JP2000040422A - 難着雪送電線及びその製造方法 - Google Patents

難着雪送電線及びその製造方法

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JP2000040422A
JP2000040422A JP10223630A JP22363098A JP2000040422A JP 2000040422 A JP2000040422 A JP 2000040422A JP 10223630 A JP10223630 A JP 10223630A JP 22363098 A JP22363098 A JP 22363098A JP 2000040422 A JP2000040422 A JP 2000040422A
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hydrated oxide
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Katsumi Muroi
克美 室井
Yoshito Watabe
義人 渡部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウムより線からなる送電線で、降雪
期に断線あるいは鉄塔到壊をも引き起こす着雪を防止す
るに好適な難着雪送電線を提供する。 【解決手段】 難着雪送電線は、アルミニウム素線20
表面に、大きさ数μmのマクロ凹凸をもつエッチング層
21を形成し、該層21上に大きさ0.1〜0.2μmの
ミクロ凹凸で有効表面拡大率800倍以上となるアルミ
ニウム水和酸化物層22を形成し、さらに該層22上に
臨界表面張力が20dyn/cm以下の含フッ素シラン化合物
を水和酸化物に化学吸着させてパーフルオロカーボン基
(CF3基)を密に配向させた超撥水性被膜23を形成
し、上記処理した素線20をより線にしたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は架空送電線の着雪を
防止するための難着雪送電線およびその製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】冬期における架空送電線への着雪は、最
悪にいたっては断線や鉄塔到壊などの事故にもつなが
る。そのためその対策の研究、開発がおこなわれている
が、未だ十分とは言えない。
【0003】現在までに報告のある技術としては、特開
平6−162828号、特開平7−296641号等が
ある。特開平6−162828号は電線の表面にZrO
2、ZrC粒子を分散した塗料をコーティングして、太
陽光を効率良く吸収して熱に変えて電線表面の温度を積
極的に上昇させ、雪の付着を防止しようとする難着雪送
電線を開示している。一方、特開平7−296641号
では、架空送電線の外表面に撥水処理を施した部分と親
水処理を施した部分とを混在させて着雪を落下しやすい
構造とした難着雪電線を開示している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記のい
ずれの技術においても、種々問題がある。特開平6−1
62828号では太陽光を吸収することを前提としてい
るが、降雪時は曇天で有り太陽光はほとんど無く、たと
えわずかに太陽光があったとしても、その光は送電線の
着雪により遮断され、送電線の着雪が融雪するほどの温
度上昇は期待できない。また太陽光吸収被膜は塗料のコ
ーティングにより形成されるため、長期間の使用におい
ては塗料の劣化による剥離が生じ、耐久性に問題があ
る。
【0005】一方、特開平7−296641号で開示さ
れている着雪防止のメカニズムは、送電線前面に撥水処
理のみを施すのではなく、一部に親水性処理部を施して
混在させ、撥水部と親水部との摩擦係数の差を利用し
て、撥水処理部にて着雪が滑って移動し、親水処理部に
て摩擦抵抗を受けブレーキ作用によりそれを落下させ
る。また親水処理部に着雪させ着雪自重により落下させ
ている。しかしながら開示されている撥水処理部の材料
を見ると、撥水性の程度はさほど高くなく、この程度で
は着雪あるいは着氷が表面で生じ、さらに発達する可能
性が有り、未だ不十分である。
【0006】本発明の目的は、アルミニウム素線からな
る送電線表面を耐久性のある超撥水処理部を設けること
により、前記問題点を解決して実用性のある難着雪送電
線およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明による難着雪送電線は、アルミニウムあるい
はアルミニウム合金(以下、総称してアルミニウムと記
す)からなる複数の素線をよりあわせてなる送電線てあ
って、各素線表面が、数マイクロメートルないし数百マ
イクロメートルの大きさのマクロ凹凸と、そのマクロ凹
凸面上にナノメートルオーダーから数マイクロメートル
の大きさのミクロ凹凸構造を有する水和酸化物を形成し
た複合凹凸構造とし、さらにその水和酸化物のミクロ凹
凸面は20dyn/cm以下の疎水基を有する含フッ素シラン
化合物からなる撥水被膜で被覆しており、且つ素線表面
が滑らかであるとして求めた表面積に対するミクロ凹凸
面の表面積の比(又は実表面積/幾何学的面積)を示す
有効面積拡大率が800ないし数千であることを特徴と
するものである。
【0008】この難着雪送電線において、撥水性被膜
は、最表面にパーフルオロカーボン基が配向され、水和
酸化物層とシロキサン結合をしている構造を有するもの
が好ましい。
【0009】また、上記目的を達成するために、本発明
による難着雪送電線の製造方法では、まず、表面に複合
凹凸構造を有する水和酸化物層を設けるには、アルミニ
ウム素線(あるいはアルミニウム素線をよりあわせてな
るより線)を、(1)脱脂処理した後、(2)酸あるいはア
ルカリ水溶液を用いてエッチング処理を施してマイクロ
メートルオーダー(数〜数百μm)の大きさのマクロな
凹凸を形成し、(3)次に水洗後に、水あるいはpH8〜
12の弱塩基水溶液、例えばアンモニア水、蓚酸塩、炭
酸塩、トリエタノールアミン、マグネシウムイオンと炭
酸水素イオンの組合せ、水酸化イオンとリチウムイオン
の組合せ等を溶解させたものを沸騰させて、その中にア
ルミニウム素線(あるいはより線)を浸せきさせて表面
に水和酸化物(Al23・H2O)を形成する。
【0010】その上に撥水性被膜を設けるには、水和酸
化物層を形成した後に十分乾燥させて、アルミニウム素
線あるいはより線を、(4)含フッ素シラン化合物として
パーフルオロカーボン基(CF3基)を有するアルキルシ
ラン(−Si(OR3)3,R=Cn2n+1)化合物を用
い、この含フッ素シラン化合物を気化させた雰囲気中に
所定時間保持させ、アルミニウム素線(あるいはより
線)を所定温度に加熱させながら、含フッ素シラン化合
物を予め不活性ガスで希釈して気化させたガスを導入し
て、表面の水和酸化物と化学吸着させて撥水性被膜を形
成する。そして素線の状態で(1)〜(4)の処理を施した
場合には、最終的に撥水性被膜で被覆された素線を複数
本よりあわせることにより難着雪送電線を製造する。よ
り線の状態で(1)〜(4)の処理を施した場合には、(4)
の処理が最終となる。
【0011】この製造方法においては、含フッ素シラン
化合物として、パーフルオロカーボン基(CF3基)を
有するアルコキシシラン化合物を用いることが好まし
い。
【0012】上記本発明の製造方法においては、アルミ
ニウム素線あるいはより線の表面に、複合凹凸を有する
水和酸化物層を形成するが、この処理により水和酸化物
の表面積を増大化させることができる。エッチング処理
によりアルミニウム素線の表面には、マクロな凹凸が形
成され、アルミニウム基体上に水和酸化物を形成した場
合の面積と、エッチング後に水和酸化物を形成した場合
の面積を比較すると、BET法による比表面積測定結果
では、後者は約10倍以上も増加する。そのため、水和
酸化物の水酸基が増加し、撥水性被膜を形成する時に用
いる臨界表面張力が20 dyn/cm以下のパーフルオロカ
ーボン基を有するアルキルシラン化合物を、水酸基と化
学吸着させると、最表面に表面エネルギーの最も小さな
パーフルオロカーボン基がより密に配向される構造とな
る。形成された撥水性被膜は、表面の複合凹凸形状と、
パーフルオロカーボン基の低表面エネルギーの相乗効果
により極めて高い撥水性を呈することになる。この被膜
の水に対する接触角は170度以上を示し、また直径が
数ミクロンの凝縮水滴に対しても表面に付着せずに落下
する。なお、水和化合物の有効面積拡大率が800以下
であると、水和酸化物の凹凸表面積が小さく、表面に形
成されるCF3基が少ないので、撥水性が不足する。ま
た有効面積拡大率の上限の数千は水和酸化物の形成の際
に得られた実測の数値を用いた。
【0013】送電線の着雪が重大問題となる場合は、降
雪時における雪の状態が水分を多く含んだ時に発生す
る。送電線上に付着した雪は含有する水分が氷結して、
氷の層を形成する。さらにその上に付着する雪は氷結
し、氷の層は次第に生長し氷塊を形成する。本発明の送
電線は撥水性が極めて高いため、付着した雪は、氷結せ
ずに落下してしまう。
【0014】また、含フッ素シラン化合物のアルコキシ
シラン基とアルミニウム素線表面の水和酸化物の水酸基
は、脱アルコール反応による化学吸着により、シロキサ
ン結合しているため、形成された被膜の付着力は大き
く、耐久性がある被膜となる。そのため寿命が長い。さ
らに含フッ素シラン化合物を気化させて反応させるた
め、アルミニウム線の内部までに含フッ素シラン化合物
が浸透し、内部アルミニウム素線上においても反応して
高い撥水性被膜が形成され、均一な難着雪性送電線とな
る。
【0015】
【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施の形態を具
体的に図1ないし図3を用いて説明する。図1は本発明
による難着雪送電線の断面図である。送電線1は鋼心ア
ルミニウムより線である。鋼線2はΦ3.5mmで7
本、アルミニウム線3はΦ3.5mmで30本から構成
されている。図2は本発明の難着雪送電線の表面構造を
模式的に示す図、図3は本発明の難着雪送電線の表面の
走査型顕微写真である。
【0016】アルミニウム線3の基材20の上部にはエ
ッチング層21がありマクロ凹凸が形成されている。さ
らにその表面には、ナノメートルオーダーのミクロ凹凸
として約200nm(0.2μm)厚さのミクロ凹凸を
有する水和酸化物層22が形成されている。またその上
には撥水性被膜23が形成されている。なお、図3には
エッチングのマクロ凹凸表面上に水和酸化物層22の花
弁状のミクロ凹凸形状が見られる。しかし撥水性被膜2
3は存在はするが、数ナノメートルの厚さのため見るこ
とができない。図3において、白い毛のように見える多
数の花弁状のミクロ凸部を含む明るい領域Aはエッチン
グによるマクロ凹凸の凸部分(図2)であり、暗い領域
Bはマクロ凹凸の凹部分(図2)である。ここで、花弁
状のミクロ凸部の大きさは0.1〜0.2μm程度、即ち
花弁の長さ、厚さ、隣合う花弁間の距離などが0.1〜
0.2μm程度であり、そして明るい領域Aと暗い領域
Bでなるマクロ凹凸の中心間距離は数μmである。
【0017】次に上記送電線1の製造方法について説明
する。送電線の鋼心アルミニウムより線をアルカリ脱脂
剤を用いて、60℃、5分間浸せきして脱脂処理を行
い、水で洗浄する。次に、1重量%濃度塩酸水溶液(温
度80℃)に5分浸せきしてアルミニウムより線表面の
エッチングを行い、マクロ凹凸を形成させる。次に水で
洗浄して、97℃以上に加熱した脱イオン水中に10分
浸せきしてマクロ凹凸表面に水和酸化物層のミクロ凹凸
を形成させる。その後、水洗、乾燥を行う。さらに、含
フッ素シラン化合物として構造式:CF3(CF2)7(CH
2)2Si(OCH3)3(東芝シリコーン(株)製)のフル
オロアルキルシランを選択し、150℃に加熱した装置
内に導入し、さらに滞留時間が5分となるように送電線
を供給して、送電線表面の水和酸化物と反応させる。な
お他の含フッ素シラン化合物として、CF3(CF2)5(C
2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(O
25)3が挙げられる。
【0018】このようにして作製した送電線は、その上
に水滴を落とすと、水滴は全て弾かれて転がり落ちる高
い撥水性を示した。したがって、この送電線は着雪に対
しても極めて有効であることがわかる。またアルミニウ
ム素線を引き延ばして板材として、前記処理条件と同一
の条件のもとで脱脂、エッチング、水和酸化物の形成、
含フッ素シラン化合物による成膜等の表面処理を行い、
水との接触角を求めたところ173度の超撥水性を示し
た。さらにこの材料の耐久性をサンシャインカーボンア
ーク灯方式耐候性試験機(スガ試験機(株)製)を用い
て促進試験で評価した。評価は水との接触角で行った。
照射時間1500時間後においても表面の水との接触角
は170度以上を示し、被膜の撥水性の低下は見られな
かった。
【0019】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、送電線
の表面が、水との接触角が170度以上と超撥水性を呈
し、またその撥水性の耐久性にも優れた被膜を有するよ
うにしたため、難着雪送電線が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の難着雪送電線のより線
構造を示す断面図。
【図2】本発明の難着雪送電線の表面構造を説明する模
式断面図。
【図3】本発明の難着雪送電線表面に形成された水和酸
化物による微細な凹凸パターンを示す走査型電子顕微鏡
写真。
【符号の説明】
1 送電線 2 鋼線 3 アルミニウム線 20 アルミニウム基体 21 エッチング層 22 水和酸化物層 23 撥水性被膜

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウムまたはアルミニウム合金か
    らなる複数の素線をよりこんだ送電線において、各素線
    表面には数マイクロメートルから数百マイクロメートル
    の大きさのマクロ凹凸が形成され、該マクロ凹凸表面上
    にナノメートルオーダーから数マイクロメートルの大き
    さのミクロ凹凸を有する水和酸化物が形成され、さらに
    該ミクロ凹凸表面に臨界表面張力が20 dyn/cm以下の
    疎水基を有する含フッ素シラン化合物からなる撥水性被
    膜が被覆されており、且つ前記素線表面が滑らかである
    として求めた表面積に対する前記ミクロ凹凸面の表面積
    の比を示す有効面積拡大率が800ないし数千であるこ
    とを特徴とする難着雪送電線。
  2. 【請求項2】 前記撥水性被膜は、最表面にパーフルオ
    ロカーボン基が配向され、前記水和酸化物層とシロキサ
    ン結合をしている構造を有することを特徴とする請求項
    1記載の難着雪送電線。
  3. 【請求項3】 アルミニウムまたはアルミニウム合金か
    らなる複数の素線をよりこんだ送電線の製造方法におい
    て、前記素線を脱脂処理する工程と、該脱脂処理された
    素線を酸あるいはアルカリ水溶液でエッチング処理して
    該素線表面にマクロ凹凸を形成する工程と、該エッチン
    グ処理された素線表面に水あるいは弱塩基水溶液により
    水和酸化物を生成することにより前記マクロ凹凸表面に
    さらに小さなミクロ凹凸を形成し、且つ前記素線表面が
    滑らかであるとして求めた表面積に対する前記ミクロ凹
    凸面の表面積の比を示す有効面積拡大率が800ないし
    数千とする工程と、さらに前記ミクロ凹凸が形成された
    素線表面に表面エネルギーが臨界表面張力で20 dyn/c
    m以下の疎水基を有する含フッ素シラン化合物を気化さ
    せ前記水和酸化物に化学吸着させて撥水性被膜を形成す
    る工程と、該撥水性被膜で被覆された素線を複数よりこ
    んで送電線を製作する工程と、からなることを特徴とす
    る難着雪送電線の製造方法。
  4. 【請求項4】 アルミニウムまたはアルミニウム合金か
    らなる複数の素線をよりこんだ送電線の製造方法におい
    て、前記素線をよりこんだより線を脱脂処理する工程
    と、該脱脂処理されたより線を酸あるいはアルカリ水溶
    液でエッチング処理して該より線表面にマクロ凹凸を形
    成する工程と、該エッチング処理されたより線表面に水
    あるいは弱塩基水溶液により水和酸化物を生成すること
    により前記マクロ凹凸表面にさらに小さなミクロ凹凸を
    形成し、前記素線表面が滑らかであるとして求めた表面
    積に対する前記ミクロ凹凸面の表面積の比を示す有効面
    積拡大率が800ないし数千とする工程と、さらに前記
    より線表面に表面エネルギーが臨界表面張力で20 dyn
    /cm以下の疎水基を有する含フッ素シラン化合物を気化
    させ前記水和酸化物に化学吸着させて撥水性被膜を形成
    する工程と、からなることを特徴とする難着雪送電線の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 前記含フッ素シラン化合物は、パーフル
    オロカーボン基を有するアルコキシシラン化合物である
    ことを特徴とする請求項2または3に記載の難着雪送電
    線の製造方法。
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