を有する成分として粘土鉱物を含み得る構成であったが、同様の機能を有する成分であれば粘土鉱物以外の物質を含んでもよい。具体的には例えば、腐食因子6は、アセトン、エタノール、トルエン、メタノール等の溶剤、塗膜の濡れ性を向上させるような物質等を含んでもよい。
本開示は、金属製基材に表面処理膜が設けられてなる被覆金属材における表面処理膜下の腐食環境強度を簡便な構成で高い信頼性をもって評価できる耐食性試験方法をもたらすことができるので、極めて有用である。
1 被覆金属材
2 鋼板(金属製基材)
3 化成皮膜(金属製基材)
4 電着塗膜(表面処理膜)
5 人工傷
6 腐食因子
10 試験片
13 導電部
13A 複数の線状パターン
13B 間隙部分
13C パッド部
13E プローブ(導電部)
15 金属板(外部回路)
16 通電手段(電流検出手段)
17 配線(外部回路)
18 腐食電流
19 電流計(電流検出手段)
21 導電ボンド
23 ハンダ
25 自動車
S1 準備工程
S2 接続工程
S3 人工傷形成工程
S4 試験工程

Claims (11)

  1. 金属製基材に表面処理膜が設けられてなる被覆金属材の耐食性試験方法であって、
    前記表面処理膜の表面上に、前記金属製基材と非接触状態で、前記金属製基材よりも標準電極電位が高い材料からなる導電部を配置する準備工程と、
    前記金属製基材と前記導電部とを、電流検出手段を備えた外部回路を介して接続させる接続工程と、
    前記被覆金属材に、前記表面処理膜を貫通して前記金属製基材に達する人工傷を形成する人工傷形成工程と、
    前記被覆金属材に腐食因子を接触させることにより、前記被覆金属材の耐食性を試験する試験工程と、を備え、
    前記準備工程で、前記表面処理膜の表面上に、前記導電部として、所定幅を有し且つ互いに所定間隔を空けて並設された複数の線状パターンを備えた薄膜を形成し、
    前記試験工程で、前記表面処理膜内に浸透した前記腐食因子により前記金属製基材と前記導電部とが電気的に短絡して流れる腐食電流に基づいて、前記被覆金属材の耐食性としての腐食進展速度を評価する
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  2. 請求項において、
    前記所定幅は、0.5mm以上5mm以下であり、
    前記所定間隔は、0.5mm以上5mm以下である
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  3. 請求項又は請求項において、
    前記導電部は、前記複数の線状パターンを接続するパッド部を備え、
    前記接続工程で、前記外部回路は、前記導電部における前記パッド部に接続される
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  4. 請求項において、
    前記試験工程で、前記電流検出手段により検出された電流値の時間変化と、前記所定幅及び前記所定間隔と、に基づいて、前記腐食進展速度を算出する
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  5. 請求項又は請求項において、
    前記複数の線状パターンは、前記表面処理膜の表面上において互いに非導通状態に形成され、
    前記外部回路は、前記複数の線状パターンの各々と、前記金属製基材と、を接続する複数の配線を備える
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  6. 請求項のいずれか1つにおいて、
    前記外部回路は、配線と、該配線の先端側にハンダ付けされた金属板と、を備え、
    前記接続工程で、前記金属板と前記導電部とを導電ボンドを介して固定することにより、前記導電部と前記外部回路とを接続する
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1つにおいて、
    前記人工傷は、前記表面処理膜の表面上における前記導電部が形成された領域の中央部に形成される
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  8. 請求項1~7のいずれか1つにおいて、
    前記試験工程で、前記人工傷が形成された部分に前記腐食因子を供給する
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  9. 請求項のいずれか1つにおいて、
    前記準備工程で、スクリーン印刷により前記導電部を形成する
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  10. 請求項1~のいずれか1つにおいて、
    前記被覆金属材は、前記金属製基材に前記表面処理膜として樹脂塗膜が設けられてなる自動車部品用の塗装金属材である
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
  11. 請求項10において、
    自動車の試験対象箇所に、当該箇所を構成する塗装金属材と同一仕様の被覆金属材に前記導電部及び前記外部回路を設けてなる試験片を配置し、前記自動車がさらされる環境に対する前記被覆金属材の耐食性を試験する
    ことを特徴とする被覆金属材の耐食性試験方法。
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