JP2000038514A - 高分子素材のドープ、高分子素材からなるマイクロビーズおよびそのビーズの製造方法 - Google Patents

高分子素材のドープ、高分子素材からなるマイクロビーズおよびそのビーズの製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粒径のバラツキが無い均一な絹タンパク質マ
イクロビーズの提供。 【解決手段】 絹タンパク質を溶解する際に、絹タンパ
ク質分子間の水素結合を切断しつつ、溶解に伴う絹タン
パク質の分子量低下を抑え、かつ絹タンパク質の高分子
性の低下を防止させることが可能なジクロロ酢酸等の第
一溶媒と、該第一溶媒と相溶性があり、溶解処理に伴う
絹タンパク質の分子量低下を抑えつつ、絹タンパク質の
溶解性を向上させる働きを有する塩化メチレン等の第二
成分溶媒とからなり、該第一溶媒と第二溶媒との混合比
率が、50−95:50−5v/v%である混合溶媒に
絹タンパク質を溶解してドープを作製し、このドープを
細孔ノズルから凝固浴中に滴下し、凝固させて、絹タン
パク質マイクロビーズを調製する。その際、該ドープに
塩化ナトリウム等の中性塩を添加し、凝固後に溶出させ
れば、得られる ビーズは多孔質状となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高分子素材からな
り、バラツキが無く、均一微細粒径のマイクロビーズ、
該マイクロビーズの製造方法、および該マイクロビーズ
を製造するための高分子素材のドープに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】天然素材または高分子素材から形成され
る形状が微細なビーズ(以下、マイクロビーズと略記す
ることもある)は、医薬品、生理活性物質、香料、化粧
品、接着剤、塗料、酵素、抗生物質、肥料成分、農薬、
フェロモン等を包含・担持し、その有効成分の放出制御
効果を狙う素材であり、各種産業資材として利用でき
る。
【0003】マイクロビーズの素材としては、従来、ポ
リ塩化ビニル、ポリアミド−ポリ尿素、ポリ−尿素、ゼ
ラチン、ナイロン、ポリウレタン、メラミン樹脂が用い
られていた。マイクロビーズは、従来から、医薬・医療
用、香料用、化粧品用、接着剤・塗料用、複写・記録表
示用の材料等、各種産業資材として、また成分輸血の現
場で利用できるバイオセパレーター担体として、または
血漿浄化材の担体として幅広く利用されてきた。
【0004】粒径が小さく、サイズのバラツキが無いマ
イクロビーズは、固定化酵素用担体として化学分野、医
療分野、食品産業分野、工業プロセス分野等幅広い各種
産業分野で利用できる。例えば、タンパク質からなるマ
イクロビーズは、各種産業資材として多面的に利用で
き、特に、アフィニティークロマトグラフィー用担体、
細胞培養用担体、医薬補助剤等として利用でき、また医
薬品、生理活性物質、ホルモン、ワクチン等を包含・担
持させるためのマイクロカプセル化基材としても優れた
特性を発揮する。農薬、肥料等をカプセル化したマイク
ロビーズは、持続効果が必要とされる土壌改質材として
有効である。また、微量であっても新規な機能を持つ飼
料成分、家畜飼料、または養魚飼料のための担体として
も利用できる。微細でサイズのバラツキが無いマイクロ
ビーズは、ファインケミカル分野で特殊な利用が可能と
なる。
【0005】かかるマイクロビーズは、高分子素材に溶
媒を加えて溶解し、均一で濃厚な溶液(以下、ドープと
いう)とし、このドープを高分子凝固作用を有する溶媒
からなる凝固浴中に滴下し、凝固浴中で試料分子が凝固
する性質を利用する等の複雑な方法で製造されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】有効成分を担持するた
めのマイクロビーズは、従来から種々の素材を用いて製
造されていたが、マイクロビーズ素材と有効成分との分
子間相互作用を考慮した分子設計に基づく素材の開発は
極めて遅れており、いまだ満足すべきものは開発されて
いないのが現状である。従来の素材からなるマイクロビ
ーズの場合、ビーズから有効成分が放出される速度を調
節することは困難であった。また、マイクロビーズの素
材となる物質を化学合成し、その後、粒径が均一なマイ
クロビーズを製造しなければならず、繁雑な調製作業と
熟練とが必要であった。
【0007】マイクロビーズは、通常、素材となる物質
を溶解したドープを細孔ノズルから凝固浴中に吐出さ
せ、凝固浴中で凝固させて製造されている。しかし、マ
イクロビーズのサイズおよびマイクロビーズ中に包含さ
れる医薬品等の有効物質の徐放速度に影響を及ぼすビー
ズの多孔質状態は、ドープを凝固浴に入れる際の脱溶媒
の速さ、ビーズへの凝固液の浸透、拡散速度等により大
幅に変化してしまうため、またビーズを調製するための
微妙な条件の差がビーズのサイズを変えてしまうため、
サイズが均一なマイクロビーズを製造するには、繁雑な
調製作業と熟練とが必要であった。さらに、従来法で
は、ドープを経済的に、しかも効率的に多量生産するこ
とは困難であった。
【0008】上記のような問題があるため、収率、効
率、経済面で優れ、かつ取り扱いが容易な調製作業によ
り、均一微細粒径の有機高分子素材からなるマイクロビ
ーズを製造するための技術開発が強く望まれていた。
【0009】したがって、本発明は、上記問題点を解決
して、粒径のバラツキが無く、微細なタンパク質のよう
な高分子素材からなるマイクロビーズ、およびその有効
な製造方法、ならびにそのビーズを製造するためのタン
パク質のような高分子素材のドープを提供することを課
題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、昆虫由来
の生体高分子の新しい利用技術の開発について鋭意検討
を進めてきた中で、絹タンパク質等の生体高分子を各種
の有機溶媒に溶解させるための基本的な実験を積み重
ね、例えば絹フィブロイン繊維を有機溶媒中に直接溶解
させて得た絹タンパク質ドープを細孔ノズルを通して凝
固浴中に滴下することで、サイズの揃ったマイクロビー
ズを調製することができることを見出し、上記課題を解
決して本発明を完成させるに至った。
【0011】すなわち、例えば家蚕生糸(繭糸)、野蚕
生糸、およびそれらの生糸を精練して得られる絹フィブ
ロイン繊維を有機溶媒に溶解させて、絹タンパク質ドー
プとし、このドープを例えば注射筒等に入れ、圧力を加
えて注射針の細孔ノズルを通して凝固浴中に滴下させ、
または凝固浴中に吐出させ、その後、さらに凝固浴中に
所定時間放置することでタンパク質を凝固せしめた後、
ドープに含まれる有機溶媒を除去することによりサイズ
の揃った均一なマイクロビーズを製造することができる
こと、また、絹タンパク質ドープに溶解し難い中性塩を
該ドープに添加し、これを細孔ノズルを通して凝固浴中
に滴下させ、または凝固浴中に吐出させて凝固せしめ、
その後、さらに凝固浴中に所定の時間放置することによ
りタンパク質素材を完全に凝固せしめ、次いでドープに
含まれる有機溶媒を除去することによりマイクロビーズ
形状とし、しかる後、濾紙により濾取したマイクロビー
ズを中性塩のみを溶解する溶媒・溶液中に入れて中性塩
だけを溶解除去することにより多孔質状態の絹タンパク
質のマイクロビーズを製造することができることを見出
し、本発明を完成させるに至った。
【0012】本発明者らは、まず、タンパク質繊維を溶
解するために最適な有機溶媒を探索するに際し、単独の
溶媒では所定の目的に合致するものがないことから、複
数の有機溶媒を組み合わせ、最適な溶解条件を探究し、
種々の溶媒の組み合わせの中から、タンパク質ビーズを
製造するために適した混合溶媒とタンパク質ドープ濃度
とを明らかにした。この結果に基づいて行ったその後の
研究によって、種々の高分子素材について、例えば
(1)絹フィブロインまたは絹セリシン等の絹タンパク
質、化学修飾した羊毛ケラチン(例えば、カルボキシメ
チルケラテイン)等の天然高分子素材、(2)ポリビニ
ルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PV
P)等の高分子ビニル化合物、(3)キチン、キトサ
ン、プルラン(多糖類)、サッカロース、デキストリン
等の天然高分子素材について、種々の混合有機溶媒、す
なわち高分子素材を溶解する働きを有する第一溶媒と該
高分子素材の分子の切断を防止する作用を有する第二溶
媒との混合有機溶媒が、これらの高分子素材を溶解し、
ドープを作製するのに適していることが分かった。上記
化学修飾した羊毛ケラチンとは、羊毛ケラチン分子間の
S−S結合を還元反応により切断し、その後の反応でS
−S結合が再結合しないように、この部分を例えばカル
ボキシメチル基で修飾した試料を意味する。
【0013】第一溶媒は、高分子素材分子間の水素結合
を切断しつつ、溶解に伴う高分子素材の分子量低下を抑
え、かつ高分子素材の高分子性を保持することができる
ものであり、例えばジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、そ
の混合物等が望ましい。高分子性とは、溶解処理後も素
材本来の高分子量が保存でき、分子量の低下のないこと
を意味する。また、第二溶媒は、第一溶媒と相溶性があ
り(分子レベルで混ざり合い、分離することがない)、
溶解処理に伴う高分子素材の分子量低下を抑えつつ、高
分子素材の溶解性を向上させる働きを有するものであ
り、例えば塩化メチレン、テトラクロロエチレン、クロ
ロホルム、その混合物等が望ましい。例えば、カイコ由
来の絹フィブロイン繊維を溶解するには、ジクロロ酢酸
(DCAと略記することもある)と塩化メチレン(MC
と略記することもある)との混合有機溶媒が最適である
ことが分かった。第一溶媒と第二溶媒との混合比率は、
50−95:50−5v/v%であればよい。
【0014】本発明の高分子素材のドープは、上記第一
溶媒と第二溶媒との混合有機溶媒に高分子素材を溶解し
てなるものである。
【0015】本発明の高分子素材のマイクロビーズは、
上記ドープから得られるものである。すなわち、上記の
ような作用をするDCA等の第一溶媒とMC等の第二溶
媒との混合有機溶媒中に、高分子素材を溶解させて、高
分子素材のドープを得、続いて、このドープを凝固溶媒
中に滴下し、高分子素材の凝固速度を一定に保ちつつ凝
固させることにより、一定粒径で、圧力をかけても変形
し難いという機械的強度に優れた、高分子素材のマイク
ロビーズを効率的且つ経済的に製造することができる。
高分子素材のドープを調製するための混合有機溶媒とし
ては、特に制限はなく、上記したように、高分子素材の
分子量低下が起こり難い溶媒で、高分子素材の溶解性を
向上させる働きを持つ溶媒であれば利用できる。高分子
素材の分子量低下を防止しながら高分子素材を溶解させ
るために用いる第一溶媒としては、DCAが好ましく用
いられる。また、高分子素材の溶解を促し、かつ沸点が
低く、エタノール等の凝固浴で除去され易い第二溶媒と
しては、MC、またはクロロホルムが好ましく用いられ
る。このMCは、DCA処理時における高分子素材の分
子量低下を抑えつつ、高分子素材の溶解性を向上させる
働きがある。
【0016】本発明で用いる第一溶媒と第二溶媒との混
合比率、例えばDCAとMCの混合系における混合比率
は、DCA量50−95v/v%に対して後者のMC量
は50−5v/v%であればよく、好ましくはDCA量
60−80v/v%に対して後者のMC量は40−20
v/v%である。DCA量が95v/v%を超えると高
分子素材の溶解性は著しく向上するが、高分子素材の分
子鎖が切断され、分子量低下が顕著となり、最終製品の
高分子素材のビーズにした場合、素材が持つ本来の高分
子性が失われ、機械的特性等の実用性機能が劣悪化して
しまう。一方、DCA量が50v/v%未満だと高分子
素材の溶解性が不十分となり、所望の均一な高分子素材
のドープが得られなくなる。
【0017】DCAとMCの混合溶媒中に高分子素材を
溶解させる際に、高分子素材の分子量低下を抑えなが
ら、均一な高分子素材のドープを得るためには、高分子
素材を穏やかな条件で溶解させることが望ましく、その
ために温度は低温度領域の方が良好な結果が得られる。
溶解温度は、5−50℃の範囲で良く、好ましくは5−
30℃、特に好ましくは10−15℃である。溶解濃度
が高すぎると高分子素材を溶解させる程度が過度とな
り、高分子素材の分子量が低下し、高分子素材の高分子
性が失われてしまう恐れがある。また、溶解温度が低過
ぎると溶解量が上がらず効果的ではない。
【0018】高分子素材を充分に溶解するには、容器中
にDCAとMCとの混合溶液を入れ、所定の大きさに切
断した高分子素材をその中に入れスタラーチップを用い
てDCA/MCの混合溶液をスタラー攪拌すると良い。
そのための溶解時間は、通常20分−5時間が妥当であ
り、望ましくは、45分−90分である。
【0019】本発明のマイクロビーズの製造方法によれ
ば、高分子素材のドープ中に抗生物質や生理活性物質等
の有効成分を溶解し、これを凝固浴中に滴下させること
により有効成分を含有し、徐放担体等の各種工業資材と
して利用できる一定粒径のビーズまたは多孔質ビーズを
製造することができる。
【0020】高分子素材の多孔質状態のビーズは、上記
のように先ず高分子素材のドープを調製した後、DCA
/MC等の混合有機溶媒に対しては溶解度が低く、水に
対しては高い溶解度を示す中性塩で微粉末化したものを
添加し、この中性塩を含む高分子素材のドープを細孔ノ
ズルから凝固浴に滴下し、所定の時間放置(例えば、室
温で10−20分間)し、高分子素材を凝固させて高分
子素材のビーズを製造し、次いで濾紙またはガラスフィ
ルター等でビーズを濾取し、濾取したビーズを中性塩溶
解作用を持つ水等の溶媒中に所定の時間放置して中性塩
を除去することにより製造できる。ここで利用できる中
性塩は、通常の中性塩であれば種類を問わず利用できる
が、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウ
ム、ヨウ化カリウム、フッ化ナトリウム、硫酸マグネシ
ウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウ
ム、水酸化カリウム、硫酸アンモニウム、炭酸水素ナト
リウム等を利用できる。これらの中性塩の中で、使用す
る有機溶媒に溶けず、水溶液に対して高い溶解性を示す
中性塩であって、かつ生体組織に無害で、安価なものと
して塩化ナトリウムが最も好ましく利用できる。得られ
た多孔質状態のビーズは表面積が広いので生理活性物質
等の徐放担体として利用できる。
【0021】本発明のマイクロビーズの化学成分は、生
理活性物質等の有効成分と強い分子相互作用を持つた
め、マイクロビーズ表面に酵素もしくは免疫抗体を化学
的、または物理的に結合させることもできる。例えば、
免疫グロブリンなどの抗原・抗体を粒子表面および/ま
たは内部に固定化することにより、免疫担体として利用
できる。また、本発明のビーズまたは多孔質状態のビー
ズは、保湿性に優れているため、化粧品材料としても利
用できる。有効表面積の広い微粒子という特徴を活し
て、さらに効率的な酵素機能を発揮させることも可能で
ある。
【0022】本発明に用いる混合有機溶媒はまた、種々
の高分子素材を溶解させることができ、その結果、良好
な機能と形態を持つマイクロビーズを製造させることが
可能である。本発明で用いられる上記のような絹タンパ
ク質、キチン、キトサン等の高分子素材は、生体組織に
埋め込んでも、いずれも抗原とはなり難い。また、本発
明のタンパク質ビーズは、所定の時間後生体内の酵素に
より分解されるという特徴を持っている。
【0023】本発明においてドープを凝固浴に滴下する
ための手段には特に制限はなく、細孔ノズルを有する容
器であればよい。
【0024】本発明ではまた、前記細孔ノズルの口径、
高分子素材のドープ濃度、ノズル押し出し圧力、凝固浴
の溶媒濃度、凝固浴の種類、凝固浴中での高分子素材ビ
ーズの放置時間等を任意に変えることによって、得られ
る高分子素材のビーズの直径を所望の値に任意に変化さ
せることが可能である。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明で用いることができる高分
子素材としては、上記したような各種天然高分子素材、
高分子ビニル化合物であれば特に制約無く利用できる
が、天然のタンパク質繊維のような形態のものを原材料
として使用することが望ましい。例えば、家蚕由来の絹
機維、またはその近縁種のクワコ由来の絹繊維であって
も良いし、野蚕由来の天蚕、柞蚕、ひま蚕、エリ蚕等の
絹繊維であっても良い。また、動物由来の羊毛繊維また
はスパイダーシルクであっても同様に利用できる。以
下、タンパク質材料として、絹タンパク質を代表例に挙
げて説明する。
【0026】家蚕幼虫や野蚕幼虫が吐糸して作り出すの
が繭糸である。これらの繭糸の外側は、セリシンで覆わ
れている。絹フィブロイン繊維を得るには、絹セリシン
を精練処理により除去することが必要である。家蚕繭糸
であれば、例えば炭酸ナトリウム等のアルカリ溶液で煮
沸処理すると絹セリシンは除去され、野蚕繭糸であれ
ば、例えばメタケイ酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウ
ム、エチレンジアミン四酢酸のような混合溶液で加熱処
理すると絹セリシンは除去され得る。また、絹セリシン
は、家蚕繭糸をアルカリ溶液で煮沸処理し、これをセル
ロース製透析膜中で透析することで調製できる。
【0027】絹タンパク質繊維を溶解させるには、絹タ
ンパク質を溶解する働きを有する第一溶媒(例えば、D
CA、トリクロロ酢酸(以下、TCAと略記することも
ある。)等)と、絹タンパク質の分子量の低下を防止す
る機能を持つ第二溶媒(例えば、MC、テトラクロロエ
チレン、クロロホルム等)との組み合わせを使用する。
例えば、DCAとMC、DCAとクロロホルム、または
DCAとテトラクロロエチレンの組み合わせが好ましく
用いられる。タンパク質を溶解させるために用いられる
第一溶媒としては、DCA、TCAが好ましい。第二有
機溶媒としては、MCが好ましく、この第二溶媒は、絹
フィブロインの分子量を低下させる程度を軽減するた
め、絹フィブロインドープの粘度を低下させるため、ま
たドープへの絹フィブロインの溶解度を上げるために有
効である。MCの代わりに用いられるものとしては、ク
ロロホルムが挙げられる。第一溶媒と第二溶媒の組み合
わせでは、DCAとMCの組み合わせが最も望ましい。
【0028】以下、本発明の実施の形態を説明するに当
たり、便宜上、混合溶媒の代表例としてDCAとMCと
の組み合わせを用いるが、これは本発明を何ら限定する
ものではない。
【0029】本発明では、絹タンパク質を溶解するため
の、DCA、MCの混合系での両者の混合比率は、DC
A量50−95v/v%に対して、MC量は50−5v
/v%が好ましく、容積比でDCA:MCが80:20
であるものが最も好ましい。DCA量が95v/v%を
超えると、絹タンパク質繊維の溶解性は著しく向上する
が絹タンパク質の分子量低下が顕著となり、絹タンパク
質本来の高分子性を保持した絹タンパク質のビーズの製
造は難しい。
【0030】ドープ中に含まれる絹タンパク質濃度は5
−20v/v%、好ましくは8−14v/v%が良い。
ドープ中の絹タンパク質濃度が5v/v%未満であって
も、20v/v%超えても凝固浴中におけるマイクロビ
ーズの凝固状態が劣悪となり、サイズのバラツキが無い
真球状のマイクロビーズが得られ難い。混合有機溶媒中
の絹タンパク質濃度が5v/v%未満であると、凝固過
程でできる絹タンパク質マイクロビーズにはその分だけ
DCA/MC混合有機溶媒が多く含まれ、これを除去す
るには、凝固過程で絹タンパク質マイクロビーズを凝固
浴中に長時間放置する必要があり、製造効率上好ましく
ない。一方、混合有機溶媒に含まれる絹タンパク質濃度
が20%を超えると、凝固浴中では均一な形状のマイク
ロビーズが得られ難くなる。また、サイズが小さいマイ
クロビーズを調製するには、低濃度の絹タンパク質ドー
プを用い、所望のビーズサイズに応じて微細な口径のノ
ズルから凝固浴中に絹タンパク質ドープを滴下すること
が望ましい。
【0031】絹繊維等のタンパク質繊維を充分に溶解す
るには、例えば三角フラスコ等の容器にDCAとMCと
の混合溶液を入れ、ハサミで細かに切断(例えば、3〜
5mmに切断)したタンパク質繊維をその中に入れ、ス
タラーチップを用いてDCA/MCの混合溶液をスタラ
ー攪拌すると良い。絹繊維を溶解させるための溶解時間
は、通常20分−5時間が妥当であり、望ましくは、4
5分−90分である。その後に、室温に所定の時間静置
して、溶媒中の泡を極力除去するとよい。
【0032】本発明で凝固浴として利用できる有機溶媒
は、メタノール、エタノールなどのアルコール、N,N
−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、もし
くはアセトン等またはそれらの混合物のようなタンパク
質繊維を凝固させる作用のある有機溶媒であれば、いず
れも利用できる。アルコールであれば60−100v/
v%の濃度のものがタンパク質を効果的に凝固させるこ
とができ、アルコール濃度が60−80%のものが好ま
しく用いられる。アルコール濃度が低すぎると、タンパ
ク質を凝固させる能力が弱まってしまう。これらの混合
溶媒、例えばアルコールとN,N−ジメチルホルムアミ
ドとの混合溶媒も利用できる。あるいはまた、絹フィブ
ロイン分子の凝集性を高める作用のあるものであればア
ルコール、N,N−ジメチルホルムアミド以外の有機溶
媒であっても種類を問わず利用できる。
【0033】本発明のタンパク質マイクロビーズまたは
多孔質状態のマイクロビーズに包含・担持できる酵素、
医薬品、生理活性物質、触媒、抗生物質などの有効成分
は使用目的に合わせて選択できる。水溶性のものであっ
ても、水不溶性のものであっても同様に利用できる。好
ましくは、DCA/MCなどの成分からなる混合溶媒に
分散、溶解するものであり、分散・溶解した際に、有効
成分の活性が失われないものであればいかなる種類の有
効成分であっても利用できる。
【0034】このように、タンパク質マイクロビーズに
包含・担持することができる有効成分は、タンパク質マ
イクロビーズの原材料であるタンパク質ドープに溶解で
きるもの、または分散可能なものであれば何れも利用で
きる。タンパク質ドープに溶解または分散せしめる有効
成分の量は、およそ0.005−0.5重量%で良く、
望ましい有効成分量は、0.01−0.03重量%であ
る。しかしながら、もちろんタンパク質ドープ中の有効
成分量は所望の有効成分の活性度合いにより自由に変え
ることができ、上記のような使用用途に合わせて自由に
決めることができる。
【0035】本発明の大きな特徴の一つは、有効成分を
溶解、分散せしめたタンパク質ドープを用いることによ
り、前記したようなビーズ調製工程を経て有効成分を含
む絹タンパク質のマイクロビーズまたは絹タンパク質の
多孔質状態のマイクロビーズを製造できる点にある。ま
た、凝固浴の種類、凝固時間、またはビーズの大きさを
調整することにより有効成分の徐放速度の制御されたマ
イクロビーズを製造することもできる。
【0036】絹タンパク質の多孔質体構造を持つマイク
ロビーズを製造するには、タンパク質マイクロビーズを
調製する方法と同様に行うが、第一溶媒と第二溶媒との
混合比率が、20−30v/v%対80−70v/v%
からなる混合溶媒中に絹タンパク質の濃度が5−20w
t%となるように絹タンパク質繊維を溶解させて行う。
【0037】絹タンパク質の多孔質体構造を持つマイク
ロビーズを製造する際には、タンパク質ドープに、DC
A/MC等の混合溶媒に対しては溶解度が低く、水に対
しては高い溶解度を示す中性塩を入れておくと良い。こ
の目的で利用可能な中性塩としては、前記したような多
様な中性塩が挙げられる。DCA/MCのような混合溶
媒に添加できる中性塩の量は、通常、10−20wt%
である。
【0038】絹タンパク質をDCA/MCなどの混合溶
媒に溶解し、かつ塩化ナトリウム等の中性塩を微粉末化
したものを添加して得た絹タンパク質ドープを細孔ノズ
ルを通してエタノール等の凝固浴中に滴下し、室温度で
10−20分放置する。その後、ガラスフィルターでマ
イクロビーズを濾取し、中性塩溶解作用を持つ水等の中
に30分程度放置して多孔質体構造を持つマイクロビー
ズを調製する。かかるマイクロビーズは表面積が広いの
で生理活性物質等の有効成分の徐放担体として利用でき
る。
【0039】本発明においてドープを凝固浴に滴下する
ための手段として、例えば注射筒等を用いることができ
る。
【0040】また、本発明の絹フィブロインビーズは、
水分との親和性が高い絹タンパク質であるため、組織培
養によって養成した不定胚や不定芽を包み込む包理剤
(カプセル材)として利用できる。従来、不定胚のカプ
セル材としてはアルギン酸カルシウムが用いられていた
が、これは乾燥に弱く、野外の土壌に直接播種すると直
ぐに乾燥してしまうという欠点があった。
【0041】
【実施例】次に本発明を実施例および比較例によりさら
に詳細に説明する。本発明はこれらの例に限定されるも
のではない。
【0042】実施例中の細菌活性の評価は次の方法に基
づいて行った。
【0043】抗菌性評価:抗菌活性検定に先立って、以
下の実施例で用いる高分子素材のビーズは70%エタノ
ールで2分間処理し殺菌した。抗菌性評価のために用い
た植物病原細菌は、植物由来のファイトアレキシンある
いは抗生物質に明瞭な抗菌活性を示し、トマトの重要な
病原細菌であり、植物病原細菌の中でも数少ないグラム
陽性菌としてのトマトかいよう病細菌(Corynebacterium
michiganese pv. michiganese)を選んだ。
【0044】トマトかいよう病細菌に対する抗菌活性検
定法:加熱溶解後55℃に保持した脇本半合成培地と、
検定菌の胞子液(濃度105〜106個/ml)2mlと
を混合してシャーレに流し込んで平板状に固め、2日後
の阻止円の大きさ(mm)を評価した。
【0045】また、以下の実施例では、ドープを凝固浴
に滴下するために、細孔ノズルを有する容器として注射
筒を用いたが、注射筒に限らず、細孔ノズルを有するも
のであればよい。
【0046】実施例1 絹タンパク質の溶媒として、DCAとMCとの比率が7
0と30v/v%とから成る混合有機溶媒(以下、DC
A/MC(70/30))を調製した。0.22gの絹
フィブロイン繊維を25℃で2mlのDCA/MC(7
0/30)に溶解し、6時間かけて、11wt%(0.1
1g/ml)の絹フィブロインドープを調製した。続い
て、抗生物質を含んだ絹タンパク質ビーズを製造するた
め、このドープ中に、抗生物質のリファンピシン、また
はテトラサイクリンを10mgづつ溶解させた。こうし
て調製された抗生物質含有絹タンパク質ドープを注射針
の細孔ノズルを通して、凝固浴表面から上方の5cm隔
てた位置から、100%のエタノールから成る凝固浴に
一滴づつ滴下した。凝固浴に滴下したタンパク質ドープ
の粒状滴は、各滴中に含まれるDCA/MCの混合有機
溶媒がエタノールと順次交換されながら、タンパク質の
凝固が進む。このようにして、直径約2mmの絹フィブ
ロインマイクロビーズを調製した。凝固浴での放置時間
を5分、10分、30分、1時間、2時間、5時間とし
た。トマトかいよう病細菌の増殖阻害に及ぼす効果を調
べるため、所定時間培養後、マイクロビーズの周辺に現
れる阻止円の直径を測定した。阻止円の評価は、抗菌実
験開始後2日目に行った。得られた結果を表−lに示
す。R1〜R6、T1〜T6は、絹タンパク質マイクロ
ビーズ中にリファンピシンまたはテトラサイクリンをそ
れぞれ含んだマイクロビーズであり、それぞれの1〜6
は、マイクロビーズ調製時の凝固浴中滞留時間が5分、
10分、30分、l時間、2時間、5時間に対応したも
のである。なお、表中のAPはマイクロビーズの周辺に
現れる阻止円の直径(mm)を意味する。
【0047】
【表1】
【0048】表−1から、本発明の絹フィブロインビー
ズの徐放効果は優れており、凝固浴中におけるビーズの
放置時間を変えることで抗生物質の徐放速度を制御でき
ることが分かる。
【0049】実施例2:ビーズの高分子性保持の検証 実施例1と同様の方法で調製した絹タンパク質マイクロ
ビーズの高分子性を評価するため、理学電機製の示差走
査熱量計(DSC)により試料の熱分解挙動を分析した
(測定条件:昇温速度10℃/分、窒素雰囲気、試料重
量2.2mg)。変性程度が軽微な対照区の絹フィブロ
イン膜は、次のようにして調製した。2.5gの家蚕絹
糸を55℃、8.5M臭化リチウム水溶液20ml中に
完全に溶解させた。この水溶液をセルロース性透析膜に
入れて、5℃で、5日間純水と置換することで不純物を
除去し、純粋な絹フィブロイン水溶液を調製した。かく
して、調製された絹フィブロイン水溶液に蒸留水を加
え、絶乾重量測定法による濃度が0.3%となるように
絹フィブロイン水溶液の原液を調製した。この原液をポ
リエチレン膜上に広げ、20℃で1昼夜かけて水分を蒸
発させ、透明な絹膜を作成し、これを対照区の絹フィブ
ロイン膜として用いた。
【0050】対照区の絹フィブロイン膜は、DSC曲線
上285℃に熱分解により主要な吸熱ピークが現れた。
実施例1のマイクロビーズは、288℃に熱分解による
吸熱ピークが現れており、対照区の絹フィブロイン膜と
ほぼ同一温度で熱分解することからDCA/MCの混合
有機溶媒処理で絹フィプロインの分子量が低下しないこ
とが確かめられた。
【0051】実施例3 DCAとMCとの混合比率が90と10v/v%とから
成る混合有機溶媒(以下、DCA/MC(90/10)
に家蚕絹フィブロインが10wt%含まれるように、絹
フィブロイン繊維を25℃で30分溶解させて絹ドープ
を調製した。このドープを凝固浴表面から上方5cmの
位置から注射針の細孔ノズルを通して凝固浴中に滴下
し、実施例1と同様にしてマイクロビーズを製造した。
但し、凝固浴として、エタノールと水の系(E/W
系)、ジメチルスルホキシド(DMSO)と水の系(D
/W系)の2種類を用いて行った。エタノールと水との
混合割合が20/80、40/60、60/40、80
/20、100/0となるようにしたE/W系の区と、
DMSOと水との混合割合が20/80、40/60、
60/40、80/20、100/0となるようにした
DMSO/W系の区との混合溶液各10mlを10ml
容のメスシリンダーに入れ、液面下2cmの位置より1
ml容量の注射筒に入れた絹フィブロインドープをゲー
ジ12の針(5cc輸血用血針細、KK大祐堂製)から
凝固浴中にゆっくり吐出させた。絹ドープが粒状となっ
て、凝固浴中を次第に沈降し、マイクロビーズが調製さ
れた。凝固浴中で12時間放置した後、メスシリシダー
の底からマイクロビーズを取り出した。これらのマイク
ロビーズの成形状態、透明性、硬度、サイズを測定し
た。得られた結果を表−2に示す。成形性は(+:良い
もの、−:悪いもの)として、透明性は(++:良好、
+:普通,−:不透明)として、硬度は(+:ピンセッ
トで触れて堅いもの,−:柔らかいもの)として評価
し、得られたビーズの直径はマイクロメーターで評価
し、その値をサイズ(mm)欄に表記した。
【0052】
【表2】
【0053】表−2から明らかなように、E/W系の凝
固浴ではエタノールと水との比率は60/40−100
/0であると良好なビーズが得られ、DMSO/W系の
凝固浴ではDMSOと水との比率は40/60−100
/0であると良好なビーズが得られる。
【0054】実施例4:各種高分子素材からなるドープ
の最適凝固浴の検証 DCA/MC(80/20)の混合有機溶媒に、絹タン
パク質の絹セリシン(Ser)、ポリビニル化合物であ
るポリビニルアルコール(PVA)もしくはポリビニル
ピロリドン(PVP)、またはポリアクリルアミド(P
AAm)の高分子素材がそれぞれ5wt%含まれるよう
に溶解した。凝固浴として、100%のエタノール、D
MSO、アセトンの各溶液10mlを10ml容のメス
シリンダーに秤量し、上記高分子溶液をガラス棒を用い
て凝固浴中に滴下させ、凝固浴中で高分子素材が凝固す
る状況を目視で観察した。得られた結果を表−3、4、
5に示す。
【0055】得られたマイクロビーズの凝固状況は次の
基準により評価した。+:良好(凝固浴中に滴下した高
分子素材が良好なビーズ形態となる。)±:やや良好、
−:不良(ビーズ形態とならず高分子溶液のまま糸を曳
く形態となる。)
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】PVAのマイクロビーズを製造するための
凝固浴はエタノールが妥当である。PAAmを凝固させ
るにはDMSOまたはアセトンが好ましい。
【0060】実施例5:多孔質状マイクロビーズの調製 DCAとMCとの混合比率が30と70v/v%とから
成る混合有機溶媒(DCA/MC(30/70)に絹フ
ィブロイン繊維を10wt%となるように溶解させた。
その後、めのう鉢とめのう棒を用いて微細に砕いた塩化
ナトリウムを混合有機溶媒の20wt%となるように分
散させた。かくして得られたタンパク質ドープを注射筒
に入れ、圧力を加えながら注射針の細孔ノズルより、1
00%エタノール中に順次滴下し、エタノール中に15
分放置して凝固させた。その後、ガラスフィルターでマ
イクロビーズを濾取し、続いて、マイクロビーズを水の
中に30分放置してマイクロビーズ内部から塩化ナトリ
ウムを溶出させ、多孔質状態のマイクロビーズを調製し
た。かくして得られたマイクロビーズの多孔度合はほぼ
10〜20%であった。この多孔度合は使用する中性塩
の量によって自由に調節することができる。
【0061】実施例6:凝固浴の検証 10wt%の絹フィブロインを含むDCA/MC(30
/70)ドープを20ml容量の注射筒に入れ、注射針
(TSK、18G)の細孔を通して凝固浴中に吐出させ
た。20ml容のガラス瓶に15mlの異なる5種類の
凝固浴(水、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノ
ール(MET)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、
エタノール(ET))を満たし、絹フィブロインドープ
を少量ずつ凝固浴に滴下し、凝固浴の底面に蓄積するビ
ーズ状試料の形態を観察した。得られた結果を表−6に
示す。
【0062】
【表6】
【0063】表−6から明らかなように、絹フィブロイ
ンマイクロビーズを調製するための凝固浴としては、D
MF、メタノール、DMSO、エタノールが適してい
る。
【0064】実施例7 市販品のキチン(和光純薬株式会社製)、キトサン(和
光純薬工業株式会社製)、プ ルラン(東京化成工業株
式会社製)、サッカロース(和光純薬工業株式会社
製)、もしくはデキストリン(半井化学薬品株式会社
製)、または以下のように調製した羊毛(CMK)をそ
れぞれ3−4mg秤量し、これを25℃の2mlのDC
A/MC(80/20)に入れ溶解状態を観察した。得
られた結果を表−7に示す。
【0065】羊毛(CMK)は、羊毛ケラチンを次のよ
うに化学修飾したカルボキシメチルケラテインである。
すなわち、メリノ種羊毛繊維(64’S)に含まれる色
素、脂肪分を、ベンゼン−エタノール(50/50v/
v%)の混合溶液を用いて、ソックスレー抽出器で2.
5時間処理することで除去した。かくして得られた羊毛
繊維を繊維長が約1cmとなるように細断し、その8.
18gを三つ口フラスコに投入し、これに450mlの
8M尿素水溶液を加えた。窒素ガスをパージさせ、アス
ピレーターで15分間三つ口フラスコ内を45mmHg
程度に減圧させ、急激に大気圧に戻す操作を3〜4回繰
り返した。窒素置換が完了した後、三つ口フラスコ内に
4.8mlのメルカプトエタノールを加えて、8M尿素
水溶液中で2〜3時間放置した。更に、約100mlの
5N−KOH溶液を微量づつ加えて三つ口フラスコの混
合溶液のpHを10.5に調節した。室温で3時間かけ
て羊毛繊維が完全に溶解するのを待った。繊維状の羊毛
繊維が溶解したものがケラテイン水溶液である。セルロ
ース透析膜を用いケラテイン水溶液を純水で2日間透析
した。こうして調製した0.01%のケラチン水溶液4
50mlに、室温で9.5gのヨード酢酸を加えてケラ
チンのS−カルボキシメチル化反応を1時間行った。5
N−KOH水溶液でケラチン溶液のpHを8.5に調整
し、S−カルボキシメチルケラテインの水溶液を得た。
セルロース製の透析膜を用いてこの水溶液を純水で2日
間透析し、純粋なS−カルボキシメチルケラテイン水溶
液を得た。このようにして調製されたS−カルボキシメ
チルケラテイン水溶液を東西通商株式会社製の真空凍結
乾燥機(WFD2700−ES−R型)を用いて乾燥さ
せ、粉末状のカルボキシメチルケラテインを調製し、こ
れを上記のようにDCA/MC混合溶媒に溶解せしめ
た。
【0066】
【表7】
【0067】表−7から明らかなように、DCA/MC
(80/20)は、キチン、キトサン、プルラン、サッ
カロース、デキストリン、羊毛(CMK)を良好に溶解
する有機混合溶媒である。
【0068】実施例8:リファンピシン含有家蚕絹フィ
ブロインマイクロビーズの調製方法と徐放体機能 10wt%(mg/ml)リファンピシンと11wt%
の絹フィブロインを含むDCA/MC(70/30)を
20ml容量の注射筒に入れ、注射針(18G)の細孔
ノズルを通して凝固浴中に吐出させた。50ml容のガ
ラス製メスシリンダー(長さ17cm、1.6cmφ)
に凝固溶媒として100%のエタノールを満たし、絹フ
ィブロインドープを注射針の細孔から注意深く滴下さ
せ、絹フィブロインマイクロビーズを調製した。得られ
た絹フィブロインマイクロビーズの形態を観察したとこ
ろ、ビーズサイズはDCA/MCの混合溶媒を含んだ状
態で1.4mmであり、溶媒を除去する前のマイクロビ
ーズの重量は2.2mgであった。このビーズが徐放体
として利用できるかどうか次のようにして検討した。1
0ml容のガラス瓶に7mlの水を入れ、この中にビー
ズを浸漬し、3分、1時間、1日、2日、4日の放置時
間毎にビーズを取り出し、このビーズの抗菌性を調べる
ため、トマトかいよう病細菌の増殖阻害に及ぼす影響を
調べた。得られた結果を表−8に示す。
【0069】
【表8】
【0070】表−8から明らかなように、水中での徐放
実験では、4日後もリファンピシンの抗菌活性は失われ
なかった。
【0071】また、上記試料マイクロビーズを0.2%
グルタルアルデヒド(GA)水溶液に室温で3分間入
れ、高分子素材の分子間に架橋を形成させ水不溶化させ
たマイクロビーズを得、この水不溶化マイクロビーズに
ついて、トマトかいよう病細菌の増殖阻害を評価した。
【0072】
【表9】
【0073】なお、絹フィブロインマイクロビーズを水
不溶化するには、グルタルアルデヒド水溶液で不溶化処
理する他に、メタノール溶液による処理も有効であっ
た。
【0074】実施例9:絹フィブロインおよび/または
キチンビーズ キチンおよび/または家蚕絹フィブロインの成分からな
るマイクロビーズを次のようにして調製した。キチンと
して和光純薬工業株式会社製の市販品を用い、家蚕絹糸
として絹フィブロイン繊維を用いて次の3種のドープ:
(l)5wt%絹フィブロインを含むDCA/MC(7
0/30)ドープ、(2〉2wt%のキチンおよび3w
t%の絹フィブロインを含むDCA/MC(70/3
0)ドープ、ならびに(3)5wt%のキチンを含むD
CA/MC(70/30)ドープを調製した。これら3
種類のDCA/MCドープのそれぞれに、テトラサイク
リン、またはリファンピシンをそれぞれ10mg/ml
づつ添加したものを2ml容量の注射筒に入れ、注射筒
を加圧しながら注射針(23G)の細孔ノズルを通して
エタノール凝固浴中に滴下し、マイクロビーズを調製し
た。
【0075】凝固浴用の力ラムは、直径11mmφ、長
さ50cmのガラス管を用い、底辺から50cmまで1
00%のエタノールを満たした。凝固浴カラムに上記3
種類のDCA/MCドープを別々に滴下し凝固浴の中で
球状のマイクロビーズを調製した。かくして得られたビ
ーズ試料の徐放機能を調べるため、50ml容のビーカ
ーに30mlの水を入れたものに各ビーズ試料をそれぞ
れ一定時間浸漬し、表−10に示す放置時間ごとの、ビ
ーズ中の抗生物質の徐放量の違いをトマトかいよう病細
菌の増殖抑制評価により調べた。得られた結果を阻止円
の大きさ(mm)で表−10に示す。表中、R−1〜R
−3はリファンピシン含有試料、またT−1〜T−3は
テトラサイクリン含有試料を示す。
【0076】
【表10】
【0077】表−10から明らかなように、水不溶性の
抗生物質であるリファンピシンを含む絹タンパク質、絹
タンパク質/キチン、キチンの各ビーズは放置時間が1
日になっても抗菌性機能の減少程度は軽微であるが、水
溶性のテトラサイクリンを含むビーズは数時間で抗菌性
機能が減少し易い。
【0078】実施例10 実施例9記載の方法に従って、キチン(和光純薬工業株
式会社製の市販品)またはキトサン(和光純薬株式会社
製の市販品)から、12wt%のキチン(またはキトサ
ン)を含むDCA/MC(80/20)ドープを調製
し、このドープを実施例9と同様に100%のエタノー
ルからなる凝固浴中に一滴づつ滴下することで、キチン
(またはキトサン)マイクロビーズを調製した。
【0079】実施例11 実施例7記載のようにして調製した粉末状のカルボキシ
メチルケラテインをビーズ素材として用いた。実施例9
記載の方法に従って、この粉末状のカルボキシメチルケ
ラテインから、9wt%のカルボキシメチルケラテイン
を含むDCA/MC(80/20)ドープを調製し、こ
のドープを実施例9と同様に100%のエタノールから
なる凝固浴中に一滴づつ滴下することで、カルボキシメ
チルケラテインマイクロビーズを調製した。
【0080】実施例12:キチンと絹タンパク質とのブ
レンドビーズ 5wt%のキチン、または5wt%の絹フィブロインを
それぞれ含むDCA/MC(70/30)ドープを調製
した。キチンと絹フィブロインとの比率が異なるビーズ
を製造するため、キチンドープと絹フィブロインドープ
との割合を次のように変えたものを調製した。それぞれ
のドープを5ml容量の注射筒に入れ、凝固浴表面から
上方3cmの位置から注射針(23G)の細孔ノズルよ
りエタノール凝固浴中に一滴づつ滴下し凝固させること
で、フィブロイン/キチンビーズを製造した。製造条件
を表−11に示す。調製したビーズはすべて真球状の形
の整ったマイクロビーズであった。
【0081】
【表11】
【0082】実施例13 6wt%のポリビニルアルコール(PVA)を含むDC
A/MC(70/30)有機混合溶媒、および9wt%
の家蚕絹フィブロイン(SF)を含むDCA/MC(7
0/30)有機混合溶媒をそれぞれ調製した。両溶液を
下記の表に示すような割合で混合させてマイクロビーズ
調製用のドープをそれぞれ1mL宛作り、このドープを
2ml容量の注射筒に入れ、25ゲージの注射針の細孔
ノズルを通してドープの上方3cmの位置から、直径1
cmφ、高さ50cmのガラスチューブに満たしたエタ
ノール凝固浴中に順次滴下することにより、形の整った
マイクロビーズを調製した。調製条件、調製組成を表−
12に示す。
【0083】
【表12】
【0084】表−12からPVA量が増えると凝集性が
減少することが分かる。
【0085】実施例14 9wt%の絹フィブロインを含むDCA/MC(70/
30)混合有機溶媒を調製した。別に3wt%のキトサ
ンを含むDCA/MC(70/30)混合有機溶媒を調
製した。両溶液を下記に示す割合で混合してマイクロビ
ーズ調製用のドープをそれぞれ1ml宛作った。このド
ープを2ml容量の注射筒に入れ、25ゲージの注射針
の細孔ノズルから、直径1cmφ、高さ50cmのガラ
スチューブに満たしたエタノール凝固浴中に順次滴下す
ることによりリファンピシン(R)、またはテトラサイ
クリン(T)を含有するマイクロビーズを調製した。ビ
ーズの調製条件、組成比率、抗生物質(テトラサイクリ
ンTCまたはリファンピシンRC)の含有率、および試
料の周辺に現れる阻止円の直径(AP)を表−13に示
す。
【0086】
【表13】
【0087】実施倒15 2mlのDCA/MC(70/30)混合有機溶媒に8
%となるように家蚕絹フィブロイン繊維を入れて室温で
3時間かけて溶解させた。2〜3分で繊維が溶け始めゲ
ル状になる。スタラーチップを入れて攪拌する。このよ
うにして調製した絹フィブロインドープを2mlのテル
モ注射筒に入れ、注射針(25G×5/8”、0.50
×16mm)を通してエタノールで満たした1cmφ×
55cmのカラム内に滴下した。エタノール中に1時間
放置した後、マイクロビーズを濾紙で濾別した。このビ
ーズを水に入れると白濁して結晶化した。水溶液より取
り出した直後のビーズサイズ(直径)、および取り出し
た後の時間経過によるビーズサイズの変化ならびにビー
ズの堅さを調べ、以下の表−14に示す。
【0088】
【表14】
【0089】表−14から明らかなように、凝固浴より
取り出した直後の直径0.85mmのビーズは、標準状
態(20℃、65%R.H.)で放置すると時間の経過に
つれて直径が次第に減少し、それに伴いビーズが堅くな
った。
【0090】実施例16 実施例3と同じ方法で調製した1.5mlの絹フィブロ
インドープに約10mgの植物の種子(品種名 Lobelia,
Watkins 社製, New Zealand)を入れ、種子がドープ中
で均一に混合するように3分間スターラーで攪拌した
後、2ml容の注射筒に入れ、5ml輸血針細(サイ
ズ:18.8、発売元:KK大祐堂)を用いてエタノー
ルからなる凝固浴に滴下し、植物の種子を含んだ絹フィ
ブロインビーズを調製した。光学顕微鏡で観察したとこ
ろ、絹フィブロインビーズに種子が確かに含有している
ことが確認された。
【0091】従って、本発明の絹フィブロインビーズ
は、組織培養によって養成した不定胚や不定芽を包み込
む包理剤(カプセル材)として利用できることが分か
る。従来、不定胚のカプセル材としてはアルギン酸カル
シウムが用いられていたが、これは乾燥に弱く、野外の
土壌に直接播種すると直ぐに乾燥してしまうという欠点
があった。しかし、本発明のビーズは水分との親和性が
高い絹タンパク質であり保水性に優れているため乾燥に
強かった。
【0092】
【発明の効果】本発明によれば、特定の混合有機溶媒を
所定の混合比率で用いるので、これに高分子素材を溶解
するに際し、所定の温度で、この素材が分子量の低下を
起こすこともなく溶解されて有用な高分子素材のドープ
が提供され得るという効果がある。また、このドープを
細孔ノズルを通して凝固浴中に滴下することにより粒径
の揃ったマイクロビーズが提供され、またこのドープ中
に特定の中性塩を添加したものを凝固浴中に滴下し、凝
固させた後、これを水中に入れ、中性塩だけを除去する
ことにより粒径の揃った多孔質状のマイクロビーズが提
供され得るという効果がある。さらに、本発明の製造方
法によれば、煩雑な調製作業や熟練を必要としないの
で、均一微細粒径のマイクロビーズを容易に製造するこ
とができる。
【0093】なお、本発明のタンパク質マイクロビーズ
に、例えば生理活性物質、抗生物質、酵素、医薬品、毒
素等の有効成分を包含・担持・封入せしめることによ
り、以下詳細に述べるような、各種産業分野で有効に利
用できる。
【0094】本発明のマイクロビーズは、内部に空隙の
ある中空ビーズとすることもできるので、内部に封入・
担持せしめた生体細胞、細菌、抗生物質、生理活性物質
等は、壁素材を通して外部に徐放させることができる。
【0095】本発明のタンパク質マイクロビーズは、医
薬品、生理活性物質、ホルモン、ワクチン等のマイクロ
カプセル基材としても優れており、農薬、肥料等をビー
ズ中に封入してカプセル化したものは土壌改質材として
利用できる。
【0096】本発明のタンパク質マイクロビーズは、例
えば、有効成分の分離手法として定着しているクロマト
グラフィー用の充填剤(例えば、アフィニティクロマト
グラフィー用担体)、細胞培養用担体および医薬補助材
として利用でき、医薬品、生理活性物質、ホルモンおよ
びワクチン等のマイクロカプセル化基材として利用で
き、また微量でも有効な飼料成分や食品素材を封入しカ
プセル化したタンパク質マイクロビーズは、家畜飼料や
養魚飼料として利用することもできる。また、農薬、も
しくは肥料成分を担持させたものは土壌改質材として利
用できる。さらに、細菌等の微生物を封入、固定化した
タンパク質マイクロビーズは、紫外線等のタンパク質変
成要因に対する微生物の保護作用があるため天敵微生物
保護材のような生物防除材として利用でき、また細菌等
の微生物や生理活性物質等を封入した場合、封入された
細菌等の微生物や生理活性物質の生物的および生理的な
活性を長く保つことが可能となり、封入された生理活性
物質、微生物の活性低下を防止する上で有効である。
【0097】生体細胞、細菌、抗生物質、生理活性物質
等を本発明のタンパク質ドープと混合することにより、
または調製後のタンパク質マイクロビーズをこれら生理
活性物質の溶液に浸漬することにより、これらの物質な
どをタンパク質マイクロビーズに含有させることができ
る。
【0098】本発明のマイクロビーズは粒径が揃ってい
るので、ファインケミカル分野等で特殊な利用が可能と
なる。また、本発明による生体高分子を成分とするマイ
クロビーズを感圧複写紙の分野で応用する場合には、塗
抹工程時の乾燥性を向上させることができ、また発色印
字性を大幅に改善することもできる。このように、本発
明のマイクロビーズは農業、工業、医学、食品等の広い
分野で有効に利用できる。
【0099】絹フィブロイン、絹セリシン、羊毛等の天
然生体高分子は、物理化学特性、吸着特性、生体適合性
および微生物による分解性が良好であるため、医薬・医
療用、香料用、化粧品用、接着剤・塗料および複写・記
録表示用の材料等として、幅広い産業分野で利用できる
生体高分子である。一方、粒径が均一な多孔質ビーズは
酵素等の固定化用担体として化学分野、医療分野、食品
分野および工業プロセス分野等幅広い各種産業分野で利
用されている。そこで、本発明のような生体高分子の均
一粒径のマイクロビーズ、多孔質状態のマイクロビーズ
が提供できれば、多様な方面で利用・活用することが期
待できる。
【0100】本発明によれば、担持または封入せしめた
医薬品、生理活性物質、抗生物質等の徐放速度、徐放量
さらには生分解性の程度を、高分子素材のドープ濃度、
凝固溶媒、凝固時間を制御することで簡単に変えること
ができる。この作用のため高分子素材のマイクロビーズ
は、体内の酵素による分解程度を制御することも可能で
ある。
【0101】本発明の高分子素材のマイクロビーズは、
生体適合性が良く、生体組織体内に入れても抗原とはな
り難い。これに生理作用を持つ医薬品を固定化させて、
それをヒト等の体内に埋め込んで使用しても問題は起り
難い。そのため、特に、抗ガン作用を持つ医薬品を封入
したタンパク質マイクロビーズは、特定患部の治療のた
めのミサイルキャリアーとして先端的な医療分野で利用
できる。また、タンパク質マイクロビーズは、所定の時
間経過後、体内の酵素により分解される得る。
【0102】本発明の均一微細粒径のタンパク質マイク
ロビーズおよび多孔質マイクロビーズは、薬物デリバリ
ーシステム用担体として、さらには化粧ファンデーショ
ン用素材を含めた広い意味での化粧品材料としても利用
できる。また、かかるビーズに酵素や生体細胞等を付
着、固定することにより、バイオリアクターとして、食
品工業分野その他の広い産業分野においても利用でき
る。また、ビーズの表面および/または内部に酵素若し
くは免疫抗体等を結合させることにより、免疫担体とし
ても利用できる。また、タンパク質マイクロビーズに酵
素を固定化させれば、酵素活性の安定性を高めるだけで
なく、有効面積の広い微粒子という特徴を生かして、さ
らに効果的な酵素機能を発揮させることが可能である。
【0103】本発明によれば、高分子素材のマイクロビ
ーズの壁素材の物質透過量を加減することで、医薬品、
生理活性物質、抗生物質等の徐放速度、徐放量、生分解
性の程度を簡単に制御できる。さらには、高分子素材の
マイクロビーズは生体内の酵素により次第に分解が進む
ので、生分解性素材としても利用できる。
【0104】また、本発明の絹フィブロイン等の高分子
素材のマイクロビーズは、水分との親和性が高い素材か
らなるため乾燥に強いので、組織培養によって養成した
不定胚や不定芽を包み込む包理剤(カプセル材)として
利用できる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年5月14日(1999.5.1
4)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
フロントページの続き (72)発明者 白田 昭 茨城県つくば市大わし1−2 農林水産省 蚕糸・昆虫農業技術研究所内 Fターム(参考) 4J002 AB051 AD001 AJ001 BE021 BG121 BJ001 EB027 EF036 GB00 GC00 GH00

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高分子素材を溶解する働きを有する第一
    溶媒と該高分子素材の分子の切断を防止する作用を有す
    る第二溶媒との混合有機溶媒に該高分子素材を溶解して
    なる高分子素材のドープ。
  2. 【請求項2】 前記第一溶媒が、高分子素材の分子間の
    水素結合を切断しつつ、溶解に伴う高分子素材の分子量
    低下を抑え、かつ高分子素材の高分子性の低下を防止す
    ることができるジクロロ酢酸、またはトリクロロ酢酸で
    あることを特徴とする請求項1記載の高分子素材のドー
    プ。
  3. 【請求項3】 前記第二溶媒が、前記第一溶媒と相溶性
    があり、溶解処理に伴う高分子素材の分子量低下を抑え
    つつ、該高分子素材の溶解性を向上させる働きを有する
    塩化メチレン、テトラクロロエチレン、クロロホルムか
    ら選ばれるものであることを特徴とする請求項1または
    2記載の高分子素材のドープ。
  4. 【請求項4】 前記第一溶媒と第二溶媒との混合比率
    が、50−95:50−5v/v%であることを特徴と
    する請求項1〜3のいずれかに記載の高分子素材のドー
    プ。
  5. 【請求項5】 前記混合有機溶媒により高分子素材を溶
    解する際の溶解温度が、5−50℃であることを特徴と
    する請求項1〜4のいずれかに記載の高分子素材のドー
    プ。
  6. 【請求項6】 前記高分子素材の濃度が5−20v/v
    %であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記
    載の高分子素材のドープ。
  7. 【請求項7】 前記高分子素材が絹フィブロイン、絹セ
    リシン、化学修飾した羊毛ケラチン、ポリビニルアルコ
    ール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、キ
    チン、キトサン、プルラン、サッカロース、デキストリ
    ン、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求
    項1〜6のいずれかに記載の高分子素材のドープ。
  8. 【請求項8】 前記請求項1〜7のいずれかに記載の高
    分子素材のドープから得られる高分子素材のマイクロビ
    ーズ。
  9. 【請求項9】 前記高分子素材のマイクロビーズが多孔
    質状であることを特徴とする請求項8記載の高分子素材
    のマイクロビーズ。
  10. 【請求項10】 生理活性物質、抗生物質、酵素、医薬
    品、または毒素の有効成分を含有することを特徴とする
    請求項8または9に記載の高分子素材のマイクロビー
    ズ。
  11. 【請求項11】 高分子素材を溶解する働きを有する第
    一溶媒と該高分子素材の分子の切断を防止する作用を有
    する第二溶媒との混合有機溶媒に高分子素材を溶解して
    高分子素材のドープを形成し、次いで該凝固浴中に配設
    した一定の口径を有する細孔ノズルから該高分子素材の
    ドープを凝固浴中に吐出し、または凝固浴表面から上方
    の一定の距離を隔てた位置に配設した該細孔ノズルから
    該高分子素材のドープを凝固浴中に滴下して、該高分子
    素材を凝固させ、高分子素材からなるマイクロビーズを
    調製することを特徴とする高分子素材のマイクロビーズ
    の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記凝固浴がメタノール、エタノー
    ル、N,N‐ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキ
    シド、アセトン、水から選ばれる少なくとも一種の溶媒
    からなることを特徴とする請求項11記載の高分子素材
    のマイクロビーズの製造方法。
  13. 【請求項13】 前記高分子素材のドープとしてこれに
    中性塩を添加したものを使用すること、また前記凝固さ
    せて得られた高分子素材のビーズを水中に入れ、該中性
    塩のみを溶出させて、多孔質状の高分子素材からなるマ
    イクロビーズを得ることを特徴とする請求項11または
    12記載の高分子素材のマイクロビーズの製造方法。
  14. 【請求項14】 前記中性塩が前記混合有機溶媒に対し
    て溶解度が低く、水に対して高い溶解度を示すものであ
    ることを特徴とする請求項13記載の高分子素材のマイ
    クロビーズの製造方法。
  15. 【請求項15】 前記中性塩が塩化ナトリウム、塩化カ
    リウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化ナトリ
    ウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウ
    ム、塩化カルシウム、水酸化カリウム、硫酸アンモニウ
    ム、炭酸水素ナトリウムから選ばれる塩であることを特
    徴とする請求項13または14に記載の高分子素材のマ
    イクロビーズの製造方法。
  16. 【請求項16】 前記中性塩をドープ中に10〜20w
    t%の量で添加し、凝固浴中で高分子素材を凝固させて
    マイクロビーズを調製した後、このマイクロビーズを水
    中に入れて中性塩のみを溶出することを特徴とする請求
    項13〜15のいずれかに記載の高分子素材のマイクロ
    ビーズの製造方法。
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