JP2000002470A - シール機構及び該シール機構を備えた冷凍機並びにターボ圧縮機 - Google Patents

シール機構及び該シール機構を備えた冷凍機並びにターボ圧縮機

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JP2000002470A JP16845698A JP16845698A JP2000002470A JP 2000002470 A JP2000002470 A JP 2000002470A JP 16845698 A JP16845698 A JP 16845698A JP 16845698 A JP16845698 A JP 16845698A JP 2000002470 A JP2000002470 A JP 2000002470A
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cylinder
sealing
clearance seal
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    • F25REFRIGERATION OR COOLING; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS; MANUFACTURE OR STORAGE OF ICE; LIQUEFACTION SOLIDIFICATION OF GASES
    • F25BREFRIGERATION MACHINES, PLANTS OR SYSTEMS; COMBINED HEATING AND REFRIGERATION SYSTEMS; HEAT PUMP SYSTEMS
    • F25B2309/00Gas cycle refrigeration machines
    • F25B2309/001Gas cycle refrigeration machines with a linear configuration or a linear motor

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  • Sealing Using Fluids, Sealing Without Contact, And Removal Of Oil (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 非接触形のシール機構において、初期のシー
ル性能を向上させるとともに、そのシール性能を長期間
維持する。 【解決手段】 ピストン(11)の外周面にクリアランスシ
ール(12)を設ける。クリアランスシール(12)の両側に
は、所定の初期クリアランスs1を存してシリンダ(6)の
内壁面と対向し、断面形状が平坦な平坦部(55)が形成さ
れている。両平坦部(55,55)の間には、断面形状が内側
に向かって3次曲線状になった凹部(57)が形成されてい
る。凹部(57)は、クリアランスシール(12)が摩耗してク
リアランスが増加すると、平坦部(55)の面積増加に伴っ
てシール長さが増加することによって、流体の漏れ量が
常に一定になるように形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シール機構に係
り、特に、非接触形のシール機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平10−1226
80号公報に開示された冷凍機械、流体機械等におい
て、様々なシール機構が用いられている。それらシール
機構のうち、可動部と静止部との間を封止するシール機
構として、非接触形のシール機構が知られている。
【0003】図11は、非接触形のシール機構としてク
リアランスシール(301,302)を用いた膨張機(300)の一例
を示す。膨張機(300)のシリンダ(303)内には、フリーデ
ィスプレーサ(306)が挿入されている。このフリーディ
スプレーサ(306)は、シリンダ(303)の内部空間を膨張空
間(304)と作動空間(305)とに区画している。フリーディ
スプレーサ(306)の内部には蓄冷器(307)が設けられ、こ
の蓄冷器(307)は膨張空間(304)及び作動空間(305)にそ
れぞれ連通している。作動空間(305)には、フリーディ
スプレーサ(306)を往復移動自在に弾性支持するコイル
ばね(308)が配設されている。作動空間(305)は、連結管
(309)を介して、図示しない圧縮機に接続されている。
そして、上記圧縮機から周期的に変動するガス圧が供給
され、フリーディスプレーサ(306)がシリンダ(303)内で
往復移動を行う。その結果、膨張空間(304)において作
動流体が膨張し、シリンダ(303)の先端に固定されたヒ
ートステーション(310)が極低温に冷却される。
【0004】フリーディスプレーサ(306)の基端部(311)
及び先端部(312)には、それぞれリング状の第1クリア
ランスシール(301)及び第2クリアランスシール(302)が
嵌め込まれている。各クリアランスシール(301),(302)
のシール面は、所定間隔の隙間、すなわち所定のクリア
ランスを存してシリンダ(303)の内面と対向している。
各クリアランスシール(301,302)のシール面は、凹凸の
ない滑らかな円周面に形成されている。
【0005】各クリアランスシール(301,302)のシール
面の軸方向長さ及びクリアランス長さは、フリーディス
プレーサ(306)の往復移動の抵抗及び作動流体の漏れ量
の双方を考慮したうえで設定されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、クリアラン
スシール(301),(302)は、シリンダ(303)と直接接触する
こと等により、そのシール面が徐々に摩耗していく。そ
のため、長期間使用した後は、クリアランス長さは初期
のクリアランス長さに比べて長くなる。その結果、摩耗
前には十分なシール性能を発揮するクリアランスシール
であっても、長期間使用するとシール性能を維持するこ
とができなくなり、流体の漏れ量が増大する。
【0007】そこで、長期間の使用後においても十分な
シール性能を発揮するために、シール長さを長めに設定
することも考えられる。図12は、上記膨張機(300)に
おいて、第1クリアランスシール(301)の軸方向長さ、
すなわちシール長さを長くした形態を示す。しかし、ク
リアランスシール(301)のシール長さを長くすると、フ
リーディスプレーサ(306)の抵抗が大きくなり、円滑な
往復移動が困難となる。従って、摩耗後に十分なシール
性能を発揮するようにクリアランスシール(301)の仕様
を選定すると、膨張機の初期性能が低下することとなっ
た。
【0008】図13に、従来のクリアランスシールを備
えたスターリング冷凍機の冷凍能力の変化を示す。横軸
はクリアランス長さ(μm)を示し、縦軸は冷凍能力
(基準能力に対する割合)を示す。クリアランスシール
は時間の経過とともに摩耗していくので、時間の経過と
ともにクリアランス長さは増大していく。従って、横軸
は時間の経過を示しているとも言える。図示の鎖線はシ
ール長さが30mmのクリアランスシールを示し、一点
鎖線はシール長さが12mmのクリアランスシールを示
している。図13から明らかなように、シール長さが1
2mmのクリアランスシールは、初期のディスプレーサ
の抵抗が小さいことから初期性能は高いが、クリアラン
ス長さの増加とともに、その性能が急激に低下してい
く。これに対し、シール長さが30mmのクリアランス
シールは、クリアランスの増加による性能低下が比較的
少ないが、初期のディスプレーサの抵抗が大きいことか
ら、初期性能が低い。
【0009】このように、従来のクリアランスシールで
は、ディスプレーサの往復移動の抵抗を減らすべくクリ
アランス長さを十分に確保すると、摩耗後にシール性能
が著しく低下していた。一方、摩耗後においても十分な
シール性能を確保すべくクリアランス長さを短くし、ま
たはシール長さを長くすると、ディスプレーサの往復移
動の抵抗が大きくなり、初期性能が低下していた。その
ため、初期性能を高くするとともにその初期性能を長期
間維持することは、困難であると考えられていた。
【0010】本発明は、かかる点に鑑みてなされたもの
であり、その目的とするところは、非接触形のシール機
構において、初期のシール性能を向上させるとともに、
そのシール性能を長期間維持することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、初期状態ではシール長さが短く、摩耗後
はシール長さが長くなるように、クリアランスシールに
溝を設けることとした。
【0012】具体的には、第1の発明が講じた手段は、
第1対向面を有する第1部材(11,102)と、上記第1対向
面と間隙を存して対向する第2対向面を有する第2部材
(6,72)と、上記第2対向面に所定の間隔(s1)を存して対
向するシール面を有するように、上記第1部材(11,102)
の上記第1対向面に設けられたクリアランスシール(12,
104)とを備え、上記第1部材(11,102)と上記第2部材
(6,72)とが相対運動を行う一方、上記第1対向面と上記
第2対向面との間をシールするシール機構において、上
記クリアランスシール(12,104)の上記シール面には、上
記第2対向面に所定の初期クリアランスを存して対向す
る主シール面(55,105)と、上記第2対向面に上記初期ク
リアランスよりも大きなクリアランスを存して対向する
副シール面(57,60,106)とが形成されていることとした
ものである。
【0013】上記事項により、相対運動を行う第1部材
の第1対向面と第2部材の第2対向面との間の隙間が、
クリアランスシールによってシールされる。クリアラン
スシールが摩耗する前の初期状態では、主に主シール面
においてシール作用が行われる。一方、長期間使用する
と主シール面が徐々に摩耗し、副シール面の一部もシー
ル作用を行うようになる。そのため、クリアランスシー
ルが摩耗すると、クリアランス長さは増加するが、副シ
ール面の一部がシール作用を行うようになることによ
り、シール長さが増加する。なお、ここでシール長さと
は、シール面において実際にシール作用に貢献する部分
の長さを意味する。従って、クリアランス長さの増加に
よる漏れ量の増大分は、クリアランス長さの増加による
漏れ量の減少分と相殺され、結果的に流体の漏れ量は一
定となる。このようにして、初期のシール性能が長期間
にわたって維持されることになる。
【0014】第2の発明が講じた手段は、上記第1の発
明において、クリアランスシール(12,104)のシール面に
は、溝(57,60,106)が形成され、上記クリアランスシー
ル(12,104)の主シール面は、非溝部(55,105)によって構
成される一方、上記クリアランスシール(12,104)の副シ
ール面は、上記溝(57,60,106)によって構成されている
こととしたものである。
【0015】上記事項により、主シール面及び副シール
面が容易に製造されることになる。
【0016】第3の発明が講じた手段は、上記第2の発
明において、クリアランスシール(12,104)のシール面の
溝(57,60,106)は、流体の漏れ量が上記シール面が摩耗
する前と所定量摩耗した後とでほぼ同量になるように形
成されていることとしたものである。
【0017】上記事項により、クリアランスシールの摩
耗前と摩耗後において、流体の漏れ量がほぼ同量になる
ので、初期のシール性能が確実に維持されることにな
る。
【0018】第4の発明が講じた手段は、上記第1の発
明において、クリアランスシール(12,104)のシール面の
断面形状は、第2部材(6,72)の第2対向面と平行な平坦
部(55)と、上記平坦部(55)から第1部材(11,102)の第1
対向面側に傾斜する傾斜部(61)とから成り、上記クリア
ランスシール(12,104)の主シール面は、上記平坦部(55)
から構成される一方、上記クリアランスシール(12,104)
の副シール面は、上記傾斜部(61)から構成されているこ
ととしたものである。
【0019】上記事項により、主シール面及び副シール
面が容易に製造されることになる。
【0020】第5の発明が講じた手段は、上記第4の発
明において、クリアランスシール(12,104)のシール面の
傾斜部(61)は、流体の漏れ量が上記シール面が摩耗する
前と所定量摩耗した後とでほぼ同量になるように形成さ
れていることとしたものである。
【0021】上記事項により、クリアランスシールの摩
耗前と摩耗後において、流体の漏れ量がほぼ同量になる
ので、初期のシール性能が確実に維持されることにな
る。
【0022】第6の発明が講じた手段は、上記第1〜5
のいずれかの発明において、クリアランスシール(12,10
4)は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリ
アミドイミドまたはポリアセタールのいずれか一つまた
は二つ以上を母材とし、カーボン、カーボン繊維、ブロ
ンズまたは二硫化モリブデンのいずれか一つまたは二つ
以上を充填材とする樹脂材料によって構成されているこ
ととしたものである。
【0023】上記事項により、特に好適な材料によって
クリアランスシールが構成されることになる。
【0024】第7の発明が講じた手段は、シリンダ(6)
内においてピストン(11)が所定周期で往復移動すること
によって作動ガスを圧縮し、上記シリンダ(6)内におい
て所定周期のガス圧を生成する圧縮機(1)と、上記ガス
圧が供給されるように上記圧縮機(1)の上記シリンダ(6)
に連結され、上記ガス圧によってディスプレーサ(37)が
シリンダ(31)内を往復移動し、膨張空間(35)において作
動ガスが膨張することによってヒートステーション(32)
に寒冷を発生させる膨張機(2)とを備えた冷凍機におい
て、上記圧縮機(1)の上記ピストン(11)及び上記シリン
ダ(6)をそれぞれ第1部材及び第2部材として、上記第
1〜6の発明に係るシール機構を設けたこととしたもの
である。
【0025】上記事項により、上記第1〜6の発明に係
るシール機構によって圧縮機のピストンとシリンダとの
間が封止されるので、圧縮機の性能が長期間にわたって
高水準に維持されることになる。
【0026】第8の発明が講じた手段は、シリンダ(6)
内においてピストン(11)が所定周期で往復移動すること
によって作動ガスを圧縮し、上記シリンダ(6)内におい
て所定周期のガス圧を生成する圧縮機(1)と、上記ガス
圧が供給されるように上記圧縮機(1)の上記シリンダ(6)
に連結され、上記ガス圧によってディスプレーサ(37)が
シリンダ(31)内を往復移動し、膨張空間(35)において作
動ガスが膨張することによってヒートステーション(32)
に寒冷を発生させる膨張機(2)とを備えた冷凍機におい
て、上記膨張機(2)のディスプレーサ(37)及びシリンダ
(31)をそれぞれ第1部材及び第2部材として、上記第1
〜6の発明に係るシール機構を設けたこととしたもので
ある。
【0027】上記事項により、上記第1〜6の発明に係
るシール機構によって膨張機のディスプレーサとシリン
ダとの間が封止されるので、膨張機の性能が長期間にわ
たって高水準に維持されることになる。
【0028】第9の発明が講じた手段は、ケーシング(7
1)内が隔壁(72,73)によってモータ室(75)とインペラ室
(74,76)とに区画され、駆動軸(77)に連結されたインペ
ラ(78,79)が上記インペラ室(74,76)内で回転することに
よって冷媒を圧縮するターボ圧縮機において、上記駆動
軸(77)及び隔壁(72,73)をそれぞれ第1部材及び第2部
材として、上記第1〜6の発明に係るシール機構を設け
たこととしたものである。
【0029】上記事項により、上記第1〜6の発明に係
るシール機構によって駆動軸と隔壁との間が封止される
ので、インペラ室とモータ室との間での流体漏れが一定
となり、初期性能が長期間にわたって維持されることに
なる。
【0030】なお、クリアランスシール(12,104)のシー
ル面の溝は、所定深さの矩形断面を有する矩形溝(57a,5
7b)によって構成されていてもよい。
【0031】上記事項により、シール面の溝が簡易に製
造されることになる。
【0032】また、クリアランスシール(12,104)の矩形
溝(57a,57b)は、初期クリアランスをh1、シール面の長
さをL、上記矩形溝(57a,57b)の深さをh2、上記矩形溝
(57a,57b)の長さをL1としたときに、h13/(L−L
1)≒(h1+h2)3/Lの関係を満たすように形成され
ていてもよい。
【0033】上記事項により、流体の漏れ特性に応じた
溝形状が実現されることになる。
【0034】また、クリアランスシール(12,104)の矩形
溝は、単一の矩形溝(57a)によって構成されていてもよ
い。
【0035】上記事項により、簡易な構成によってシー
ル面の矩形溝が得られることになる。
【0036】また、クリアランスシール(12,104)の矩形
溝は、複数の矩形溝(57b)によって構成されていてもよ
い。
【0037】上記事項により、簡易な構成によってシー
ル面の矩形溝が得られることになる。
【0038】また、クリアランスシール(12,104)のシー
ル面の溝は、断面がV字型のV字溝(60)によって構成さ
れていてもよい。
【0039】上記事項により、簡易な構成によってシー
ル面の溝が得られることになる。
【0040】また、クリアランスシール(12,104)のシー
ル面の溝は、断面の縁線が凹状の3次曲線からなる曲面
溝(57)によって構成されていてもよい。
【0041】上記事項により、隙間を流れる流体が層流
の場合、漏れ量はほぼクリアランスの3乗に比例し且つ
シール長さに逆比例すると考えられることから、漏れ量
を一定にする溝形状が得られることになる。
【0042】第1部材(11,102)または第2部材(6,72)
は、直線往復運動を行うように構成されていてもよい。
【0043】第1部材(11,102)または第2部材(6,72)
は、回転運動を行うように構成されていてもよい。
【0044】
【発明の効果】従って、第1の発明によれば、クリアラ
ンスシールのシール面に主シール面と副シール面とを設
けたことにより、クリアランスシールの摩耗に伴いシー
ル長さが増加するので、クリアランス長さの増加による
漏れ量の増大を抑制することができ、漏れ量を一定に保
つことが可能となる。従って、初期のシール性能を長期
間にわたって維持することができる。
【0045】第2または第4の発明によれば、主シール
面及び副シール面を容易に製造することができる。
【0046】第3または第5の発明によれば、クリアラ
ンスシールの摩耗前と摩耗後において、流体の漏れ量が
ほぼ同量になるので、初期のシール性能を確実に維持す
ることができる。
【0047】第6の発明によれば、特に好適な材料によ
ってクリアランスシールを構成することができ、そのシ
ール性能を高めることができる。
【0048】第7の発明によれば、ピストンとシリンダ
との間に上記第1〜6の発明に係るシール機構を設けた
ので、圧縮機の性能を長期間にわたって維持することが
でき、冷凍機の性能を向上させることができる。
【0049】第8の発明によれば、ディスプレーサとシ
リンダとの間に上記第1〜6の発明に係るシール機構を
設けたので、膨張機の性能を長期間にわたって維持する
ことができ、冷凍機の性能を向上させることができる。
【0050】第9の発明によれば、駆動軸と隔壁との間
に上記第1〜6の発明に係るシール機構を設けたので、
インペラ室とモータ室との間の冷媒漏れを長期間にわた
って安定して抑制することができ、ターボ圧縮機の性能
を向上させることが可能となる。
【0051】
【発明の実施の形態1】以下、本発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。
【0052】−スターリング冷凍機の構成−図1は、本
実施形態に係るシール機構を備えたスターリング冷凍機
の振動型圧縮機(1)を示す。圧縮機(1)は、上下対称に配
置された2つのピストン(11),(11)を有するダブルピス
トン型の圧縮機であり、ピストン(11)とシリンダ(6)と
の間にクリアランスシール(12)が設けられている。図2
は、上記スターリング冷凍機の膨張機(2)を示す。膨張
機(2)は、シリンダ(31)内でフリーディスプレーサ(37)
が往復移動するフリーディスプレーサ型の膨張機であ
り、フリーディスプレーサ(37)とシリンダ(31)との間に
クリアランスシール(52),(53)が設けられている。
【0053】−圧縮機(1)の全体構成−まず、図1を参
照しながら、圧縮機(1)の全体構成を説明する。圧縮機
(1)は、鉛直方向に延びる密閉円筒型のハウジング(3)を
有する。このハウジング(3)は、上下方向に延びる円筒
壁部(4)と、円筒壁部(4)の両端開口部を気密に閉塞する
円板壁部(5,5)とから成る。ハウジング(3)内には、ハウ
ジング(3)の軸方向に延びるブロック(9)が固定されてい
る。ブロック(9)の中心部は貫通され、両端が開放され
た上下方向に延びる1本のシリンダ(6)が形成されてい
る。シリンダ(6)の中央部は径方向外向きに延び、シリ
ンダ(6)の中心線と直交する円板状のフランジ部(7)が形
成されている。フランジ部(7)の外周部はシリンダ(6)と
同心に上下方向に延び、円筒状の嵌合部(8)が形成され
ている。嵌合部(8)の外周面は円筒壁部(4)の内周面の所
定位置に取り付けられ、ブロック(9)がハウジング(3)に
固定されている。シリンダ(6)の外周面には、円筒状の
継鉄部材(10)が嵌め込まれている。ブロック(9)及び継
鉄部材(10)は純鉄等の磁性材料から形成され、ヨーク
(継鉄)を構成している。
【0054】シリンダ(6)には、有底円筒状の上下一対
のピストン(11),(11)が、それぞれ先端側を対向させた
状態で往復動自在に挿入されている。そして、シリンダ
(6)及び両ピストン(11),(11)によって、作動流体を圧縮
する圧縮空間(13)が区画形成されている。ピストン(11)
の外周面には、本実施形態の特徴であるクリアランスシ
ール(12)が固定されている。なお、クリアランスシール
(12)の詳細な構成は後述する。
【0055】ブロック(9)には、シリンダ(6)の内部から
嵌合部(8)の外周面までブロック(9)を径方向に貫通して
成るガス通路(14)が設けられている。ガス通路(14)の内
端は圧縮空間(13)に常時連通している。一方、ハウジン
グ(3)の円筒壁部(4)には、ガス通路(14)の外端に対応す
る位置に貫通孔(15)が形成されている。そして、膨張機
(2)に接続された連結管(16)が、貫通孔(15)を貫通して
ガス通路(14)に連結している。
【0056】上下のピストン(11),(11)には、各ピスト
ン(11)を駆動するリニアモータ(17),(17)が設けられて
いる。リニアモータ(17)は、継鉄部材(10)の外周面に嵌
め込まれた環状の永久磁石から成る駆動用磁石(18)と、
ピストン(11)に固定されたボビン(21)と、ボビン(21)に
巻き付けられた駆動用コイル(22)とを有している。駆動
用磁石(18)は、ブロック(9)の嵌合部(8)との間に所定の
隙間を存して当該嵌合部(8)と対向している。この駆動
用磁石(18)によって、継鉄部材(10)、フランジ部(7)及
び嵌合部(8)をヨークとして、駆動用磁石(18)の外周面
と嵌合部(8)の内周面との間に、所定強度の磁界(静止
磁場)が生成されている。各ピストン(11)には、その背
面側、つまり円板壁部(5)側に、径方向外向きに延びる
フランジ部(20)が形成されている。有底円筒状のボビン
(21)は、その底壁側にてフランジ部(20)に一体的に取り
付けられている。ボビン(21)はピストン(11)と同心状に
シリンダ(6)の中央側に延び、その先端部は、駆動用磁
石(18)と嵌合部(8)との間の磁界内に配置されている。
ボビン(21)の先端部の外側には、電磁コイルから成る駆
動用コイル(22)(ソレノイド)が巻き付けられている。
このフランジ部(20)及びボビン(21)によって、リニアモ
ータ(17)の可動部(19)が構成されている。
【0057】ハウジング(3)の円板壁部(5)には電流導入
端子(23)が貫通され、この電流導入端子(23)は、円板壁
部(5)に絶縁状態で固定支持されている。駆動用コイル
(22)は、リード線(24)及び電流導入端子(23)を介して、
図示しないコントローラに接続されている。
【0058】上記コントローラは、図示しない駆動電源
に接続され、当該駆動電源からの交流電流を各駆動用コ
イル(22)に同期させながら供給する。その結果、可動部
(19)が所定周期で往復動を行い、当該可動部(19)と一体
になったピストン(11)は、所定周期で互いに接離するよ
うに逆方向に往復移動する。そして、圧縮空間(13)内に
所定周期のガス圧が発生する。
【0059】圧縮機(1)の円板壁部(5)の内壁面には、ピ
ストン(11)の軸線上の位置にそれぞれ円板状のばね取付
部材(25)が突設され、このばね取付部材(25)の外周に
は、螺旋状のばね取付溝(26)が形成されている。一方、
ピストン(11)の底面にもばね取付部材(27)が固定され、
ばね取付部材(27)の外周にも螺旋状のばね取付溝(28)が
形成されている。そして、コイルばね(29)の一端がばね
取付部材(25)のばね取付溝(26)に取り付けられ、その他
端がばね取付部材(27)のばね取付溝(28)に取り付けられ
ることにより、ピストン(11)はコイルばね(29)に弾性支
持されている。
【0060】−膨張機(2)の全体構成−次に、図2を参
照しながら、膨張機(2)の全体構成を説明する。膨張機
(2)は、左右方向に延びる円筒状のシリンダ(31)を有し
ている。シリンダ(31)の先端側(図2における左側)
は、ヒートステーション(32)に接合されている。一方、
シリンダ(31)の基端側(図2における右側)は、フラン
ジ(33)に接合されている。
【0061】シリンダ(31)内には、その内部空間を先端
側の膨張空間(35)と基端側の作動空間(36)とに区画する
略円筒状のフリーディスプレーサ(37)が往復移動自在に
挿入されている。フリーディスプレーサ(37)の内部には
蓄冷材が充填され、蓄冷器(38)(再生式熱交換器)が形
成されている。蓄冷器(38)は、フリーディスプレーサ(3
7)の先端部(48)に形成された連通孔(39)及び基端部(42)
に形成された連通孔(40)により、それぞれ膨張空間(35)
及び作動空間(36)に連通している。フリーディスプレー
サ(37)の先端部(48)の外周面には、フリーディスプレー
サ(37)とシリンダ(31)との間の隙間を封止して膨張空間
(35)の低圧を維持する第1クリアランスシール(52)が嵌
め込まれている。一方、フリーディスプレーサ(37)の基
端部(42)の外周面には、フリーディスプレーサ(37)とシ
リンダ(31)との間の隙間を封止して作動空間(36)の高圧
を維持する第2クリアランスシール(53)が嵌め込まれて
いる。
【0062】フリーディスプレーサ(37)の基端部(42)に
は、螺旋状のばね取付溝(41)が形成されている。一方、
シリンダ(31)内に突出したフランジ(33)の作動空間(36)
側にも、螺旋状のばね取付溝(43)が形成されている。そ
して、コイルばね(44)の一端がばね取付溝(41)に取り付
けられ、その他端がばね取付溝(43)に取り付けられるこ
とにより、コイルばね(44)によって、フリーディスプレ
ーサ(37)が往復移動自在に弾性支持されている。
【0063】フランジ(33)には、作動空間(36)に連通す
るガス孔(45)が貫通形成されている。このガス孔(45)に
は圧縮機(1)から延びる連結管(16)が挿入され、連結管
(16)はフランジ(33)に気密に接合されている。従って、
作動空間(36)は、連結管(16)を介して圧縮機(1)の圧縮
空間(13)に連通している。そして、圧縮機(1)からのガ
ス圧を受けて膨張機(2)のフリーディスプレーサ(37)が
シリンダ(31)内で往復移動することにより、膨張空間(3
5)で作動流体が膨張し、ヒートステーション(32)が冷却
される。つまり、ヒートステーション(32)に極低温の寒
冷が生成される。
【0064】シリンダ(31)における作動空間(36)の周囲
部分には、作動空間(36)内のガスを冷却するための冷却
用フィン(46)が設けられている。
【0065】−クリアランスシールの構成−次に、本実
施形態の特徴であるクリアランスシール(12),(52),(53)
の構成を説明する。上述したように、クリアランスシー
ル(12),(52),(53)は、それぞれ圧縮機(1)のピストン(1
1)の外周面、膨張機(2)のフリーディスプレーサ(37)の
先端部(48)の外周面、及び基端部(42)の外周面に設けら
れている。それらの構成は同様であるので、ここでは圧
縮機(1)のピストン(11)に設けられたクリアランスシー
ル(12)の構成のみを説明する。
【0066】図3は、圧縮機(1)の一方のピストン(11)
及びシリンダ(6)近傍の部分断面図である。なお、図3
においては、理解が容易なように、クリアランスシール
(12)の厚さ方向の長さを誇張して図示している。クリア
ランスシール(12)のシール面におけるピストン(11)の軸
方向(図3に示すX方向)の両側は、断面が直線状に形
成されている。両平坦部(55),(55)の間には、断面形状
が左右対称の3次曲線で成る凹部(57)が形成されてい
る。一方、ピストン(11)に固着されたクリアランスシー
ル(12)の内側面は、平滑な円周面(58)に形成されてい
る。
【0067】クリアランスシール(12)は、主にクリアラ
ンスの一番小さな部分でシール作用を行う。そのため、
クリアランスシール(12)の摩耗前の状態、つまり初期状
態では、凹部(57)はほとんどシール作用を行わず、主に
平坦部(55)でシール作用が行われる。
【0068】平坦部(55)の厚みt1及び軸方向長さL1
は、クリアランス長さs1とシール長さ2×L1とがクリ
アランスシール(12)の摩耗前の状態において、ピストン
(11)の往復移動の抵抗が大きすぎることなく且つ十分な
シール性能を発揮するような長さになるように設定され
ている。言い換えると、平坦部(55)は、初期状態におい
て、平坦部(55)のみで十分なシール性能を発揮するよう
に構成されている。具体的には、本実施形態では、クリ
アランス長さs1は約10μmに設定されている。な
お、ここでシール長さとは、クリアランスシール(12)の
シール面のうち実際にシール作用に寄与する部分の長さ
をいう。
【0069】一方、凹部(57)は、クリアランスシール(1
2)の摩耗にかかわらず作動流体の漏れ量が常に一定にな
るような形状に形成されており、具体的には、その仕様
は以下のような理論に基づいて設定されている。
【0070】ピストン(11)とシリンダ(6)との間のクリ
アランス(隙間)から作動流体が漏れる場合、作動流体
は層流の状態で上記クリアランス中を流れると考えられ
る。従って、漏れ係数をα、ピストン(11)の外径をd、
クリアランスをΔh、シール部の差圧をΔP、シール長
さをLとすると、漏れ量Wは、W=α・d・Δh3・Δ
P/Lとして概算される。従って、A=(Δh3/L)
が常に一定であれば、作動流体の漏れ量Wは一定にな
る。そこで、凹部(57)は、平坦部(55)が摩耗してクリア
ランスs1が増加すると、平坦部(55)のシール長さL1が
増加して上記Aが一定になるような3次曲線状に形成さ
れている。
【0071】なお、本実施形態では、凹部(57)の深さは
約10μmであり、クリアランス長さs1とほぼ同等に
なっている。
【0072】本実施形態のクリアランスシール(12)は、
四ふっ化エチレン、つまりPTFE(ポリテトラフルオ
ロエチレン)から成る母材に、充填材としてカーボンを
加えた樹脂によって形成されている。なお、クリアラン
スシール(12)の材料は上記樹脂に限定されるものではな
く、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリ
アセタールのうちの一つまたは二つ以上を母材とし、充
填材にカーボン、カーボン繊維、ブロンズまたは二硫化
モリブデンのうちの一つまたは二つ以上を用いた樹脂で
あってもよい。
【0073】−スターリング冷凍機の動作− 次に、スターリング冷凍機の動作を説明する。
【0074】運転の開始に伴い、図示しない駆動電源か
らリニアモータ(17)の駆動用コイル(22)に交流電流が同
期して通電される。この通電に伴い、駆動用コイル(22)
及び駆動用磁石(18)による磁界間の作用により、リニア
モータ(17)の可動部(19)及びピストン(11)が一体となっ
て各々の中立位置から互いに接離するように逆向きに往
復移動を行う。そして、両ピストン(11)の接離により圧
縮空間(13)の容積が増減変化し、圧縮空間(13)内に所定
周期の圧力波が生じる。圧縮空間(13)は連結管(16)を通
じて膨張機(2)の作動空間(36)に連通しているため、上
記圧力波を受けてフリーディスプレーサ(37)が上記所定
周期で往復動を行う。その結果、膨張空間(35)において
作動流体が膨張し、膨張空間(35)に寒冷が生じる。この
ように、フリーディスプレーサ(37)の往復移動により、
ヒートステーション(32)が次第に極低温にまで冷却され
る。
【0075】−本実施形態の効果− 以上のように、本実施形態によれば、初期状態にあって
はクリアランスを小さくする一方でシール長さを短くす
ることができるので、十分なシール性を維持したまま、
ピストン(11)及びフリーディスプレーサ(37)の往復移動
の抵抗を小さくすることができる。そして、クリアラン
スシール(12),(52),(53)が摩耗しても、クリアランスの
増大に応じてシール長さが長くなるので、作動流体の漏
れ量を一定にすることができる。従って、摩耗によるシ
ール性能の低下を抑制することができ、初期のシール性
能を長期間維持することが可能となる。そのため、スタ
ーリング冷凍機の冷凍能力を長期間にわたって維持する
ことができる。
【0076】なお、図13において、本実施形態のクリ
アランスシール(12),(52),(53)の性能を示すと、図示の
実線曲線のようになる。破線及び一点鎖線で示す従来の
クリアランスシールに比べると、高水準の初期性能が長
期間にわたって維持されていることが分かる。
【0077】−変形例− 本発明に係るクリアランスシールは、上記クリアランス
シール(12)に限定されるものではなく、種々の変形例が
考えられる。
【0078】<変形例1>例えば、図4に示すように、
上記クリアランスシール(12)の凹部(57)を、V字形のカ
ット面を有するV字部(60)に置き換えた形態であっても
よい。カット面の傾斜及び長さは、クリアランスシール
(12)の摩耗に伴って平坦部(55)が増加してシール長さが
長くなり、クリアランスの増加による漏れ量の増大をシ
ール長さの増加によって抑制するように設定されてい
る。
【0079】従って、このような形態であっても、作動
流体の漏れ量をほぼ一定にすることが可能となる。さら
に、V字部(60)は断面形状が直線状のカット面によって
形成されているので、容易に製造することができる。従
って、クリアランスシール(12)の製造が容易になる。
【0080】<変形例2>また、図5に示すように、ク
リアランスシール(12)を平坦部(55)及び傾斜部(61)で構
成してもよい。傾斜部(61)の傾斜角度は、クリアランス
シール(12)の摩耗により平坦部(55)の面積が増大し、ク
リアランスの増加による漏れ量の増大をシール長さの増
加によって抑制するように設定されている。
【0081】従って、このような形態であっても、上記
変形例1と同様、クリアランスシール(12)の摩耗にかか
わらず、作動流体の漏れ量をほぼ一定にすることができ
る。従って、初期のシール性能を長期間維持することが
可能となる。また、クリアランスシール(12)は平坦部(5
5)と傾斜部(61)とから成る簡単な形状なので、容易に製
造することができる。
【0082】<変形例3>また、図6に示すように、上
記クリアランスシール(12)の凹部(57)を、断面コ字状の
凹部(57a)に置き換えた構成にしてもよい。つまり、軸
方向中央部に矩形断面の凹部(57a)を有し、この凹部(57
a)の両側に平坦部(55)が形成されたクリアランスシール
(12)であってもよい。凹部(57a)の長さ及び深さは、初
期状態のときの流体の漏れ量と、クリアランスシール(1
2)が摩耗して平坦部(55)と凹部(57a)の底部とが面一に
なった場合の漏れ量とが等しくなるように設定されてい
る。また、凹部(57a)の深さは、凹部(57a)の底面とシリ
ンダ(6)の内壁面との間のクリアランスが、流体の漏れ
量が極端に多くなる臨界クリアランス以下になるように
設定されている。
【0083】例えば、臨界クリアランスが約20μmで
あり、初期クリアランスが約10μmであるとすれば、
凹部(57a)の深さは約10μm程度が好ましい。
【0084】また、凹部(57a)の寸法は、流体の漏れ特
性に関する上記理論に基づいて設定してもよい。すなわ
ち、層流状態の流体の漏れ量はクリアランスの3乗に比
例し、且つシール長さに逆比例することから、初期クリ
アランスをh1、シール面の長さをL、凹部(57a)の深さ
をh2、凹部(57a)の長さをL1としたときに、h13
(L−L1)≒(h1+h2)3/Lの関係を満たすように
形成されていてもよい。
【0085】この形態の場合、上記変形例1及び変形例
2のようにクリアランスシール(12)の摩耗に伴ってシー
ル長さが連続的に増加することはないが、クリアランス
が臨界クリアランスに達するとシール長さがステップ状
に増加するので、シール性能の著しく低下は防止され
る。また、円筒状のクリアランスシールの外周面の軸方
向中央部を切削することにより、平坦部(55)及び凹部(5
7a)を容易に形成することができる。従って、この形態
のクリアランスシール(12)は、極めて容易に製造するこ
とができる。
【0086】<変形例4>図7に示すように、クリアラ
ンスシール(12)の先端側に主シール面を構成する平坦部
(55)を形成し、根元側に副シール面を構成する溝部(57
c)を形成してもよい。溝部(57c)は、平坦部(55)と同様
に、その断面形状が平坦に形成されている。平坦部(55)
はシリンダ(6)の内壁面と初期クリアランスを存して対
向し、溝部(57c)は上記初期クリアランスよりも大きな
クリアランスを存してシリンダ(6)の内壁面と対向して
いる。本形態のクリアランスシール(12)も、極めて容易
に製造することができる。
【0087】<変形例5>また、図8に示すように、複
数の平坦部(55)と複数の凹部(57b)とが交互に繰り返さ
れるように形成されたクリアランスシール(12)であって
もよい。このような形態であっても、変形例3、4と同
様の効果が得られる。さらに、本クリアランスシール(1
2)は、平坦部(55)が軸方向の広範囲にわたって設けられ
ているので、シール作用を安定して行うことができる。
また、クリアランスシール(12)の構造が堅固になる。
【0088】なお、本変形例においても、矩形溝として
の凹部(57b)の仕様を、流体の漏れ特性に関する上記理
論に基づいて設定してもよいことは勿論である。
【0089】
【発明の実施の形態2】−ターボ冷凍機の構成− 図9は、本実施形態に係るシール機構を備えたターボ圧
縮機(70)を示す。密閉円筒型のケーシング(71)の内部に
は、上端部から下方に所定寸法を存した位置に円板状の
上部隔壁(72)が設けられ、下端部から上方に所定寸法を
存した位置に円板状の下部隔壁(73)が設けられている。
上部隔壁(72)は、ケーシング(71)の内部空間を上側の第
1インペラ室(74)と下側のモータ室(75)とに区画してい
る。一方、下部隔壁(73)は、ケーシング(71)の内部空間
を下側の第2インペラ室(76)と上側のモータ室(75)とに
区画している。
【0090】第1インペラ室(74)及び第2インペラ室(7
6)は、ケーシング(71)の軸方向断面における中央部に形
成され、駆動軸(77)の両側に連結された第1インペラ(7
8)及び第2インペラ(79)を収納する収納室をそれぞれ構
成している。第1インペラ(78)及び第2インペラ(79)の
形状は、内径がケーシング(71)の中央部に向かって次第
に増大する略円錐台状である。第1インペラ(78)は第1
インペラ室(74)の内部に、第2インペラ(79)は第2イン
ペラ室(76)の内部にそれぞれ回転自在に収納されてい
る。第1インペラ(78)及び第2インペラ(79)は、鉛直軸
周りに複数の略三角板の羽根(80),(80),…が放射状に設
けられて成り、外向き半径方向流を生じさせるラジアル
型の回転体を構成している。
【0091】ケーシング(71)の上端面の中央部には、吸
入管(81)が接続されている。吸入管(81)と第1インペラ
室(74)との間には、吸入管(81)を流れてきた冷媒を第1
インペラ(78)の軸方向に沿って第1インペラ(78)の上側
から第1インペラ室(74)に向かって導く吸入通路(82)が
形成されている。
【0092】第1インペラ室(74)の外周囲及び第2イン
ペラ室(76)の外周囲には、それぞれ第1渦巻室(83)及び
第2渦巻室(84)が形成されている。これら渦巻室(83),
(84)は、ディフューザ(85),(86)を介してインペラ室(7
4),(76)に連通している。
【0093】ケーシング(71)の側面における第1渦巻室
(83)に対応する位置には、第1インペラ(78)及びディフ
ューザ(85)によって昇圧された冷媒をモータ室(75)に導
く第1連通管(87)の一端が接続されている。第1連通管
(87)の他端は、ケーシング(71)の側面におけるモータ室
(75)の上部に接続されている。
【0094】また、ケーシング(71)の側面には、モータ
室(75)の内部の冷媒を第2インペラ室(76)の吸入側に導
く第2連通管(88)が接続されている。第2連通管(88)の
一端は、ケーシング(71)の側面におけるモータ室(75)の
下部に接続され、その他端はケーシング(71)の下端面の
中央部に接続されている。第2連通管(88)と第2インペ
ラ室(76)との間には、モータ室(75)の冷媒を第2インペ
ラ(79)の軸方向に沿って第2インペラ(79)の下側から第
2インペラ室(76)に向かって導く吸入通路(89)が形成さ
れている。
【0095】ケーシング(71)の側面における第2渦巻室
(84)に対応する位置には、ケーシング(71)の外側に向か
って水平方向に延びる吐出管(90)が接続されている。第
2渦巻室(84)と吐出管(90)との間には、第2渦巻室(84)
の冷媒を吐出管(90)に導く吐出通路(91)が形成されてい
る。
【0096】モータ室(75)には、第1インペラ(78)及び
第2インペラ(79)を回転駆動するためのモータ(92)が収
納されている。モータ(92)は、モータ室(75)の内壁面に
固定されたステータ(93)と、ステータ(93)の内部に収納
されてインペラ(78,79)と同心状に配置されたロータ(9
4)とを備えている。そして、ロータ(94)は、その中心部
において、鉛直方向に延びる駆動軸(77)に固定されてい
る。
【0097】駆動軸(77)は、大径部(101)と大径部(101)
の両側に設けられた小径部(102)とから構成されてい
る。駆動軸(77)の大径部(101)の上下両側部は、第1軸
受け板(95)及び第2軸受け板(96)を介して、回転自在に
支承されている。詳しくは、駆動軸(77)の上端部は、第
1軸受け板(95)の中央部に形成された貫通孔(97)に挿通
され、駆動軸(77)の下端部は、第2軸受け板(96)の中央
部に形成された貫通孔(98)に挿通されている。
【0098】大径部(101)の上下両端部の外周面には、
ラジアル側昇圧機構を構成するヘリンボーン溝(99,99,
…)が形成されている。このヘリンボーン溝(99,99,…)
は、駆動軸(77)の大径部(101)の外周面と貫通孔(97,98)
の内周面との間の隙間に、気体圧力による気体膜を生成
するように形成されている。そして、この気体膜によっ
て、駆動軸(77)を非接触状態で支持する気体軸受けが構
成される。
【0099】また、第2軸受け板(96)と下部隔壁(73)と
の間には、スラスト軸受け板(103)が設けられている。
スラスト軸受け板(103)の中央部には、駆動軸(77)の小
径部(102)と略同型の貫通孔が形成され、この貫通孔の
内面と小径部(102)の外周面とが連結されて、駆動軸(7
7)とスラスト軸受け板(103)とが一体に固定されてい
る。スラスト軸受け板(103)の下面は下部隔壁(73)の上
面に対向し、スラスト軸受け板(103)の上面は第2軸受
け板(96)の下面に対向している。そして、スラスト軸受
け板(103)の上下両面には、スラスト側昇圧機構を構成
するほぼ螺旋状のスパイラルグルーブ溝(図示せず)が
形成されている。そして、このスパイラルグルーブ溝の
作用により、スラスト軸受け板(103)と下部隔壁(73)と
の間、及びスラスト軸受け板(103)と第2軸受け板(96)
との間に、上向きと下向きとのスラスト軸受けを成す動
圧気体軸受けが構成され、駆動軸(77)がスラスト方向に
支持される。
【0100】駆動軸(77)の両小径部(102),(102)の外周
面には、それぞれクリアランスシール(104),(104)が固
着されている。各クリアランスシール(104)の構成は同
様であるので、ここでは駆動軸(77)の上側の小径部(10
2)に設けられたクリアランスシール(104)の構成のみを
説明する。
【0101】−本実施形態のシール機構− 図10に示すように、本実施形態のクリアランスシール
(104)の断面形状は、実施形態1と同様、軸方向の両側
が平坦に形成されるとともに、両平坦部(105),(105)の
間に3次曲線状の凹部(106)が形成されている。平坦部
(105)の厚み及び軸方向長さは、初期状態において駆動
軸(77)の回転の抵抗が大きすぎることなく且つ十分なシ
ール性能を発揮するような厚み及び長さに設定されてい
る。凹部(106)も実施形態1と同様、クリアランスシー
ル(104)の摩耗にかかわらず冷媒の漏れ量が常に一定に
なるような形状に形成されており、具体的には、実施形
態1で説明した理論に基づいて、断面形状が所定の3次
曲線の縁線を有するような曲面に形成されている。クリ
アランスシール(104)の材料は、実施形態1と同様であ
る。
【0102】−ターボ圧縮機(70)の動作− まず、圧縮動作時には、モータ(92)が駆動し、駆動軸(7
7)が高速回転する。そして、この駆動軸(77)の回転に従
い、第1インペラ(78)及び第2インペラ(79)がそれぞれ
第1インペラ室(74)及び第2インペラ室(76)で回転す
る。
【0103】第1インペラ室(74)における第1インペラ
(78)の回転により、吸入管(81)及び吸入通路(82)を通じ
て冷媒が第1インペラ室(74)に吸入される。第1インペ
ラ(78)の軸方向に沿って第1インペラ(78)に導かれた冷
媒は、第1インペラ(78)の羽根(80),(80),…に沿って外
向き半径方向流になり、第1インペラ(78)の外周端から
放出される。この際、冷媒は第1インペラ(78)から与え
られる遠心力によって動圧と静圧とを得て、ディフュー
ザ(85)を通過する。冷媒はディフューザ(85)で減速し、
動圧が静圧に変換されて動圧が回収される。その結果、
冷媒は昇圧して第1渦巻室(83)に放出される。その後、
冷媒は第1渦巻室(83)を流出し、第1連通管(87)を流通
してモータ室(75)に流入する。
【0104】モータ室(75)の冷媒は、第2インペラ室(7
6)における第2インペラ(79)の回転により、第2連通管
(88)から吸引され、第2インペラ(79)に導かれる。第2
インペラ(79)の軸方向に沿って第2インペラ(79)に導か
れた冷媒は、第2インペラ(79)の羽根(80),(80),…に沿
って外向き半径方向流となり、第2インペラ(79)の外周
端から放出される。その後は、第1インペラ室(74)にお
ける圧縮動作と同様にして、冷媒は昇圧して第2渦巻室
(84)に放出され、高圧ガスとなって吐出管(90)から吐出
される。
【0105】−本実施形態の効果− 本実施形態においても、初期状態にあってはクリアラン
スを小さくする一方でシール長さを短くすることによ
り、十分なシール性を維持したまま駆動軸(77)の回転の
抵抗を小さくすることができる。一方、クリアランスシ
ール(104)が摩耗しても、クリアランスの増大に応じて
シール長さが長くなるので、冷媒の漏れ量は常に一定と
なる。従って、クリアランスシール(104)の初期のシー
ル性能を長期間維持することが可能となる。
【0106】特に、高速回転を行うタービンやターボ等
では、従来、金属材料の非接触シールを使うことが多か
ったが、シール性を高くしようとすると寸法の高精度化
が必要となりコストが高くなっていた。また、接触部分
があると、焼き付く可能性があった。しかし、本実施形
態では、クリアランスシール(104)を用いることによ
り、初期に接触して摩耗したとしても、初期と同等のシ
ール性能を保つことができるため、多少の接触を許容す
ることが可能である。そのため、寸法精度を従来ほど高
精度にする必要がなくなり、低コスト化を図ることがで
きる。
【0107】−変形例− 本実施形態に係るクリアランスシールも、上記クリアラ
ンスシール(104)に限定されるものではなく、種々の変
形例が考えられる。例えば、実施形態1の変形例1〜4
と同様に、クリアランスシール(104)の凹部(106)をV字
状の凹部に置き換えた形態、クリアランスシール(104)
を平坦部及び傾斜部で構成する形態、クリアランスシー
ル(104)の凹部(106)を矩形断面の凹部に置き換える形
態、複数の平坦部と複数の凹部とが交互に繰り返される
形態等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧縮機の縦断面図である。
【図2】膨張機の縦断面図である。
【図3】シール機構の縦断面図である。
【図4】シール機構の変形例の縦断面図である。
【図5】シール機構の他の変形例の縦断面図である。
【図6】シール機構の他の変形例の縦断面図である。
【図7】シール機構の他の変形例の縦断面図である。
【図8】シール機構の他の変形例の縦断面図である。
【図9】ターボ圧縮機の縦断面図である。
【図10】シール機構の縦断面図である。
【図11】従来のシール機構を備えた膨張機の縦断面図
である。
【図12】従来のシール機構を備えた膨張機の縦断面図
である。
【図13】シール機構の性能比較図である。
【符号の説明】
(1) 圧縮機 (2) 膨張機 (6) シリンダ (11) ピストン (12) クリアランスシール (13) 圧縮空間 (18) 駆動用磁石 (21) ボビン (22) 駆動用コイル (29) コイルばね (31) シリンダ (37) フリーディスプレーサ (52) 第1クリアランスシール (53) 第2クリアランスシール (55) 平坦部 (57) 凹部

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1対向面を有する第1部材(11,102)
    と、 上記第1対向面と間隙を存して対向する第2対向面を有
    する第2部材(6,72)と、 上記第2対向面に所定の間隔(s1)を存して対向するシー
    ル面を有するように、上記第1部材(11,102)の上記第1
    対向面に設けられたクリアランスシール(12,104)とを備
    え、 上記第1部材(11,102)と上記第2部材(6,72)とが相対運
    動を行う一方、上記第1対向面と上記第2対向面との間
    をシールするシール機構において、 上記クリアランスシール(12,104)の上記シール面には、
    上記第2対向面に所定の初期クリアランスを存して対向
    する主シール面(55,105)と、上記第2対向面に上記初期
    クリアランスよりも大きなクリアランスを存して対向す
    る副シール面(57,60,106)とが形成されていることを特
    徴とするシール機構。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のシール機構において、 クリアランスシール(12,104)のシール面には、溝(57,6
    0,106)が形成され、 上記クリアランスシール(12,104)の主シール面は、非溝
    部(55,105)によって構成される一方、 上記クリアランスシール(12,104)の副シール面は、上記
    溝(57,60,106)によって構成されていることを特徴とす
    るシール機構。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載のシール機構において、 クリアランスシール(12,104)のシール面の溝(57,60,10
    6)は、流体の漏れ量が上記シール面が摩耗する前と所定
    量摩耗した後とでほぼ同量になるように形成されている
    ことを特徴とするシール機構。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のシール機構において、 クリアランスシール(12,104)のシール面の断面形状は、
    第2部材(6,72)の第2対向面と平行な平坦部(55)と、上
    記平坦部(55)から第1部材(11,102)の第1対向面側に傾
    斜する傾斜部(61)とから成り、 上記クリアランスシール(12,104)の主シール面は、上記
    平坦部(55)から構成される一方、 上記クリアランスシール(12,104)の副シール面は、上記
    傾斜部(61)から構成されていることを特徴とするシール
    機構。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載のシール機構において、 クリアランスシール(12,104)のシール面の傾斜部(61)
    は、流体の漏れ量が上記シール面が摩耗する前と所定量
    摩耗した後とでほぼ同量になるように形成されているこ
    とを特徴とするシール機構。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一つに記載のシ
    ール機構において、 クリアランスシール(12,104)は、ポリテトラフルオロエ
    チレン、ポリイミド、ポリアミドイミドまたはポリアセ
    タールのいずれか一つまたは二つ以上を母材とし、カー
    ボン、カーボン繊維、ブロンズまたは二硫化モリブデン
    のいずれか一つまたは二つ以上を充填材とする樹脂材料
    によって構成されていることを特徴とするシール機構。
  7. 【請求項7】 シリンダ(6)内においてピストン(11)が
    所定周期で往復移動することによって作動ガスを圧縮
    し、上記シリンダ(6)内において所定周期のガス圧を生
    成する圧縮機(1)と、 上記ガス圧が供給されるように上記圧縮機(1)の上記シ
    リンダ(6)に連結され、上記ガス圧によってディスプレ
    ーサ(37)がシリンダ(31)内を往復移動し、膨張空間(35)
    において作動ガスが膨張することによってヒートステー
    ション(32)に寒冷を発生させる膨張機(2)とを備えた冷
    凍機において、 上記圧縮機(1)の上記ピストン(11)及び上記シリンダ(6)
    をそれぞれ第1部材及び第2部材として、請求項1〜6
    のいずれか一つに記載のシール機構を設けたことを特徴
    とする冷凍機。
  8. 【請求項8】 シリンダ(6)内においてピストン(11)が
    所定周期で往復移動することによって作動ガスを圧縮
    し、上記シリンダ(6)内において所定周期のガス圧を生
    成する圧縮機(1)と、 上記ガス圧が供給されるように上記圧縮機(1)の上記シ
    リンダ(6)に連結され、上記ガス圧によってディスプレ
    ーサ(37)がシリンダ(31)内を往復移動し、膨張空間(35)
    において作動ガスが膨張することによってヒートステー
    ション(32)に寒冷を発生させる膨張機(2)とを備えた冷
    凍機において、 上記膨張機(2)のディスプレーサ(37)及びシリンダ(31)
    をそれぞれ第1部材及び第2部材として、請求項1〜6
    のいずれか一つに記載のシール機構を設けたことを特徴
    とする冷凍機。
  9. 【請求項9】 ケーシング(71)内が隔壁(72,73)によっ
    てモータ室(75)とインペラ室(74,76)とに区画され、駆
    動軸(77)に連結されたインペラ(78,79)が上記インペラ
    室(74,76)内で回転することによって冷媒を圧縮するタ
    ーボ圧縮機において、 上記駆動軸(77)及び隔壁(72,73)をそれぞれ第1部材及
    び第2部材として、請求項1〜6のいずれか一つに記載
    のシール機構を設けたことを特徴とするターボ圧縮機。
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