JP2000042374A - 極性物質の除去装置 - Google Patents

極性物質の除去装置

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JP2000042374A
JP2000042374A JP10225261A JP22526198A JP2000042374A JP 2000042374 A JP2000042374 A JP 2000042374A JP 10225261 A JP10225261 A JP 10225261A JP 22526198 A JP22526198 A JP 22526198A JP 2000042374 A JP2000042374 A JP 2000042374A
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徳久 宮松
Yoshihiko Kanchiku
嘉彦 寒竹
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    • Y02A20/131Reverse-osmosis

Abstract

(57)【要約】 【課題】水のみならず、有機溶剤や空気などの電気絶縁
性の流体も対象として、その中に含まれる極性物質を電
気的に除去できる装置を提供する。 【構成】電気透析装置の脱塩室内に、繊維状イオン交換
体に囲まれた貫通流路および/または繊維状イオン交換
体とイオン交換膜とに囲まれた貫通流路を有し、かつ該
繊維状イオン交換体は両側のイオン交換膜と接触してい
ることを特徴とする流体中に含まれる極性物質の除去装
置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水に限らず、空気、有機
薬液など電気絶縁性の流体に対しても処理対象を広げ、
その中に含まれる極性物質を電気的に連続して除去でき
る新規かつ改良された極性物質除去装置に関し、その利
用分野はクリーンルームの空調や半導体製造用の高純度
薬液および超純水の製造など多岐にわたる。
【0002】
【従来技術】電気透析装置の脱塩室にイオン交換樹脂、
繊維状イオン交換体等のイオン交換体を収容して脱塩を
行う電気再生式純水製造装置が、ここ数年前より実用化
されるようになった。これは、脱塩室にイオン交換体を
収容しない従来型の電気透析装置であれば、脱塩の進行
に伴う水の電導度低下により、低濃度領域における脱塩
の継続が不可能となるところを、イオン交換体を収容す
ることにより電導度低下を大幅に低減でき、高純度の純
水の製造を可能としたものである。これまでの純水製造
法では、たびたびイオン交換樹脂を再生しなければなら
ないのが、電気再生式純水製造装置によれば電源を入れ
ておくだけで継続して高純度の純水が得られ、しかも廃
水処理の必要もないなどのメリットがあり、今後の成長
が期待される新技術として注目されている。
【0003】この電気再生式純水製造装置の脱塩室は、
陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜とに
挟まれた通常数ミリ程度の幅狭い空間であり、この空間
にカチオン交換タイプとアニオン交換タイプが混合され
たイオン交換樹脂、または繊維状イオン交換体が収容さ
れている。イオン交換体が繊維状イオン交換体である場
合、カチオン交換体およびアニオン交換体の混合物(以
後この混合物を単に「繊維状イオン交換体」と表現する
ことがある。)に、さらに補強など物性改善のため合成
繊維を混用した不織布を、脱塩室に装着する。両端のイ
オン交換膜と接触を保つため、反発弾性があり膜間距離
をやや上回る厚さの不織布が用いられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この電気再生式純水製
造装置は、純水の製造には合理的なシステムではある
が、有機溶媒や空気などに含まれるイオン性物質などの
極性物質を除くには、たとえこれらの流体が極性物質を
多く含む場合でも一般的には電気絶縁性であり、したが
って、水以外の流体を対象にした「電気的脱塩」のアイ
デアはなかった。(以後、流体からの極性物質の除去を
「脱塩」と表現することがある。) また純水製造の場合でも、脱塩室に収容されたイオン交
換体間の間隙は極めて狭く目詰まりし易く、脱塩を継続
するには極めて清澄な水が必要であり、実用化は逆浸透
膜装置を前置する場合に限られている現状にある。本発
明は水に限られていた脱塩対象を、気体や有機溶剤系に
広げると共に、純水製造に関しては現行技術の問題点を
取り除こうとするものである。
【0005】本発明者はクリーンルームの空調や半導体
製造用高純度試薬の製造分野において、気体や非水溶媒
さらには各種薬液に対する脱塩のニーズが高まっている
現状に鑑み、純水製造用電気透析装置の合理性を気体や
溶媒系などより多くの流体に適用することを日頃より意
識していたところ、空気やトルエンのような絶縁流体を
脱塩室に導入した場合でも、脱塩室に収容したイオン交
換体の状態によっては電導性が得られる場合があること
に偶然にも気付き、さらに追求した結果、絶縁媒体を入
れた脱塩室が僅かながらも電導性となるのは、1)脱塩
室内にイオン交換樹脂や繊維状イオン交換体などのイオ
ン交換体が収容されていること、2)同時にこれらイオ
ン交換体が適度の水分を保持していること、の二条件が
満足される場合に限られることを突き止めた。
【0006】この知見を契機に、脱塩室の電導性をより
確実なものとすれば、電気絶縁性の流体であっても脱塩
処理(極性物質の除去)が可能になると直感し、鋭意、
装置化研究を始めた。その結果、脱塩室の電導性を高
め、さらに安定化さすには、3)イオン交換体として繊
維状イオン交換体を用い、同時にこの繊維状イオン交換
体が膜間を直結するような配置をとること、と4)繊維
状イオン交換体は引き揃えられ高密度な存在状態とな
り、その上で撚りなどが加えられ互いの接触状態が確保
されることが好ましい要件であることを把握した。さら
に、非水系流体の場合において脱塩を続けると、次第に
電導性が低下しついには脱塩の継続ができなくなる現象
がみられた。この原因についてはイオン交換体の水分が
脱塩運転に伴う電気浸透現象により奪われるためである
ことが判り、対策として、5)水分を持たない非水系流
体の脱塩処理を連続して行うには運転中イオン交換体に
水分補給を必要とする、ことを確認した。
【0007】一方で、脱塩室は繊維状イオン交換体によ
り、狭い脱塩室は一層窮屈となり、特にやや粘性のある
溶液や分散液、さらには水と油、気体と液体など非混合
性の混合流体は、脱塩室を通過するのが不可能となり、
この対策について種々検討した結果、6)脱塩室に挿入
するイオン交換体として、貫通流路を有し、かつ該流路
の周りを繊維状イオン交換体が取り巻いてなるイオン交
換性構造物として用いる、ことが極めて有効であること
を見出すに至った。これは流体の流路を確保し、同時に
繊維状イオン交換体の量と配置を両立させるものであっ
て、上記1)〜5)項をも矛盾なく満足し、本発明のキ
ーポイントともなっている。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる経過を経て本発明
は完成されたものであり、本発明は、電気透析装置の脱
塩室内に、繊維状イオン交換体により囲まれた貫通流路
および/または繊維状イオン交換体とイオン交換膜とに
囲まれた貫通流路を有し、かつ該繊維状イオン交換体は
両側のイオン交換膜と接触していることを特徴とする流
体中に含まれる極性物質の除去装置であり、非水流体を
処理するに際しては必要に応じ水分補給機構を付加する
ものである。
【0009】以下、本発明を図面を交えて説明する。図
1は、本発明装置の例として、後述する実施例で用いた
ものであり、両端に電極室があり、Cが濃縮室、Dが脱
塩室であり、電極室と濃縮室にはそれぞれの室液が循環
する構造となっており、基本的に電気透析装置に似ては
いるが、脱塩室には、繊維状イオン交換体を用いた構造
物が装着され、この装置により、水を始め、水系溶液、
有機溶剤、有機溶剤溶液、さらには気体などの流体中に
含まれる極性物質の除去(脱塩処理)ができる。
【0010】図2は不織布を挿入した現行装置の脱塩
室、図3は本発明による脱塩室を説明するためのもので
あり、いずれも流体の進行と直交する断面より脱塩室内
を見た模式図である。(なお、図1および図10以外の
図面も、脱塩室内を流体の進行方向と直交する断面より
見た、脱塩室内の状態を説明するための模式図であ
る。) 図3は、剛直な中空ネットを芯(支持体)とし、その外
側に繊維状イオン交換体を巻き付けたイオン交換性構造
物を脱塩室内に装着した、本発明の一例であるが、中空
ネットで確保された流路の両端で繊維状イオン交換体と
イオン交換膜は互いに密着し、両端のイオン交換膜間を
最短距離に近い状態でもって接続しており、しかも各繊
維は互いに方向を揃えて接触し合っており、たとえ一部
で繊維の切断があっても隣接繊維により電導性がカバー
される理想的な構造となっている。
【0011】一方、不織布は通常、薄いシート(ウェッ
ブ)を複数重ねて作られており、不織布の繊維は脱塩室
に装着された状態で、図2のように大部分がイオン交換
膜に平行に存在する。脱塩時の電流は、繊維状イオン交
換体に捕捉されたイオンが印加された電場の作用を受け
て繊維上を移動する、イオンの移動(イオン電流)とし
て実現するが、その経路は、電場とは直交して存在する
繊維上を移動し、繊維接触点より隣接繊維に移ることを
繰り返しつつイオン交換膜に到達するため、イオンの移
動距離は長く、接点での接触も不安定なものであり、電
気抵抗は高くならざるを得ない。特に、流体が高度の電
気絶縁体である空気や非極性溶媒の場合は、イオン交換
体の接触部分にこうした絶縁流体が介在し、接触による
電導性では致命的に電導性が低下することにもなるた
め、イオン交換膜間を(途中で切断することなく)直結
するイオン交換体の存在こそが肝要である。流体の透過
についても、不織布の場合、極めて狭い繊維間隙を移動
しなければならず、当然流体の透過抵抗が高くなる上
に、ごく僅かの浮遊固形物(SS)により目詰りして通
過性が損なわれる。このように貫通流路による大口径の
流路と、優れた電導性を引きだす繊維状イオン交換体の
理想的配置を同時実現した本発明装置の特徴は明らかで
ある。
【0012】ここで「貫通流路」とは、分岐したり、鋭
角に曲がることがなく、流路内に実質的な障害物がな
く、断面がほぼ一定形状のままで連続するトンネル状の
流路を意味し、その周り全面が繊維状イオン交換体で囲
まれるか、繊維状イオン交換体よりなる壁面とイオン交
換膜で囲まれた連通空間を意味する。したがって図3の
場合において、イオン交換性構造物が脱塩室内に平行に
装着されている限り、中空ネットで確保された空間Aの
みならず該構造物間の空間Bも貫通流路である。なお、
このイオン交換性構造物は図4のように互いに密着して
装着されていても良い。
【0013】かかる貫通流路を脱塩室内に形成するに
は、既に貫通流路を有しているイオン交換性構造物か、
脱塩室に挿入することにより、両端のイオン交換膜とと
もに貫通流路を完成し得る、以下に示すイオン交換性構
造物を装着することにより実現できる。第1の構造物と
しては既に図3で例示した、剛直な中空ネットまたはコ
イルを芯(支持体)とし、その外側を繊維状イオン交換
体が取り巻いてなるイオン交換性構造物がある。この場
合、支持体となる中空ネットまたはコイルには、太繊度
合成繊維のモノフィラメントなどの剛直な線条物を中空
紐状に編組して得られる中空ネット、あるいはやはり太
繊度のモノフィラメントをコイル状に成形したプラスチ
ックコイルとも言えるものがある。これらの中空ネット
およびコイルはともに僅かの力で伸張し易く、以後の取
り扱いが難しい傾向があるので、その伸縮性を止め、耐
圧性を増すために編組後に繊維間接着したものが特に好
ましい。さらに芯糸のあるネットあるいはコイルを用
い、イオン交換性構造物とした後、芯糸を抜いたり、分
解したり、あるいは溶解して除き、目的とするイオン交
換性構造物とすることも可能である。
【0014】第2の構造物として支持体に中空濾過膜を
用い、その外側に繊維状イオン交換体を巻き付けた構造
物がある。図5は芯に1本の中空濾過膜を配したイオン
交換性構造物を脱塩室に装着した状態である。中空濾過
膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4
−メチルペンテンー1)等のポリオレフィン;ポリテト
ラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のポリフッ
化オレフィン;ポリスルホン、ポリアクリルニトリル、
ポリビニルアルコール、ポリエチレン/ビニルアルコー
ルなどを原料とする、水処理用や気体濾過用として市販
されている中空濾過膜が利用できる。この構造物は、後
述するように中空濾過膜の精密濾過機能と繊維状イオン
交換体による脱塩機能を同時実現する場合に特に効果的
である。なお、この構造物において芯に中空濾過膜の束
を用いる場合には、フィン付きの中空濾過膜を用いた
り、スペイサーなどを用い、中空濾過膜の分散を図り、
膜間に流体が出入りできる隙間を設けることが好まし
い。
【0015】中空ネットや中空濾過膜の周りに繊維状イ
オン交換体を巻き付ける方法としては、フィラメント
状、または予め紡績糸、紐、テープ状に加工された、繊
維状イオン交換体を、直接包帯巻きする(カバリング)
か、あるいは外側に編組組織を形成(スリービング)し
てもよい。また、カバリングあるいはスリービングは重
ねてもよく、カバリングとスリービングを組み合わすこ
ともできる。一般にカバリングの方が繊維密度が高く、
繊維間隙を細かくかつ均一にすることができ、一方のス
リービングは繊維が交差した組織となるので繊維密度を
高くしても流体の透過性がよい被覆層が得られる特徴が
ある。こうした被覆層の特性は巻き付けるイオン交換体
の構成要因、すなわちフィラメントであるか紡績糸であ
るか、混用繊維の有無、構成繊維の太さや嵩高性、混用
比率、糸の太さ、撚り数、さらには巻き付け量などによ
っても変えられる。
【0016】さらに第3の構造物として、少なくとも外
層が繊維状イオン交換体により構成され、断面の最大寸
法が300μm以上である線条イオン交換性構造物があ
る。これらは脱塩室内で流路用間隔をおいて平行に列
び、その太さ方向の両側でイオン交換膜と接触して、電
気透析装置の脱塩室内に装着されている必要がある。こ
の線条イオン交換性構造物は、自身では貫通流路を持た
ないが、図6に示すように脱塩室内に間隔を設けて平行
にならべることにより、線条体とイオン交換膜により取
り囲まれてる空間を形成して貫通流路とするものであ
る。使用できる線条体としては、繊維状イオン交換体を
主要構成成分とする紡績糸、フィラメント糸があり、こ
れらを太めの合繊糸や紐などの支持体として表面に巻き
付けたものであってもよく、さらにやや厚めの不織布を
切断して得られる細長い紐状物がある。ここで、良好な
電気特性を引き出すために、繊維状イオン交換体は、両
端のイオン交換膜と直に接触することが理想であり、こ
のために、フィラメント糸の場合には適度の撚りにより
軸に対し旋回させ、不織布の場合には図7のように切断
面をイオン交換膜面に密着させて用いる。線条体は、イ
オン交換膜としっかりした接触を図るため、膜間距離と
同等ないしやや太めである必要がある。
【0017】第1、第2および第3のような線条のイオ
ン交換性構造物を利用する場合には、これらの線条イオ
ン交換性構造物、または該構造物と貫通流路形成用線条
スペイサーとを緯糸とする、「すだれ」状にあらかじめ
加工したものを用いると、該構造物の脱塩室への収容時
の位置決めが容易であり、その後のずれなどのトラブル
を回避ないし軽減できて、特に好都合である。これらを
すだれ状に加工するには、例えば、緯糸挿入方式の経て
編み機を用いて、緯糸に線条イオン交換性構造物を使用
する方法が採用できる。この場合、経糸は、流路を横切
るので、流体の通過に対する影響を少なくするためにも
細く、強力があり、耐薬品性にも優れた合成繊維のモノ
フィラメントが特に好ましい。この場合の緯糸間隙が狭
いと形成される貫通流路幅の変動率が拡大し、逆に間隙
が広くなりすぎても脱塩機能が低下するので、緯糸間隔
は緯糸切断面積の平方根に対し0.3〜3.0倍の範囲
が好ましい。貫通流路となる糸間隔をより確実にするに
は、実施例でもって後述する脱塩装置Bのように、前記
した中空ネットのような剛直でオープン構造をした線条
体をスペイサーとして、緯糸に線条イオン交換性構造物
と交互に用いることにより好適に実現できる。
【0018】さらに、中空ネットの確実な貫通流路形成
性を活用するものとして、実質的な平面内で間隔をおい
て平行に並ぶ剛直な中空ネットと、これに密着しながら
交叉する繊維状イオン交換体とにより構成されてなるシ
ート状イオン交換性状構造物があり、こうしたイオン交
換性構造物を脱塩室内に、その両面がイオン交換膜と接
触するように収容したものも本発明装置となる。例え
ば、繊維状イオン交換体よりなるフィラメント糸、紡績
糸、あるいはテープなどを経糸とし、緯糸に中空ネット
を用いた織物状構造物があり、図8はこうした構造物を
脱塩室に収容した状態である。さらに繊維状イオン交換
体がウエッブ、不織布などのシート状物であって、その
片面あるいは両面に中空ネットを等方向、等間隔に並
べ、かつ剛直な中空ネットにシート状物に寄り添うよう
に屈曲させた図9のような構造物を脱塩室に装着しても
よい。
【0019】第4の構造物として、板状フレーム構造体
を支持体として構成され、繊維状イオン交換体により囲
まれた貫通流路および/またはイオン交換膜を加えて貫
通流路を完成する繊維状イオン交換体よりなる流路壁を
有する板状イオン交換性構造物がある。この構造物は、
その両面でイオン交換膜と接触する状態で、電気透析装
置の脱塩室内に装着されることにより、本発明装置とな
る。支持体となる板状フレーム構造体としては、二枚の
剛直なネットや穴あき板の間にプラスチック製の棒など
をスペーサーとして貫通流路用の空間を確保したもの、
あるいはこうした構造を一体成形したものなどが利用で
きる。図10はこうした支持体の一例であり、図中、実
線部分がフレーム、矢印は流体の移動方向を示してい
る。こうした支持体を用いたイオン交換性構造物を脱塩
室内に装着した状態を図11、12および13に示す。
図11は繊維状イオン交換体が全ての面を取り巻いたイ
オン交換性構造物、図12は繊維状イオン交換体が取り
巻いた貫通流路を交互に形成したイオン交換性構造物で
ある。さらに板状フレーム構造体の面に直交する面のみ
繊維状イオン交換体の壁を形成した図13のイオン交換
性構造物は、脱塩室に装着することにより初めて、両サ
イドのイオン交換膜を加えた4面に囲まれた貫通流路を
完成するものである。
【0020】このように第4のイオン交換性構造物は、
脱塩室の両サイドにあるイオン交換膜を繊維状イオン交
換体がほぼ最短距離で結ぶので、電導性もよく、一般に
貫通流路の大きさ、形状などの選択にも余裕(自由度)
がある。支持体となる板状フレイム構造物の厚さは0.
5mm以上であれば特に制限はない。厚さが10〜20
0mmもある支持体を用いたものは、脱塩室が1〜2室
の極めてシンプルな構造として大口径の貫通流路を有す
る装置として、特に流体の通過性に配慮する必要のある
場合に適している。
【0021】第5の構造物として、繊維状イオン交換体
よりなる波板状または薄層ハニカム状イオン交換性構造
物がある。これらは繊維状イオン交換体単独またはこれ
を主構成成分とする、紙、編布、織物、あるいは不織布
でも比較的繊維密度が高く腰のあるシートを用い、これ
に熱賦型、熱接着、縫い合わせなどの加工を行い、波板
や段ボール紙に似た薄層ハニカム状の第5のイオン交換
性構造物を得ることがでる。特に、繊維学会誌、Vo
l.39、T−111(1983)に記載の宮松らの方
法により得られる、熱接着性繊維状イオン交換体により
構成されたイオン交換紙は、十分な耐水性、適度の硬さ
(腰)、熱接着性があり、それに熱賦性も備えており、
こうした目的に極めて好ましい材料である。図14およ
び図15は、それぞれ波板状イオン交換性構造物および
薄層ハニカム状イオン交換性構造物を用いた脱塩室の状
態を示すものである。
【0022】脱塩室に装着されるこれらのイオン交換性
構造物は、本発明装置の電導性を優れたものとするため
に、イオン交換膜との接触を良好なものとすることが肝
要である。かかる観点より両者の間にシート状繊維状イ
オン交換体を介することにより、接触状態の改善を図る
ことができる。すなわち、イオン交換性構造物が剛直で
あったり、繊維状イオン交換体が太繊度である場合な
ど、イオン交換膜との接触がスポット的になりがちであ
るが、こうした場合イオン交換体のシートを介すること
により接触面積を拡げる作用があり、電気抵抗の低減効
果のみならず、局所に集中する電流を分散し電流密度を
平均化する効果によりイオン交換膜を痛める危険が少な
くなる。図16は図3で示したイオン交換性構造物の場
合において、ごく薄い不織布状繊維状イオン交換体を用
いた脱塩室内の様子であるが、該構造物とイオン交換膜
との電気的接触はイオン交換膜に沿った繊維状イオン交
換体によりイオン交換膜の全面に拡大される様子が理解
できる。こうした目的に使用される繊維状イオン交換体
のシートとしては編織布、不織布、紙などの薄手のシー
ト状物があり、「腰」やクッション性などを付与するた
めに、合成繊維を含むものも好ましい。なお、これらの
シートをカチオン交換膜側に使用する場合には、繊維状
カチオン交換体が多く、また、アニオン交換膜側に使用
する場合には繊維状アニオン交換体が多いことが、より
良い電導性を発現するうえで好ましく、さらにシートの
使用は片側のみでも十分効果が得られる場合もある。
【0023】さらに、イオン交換膜が後述するようなポ
リオレフィン系不均質膜である場合においては、イオン
交換性構造物とイオン交換膜とを熱接着することがで
き、これにより、両者を密着状態のままで固定でき、電
導性の改善のみならず、装置の信頼性も高めることがで
きる。この熱接着は、構成成分としてポリオレフィンを
内蔵する繊維状イオン交換体か、あるいはポリオレフィ
ン系熱接着性繊維を混合した繊維状イオン交換体を用い
たイオン交換性構造物である場合に実現できる。ポリオ
レフィンが溶融粘度が低いポリエチレンである場合に、
熱接着は特に好適に実施できる。熱接着は、ポリオレフ
ィンの融点以上の温度と圧力をかけるが、熱によるイオ
ン交換基の分解を回避するため、極短時間で、熱接着部
分を局所的にすることが好ましい。イオン交換性構造物
と熱接着するイオン交換膜としては、アニオン交換膜よ
り一般的に耐熱性に優れたカチオン交換膜が好ましい。
またイオン交換性構造物を中央に両サイドにカチオン交
換膜およびアニオン交換膜を熱接着することも不可能で
はない。
【0024】以下、被処理流体別に本発明の説明を続け
る。本発明装置を純水あるいは超純水製造用として使用
するには、現行の電気再生式純水製造装置と同様、逆浸
透装置を前置して使用できる。この場合、イオン交換性
構造物の構造に起因する良好な電導性により、消費電力
が少なく、したがって安価な純水を得ることができ、加
えて、脱塩室の数を多く設定することが可能であり、大
能力の装置ができる特徴がある。
【0025】また、貫通流路による耐SS性の改善によ
り、目詰まりなどのトラブルが大幅に軽減し、逆浸透装
置を始めとする前置装置より解放され、直接あるいは中
空濾過膜などの簡単な前置濾過のみで、井戸水、水道水
より純水を得たり、火力や原子力プラントにおける復水
の脱ミネラルなどに適用することができる。特に本発明
装置を沸騰水型原子力発電の復水など、放射性金属イオ
ン処理を含む水処理に使用した場合、イオン交換樹脂を
用いた脱塩装置、および使用済みイオン交換樹脂として
発生する大量の放射性廃棄物を劇的に減少できる他、イ
オン交換体からの溶出物による原子炉本体への悪影響も
回避できる
【0026】水溶液、水と水溶性溶剤との混合液、およ
びこれらの混合液を溶媒とする混合溶媒溶液などの水系
溶液についても、水と同様に高度の脱塩処理を行うこと
が出来る。ここで水溶性溶剤として、メタノール、エタ
ノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、
グリセリン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルスルホキサイドなど、水と任意の比で混合
しあえる溶媒があり、溶質としてはオリゴ糖、アミノ
酸、ペプチド、アデニン系やウラシル系核酸成分、アル
ブミンやグロプリンなどの蛋白質、界面活性剤、ポリビ
ニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリN−ビニ
ルアセトアミド、ポリエチレングリコールなど多くの水
溶性物質がある。この場合、溶質濃度が高かったり、高
分子溶液であったりして粘性がある場合、貫通流路径の
大きなイオン交換性構造物を使用することにより脱塩室
内の通液性を確保できる。
【0027】こうした水系処理液の脱塩処理は、現在の
電気再生式純水製造装置では、溶剤や溶質が逆浸透装置
の障害となって処理できず、もっぱら電気透析装置の対
象となっているが、その脱塩レベルは数百ppm止まり
である。これに対し本発明によれば、装置本体と貯槽と
を循環する脱塩運転を行い、時間経過に伴い脱塩レベル
を高めたり、あるいは本発明装置数基を多段連結する
か、従来タイプの電気透析装置による粗脱塩の後に本発
明装置を仕上げ用に用いるなどにより、純水に近い脱塩
レベルが達成できる。
【0028】また、水系処理液から脱酸、脱アルカリを
行うことも可能である。この場合一般的なイオン交換膜
であれば、水素イオンあるいは水酸イオンに対する選択
透過性が低いため、酸あるいはアルカリを前もってそれ
ぞれアルカリ金属水酸化物やアンモニアあるいは塩酸で
もって中和してと、電流効率を高められ好ましい。一
方、最近、水素イオンに対して特に選択透過性が優れた
イオン交換膜が開発され、酸の除去あるいは回収が行え
るようになっている。こうしたイオン交換膜を搭載する
ことにより、本発明装置は低濃度の酸を直接しかも低濃
度領域からも除去回収することができ、しかも回収され
る酸は濃縮して回収できるので再利用にも好都合であ
る。
【0029】現在、半導体製造工場などにおいて、空気
中に存在する痕跡量の極性物質の除去のために、ケミカ
ルフィルターが使用されている。これらは再生型の繊維
状イオン交換体の固体酸あるいは固体塩基としての機能
を利用するものではあるが、アニオン交換体においては
アミン、カチオン交換体においてもSOXやカルボン酸
などの分解ガスが発生し、こうしたケミカルフィルター
そのものより発生するガスがいわゆるアウトガスとして
問題となっている。本発明装置により、気体に含まれる
酸性ガスや塩基性ガスさらには塩(えん)などの極性物
質を、連続的に除去でき、脱塩室内の繊維状イオン交換
体は常に電気的に再生されているため、吸着機能は常に
初期性能のままの高機能、高能力であるなど、前記した
電気再生式純水製造装置の特徴をそのまま気体分野でも
発揮することが出来る。さらにアウトガスの発生は、イ
オン交換体の使用が極めて少量であるうえに、常時再生
されていることにより、皆無に近い。こうした特徴によ
り、本発明装置は、半導体や液晶、光学機器などの製造
工程における痕跡量の極性物質の除去を始めとし、特殊
病院、美術館、博物館などにおける高度な空調空間、肥
料工場や化学工場におけるアンモニアや各種アミン臭、
フェノールなどの除去、さらには排煙中のSOXやNO
Xの除去などに、効果的に利用できる。さらに、ケミカ
ルフィルターにおいては、アニオン交換体が空中の炭酸
ガスを吸着して、硼酸、砒酸など弱酸性物質に対する吸
着力が顕著に低下するが、本発明装置によれば常時電気
的に再生されていることにより、繊維状アニオン交換体
の持てる能力をフルに活用できる。
【0030】溶剤および溶剤溶液に含まれる極性物質に
ついても、そのままあるいは後述する水分補給機構を付
加することにより、本発明装置を用いて除去することが
できる。近年、半導体工場などで使用される超高純度試
薬や各種薬液においては、金属イオンやハロゲンイオ
ン、硝酸根、硫酸根などのイオン性物質(極性物質)の
徹底した除去が求められている。こうした要求に対しイ
オン交換樹脂が使用されているが、溶剤系からの脱塩や
脱イオン反応は、極めて進行が遅いうえに、吸着対象物
がppb、あるいはpptオーダーの超低濃度であるた
め、困難を極めている。本発明によれば、非処理物が実
質的に無水である場合は、処理により水分が混入するこ
とになるが、処理後脱水や蒸留を行うことにより、無水
状態に戻すことができる。さらに前記したようにイオン
交換体自体より出る汚染物が格段に少ない特徴を持って
いる。
【0031】また、本発明装置は水と水とは相溶性のな
い液体との混合液を非処理液として、その中に含まれる
極性物質を除去でき、例えば、石油製品に少量混入した
海水などから塩分を除去できる。また、エポキシ樹脂な
ど合成課程で混入した多量の電解質を不純物として含有
する疎水性ポリマーの場合、有機溶剤溶液として、多量
の水を用い水洗して精製しているが、こうした方法にお
いては、電解質濃度が下がるにつれ顕在化してくる分配
率上の壁により、一定水準以上の高純度化には著しいコ
ストアップが避けられない。こうした場合、本発明装置
によれば水の節約と高純度化が同時に実現できる。
【0032】気体、有機溶剤あるいはその溶液など、電
気絶縁性流体の脱塩処理を続けると次第に電気抵抗が上
昇し、ついには脱塩の継続が不可能になる。これは、イ
オン交換体の水分が、脱塩時のイオンに随伴する水分と
なって濃縮室へ運び出され、失われるためである。この
現象を回避するために、かかる流体の処理に対し本発明
では水分補給機構を付加する。水分の補給はイオン交換
体のイオン電導性を良好な状態に保つためであり、水を
連続的あるいは間欠的にイオン交換体に供給するが、下
記するように、流体の性状により条件を変える必要があ
る。
【0033】第一は被処理流体が気体の場合である。こ
こで気体とは、多くの場合大気であり、時として大気よ
りその組成をずらした空気であったり、実質的に単独組
成のガスであってもよいが、アンモニア、ハロゲン化水
素などの酸性ガスあるいは塩基性ガスあるいはこれらを
主成分とするガスであってはならない。被処理気体に噴
霧するなどの方法により、水を微小水滴として気体に混
合して脱塩室内に供給するか、脱塩室内を上より下に流
れ下る循環水として、脱塩室内のイオン交換体に水分を
補給することができる。なかでも図3に見られるように
脱塩室内に二種類の貫通流路が存在する場合にはいずれ
かの貫通流路を水の補給路として利用できる。
【0034】第二は被処理流体が水と殆ど混和しない溶
剤またはこうした性状を持った溶液系の場合である。こ
こで「溶液系」とは複数の溶剤よりなる混合溶剤、およ
び混合溶剤溶液を含めたものとする。この場合、被処理
流体と水との関係は、第一の場合(気体と水の場合)と
基本的に似ており、水分の補給方法も原則的に同じ方法
で行うことが出来る。無極性ないし極く弱い極性溶剤が
こうしたケースに該当し、ベンゼン、トルエン、p−キ
シレン、トリクレン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプ
タン、シクロヘキサン、ベンジルアルコール、クロロホ
ルム、四塩化炭素およびこれらの混合液がこのケースに
含まれる。
【0035】第三は、被処理流体が水との混和性が少し
あるいは十分にある、溶剤または溶液系の場合である。
単独の溶剤としては、MEK、酢酸エチル、ジエチルエ
ーテル、イソプロピルアルコール、DMF、DMSO、
THFがこのケースに相当する。これらの溶剤あるいは
溶液系では水と親和性があるため、水を取り込んで均一
相を形成することがあるが、逆に水分を全く含んでいな
いとイオン交換体の水分を奪い取る脱水剤として作用す
るので注意が必要である。第三のケースでは、被処理液
に繊維状イオン交換体のイオン電導性を発現するに足る
水を共存(溶解)せしめて脱イオン処理ができ、その水
分量は第一および第二のケースに比べ多くなる。
【0036】以上、いずれの流体の場合も脱塩室のイオ
ン交換体に水を供給するには、少量ずつ連続的にあるい
は間欠的に脱塩室に供給することにより実施できるが、
その供給は脱塩室の電気抵抗値の変化を感知して電気的
にコントロールすることが可能であり、こうした方法を
採用すれば確実に適量の水分を補給できる。水の最低供
給量はイオン交換体が必要な伝導度を保てる量であり、
通常上これよりやや多めとし、流路が塞がれない範囲に
設定するのが好ましい。
【0037】このように非水系流体中に水分を供給する
ことは、それに含まれる極性物質の吸着は、水滴などに
溶解された後、繊維状イオン交換体に吸着されるメカニ
ズムによるため、水分の付加により極性物質の除去率は
向上する。例えば空気中のイオン性不純物の除去におい
て、ケミカルフィルターに比べても、同じ繊維状イオン
交換体を湿潤状態で使用する本発明の場合、極性物質の
捕捉はより効果的に行われる。この効果を積極的に利用
して水分の供給を潤沢にして除去率を高めることが可能
である。この場合、脱塩室より出てくる過剰の水分は脱
塩水となっており循環使用できる。
【0038】本発明装置では、被処理流体の流れを、脱
塩室内において、貫通流路より貫通流路の外側(in→
out)に、逆に貫通流路の外側より貫通流路内(ou
t→in)に変えることが出来る。この際に、被処理流
体は貫通流路を取り巻く繊維状イオン交換体が高密度で
存在すると、流体は狭い繊維間隙を通過することとな
り、除去対象のイオンのイオン交換基への接近効果によ
り、通常では除去し難い、シリカ、硼酸などの除去効率
の向上がみられる。繊維状イオン交換体の巻き量を増
し、巻き密度を高くすることにより、こうした特性を一
層高めることができる。
【0039】この目的に最も適したイオン交換性構造物
は中空濾過膜を支持体としたものであり、中空ネットを
支持体としたものも好ましい。この目的のためには中空
糸を搭載した浄水器用モジュールに見られるように、第
1または第2のイオン交換性構造物を、脱塩室内におい
てUターンさせるか、一端を脱塩室内で封鎖して、端を
ポッティング剤で固め脱塩室の入り口または出口に固定
することにより実施できる。こうした仕様は、電気的に
常に再生された微細な混床状態において強力に行われる
脱イオンと、微粒子の濾過を同時に行うもので、超高純
度純水のユースポイントでの使用や高純度薬液の製造な
どに特に効果的である。
【0040】水または気体の総合的な浄化を目的とする
ために、本発明装置の前置装置あるいは後置装置として
併用が好ましい装置がある。例えば、各種フィルターに
よる粗粒子や微粒子の除去、活性炭や吸着性樹脂による
非イオン性有機物質の吸着除去、あるいは紫外線照射、
触媒燃焼、オゾン酸化などによる有機物の酸化分解、軟
化器による水中の硬度成分の除去、逆浸透装置による各
種物質の除去などの装置が対象となる。
【0041】本発明装置で除去対象とすることができる
極性物質とは、イオン交換基が遊離形でかつ含水状態に
ある繊維状アニオン交換体および/または繊維状カチオ
ン交換体に吸着され、直流電場の作用により繊維状イオ
ン交換体からイオン交換膜を介して濃縮室に移動できる
物質である。これにはカチオンおよび/あるいはアニオ
ンを生成して水に溶解するいわゆる電解質があり、これ
らは時として酸、塩基、あるいは錯塩、複塩を含む塩
(えん)として分類される物質でもあり、さらに非水系
流体に溶解ないし分散して存在できる酸無水物、酸ハロ
ゲン化物、アルカリ金属、金属酸化物、金属ハロゲン化
物など、水と接触することにより速やかに分解して上記
物質を生成する化合物も対象となる。
【0042】かかる極性物質は極めて多く、以下の例に
のみ限定されるものではないが、代表的なものとして以
下のものがある。すなわち、水酸化リチウム、水酸化カ
リウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化
物、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ト
リメチルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン等のア
ルキルアミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタ
ノールアミンなどのアルカノールアミン類、アンモニ
ア、ピリジン類などに代表される塩基; 硫化水素、硫
酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ化水素、塩化水素、硼
酸、砒酸、亜砒酸、珪酸、炭酸、フェノールおよびフェ
ノール類、トルエンスルホン酸などのスルホン酸類、酢
酸、プロピオン酸、乳酸、蓚酸、蟻酸などに代表される
カルボン酸類などの酸;およびこれらの塩基と酸の中和
物としての塩(えん)が挙げられる。砒酸、亜砒酸、炭
酸ガス、シリカ、酸化マグネシウムなどの弱酸性あるい
は弱塩基性物質も含まれる。
【0043】気体中や非水系溶媒中ではガス、溶液、ミ
スト、あるいは「超微粒子」状となって浮遊する酸や塩
基性物質およびこれらの「塩」やさらに、無水硫酸の様
な酸無水物、クロルスルホン酸の如き酸ハライド、カル
シュウムハイドレート、四塩化錫などのように水と接触
して速やかに塩基および/または酸を生成するものも処
理対象に含まれる。
【0044】脱塩室に装着されるイオン交換性構造物
は、流体中の極性物質をイオンとして捕捉する機能と、
捕捉したイオンを電気エネルギーの作用により隣の濃縮
室に移動する際の通路となる機能を果たす。繊維状イオ
ン交換体は、酸性基を有するカチオン交換体と塩基性基
を持つアニオン交換体に大別でき、これらはスルホン酸
基などの強酸性基やカルボキシル基などの弱酸性基を有
するカチオン交換体および第4級アンモニウム基などの
強塩基性基や第1〜3級アミノ基を有する弱〜中塩基性
基を持つアニオン交換体がある。上記いずれのイオン交
換基であっても本発明に用いることができるが、極性物
質に対する捕捉力の強さから、特に低濃度の極性物質を
対象にする場合には強酸性基を交換基とする強酸性カチ
オン交換体および強塩基性基を交換基とする強塩基性ア
ニオン交換体であることが好ましい。
【0045】さらに本発明で使用する繊維状イオン交換
体は、イオン電導性に優れ、同時にイオン交換性構造物
に加工するのに耐えられる繊維物性を兼ね備えている必
要がある。イオン電導性についてはイオン交換基の種
類、カウンターイオンの種類、イオン交換基の密度、イ
オンの易動度、それにイオン交換体の連続性により左右
されるが、イオン交換基の密度が高い程、またイオン交
換基周りは拘束がないのがよい。しかし架橋結合がない
と、膨潤が激しく単位体積当たりのイオン交換基の存在
密度が低下するためイオン電導性は逆に低下してしま
う。適度の架橋構造がありイオン交換基の密度が高めら
れた、ポリスチレンジビニルベンゼン系イオン交換樹脂
に理想的なイオン電導性を備えた「物質として」の手本
を求めることができる。しかしながら、イオン交換樹脂
は粒状であり連続性の点で問題がある。これに対し、繊
維状イオン交換体は、「連続体」であり電導体として理
想的形状であるが、イオン交換樹脂をそのまま繊維状に
出来たとしても繊維物性的に実用に耐えない。そこで、
1)イオン交換樹脂を粉砕した微粒子を混合紡糸した
り、2)イオン交換基を有するポリマーをポリビニルア
ルコールと混合して繊維状とする方法、さらには、3)
ポリスチレンとポリエチレンよりなる海島構造の繊維に
イオン交換基を導入したものなどが工業生産されている
が、前二者はイオン電導性において、また、後者はイオ
ン交換成分が、繊維外周部に露出した構造となっている
ため、引っ張りや摩擦に対して弱いが、いずれも本発明
には条件を選べば使用できる材料である。
【0046】本発明は、繊維状イオン交換体がポリオレ
フィンまたはフッ化ポリオレフィン製多孔質繊維の空孔
内をスチレン/ジビニルベンゼン系イオン交換性重合体
が充填してなる繊維状イオン交換体である場合に、総合
的に最もよい効果を得ることができる。すなわち、ポリ
エチレンなどを溶融押し出しして得られる線条物を結晶
性を高めた状態で冷延伸および熱セットすることにより
得られる微多孔性繊維を原料繊維とし、その微細孔内に
スチレン/ジビニルベンゼン共重合体を形成し、これに
イオン交換基の導入を行うものであり、原料繊維の連通
する多孔空間に導入されたイオン交換体はスチレン/ジ
ビニルベンゼン系イオン交換樹脂そのものであり、十分
な連続性も確保されており、化学安定性、イオン電導性
に優れ、物性面では発達した配向と結晶性とによりもた
らされる丈夫な繊維構造内に保護され、本発明の目的に
叶うものとなっている。また、耐熱性や耐薬品性が特に
要求される場合には、特開平1−188538,特開平
7−18096などにより提案されているフッ素系繊維
状イオン交換体を用いることができる。
【0047】イオン交換性構造物を構成する繊維状イオ
ン交換体は単独で用いるより、カチオン交換体とアニオ
ン交換体とを混用する方が、いわゆる混床効果により優
れた脱塩効果を実現でき、より好ましい。混用は糸状で
用いる場合には、短繊維であれば混紡糸、長繊維であれ
ば混繊糸があり、混合状態はやや粗くなるがイオン性が
異なる糸を引き揃えたり、交撚することによっても混用
目的が達成できる。使用形態が不織布や紙の場合には均
一に混合したり、イオン性の異なる繊維状イオン交換体
の薄層(ウェッブ)を層状に重ねて混用効果を発揮する
こともできる。また編織物の場合には、上記糸状物を用
いたり、イオン性の逆の糸を交編、あるいは交織して、
目的の混用編織布とする。この混用工程で繊維集合体の
特性改善のために、イオン交換能のない第三の繊維を、
混合あるいは混用することもできる。繊維状カチオン交
換体と繊維状アニオン交換体の混用比率は、通常、イオ
ン交換体の交換容量比で9/1から1/9の範囲より選
ぶことが出来る。
【0048】本発明では、このように繊維状アニオン交
換体と繊維状カチオン交換体が混合された繊維集合体で
もって、貫通流路壁を形成するが、これら繊維の機能は
貫通流路を形成し、流路を確保するのは勿論のこと、脱
塩室両サイドのイオン交換膜間を結ぶイオン電導性を発
揮する電気回路としての機能が重要であり、このために
繊維状イオン交換体の連続性が確保されることと、膜と
繊維状イオン交換体の接触がしっかりしていることが肝
要である。第1、第2および第3の線条イオン交換性構
造物においては、構造物の断面はほぼ円形に近く、イオ
ン交換膜と繊維状イオン交換体との安定な接触を得るた
めには、繊維状イオン交換体の被覆層を含めた該構造物
の断面の直径(太さ)が、膜間距離の0.7以上である
必要がある。0.7倍以下ではたとえ脱塩室内で膜面に
対し垂直方向に扁平に変形して装着されたとしても両端
の膜に直接接触するのが困難であり、一方上限について
はあまり大きくなると貫通流路の形状にばらつきが出て
くるため、3.0倍程度が限界である。一方、イオン交
換性構造物がシートあるいは板状である場合には、その
厚みと同等かやや僅かに厚めであることが望ましい。
【0049】繊維状イオン交換体によって構成される貫
通流路の壁の厚みは、イオン交換性構造物の太さまたは
厚さに対しおおよそ0.05〜0.4倍の範囲である。
貫通流路壁は、該壁がかなりの厚みがある場合でも流体
の透過性は確保されるが、壁が薄い場合には、壁と表現
するより、繊維密度が低くなりネット状のフェンスとい
った状態もある。かかる状態であっても、貫通流路外に
流体は出入りし易くなるものの、脱塩室内全体でみた流
体の透過性は何ら阻害されないので問題はない。イオン
交換性構造物は貫通流路により流体の流路を決定するも
のであり、通常脱塩室の入り口から出口方向に流体が均
一に流れるようほぼ直線状に配置する。
【0050】本発明装置に用いるイオン交換膜は、脱
塩、濃縮、イオンの回収などに使用される均質膜が各種
の流体に対しほぼ無難に使用できる。気体や溶剤など電
気絶縁性流体の脱塩処理の場合には、イオン交換膜の選
択イオン透過性や水の(電気)浸透現象に対する要求性
能は、水の処理の場合に比べ、厳しくないため、不均質
膜も使用できる。ポリエチレンやポリプロピレンなどの
ポリオレフィンをマトリックスとする不均一膜には、丈
夫で乾湿両状態でのラフな取り扱いに耐え、かつ熱接着
やある程度の熱成形できるなど均一膜には見られない特
徴があり、気体中の極性物質の除去などに特に好まし
い。また、極性物質が酸に限られる場合には、電流効率
を改善するために、近年開発された水素イオン選択透過
性カチオン交換膜と水素イオン難透過性アニオン交換膜
の組み合わせを利用するこもできる。さらに、処理流体
中に酸化性物質が存在する場合には、ポリオレフィンま
たはフッ化ポリオレフィンと無機イオン交換体よりなる
不均質膜、またはフッ素系イオン交換膜などの耐酸化性
のある膜が好ましく、繊維状イオン交換体もまた先述し
た耐酸化性の高いフッ素系を選択することが好ましい。
【0051】本発明装置を運転中に、濃縮水がイオン交
換膜を浸透し、脱塩室へ逆流するのを阻止するために
も、脱塩室圧力は常に濃縮室圧力より高いことが好まし
い。この場合脱塩室側からイオン交換膜が濃縮室側に拡
がる作用を受けるため、脱塩室ではイオン交換性構造物
とイオン交換膜の間に隙間が生じ絶縁を招く虞れがあ
り、この対策として、濃縮室はできるだけスリムとし、
かつ体積減少を防ぎ外圧を受け止めるための剛直なスペ
ーサーを挿入することが望ましい。
【0052】濃縮室および電極室は硫酸ナトリウム、硫
酸カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの中性
塩水溶液を用いるが、この場合、被処理流体中の極性物
質を構成する同じイオンを持つ中性塩を用いてもよく、
逆に異なるイオン種よりなる中性塩であってもよい。ま
た、純水製造を目的とする場合など、被処理水(原水)
をそのまま用いることもできる場合がある。
【0053】本発明装置の脱塩室および濃縮室は、通常
の電気透析装置のように数室から十数室あってもよく、
電極室に隣接する濃縮室は省略することができる。した
がって脱塩室1室を中央に配し、カチオン交換膜を介し
て陰極室、アニオン交換膜を介して陽極室よりなる構造
が最もシンプルである。また本発明装置は、特開平6−
7645号明細書に開示されているようなスパイラル構
造であってもよく、こうしたスパイラル構造の場合は、
入り口および出口システムが少なく装置が簡単でコンパ
クトであり、漏れや電流損失が少ないメリットがあり、
さらに、非処理流体の入口を外側に出口を中心寄りに設
けることにより、入口より出口になるにしたがい電流密
度を高めることとなり、脱塩レベルを高めるために合理
的な構造となっている。
【0054】装置の構造差にもよるが脱塩室の適切な厚
み(膜間距離)は、脱塩室が1室のみの場合で3〜50
0mm、スパイラル構造および脱塩室が複数の場合で
0.5〜100mmが適当であり、この範囲より選択で
きる。膜間距離は一般的に純水製造の場合で0.5〜5
mm、やや粘性があったり、異なる流体が混在するケー
スでは3mm以上が必要である。一方、濃縮室の厚さは
脱塩室より狭く、通常0.5〜10ミリ、好ましくは
0.5〜5ミリであり、用いるスペイサーにはプラスチ
ック製の網や打ち抜きプレートを使用できる。また、繊
維状イオン交換体またはこれを混用したイオン交換性ス
ペイサーを濃縮室にも使用することにより、イオン電導
性を改善し電力コストを低減できることがある。さら
に、濃縮室にも脱塩室と同じイオン交換性構造物を装着
することにより、電極の極性を交互に変更する、交番印
加方式を採用することも可能である。
【0055】電極材料はアノードとして貴金属で被覆さ
れたグラファイトまたはチタン鋼が、またカソードとし
てはステンレス鋼が標準的に使用できる。本発明装置は
流体中の極性物質をイオン交換体によりイオンとして捕
捉し、これを印加した直流電場の作用により引き抜くも
ので、その力は極めて強いものであるが、電流が「限界
電流密度」を越えて流れるとイオン交換膜を痛めるの
で、予めこれを越えない低めの電圧に設定する定電圧方
式か、電気抵抗を感知しつつ電圧を調整し、電流を限界
電流密度以下にコントロールする「自動電圧調整方式」
により運転する。
【0056】
【実施例】以下、実施例により、本発明の説明を続ける
が、以下の記載における「部」および「%」はそれぞれ
「重量部」、「重量%」を意味する。 (繊維状カチオン交換体の調整)まず、スチレンモノマ
ー100部、純分55%のジビニルベンゼン7.5部、
重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.5部
よりなるモノマー混合液を調整した。一方、直径70μ
mの円形断面でブタノール法による空孔率が65%のポ
リエチレン製フィラメント(このものは高密度ポリエチ
レンを溶融押し出しし、高ドラフトで得た未延伸糸を、
いったん熱処理した後、室温下で延伸し、熱セットして
得たもので、ラメラの積層部分とミクロフィブリル部分
とよりなる、微孔性繊維である。)をスプールより取り
出し、一周約140cmのカセ状とした。このカセを、
該モノマー混合液に浸漬し、モノマー液を繊維内に浸透
せしめた後、液より取り出し余剰のモノマー混合液を自
然落下させ、硫酸ナトリウム8%、苛性ソーダ4%を含
む83℃の水溶液を浴液とする縦長容器に浸漬し、この
温度を2時間保持することよりなる一連の操作を順次行
ない、繊維内の空孔部分にスチレン/ジビニルベンゼン
共重合体を形成せしめた。さらにこれを水洗、乾燥した
後、80℃の発煙硫酸に30分間浸漬処理した後、硫酸
の除去、水洗を行って目的の繊維状強酸性カチオン交換
体を得た。かくして得られた繊維はその重量が多孔性フ
ィラメントの状態に対し約2.8倍に増加しており、乾
強度は103g、破断伸度は22%であり、中性塩分解
能は3.2meq/g−Na・formであった。
【0057】(繊維状強塩基性アニオン交換体の調整)
一方、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体をポリエチ
レン製微孔性繊維内に形成した上記繊維を、スルホン酸
基の導入の代わって、四塩化錫を触媒とするクロルメチ
ルエーテルによるクロルメチル化、脱液洗浄、トリメチ
ルアミンによるアミノ化、脱液洗浄を順次行いビニルベ
ンジルタイプの第4級アンモニウム基を交換基とする繊
維状強塩基性アニオン交換体を得た。得られた繊維は多
孔性フィラメントの重量に対し2.2倍に増加し、乾強
度が155g、破断伸度は30%あり、中性塩分解能は
2.1meq/g−CL・formであった。
【0058】(「混床」糸の調整)遊離型に調整したフ
ィラメント状カチオン交換体5本とやはり遊離型に調整
したフィラメント状アニオン交換体8本の計13本を合
わせ、1メートルあたり10回のS撚りを加え熱セット
することにより、「混床」糸を得た。この「混抄」糸を
用い、以下のイオン交換性構造物を調整した。
【0059】(イオン交換性構造物Aの調整)ポリプロ
ピレンを芯、ポリエチレンを鞘とする太さ280デニー
ルのモノフィラメント(チッソ株式会社製、商品名ライ
トロン)を用い、製紐機により中空状に編組し、これを
繊維の交点部分において熱接着せしめ、外径約3mmの
丈夫で寸法安定性と耐圧性のある中空ネットを得た。こ
のものを芯とし、その周りに上記「混床」糸を巻き付
け、芯の外径が約3mm、巻き付けた繊維状イオン交換
体の層の厚さが約1mmあり、弾力性のある中空紐状イ
オン交換性構造物Aを得た。この構造物における中空ネ
ットと繊維状イオン交換体の構成比は重量比で1対2.
2であった。
【0060】(イオン交換性構造物Bの調整)ポリエチ
レン延伸テープに撚りを加えてなる梱包用紐を芯とし、
その周りに上記「混床」糸をカバリングマシンを用い巻
き付け、芯の直径が約1.5mm、巻き付けた繊維状イ
オン交換体の層の厚さが約1mmあり、弾力性に富んだ
紐状イオン交換性構造物Bを得た。この構造物における
ポリエチレン延伸テープと繊維状イオン交換体の構成重
量比は1:1.5であった。これらのイオン交換性構造
物を組み込んだ本発明装置を、下記するようにして組み
立てたが、A、Bいずれのイオン交換性構造物も、予め
100デニールのポリフッ化ビニリデン製モノフィラメ
ントを用いて、簾状に加工したので、脱塩室への装着は
スムースに行うことができた。
【0061】(脱塩装置A)電気透析試験装置(旭硝子
株式会社製、DW−1型)を、脱塩室が3室、濃縮室2
室、両端に各1室の電極室よりなる構成として、以下の
改造を加え、本発明装置としての性能を確認した。な
お、イオン交換膜については電気透析装置に付属のもの
を使用した。各脱塩室および濃縮室のイオン交換膜の有
効寸法はいずれも縦390mm、奥行き130mm、脱
塩室の膜間距離4.5mm、濃縮室の膜間距離0.75
mmとし、各濃縮室および電極室には脱塩室からの圧力
に備えプラスチック製網をスペイサーとして挿入して用
いた。なお、脱塩室の膜間距離はエチレン/プロピレン
ゴム製シートをくり貫いたパッキンを用いて調節した。
各脱塩室内には、下記のイオン交換性構造物Aを、上下
方向で、互いに隙間なく密着させて列べ、同時に流体の
スムースな通過を図るため脱塩室内の上、下に該構造物
が存在しない約5mmの空間を設けて装着した。
【0062】(脱塩装置B)脱塩装置Aにおいて、脱塩
室の膜間距離を3.0mmとし、脱塩室内には、下記の
イオン交換性構造物Bと貫通流路を確保する中空ネット
を、上下方向で、交互かつ互いに隙間なく密着させて列
べて装着し、その他は全て脱塩装置Aと同条件とした。
【0063】
【実施例1、2】(脱塩装置A、Bによる脱塩水の製
造)中空糸膜で濾過し、混床式イオン交換塔で脱塩処理
した水道水に、塩化ナトリウムを溶解して得た比抵抗値
が2MΩ・cmの水を、被処理水として脱塩室内に下降
流で20L/hrの流量でもって供給した。一方、濃縮
室液および電極室液としては被処理水と同じ水を上昇流
で2L/hrずつ供給し、電極間に550mAの電流を
流し続け、脱塩室より出てくる水の電気抵抗値を測定し
た。得られる脱塩水の脱塩レベルは通電開始と共に徐々
に向上し、16.5MΩ・cmで安定し、脱塩水を継続
して得ることが出来、この脱塩性能は240時間継続後
も変化がなく、圧力損失は0.1kg/cm2 以下で
あった。次に、イオン交換性構造物Aに替えてイオン交
換性構造物Bを使用した脱塩装置Bでも同様の結果が得
られた。
【0064】
【比較例1】実施例1において、イオン交換性構造物A
の代わりに下記不織布を脱塩室に収容して試験を行っ
た。得られる水の電気抵抗値は16.7MΩ・cmに到
達したが、徐々に脱塩室の圧力損失が増し、流量も96
時間後には初期値の1/2以下にまで低下した。 (比較例1で使用した不織布の調整)遊離型に調整した
フィラメント状カチオン交換体とやはり遊離型に調整し
たフィラメント状アニオン交換体を51mmに切断し、
これに繊度3デニール、繊維長51mmで巻縮を付与さ
れたポリエステル繊維を加えた三種類の繊維を、それぞ
れ3:3:4の重量比でもってよく混合し、まずウエッ
ブを調整し、これを方向を変えて積層し、ニードルパン
チングして不織布とした。得られた不織布は1平方メー
トル当たり280g重量があり、厚さは約5.3mmで
弾力性のあるものであった。
【0065】
【実施例3,4】(脱塩装置Aによる空気中の極性ガス
の除去)床面積51平方メートル、天井高さ2.65m
の密閉された室内に、除去対象とする下記極性ガスを逐
次添加混合し、そのガスが一定濃度に維持されるよう制
御された室内空気を用意した。この空気に、脱塩室のイ
オン交換体に水分を供給するための純水を加湿器により
霧状にして加え、45L/hrの流量で本発明装置Aの
脱塩室に下降流でもって導入し、装置より出てくるガス
濃度を調べた。なお、本試験の実施に際しては、実施例
1と同じ条件で脱塩運転を行った後、電流が250mA
になるまで電圧を下げて、脱塩室への被処理水を被処理
気体の供給に切り替えて本試験を開始した。また、加湿
器による純水は、電圧一定のまま電流値が100mAを
下回らないように、間欠的に供給した。アンモニアガ
ス:アンモニアガスにより、室内のアンモニア濃度を1
立方メートルあたり13mgに維持し実験を行った。
本発明装置により処理された空気は1立方メートルあた
り0.001mg以下となった。塩化水素ガス:塩化水
素ガスにより室内の塩化水素濃度を1立方メートル当た
り3.1mgに維持して実験を実施した。処理された空
気中の塩化水素ガスは1立方メートル当たり0.001
mg以下に低下した。いずれのガス分析も、対象ガスを
一定量の純水に吸収した後イオンクロマトグラフィー法
により濃度測定する方法により実施した。また、被処理
空気はいずれも22℃、相対湿度45%であった。
【0066】
【実施例5】(脱塩装置Aによるエポキシ樹脂のトルエ
ン溶液からナトリウムイオンの除去)樹脂固形分に対
し、670ppmのナトリウムイオンを含む、ビスフェ
ノールA型エポキシ樹脂のトルエン溶液に純水を加えて
水分を5%に調整した。このものの樹脂濃度は3.45
%、20℃における粘度は21センチポイズであった。
この液を、水が水滴として均一に分散して存在するため
に撹拌しながら、脱塩装置Aに1時間に5リットルの流
量で供給し、電流210mAの条件で脱塩処理した。な
お、電極室と濃縮室には500ppm水溶液を用いた。
この処理により、ナトリウムは670ppmから109
ppmに低下した。さらにこの条件のままの脱塩処理を
10回繰り返したところ、樹脂固形分に対するナトリウ
ムは440pptにまで低下した。
【0067】
【実施例6】(脱塩装置Bによる水系溶液の脱塩)エチ
レングリコールを30%、ポリN−ビニルアセトアミド
を3.7%、それに塩化ナトリウムを5200ppmを
溶解して含み、20℃で35センチポイズの粘度を有す
る水溶液を、脱塩装置Bを用いて脱塩処理を行った。即
ち、0.1%の食塩水を濃縮室液および電極室液として
用い、3L/hrで脱塩室に供給し循環処理し、塩化ナ
トリウムを3.5ppmに減少させることができた。
【0068】
【比較例2,3,4】脱塩室内にイオン交換性構造物B
の代わりに、粒径350〜500μmのイオン交換樹脂
をいれたもの、および上記不織布をいれたものについて
は、粘性のため脱塩室内に水溶液を供給することができ
なかった。また、脱塩室内に何らイオン交換体を入れな
い場合については、塩化ナトリウム濃度が低下するにつ
れ電圧の上昇が顕著となり、400ppm以下にするこ
とができなかった。
【0069】
【効果】本発明は、従来、純水製造にのみ限られてきた
電気再生式脱塩装置の技術を、気体や有機溶剤など電気
絶縁性流体の脱塩処理分野に拡げ、水系用途では流体の
通過性の良さにより、やや粘性のある溶液の「高度」脱
塩処理を可能にする。また、純水製造用途においては、
良好な電導性により、設備の大型化や、低コストでの純
水製造が実現でき、耐SS性に優れることより、よりシ
ンプルなシステムの構築が可能となった。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の一例として、実施例で用いた実験
装置の構成図。
【図10】イオン交換性構造物の支持体として使用する
板状フレームの一例であり、実線部分がフレーム、矢印
は流体の移動方向を示す。
【図2〜9および図11〜16】いずれも脱塩室内の流
体の進行方向に対する垂直断面より見た脱塩室内の状態
を説明するための模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4D006 GA17 GA41 HA80 JA44A JA44Z KA41 MA01 MA12 MC22 MC22X MC23X MC29 MC30 MC33 MC39 MC62 PA01 PB06 PB12 PB13 PB14 PB17 PC01 PC02 PC05 PC32 4D061 AA03 AA05 AA10 AB13 AB14 AB18 AC19 BA09 BB01 BB04 BB13 BB17 BB19 BB28 BB29 BB30 CA09

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電気透析装置の脱塩室内に、繊維状イオン
    交換体により囲まれた貫通流路および/または繊維状イ
    オン交換体とイオン交換膜とに囲まれた貫通流路を有
    し、かつ該繊維状イオン交換体は両側のイオン交換膜と
    接触していることを特徴とする流体中に含まれる極性物
    質の除去装置
  2. 【請求項2】剛直な中空ネットまたはコイルを芯とし、
    その外側を繊維状イオン交換体が取り巻いてなる線条イ
    オン交換性構造物が、その太さ方向の両側でイオン交換
    膜と接触して、電気透析装置の脱塩室内に装着されてな
    る請求項1の装置
  3. 【請求項3】中空濾過膜を芯とし、その外側を繊維状イ
    オン交換体が取り巻いてなる線条イオン交換性構造物
    が、その太さ方向の両側でイオン交換膜と接触して、電
    気透析装置の脱塩室内に装着されてなる請求項1の装置
  4. 【請求項4】少なくとも外層が繊維状イオン交換体によ
    り構成され、断面の最大寸法が300μm以上である線
    条イオン交換性構造物が、流路用間隔をおいて平行に列
    び、その太さ方向の両側でイオン交換膜と接触して、電
    気透析装置の脱塩室内に装着されてなる請求項1の装置
  5. 【請求項5】繊維状イオン交換体よりなる線条イオン交
    換性構造物、または該構造物と貫通流路形成用線条スペ
    イサーとを緯糸とする、「すだれ」状イオン交換性構造
    物が、その両面でイオン交換膜と接触して、電気透析装
    置の脱塩室内に装着されてなる請求項2、3および4の
    装置
  6. 【請求項6】実質的な平面内で間隔をおいて平行に並ぶ
    剛直な中空ネットと、これに密着しながら交叉する繊維
    状イオン交換体とにより構成されてなるシート状イオン
    交換性構造物が、その両面でイオン交換膜と接触して、
    電気透析装置の脱塩室内に装着されてなる請求項1の装
  7. 【請求項7】板状フレーム構造体を支持体とし、繊維状
    イオン交換体により囲まれた貫通流路および/またはイ
    オン交換膜を加えて貫通流路を完成する繊維状イオン交
    換体よりなる流路壁を有する板状イオン交換性構造物
    が、その両面でイオン交換膜と接触して、電気透析装置
    の脱塩室内に装着されてなる請求項1の装置
  8. 【請求項8】繊維状イオン交換体よりなる波板状または
    薄層ハニカム状イオン交換性構造物が、その両面でイオ
    ン交換膜と接触して、電気透析装置の脱塩室内に装着さ
    れてなる請求項1の装置
  9. 【請求項9】イオン交換性構造物が、シート状繊維状イ
    オン交換体を介してイオン交換膜と接触する状態で、電
    気透析装置の脱塩室内に装着されてなる請求項2、3、
    4、5、6、7および8の装置
  10. 【請求項10】イオン交換膜がポリオレフィン系不均質
    膜であって、イオン交換性構造物が少なくとも一方のイ
    オン交換膜と熱接着されて、脱塩室に装着されてなる請
    求項2、3、4、5、6、7および8の装置
  11. 【請求項11】被処理流体が水であり、その中に含まれ
    る極性物質の除去を行う請求項1の装置
  12. 【請求項12】被処理流体が水溶液、水と水溶性溶剤の
    混合液、または該混合液を溶媒とする溶液であり、その
    中に含まれる極性物質の除去を行う請求項1の装置
  13. 【請求項13】被処理流体が有機溶剤または有機溶剤溶
    液であって、その中に含まれる極性物質の除去を行う請
    求項1の装置
  14. 【請求項14】被処理流体が水と水とは相溶性のない液
    体との混合液であって、その中に含まれる極性物質の除
    去を行う請求項1の装置
  15. 【請求項15】被処理流体が気体であって、その中に含
    まれる極性物質を除去する請求項1の装置
  16. 【請求項16】電気透析装置の脱塩室内に、中空ネット
    または中空濾過膜を芯としその外側を繊維状イオン交換
    体が取り巻いてなる線条イオン交換性構造物が装着され
    てなる装置であって、被処理流体が脱塩室内で該構造物
    に対しアウト−インまたはイン−アウトの流れをとるこ
    とを特徴とする請求項1、2および3の装置
  17. 【請求項17】被処理流体が気体、または実質的に電導
    性のない有機溶剤または有機溶剤溶液であって、脱塩室
    内のイオン交換体に対する水分補給機構を付加した、請
    求項13および15の装置
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