JP2000004902A - 自発性筋力強化履物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 履物の中底（インソール）、あるいは敷皮
に、足指５指それぞれの中足趾節間関節（足指の付け
根）から末節骨の趾節間関節に至る何れかの箇所から、
指頭にかけて、深さが１ミリメートル（ｍｍ）から１２
ｍｍ、の段差を足指の付け根に沿って設けることによっ
て、足指とインソールとの間に空間を形成させ、足指の
屈曲運動、並びに段差あるいは段差端部に足指を強く圧
することが出来る履物。あるいは、足指５指それぞれの
中足趾節間関節から趾節間関節に至る何れかの箇所から
指頭にかけての部分が削除されているサンダル、草履な
どの開放性履物。 【効果】 該履物を着用することによって、足指筋力の
強化、血行の増進、踏ん張り力の強化による歩行安定性
の向上および足指の屈曲運動と指腹への力学的圧迫と刺
激による相乗効果によって歩行疲労を軽減し、歩行快適
性を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】靴を初めとする履物は、日常の必
需品であって、通勤用、作業用、あるいはスポーツ用な
ど、その使用目的に応じて多種多様な履物が市販されて
いる。最近は、多くの人の健康志向に答えた靴や歩行疲
労が軽減できる歩行専用の靴などに多くの関心が集まっ
ている。本発明の目的は、通勤用、家庭用、作業用、あ
るいはスポーツ用を問わず、履き心地、並びに歩行時の
快適さと健康の維持、改善に優れた作用と効果を有する
履物を提供することにある。

【０００２】

【従来の技術】本来、履物には足を外界障害物から保護
するという機能が課せられているが、時が経つにつれ、
社会生活の変化とともにデザイン、素材、装飾性が重視
されるようになり、次いで、社会生活や職業の多様化に
伴なって、合目的な履物の要求が高まった。このような
要求に応えて、履物の種類は細分化され、通勤・通学用
靴、作業用安全靴、ウォーキング・シューズ、ゴルフ・
シューズ、スキー・シューズなどなど、現在では、それ
ぞれの用途別要求機能を備えた１００種を越える履物が
市販されている、と言われている。

【０００３】近時、健康志向の高まりとともに、従来の
用途機能に加え、快適性と健康への配慮が重視されつつ
あり、このような作用と効果を有する履物が市場で目立
つようになっている。足の裏（足底あるいはソール）
は、踵（ヒール）、縦足弓（プランター・アーチあるい
は単にアーチ）、触球（フット・ボール）、横足弓（ト
ランスバース・アーチ）および指腹（トー・パッド）に
区分することが出来るが、主に体重を支える部分は、踵
と触球から横足弓にかけての部分であり、履物設計上、
特に重要な箇所とされている。

【０００４】「縦足弓」は、足裏のほぼ中央部分にあ
り、一般には、“土踏まず”と呼ばれている弓形にくぼ
んだ箇所であるが、この“くぼみ”が小さいか、あるい
は“くぼみ”が全く無く、平ら（扁平足）であると、長
距離の歩行が困難となるばかりでなく、歩行中に痛みが
発症する場合があり、種々の矯正治療が行われている。

【０００５】その矯正法の一つとして、足の裏と直接に
接する履物の中底（インソール）の“土踏まず”に対す
る部分に、“アーチ・サポートあるいはアーチ・パッ
ド”と呼ばれている山形の心材（膨らみ）が設けられて
いる履物がかなり以前から販売されている。このアーチ
・サポート付きの履物は、本来、扁平足の矯正のために
開発された医療目的のものであるが、足裏、特に、土踏
まずには、末梢神経が集中しており、土踏まず部分への
適度な力学的刺激は、疲労の回復を初め、全身に心地よ
い刺激を与え、健康上も大変よい、とされている。

【０００６】我が国に古来から伝わる「青竹踏み」は、
正にこのような効果を得ることを目的としたものである
が、本来、扁平足の矯正目的に開発されたアーチ・サポ
ート付きの履物にも、青竹踏みと同等の効果が期待さ
れ、これによって単なる医療用途から一般用の履物にも
アーチ・サポートが広く採用されるようになった。

【０００７】さらに、足の裏への力学的刺激を高めるた
め、複数個の直径５ミリメートル（以後、ｍｍと表す）
前後の円筒状突起、あるいは線状、あるいは曲線状の溝
をインソール全体に設けたサンダル、あるいはヒール部
分が全くない履物（古くは、“足中”と呼ばれていた草
履の一種。最近では、“ダイエット”という品名のスリ
ッパが販売されている）が市場に広く出回っている。

【０００８】このような突起物を持っている、あるいは
ヒール部が削除された履物は、足裏への力学的刺激、特
に、後者においては、履物のヒール部分がないため踵が
宙に浮き、体重の大部分が土踏まずに直接掛かるので、
土踏まずへの刺激が強く、その着用によって、青竹踏み
と同等な強い刺激効果が得られるが、これらの履物を長
時間着用すると、足指を除く足の裏全体、特に、体重が
直接かかる触球あるいは土踏まずが局所的に鬱血し、人
によっては、痛みや不快感を感じるので、このような足
裏への力学的刺激を高めた履き物は、長時間の着用を前
提とする通勤・通学用の靴、作業用履物、ウォーキング
・シューズ、スニーカー、あるいはスポーツ・シューズ
などには不向きとされている。

【０００９】また、最近では、幅２ないし９ｍｍ程度、
高さ３ｍｍ前後、断面が三角状の「膨らみ」を、指の付
け根の部分に沿うようにインソールに設けて足指を支
え、歩行安定性を高めたサンダルが市販されている。し
かし、該「膨らみ」は、歩行安定性に重点を置いたもの
でアーチ・サポートのような末梢神経への力学的刺激効
果は期待できない。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、長時
間、履物を着用しても不快感や痛みを発症することな
く、更に、履物の種類に関係せずに快適性が持続し、且
つ、歩行安定性に加えて、青竹踏みと同様な疲労回復と
全身に及ぼす活性効果、並びに筋力強化作用を有する履
物を見いだすことにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】土踏まずに代表されるよ
うに、足の裏には末梢神経が集中し、足裏への一定の力
学的刺激は快適さと快感をもたらすが、刺激が強すぎた
り、長期間連続的に刺激を受けると、痛みが発症した
り、快感が不快に転ずることは前述した。

【００１２】履物の快適性は、履物の形態（スタイ
ル）、素材および靴底の構造に深く関係するが、スタイ
ルおよび足裏と直接接するインソールの構造は、特に重
要である。足の裏には末梢神経が集中しており、力学的
刺激に対し、鋭敏であるが、足裏で最も敏感な箇所は、
土踏まずと足指、特に、指先と指腹である。

【００１３】足の指には、直接体重は掛からないが、足
指は、歩行安定性をコントロールし、且つ、歩行快適性
を司る極めて重要な部位である。特に、足指の筋力の衰
えは、歩行安定性を損なうばかりでなく、体のバランス
を崩し、躓きや転倒を誘発する。しかし、従来の履物、
特に、通勤・通学靴に代表される甲（アッパー）を有す
る閉鎖性履物、いわゆる靴（シューズ）、特に、婦人靴
は、スタイルが優先され、爪先を狭めて細く三角状にデ
ザインされた靴が人気を博している。

【００１４】これらの靴は、確かに外観スタイルは、美
しいが、長時間、且つ、長い期間にわたって足指、特
に、小指と母趾（親指）が靴の先端に重なるように、固
定圧迫されるため、病的な外反母趾や肉剌（まめ）ある
いは鶏眼（うおのめ）を発症する場合が多く、新聞やテ
レビなどのジャーナリズムでも、しばしば取り上げられ
るている。

【００１５】履物に対するこのような関心の高まりもあ
って、外観スタイルに優先して、指先の圧迫感を軽減し
た幅広な靴も多く供給されるようになっており、従来
は、ほとんど省みられなかった履物着用時における足指
の健康と役割について、多くの関心が向けられるように
なった。

【００１６】発明者は、長年にわたって、末梢神経が集
中する手および足指のマッサージと精神的安らぎ、疲労
の回復と健康（血圧、肩こり、食欲、睡眠など）との関
係について研究してきたが、歩行時における足指の動き
と特定の構え（姿勢）が、歩行快適性、歩行安定性、身
体に対する全身的活性効果および足指筋力の強化作用と
密接に関係していることを見いだし、本発明に至った。

【００１７】通常、裸足静止時における両足底の各部
位；踵、縦足弓、触球、横足弓および指腹は、同一平面
上に位置する。しかし、歩行前進時には、片足の足底
は、静止時と同位置にあるが、もう一方の足底は、触球
を蝶番として折れ曲がり、縦足弓および踵にかけての足
底は、歩行平面に対し、最大２０ないし３０度程度の傾
斜した位置を取る。

【００１８】このような静止時、歩行時における足底各
部位の位置関係は、履物を着用したときも、裸足歩行時
とほぼ同一と見てよいが（通常、履物の大部分は、ヒー
ルが１０ないし１５ｍｍ程度高くデザインされている。
ただし、婦人用のハイヒール靴は除く）、ここで重要な
のは、静止時は勿論、歩行時においても触球から横足
弓、指腹に至る足底は、常に同一平面上にある、という
ことである。そして、従来の履物デザインは、このよう
な足底の位置関係を前提として設計されている。

【００１９】このような従来の履物に対し、本発明の履
物の特徴は、中足趾節間関節（足指５指それぞれの付け
根）から趾節間関節（中節骨あるいは母趾の基節骨と末
節骨とのジョイントに至る何れかの箇所から指頭にかけ
て、深さ１ｍｍから１２ｍｍ、好ましくは３ｍｍから８
ｍｍ、且つ、足指の付け根に沿った形状で、段差が設け
られているインソール、あるいは敷皮（プラットフォー
ム・ソール）を有することにある（図１および図２参
照）。あるいはサンダルや草履などのアッパーがない開
放性履物においては、中足趾節間関節から趾節間関節に
至る何れかの箇所から指頭にかけの履物の底を、足指の
付け根の曲線形状に沿って削除した形状を有する。

【００２０】このように、足指の付け根から指頭部分の
インソールに段差を設けること、あるいは該段差部分を
削除することによって、足指の下に空間が生まれる。該
空間の形成によって； 従来の履物、特に、靴のような閉鎖性履物の着用によ
って圧迫固定されていた指は、静止時、歩行時を問わ
ず、指の屈曲運動が可能となり、血行増進効果と足指筋
力の強化作用をもたらす。

【００２１】指を下方に折り曲げた構え（姿勢）に取
ることができる。このような足指の姿勢をとることによ
って、指腹を段差部分に強く圧することが可能となり、
踏ん張り力が生じて歩行安定性を高める。

【００２２】指先に段差が設けられたことによる足指
の屈曲運動を通じ、あるいは歩行の過程で指腹が段差部
において強弱な力学的圧迫刺激を自発的、且つ、連続的
に受ける。このような刺激と指の屈曲運動とが相乗的に
作用して、安らぐような感覚（快適性）と全身的活性効
果をもたらすと同時に、足指筋力の強化を促進する。こ
のような足指の屈曲運動、並びに指腹への力学的刺激
は、足指の指圧マッサージと同等な作用効果である。

【００２３】静止時、歩行時いずれの場合にも、足指
には、直接体重は掛からず、足指部分への強度の圧迫に
よる鬱血痛は起こらないので、長時間着用することを原
則とする通勤・通学靴、作業靴、ウオーキング・シュー
ズなど閉鎖性履物にも該段差を設けることが出来る。

【００２４】さらに、上記の作用と効果を高めるため、
該段差端部および／あるいは該段差に無数の小突起、あ
るいは縦および／または横に線状、あるいは波状など幾
何学形状の複数の溝を形成してもよい。

【００２５】

【実施例】（実施例および比較例）以下、実施例および
比較例をもって、本発明の有効性を説明する。年齢３１
才、５２才および６０才の３名の健康な男性、および年
齢３３才と４２才の２名の健康な女性を被験者として選
び、それぞれの足形に合わせて通常デザイン（ヒール高
さ１２ｍｍ）の比較用短靴（以下、比較靴という）と本
発明に基づく指先に段差を設けた比較靴と同一スタイル
の短靴（以下、発明靴という）を調製した。いずれもア
ッパー（甲）、インソール（中底）、アウトソール（表
底）共に牛革製である。実施例のために制作した靴の段
差は６ｍｍの深さで段差端部は、アウトソールに対し約
４５度の傾斜がつけられている。

【００２６】着用は、一日、７ないし９時間とし、先
ず、比較靴を３ヶ月間薄手の靴下を介して着用、次に、
発明靴を３ヶ月間、比較靴と同じ条件で着用し、以下の
四項目について客観的評価を行った。なお、それぞれの
着用延べ時間は、４１５ないし４８０時間であった。

【００２７】評価項目と評価基準は、比較靴および発明
靴共に； （１）実験開始前後の最低血圧と最高血圧。ただし、発
明靴着用時のみ。 （２）歩行安定性；評価基準は、３ヶ月間着用の総合評
価として比較靴と比べて［Ａ］優れている、［Ｂ］よ
い、［Ｃ］変わらない，［Ｄ］劣る、とした。 （３）着用時の快適性（歩行時の疲れ難さの程度）；評
価基準は、歩行安定性と同じ。 （４）比較靴および発明靴着用後の足指の筋力；いすに
腰掛けた姿勢で、右あるいは左足の主に拇指、第二指お
よび第三指を使って、直径３０ｍｍ、重さ１１１グラム
の鋼球を掴み、指が疲れてボールを落す迄の時間（分）
で足指筋力の強弱を表した。

【００２８】本実施例の実験において使用した血圧計
は、シャープ株式会社製「デジタル自動血圧計ＭＢ−６
５６Ｓ」を用い、最高および最低血圧、共に３回の測定
を行い、その平均値をもって被験者の最高および最低血
圧とした。実験開始前後の血圧測定結果を表１に、歩行
安定性および快適性評価結果を表２に、および比較靴発
明靴着用前後における足指の筋力変化を表３に示した。

【００２９】

【表１】

【００３０】

【表２】

【００３１】

【表３】

【００３２】実験開始前後における被験者の血圧測定値
は、表１に示した通りであるが、男女とも３０歳代の血
圧がやや低めの被験者の血圧値には、有意差はなく、発
明靴の作用効果は、明らかではなかったが、他の被験者
は、発明靴の着用によって、最高血圧および最低血圧共
に低下しており、明らかに発明の効果が認められた。な
お、すべての血圧測定は、午前６時から７時の間で行っ
た。

【００３３】比較靴との対比における歩行安定性（歩き
易さ）および歩行快適性（足元が軽く、長時間着用後の
疲れが小さい）は、いずれの被験者も発明靴の有効性を
認めている。特に、長時間歩行時の疲れ難さを示す歩行
快適性は、被験者全員がＢランク以上の評価であった
（表２参照）。

【００３４】また、発明靴着用による足指の筋力強化作
用は、表３に示したように、着用前の筋力に対し、比較
靴を着用の場合には、筋力の強化作用は、認められなか
ったが、発明靴を着用したときは、明らかな筋力の強化
作用が認められた。以上、比較例および実施例をもって
示したように、本発明の作用と効果は顕著であると判断
される。

【００３５】

【図面の簡単な説明】

【図１】サンダル一例の正面図

【図２】サンダル一例の側面図

【符号の説明】

１…段差、２…段差端部、３…インソール（中底）、４
…アウトソール（表底）

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】足指５指それぞれの中足趾節間関節（足指
   の付け根）から末節骨の趾節間関節に至る何れかの箇所
   から指頭にかけて、深さ１ミリメートル（ｍｍ）から１
   ２ｍｍ、好ましくは３ｍｍから８ｍｍ、且つ、足指の付
   け根に沿った形状で段差を履物の中底（インソール）、
   あるいは敷皮に設けることによって、足指とインソール
   との間に空間を形成させ、足指の屈曲運動と該段差端部
   あるいは段差に指腹を強く圧することによって、足指筋
   力の強化作用、血行の増進、並びに踏ん張り力と末梢神
   経への刺激両者を強める効果を有することを特徴とする
   履物。
2. 【請求項２】請求項１記載の作用と効果を有し、且つ、
   足指５指それぞれの中足趾節間関節から趾節間関節に至
   る何れかの箇所から指頭にかけての部分が削除されてい
   ることを特徴とする開放性履物。
3. 【請求項３】請求項１および請求項２記載の履物におい
   て、インソール、あるいは敷皮の該段差端部あるいは／
   および段差部分に無数の小突起、あるいは縦および／ま
   たは横に線状、あるいは波状など幾何学形状の複数の溝
   を形成させ、指腹のマッサージ効果をより高めたことを
   特徴とする請求項１および請求項２記載の履物。