JP2000030238A

JP2000030238A - 磁気記録媒体及び磁性粉末、並びに、転写磁界が記録された磁気記録媒体

Info

Publication number: JP2000030238A
Application number: JP10192977A
Authority: JP
Inventors: Yukihiko Ichikawa; 行彦市川
Original assignee: Sony Corp
Current assignee: Sony Corp
Priority date: 1998-07-08
Filing date: 1998-07-08
Publication date: 2000-01-28

Abstract

(57)【要約】【課題】磁気特性や電磁変換特性に優れ、かつ、これ
らの特性が経時的に変化しにくい磁気記録媒体を提供す
ること。【解決手段】磁性粉末を含有した磁性層１１を有する
磁気記録媒体１０において、前記磁性粉末が、鉄、コバ
ルト（鉄に対して１０〜３５ａｔｍ％）、アルミニウム
（鉄に対して３〜１０ａｔｍ％）、及び、イットリウム
（鉄に対して１．５〜５．５ａｔｍ％）を含有している
ことを特徴とする、磁気記録媒体。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、磁性粉末を含有し
た磁性層を有する磁気記録媒体、及び、この磁気記録媒
体に使用する磁性粉末、並びに、転写磁界が記録された
磁気記録媒体（特に磁界転写用のマザーテープ）に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、ビデオソフトテープの大量生産
には、リアルタイムでの記録では追随できず、転写方式
による高速複写が行われている。こうした転写方式とし
ては、ＣｒＯ₂テープを用いる熱磁気転写方式と、Ｃｏ
含有酸化鉄テープを用いる磁界転写方式との２種類が開
発されている。

【０００３】後者の磁界転写方式においては、高速磁気
転写装置（ＨＳＰ）が使用されており、この高速磁気転
写は、磁性粉末としてＣｏ含有酸化鉄を有するスレーブ
テープと、磁性粉末として高保持力メタルを有するマザ
ーミラーテープとの組み合わせで行われる。

【０００４】この磁界転写方式を図１７を参照に説明す
る。

【０００５】磁界転写を行うに際しては、ミラーマザー
テープ１に記録した鏡面対称のトラックパターンをコピ
ー用のスレーブテープ２の磁性面に密着させ、これらを
ドライブテープ３と共に転写ドラム４に巻回し、この転
写ドラム４に対向配置された転写ヘッド５から適量のバ
イアス磁界を印加することによって、ミラーマザーテー
プ１の信号をスレーブテープ２の磁性面に転写してい
る。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】一般に、この磁界転写
方式に使用されるマザーテープにおいては、磁気ヘッド
（転写ヘッド）５によるバイアス磁界によって減磁され
にくいように、スレーブテープの約３倍若しくはそれ以
上の保磁力を有する磁性材料が使用されている。また、
磁気転写方式におけるスレーブテープは、高速磁気転写
方式専用として開発されたテープではなく、一般のリア
ルタイム用カセットテープに組み込まれる前のハブ巻き
パンケーキがそのまま使用されている。

【０００７】上述のミラーマザーテープの保磁力はより
高い方がスレーブテープへの磁気転写に有利であるが、
従来の針状メタル磁性粉末を使用したマザーテープは次
のような組成、物性を有しているため、その保磁力に限
界があった。また、高速磁気転写方式において繰り返し高速磁気転写
をすることにより、ミラーマザーテープが減磁し、経時
的に電磁変換特性等が劣化するといった問題が生じるこ
ともあった。

【０００８】本発明は、このような実情に鑑みてなされ
たものであり、その目的は、磁気特性や電磁変換特性に
優れ、かつ、これらの特性が経時的に変化しにくい磁気
記録媒体、及び、この磁気記録媒体に使用する磁性粉
末、並びに、転写磁界が記録された磁気記録媒体（特に
磁界転写用のマザーテープ）を提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、磁性粉
末を含有した磁性層を有する磁気記録媒体において、前
記磁性粉末が、鉄、コバルト、アルミニウム、及び、希
土類を含有していることを特徴とする、磁気記録媒体
（以下、本発明の磁気記録媒体と称する。）に係るもの
である。

【００１０】本発明の磁気記録媒体によれば、前記磁性
粉末として、鉄（Ｆｅ）、コバルト（Ｃｏ）を主成分と
し、さらに、アルミニウム（Ａｌ）及び希土類（特にイ
ットリウム）を含有しているので、磁気特性や電磁変換
特性に優れ、かつ、これらの特性が経時的に変化しにく
い（即ち減磁特性に優れている）。なお、アルミニウム
及び希土類は双方共、メタルに還元する時の焼結防止材
であるが、希土類を被着（Ａｌとの二層構造）すること
により、還元温度を更に高くでき（形状を崩さず）、保
磁力向上、飽和磁化量向上、角形（σｒ／σｓ）向上に
つながる。そして、これらの磁性粉特性の向上が結果的
に電磁変換特性の向上になる。

【００１１】また、本発明は、本発明の磁気記録媒体に
おいて使用する磁性粉末として、鉄、コバルト、アルミ
ニウム、及び、希土類を含有する、磁性粉末（以下、本
発明の磁性粉末と称する。）を提供するものである。

【００１２】さらに、本発明は、本発明の磁気記録媒体
に準じた磁気記録媒体であって、所定の情報が記録され
た磁気記録媒体として、磁性粉末を含有した磁性層を有
し、転写磁界が記録された磁気記録媒体であって、前記
磁性粉末が、鉄、コバルト、アルミニウム、及び、希土
類を含有している、転写磁界が記録された磁気記録媒体
（以下、本発明の転写磁界が記録された磁気記録媒体と
称する。）を提供するものである。

【００１３】

【発明の実施の形態】まず、本発明の磁気記録媒体及び
本発明の転写磁界が記録された磁気記録媒体について説
明する。

【００１４】本発明の磁気記録媒体及び本発明の転写磁
界が記録された磁気記録媒体において、前記希土類はイ
ットリウムであることが望ましい。但し、この希土類元
素はイットリウム（Ｙ）に限定されるものではなく、例
えば、Ｌａ（ランタン）、Ｃｅ（セリウム）、Ｐｒ（プ
ラセオジム）、Ｎｄ（ニオブ）、Ｓｍ（サマリウム）な
どの希土類元素を使用することができる。

【００１５】また、前記磁性粉末の構成元素である前記
コバルトは、前記鉄に対し原子数の比で１０％以上、３
５％以下、同じく前記アルミニウムは、前記鉄に対し原
子数の比で３％以上、１０％以下、同じく前記イットリ
ウムは、前記鉄に対し原子数の比で１．５％以上、５．
５％以下、それぞれ含有されていることが望ましい。

【００１６】このように、前記磁気記録媒体における磁
性層に、磁性粉末として、鉄、コバルト、アルミニウ
ム、イットリウムからなる針状磁性合金微粒子を含有
し、かつ、各構成元素の割合が前述の如き所定の含有量
範囲内にあると、各元素含有量のバランスに優れ、磁化
量が大きくなり、特に磁界転写用の磁気記録媒体として
用いるのに十分な磁気特性、電磁変換特性を発揮するよ
うになる。

【００１７】また、前記磁性粉末の比表面積は４０ｍ²
／ｇ以上、６５ｍ²／ｇ以下であることが望ましく、長
軸長は０．０５μｍ以上、０．１５μｍ以下であること
が望ましい。このように比較的小さなサイズの磁性粉末
を使用することによって磁気記録媒体の磁性層の表面性
が良好になり、特に磁界転写用の磁気記録媒体として使
用した時の被転写媒体に対する転写性が良好になる。

【００１８】また、前記磁性粉末の保磁力は１６７ｋＡ
／ｍ以上であることが望ましく、飽和磁化量は１５０Ａ
ｍ²／ｋｇ以上であることが望ましい。磁性粉末の構成
元素及びその含有割合、さらに、磁性粉末サイズを前述
の如く設定することによって、保磁力Ｈｃが１６７ｋＡ
／ｍ以上、飽和磁化量σｓが１５０Ａｍ²／ｋｇ以上の
各磁気特性に優れた磁性粉末となる。

【００１９】また、前記磁気記録媒体としての保磁力は
１６７ｋＡ／ｍ以上であることが望ましい。この値は、
一般的なＨｉ８テープやＶＨＳテープ等における保磁力
に比べて、約３倍若しくはそれ以上の保磁力であって、
特に、このような磁気記録媒体は磁界転写用の磁気記録
媒体に好適である。

【００２０】また、前記磁気記録媒体におけるスイッチ
ングフィールドディストリビューション（Switching Fi
eld Distribution：ＳＦＤ）が０．４５０以下であるこ
とが望ましい。このスイッチングフィールドディストリ
ビューションは、磁化曲線の角型性を示すパラメータの
１種であり、（ｄＭ／ｄＨ）−Ｈ曲線（磁化Ｍ、磁界
Ｈ）の５０％パルス幅をΔＨとすると、ＳＦＤ＝ΔＨ／
Ｈｃ（Ｈｃは保磁力）で表される。

【００２１】この値が小さいことは、磁性粉末（或いは
磁気記録媒体）の保磁力分布がシャープであることを意
味し、これによって、特に、磁界転写用の磁気記録媒体
として使用した際の繰り返し高速磁気転写における減磁
特性に優れる（即ち、繰り返し減磁が少ない）ことにな
る。なお、スイッチングフィールドディストリビューシ
ョンの値は、０．３５０〜０．４００がさらに望まし
い。

【００２２】さらに、前記磁気記録媒体は、ビデオソフ
トテープ等を大量生産するための磁界転写方式に使用す
る磁界転写用の磁気記録媒体として構成されていること
が望ましく、特に、上述の図１７に示したように、磁界
転写用のマザーテープとして用いることが望ましい。

【００２３】次に、本発明の磁性粉末を説明する。

【００２４】本発明の磁性粉末においては、前記希土類
としてイットリウムを使用することが望ましい。但し、
その他、前述した如き他の希土類元素を使用することも
可能である。

【００２５】また、この磁性粉末において、前記コバル
トが、前記磁性粉末の全構成元素に対し原子数の比で１
０％以上、３５％以下含有され、前記アルミニウムが、
前記鉄に対し原子数の比で３％以上、１０％以下含有さ
れ、前記イットリウムが、前記鉄に対し原子数の比で
１．５％以上、５．５％以下含有されていることが、上
述の理由と同様の理由で望ましい。

【００２６】また、前記磁性粉末の比表面積が４０ｍ²
／ｇ以上、６５ｍ²／ｇ以下であり、長軸長が０．０５
μｍ以上、０．１５μｍ以下であることが望ましく、さ
らに、前記磁性粉末の保磁力は１６７ｋＡ／ｍ以上、飽
和磁化量は１５０Ａｍ²／ｋｇ以上であることが望まし
い。

【００２７】次に、本発明をさらに詳細に説明する。

【００２８】上述したように、本発明の磁気記録媒体
は、特に磁界転写用のマザーテープとして使用すること
が望ましい。このように磁界転写用のマザーテープとし
て十分な特性を付与するためには、前記磁気記録媒体の
磁性層における磁性粉末は、鉄（Ｆｅ）を主成分とする
強磁性粉末であって、少なくともコバルト（Ｃｏ）を含
み、このＣｏの含有率が１０〜３５ａｔｍ％（即ち、原
子数の比で１０％以上、３５％以下：以下、同様）、イ
ットリウム（Ｙ）がＦｅに対して１．５〜５．５ａｔｍ
％、アルミニウム（Ａｌ）がＦｅに対して３〜１０ａｔ
ｍ％がそれぞれ添加されていることが望ましい。

【００２９】また、前記磁性粉末の比表面積が４０〜６
５ｍ²／ｇ、保磁力Ｈｃが１６７ｋＡ／ｍ以上、飽和磁
化量σｓが１５０Ａｍ²／ｋｇ以上、長軸長が０．０５
〜０．１５μｍであることが望ましい。

【００３０】さらに、この磁気記録媒体は、プラスチッ
クフィルム等の非磁性支持体上に、少なくとも前記磁性
粉末と結合剤とからなる磁性層が形成されてなる磁気記
録媒体であり、磁気記録媒体としての保磁力が１６７ｋ
Ａ／ｍ以上であることが望ましい。

【００３１】前記磁性粉末の各特性が、上述した範囲外
であると、これを用いた磁気記録媒体が磁界転写用のマ
ザーテープとして十分な特性を持たないものになること
がある。特に、Ｃｏ含有量が上記範囲よりも少ないと、
保磁力Ｈｃが小さくなり、磁界転写を十分に行えなくな
ることがある。

【００３２】なお、前記磁性粉末において、前記Ｃｏ含
有量は、鉄に対して２０〜３０ａｔｍ％の範囲内である
ことがさらに望ましく、前記Ａｌ含有量は、鉄に対し
て、５．５〜１０ａｔｍ％、前記Ｙ含有量は、鉄に対し
て、１．５〜５．５ａｔｍ％、前記比表面積は、４０〜
４５ｍ²／ｇ、前記長軸長は０．０６５〜０．１１μ
ｍ、前記保磁力は、１６７〜１８１ｋＡ／ｍ、前記飽和
磁化量は、１５６〜１５８Ａｍ²／ｋｇが、それぞれさ
らに望ましい。また、前記磁性粉末の保磁力Ｈｃは、実
用上の観点から、２２０ｋＡ／ｍ以下であることがさら
に望ましく、飽和磁化量は２２０Ａｍ²／ｋｇ以下であ
ることがさらに望ましい。

【００３３】また、本発明の磁気記録媒体において、前
記非磁性支持体は、例えば、ポリエステル類、ポリオレ
フィン類、セルロース類、ビニル系樹脂、ポリイミド、
ポリカーボネート類などの材料からなるものであってよ
い。

【００３４】さらに、前記磁性層を形成する前記結合剤
としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコー
ル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル
酸エステル、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリル
等の重合体類や、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の
公知の結合剤が上げられる。また、前記磁性層を形成す
る前記結合剤と前記磁性粉末との配合量は通常量であっ
てよい。

【００３５】また、本発明の磁気記録媒体は、図１に示
すように、非磁性支持体１２の表面に、前記磁性粉末及
び前記結合剤からなる磁性塗料を塗布し、この磁性塗料
によって磁性層１１が形成された塗布型の磁気記録媒体
１０であることが望ましい。なお、本発明の磁気記録媒
体においては、磁性層を形成する磁性塗料中に、添加剤
として、公知の分散剤、研磨剤、帯電防止剤、防錆剤な
どを添加してもよく、それらの添加剤の添加量は通常こ
の種の磁気記録媒体において使用される添加量に準じて
設定すればよい。

【００３６】また、前記非磁性支持体に関して、耐久性
や走行性の向上を目的として、前記磁性層が設けられて
いる側とは反対側にバックコート層を設けたり、磁性層
の接着性の向上を目的として、前記磁性層と前記非磁性
支持体との間に下引き層を設けてもよい。これらのバッ
クコート層や下引き層は通常の組成、方法に準じて形成
できる。

【００３７】さらに、磁気記録媒体の形状は、テープ状
のものに限定されるものではなく、ディスク状、フィル
ム状、シート状、カード状など、磁気記録媒体において
通常用いられている形状がいずれも採用可能である。

【００３８】このように、本発明の磁気記録媒体は、上
述した如き特性の磁性粉末を使用することによって、特
に、スレーブテープへの磁界転写用、或いは、繰り返し
高速磁界転写用のマザーテープとして十分な特性を発揮
する。

【００３９】

【実施例】以下、本発明を具体的な実施例について説明
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。

【００４０】＜ミラーマザーテープの作製＞例１下記表１に記載の強磁性粉末Ａを用い、下記塗料組成
（配合割合）にて、図１７に示す如き磁界転写に用いる
ミラーマザーテープを作製した。

【００４１】まず始めに、強磁性粉末Ａと、結合剤（バ
インダー）と、全量の１／３の溶剤とをニーダーに入れ
て混練した。その後、残りの材料（研磨剤、添加剤、残
りの溶剤等）と、混練したペーストとを加えて溶解し、
次いで、サンドミルにて分散させて、磁性塗料を得た。

【００４２】出来上がった磁性塗料には、フィルターを
通した後、硬化剤（コロネートＬ−５０：日本ポリウレ
タン社製）を１重量部投入し、２０μｍ厚のポリエチレ
ンテレフタレートからなる非磁性支持体上に５μｍ厚で
塗布した。この磁性塗料を配向後、乾燥させてからカレ
ンダー処理を行い、さらに硬化処理を施して、非磁性支
持体上に磁性層を形成した。

【００４３】その後、非磁性支持体の磁性層形成側とは
反対側にバックコート層を１μｍ厚に形成し、乾燥処理
を施した後、１／２インチ幅にスリットして、図１に示
す如き構成のミラーマザーテープを作製した。

【００４４】塗料組成：磁性粉末１００重量部結合剤２０重量部研磨剤（Ａｌ₂Ｏ₃）３重量部添加剤（カーボン）２重量部溶剤メチルエチルケトン１００重量部トルエン１００重量部シクロヘキサノン５０重量部

【００４５】

【００４６】なお、表１において、「保磁力Ｈｃ」及び
「飽和磁化量σｓ」は、試料振動型磁力計（東英工業社
製ＶＳＭ、印加磁界１５ｋＯｅ、スイープ速度１０ｍｉ
ｎ／１０ｋＯｅ）で測定した。また、「比表面積」は、
micromeritics 社製 RAPID SURFACE ARER ANALYZERにて
測定した。

【００４７】また、「平均長軸長」は、電子顕微鏡写真
によってその平均粒径を求めたものである。さらに、
「Ｃｏ含有量」は、全構成元素に対する原子数の比（ａ
ｔｍ％）で表し、「Ｙ含有量」及び「Ａｌ含有量」は、
それぞれＦｅに対する原子数の比（ａｔｍ％）で表し
た。なお、これらの原子数の比は蛍光Ｘ線分析装置を用
いて測定した。

【００４８】例２表１に記載した強磁性粉末Ｂを用いた以外は、塗料組
成、塗料の作製方法、塗布方法など、例１と同様にし
て、ミラーマザーテープを作製した。

【００４９】例３表１に記載した強磁性粉末Ｃを用いた以外は、塗料組
成、塗料の作製方法、塗布方法など、例１と同様にし
て、ミラーマザーテープを作製した。

【００５０】例４表１に記載した強磁性粉末Ｄを用いた以外は、塗料組
成、塗料の作製方法、塗布方法など、例１と同様にし
て、ミラーマザーテープを作製した。

【００５１】例５表１に記載した強磁性粉末Ｅを用いた以外は、塗料組
成、塗料の作製方法、塗布方法など、例１と同様にし
て、ミラーマザーテープを作製した。

【００５２】例６〜例１９下記表２に記載した磁性粉末をそれぞれ使用した以外
は、塗料組成、塗料の作製方法、塗布方法などは例１と
同様にしてミラーマザーテープを作製した。なお、下記
表２において、「保磁力Ｈｃ」、「飽和磁化量σｓ」、
「比表面積」、「平均長軸長」、「Ｃｏ含有量」、「Ｙ
含有量」及び「Ａｌ含有量」は、例１と同様に測定し
た。

【００５３】

【００５４】

【００５５】＜各サンプルテープの評価結果＞まず、例
１〜１９のマザーテープ（サンプルテープ）について、
その磁気特性、電磁変換特性を下記表３に示す。但し、
表中、「ＳＦＤ」は、スイッチングフィールドディスト
リビューションの値を示す。

【００５６】磁気特性は、試料振動型磁力計（東英工業
社製ＶＳＭ、印加磁界１５ｋＯｅ、スイープ速度３ｍｉ
ｎ／１０ｋＯｅ）で測定した。また、電磁変換特性は、
各サンプルテープに信号を記録し、それを再生すること
によって評価した。

【００５７】この時、ビデオテープレコーダーとして、
ソニー社製ＭＭＶ−５００１（ＶＨＳ−ＰＡＬ）を用
い、サンプルテープの走行速度を２３．４ｍｍ／秒と
し、サンプルテープと磁気ヘッドどの相対速度を４．８
５ｍ／秒とした。さらに、信号の出力を４．５ＭＨｚ
（波長１．０８μｍ）、Ｓ／Ｎを白５０％とした。な
お、前記ビデオテープレコーダーは、記録再生兼用のア
モルファスヘッドを有するものである。

【００５８】また、図２〜図１５に、Ｃｏ含有量、Ａｌ
含有量、Ｙ含有量、磁性粉末の平均長軸長、磁性粉末の
比表面積、磁性粉末の保磁力Ｈｃ、磁性粉末の飽和磁化
量σｓのそれぞれのパラメータに関する電磁変換特性
（ＲＦ出力及びＳ／Ｎ）、磁気特性（保磁力及び磁束密
度）の変化をグラフ化した。

【００５９】

【００６０】

【００６１】また、減磁特性（電磁変換特性劣化）を下
記表４に示す。また、その測定結果を図１６に示す。

【００６２】測定方法は、前述した磁気特性及び電磁変
換特性の評価方法と同様であって、各例のサンプルテー
プに信号を記録し、ＨＳＰ（高速磁気転写装置：ＨＳＰ
５０００ＡＲ）で繰り返し磁気転写を行い、これを所定
の回数（１回目：1 pass time 、１０００回目：1000 p
ass time）で再生して、その時の減磁特性（電磁変換特
性の劣化）を測定した。但し、下記の減磁特性は、各サ
ンプルテープをＨＳＰで繰り返し磁気転写する前の電磁
変換特性（ＲＦ出力）を０ｄＢとしたときの相対比較値
によって示した。

【００６３】

【００６４】＜特性評価＞表３〜４、及び、図２〜図１
５から分かるように、少なくともＣｏ（コバルト）、Ｙ
（イットリウム）、及び、Ａｌ（アルミニウム）を含ん
だサンプルテープはいずれの特性にも十分に優れてお
り、さらに、これらの各元素がＣｏ含有率：１０〜３５ａｔｍ％、Ｙ含有率（Ｆｅに対する含有率）：１．５〜５．５ａｔ
ｍ％、Ａｌ含有率（Ｆｅに対する含有率）：３〜１０ａｔｍ％の割合でそれぞれ添加され、さらに、比表面積：４０〜６５ｍ²／ｇ保磁力：１６７ｋＡ／ｍ以上飽和磁化量：１５０Ａｍ²／ｋｇ以上長軸長：０．０５〜０．１５μｍである強磁性粉末を使用したサンプルテープは、いずれ
も電磁変換特性、磁気特性、減磁特性が更に良好であ
る。

【００６５】また、図２〜図１５の各グラフから、Ｃｏ含有率（Ｆｅに対する含有率）：２０〜３０ａｔｍ
％、Ｙ含有率（Ｆｅに対する含有率）：２．０〜５．０ａｔ
ｍ％、Ａｌ含有率（Ｆｅに対する含有率）：５．５〜１０ａｔ
ｍ％比表面積：４０〜４５ｍ²／ｇ保磁力：１６７〜１８１ｋＡ／ｍ飽和磁化量：１５６〜１５８Ａｍ²／ｋｇ長軸長：０．０６５〜０．１１μｍが、それぞれさらに望ましいことが分かる。

【００６６】まず、電磁変換特性及び磁気特性につい
て、例１〜３のサンプルテープにおいては、磁性粉末の
粒子が小さいことから、磁性層の表面性が良好になり、
これらを磁界転写用のマザーテープとして使用した場合
の転写性が向上したことによると思われる。また、磁性
粉末中にＣｏを所定量含有しているので磁化量が大きく
なり、保磁力や飽和磁化量が磁界転写用のマザーテープ
として十分であると思われる。

【００６７】一方、例４のサンプルテープは、磁性粉末
の長軸長がやや大きく、粒子が大きいために、例１〜３
のサンプルテープに比べて磁性層の表面性がやや劣り、
保磁力、飽和磁化量も低いことから、電磁変換特性も同
様な結果であり、これを磁界転写用のマザーテープとし
て使用した場合、磁界転写された被転写テープにおける
電磁変換特性は例１〜３よりはやや劣化している。

【００６８】また、例４のサンプルテープにおいては、
磁性粉末の大きさは、例２〜３よりも若干大きいが、例
５に比べれば、その長軸長は１／２程度であり、電磁変
換特性のＳ／Ｎは良好であるが、磁性粉末の保磁力がや
や低いためにＲＦ出力が劣っている。但し、実用的には
ほとんど差し支えない。

【００６９】次に、減磁特性について、図１６に示すよ
うに、ＳＦＤが０．４５以下のサンプルテープは良好で
あるが、例５の電磁変換特性劣化率が大きい。これは、
減磁特性が磁気記録媒体におけるＳＦＤ（Switching Fi
eld Distribution）の値に相関を有することに起因する
ものと考えられる。また、図１６から、ＳＦＤは、０．
３５０〜０．４００がさらに望ましいことが分かる。

【００７０】即ち、表３及び表４に示すように、例１〜
４のサンプルテープのＳＦＤの値は小さく、サンプルテ
ープをＨＳＰで繰り返し磁気転写した場合の減磁の割合
が小さいが、例５のＳＦＤの値は大きいために減磁の割
合が大きくなっている。これは、磁性粉末（或いは磁気
記録媒体）の保磁力分布がシャープなものほど、減磁の
割合が小さいことを示唆するものである。

【００７１】以上、明らかなように、本実施例による磁
気記録媒体においては、磁性粉末として、少なくともＣ
ｏを含み、このＣｏの含有率が１０〜３５ａｔｍ％、Ｙ
の含有率（Ｆｅに対する含有率）が１．５〜５．５ａｔ
ｍ％、Ａｌの含有率（Ｆｅに対する含有率）が３〜１０
ａｔｍ％であって、さらに、比表面積が４０〜６５ｍ²
／ｇ、保磁力が１６７ｋＡ／ｍ以上、飽和磁化量が１５
０Ａｍ²／ｋｇ以上、長軸長が０．０５〜０．１５μｍ
の強磁性粉末を使用し、磁気記録媒体としての保磁力も
１６７ｋＡ／ｍ以上であることから、磁性粉末の粒子が
小さく、磁性層の表面性が向上し、特に、このような磁
気記録媒体を磁界転写用のマザーテープとして使用した
場合の転写性が良好になる。

【００７２】また、磁性粉末中にＣｏを多く含んでいる
ことから、磁化量が大きくなり、保磁力や飽和磁化量が
磁界転写用のマザーテープとして用いるのに好適な特性
を発揮する。

【００７３】さらに、本実施例による磁気記録媒体にお
いては、磁性粉末（或いは磁気記録媒体）の保磁力分布
がシャープである（即ちＳＦＤが０．４５０以下であ
る）ために、ＨＳＰにおいて繰り返し高速磁気転写を行
うことによるミラーマザーテープの減磁（電磁変換特性
劣化）が極めて小さい。

【００７４】

【発明の効果】本発明の磁気記録媒体は、磁性粉末を含
有した磁性層を有する磁気記録媒体において、前記磁性
粉末が、鉄、コバルト、アルミニウム、及び、希土類を
含有しているので、磁気特性や電磁変換特性に優れ、か
つ、これらの特性が経時的に変化しにくく、減磁特性に
優れた磁気記録媒体である。

【００７５】本発明の磁性粉末は、鉄、コバルト、アル
ミニウム、及び、希土類を含有する磁性粉末であり、磁
気特性や電磁変換特性に優れ、かつ、これらの特性が経
時的に変化しにくく、減磁特性に優れた磁性粉末であ
り、本発明の磁気記録媒体に用いることができる。

【００７６】本発明の転写磁界が記録された磁気記録媒
体は、磁性粉末を含有した磁性層を有し、転写磁界が記
録された磁気記録媒体であって、前記磁性粉末が、鉄、
コバルト、アルミニウム、及び、希土類を含有している
ので、磁気特性や電磁変換特性に優れ、かつ、これらの
特性が経時的に変化しにくく、減磁特性に優れており、
特に、磁界転写用の磁気記録媒体として有用である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の磁気記録媒体の概略断面図である。

【図２】本発明の実施例における磁性粉末のＣｏ含有量
による電磁変換特性の変化を示すグラフである。

【図３】同、磁性粉末のＣｏ含有量による磁気特性の変
化を示すグラフである。

【図４】同、磁性粉末のＡｌ含有量による電磁変換特性
の変化を示すグラフである。

【図５】同、磁性粉末のＡｌ含有量による磁気特性の変
化を示すグラフである。

【図６】同、磁性粉末のＹ含有量による電磁変換特性の
変化を示すグラフである。

【図７】同、磁性粉末のＹ含有量による磁気特性の変化
を示すグラフである。

【図８】同、磁性粉末の長軸長による電磁変換特性の変
化を示すグラフである。

【図９】同、磁性粉末の長軸長による磁気特性の変化を
示すグラフである。

【図１０】同、磁性粉末の比表面積による電磁変換特性
の変化を示すグラフである。

【図１１】同、磁性粉末の比表面積による磁気特性の変
化を示すグラフである。

【図１２】同、磁性粉末の保磁力Ｈｃによる電磁変換特
性の変化を示すグラフである。

【図１３】同、磁性粉末の保磁力Ｈｃによる磁気特性の
変化を示すグラフである。

【図１４】同、磁性粉末の飽和磁化量σｓによる電磁変
換特性の変化を示すグラフである。

【図１５】同、磁性粉末の飽和磁化量σｓによる磁気特
性の変化を示すグラフである。

【図１６】同、磁気記録媒体のＳＦＤによる減磁特性の
変化を示すグラフである。

【図１７】磁界転写装置の概略模式図である。

【符号の説明】

１…ミラーマザーテープ、２…スレーブテープ、３…ド
ライブテープ、４…転写ドラム、５…転写ヘッド、１０
…磁気記録媒体、１１…磁性層、１２…非磁性支持体、
１３…バックコート層

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】磁性粉末を含有した磁性層を有する磁気
記録媒体において、前記磁性粉末が、鉄、コバルト、ア
ルミニウム、及び、希土類を含有していることを特徴と
する、磁気記録媒体。
【請求項２】前記希土類がイットリウムである、請求
項１に記載した磁気記録媒体。
【請求項３】前記コバルトが、前記鉄に対し原子数の
比で１０％以上、３５％以下含有され、前記アルミニウ
ムが、前記鉄に対し原子数の比で３％以上、１０％以下
含有され、前記イットリウムが、前記鉄に対し原子数の
比で１．５％以上、５．５％以下含有されている、請求
項２に記載した磁気記録媒体。
【請求項４】前記磁性粉末の比表面積が４０ｍ²／ｇ
以上、６５ｍ²／ｇ以下であり、長軸長が０．０５μｍ
以上、０．１５μｍ以下である、請求項１に記載した磁
気記録媒体。
【請求項５】前記磁性粉末の保磁力が１６７ｋＡ／ｍ
以上であり、飽和磁化量が１５０Ａｍ²／ｋｇ以上であ
る、請求項１に記載した磁気記録媒体。
【請求項６】前記磁気記録媒体としての保磁力が１６
７ｋＡ／ｍ以上である、請求項１に記載した磁気記録媒
体。
【請求項７】前記磁気記録媒体におけるスイッチング
フィールドディストリビューションが０．４５０以下で
ある、請求項１に記載した磁気記録媒体。
【請求項８】前記磁気記録媒体が磁界転写用である、
請求項１に記載した磁気記録媒体。
【請求項９】マザーテープ用である、請求項８に記載
した磁気記録媒体。
【請求項１０】鉄、コバルト、アルミニウム、及び、
希土類を含有する、磁性粉末。
【請求項１１】前記希土類がイットリウムである、請
求項１０に記載した磁性粉末。
【請求項１２】前記コバルトが、前記鉄に対し原子数
の比で１０％以上、３５％以下含有され、前記アルミニ
ウムが、前記鉄に対し原子数の比で３％以上、１０％以
下含有され、前記イットリウムが、前記鉄に対し原子数
の比で１．５％以上、５．５％以下含有されている、請
求項１１に記載した磁性粉末。
【請求項１３】比表面積が４０ｍ²／ｇ以上、６５ｍ
²／ｇ以下であり、長軸長が０．０５μｍ以上、０．１
５μｍ以下である、請求項１０に記載した磁性粉末。
【請求項１４】保磁力が１６７ｋＡ／ｍ以上であり、
飽和磁化量が１５０Ａｍ²／ｋｇ以上である、請求項１
０に記載した磁性粉末。
【請求項１５】磁性粉末を含有した磁性層を有し、転
写磁界が記録された磁気記録媒体であって、前記磁性粉
末が、鉄、コバルト、アルミニウム、及び、希土類を含
有している、転写磁界が記録された磁気記録媒体。
【請求項１６】前記希土類がイットリウムである、請
求項１５に記載した転写磁界が記録された磁気記録媒
体。
【請求項１７】前記コバルトが、前記鉄に対し原子数
の比で１０％以上、３５％以下含有され、前記アルミニ
ウムが、前記鉄に対し原子数の比で３％以上、１０％以
下含有され、前記イットリウムが、前記鉄に対し原子数
の比で１．５％以上、５．５％以下含有されている、請
求項１６に記載した転写磁界が記録された磁気記録媒
体。
【請求項１８】前記磁性粉末の比表面積が４０ｍ²／
ｇ以上、６５ｍ²／ｇ以下であり、長軸長が０．０５μ
ｍ以上、０．１５μｍ以下である、請求項１５に記載し
た転写磁界が記録された磁気記録媒体。
【請求項１９】前記磁性粉末の保磁力が１６７ｋＡ／
ｍ以上であり、飽和磁化量が１５０Ａｍ²／ｋｇ以上で
ある、請求項１５に記載した転写磁界が記録された磁気
記録媒体。
【請求項２０】前記磁気記録媒体としての保磁力が１
６７ｋＡ／ｍ以上である、請求項１５に記載した転写磁
界が記録された磁気記録媒体。
【請求項２１】前記磁気記録媒体におけるスイッチン
グフィールドディストリビューションが０．４５０以下
である、請求項１５に記載した転写磁界が記録された磁
気記録媒体。
【請求項２２】前記磁気記録媒体が磁界転写用であ
る、請求項１５に記載した転写磁界が記録された磁気記
録媒体。
【請求項２３】マザーテープである、請求項２２に記
載した転写磁界が記録された磁気記録媒体。