JP2000015320A - 冷間圧延における鋼帯への圧延潤滑油の供給方法 - Google Patents

冷間圧延における鋼帯への圧延潤滑油の供給方法

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JP2000015320A
JP2000015320A JP10191449A JP19144998A JP2000015320A JP 2000015320 A JP2000015320 A JP 2000015320A JP 10191449 A JP10191449 A JP 10191449A JP 19144998 A JP19144998 A JP 19144998A JP 2000015320 A JP2000015320 A JP 2000015320A
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steel sheet
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speed
emulsion
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Teruo Fujibayashi
晃夫 藤林
Yasuhiro Sotani
保博 曽谷
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JFE Engineering Corp
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼帯の冷間圧延において、鋼板の上下面の表
面、特に下面側表面にエマルション圧延油中に含まれる
潤滑油分を、十分な厚さの油膜の形態で安定して形成さ
せること。 【解決手段】 鋼板1の表面にエマルション圧延油3を
供給するに当たり、当該冷間圧延時に走行中のその鋼板
上表面側2a、及び鋼板下面側2bに、当該鋼板1の走
行方向に沿って当該鋼板1の走行速度以上の速度を有す
る流体流れの状態で、そのエマルション圧延油3を供給
する。 【効果】 高い圧延油付着効率を得ることができる。そ
の結果、優れた表面品質を有する薄鋼板を高圧下、高速
圧延で高能率の生産をすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、薄鋼板を生産す
る冷間圧延ラインにおいて、鋼帯と圧延ロール間の潤滑
を効率的に行なう方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、薄鋼板として板厚が薄く表面品質
が優れた製品に対する需要が一層高まっている。そのた
めに、鋼帯の冷間圧延においては高圧下率で高速圧延に
より高能率に、且つ表面欠陥のない薄鋼板を製造する技
術が求められている。
【0003】ところで、鋼帯の冷間圧延においては、鋼
板と圧延ロール間の潤滑が不足して摩擦力が大きくなっ
たり、冷却が不足して温度上昇が大きくなると、ヒート
スクラッチ等の表面欠陥が発生するのみならず、圧延負
荷の増大や圧延機の振動であるチャタリングの発生原因
になる。ところが通常、鋼帯の冷間圧延中のロールと鋼
板との接触領域、即ちロールバイトにおいては、高圧、
高温且つ高すべり速度の条件となっている。そこで上記
問題の発生を防止し、上記ロールバイト条件を制御する
ためには、ロールバイイトで鋼板の上面側及び下面側の
両面共に、潤滑油膜を安定的に形成させること、及び温
度上昇を抑制するための効率的な冷却をすることが必要
となる。
【0004】通常、鋼帯の冷間圧延においては、エマル
ション圧延油を用いて潤滑が行なわれることが多い。エ
マルション圧延油とは、潤滑油の粒子が水に安定して懸
濁した状態の混合液体であり、鋼板及びロールに供給さ
れる。そして、給油方式としては、例えば「板圧延の理
論と実際」(日本鉄鋼協会発行、p208)に示されて
いるように、循環給油方式、直接給油方式、及びこれら
両者の折衷であるハイブリッド給油方式がある。
【0005】循環給油方式においては、潤滑油を冷却水
と予め混合・撹拌して作った低濃度のエマルション圧延
油を循環させながら、鋼板及びロールに対してスプレー
し、潤滑及び冷却をする。直接給油方式においては、高
濃度のエマルション圧延油を鋼板に対してスプレーして
潤滑を行ない、また水を主にロールに対してスプレーし
て冷却を行なおうとする。いずれの方式においても、通
常、鋼板の上・下面に対して、エマルション圧延油をノ
ズルからスプレーするというものである。
【0006】鋼板の上面側にスプレーされたエマルショ
ン圧延油については、エマルション圧延油中の、鋼板表
面に直接衝突した潤滑油粒子(以下、「油滴」という)
の一部が、油膜となって鋼板表面に付着する。一方、鋼
板表面に付着しなかった油滴は、鋼板上にたまって鋼板
に沿って流れ、その一部が更にこの間に鋼板表面に付着
する。そして、付着しなかったすべての油滴はエマルシ
ョン圧延油に懸濁した状態で板端から落下する。
【0007】これに対して、鋼板の下面側にスプレーさ
れたエマルション圧延油については、鋼板表面に直接衝
突した油滴の一部が、油膜となって鋼板表面に付着する
だけであり、鋼板表面に付着しなかった油滴は、鋼板表
面にたまって鋼板に沿って流れるということもなく、他
の油滴と共にエマルション圧延油に懸濁した状態で直ち
に鋼板から落下する。
【0008】このように、鋼板の上下面にスプレーされ
たエマルション圧延油中の油滴は、その一部が、鋼板表
面に付着するだけである。特に、鋼板下面側について
は、上面側のように鋼板表面にたまった後で鋼板表面に
付着するという油分はない。従って、鋼板下面側表面へ
の付着油量は、上面側に比べ格段に少ない。鋼板の上・
下面に対して、エマルション圧延油をノズルからスプレ
ーする方法には、上述した問題がある。
【0009】上述した問題を解決するために、以下の改
良技術が開示されている。 特公昭59−24888号公報には、通常のエマルシ
ョン圧延油のスプレー系統とは別に、鋼板下面側に10
%以上の濃度の圧延油を噴射し、下面側の付着油量を改
善する方法が示されている(以下、「先行技術1」とい
う)。
【0010】特開昭54−99058号公報には、フ
ルコーンノズルを用いることにより実質スプレー時間を
確保して、プレートアウト量、即ち、付着油量を改善す
ることが示されている(以下、「先行技術2」とい
う)。
【0011】特公昭58−5731号公報には、連続
圧延機各スタンドの出口で、低濃度、低温のエマルショ
ン圧延油を冷却のために供給し、各スタンド入口では、
循環エマルション圧延油からの抽出油により、高濃度、
高温のエマルション圧延油を潤滑のために供給するとい
う循環方式が示されている(以下、「先行技術3」とい
う)。
【0012】特開昭61−253101号公報には、
ロール入側で、プレートアウト性を改善するために、大
粒径油滴のエマルション圧延油を供給し、出側で小粒径
油滴のエマルション圧延油を供給する方法が示されてい
る(以下、「先行技術4」という)。
【0013】特開昭59−1485号公報には、樋内
にエマルション圧延油を供給し、浮上分離した油脂層中
に鋼帯を通すことにより、プレートアウト性を改善する
方法が示されている(以下、「先行技術5」という)。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、鋼
帯を冷間圧延して板厚が薄く表面品質が優れた冷延鋼板
を高能率で生産する技術を開発することにある。これに
対しては、ロールバイトにおける潤滑及び冷却技術が重
要である。ところが、上述した先行技術には下記の問題
点がある。
【0015】先行技術1によれば、ロールバイトにおけ
る潤滑技術に関して、鋼板下面側に対して濃度10%以
上のエマルション圧延油を別途に噴射するので、下面側
の付着油量はある程度増加するという効果はある。しか
しながら、通常のスプレー系統による給油の他に更に、
高濃度のエマルション圧延油をスプレーするというもの
である。従って、高濃度のエマルション圧延油を混合・
撹拌するためのタンクや配管系統が必要になる。更に、
圧延油分の消費量が増加し、圧延油原単位が増加する。
また、循環給油方式でこの方法を適用すると、高濃度の
エマルション圧延油がクーラントシステムに混入し、循
環系エマルション圧延油の油分濃度が増加し、安定操業
が行なえない。
【0016】先行技術2〜4によれば、付着油量を増加
させたり、あるいは冷却能力を向上させる圧延油の供給
方法やスプレーノズル形式が述べられている。これらは
鋼板の上面側については効果がある。しかしながら、鋼
板の下面側については、上述したようにエマルション圧
延油は鋼板へ衝突後直ちに落下する。従って、これらの
方法を適用しても、鋼板下面側への付着油量の改善や冷
却能力の向上は殆んどみられない。即ち、通常のスプレ
ーによるエマルション圧延油の供給方法を採用する限
り、圧延油の付着効率が極端に低いことが大きな欠点と
なっている。
【0017】先行技術5によれば、油脂分が浮上分離し
易いエマルション圧延油に対しては、プレートアウト性
改善効果が得られる。しかしながら、油脂分が浮上分離
しにくいマルション圧延油や、経時的にエマルション安
定性が変化する場合には、鋼板表面に安定した油膜が形
成されにくいという欠点がある。
【0018】上述した通り、鋼帯の冷間圧延に際して鋼
板と圧延ロールとの間の潤滑を向上させるために、従来
技術に基づきエマルション圧延油を供給しても、鋼板の
表面、特に下面側の表面に十分な付着油量をもつ油膜
を、安定して形成させることができない。従って、圧下
率や圧延速度を落とさざるを得ない。そのために圧延能
率が低下する。また、潤滑不足によりヒートスクラッチ
等の鋼板表面欠陥が発生する等、大きな問題をかかえて
いる。
【0019】従って、上述したこの発明の目的を達成す
るために解決すべき課題は、鋼帯の冷間圧延において、
鋼板の上下面の表面、特に下面側表面にエマルション圧
延油中に含まれる潤滑油分を、十分な厚さの油膜の形態
で安定して形成させることにある。こうすることによ
り、鋼帯の冷間圧延時にロールバイトにおける潤滑性を
著しく向上させることができ、この発明の目的が達成さ
れる。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、次の知見
を得た。
【0021】鋼帯の冷間圧延中に、高速で走行中の鋼帯
の上下面に対して、鋼帯の走行方向に沿ってその走行速
度以上の速度をもったエマルション圧延油を供給するこ
とにより、鋼板上面側のみでなく下面側にも、鋼板表面
への付着油量を従来の供給方法による場合よりも格段に
多く、しかも安定して得ることができることがわかっ
た。
【0022】上記知見を得るに至った研究経過の概要及
びこの知見に基づきこの発明を完成するに至った経過を
説明する。本発明者等は、従来のスプレーによるエマル
ション圧延油の供給方法では、鋼板表面への油分の付着
効率が極端に低くなっていることに疑問をもち、鋼板表
面へのエマルション圧延油の衝突による油分の付着機構
を詳細に研究した。従来、エマルション圧延油の鋼板表
面への付着(プレートアウト)は、例えば、鉄と鋼、5
4−148(1977),S699に示されているよう
に、エマルション圧延油中の油滴粒子が鋼板表面に衝突
して崩壊することにより生じると考えられている。従っ
て、鋼板に対して垂直方向に衝突し、且つその衝突速度
の大きい方がエマルションの崩壊が生じ易いとの考えか
ら、操業では潤滑を改善するために、スプレー噴出圧力
を高くする等の方法がとられてきた。即ち、通常のポン
プ圧範囲である2〜10kg/cm2 の範囲内でエマル
ション圧延油を鋼板に対して垂直に衝突させ、更に、そ
の衝突速度を上げるために、できる限り高い圧力で噴射
した方が、油分付着効率が高くなると考えられてきた。
しかし、実際には、こういった範囲でポンプ圧力を高く
しても、かえって付着量が減少したり、供給油分量に対
し付着量は高々10%を超えない程度しか得られないこ
とがわかった。スプレーにより、エマルション粒子(油
滴)のみを鋼板表面に衝突させる場合は、鋼板に対して
垂直に衝突させ、且つその衝突速度が大きい方が付着効
率が高い、という説明があてはまると思われる。しかし
ながら、本発明者等は、水と油滴とが混合しているエマ
ルション圧延油の場合は、これを鋼板表面に対して、よ
り高速度で衝突させても、油滴の付着量は増加しないこ
とを見い出した。この事実は、エマルション圧延油の鋼
板への衝突に際しては、衝突における水の挙動という従
来考えられていなかった重要な因子が影響しているから
である。
【0023】図2は、エマルション圧延油3がノズル4
等によりスプレーされて鋼板1の表面2へ衝突する様子
を示す。エマルション圧延油は水の中に、通常は比重が
1よりも小さい、即ち水より軽い油脂等からなる粒子
(油滴)5が懸濁している状態のものである。この混合
流体がノズルからある噴出速度を持ち鋼板表面に衝突す
る際には、比重の大きい水の方が慣性力が大きいので、
鋼板側に接触しやすくなり、鋼板表面に選択的に水膜6
を形成する。
【0024】図3は、図2の鋼板表面近傍の詳細模式図
であり、上記鋼板表面への油滴付着機構の説明図であ
る。即ち、油滴5は先に形成される水膜6により妨害さ
れ、小さい確率で水膜6を通り抜けて衝突したものが鋼
板表面に付着する。しかしながら、その他の油滴5は比
重が小さいので水膜6上の自由界面にたまり、鋼板2表
面への接触は水膜6によって妨げられる。エマルション
圧延油3の噴出圧力を高くし、鋼板表面への衝突速度を
増加させると、比重の大きい水の慣性力の増加分が油滴
のそれより大きくなり、鋼板表面に形成される水膜6の
厚みがより厚くなり、油滴5の鋼板表面2への接触はま
すます難しくなる。
【0025】上記知見は下記実験により明らかになっ
た。図4は、鋼板下面側へのプレートアウト実験装置を
説明する概略縦断面図である。エマルション圧延油の供
給方法を従来方法と新方法との2通りのモデル実験を
し、鋼板表面への油分付着量(付着油量)の差をみた。
実験装置は、モーター29で駆動させたエンドレスベル
ト30の下面に鋼板サンプル31をとりつけ、モーター
29を駆動させて鋼板サンプル31を水平方向に高速で
走行させ、一方、エンドレスベルト30の下方からエマ
ルション圧延油3を噴射させ、走行中の鋼板サンプル3
1下面側にこれを供給するものである。図4(a)で
は、従来方法の実験を行ない、エマルション圧延油3を
鋼板表面に対して垂直に噴射し、スプレーノズル32か
らの噴出圧力を種々変化させて鋼板表面へのエマルショ
ン圧延油の衝突速度を変化させた。図4(b)では、新
方法の実験を行なうにあたり、図のように樋9を設け、
スリットノズル8からのエマルション圧延油3を鋼板表
面に対してほぼ平行に噴射して鋼板表面に接してこれに
沿った平行な流れを形成させ、その際噴出圧力を種々変
化させて、鋼板サンプル31とエマルション圧延油3と
の相対速度を種々の水準に変化させた。なお、従来方法
及び新方法共にエマルション圧延油の噴射流量密度は2
500リットル/min・m2 で一定となるよう、スプ
レーノズルの口径及びスリットノズルのスリット幅をそ
れぞれ決定した。
【0026】表1に、上記プレートアウトの実験条件を
示す。
【0027】
【表1】
【0028】上記実験下において鋼板サンプル表面への
付着油量を測定した。付着油量は、単位面積当たりの付
着油量を重量法で測定した。図5は、スプレーノズルか
らエマルション圧延油を鋼板サンプル表面に対して垂直
に衝突させた場合(従来方法)、及び、エマルション圧
延油を鋼板サンプル表面に平行に噴射しこれに沿って流
した場合(新方法)それぞれの、エマルション圧延油の
鋼板サンプル表面への付着油量を示す実験結果である。
【0029】図5から下記事項がわかる。従来方法によ
り鋼板表面に対して垂直にエマルション圧延油を衝突さ
せた場合は、衝突速度によらず単位面積当たりの付着油
量は少なく、衝突速度の増加と共に、付着油量は、減少
傾向を示す。
【0030】これに対して、新方法によりエマルション
圧延油を鋼板表面に平行に噴射した場合には、鋼板との
相対速度が正の場合、即ち鋼板走行速度よりもエマルシ
ョン圧延油の噴出速度の方が速い場合、付着油量が非常
に多く、相対速度の増加と共に付着油量は増加傾向を示
す。一方、相対速度が負の場合、即ちエマルション圧延
油の噴出速度の方が鋼板走行速度よりも遅い場合には、
付着油量は少なくなり、ある相対速度以下ではほぼ一定
値になる。
【0031】上記結果は次のように説明することができ
る。図6は、エマルション圧延油3が、鋼板上面を鋼板
走行方向と同じ方向に、鋼板走行速度に対して正の相対
速度をもって流れている場合のエマルション圧延油の液
膜と鋼板表面部の拡大断面図である。同図には、矢印で
鋼板走行速度VS と、エマルション圧延油膜内の液膜速
度分布V(y)を示す。なお、座標軸yは、鋼板表面を
ゼロとし、上方に向かって正となるように設定した。こ
のとき、エマルション圧延油が鋼板走行速度に対して正
の相対速度をもって流れている場合には、鋼板表面近傍
での速度勾配dV/dyは正となる。即ち、液膜速度V
(y)が鋼板表面から鉛直方向に遠ざかるにつれて速く
なるような液膜速度V(y)の分布状態にある。このよ
うな場合には、その液膜中の分散粒子であるエマルショ
ン油滴5はその比重が連続相である水より小さいので鋼
板表面に近寄る方向に運動する。その結果、鋼板表面近
傍にエマルション油滴5の濃縮が起こる。
【0032】逆に、図7に示すように、エマルション圧
延油が、鋼板上面を鋼板走行方向と同じ方向に、鋼板走
行速度に対して負の相対速度をもって流れている場合に
は、、即ち鋼板走行速度よりエマルション圧延油の流れ
速度の方が遅い場合(鋼板表面近傍の速度勾配が負の場
合)には、エマルション油滴5は鋼板表面から遠ざかる
方向に運動し、その結果、鋼板表面近傍のエマルション
油滴5の濃度が下がる。
【0033】以上の実験結果より、鋼板の冷間圧延に際
してエマルション圧延油を鋼板走行方向と平行に、且つ
その相対速度が正となるように流して供給することによ
り、エマルション圧延油中の油分の付着効率が格段に高
められることが判明した。
【0034】この発明は、上記研究により得られた知見
に基づきなされたものである。この発明による冷間圧延
における鋼帯への圧延潤滑油の供給方法は、その鋼帯の
表面にエマルション圧延油を供給するに当たり、当該冷
間圧延時に走行中のその鋼帯表面に、当該鋼帯の走行方
向に沿って当該鋼帯の走行速度以上の速度を有する流体
流れの状態で、そのエマルション圧延油を供給すること
に特徴を有するものである。
【0035】
【発明の実施の形態】この発明を実施するためには、図
1に示すような簡便な装置があれば可能である。
【0036】図1は、本発明の基本的装置構成を示す模
式図である。冷間圧延機で圧延される鋼板1を上下から
拘束するロール7の近傍にスリット状の出口を有するス
リットノズル8から、エマルション圧延油3を鋼板1の
上下面に沿って供給する。供給されたエマルション圧延
油3の流速は、鋼板1の走行速度よりも速く、且つ鋼板
表面に沿った流体流れの形態で供給する。エマルション
圧延油の流速は、他の条件が一定の場合、スリットノズ
ル8出口のエマルション圧延油3の圧力でほぼ決定され
る。
【0037】鋼板上面側2aでは、供給されたエマルシ
ョン圧延油3は、鋼板1の上面を流れて下流側にある次
の拘束ロール(図示せず)に衝突し、幅方向に鋼板端部
から落下する。これに対して、鋼板下面側2bでは、ス
リット8を出たエマルション圧延油3は、鋼板1の下側
に設けられた樋9と、鋼板1との隙間を流れ、次の拘束
ロール近傍で樋9が切れた所で下へ落下する。ここで、
拘束ロール7間のピッチが長すぎると、エマルション圧
延油の運動量が、鋼板走行速度との差によって発生する
摩擦力により減衰し、いずれ鋼板と同じ速度になる。本
発明の主旨である鋼板との相対速度を大きく保つために
は、この距離があまり長いとエマルション圧延油の速度
の減衰が大きくなり、エマルション圧延油の鋼板表面へ
の付着改善効果が得られなくなる。この観点から、拘束
ロールピッチは1〜5m程度が望ましい。
【0038】上記図1において、鋼板1上下の拘束ロー
ル7としては、搬送ロールでも、あるいは圧延ロールで
あっても本発明の目的を達成するために適している。ま
た、エマルション圧延油の相対速度を確保するために、
圧延方向に所要の間隔をあけてノズルを複数個設けても
よい。通常のタンデム圧延機の場合は、隣り合うスタン
ド間隔が4m程度であるので、スタンド間に拘束ロール
を設けてもよいが、必ずしも拘束ロールは必要ではな
い。また、冷間タンデム圧延機の場合は、本発明法を行
おうとするスタンド間に適宜、採用することができる。
【0039】
【実施例】次に、この発明を実施例によって更に詳細に
説明する。 (試験1)図8に、冷間タンデム圧延機に本発明を実施
した場合の一形態を示す。ここでは、5スタンド4Hi
連続式冷間圧延機の第4スタンド14から第5スタンド
15間に、図1に示した本発明の圧延油供給方法を適用
している。第4スタンド14から第5スタンド15間に
本発明を適用したのは、後段スタンドほど板厚が薄く、
高速で厳しい潤滑条件になるからである。スタンド入口
及び出口のロール、並びに他スタンド間については、従
来通りのスプレーを用いている。ここでは、本発明の上
面と下面へのエマルション圧延油の噴射ノズルのスリッ
トノズル8と、従来のスプレーノズル16a、16b、
17a〜17dへエマルション圧延油3を給油するポン
プ28、配管系統18は、共通にしてあるが、別ポン
プ、別配管系統にしてもよい。
【0040】圧延油は、濃度2wt.%の牛脂系エマルショ
ン(40℃での基油粘度40cSt、平均粒径10μ
m、エマルション温度60℃)を用いた。エマルション
圧延油を供給するスリットノズルのスリットギャップは
2mm、スリットノズル出口と鋼板間の距離は30m
m、ノズル吐出圧力は0. 5〜5.0kg/cm2 、吐
出流量3.0m3 /min・m2 とした。この時、吐出
速度は、第4〜第5スタンド間の最高通板速度1400
m/min即ち、23.3m/sより速くなるように、
25m/sと設定し、吐出流量を3.0m3 /min・
2 とした。圧延速度が変わった場合には、圧延速度に
あわせてこの吐出流量を鋼板速度より速くなるように吐
出流量を調整すればよい。樋9は、幅1.3m長さ3m
のものを鋼板から30mmの位置に設けた。圧延条件
は、入側板厚2.0〜3.2mm、出側板厚0.1 5
〜0. 60mm、板幅680〜1100mm、第5スタ
ンドの最高圧延速度は、1800m/minである。
【0041】図9に、圧延速度を変化させたときの付着
油量の変化を、本発明による場合と、従来のスプレー法
の場合とを比較して示す。鋼板の付着油量は、圧延後鋼
板の上面と下面の残脂量を溶剤抽出法で求めた。従来、
圧延速度上昇と共に鋼板の付着油量が減少していたのに
対して、本発明法によれば圧延速度に依存せず高い付着
油量が安定して得られている。
【0042】図10に、圧延速度と第5スタンドの摩擦
係数との関係を示す。従来のスプレー法では、付着油量
の減少に伴い、高圧延速度域で特に下面側の第5スタン
ドの摩擦係数が上昇し、チャタリングが発生した。これ
に対して本発明法によれば、高圧延速度域までほぼ一定
の摩擦係数が得られ、潤滑不良により発生するチャタリ
ングが発生しなくなり、高速安定圧延が可能になった。
【0043】図11には、鋼帯の冷間圧延における、定
常圧延部の圧延後鋼板の上面と下面の光沢度の比較結果
を示す。従来法では、上面と下面に潤滑の差による光沢
度の差が生じていたが、本発明法によれば、上面と下面
の潤滑性が同等に改善されたため、光沢度もほぼ等しく
なった。このように、表面品質向上に寄与する鋼板の圧
延が可能となった。
【0044】(試験2)図12に、冷間タンデム圧延機
に本発明を実施した場合の他の形態を示す。4スタンド
連続冷間圧延機(第1〜第3スタンド:4Hi、第4ス
タンド:6Hi)に、図8に示した発明を適用した。第
3スタンドの圧下率が高く、ヒートスクラッチの発生頻
度が高いために、第2〜第3スタンド間に本発明を適用
した。エマルション圧延油を供給するスリットノズル8
のスリットギャップは、2.5mm、スリットノズル出
口と鋼板間の距離は、20mm、ノズル吐出圧力0.5
〜5.0kg/cm2 、吐出流量2.4m3 /min・
2 とした。この時、吐出速度は、第2〜第3スタンド
間の最高圧延速度1000m/min、即ち、16.0
m/sより速くなるように、20m/sと設定し、吐出
流量を2.4m3 /min・m2 とした。圧延速度が変
わった場合には、圧延速度に合わせこの吐出流量を鋼板
速度より速くなるように吐出流量を調節すればよい。樋
9は、幅1.8m、長さ2mのものを鋼板から20mm
の位置に設けた。圧延条件は、入側板厚2.0〜5.3
mm、出側板厚0.35〜2.0mm、板幅675〜1
650mm、第3スタンドの最高圧延速度は1400m
/minである。
【0045】図13に、圧延速度と第3スタンド出側コ
イル温度との関係を示す。従来のスプレー法では、コイ
ルの温度上昇が大きく、高温時にヒートスクラッチが特
に鋼板下面側に発生した。一方、本発明法では、潤滑性
が改善されたことにより、温度上昇が抑制され、ヒート
スクラッチの発生がなくなり、鋼板品質が向上した。
【0046】
【発明の効果】以上述べたように、この発明において
は、鋼帯の冷間圧延において鋼板の表面にエマルション
圧延油を供給するに当たり、走行中の鋼板表面へその方
向に沿って、鋼帯の走行速度以上の速度を有する流体流
れの形態でエマルション圧延油を供給する。そのため、
高い圧延油付着効率を得ることができる。その結果、優
れた表面品質を有する薄鋼板を高圧下、高速圧延で高能
率の生産をすることができる。このような、冷間圧延に
おける鋼帯への圧延潤滑油の供給方法を提供することが
でき、工業上きわめて有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するときの基本的装置構成を示す
模式的縦断面図である。
【図2】従来技術によるスプレー法を示す概略縦断面図
である。
【図3】図2の鋼板表面とその近傍の拡大図であり、エ
マルション圧延油が鋼板に衝突し、付着する機構を説明
する模式図である。
【図4】エマルション圧延油を鋼板下面側へ垂直に衝突
させた場合と、下面側表面に沿って鋼板速度より大きい
速度で流した場合との、プレートアウト実験装置の概略
縦断面図である。
【図5】図4の各実験におけるエマルション圧延油の鋼
板サンプル表面への付着油量に及ぼす、エマルション圧
延油の衝突速度又は鋼帯走行速度との相対速度の影響を
示すグラフである。
【図6】エマルション圧延油が鋼板上面を鋼板走行速度
より速い速度の流体流れを呈している場合のエマルショ
ン圧延油の液膜中における油滴の挙動の説明図である。
【図7】エマルション圧延油が鋼板上面を鋼板走行速度
より遅い速度の流体流れを呈している場合のエマルショ
ン圧延油の液膜中における油滴の挙動の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態であって、冷間タンデム圧
延機に適用した例を示す図である。
【図9】本発明の実施例における圧延速度と鋼板上・下
面の付着油量との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例における圧延速度と鋼帯・圧
延ロール間の摩擦係数との関係を示すグラフである。
【図11】本発明を適用し圧延後の鋼板上・下面の光沢
度を示すグラフである。
【図12】本発明の他の実施形態であって、冷間タンデ
ム圧延機に適用した例を示す図である。
【図13】本発明の実施例における圧延速度と圧延スタ
ンド出側の鋼板温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 鋼板 2 鋼板表面 2a 鋼板上面側 2b 鋼板下面側 3 エマルション圧延油 4 ノズル 5 油滴 6 水膜 7 ロール 8 スリットノズル 9 樋 10 隙間 11〜15 第1〜第5スタンド 16a、16b 第1〜第5スタンドの各スタンドの入
側ノズル 17a〜17b 第1〜第5スタンドの各スタンドの出
側ノズル 18 エマルション圧延油供給管 19 エマルション圧延油戻り配管 20 オイルパン 21 クーラントタンク 22 アジテータ 23 フィルター 24 原油タンク 25 温水タンク 26 原油送りタンク 27 温水送りタンク 28 エマルション圧延油送りポンプ 29 モーター 30 エンドレスベルト 31 鋼板サンプル 32 スプレーノズル

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼帯の冷間圧延において、前記鋼帯の表
    面にエマルション圧延油を供給するに当たり、前記冷間
    圧延時に走行中の前記鋼帯表面に、当該鋼帯の走行方向
    に沿って当該鋼帯の走行速度以上の速度を有する流体流
    れの状態で、前記エマルション圧延油を供給することを
    特徴とする、冷間圧延における鋼帯への圧延潤滑油の供
    給方法。
JP10191449A 1998-07-07 1998-07-07 冷間圧延における鋼帯への圧延潤滑油の供給方法 Pending JP2000015320A (ja)

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