JP2000004883A - Il−10蛋白の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド - Google Patents

Il−10蛋白の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド

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Harutsugu Tsuchiya
晴嗣 土屋
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隆洋 平田
Katsuhiko Akiyama
勝彦 秋山
Takeshi Goto
武 後藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 IL−10蛋白を病因とする疾患に有効なア
ンチセンスオリゴヌクレオチド、及びそれを有効成分と
して含有するアトピー性皮膚炎等の疾患の治療薬を提供
する。 【解決手段】 一定の配列を有し、IL−10蛋白をコ
ードする染色体DNAおよび/またはmRNAと特異的
にハイブリダイズし、IL−10蛋白の発現を阻害する
ことを特徴とするアンチセンスオリゴヌクレオチド、及
びそれを有効成分として含有するアトピー性皮膚炎、ア
レルギー性皮膚疾患、SLE、EBウイルス感染症また
はリンパ腫用治療薬。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、IL−10(ヒト
インターロイキン−10)蛋白をコードする染色体DN
Aおよび/またはmRNAと特異的にハイブリダイズし
て、IL−10蛋白の発現を阻害するアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドと、それを有効成分として含有するアト
ピー性皮膚炎等の疾患の治療薬に関する。
【0002】
【従来の技術】アトピー性皮膚炎は、増悪、寛解を繰り
返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患である。その
罹病率は、全人口の3〜10%を占めると考えられてい
る(上田宏:皮膚科MOOKアトピー性皮膚炎、金原出
版、12−18、1985)。アトピー性皮膚炎の発症
メカニズムは未だ明らかにされていないが、少なくとも
IgEを介したアレルギー反応のみではなく、皮膚の易
刺激性という因子もその病態形成に大きく関与すると言
われている。
【0003】アトピー性皮膚炎の病巣部では、肥満細胞
や好酸球の脱顆粒、CD4陽性T細胞を主とした細胞浸
潤が認められる。皮膚に侵入したアレルゲンは、肥満細
胞上のIgEを架橋し、化学伝達物質やサイトカインを
遊離させ、血管透過性の亢進や白血球の遊走を促す。ま
た、アレルゲンは、ランゲルハンス細胞などに捕捉さ
れ、T細胞に抗原提示される。活性化されたT細胞は、
様々なサイトカインを産生し炎症を助長している(Co
oper,K.D.,J.Invest.Dermato
l.,102,128,1994)。
【0004】アトピー性皮膚炎に対する治療は、ステロ
イド薬によるものと非ステロイド薬によるものとがあ
り、ステロイド薬は薬物治療の中心となっている。治療
は長期に渡ることが多く、薬物の副作用が大きな問題と
なっている。ステロイド薬を経口投与した場合、全身性
の副作用である副腎機能抑制、骨髄抑制、日和見感染症
等に注意する必要がある。また、外用ステロイド薬の副
作用としては、毛細血管拡張、ステロイド潮紅、皮膚萎
縮等のいわゆるステロイド皮膚や、カンジダ、白癬など
の皮膚真菌症、癰(よう)等の化膿性皮膚炎、単純性疱
疹等のウイルス性疾患などの皮膚感染症が誘発、増悪す
ることがある。また、投与の漸減もリバウンドに注意し
て慎重に行う必要がある。このような副作用の問題か
ら、現在の治療法に代わる新しい治療法の開発が強く望
まれている。
【0005】一方、アトピー性皮膚炎の詳細な発症メカ
ニズムが近年の研究により明らかになりつつある。Oh
menらは、アトピー性皮膚炎患者の炎症組織におい
て、サイトカインであるインターロイキン−10(IL
−10)蛋白が過剰発現しており、これがアトピー性皮
膚炎の発症に関与すること、アトピー性皮膚炎において
は単球、マクロファージ系の細胞よりIL−10蛋白が
分泌されていること、及びIL−10蛋白の過剰発現を
抑制することができればアトピー性皮膚炎の治療が可能
であることを報告している(J.D.Ohmen,et
al.,J.Immunol.,154,1956,19
95)。
【0006】IL−10蛋白は、1989年にFior
entinoらにより、Th2細胞から産生され、Th
1細胞からのサイトカイン産生を抑制する因子として同
定されたサイトカインであり(Fiorentino
D.,et al.,J.Exp.Med.,170,208
1,1989)、その後、マウスではTh2細胞、CD
5陽性B細胞、マクロファージ、ケラチノサイト、肥満
細胞より産生され、ヒトではTh0細胞、 Th2細
胞、活性化T細胞、単球、マクロファージ、活性化B細
胞等、多種の細胞より産生されることが明らかにされた
(IshidaH.,Jpn.J.Clin.Path
ol.,42,843,1994)。
【0007】上記のようにアトピー性皮膚炎の発症メカ
ニズムの解析が進行したことに伴い、これらの解析結果
を疾患治療に応用しようとする試みもなされるようにな
ってきた。その内容は、疾患の原因と考えられるIL−
10蛋白産生の抑制、あるいはIL−10蛋白の機能を
阻害して病状の改善を行おうとするものであり、例え
ば、抗IL−10蛋白中和抗体での治療の検討がなされ
ている(IshidaH.,et al,J.Exp.Me
d.,179,305,1994)。
【0008】また、WO97/31532には、AID
S関連B細胞リンパ腫や慢性リンパ性白血病の治療を目
的としたIL−10アンチセンス技術が開示されている
が、ヒトのIL−10蛋白のmRNA配列の内、315
−342に対するアンチセンスが、上記患者のB細胞か
ら過剰に産生されるIL−10蛋白のオートクライン作
用に対して抑制効果があることを開示しているのみであ
り、その他の配列に対しては全く記載されていない。
【0009】以上のような状況の下、アトピー性皮膚炎
に対し効果があり、しかも副作用が少ない医薬品が望ま
れており、特にアトピー性皮膚炎は単球またはマクロフ
ァージから過剰に産生されるIL−10蛋白が病因と考
えられることから、アトピー性皮膚炎治療に対する新規
な抗IL−10製剤の開発が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は、IL−10蛋白の産生を抑制し、IL−10蛋
白を病因とする疾患、例えばアトピー性皮膚炎、アレル
ギー性皮膚疾患、全身性エリトマトーデス(SLE)、
エプスタイン−バー(EB)ウイルス感染症、リンパ腫
等を治療し得るアンチセンスオリゴヌクレオチドと、そ
のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその誘導体を
有効成分として含有する治療薬を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、単球また
はマクロファージから産生されるIL−10蛋白が原因
となる難治性の疾患に対して有効な治療薬を探索した結
果、単球またはマクロファージからのIL−10蛋白の
産生を強く抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド配
列を発見し、本発明を完成させた。なお、このアンチセ
ンスオリゴヌクレオチド配列は、前述のWO97/31
532に開示されているmRNA配列の315−342
に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドとは全く異な
る配列である。
【0012】すなわち、本発明は、ヒトインターロイキ
ン−10(IL−10)蛋白をコードする染色体DNA
および/またはmRNAと特異的にハイブリダイズし、
IL−10蛋白の発現を阻害する、下記(A)〜(G)
の配列のいずれか1以上を含むことを特徴とするアンチ
センスオリゴヌクレオチド (A)配列番号1に記載の配列 (B)配列番号2に記載の配列 (C)配列番号3に記載の配列 (D)配列番号4に記載の配列 (E)配列番号5に記載の配列 (F)配列番号6に記載の配列 (G)配列番号7に記載の配列 と、そのアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはその誘
導体を有効成分として含有するアトピー性皮膚炎、アレ
ルギー性皮膚疾患、SLE、EBウイルス感染症または
リンパ腫の治療薬である。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明
する。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、配
列表に示す配列番号1〜7の配列のうち1または2以上
の配列を含むものである。配列番号1に記載のアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドは、ヒトIL−10mRNAの
176〜193の塩基配列に対して相補的な塩基配列で
あり、配列番号2に記載のアンチセンスオリゴヌクレオ
チドは、ヒトIL−10mRNAの181〜198の塩
基配列に対して相補的な塩基配列であり、配列番号3に
記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトIL−
10mRNAの367〜384の塩基配列に対して相補
的な塩基配列であり、配列番号4に記載のアンチセンス
オリゴヌクレオチドは、ヒトIL−10mRNAの63
7〜654の塩基配列に対して相補的な塩基配列であ
り、配列番号5に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチ
ドは、ヒトIL−10mRNAの915〜932の塩基
配列に対して相補的な塩基配列であり、配列番号6に記
載のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ヒトIL−1
0mRNAの1246〜1263の塩基配列に対して相
補的な塩基配列であり、配列番号7に記載のアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、ヒトIL−10mRNAの1
249〜1266の塩基配列に対して相補的な塩基配列
である。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、
配列番号1〜7の塩基配列の1のみを含むものであって
も、2以上を組み合わせて含むものであってもよい。
【0014】本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、マクロファージにダメージを与えることがなく、マ
クロファージが産生するIL−10の発現を効果的に抑
制するが、この抑制効果は、本発明の配列番号1から7
の中でも、配列番号1、3、4、5及び6が優れてお
り、配列番号3及び4が特に優れている。
【0015】なお、配列番号1〜7に記載のアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、5′側および/または3′側
の塩基を1個または2個以上短くしたアンチセンスオリ
ゴヌクレオチドであっても、IL−10蛋白の産生を抑
制する活性は消失しないが、ヒトIL−10mRNAに
対する特異性を維持し、他の遺伝子に影響を与えないよ
うにするためには、配列番号1〜7に記載のアンチセン
スオリゴヌクレオチドを最小単位として使用することが
好ましい。
【0016】また、配列番号1〜7に記載のアンチセン
スオリゴヌクレオチドの5′側および/または3′側の
塩基を1個または2個以上長くしたアンチセンスオリゴ
ヌクレオチドであっても、IL−10蛋白の産生を抑制
する活性は消失しないが、アンチセンスオリゴヌクレオ
チドを化学的に合成する際に、ヌクレオチドの鎖長が長
くなるほど合成コストが高くなることから、配列番号1
〜7に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの鎖長で
使用することが好ましい。
【0017】本発明のアンチセンスオリゴヌクオレチド
の合成方法としては、特に限定されず、通常のオリゴヌ
クレオチド合成機を用いたホスホロアミダイト法、ホス
ホロチオエート法、ホスホトリエステル法等を用いるこ
とができる。
【0018】また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレ
オチドの安定性や細胞に対する親和性を高めるために、
その活性を著しく低下させない範囲で、リン酸エステル
基またはリボース部分の水酸基を他の安定な基に置換し
た誘導体として用いることも可能である。このようなア
ンチセンスオリゴヌクレオチドの誘導体の具体例として
は、リン酸エステル基をチオリン酸エステル基やメチル
ホスホネート基等で置換したもの、リボース部分の水酸
基をメトキシやアリロキシ等のアルコキシ基、アミノ
基、またはフッ素原子等で置換したもの等が挙げられる
が、これらの中でも、リン酸エステル基をチオリン酸エ
ステル基に置換したものがIL−10蛋白産生抑制効果
の点から好ましい。
【0019】本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、DNA型あるいはRNA型のいずれであってもIL
−10蛋白産生抑制効果が期待できるが、生体に投与し
た際の安定性がより高いという理由でDNA型の方が好
ましい。
【0020】本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、ヒトIL−10蛋白をコードするmRNAに対して
相補的且つ特異的な配列を有し、mRNAまたはDNA
の機能、すなわち、蛋白質への翻訳、細胞質内への輸
送、またはその総体的生物学的機能に必要な他の活性の
うちのいずれかを阻害することが可能である。さらに、
ステロイド剤使用の際に見られるような重篤な副作用が
なく、安全かつ効果的に治療を行うことが可能である。
【0021】本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、単球またはマクロファージのIL−10の発現を抑
制するものであるため、単球やマクロファージのIL−
10蛋白過剰発現が原因の一つと考えられている疾患、
例えば、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚疾患、S
LE、EBウイルス感染症、リンパ腫等を有効に治療す
ることができる。
【0022】発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド
は、単独でも投与可能であるが、薬学的に許容され得る
物質と混合し、製剤として投与することも可能である。
例えば、注射剤とする場合には、本発明のアンチセンス
オリゴヌクレオチドを水、生理食塩水またはブドウ糖溶
液等に溶解させて調製することができ、必要に応じて緩
衝剤、保存剤あるいは安定化剤等を含有させてもよい。
【0023】軟膏剤とする場合には、本発明のアンチセ
ンスオリゴヌクレオチドを、油脂性、乳剤性または水溶
性基剤に溶解または分散させて調製することができ、必
要に応じて安定化剤、pH調節剤、可塑剤、乳化剤、界
面活性剤、可溶化剤、湿潤剤、保存剤、防腐剤、溶剤ま
たは吸収促進剤等を含有させてもよい。
【0024】クリーム剤とする場合には、本発明のアン
チセンスオリゴヌクレオチドを、水相中に溶解または分
散させ、炭化水素や高級アルコール等の油相成分と乳化
することにより調製することができ、必要に応じて安定
化剤、pH調節剤、可塑剤、乳化剤、界面活性剤、可溶
化剤、湿潤剤、保存剤、防腐剤、溶剤または吸収促進剤
等を含有させてもよい。
【0025】ローション剤またはリニメント剤とする場
合には、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、
溶剤中に溶解または分散させて調製することができ、必
要に応じて安定化剤、pH調節剤、乳化剤、懸濁化剤、
界面活性剤、可溶化剤、湿潤剤、保存剤、防腐剤または
吸収促進剤等を含有させてもよい。
【0026】さらに、経皮または経粘膜に適用するイオ
ントフォレーシス製剤とする場合には、本発明のアンチ
センスオリゴヌクレオチドをデバイス中の導電性ゲルや
薬物貯留槽等に含有させて調製することができ、必要に
応じて安定化剤、pH調節剤、界面活性剤、可溶化剤、
湿潤剤、保存剤、防腐剤または吸収促進剤等を含有させ
てもよい。なお、これらの製剤は、薬理学的に許容でき
る治療上有用な他の成分を含有するものであってもよ
い。
【0027】また、さらに効率的な投与方法を望む場合
には、薬学的に許容される担体と組み合わせた形で投与
することも可能である。担体としては、例えば、リポソ
ーム、脂肪乳剤、ミセル、等の脂質を主成分とする担
体、ポリリジンやポリオルニチン等のペプチド性担体、
ポリエチレンイミン、ポリ乳酸/グリコール酸共重合体
等の合成高分子担体等が挙げられるが、これらの中で
も、カチオン性の電荷を有する担体が好ましい。また、
細胞への取り込みの促進や標的とする細胞への指向性を
高める目的で上記担体を修飾したものも使用可能であ
る。
【0028】また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレ
オチド配列を発現させるようにデザインされたプラスミ
ドやウイルスベクターは遺伝子治療用のベクターとして
有用である。
【0029】本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド
またはアンチセンスオリゴヌクレオチドと担体との混和
物は、経口投与、静脈内投与、経皮的投与、局所投与、
腹腔内投与等、投与経路に制限はないが、各疾患に対し
て有効性がより高い投与方法を選択することが好まし
い。例えば、アトピー性皮膚炎に対する治療の際には、
経皮的な投与、例えば、イオントフォレシスによる投
与、クリーム剤や軟膏等の外用剤としての投与が好まし
い。また、SLEに対しては静脈内投与が好ましい。投
与量は、各疾患の症状の度合いや投与経路に応じて増減
させることが好ましいが、目安として、静脈内投与では
体重当たり1mg/kgから1g/kg、好ましくは5
mg/kgから500mg/kg、より好ましくは10
mg/kgから300mg/kgである。
【0030】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説
明するが、これらの実施例は本発明の理解を助けるため
のものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例において、配列番号9は、ヒトIL−10蛋白の
cDNA塩基配列(DNA Data Bank of J
apan:DDBJ,Accession No.M57
627)を示す。また、配列番号1〜7はヒトIL−1
0遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチド鎖であり、
配列番号1は配列番号9の+176〜+193に、配列
番号2は配列番号9の+181〜+198に、配列番号
3は配列番号9の+367〜+384に、配列番号4は
配列番号9の+637〜+654に、配列番号5は配列
番号9の+915〜+932に、配列番号6は配列番号
9の+1246〜+1263に、配列番号7は配列番号
9の+1249〜+1266に、それぞれ対応する。さ
らに、配列番号8はマウスIL−10蛋白遺伝子のアン
チセンスオリゴヌクレオチド鎖の配列であり、配列番号
9の+1370から+1387の中で、6つのミスマッ
チ配列を持つ陰性対照群である(比較例1)。また、実
施例に用いたアンチセンスオリゴヌクレオチドはいずれ
もホスホロチオエート型であり、ファルマシアバイオテ
ク社により受託合成したものを用いた。
【0031】実施例1 アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成及び精製 配列表の配列番号1〜8のアンチセンスオリゴヌクレオ
チドを、DNA合成機Oligo PilotII(ファ
ルマシアバイオテク社製)を用いて合成した。ホスホロ
チオエート法に基づき合成し、FPLC direct
or system(ファルマシアバイオテク社製)を
用い、イオン交換FPLC法に基づき精製した。
【0032】試験例1(ヒトIL−10蛋白発現抑制効
果試験) (A)培養細胞へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの
導入 配列番号1〜8のアンチセンスオリゴヌクレオチドのヒ
トIL−10蛋白発現抑制効果を、培養細胞系において
検討した。細胞には、ヒト単球マクロファージ系のU9
37細胞(大日本製薬製)を、37℃、5%CO2の条
件下で、10%牛胎児血清(FCS:三光純薬製)及び
抗生物質(100unit/mlのペニシリン(GIB
CO社製)と100μg/mlのストレプトマイシン
(GIBCO社製))を添加したRPMI−1640培
地(株式会社日研生物医学研究所製)(以下、FCS含
有培地と言う)中で維持した。このU937細胞を96
ウェルプレートに1×10個/ウェルとなるように播
種した後、ホルボールミリステートアセテート(PM
A:和光純薬製)を10ng/mlとなるように添加
し、12時間培養した(分化誘導)。培養終了後、細胞
をリン酸緩衝溶液(PBS)で洗浄し、FCS含有培地
でさらに48時間培養した後(休薬期間)、細胞をPB
Sで洗浄し、各アンチセンスオリゴヌクレオチドを20
μMとなるように添加し、4時間培養した。培養終了
後、リポ多糖(LPS:和光純薬社製)FCS含有培地
溶液(LPS最終濃度100μg/ml)を添加し、さ
らに24時間培養を続けた。
【0033】(B)IL−10蛋白のELISAによる
検出 次いで、上記(A)において得られた培養液から採取し
た培養上清中のヒトIL−10蛋白を、ELISAによ
り定量した。50μlの抗IL−10モノクローナル抗
体(1μg/ml 0.1M Na2HPO4溶液、pH9:
Pharmingen社製)を、96穴プレート(su
mitomoH−type)に添加し、4℃にて終夜放
置した後、200μlのPBST(0.05%(V/
V)Tween−20を含むPBSで4回洗浄した。非
特異的吸着を防ぐために、Blocking buff
er(1%BSAを含むPBS)を各wellに200
μlずつ添加し、室温にて30分放置した後、200μ
lのPBSTで3回洗浄した。次に、100μlのBl
ocking buffer/Tween(0.05%
(V/V)Tween−20を含むBlocking
buffer)で希釈した上記(A)の培養液から採取
した培養上清及びIL−10蛋白スタンダードをwel
lに添加し、室温にて4時間放置した後、200μlの
PBSTで4回洗浄した。Blocking buff
er/Tween溶液により0.5μg/mlに調整し
たビオチン標識抗IL−10モノクローナル抗体(Ph
armingen社製)をwellに100μl添加
し、室温にて1時間放置した後、200μlのPBST
で6回洗浄した。さらに、Blocking buff
er/Tween溶液で0.5μg/mlに調整したア
ビジン−パーオキシダーゼ(Pharmingen社
製)をwellに100μl添加し、室温にて30分放
置した後、200μlのPBSTで8回洗浄した。50
μlのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベン
ジジン)substrate(GIBCO社製)をwe
llに添加し、室温にて30分放置した後、反応停止剤
として、50μlの1M リン酸を添加し、450nm
での吸光度を測定した。結果を図1に示す。
【0034】図1から明らかなように、本発明のアンチ
センスオリゴヌクレオチド(配列番号1〜7)のIL−
10蛋白の発現抑制効果は、非添加群や比較例1に比べ
て、非常に大きいことが判明した。なお、本発明のアン
チセンスオリゴヌクレオチドの中では、配列番号3>配
列番号4>配列番号6>配列番号1>配列番号5>配列
番号2>配列番号7の順で、IL−10蛋白の発現抑制
効果が大きいことが判明した。なお、顕微鏡による観察
では細胞毒性は認められなかった。
【0035】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明のアンチセン
スオリゴヌクレオチドは、IL−10蛋白の発現を有効
に抑制することができるため、IL−10蛋白が原因と
なる難治性の疾患、例えばアトピー性皮膚炎、アレルギ
ー性皮膚疾患、SLE、EBウイルス感染症、リンパ腫
等に対して有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドのI
L−10蛋白の発現抑制効果を示すグラフである。
【配列表】配列番号:1 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列の特徴:配列番号9の+176から+193に対応 配列 AGAAAGTCTTCACTCTGC 配列番号:2 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列の特徴:配列番号9の+181から+198に対応 配列 TTGAAAGAAAGTCTTCAC 配列番号:3 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列の特徴:配列番号9の+367から+384に対応 配列 GGTCTTCAGGTTCTCCCC 配列番号:4 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列の特徴:配列番号9の+637から+654に対応 配列 CTGGGTCAGCTATCCCAG 配列番号:5 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列の特徴:配列番号9の+915から+932に対応 配列 GCTTGGAATGGAAGCTTC 配列番号:6 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列の特徴:配列番号9の+1246から+1263に対応 配列 GGCTGGTTAGGAACTCCT 配列番号:7 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列の特徴:配列番号9の+1249から+1266に対応 配列 CCAGGCTGGTTAGGAACT 配列番号:8 配列の長さ:18 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:YES 配列の特徴:マウスIL-10蛋白遺伝子 配列 AGGTCCTGGAGTCCAGCA 配列番号:9 配列の長さ:1601 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA アンチセンス:No 配列の特徴:ヒトIL-10蛋白のcDNA 配列 AAACCACAAG ACAGACTTGC AAAAGAAGGC ATGCACAGCT CAGCACTGCT CTGTTGCCTG 60 GTCCTCCTGA CTGGGGTGAG GGCCAGCCCA GGCCAGGGCA CCCAGTCTGA GAACAGCTGC 120 ACCCACTTCC CAGGCAACCT GCCTAACATG CTTCGAGATC TCCGAGATGC CTTCAGCAGA 180 GTGAAGACTT TCTTTCAAAT GAAGGATCAG CTGGACAACT TGTTGTTAAA GGAGTCCTTG 240 CTGGAGGACT TTAAGGGTTA CCTGGGTTGC CAAGCCTTGT CTGAGATGAT CCAGTTTTAC 300 CTGGAGGAGG TGATGCCCCA AGCTGAGAAC CAAGACCCAG ACATCAAGGC GCATGTGAAC 360 TCCCTGGGGG AGAACCTGAA GACCCTCAGG CTGAGGCTAC GGCGCTGTCA TCGATTTCTT 420 CCCTGTGAAA ACAAGAGCAA GGCCGTGGAG CAGGTGAAGA ATGCCTTTAA TAAGCTCCAA 480 GAGAAAGGCA TCTACAAAGC CATGAGTGAG TTTGACATCT TCATCAACTA CATAGAAGCC 540 TACATGACAA TGAAGATACG AAACTGAGAC ATCAGGGTGG CGACTCTATA GACTCTAGGA 600 CATAAATTAG AGGTCTCCAA AATCGGATCT GGGGCTCTGG GATAGCTGAC CCAGCCCCTT 660 GAGAAACCTT ATTGTACCTC TCTTATAGAA TATTTATTAC CTCTGATACC TCAACCCCCA 720 TTTCTATTTA TTTACTGAGC TTCTCTGTGA ACGATTTAGA AAGAAGCCCA ATATTATAAT 780 TTTTTTCAAT ATTTATTATT TTCACCTGTT TTTAAGCTGT TTCCATAGGG TGACACACTA 840 TGGTATTTGA GTGTTTTAAG ATAAATTATA AGTTACATAA GGGAGGAAAA AAAATGTTCT 900 TTGGGGAGCC AACAGAAGCT TCCATTCCAA GCCTGACCAC GCTTTCTAGC TGTTGAGCTG 960 TTTTCCCTGA CCTCCCTCTA ATTTATCTTG TCTCTGGGCT TGGGGCTTCC TAACTGCTAC 1020 AAATACTCTT AGGAAGAGAA ACCAGGGAGC CCCTTTGATG ATTAATTCAC CTTCCAGTGT 1080 CTCGGAGGGA TTCCCCTAAC CTCATTCCCC AACCACTTCA TTCTTGAAAG CTGTGGCCAG 1140 CTTGTTATTT ATAACAACCT AAATTTGGTT CTAGGCCGGG CGCGGTGGCT CACGCCTGTA 1200 ATCCCAGCAC TTTGGGAGGC TGAGGCGGGT GGATCACTTG AGGTCAGGAG TTCCTAACCA 1260 GCCTGGTCAA CATGGTGAAA CCCCGTCTCT ACTAAAAATA CAAAAATTAG CCGGGCATGG 1320 TGGCGCGCAC CTGTAATCCC AGCTACTTGG GAGGCTGAGG CAAGAGAATT GCTTGAACCC 1380 AGGAGATGGA AGTTGCAGTG AGCTGATATC ATGCCCCTGT ACTCCAGCCT GGGTGACAGA 1440 GCAAGACTCT GTCTCAAAAA AATAAAAATA AAAATAAATT TGGTTCTAAT AGAACTCAGT 1500 TTTAACTAGA ATTTATTCAA TTCCTCTGGG AATGTTACAT TGTTTGTCTG TCTTCATAGC 1560 AGATTTTAAT TTTGAATAAA TAAATGTATC TTATTCACAT C 1601
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12Q 1/68 C12Q 1/68 A //(C12N 15/09 ZNA C12R 1:91) (72)発明者 秋山 勝彦 茨城県つくば市観音台1丁目25番11号 久 光製薬株式会社筑波研究所内 (72)発明者 後藤 武 茨城県つくば市観音台1丁目25番11号 久 光製薬株式会社筑波研究所内 Fターム(参考) 4B024 AA01 CA03 CA05 CA12 EA02 EA04 HA17 4B063 QA20 QQ43 QQ53 QQ58 QR32 QR33 QR59 QR90 QS05 4C084 AA13 NA06 NA14 ZA892 ZB072 ZB132 ZB262 ZB272 ZB332 4C086 AA01 AA02 AA03 EA16 NA06 NA14 ZB07 ZB13 ZB26 ZB27 ZB33

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒトインターロイキン−10(IL−1
    0)蛋白をコードする染色体DNAおよび/またはmR
    NAと特異的にハイブリダイズし、IL−10蛋白の発
    現を阻害する、下記(A)〜(G)のいずれか1以上の
    配列を含むことを特徴とするアンチセンスオリゴヌクレ
    オチド。 (A)配列番号1に記載の配列 (B)配列番号2に記載の配列 (C)配列番号3に記載の配列 (D)配列番号4に記載の配列 (E)配列番号5に記載の配列 (F)配列番号6に記載の配列 (G)配列番号7に記載の配列
  2. 【請求項2】 請求項1記載のアンチセンスオリゴヌク
    レオチドまたはその誘導体を有効成分として含有するア
    トピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚疾患、全身性エリテ
    マトーデス、エプスタイン−バーウイルス感染症または
    リンパ腫の治療剤。
JP10177188A 1998-06-24 1998-06-24 Il−10蛋白の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド Pending JP2000004883A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006505280A (ja) * 2002-11-07 2006-02-16 チャン・ルン−ジ 改変樹状細胞

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