JP2004097897A - 電気透析型脱塩装置 - Google Patents
電気透析型脱塩装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004097897A JP2004097897A JP2002260924A JP2002260924A JP2004097897A JP 2004097897 A JP2004097897 A JP 2004097897A JP 2002260924 A JP2002260924 A JP 2002260924A JP 2002260924 A JP2002260924 A JP 2002260924A JP 2004097897 A JP2004097897 A JP 2004097897A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- exchange membrane
- chamber
- conductive
- ion
- ion exchange
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
- Water Treatment By Electricity Or Magnetism (AREA)
Abstract
【課題】脱塩の進行により非処理流体の電導度が低下しても、電流の減少を回避できる新機構を搭載することにより、比較的高純度の水または水系溶液、および代表的な電気絶縁体である空気を対象としても、より効率的な脱塩ができる脱塩装置を提供する。
【解決手段】陽極室と陰極室を両端に有し、この間にアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配し、脱塩室と濃縮室を交互に有してなる電気透析装置の少なくとも脱塩室内において、(A)カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体、および(B)アニオン交換膜またはアニオン交換膜と接するアニオン交換体、の双方と接触を保って収容されてなる、炭素系および/または金属系シート状導電体を有する電気透析型脱塩装置。
【選択図】 図5
【解決手段】陽極室と陰極室を両端に有し、この間にアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配し、脱塩室と濃縮室を交互に有してなる電気透析装置の少なくとも脱塩室内において、(A)カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体、および(B)アニオン交換膜またはアニオン交換膜と接するアニオン交換体、の双方と接触を保って収容されてなる、炭素系および/または金属系シート状導電体を有する電気透析型脱塩装置。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規かつ改良された電気透析装置に関し、詳しくは、被処理液の電導度が低下しても電流の減少を回避できる機構を搭載し、低い塩濃度領域から純水に近い水系被処理液でも、さらに代表的な絶縁流体である空気であっても、脱塩できる、電気透析型脱塩装置に関する。
【0002】
【従来技術】
水をはじめ、水溶液、乳化液、あるいは懸濁液などの各種水性液体を対象として、含有する塩(えん)、酸やアルカリなどの電解質の除去(以後「脱塩」という)あるいは濃縮回収する目的に対し、陽極室と陰極室を両端に有し、この間にアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配し、脱塩室と濃縮室を交互に形成してなる電気透析装置があり、この装置は、熱や薬品を使用する必要がなく、電気エネルギーのみで長時間の連続運転が行えるため、広い分野の脱塩に使用されている。
【0003】
脱塩室内にイオン伝導体であるイオン交換体を収容することにより電導性を付与した、電気再生式純水製造装置や空気脱塩装置{宮松徳久ら、第16回エアロゾル科学・技術研究討論会(1999年)演題:空気脱塩装置の開発}が提案されているが、前者は難除去性のイオンや有機物の影響を受け易く、大部分の負荷を逆浸透圧膜処理により取り除いたかなり清澄な水の脱塩を行い純水とするものであり、広い対象物の脱塩を行うことはできない。また後者ではイオン交換体のイオン伝導性のためにイオン交換体の水分維持が不可欠であり、処理後の空気は加湿空気とならざるを得ない。
これらは電気透析装置を改善し、特定用途に対応し特化した技術であり、より一般的で幅広い用途分野を抱える電気透析装置においては、被処理液の電導度が低くなるにつれ電流が流れ難くなるため、到達できる電解質濃度には限界(脱塩限界)がみられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電気透析装置により脱塩を行う際に、脱塩限界が存在するのは、原理的かつ宿命的なものと考えられてきたが、不純物としての電解質を一層しっかり除去したいというニーズや、近い将来地球規模で予想される水問題等があり、新しいメカニズムを導入することにより、これら要望に応えられる装置開発が本発明の課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この課題に対し、特に被処理液の電導度に影響されることなく電流が流せることが根本解決に直結するとの観点より、鋭意研究中のところ、電気透析装置の脱塩室内に導電物質を挿入した場合に、顕著に脱塩室間の電導度が向上する現象に遭遇し、この現象を解析し追求した結果、一般的な純水レベルの1μS/cmから超純水と言われる18MΩ・cmの水であっても、さらに代表的な絶縁体である空気であっても、安定的に通電と脱塩ができる見通しを得た。
【0006】
本発明者らはさらに追求と改良を重ね、遂に本発明を完成したものであり、本発明は、陽極室と陰極室を両端に有し、この間にアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配し、脱塩室と濃縮室を交互に有してなる電気透析装置の少なくとも脱塩室内において、(A)カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体、および(B)アニオン交換膜またはアニオン交換膜と接するアニオン交換体、の双方と接触を保って収容されてなる、炭素系および/または金属系シート状導電体を有する電気透析型脱塩装置に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、実施例を引用しつつ、具体的に説明する。
図1は、電気透析装置の陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜に囲まれたいわゆる脱塩室に導電物質と共に純水を入れた場合について、電極間電流と脱塩室間にかかる電位差(以後「セル間電位」ということがある)との関係を調べたものである。導電物質が存在しない比較例と比べ、導電物質を両端のイオン交換膜と電気的に接触する状態で入れた場合の導電性の向上効果は劇的である。
【0008】
さらに、実施例2では、この導電機構の解析を行っており、そのなかで、通常の電気透析装置であるならば、物質の移動を伴うイオン電流が、なんと、脱塩室外に取り出した電気回路を流れる電流として観察された。これは、脱塩室内において、イオン電流が、物質の移動を伴わない電子の移動(電子電流)に変換されて導電体中を移動することを示すとともに、導電体が陽極側で陰極、陰極側で陽極として挙動することをも示唆するものであり、以後説明する本発明装置で観察される現象とも矛盾しないものとなっている。
【0009】
純水製造法として、脱塩室内にイオン交換樹脂やイオン交換繊維を収容し、これを電気的に再生しつつ脱塩する方法があり、その改善策として脱塩室に収容されるアニオン交換体とカチオン交換体に導電性物質を付加してなる電気再生式純水製造装置(特開平9−24374、特開2001−137856)が提案されている。これらの提案は、陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜に囲まれた室内において、繊維状あるいは粒子状イオン交換体と、繊維状導電体あるいは粒状導電体と単純に混合使用され、主成分であるイオン交換体の機能を補佐するものとされているが、本発明を示唆するものではない。
【0010】
すなわち、本発明は脱塩室内における導電体の作用機構を的確に把握し、導電物質のみによる脱塩の最適化条件を極め、その結果使用する導電体の利用形態などの使用条件も全く異なり、たとえ本発明でイオン交換体を併用する場合であっても、▲1▼殆ど全ての電流が導電体を流れる条件である、▲2▼脱塩が極めて早く始まる、など一般的な電気再生式純水製造装置とは異なった特性を有し、イオン交換体の使用は補助的と言える条件となっている。
【0011】
以下本発明について、より詳細かつ具体的に説明する。
本発明は、電気透析装置の脱塩室を構成するアニオン交換膜とカチオン交換膜との間を、シート状導電体でもって、直接、あるいはイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換体を介し間接的に、接触せしめ、膜間に電流通路を形成するものであり、シート状導電体を使用することは、これがイオン交換膜と同じシート状であり、膜間に挿入したり、重ね合わすなどの至って簡単な操作により、広い膜面積であっても、均一な電流密度を実現できる利点がある。
【0012】
本発明では、導電体として金属系および/または炭素系の導電体を使用する。
これらの材料は、通電用として広く使用されており、イオンの移動による導電性を示すイオン交換体に比べ、圧倒的に優れた導電性を備えたものが数多くある。 シート状導電体としては、金属または炭素よりなるシート状物をそのまま使用することもできる他、金属および/または炭素の微粒子をポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールを始めとする合成樹脂に混合してなる導電性線条物や導電体成型物があり、さらに導電体粒子と樹脂との混合物を、導電性塗膜としたり、繊維製ネットの繊維間隙に練り込んだりして成型物を導電性にしてもよい。
また、所望の形状のプラスチック成型物に金属メッキを施し、導電性を付与してもよい。
【0013】
金属、金属メッキ、あるいは金属粒子を混合したものなど金属系導電体を使用する場合には、被処理液に含まれる酸や酸化剤を始めとする成分や、特に陽極として機能するカチオン交換膜との接触部分の耐食性を吟味する必要があり、一般的に貴な金属や、耐食性の酸化皮膜などを有する材料を用いる。すなわち、ステンレスや白金など耐食性の優れた金属を使用する場合でも、カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体との接触部分には炭素系導電材料で被覆したり、炭素系導電材を部分使用することが無難である。
炭素としては各種粒状炭、炭素繊維などの他、カーボンナノチューブなどの新素材もあり、これらを直接あるいは塗料などに加工して使用できる。
【0014】
このシート状導電体の具体的な形態としては大別して、一定の厚みと被処理流体が通過するに必要な空隙を与える「導電スペイサー」と、よりきめ細かく導電性を実現する「導電ネット」、およびこれらが複合したものがある。
第一はシート状導電体が、膜間距離を規定し被処理液の通過に充分な間隙を有する導電スペイサーである場合である。使用するスペーサーとしては、厚みが脱塩室幅(膜間距離)の少なくとも1/2倍以上あり、これは下記の電導ネットに比べ一般に、厚みが圧倒的に厚く剛直で、目開きも大きく、開口率も高い傾向にあり、膜との接触は粗であるが、導電体を使用しない従来法と比較し、脱塩性能は遙かに優れている。
【0015】
導電スペイサーの具体的形状としては、比較的太い導電性線条物で構成された、斜交ネット、織りネット、編みネットがあり、さらに脱塩室内に、両端のイオン交換膜とこれにほぼ垂直かつ通液可能な仕切りに囲まれ、膜面に投影された形状が多角形である多数の小部屋を形成する、電気再生式純水製造装置の脱塩室に於いてイオン交換樹脂を小区画に分けて収容する、区画材があり、これに導電性を付与したものであってもよい。
さらにエキスパンドメタルと言われる、伸張することによりスリット部分の開口率を拡大するとともに三次元的な膨らみと曲げモーメントを増加させた金属板があり、これも好適に使用できる。
図4は織りネットを導電スペイサーとして用いた脱塩室の状態を示している。
なお、図面からも判るように、導電スペイサーとイオン交換膜との接触状態は、接触部分が点接触であるうえに、接触すべき導電スペイサーの凸部が必ずしも接触していない。こうした状態は、斜交ネットを使用するとこれを構成する線条の殆ど全てが線接触となるなど状況は著しく改善される。
【0016】
これらの導電スペイサーは膜面に電流を伝えるものであり、目開きは、あまり広くなると均一な電流密度が失われ、逆に狭くなると被処理液の通液性が悪化するため、スペイサーの目開きをこの面を通過できる最大の真球の直径で表示すると定義した場合、0.5mm以上30mm以下であることが好ましく、後述する導電ネットと併用する場合には均一な電流密度が得られるために最大約100mmであってもよい。
また、導電スペイサーの厚みについては、0.5mm以上10mm以下が好ましく、特に1.0〜7mmがより好ましい。
【0017】
第二はシート状導電体が、それぞれアニオン交換膜およびカチオン交換膜と接触する一対の網状物(以後「導電ネット」という)であって、該導電ネットは脱塩室内で互いに離れて存在するが導電体を介して電気的に接続され、必要に応じ間に設けられたスペイサーにより一定の膜間隔を保ってなるケースである。
【0018】
導電ネットは、イオン交換膜面に均一に接触してばらつきの少ない電流密度を実現する反面、膜面と被処理流体との接触の障害にならないためにも、目開きが広めのネット構造が好ましい。導電ネットは、フィラメントや細い線条物で構成された編織物で、形態の維持が図れる限り薄く細かなネットが使用でき、金属ネットなどで比較的固くかつ弾性に富むものであっても好適に使用できる。
より具体的に導電ネットとしては、線径0.02〜2mmの導電性線条物よりなる、斜交ネット、織りネット、編みネットなどで、直径10mm以上の球を通過させず、直径1mm以下の球が通過できる目開きであるものが好ましい。
【0019】
脱塩室内において導電ネット対が互いに電気的接触のないまま離れて存在すると、脱塩が進行し電導度が低下すると、電流は僅かしか流れなくなるが、導電ネット間を導電体を介して接触させると、たとえ脱塩室内が高純度の純水であっても、セル間電位は劇的に低下し電流が流れるようになる。このとき実施例2で明らかになったように、導電体を電流が流れるのであって、脱塩室内の両端で互いに離れて存在するネット対間を導電体を介して接続することは、ネット対を導電素子として機能させるために欠かすことのできない条件である。
【0020】
図5は第二のケースを示すものであり、図中象徴的に示した導電ネット間の電気的接続は、具体的には▲1▼脱塩室内に、少なくとも一部を導電化したスペイサーを使用する、▲2▼スペイサーに導電性線条物を絡ませるか直径または厚みがほぼ膜間距離に近い導電体を間に加える、▲3▼導電ネットが室枠と接合一体化されている場合(後述)には、少なくとも一部を導電化した室枠を使用する、▲4▼実質1枚の導電ネットを中央でU字状に折り曲げ必要に応じ間にスペイサーなどを併用する、などにより目的を達成できる。
【0021】
イオン交換膜がポリオレフィン系樹脂をベースとする不均質系イオン交換膜またはフッ素樹脂系イオン交換膜である場合には、これらの膜が熱可塑性であることを利用し、イオン交換膜面に導電ネットを重ねるか、格子状に交差した線条導電体を積層して、熱プレスすることにより、ネット状の導電体をイオン交換膜の膜面に固定できる。図6はこの状態を示したものであり、ネットの一部がイオン交換膜にめり込むことにより、導電ネットの形態安定性と膜との確実な接触が同時実現でき、安定した性能を発揮できる利点がある。導電ネットは細かなクリンブを有するなどイオン交換膜との寸法変化に追随できることが好ましく、さらにイオン交換膜の膜面を塞ぐことのない開口率の高いものが好ましい。
【0022】
この第二のケースでは、本発明の脱塩室の電気抵抗が、希薄電解質溶液に比べ圧倒的に優れた導電材料である炭素または金属に依存するため、脱塩室間電導度は被処理液の電導度のみならず膜間距離の増大の影響を受け難くなり、これまでにない膜間距離が極めて広い、例えば膜間距離が500〜1,000mmもの脱塩室を備えた電気透析装置も可能である。こうした広い脱塩室は一つの装置ユニットに脱塩室を1室または2室とし、地下水や水道水などを貯水中に、脱塩を行う脱塩機能付き貯水槽とすることもできる。
【0023】
第三のケースとして、シート状導電体が、導電スペイサーと導電ネットが複合した場合がある。すなわち、脱塩室内の両側または片側のイオン交換膜面に、導電ネットを重ねて配し、残りのスペースを導電スペイサーが占有してなるケースである。
このケースでは、スペイサーにより導電ネットを膜面に押しつける働きと、導電ネットのきめ細かく膜面に接触できる機能が最も効果的に咬み合い、これに太い線径の導電スペイサーの優れた導電性が加わって、一層低い電気抵抗でもって均一な電流密度を実現することができる。
なお、このケースの導電ネットとして、前記したイオン交換膜面に導電ネットを接合したタイプを使用することもできる。
【0024】
さらに本発明では、脱塩室内でシート状電導体に加えてイオン交換体を用いることができる。この際に使用するイオン交換体は、イオン交換膜近傍はイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換体を使用するが、これらのイオン交換体は膜と同じイオン交換性であることにより、イオン交換膜より派生した触手のように機能する。
また、第4以下のケースで述べるように、イオン交換体の併用は、直接的にも間接的にも脱塩機能の向上に寄与することができる。
【0025】
第4のケースは、脱塩室両端のイオン交換膜に、それぞれイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換繊維を含んで構成されるシート(以後、「イオン交換シート」という)、さらに該イオン交換シートに導電スペイサーまたは導電ネット対を、それぞれ重ねて配してなるケースである。
【0026】
図7は、こうしたイオン交換シートと導電スペイサーを併用した状態を示しており、空隙率が高くバルキーなイオン交換シートは自らが凹むことにより、導電スペイサーを確実に把握し、イオン交換体的に同じイオン交換膜に繋がることにより、捕捉したイオンの移動もスムースである。
【0027】
また図8は、イオン交換シートと導電ネットを使用し、イオン交換シートを構成するイオン交換繊維の一部が導電ネットの反対側に飛び出た状態を示している。飛び出たイオン交換繊維はイオン交換膜と同じイオン交換性であり、イオン交換膜と繋がっていることにより、イオン交換繊維に捕捉されたイオンは濃度差を駆動力としてイオン交換膜に向けて移動し、イオン交換繊維は再生される。
なおこの場合、毛羽がないイオン交換シートであっても、導電ネットの開口率が充分であれば、機能上問題はない。
【0028】
イオン交換シートとしては、イオン交換膜と同じイオン交換性を有するイオン交換繊維、即ち、イオン交換膜が強塩基性のアニオン交換膜であればイオン交換シートは強塩基性のアニオン交換繊維、強酸性のカチオン交換膜であれば強酸性のカチオン交換繊維を含んで構成される必要があり、シート重量に対するこれらのイオン交換繊維の構成比は25重量%以上であることが好ましく、残りは補強用の合成繊維や、25重量%以下の範囲でイオン交換膜と異なったイオン交換性を有するイオン交換繊維を含んでもよい。
【0029】
イオン交換シートとしては、上記繊維またはイオン交換繊維のみより構成されてなる織布、編み布、不織布および紙などがあり、いずれもが使用できる。
これらのイオン交換シートを構成するイオン交換繊維の一部が導電ネットあるいは導電スペイサーの間隙内に侵入、あるいは、特に薄い厚みの導電ネットの場合には、導電ネットの反対側に出てもよく、さらにイオン交換繊維を導電ネットの反対側に積極的に飛び出さすために、イオン交換シートはパイル、または先端で切断したパイルなどを備えたものが使用できる。
また、導電ネットの片面にイオン交換繊維を含む繊維層を重ね、繊維層側より高圧水流で処理する方法により、イオン交換繊維の一部が導電ネットの反対側に飛び出すと共に繊維層を導電ネットに絡ませ一体化したものを使用してもよい。
【0030】
第5は、導電スペイサーが、その間隙に存在せしめたイオン交換樹脂と共に、脱塩室内に収容されてなるケースである。
図9はこのケースを示しており、イオン交換樹脂は、導電スペイサーの間隙内において、拘束されることにより衝撃などによる移動に対し安定化された状態で格納され、しかもイオン交換膜と導電スペイサーの接触状態は、イオン交換膜とイオン交換的連続性のあるイオン交換樹脂が加わることにより、導電スペイサーのみの場合(図4)に比べ、格段に改善される。このケースの導電スペイサーは、イオン交換樹脂を介しイオン交換膜と接触できるため、必ずしも直接イオン交換膜と接触していなくてもよい。
【0031】
イオン交換樹脂の充填方法は、水平面上に置かれた一方のイオン交換膜に導電スペイサーを重ねて配し、先ず上より、該イオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換樹脂を所定量を均一に分散し、次にもう一方のイオン交換の所定量を同様に均一に分散せしめ、最後に残りのイオン交換を重ねることにより、実施できる。この操作中イオン交換樹脂は導電スペイサーにより移動を抑制されるので、作業は容易である。
これらのイオン交換樹脂は、イオン交換膜同様、遊離型に再生され、被処理水中のイオンの捕捉能を備え、脱塩に寄与する。
【0032】
第6は、シート状導電体が、それぞれ脱塩室内のアニオン交換膜とカチオン交換膜と接触して存在し、かつ互いに導電体を介して電気的に接続された一対の導電ネットであって、この導電ネット対間に、イオン交換樹脂を収容してなるケースである。
【0033】
このケースにおける導電ネット間に存在するイオン交換樹脂は、導電ネットに取り囲まれ電位勾配が無いため、イオンの移動に関し電気の作用を受けないと考えられるが、通電前に塩型の状態であったイオン交換樹脂は、通電後に再生状態(遊離型)になることが観察されている。この原因はイオン交換膜が再生状態になるとこれに接触して存在するイオン交換樹脂がカウンターイオンの濃度差により再生されるものと想定され、こうした非電気的再生機構を円滑に機能させるにはイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換樹脂が接触して繋がることが肝要であり、このためにも導電ネットは、広い目開きや薄いネットであることが好ましい。
【0034】
さらに、第6のケース同様に非電気的再生機構が起きるケース(第7のケース)として、シート状導電体が、イオン交換樹脂の透過を阻止するが被処理液の通過に支障のない目開きを有する導電ネットであって、脱塩室内において、屈折して両膜面と接触する面を交互に形成して存在し、該ネットがカチオン交換膜と接触する面を底部とする窪みにはアニオン交換樹脂、アニオン交換膜と接触する面を底部とする窪みにはカチオン交換樹脂をそれぞれ収容してなる場合がある。
【0035】
図10はこのケースを示すものであり、こうした脱塩室は、水平面に置いたイオン交換膜面に凹凸加工した導電ネットを重ね、下方のイオン交換膜とは異なるイオン交換性のイオン交換樹脂を導電ネットの凹部に入れ、一方のイオン交換膜を重ね逆転して、上方になったイオン交換膜を一時的に取り除き、もう一方のイオン交換樹脂を凹部に入れ、イオン交換膜を戻して重ね、最後に二枚のイオン交換膜とともに全体を積層する操作を順次行い、全ユニットを調整できる。
これら一連の操作の過程で、導電スペイサーはイオン交換樹脂の移動を抑制するので、操作は容易である。
【0036】
以上は被処理液として水、水溶液、水分散液など水性流体を対象としてその中に含まれるイオンや塩分を除去する装置に関する説明であったが、クリーンルームなどの超純空間における不純物としての極性物質の除去に関しては、電気透析型装置が有効であることが本発明出願人などにより確認されている{特開2000−42374;第16回エアロゾル科学・技術研究討論会(1999年)演題:空気脱塩装置の開発}が提案されている。
【0037】
請求項1の本発明装置もまた、空気中のSOxやNOx、ハロゲン化水素、硫化水素、有機酸などの酸性ガス、アンモニア、各種アミンなどの塩基性ガス、および塩(えん)ミスとなどを除去する能力を備えており、脱塩室内に被処理流体としての空気を送り込み、不純物としての酸性ガスおよび/または塩基性ガス、塩(えん)を除去する装置としてこれまで以上に優れた適性がある。
【0038】
すなわち、これまでの電気透析型空気脱塩装置では、脱塩室の膜間を繋ぐイオン交換体が必要であり、しかもこのイオン交換体はイオン電導による導電性を維持するために被処理空気を加湿する等の方法により、イオン交換体に水分を補充し続ける必要があった。ところが本発明によれば、脱塩室内には導電ネットなどの導電物質により膜間が電気的に接続され、濃縮室室液より拡散する水分だけでも充分な導電性が達成できるため、被処理空気を加湿するために特段の方法を講じる必要がなくなるばかりか、脱塩室内の構造として請求項2、請求項3および請求項4の装置構造であれば、脱塩室内の空隙率を高くし、空気の通過抵抗を低くできる利点がある。
【0039】
さらに、デバイスメーカーのクリーンルームなどでは、万一の事故に備え濃縮室の室液といえども電解質の使用を避けることが望まれるが、こうした対応策として濃縮室内には導電体および/またはイオン交換体を使用することにより導電性を維持しつつ、濃縮室室液として純水または純水に近い高純度水を使用することが本発明装置では可能である。
【0040】
脱塩室内で使用するシート状導電体として、カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体との接触部分に炭素系導電材料を配し、アニオン交換膜側導電ネットとして炭素系及び/または金属系導電ネットを用いる請求項1の装置
【0041】
以上、本発明装置、特に脱塩室中心に説明したが、本発明は脱塩室以外は従来の脱塩目的の一般的な電気透析装置と基本的に変わるところはない。
即ち、被処理液より予め懸濁物などを除いたり、被処理液が水である場合には前もって軟化処理により硬度成分を除去しておくことは好ましく、また純水や超純水を得る場合には、RO処理により懸濁物質、有機物、硬度成分などを減らした後、本発明装置で脱塩することができる。
【0042】
また、超純水を得る場合には濾過および軟化処理とともに本発明装置による脱塩処理の後に、電気再生式純水製造(EDI)で仕上げの処理をすることもできる。この場合RO処理装置は必要なくなる可能性がある。
【0043】
本発明で使用するイオン交換膜は、均質膜、不均質膜;さらに炭化水素系膜、フロロカーボン系膜;さらには繊維補強のある膜、補強のない膜など電気再生式純水製造装置に使用されているイオン交換膜が、原則的に使用でき、目的により使い分けることが可能である。
イオン交換膜、およびイオン交換樹脂は、スルフォン酸基を交換基とするカチオン交換体、および第4級アンモニウム基を交換基とするアニオン交換体である。
【0044】
濃縮室は、室液の通水性が確保できれば、より狭い方が電気抵抗を低くなり好ましい。
濃縮室から脱塩室への塩分拡散を極力抑制するために、濃縮室液の塩分濃度を低濃度とする方法があり、この際に濃縮室の導電性を確保するために、濃縮室内にも前述した導電ネットやイオン交換体を充填することもできる。
【0045】
【実施例】
以下実施例により本発明の説明を続ける。
以下の試験は、特に断りのない限り、実験用電気透析装置ME−O型(エイエムピーアイオネクス株式会社製)を使用して実施した。この試験装置の脱塩室および濃縮室用室枠は、厚さ0.85mm、有効面積50cm2であり、スペイサーとしてポリオレフィン製の斜交ネットが室枠に固定されている。
脱塩室、濃縮室および電極室は、いずれも内容積約1.3リットルの専用タンクと接続され、各室液はマグネットポンプによりタンクとの間を循環する機構となっている。
イオン交換膜は、旭硝子株式会社製のカチオン交換膜CMVおよびアニオン交換膜AMVを使用した。
【0046】
【実施例1】
脱塩室▲1▼の調整
脱塩室室枠の斜交ネットを取り除いた室枠3枚を重ねた合わせたものを一つの室枠とし、この開口部に、予め切断しておいた電極用炭素繊維織物(日本カーボン株式会社製、厚さ0.85mm)3枚を重ねてはめ込んで、陽極側にアニオン交換膜、陰極側にカチオン交換膜を配した。
脱塩室▲2▼の調整
3枚の脱塩室用室枠を重ね、これに導通を得る目的を兼ねて、ステンレス線を室枠に付属する斜交ネット間を通し四隅で結び室枠3枚を一体化したものを一つの室枠とし、イオン交換膜と接する室枠の開口部全面に、各1枚づつの50メッシュのステンレス製フィルターメッシュ(厚さ0.05mm)をあてがい、さらに陽極側にアニオン交換膜、陰極側にカチオン交換膜を配した。
【0047】
【各脱塩室の導電特性】
陽極側アニオン交換膜と陰極側カチオン交換膜との膜間距離がいずれも同じであるものの、導電物質およびその形状を異にする上記▲1▼および▲2▼の各脱塩室について、導電特性を調べるために、まず、これらの脱塩室を中央とし、陽極側に濃縮室室枠を介しカチオン交換膜を配した濃縮室、さらにその外側に陽極室;陰極側には濃縮室室枠を介しアニオン交換膜を配した濃縮室、その外側を陰極室とする構成とした。
濃縮室および電極室室液は、外部タンク部で混合する共通液とし、硫酸ナトリウムで導電度を100μS/cmに維持しつつ循環し、中央の脱塩室には、純水を送り込み、脱塩室内の空気が抜けたところで送水経路を遮断し、さらに脱塩室内の純水の脱塩をより完全にするため、50mAで1時間通電後に測定に入る。
測定は、電源装置の電圧を操作し、極間の電流値と脱塩室間にかかる電位差(セル間電位)の関係を調べ、結果を図1に示した。
なおセル間電位は、脱塩室の外壁を構成する二枚のイオン交換膜のいずれも外側(濃縮室側)表面に、一端を密着させた白金線をセル外に導き出し、デジタルボルトメーターで計測した。
【0048】
【実施例2】
前記脱塩室▲2▼において、導通目的のステンレス線を使用しない(すなわち、膜間挿入物としては、膜に接触して存在するステンレス製フィルターメッシュ対の間に3枚の斜交ネットが介在して導通を断った状態の)脱塩室を用い、フィルターメッシュに接続した二本のプラチナ線をセル外に出す以外、上記と同じ装置構成、同じ測定環境を用意し、本発明脱塩室の導電機構に関連する以下のような興味深い知見を得た。
▲1▼ プラチナ線を接触させた瞬間、セル間電位の劇的な低下と、顕著な電流増加がみられ、以後この状態が安定して継続すること。
▲2▼ 二本のプラチナ線の間に入れた電流計で計測すると、(脱塩室外に取り出した電流回路を流れる)電流は、なんと、電極間電流値と同じ値であり、しかも電流/セル間電位の関係は、図1に示した脱塩室▲2▼と全く一致すること。
▲3▼ セル間隔を5倍(12.75)に拡げても抵抗の増加は殆どない。
▲1▼および▲2▼により確認された現象は、本来、脱塩室内を物質移動を伴うイオン電流として流れるべき電流が、驚くべきことに、室外に取り出した導電体中を移動する電子の移動に変換されることを証明するものであり、また、▲3▼では室液が高い比抵抗の純水であるにもかかわらず、セル間隔が広くなっても、導電性に影響が殆どないことは、脱塩室に挿入した導電体の低い電気抵抗に因るものと考えられる。
【0049】
【実施例3】
3枚の脱塩室用室枠を重ね、導通を得る目的を兼ねて、室枠に付属する斜交ネット間に炭素繊維の糸を貫き通した結び目を四隅で造ることにより、3枚の室枠を一体化した室枠を得た。この室枠の開口部に、50メッシュのステンレス製フィルターメッシュ(厚さ0.05mm)をあてがい、陽極側にアニオン交換膜、陰極側にカチオン交換膜を配し、図5に相当する脱塩室(脱塩室▲3▼)とし、この陽極側に濃縮室室枠を介しカチオン交換膜を配した濃縮室、さらにその外側に陽極室;陰極側には濃縮室室枠を介しアニオン交換膜を配した濃縮室、さらにその外側に陰極室よりなる構成とした。
導電度580μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液を、両電極室および濃縮室共通の室液として計2リットル、脱塩室室液には導電度560μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液1リットルを用意し、初期電流値が300mAになるように電圧を調整し以後定電圧(極間電圧23.8V)で通電し、所定時間毎に電流、および脱塩室室液(被処理液)の導電度を測定し、結果を図2に示した。
【0050】
【比較例】
脱塩室に導電物質を使用することなく、他の条件は実施例3に準じ、両極室および濃縮室には電導度570μS/cm、脱塩室には570μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液を用い、初期電流値を300mAとし、極間を電圧を定電圧で通電するなど、可能な限り実施例3に近い初期条件で試験を開始し、所定時間毎に電流、および脱塩室室液の電導度を測定し、結果を図2に加えて示した。
【0051】
【実施例4】
導電スペイサーを作るため、直径約1.1mmのビニロン繊維製細紐を、木枠に、経緯が1.2cm角の目開きを形成して直角に交差するよう強く巻き付け、これに完全鹸化タイプで平均重合度2400のポリビニルアルコールの水溶液に導電性塗料用炭素微粒子をポリビニルアルコールに対し1.5倍重量加えたものを、塗布し一旦乾燥後、ホルマリンの硫酸浴でポリビニルアルコールの不溶化処理を行い、細紐の交差部分での厚みが2.5mmの斜交ネット状導電スペイサーを得た。
これを脱塩室の開口部の形状に切断し、前記脱塩室▲1▼における炭素繊維織物3枚の代わりにはめ込んで図4の構造の脱塩室(脱塩室▲4▼)を形成した。
脱塩室以外は実施例3と同じ構成とし、導電度580μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液を、両電極室および濃縮室共通の室液として2リットル、脱塩室室液には導電度100μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液1リットルを用意し、初期電流値が100mAになるように電圧を調整し、以後は実施例▲3▼と同様にして測定し、結果を図3に示した。
結果は、実施例▲3▼と比べると、脱塩性能が向上しているようであり、これは、被処理液がイオン交換膜との接触の障害(導電ネット)がなくなったためとも考えられる。
【0052】
【実施例5】
斜交ネットを取り除いた脱塩室室枠を前例より1枚多い4枚とし、この開口部において、アニオン交換膜にアニオン交換シート、カチオン交換膜にカチオン交換シートを各1枚重ね、その中央に前例で調整した導電スペイサーを配し、図7の構造の脱塩室(脱塩室▲5▼)を形成し、以下、装置構成、性能確認試験を前例どおりとして試験を行い、その結果を図3に加えて示した。
なお、アニオン交換シートおよびカチオン交換シートは、東レ株式会社製イオン交換繊維よりなるアニオン交換濾紙(AP−1L)およびカチオン交換濾紙(CP−1L)を使用した。
脱塩性能は脱塩速度および脱塩限界において、前例よりさらに向上しており、得られた脱塩水は、瞬く間に電導度が上昇することから、電導度には炭酸ガスが強く関与している。
【0053】
【実施例6】
先述した脱塩室▲4▼において、導電スペイサーと共に、その開口部にアニオン交換樹脂(ダイアイオンSA10A)とカチオン交換樹脂(ダイアイオンSK1B)よりなりイオン交換容量で等量の混合物を均一に分散して収容した図9の構造の脱塩室(脱塩室▲6▼)を形成し、以下、前例、前々例と同じ装置構成、条件下で試験を行った。この結果は実施例4より優れ、実施例5と同等であった。
4日間(約100時間)運転を続けた後、脱塩室内のイオン交換樹脂はアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂は互いに吸着しており、塩型の状態から遊離型に再生されることが確認された。
【0054】
【実施例7】
50メッシュのステンレス製フィルターメッシュ(厚さ0.05mm)を、各コーナーを所定の間隔でほぼ直角に曲げ、膜間方向に2.5mm、上下方向に10mm幅の図10の構造にするための加工を行った。
これを脱塩室内開口部の形状に切断し、脱塩室▲1▼の炭素繊維織物の代わりにはめ込んで、図10のようにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を別々に収容してなる脱塩室▲7▼を形成し、以後、前例同様の試験を行った。なおイオン交換樹脂はいずれも前例と同じものを使用した。
この結果、前例および前々例なみの優れた脱塩性能が確認できた。
【0055】
【実施例8】
実施例5で用いた、図7の構造の脱塩室(脱塩室▲5▼)を有し、濃縮室には導電性を高めるためにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂をイオン交換容量比で等量の混合物を均一に充填し、濃縮室室液としては循環系内に脱塩装置を組み込んで常に脱塩水を循環させつつ、空気中の極性物質の除去性能を以下のようにして、調査した。
脱塩室にはモデル物質としてのアンモニアを、約30mg/m3含む空気を毎分10リットル送り込み、30mAの電流を流しながらアンモニアの除去率を調べた。
アンモニアの除去率は出口濃度が全点が測定限界以下となって特定できないものの、ほぼ100%に近い除去率であった。
なお、アンモニア濃度の測定は所定量の空気中のアンモニアをインピンジャーで純水に吸収させ、これをイオンクロマトにより定量する方法で行った。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明脱塩装置は極めて優れた脱塩能力を有し、水、各種水系溶液および水系分散液の脱塩を始め、純水、超純水および超純空気の製造にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シート状導電体の効果を示した説明図。(実施例1)
【図2】脱塩挙動を従来法と比較する説明図。(実施例3、比較例)
【図3】脱塩性能の評価結果。(実施例4、実施例5)
【図4】導電スペイサーを使用した脱塩室の説明図。
【図5】導電ネットを使用した脱塩室の説明図。
【図6】導電ネットを接合したアニオン交換膜の断面模式図。
【図7】イオン交換シートと導電スペイサーを併用した脱塩室の説明図。
【図8】イオン交換シートと導電ネットを併用した脱塩室の説明図(アニオン交換膜側)
【図9】導電スペイサーとイオン交換樹脂を併用した脱塩室の説明図。
【図10】導電ネットとイオン交換樹脂を併用した脱塩室の説明図。
【符号の説明】
CEM カチオン交換膜
AEM アニオン交換膜
CES カチオン交換シート
AES アニオン交換シート
CER カチオン交換樹脂
AER アニオン交換樹脂
ECS 導電スペイサー
ECN 導電ネット
*1 導電ネット間の電気的接続機構
*2 イオン交換シートが導電スペイサーにより圧縮された部分。
*3 アニオン交換シートより出たアニオン交換繊維
【発明の属する技術分野】
本発明は新規かつ改良された電気透析装置に関し、詳しくは、被処理液の電導度が低下しても電流の減少を回避できる機構を搭載し、低い塩濃度領域から純水に近い水系被処理液でも、さらに代表的な絶縁流体である空気であっても、脱塩できる、電気透析型脱塩装置に関する。
【0002】
【従来技術】
水をはじめ、水溶液、乳化液、あるいは懸濁液などの各種水性液体を対象として、含有する塩(えん)、酸やアルカリなどの電解質の除去(以後「脱塩」という)あるいは濃縮回収する目的に対し、陽極室と陰極室を両端に有し、この間にアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配し、脱塩室と濃縮室を交互に形成してなる電気透析装置があり、この装置は、熱や薬品を使用する必要がなく、電気エネルギーのみで長時間の連続運転が行えるため、広い分野の脱塩に使用されている。
【0003】
脱塩室内にイオン伝導体であるイオン交換体を収容することにより電導性を付与した、電気再生式純水製造装置や空気脱塩装置{宮松徳久ら、第16回エアロゾル科学・技術研究討論会(1999年)演題:空気脱塩装置の開発}が提案されているが、前者は難除去性のイオンや有機物の影響を受け易く、大部分の負荷を逆浸透圧膜処理により取り除いたかなり清澄な水の脱塩を行い純水とするものであり、広い対象物の脱塩を行うことはできない。また後者ではイオン交換体のイオン伝導性のためにイオン交換体の水分維持が不可欠であり、処理後の空気は加湿空気とならざるを得ない。
これらは電気透析装置を改善し、特定用途に対応し特化した技術であり、より一般的で幅広い用途分野を抱える電気透析装置においては、被処理液の電導度が低くなるにつれ電流が流れ難くなるため、到達できる電解質濃度には限界(脱塩限界)がみられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電気透析装置により脱塩を行う際に、脱塩限界が存在するのは、原理的かつ宿命的なものと考えられてきたが、不純物としての電解質を一層しっかり除去したいというニーズや、近い将来地球規模で予想される水問題等があり、新しいメカニズムを導入することにより、これら要望に応えられる装置開発が本発明の課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、この課題に対し、特に被処理液の電導度に影響されることなく電流が流せることが根本解決に直結するとの観点より、鋭意研究中のところ、電気透析装置の脱塩室内に導電物質を挿入した場合に、顕著に脱塩室間の電導度が向上する現象に遭遇し、この現象を解析し追求した結果、一般的な純水レベルの1μS/cmから超純水と言われる18MΩ・cmの水であっても、さらに代表的な絶縁体である空気であっても、安定的に通電と脱塩ができる見通しを得た。
【0006】
本発明者らはさらに追求と改良を重ね、遂に本発明を完成したものであり、本発明は、陽極室と陰極室を両端に有し、この間にアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配し、脱塩室と濃縮室を交互に有してなる電気透析装置の少なくとも脱塩室内において、(A)カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体、および(B)アニオン交換膜またはアニオン交換膜と接するアニオン交換体、の双方と接触を保って収容されてなる、炭素系および/または金属系シート状導電体を有する電気透析型脱塩装置に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、実施例を引用しつつ、具体的に説明する。
図1は、電気透析装置の陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜に囲まれたいわゆる脱塩室に導電物質と共に純水を入れた場合について、電極間電流と脱塩室間にかかる電位差(以後「セル間電位」ということがある)との関係を調べたものである。導電物質が存在しない比較例と比べ、導電物質を両端のイオン交換膜と電気的に接触する状態で入れた場合の導電性の向上効果は劇的である。
【0008】
さらに、実施例2では、この導電機構の解析を行っており、そのなかで、通常の電気透析装置であるならば、物質の移動を伴うイオン電流が、なんと、脱塩室外に取り出した電気回路を流れる電流として観察された。これは、脱塩室内において、イオン電流が、物質の移動を伴わない電子の移動(電子電流)に変換されて導電体中を移動することを示すとともに、導電体が陽極側で陰極、陰極側で陽極として挙動することをも示唆するものであり、以後説明する本発明装置で観察される現象とも矛盾しないものとなっている。
【0009】
純水製造法として、脱塩室内にイオン交換樹脂やイオン交換繊維を収容し、これを電気的に再生しつつ脱塩する方法があり、その改善策として脱塩室に収容されるアニオン交換体とカチオン交換体に導電性物質を付加してなる電気再生式純水製造装置(特開平9−24374、特開2001−137856)が提案されている。これらの提案は、陽極側のアニオン交換膜と陰極側のカチオン交換膜に囲まれた室内において、繊維状あるいは粒子状イオン交換体と、繊維状導電体あるいは粒状導電体と単純に混合使用され、主成分であるイオン交換体の機能を補佐するものとされているが、本発明を示唆するものではない。
【0010】
すなわち、本発明は脱塩室内における導電体の作用機構を的確に把握し、導電物質のみによる脱塩の最適化条件を極め、その結果使用する導電体の利用形態などの使用条件も全く異なり、たとえ本発明でイオン交換体を併用する場合であっても、▲1▼殆ど全ての電流が導電体を流れる条件である、▲2▼脱塩が極めて早く始まる、など一般的な電気再生式純水製造装置とは異なった特性を有し、イオン交換体の使用は補助的と言える条件となっている。
【0011】
以下本発明について、より詳細かつ具体的に説明する。
本発明は、電気透析装置の脱塩室を構成するアニオン交換膜とカチオン交換膜との間を、シート状導電体でもって、直接、あるいはイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換体を介し間接的に、接触せしめ、膜間に電流通路を形成するものであり、シート状導電体を使用することは、これがイオン交換膜と同じシート状であり、膜間に挿入したり、重ね合わすなどの至って簡単な操作により、広い膜面積であっても、均一な電流密度を実現できる利点がある。
【0012】
本発明では、導電体として金属系および/または炭素系の導電体を使用する。
これらの材料は、通電用として広く使用されており、イオンの移動による導電性を示すイオン交換体に比べ、圧倒的に優れた導電性を備えたものが数多くある。 シート状導電体としては、金属または炭素よりなるシート状物をそのまま使用することもできる他、金属および/または炭素の微粒子をポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールを始めとする合成樹脂に混合してなる導電性線条物や導電体成型物があり、さらに導電体粒子と樹脂との混合物を、導電性塗膜としたり、繊維製ネットの繊維間隙に練り込んだりして成型物を導電性にしてもよい。
また、所望の形状のプラスチック成型物に金属メッキを施し、導電性を付与してもよい。
【0013】
金属、金属メッキ、あるいは金属粒子を混合したものなど金属系導電体を使用する場合には、被処理液に含まれる酸や酸化剤を始めとする成分や、特に陽極として機能するカチオン交換膜との接触部分の耐食性を吟味する必要があり、一般的に貴な金属や、耐食性の酸化皮膜などを有する材料を用いる。すなわち、ステンレスや白金など耐食性の優れた金属を使用する場合でも、カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体との接触部分には炭素系導電材料で被覆したり、炭素系導電材を部分使用することが無難である。
炭素としては各種粒状炭、炭素繊維などの他、カーボンナノチューブなどの新素材もあり、これらを直接あるいは塗料などに加工して使用できる。
【0014】
このシート状導電体の具体的な形態としては大別して、一定の厚みと被処理流体が通過するに必要な空隙を与える「導電スペイサー」と、よりきめ細かく導電性を実現する「導電ネット」、およびこれらが複合したものがある。
第一はシート状導電体が、膜間距離を規定し被処理液の通過に充分な間隙を有する導電スペイサーである場合である。使用するスペーサーとしては、厚みが脱塩室幅(膜間距離)の少なくとも1/2倍以上あり、これは下記の電導ネットに比べ一般に、厚みが圧倒的に厚く剛直で、目開きも大きく、開口率も高い傾向にあり、膜との接触は粗であるが、導電体を使用しない従来法と比較し、脱塩性能は遙かに優れている。
【0015】
導電スペイサーの具体的形状としては、比較的太い導電性線条物で構成された、斜交ネット、織りネット、編みネットがあり、さらに脱塩室内に、両端のイオン交換膜とこれにほぼ垂直かつ通液可能な仕切りに囲まれ、膜面に投影された形状が多角形である多数の小部屋を形成する、電気再生式純水製造装置の脱塩室に於いてイオン交換樹脂を小区画に分けて収容する、区画材があり、これに導電性を付与したものであってもよい。
さらにエキスパンドメタルと言われる、伸張することによりスリット部分の開口率を拡大するとともに三次元的な膨らみと曲げモーメントを増加させた金属板があり、これも好適に使用できる。
図4は織りネットを導電スペイサーとして用いた脱塩室の状態を示している。
なお、図面からも判るように、導電スペイサーとイオン交換膜との接触状態は、接触部分が点接触であるうえに、接触すべき導電スペイサーの凸部が必ずしも接触していない。こうした状態は、斜交ネットを使用するとこれを構成する線条の殆ど全てが線接触となるなど状況は著しく改善される。
【0016】
これらの導電スペイサーは膜面に電流を伝えるものであり、目開きは、あまり広くなると均一な電流密度が失われ、逆に狭くなると被処理液の通液性が悪化するため、スペイサーの目開きをこの面を通過できる最大の真球の直径で表示すると定義した場合、0.5mm以上30mm以下であることが好ましく、後述する導電ネットと併用する場合には均一な電流密度が得られるために最大約100mmであってもよい。
また、導電スペイサーの厚みについては、0.5mm以上10mm以下が好ましく、特に1.0〜7mmがより好ましい。
【0017】
第二はシート状導電体が、それぞれアニオン交換膜およびカチオン交換膜と接触する一対の網状物(以後「導電ネット」という)であって、該導電ネットは脱塩室内で互いに離れて存在するが導電体を介して電気的に接続され、必要に応じ間に設けられたスペイサーにより一定の膜間隔を保ってなるケースである。
【0018】
導電ネットは、イオン交換膜面に均一に接触してばらつきの少ない電流密度を実現する反面、膜面と被処理流体との接触の障害にならないためにも、目開きが広めのネット構造が好ましい。導電ネットは、フィラメントや細い線条物で構成された編織物で、形態の維持が図れる限り薄く細かなネットが使用でき、金属ネットなどで比較的固くかつ弾性に富むものであっても好適に使用できる。
より具体的に導電ネットとしては、線径0.02〜2mmの導電性線条物よりなる、斜交ネット、織りネット、編みネットなどで、直径10mm以上の球を通過させず、直径1mm以下の球が通過できる目開きであるものが好ましい。
【0019】
脱塩室内において導電ネット対が互いに電気的接触のないまま離れて存在すると、脱塩が進行し電導度が低下すると、電流は僅かしか流れなくなるが、導電ネット間を導電体を介して接触させると、たとえ脱塩室内が高純度の純水であっても、セル間電位は劇的に低下し電流が流れるようになる。このとき実施例2で明らかになったように、導電体を電流が流れるのであって、脱塩室内の両端で互いに離れて存在するネット対間を導電体を介して接続することは、ネット対を導電素子として機能させるために欠かすことのできない条件である。
【0020】
図5は第二のケースを示すものであり、図中象徴的に示した導電ネット間の電気的接続は、具体的には▲1▼脱塩室内に、少なくとも一部を導電化したスペイサーを使用する、▲2▼スペイサーに導電性線条物を絡ませるか直径または厚みがほぼ膜間距離に近い導電体を間に加える、▲3▼導電ネットが室枠と接合一体化されている場合(後述)には、少なくとも一部を導電化した室枠を使用する、▲4▼実質1枚の導電ネットを中央でU字状に折り曲げ必要に応じ間にスペイサーなどを併用する、などにより目的を達成できる。
【0021】
イオン交換膜がポリオレフィン系樹脂をベースとする不均質系イオン交換膜またはフッ素樹脂系イオン交換膜である場合には、これらの膜が熱可塑性であることを利用し、イオン交換膜面に導電ネットを重ねるか、格子状に交差した線条導電体を積層して、熱プレスすることにより、ネット状の導電体をイオン交換膜の膜面に固定できる。図6はこの状態を示したものであり、ネットの一部がイオン交換膜にめり込むことにより、導電ネットの形態安定性と膜との確実な接触が同時実現でき、安定した性能を発揮できる利点がある。導電ネットは細かなクリンブを有するなどイオン交換膜との寸法変化に追随できることが好ましく、さらにイオン交換膜の膜面を塞ぐことのない開口率の高いものが好ましい。
【0022】
この第二のケースでは、本発明の脱塩室の電気抵抗が、希薄電解質溶液に比べ圧倒的に優れた導電材料である炭素または金属に依存するため、脱塩室間電導度は被処理液の電導度のみならず膜間距離の増大の影響を受け難くなり、これまでにない膜間距離が極めて広い、例えば膜間距離が500〜1,000mmもの脱塩室を備えた電気透析装置も可能である。こうした広い脱塩室は一つの装置ユニットに脱塩室を1室または2室とし、地下水や水道水などを貯水中に、脱塩を行う脱塩機能付き貯水槽とすることもできる。
【0023】
第三のケースとして、シート状導電体が、導電スペイサーと導電ネットが複合した場合がある。すなわち、脱塩室内の両側または片側のイオン交換膜面に、導電ネットを重ねて配し、残りのスペースを導電スペイサーが占有してなるケースである。
このケースでは、スペイサーにより導電ネットを膜面に押しつける働きと、導電ネットのきめ細かく膜面に接触できる機能が最も効果的に咬み合い、これに太い線径の導電スペイサーの優れた導電性が加わって、一層低い電気抵抗でもって均一な電流密度を実現することができる。
なお、このケースの導電ネットとして、前記したイオン交換膜面に導電ネットを接合したタイプを使用することもできる。
【0024】
さらに本発明では、脱塩室内でシート状電導体に加えてイオン交換体を用いることができる。この際に使用するイオン交換体は、イオン交換膜近傍はイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換体を使用するが、これらのイオン交換体は膜と同じイオン交換性であることにより、イオン交換膜より派生した触手のように機能する。
また、第4以下のケースで述べるように、イオン交換体の併用は、直接的にも間接的にも脱塩機能の向上に寄与することができる。
【0025】
第4のケースは、脱塩室両端のイオン交換膜に、それぞれイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換繊維を含んで構成されるシート(以後、「イオン交換シート」という)、さらに該イオン交換シートに導電スペイサーまたは導電ネット対を、それぞれ重ねて配してなるケースである。
【0026】
図7は、こうしたイオン交換シートと導電スペイサーを併用した状態を示しており、空隙率が高くバルキーなイオン交換シートは自らが凹むことにより、導電スペイサーを確実に把握し、イオン交換体的に同じイオン交換膜に繋がることにより、捕捉したイオンの移動もスムースである。
【0027】
また図8は、イオン交換シートと導電ネットを使用し、イオン交換シートを構成するイオン交換繊維の一部が導電ネットの反対側に飛び出た状態を示している。飛び出たイオン交換繊維はイオン交換膜と同じイオン交換性であり、イオン交換膜と繋がっていることにより、イオン交換繊維に捕捉されたイオンは濃度差を駆動力としてイオン交換膜に向けて移動し、イオン交換繊維は再生される。
なおこの場合、毛羽がないイオン交換シートであっても、導電ネットの開口率が充分であれば、機能上問題はない。
【0028】
イオン交換シートとしては、イオン交換膜と同じイオン交換性を有するイオン交換繊維、即ち、イオン交換膜が強塩基性のアニオン交換膜であればイオン交換シートは強塩基性のアニオン交換繊維、強酸性のカチオン交換膜であれば強酸性のカチオン交換繊維を含んで構成される必要があり、シート重量に対するこれらのイオン交換繊維の構成比は25重量%以上であることが好ましく、残りは補強用の合成繊維や、25重量%以下の範囲でイオン交換膜と異なったイオン交換性を有するイオン交換繊維を含んでもよい。
【0029】
イオン交換シートとしては、上記繊維またはイオン交換繊維のみより構成されてなる織布、編み布、不織布および紙などがあり、いずれもが使用できる。
これらのイオン交換シートを構成するイオン交換繊維の一部が導電ネットあるいは導電スペイサーの間隙内に侵入、あるいは、特に薄い厚みの導電ネットの場合には、導電ネットの反対側に出てもよく、さらにイオン交換繊維を導電ネットの反対側に積極的に飛び出さすために、イオン交換シートはパイル、または先端で切断したパイルなどを備えたものが使用できる。
また、導電ネットの片面にイオン交換繊維を含む繊維層を重ね、繊維層側より高圧水流で処理する方法により、イオン交換繊維の一部が導電ネットの反対側に飛び出すと共に繊維層を導電ネットに絡ませ一体化したものを使用してもよい。
【0030】
第5は、導電スペイサーが、その間隙に存在せしめたイオン交換樹脂と共に、脱塩室内に収容されてなるケースである。
図9はこのケースを示しており、イオン交換樹脂は、導電スペイサーの間隙内において、拘束されることにより衝撃などによる移動に対し安定化された状態で格納され、しかもイオン交換膜と導電スペイサーの接触状態は、イオン交換膜とイオン交換的連続性のあるイオン交換樹脂が加わることにより、導電スペイサーのみの場合(図4)に比べ、格段に改善される。このケースの導電スペイサーは、イオン交換樹脂を介しイオン交換膜と接触できるため、必ずしも直接イオン交換膜と接触していなくてもよい。
【0031】
イオン交換樹脂の充填方法は、水平面上に置かれた一方のイオン交換膜に導電スペイサーを重ねて配し、先ず上より、該イオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換樹脂を所定量を均一に分散し、次にもう一方のイオン交換の所定量を同様に均一に分散せしめ、最後に残りのイオン交換を重ねることにより、実施できる。この操作中イオン交換樹脂は導電スペイサーにより移動を抑制されるので、作業は容易である。
これらのイオン交換樹脂は、イオン交換膜同様、遊離型に再生され、被処理水中のイオンの捕捉能を備え、脱塩に寄与する。
【0032】
第6は、シート状導電体が、それぞれ脱塩室内のアニオン交換膜とカチオン交換膜と接触して存在し、かつ互いに導電体を介して電気的に接続された一対の導電ネットであって、この導電ネット対間に、イオン交換樹脂を収容してなるケースである。
【0033】
このケースにおける導電ネット間に存在するイオン交換樹脂は、導電ネットに取り囲まれ電位勾配が無いため、イオンの移動に関し電気の作用を受けないと考えられるが、通電前に塩型の状態であったイオン交換樹脂は、通電後に再生状態(遊離型)になることが観察されている。この原因はイオン交換膜が再生状態になるとこれに接触して存在するイオン交換樹脂がカウンターイオンの濃度差により再生されるものと想定され、こうした非電気的再生機構を円滑に機能させるにはイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換樹脂が接触して繋がることが肝要であり、このためにも導電ネットは、広い目開きや薄いネットであることが好ましい。
【0034】
さらに、第6のケース同様に非電気的再生機構が起きるケース(第7のケース)として、シート状導電体が、イオン交換樹脂の透過を阻止するが被処理液の通過に支障のない目開きを有する導電ネットであって、脱塩室内において、屈折して両膜面と接触する面を交互に形成して存在し、該ネットがカチオン交換膜と接触する面を底部とする窪みにはアニオン交換樹脂、アニオン交換膜と接触する面を底部とする窪みにはカチオン交換樹脂をそれぞれ収容してなる場合がある。
【0035】
図10はこのケースを示すものであり、こうした脱塩室は、水平面に置いたイオン交換膜面に凹凸加工した導電ネットを重ね、下方のイオン交換膜とは異なるイオン交換性のイオン交換樹脂を導電ネットの凹部に入れ、一方のイオン交換膜を重ね逆転して、上方になったイオン交換膜を一時的に取り除き、もう一方のイオン交換樹脂を凹部に入れ、イオン交換膜を戻して重ね、最後に二枚のイオン交換膜とともに全体を積層する操作を順次行い、全ユニットを調整できる。
これら一連の操作の過程で、導電スペイサーはイオン交換樹脂の移動を抑制するので、操作は容易である。
【0036】
以上は被処理液として水、水溶液、水分散液など水性流体を対象としてその中に含まれるイオンや塩分を除去する装置に関する説明であったが、クリーンルームなどの超純空間における不純物としての極性物質の除去に関しては、電気透析型装置が有効であることが本発明出願人などにより確認されている{特開2000−42374;第16回エアロゾル科学・技術研究討論会(1999年)演題:空気脱塩装置の開発}が提案されている。
【0037】
請求項1の本発明装置もまた、空気中のSOxやNOx、ハロゲン化水素、硫化水素、有機酸などの酸性ガス、アンモニア、各種アミンなどの塩基性ガス、および塩(えん)ミスとなどを除去する能力を備えており、脱塩室内に被処理流体としての空気を送り込み、不純物としての酸性ガスおよび/または塩基性ガス、塩(えん)を除去する装置としてこれまで以上に優れた適性がある。
【0038】
すなわち、これまでの電気透析型空気脱塩装置では、脱塩室の膜間を繋ぐイオン交換体が必要であり、しかもこのイオン交換体はイオン電導による導電性を維持するために被処理空気を加湿する等の方法により、イオン交換体に水分を補充し続ける必要があった。ところが本発明によれば、脱塩室内には導電ネットなどの導電物質により膜間が電気的に接続され、濃縮室室液より拡散する水分だけでも充分な導電性が達成できるため、被処理空気を加湿するために特段の方法を講じる必要がなくなるばかりか、脱塩室内の構造として請求項2、請求項3および請求項4の装置構造であれば、脱塩室内の空隙率を高くし、空気の通過抵抗を低くできる利点がある。
【0039】
さらに、デバイスメーカーのクリーンルームなどでは、万一の事故に備え濃縮室の室液といえども電解質の使用を避けることが望まれるが、こうした対応策として濃縮室内には導電体および/またはイオン交換体を使用することにより導電性を維持しつつ、濃縮室室液として純水または純水に近い高純度水を使用することが本発明装置では可能である。
【0040】
脱塩室内で使用するシート状導電体として、カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体との接触部分に炭素系導電材料を配し、アニオン交換膜側導電ネットとして炭素系及び/または金属系導電ネットを用いる請求項1の装置
【0041】
以上、本発明装置、特に脱塩室中心に説明したが、本発明は脱塩室以外は従来の脱塩目的の一般的な電気透析装置と基本的に変わるところはない。
即ち、被処理液より予め懸濁物などを除いたり、被処理液が水である場合には前もって軟化処理により硬度成分を除去しておくことは好ましく、また純水や超純水を得る場合には、RO処理により懸濁物質、有機物、硬度成分などを減らした後、本発明装置で脱塩することができる。
【0042】
また、超純水を得る場合には濾過および軟化処理とともに本発明装置による脱塩処理の後に、電気再生式純水製造(EDI)で仕上げの処理をすることもできる。この場合RO処理装置は必要なくなる可能性がある。
【0043】
本発明で使用するイオン交換膜は、均質膜、不均質膜;さらに炭化水素系膜、フロロカーボン系膜;さらには繊維補強のある膜、補強のない膜など電気再生式純水製造装置に使用されているイオン交換膜が、原則的に使用でき、目的により使い分けることが可能である。
イオン交換膜、およびイオン交換樹脂は、スルフォン酸基を交換基とするカチオン交換体、および第4級アンモニウム基を交換基とするアニオン交換体である。
【0044】
濃縮室は、室液の通水性が確保できれば、より狭い方が電気抵抗を低くなり好ましい。
濃縮室から脱塩室への塩分拡散を極力抑制するために、濃縮室液の塩分濃度を低濃度とする方法があり、この際に濃縮室の導電性を確保するために、濃縮室内にも前述した導電ネットやイオン交換体を充填することもできる。
【0045】
【実施例】
以下実施例により本発明の説明を続ける。
以下の試験は、特に断りのない限り、実験用電気透析装置ME−O型(エイエムピーアイオネクス株式会社製)を使用して実施した。この試験装置の脱塩室および濃縮室用室枠は、厚さ0.85mm、有効面積50cm2であり、スペイサーとしてポリオレフィン製の斜交ネットが室枠に固定されている。
脱塩室、濃縮室および電極室は、いずれも内容積約1.3リットルの専用タンクと接続され、各室液はマグネットポンプによりタンクとの間を循環する機構となっている。
イオン交換膜は、旭硝子株式会社製のカチオン交換膜CMVおよびアニオン交換膜AMVを使用した。
【0046】
【実施例1】
脱塩室▲1▼の調整
脱塩室室枠の斜交ネットを取り除いた室枠3枚を重ねた合わせたものを一つの室枠とし、この開口部に、予め切断しておいた電極用炭素繊維織物(日本カーボン株式会社製、厚さ0.85mm)3枚を重ねてはめ込んで、陽極側にアニオン交換膜、陰極側にカチオン交換膜を配した。
脱塩室▲2▼の調整
3枚の脱塩室用室枠を重ね、これに導通を得る目的を兼ねて、ステンレス線を室枠に付属する斜交ネット間を通し四隅で結び室枠3枚を一体化したものを一つの室枠とし、イオン交換膜と接する室枠の開口部全面に、各1枚づつの50メッシュのステンレス製フィルターメッシュ(厚さ0.05mm)をあてがい、さらに陽極側にアニオン交換膜、陰極側にカチオン交換膜を配した。
【0047】
【各脱塩室の導電特性】
陽極側アニオン交換膜と陰極側カチオン交換膜との膜間距離がいずれも同じであるものの、導電物質およびその形状を異にする上記▲1▼および▲2▼の各脱塩室について、導電特性を調べるために、まず、これらの脱塩室を中央とし、陽極側に濃縮室室枠を介しカチオン交換膜を配した濃縮室、さらにその外側に陽極室;陰極側には濃縮室室枠を介しアニオン交換膜を配した濃縮室、その外側を陰極室とする構成とした。
濃縮室および電極室室液は、外部タンク部で混合する共通液とし、硫酸ナトリウムで導電度を100μS/cmに維持しつつ循環し、中央の脱塩室には、純水を送り込み、脱塩室内の空気が抜けたところで送水経路を遮断し、さらに脱塩室内の純水の脱塩をより完全にするため、50mAで1時間通電後に測定に入る。
測定は、電源装置の電圧を操作し、極間の電流値と脱塩室間にかかる電位差(セル間電位)の関係を調べ、結果を図1に示した。
なおセル間電位は、脱塩室の外壁を構成する二枚のイオン交換膜のいずれも外側(濃縮室側)表面に、一端を密着させた白金線をセル外に導き出し、デジタルボルトメーターで計測した。
【0048】
【実施例2】
前記脱塩室▲2▼において、導通目的のステンレス線を使用しない(すなわち、膜間挿入物としては、膜に接触して存在するステンレス製フィルターメッシュ対の間に3枚の斜交ネットが介在して導通を断った状態の)脱塩室を用い、フィルターメッシュに接続した二本のプラチナ線をセル外に出す以外、上記と同じ装置構成、同じ測定環境を用意し、本発明脱塩室の導電機構に関連する以下のような興味深い知見を得た。
▲1▼ プラチナ線を接触させた瞬間、セル間電位の劇的な低下と、顕著な電流増加がみられ、以後この状態が安定して継続すること。
▲2▼ 二本のプラチナ線の間に入れた電流計で計測すると、(脱塩室外に取り出した電流回路を流れる)電流は、なんと、電極間電流値と同じ値であり、しかも電流/セル間電位の関係は、図1に示した脱塩室▲2▼と全く一致すること。
▲3▼ セル間隔を5倍(12.75)に拡げても抵抗の増加は殆どない。
▲1▼および▲2▼により確認された現象は、本来、脱塩室内を物質移動を伴うイオン電流として流れるべき電流が、驚くべきことに、室外に取り出した導電体中を移動する電子の移動に変換されることを証明するものであり、また、▲3▼では室液が高い比抵抗の純水であるにもかかわらず、セル間隔が広くなっても、導電性に影響が殆どないことは、脱塩室に挿入した導電体の低い電気抵抗に因るものと考えられる。
【0049】
【実施例3】
3枚の脱塩室用室枠を重ね、導通を得る目的を兼ねて、室枠に付属する斜交ネット間に炭素繊維の糸を貫き通した結び目を四隅で造ることにより、3枚の室枠を一体化した室枠を得た。この室枠の開口部に、50メッシュのステンレス製フィルターメッシュ(厚さ0.05mm)をあてがい、陽極側にアニオン交換膜、陰極側にカチオン交換膜を配し、図5に相当する脱塩室(脱塩室▲3▼)とし、この陽極側に濃縮室室枠を介しカチオン交換膜を配した濃縮室、さらにその外側に陽極室;陰極側には濃縮室室枠を介しアニオン交換膜を配した濃縮室、さらにその外側に陰極室よりなる構成とした。
導電度580μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液を、両電極室および濃縮室共通の室液として計2リットル、脱塩室室液には導電度560μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液1リットルを用意し、初期電流値が300mAになるように電圧を調整し以後定電圧(極間電圧23.8V)で通電し、所定時間毎に電流、および脱塩室室液(被処理液)の導電度を測定し、結果を図2に示した。
【0050】
【比較例】
脱塩室に導電物質を使用することなく、他の条件は実施例3に準じ、両極室および濃縮室には電導度570μS/cm、脱塩室には570μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液を用い、初期電流値を300mAとし、極間を電圧を定電圧で通電するなど、可能な限り実施例3に近い初期条件で試験を開始し、所定時間毎に電流、および脱塩室室液の電導度を測定し、結果を図2に加えて示した。
【0051】
【実施例4】
導電スペイサーを作るため、直径約1.1mmのビニロン繊維製細紐を、木枠に、経緯が1.2cm角の目開きを形成して直角に交差するよう強く巻き付け、これに完全鹸化タイプで平均重合度2400のポリビニルアルコールの水溶液に導電性塗料用炭素微粒子をポリビニルアルコールに対し1.5倍重量加えたものを、塗布し一旦乾燥後、ホルマリンの硫酸浴でポリビニルアルコールの不溶化処理を行い、細紐の交差部分での厚みが2.5mmの斜交ネット状導電スペイサーを得た。
これを脱塩室の開口部の形状に切断し、前記脱塩室▲1▼における炭素繊維織物3枚の代わりにはめ込んで図4の構造の脱塩室(脱塩室▲4▼)を形成した。
脱塩室以外は実施例3と同じ構成とし、導電度580μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液を、両電極室および濃縮室共通の室液として2リットル、脱塩室室液には導電度100μS/cmの硫酸ナトリウム水溶液1リットルを用意し、初期電流値が100mAになるように電圧を調整し、以後は実施例▲3▼と同様にして測定し、結果を図3に示した。
結果は、実施例▲3▼と比べると、脱塩性能が向上しているようであり、これは、被処理液がイオン交換膜との接触の障害(導電ネット)がなくなったためとも考えられる。
【0052】
【実施例5】
斜交ネットを取り除いた脱塩室室枠を前例より1枚多い4枚とし、この開口部において、アニオン交換膜にアニオン交換シート、カチオン交換膜にカチオン交換シートを各1枚重ね、その中央に前例で調整した導電スペイサーを配し、図7の構造の脱塩室(脱塩室▲5▼)を形成し、以下、装置構成、性能確認試験を前例どおりとして試験を行い、その結果を図3に加えて示した。
なお、アニオン交換シートおよびカチオン交換シートは、東レ株式会社製イオン交換繊維よりなるアニオン交換濾紙(AP−1L)およびカチオン交換濾紙(CP−1L)を使用した。
脱塩性能は脱塩速度および脱塩限界において、前例よりさらに向上しており、得られた脱塩水は、瞬く間に電導度が上昇することから、電導度には炭酸ガスが強く関与している。
【0053】
【実施例6】
先述した脱塩室▲4▼において、導電スペイサーと共に、その開口部にアニオン交換樹脂(ダイアイオンSA10A)とカチオン交換樹脂(ダイアイオンSK1B)よりなりイオン交換容量で等量の混合物を均一に分散して収容した図9の構造の脱塩室(脱塩室▲6▼)を形成し、以下、前例、前々例と同じ装置構成、条件下で試験を行った。この結果は実施例4より優れ、実施例5と同等であった。
4日間(約100時間)運転を続けた後、脱塩室内のイオン交換樹脂はアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂は互いに吸着しており、塩型の状態から遊離型に再生されることが確認された。
【0054】
【実施例7】
50メッシュのステンレス製フィルターメッシュ(厚さ0.05mm)を、各コーナーを所定の間隔でほぼ直角に曲げ、膜間方向に2.5mm、上下方向に10mm幅の図10の構造にするための加工を行った。
これを脱塩室内開口部の形状に切断し、脱塩室▲1▼の炭素繊維織物の代わりにはめ込んで、図10のようにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を別々に収容してなる脱塩室▲7▼を形成し、以後、前例同様の試験を行った。なおイオン交換樹脂はいずれも前例と同じものを使用した。
この結果、前例および前々例なみの優れた脱塩性能が確認できた。
【0055】
【実施例8】
実施例5で用いた、図7の構造の脱塩室(脱塩室▲5▼)を有し、濃縮室には導電性を高めるためにアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂をイオン交換容量比で等量の混合物を均一に充填し、濃縮室室液としては循環系内に脱塩装置を組み込んで常に脱塩水を循環させつつ、空気中の極性物質の除去性能を以下のようにして、調査した。
脱塩室にはモデル物質としてのアンモニアを、約30mg/m3含む空気を毎分10リットル送り込み、30mAの電流を流しながらアンモニアの除去率を調べた。
アンモニアの除去率は出口濃度が全点が測定限界以下となって特定できないものの、ほぼ100%に近い除去率であった。
なお、アンモニア濃度の測定は所定量の空気中のアンモニアをインピンジャーで純水に吸収させ、これをイオンクロマトにより定量する方法で行った。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明脱塩装置は極めて優れた脱塩能力を有し、水、各種水系溶液および水系分散液の脱塩を始め、純水、超純水および超純空気の製造にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シート状導電体の効果を示した説明図。(実施例1)
【図2】脱塩挙動を従来法と比較する説明図。(実施例3、比較例)
【図3】脱塩性能の評価結果。(実施例4、実施例5)
【図4】導電スペイサーを使用した脱塩室の説明図。
【図5】導電ネットを使用した脱塩室の説明図。
【図6】導電ネットを接合したアニオン交換膜の断面模式図。
【図7】イオン交換シートと導電スペイサーを併用した脱塩室の説明図。
【図8】イオン交換シートと導電ネットを併用した脱塩室の説明図(アニオン交換膜側)
【図9】導電スペイサーとイオン交換樹脂を併用した脱塩室の説明図。
【図10】導電ネットとイオン交換樹脂を併用した脱塩室の説明図。
【符号の説明】
CEM カチオン交換膜
AEM アニオン交換膜
CES カチオン交換シート
AES アニオン交換シート
CER カチオン交換樹脂
AER アニオン交換樹脂
ECS 導電スペイサー
ECN 導電ネット
*1 導電ネット間の電気的接続機構
*2 イオン交換シートが導電スペイサーにより圧縮された部分。
*3 アニオン交換シートより出たアニオン交換繊維
Claims (10)
- 陽極室と陰極室を両端に有し、この間にアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配し、脱塩室と濃縮室を交互に有してなる電気透析装置の少なくとも脱塩室内において、(A)カチオン交換膜またはカチオン交換膜と接するカチオン交換体、および(B)アニオン交換膜またはアニオン交換膜と接するアニオン交換体、の双方と接触を保って収容されてなる、炭素系および/または金属系シート状導電体を有する電気透析型脱塩装置。
- シート状導電体が、膜間距離を規定し被処理液の通過に充分な間隙を有するスペイサー状(以後、「導電スペイサー」という)である、請求項1の装置。
- シート状導電体が、それぞれアニオン交換膜およびカチオン交換膜と接触する一対の網状物(以後「導電ネット」という)であって、該導電ネットは脱塩室内で互いに離れて存在するが導電体を介して電気的に接続され、必要に応じ間に設けられるスペイサーにより一定の膜間隔を保たれてなる請求項1の装置。
- イオン交換膜がポリオレフィン系不均質イオン交換膜またはフッ素樹脂系イオン交換膜であって、導電ネットがイオン交換膜の脱塩室側膜面に接合されている請求項3の装置。
- 脱塩室内の両側または片側のイオン交換膜面に、導電ネットを重ねて配し、残余のスペースを導電スペイサーが占有してなる、請求項1、2および3の装置。
- 脱塩室両端のイオン交換膜に、それぞれイオン交換膜と同じイオン交換性のイオン交換繊維を含んで構成されるシート(以後、「イオン交換シート」という)、さらに該イオン交換シートに導電スペイサーまたは導電ネット対を、それぞれ重ねて配してなる、請求項1、2および3の装置。
- 導電スペイサーが、その間隙に存在せしめたイオン交換樹脂と共に、脱塩室内に収容されてなる、請求項1の装置。
- シート状導電体が、それぞれ脱塩室内のアニオン交換膜とカチオン交換膜と接触して存在し、かつ互いに導電体を介して電気的に接続された一対の導電ネットであって、この導電ネット対間に、イオン交換樹脂を収容してなる、請求項1の装置。
- シート状導電体が、イオン交換樹脂の透過を阻止するが被処理液の通過に支障のない目開きを有する導電ネットであって、脱塩室内において、屈折して両膜面と接触する面を交互に形成して存在し、該ネットがカチオン交換膜と接触する面を底部とする窪みにはアニオン交換樹脂、アニオン交換膜と接触する面を底部とする窪みにはカチオン交換樹脂をそれぞれ収容してなる、請求項1の装置。
- 脱塩室内に被処理流体としての空気を送り込み、不純物として含有する酸性ガスおよび/または塩基性ガス、塩(えん)を除去する、請求項1、2,3、5および6の装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002260924A JP2004097897A (ja) | 2002-09-06 | 2002-09-06 | 電気透析型脱塩装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002260924A JP2004097897A (ja) | 2002-09-06 | 2002-09-06 | 電気透析型脱塩装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004097897A true JP2004097897A (ja) | 2004-04-02 |
Family
ID=32261432
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002260924A Pending JP2004097897A (ja) | 2002-09-06 | 2002-09-06 | 電気透析型脱塩装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004097897A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007161685A (ja) * | 2005-12-16 | 2007-06-28 | Astom:Kk | 有機酸の製造方法 |
JP2011092805A (ja) * | 2009-10-27 | 2011-05-12 | Panasonic Electric Works Co Ltd | 濾過装置およびその濾過装置を用いた水処理装置ならびにその水処理装置の制御方法 |
CN116675376A (zh) * | 2023-06-15 | 2023-09-01 | 艾培克环保科技(上海)有限公司 | 一种丙烯酸丁酯废水的处理设备 |
-
2002
- 2002-09-06 JP JP2002260924A patent/JP2004097897A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007161685A (ja) * | 2005-12-16 | 2007-06-28 | Astom:Kk | 有機酸の製造方法 |
JP2011092805A (ja) * | 2009-10-27 | 2011-05-12 | Panasonic Electric Works Co Ltd | 濾過装置およびその濾過装置を用いた水処理装置ならびにその水処理装置の制御方法 |
CN116675376A (zh) * | 2023-06-15 | 2023-09-01 | 艾培克环保科技(上海)有限公司 | 一种丙烯酸丁酯废水的处理设备 |
CN116675376B (zh) * | 2023-06-15 | 2024-03-12 | 艾培克环保科技(上海)有限公司 | 一种丙烯酸丁酯废水的处理设备 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US20200208278A1 (en) | Electrolyzer for gaseous carbon dioxide | |
TW423989B (en) | Ion exchanger, method of producing the same, apparatus for and method of demineralizing an aqueous liquid | |
US20120199486A1 (en) | Ion-Selective Capacitive Deionization Composite Electrode, and Method for Manufacturing a Module | |
JP4384444B2 (ja) | 電気式脱塩装置及び電気透析装置 | |
JPH11502764A (ja) | 電気透析を含めた膜処理の改良 | |
JP4454502B2 (ja) | 電気式脱塩装置 | |
US9365440B2 (en) | Method of producing an apparatus for removal of ions from water | |
JP2007516056A (ja) | 電気式脱塩モジュール及び該モジュールを備えた装置 | |
CN104495991A (zh) | 一种基于流动式电极的高效膜电容去离子阵列 | |
US10246356B2 (en) | Apparatus for removal of ions comprising multiple stacks | |
JPH0999221A (ja) | 電気再生式脱塩装置 | |
CN103249485A (zh) | 带有电再生的离子交换去离子设备 | |
JP2004097897A (ja) | 電気透析型脱塩装置 | |
JP7224994B2 (ja) | 電気式脱イオン水製造装置および脱イオン水の製造方法 | |
JP6962774B2 (ja) | 電気式脱イオン水製造装置 | |
JP2017505229A (ja) | 水からイオンを除去するための装置およびその装置を作製する方法 | |
KR20150007070A (ko) | 축전식 전기탈염용 단위셀 및 이의 제조방법 | |
CN204400676U (zh) | 一种基于流动式电极的高效膜电容去离子装置 | |
CN111615497B (zh) | 用于生产去离子水的电去离子装置 | |
KR102481639B1 (ko) | 다공성 이온교환 구조체 및 이의 제조방법 | |
JPH11151430A (ja) | バイポーラ膜 | |
JP2000042374A (ja) | 極性物質の除去装置 | |
JP2003190960A (ja) | 電気式脱塩装置 | |
Han et al. | Understanding Membrane Fouling in Electrically Driven Energy Conversion Devices. Energies 2021, 14, 212 | |
NL2015321B1 (en) | Method for generating electricity with a Reversed Electro Dialysis (RED) process, and a stack, apparatus, and filler there for. |