JP2000006138A - 単結晶インゴット切断用黒鉛治具 - Google Patents

単結晶インゴット切断用黒鉛治具

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正豊 岡崎
Yasuaki Okada
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 単結晶インゴットを切断状態検知装置を備え
たワイヤー式切断装置で切断する際、稀に発生する検知
装置の誤認からくる装置の誤動作を防止する切断用黒鉛
治具を提供する。 【解決手段】 切断用黒鉛治具と固定金具の間に絶縁性
高分子膜を形成し、黒鉛治具と装置の間で絶縁をとり、
切断状態を検知する電極からの信号の誤認を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体や、誘電体に
用いる単結晶インゴットをスライス状に切断加工する際
に、単結晶インゴットを取り付ける黒鉛治具に関する。
【0002】
【従来の技術】単結晶インゴットからウェハーを生産す
る切断加工は内周刃切断装置による加工が主流であっ
た。しかし、インゴットの大口径化に伴い、ブレード厚
さの増加による材料歩留りの低下、切断時間の伸長によ
る生産性の低下等が問題となり、インゴットの加工には
ワイヤーソーによる加工に移行している。
【0003】ワイヤーソーは、ワイヤーを高速で送りつ
づけ、ワイヤーが被処理物と接触すると、砥粒を含むス
ラリーが供給され、被処理物はスライス状に切断加工さ
れる。そのため、硬くて脆い材料を薄く切断するには非
常に優れた特性を発揮する。
【0004】最近になり、切断工程中のワイヤーに電気
を流し、切断状態が検知可能な単結晶インゴット等の脆
性材料の切断用ワイヤーソーが開発された(特開平8─
112748号公報)。切断状態の検知には、処理物を
支持する黒鉛治具に予め、切断状態検知用に2種類の電
極が埋設され、切断時にワイヤーに流れている電流をそ
れぞれの電極が検知して行っている。各電極はそれぞれ
が黒鉛治具が固着されている固定金具を通じ、装置内の
制御部に電流検知信号を送るようになっている。具体的
には、まず、ワイヤーが、処理物に接触したときに、こ
の処理物を通じ、導電体である黒鉛に埋設された切断開
始状態を検知する一方の電極によって、ワイヤーからの
電流を検知する。次に、表面を絶縁物層で被覆され、そ
の被覆面が処理物の底面に接合されるように黒鉛治具に
設置されたもう一方の電極が、ワイヤーが処理物を切断
し、この電極の表面の絶縁層を破った時、即ち切断が終
了した状態を検知する。このようにして、ワイヤーに流
れている電流をそれぞれの電極が検知して、固定金具を
通じて装置の制御部に信号を送ることにより切断状態を
認識している。
【0005】したがって、各電極が埋設されている黒鉛
治具と、各電極からの信号を受け取る固定金具とは、絶
縁がされていないと何方の電極からの信号であるかを装
置が認識できず、装置の誤動作の原因となることがあ
る。
【0006】そのため、従来は、黒鉛治具と固定金具と
の間にガラス板等の絶縁物を挟み込み絶縁を確保してい
た。しかしながら、半導体製造用の単結晶インゴットの
切断時にガラス板等の絶縁物を挟み込むこの従来の方法
では、これら絶縁物中に含まれる不純物が混入する恐れ
があるため、この絶縁物を用いないで切断が可能な方法
が望まれている。また、この従来の方法の場合、ガラス
板などの絶縁物という余分な部材が必要となり、更には
その接着を行うための余分な工程が増えてしまい、作業
効率を向上させる上でも問題となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記問題点
を鑑みなされたものであり、切断状態を検知できるワイ
ヤー式切断装置で、単結晶インゴットを切断する際に、
黒鉛治具と装置に取り付ける固定金具との絶縁を確実に
行なうことが可能となる単結晶インゴット切断用黒鉛治
具を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の請求
項1の発明は、一面が、柱状の単結晶インゴットの側面
を一体的に固着可能な凹面に形成され、前記凹面と対向
する他面が、切断装置側の金型に取付可能な取付面に形
成され、前記インゴットの切断時に部分的に切断される
黒鉛製の治具であって、前記取付面の全面に絶縁性高分
子膜が形成されてなる単結晶インゴット切断用黒鉛治具
である。
【0009】黒鉛治具の取付面に予め、絶縁性高分子膜
を形成することにより、接着剤によって固定金具に取り
付ける際に接着剤の塗布ムラ等の取付けの不具合があっ
ても、予め形成させた絶縁性高分子膜によって黒鉛治具
と装置間の絶縁が完全に確保できる。また、絶縁物から
来る不純物量も大幅に低減できる。
【0010】請求項2の発明は、前記絶縁性高分子膜の
厚みが1〜100μmである請求項1記載の単結晶イン
ゴット切断用黒鉛治具である。
【0011】膜厚が1μm以下の場合、膜面に傷等が発
生した場合、その傷を通し、電気が流れる場合などがあ
るため好ましくない。また、厚みは100μm程度まで
形成させることは可能であるが、さらに厚くすることに
より、膜の剥離が起こりやすく、また、膜にボイドが発
生し易くなり、剥離面や、ボイドを通し電流が装置に流
れる場合も考えられる。これらのことから、5μm〜5
0μmの範囲がさらに好ましい。
【0012】請求項3の発明は、前記切断装置は、単結
晶インゴットを切断するワイヤーに電流を流して、切断
状態を検知し、自動切断ができるワイヤー式切断装置で
ある請求項1又は2記載の単結晶インゴット切断用黒鉛
治具である。
【0013】予め、黒鉛治具の固定金具への取付面に絶
縁性膜を形成させていることにより、切断状態を検知す
る電極からの信号を装置が確実に認識でき、装置誤動作
が防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好適な一実施形
態を図面を参照しつつ説明する。
【0015】図1に本発明に係る、切断用黒鉛治具の一
例の概略図を示す。図において、黒鉛治具1は、黒鉛基
材11と絶縁性高分子膜12とからなる。
【0016】使用する黒鉛基材11の材質には特に制限
はなく、一般的な製法で作製された黒鉛材ならば特に問
題はない。この黒鉛基材11を柱状の単結晶インゴット
が一体的に固定できるように円弧状の凹面11aに加工
する。また、切断状態を検知する電極を埋設する孔13
を加工する。ここで、被処理品が一体的に固定できるな
らば、凹面11aに加工する形状は特に円弧状である必
要はなく、矩形状などでも構わない。
【0017】次に、この加工された凹面11aに対向す
る固定金具への取付面11b一面に絶縁性高分子膜を塗
布する。ここで、取付面11bは図示の如き平面に限ら
れたものでなく、接着剤の付着性を良くするために細か
い溝が形成され凹凸状になっている面等でもかまわな
い。また、取付面11bは装置側の取付け部に合わせて
加工され、装置側の取付け部と接する部分をいう。さら
に、取付面11b以外の側面11c、11dにも塗布す
ることにより、絶縁がより確実に確保できるため好まし
い。形成する絶縁性高分子膜12は耐熱温度が80℃以
上のものであれば、特に制限がなく、熱可塑性樹脂、熱
硬化性樹脂どちらでもよく、単独もしくは混合して用い
ても構わない。ここで、該黒鉛治具を固定金具に接着剤
により固定する場合は、使用する接着剤との相性を考慮
し、形成する高分子膜の材質を適宜選択する必要があ
る。機械的に固定する場合はこの限りではない。
【0018】絶縁性高分子膜12に使用可能な樹脂は熱
可塑性樹脂としてポリスチレン、ポリエチレン、ポリプ
ロピレンなどのポリオレフィン類、ポリエチレンテレフ
タレートなどのポリエステル類、ポリカーボネート類、
ポリアミド類、ポリイミド等があり、熱硬化性樹脂とし
てはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が
挙げられる。これら樹脂を単独若しくは2種類以上を組
み合わせて塗布する。黒鉛治具の固定金具への固定に接
着剤を使う場合に、相性のよい高分子は、特にエポキシ
樹脂、ポリイミド樹脂等である。塗布方法は刷毛塗り、
スプレー塗りなど適宜選択し塗布する。ここではエポキ
シ樹脂を接触面全面に約20μmの均一な厚さになるよ
う塗布し、樹脂を最高到達温度350℃の乾燥機内で硬
化させる。
【0019】以上のようにして形成された絶縁性高分子
膜12を有する黒鉛治具1に切断完了検知用の表面が絶
縁物で被覆された電極26を黒鉛治具1の14に設置
し、単結晶インゴット22を接着剤により固着する。接
着剤は黒鉛治具1の凹面11aの底部全面に塗布し、そ
の上に単結晶インゴットを置く。
【0020】図2には単結晶インゴット22が接着剤に
よって黒鉛治具1に固着された状態の概略図を示す。図
中の21は装置に固定する際の固定金具、22は単結晶
インゴット、23はワイヤーソー、24は切断開始状態
を検知する電極、25は電極24からの信号を固定金具
21に伝えるケーブル、26は切断完了を検知する電
極、27は電極26の信号を固定金具21に伝えるケー
ブルを示す。
【0021】単結晶インゴット22を固着したのち、黒
鉛治具1を装置に取り付ける固定金具21に固定する。
この固定には接着剤を用いて行なう方法と、機械的に万
力等で締めつけて固定する方法などがある。どちらの場
合においても、予め、黒鉛治具1の固定金具21への取
付面11bに絶縁性高分子膜12を形成することにより
絶縁を確保できる。
【0022】切断は、固定金具21が固定されたテーブ
ルが図中の矢印で示すように縦、横方向に駆動し、高速
で回転するワイヤーソー23によって行なわれる。この
ワイヤーソー23には切断状態を検知する電流が流れて
いる。ワイヤ─ソー23がインゴット22に接触したと
き、ワイヤーソー23に流れる電流はインゴット22を
通じ、導電体である黒鉛治具1を通じ電極24によって
切断が開始されたことが検知される。つぎに、ワイヤー
ソー23がインゴット22を切断し、電極26に被覆さ
れている絶縁物を破った時、電極26はワイヤーソー2
3からの電流を検知し、切断完了と認識し、ワイヤーソ
ー23を離脱させる。その後、テーブルが移動し、新た
に切断が開始される。以上の一連の操作を繰り返すこと
により、インゴット22をスライス状に切断加工する。
【0023】また、本発明は黒鉛治具1と固定金具21
即ち切断装置との間で絶縁をとることを目的としている
ことから、より確実に絶縁を保つ為に固定金具21の黒
鉛治具11との接触面にも前記樹脂を塗布し、絶縁性高
分子膜を形成させてもよい。このように黒鉛治具1と固
定金具21の両者それぞれに膜を形成させることで、よ
り一層の絶縁性が得られる。
【0024】なお、上記した実施の形態では、切断状態
検知用に電流を流したワイヤーソーを用いた切断装置へ
の適用例を説明したが、ワイヤー式切断装置に限らず、
単結晶インゴットの切断時に電流が発生する他の切断装
置にも適用できる。
【0025】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されており、
本発明の請求項1の発明により、黒鉛治具と装置間で絶
縁が確保でき、切断状態の検知の誤認が防止され、装置
の誤動作が防止できる。また、不純物の混入等が防止で
きる。
【0026】請求項2の発明によると、請求項1の発明
による効果である黒鉛治具と装置間の絶縁の確保が、よ
り一層確実となる。
【0027】請求項3の発明によると、大口径の単結晶
インゴットの切断が容易となり、確実に自動切断加工が
可能となり、半導体製造コストの低減効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る単結晶インゴット切断用黒鉛治具
の概略図。
【図2】本発明に係る黒鉛治具に単結晶インゴットが固
着された状態を示す概略図。
【符号の説明】
1 黒鉛治具 11 黒鉛基材 12 絶縁性高分子膜 21 固定金具 22 単結晶インゴット 23 ワイヤーソー 24 切断状態検知用電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡崎 正豊 香川県三豊郡大野原町萩原850 東洋炭素 株式会社内 (72)発明者 岡田 泰彰 福岡県福岡市博多区博多駅南2丁目9番11 号東洋炭素株式会社内 Fターム(参考) 3C069 AA01 BA06 BB01 BC03 CA04 CB01 DA01 EA01 EA02 EA04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一面が、柱状の単結晶インゴットの側面
    を一体的に固着可能な凹面に形成され、前記凹面と対向
    する他面が、切断装置側の金型に取付可能な取付面に形
    成され、前記インゴットの切断時に部分的に切断される
    黒鉛製の治具であって、前記取付面の全面に絶縁性高分
    子膜が形成されてなる単結晶インゴット切断用黒鉛治
    具。
  2. 【請求項2】 前記絶縁性高分子膜の厚みが1〜100
    μmである請求項1記載の単結晶インゴット切断用黒鉛
    治具。
  3. 【請求項3】 前記切断装置は、単結晶インゴットを切
    断するワイヤーに電流を流して、切断状態を検知し、自
    動切断ができるワイヤー式切断装置である請求項1又は
    2記載の単結晶インゴット切断用黒鉛治具。
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