JP2000001394A - シリコン単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法 - Google Patents

シリコン単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法

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JP2000001394A JP16518198A JP16518198A JP2000001394A JP 2000001394 A JP2000001394 A JP 2000001394A JP 16518198 A JP16518198 A JP 16518198A JP 16518198 A JP16518198 A JP 16518198A JP 2000001394 A JP2000001394 A JP 2000001394A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】シリコン多結晶の融解時におけるカーボンヒー
タによる電力消費を低減し、シリコン単結晶棒引上げ時
の電力を均一にしてカーボンヒータ及び石英るつぼの劣
化を抑制し、シリコン融液の融液面温度を容易に調整す
る。 【解決手段】シリコン単結晶の引上げ装置は、石英るつ
ぼ13の底部と保温筒19により囲まれる空間に環状の
断熱体27が支軸16に嵌入して設けられ、断熱体27
をるつぼ昇降手段17と独立して上昇又は下降させる断
熱体昇降手段41を備える。引上げ方法は、断熱体27
をシリコン多結晶融解時に石英るつぼ13の底部近傍の
第1位置に上昇し、シリコン単結晶棒25の引上げ時に
断熱体27を第1位置より下方に移動させる。断熱体昇
降手段41は支持棒42と駆動ギヤと駆動モータ46と
を有し、断熱体27には窓孔が形成される。窓孔は窓孔
開放手段61により駆動する閉止板により開閉する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シリコン単結晶棒
を引上げて育成するシリコン単結晶の引上げ装置及びそ
の引上げ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シリコン単結晶棒を育成する方法として
シリコン多結晶を融解してるつぼ内に貯留したシリコン
融液から半導体用の高純度シリコン単結晶棒を成長させ
るチョクラルスキー法(以下、CZ法という)が知られ
ている。このCZ方法では、石英るつぼの周囲に設けら
れたカーボンヒータにより石英るつぼ内のシリコン融液
を加熱して所定温度に維持し、ミラーエッチングされた
種結晶をシリコン融液に接触させ、種結晶を引上げてシ
リコン単結晶棒を育成するものである。このシリコン単
結晶棒の育成方法では、種結晶を引上げてシリコン融液
から種絞り部を作製した後、目的とするシリコン単結晶
棒の直径まで結晶を徐々に太らせて肩部を形成し、その
後更に引上げてシリコン単結晶棒の直胴部を形成するよ
うになっている。
【0003】従来この種の装置には、支軸の上端に固定
されかつチャンバ内に設けられたシリコン融液を貯留す
る石英るつぼと、この石英るつぼを支軸を介して上昇又
は下降させるるつぼ昇降手段と、この石英るつぼをカー
ボンヒータとともに包囲する保温筒とを備えたものが知
られている。るつぼ昇降手段は、支軸を介して石英るつ
ぼを上昇させることによりシリコン単結晶棒の引上げに
伴うシリコン融液表面の低下を防止し、シリコン融液の
表面を所定位置に維持して高品質のシリコン単結晶棒を
得るようにするとともに、保温筒が石英るつぼをカーボ
ンヒータとともに包囲して、シリコン融液の熱が外部に
放散しないように遮蔽し、石英るつぼ内のシリコン融液
を加熱するカーボンヒータの消費電力を軽減するととも
に、シリコン融液の温度を所定温度に維持できるように
構成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のシリコ
ン単結晶の引上げ装置では、石英るつぼがるつぼ昇降手
段により上昇するため、保温筒により囲まれる空間はそ
の移動する範囲を含むように形成され、石英るつぼに当
初入れられたシリコン多結晶をカーボンヒータにより加
熱して融解する際のカーボンヒータの電力消費量が比較
的大きい不具合がある。また、シリコン多結晶が融解し
た後のシリコン融液を所定温度に維持するための電力は
シリコン多結晶を融解させる際の電力に比較して低下す
るが、所定温度維持のための電力の変化によるカーボン
ヒータ自体、及びシリコン融液を貯留する石英るつぼ自
体が熱ストレスを受けてその寿命が低下する問題点があ
る。更に、シリコン単結晶棒が引上げられるシリコン融
液の融液面温度を容易に調整する必要もある。
【0005】本発明の目的は、シリコン多結晶の融解時
におけるカーボンヒータによる電力消費を低減し得るシ
リコン単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法を提供す
ることにある。本発明の別の目的は、シリコン単結晶棒
引上げ時のカーボンヒータによる電力を均一にしてカー
ボンヒータ及び石英るつぼの劣化を抑制し得るシリコン
単結晶の引上げ装置及びその引上げ方法を提供すること
にある。本発明の更に別の目的は、シリコン融液の融液
面温度を容易に調整し得るシリコン単結晶の引上げ装置
及びその引上げ方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、
図1に示すように、支軸16の上端に固定されかつチャ
ンバ11内に設けられシリコン融液12を貯留する石英
るつぼ13と、この石英るつぼ13を支軸16を介して
上昇又は下降させるるつぼ昇降手段17と、石英るつぼ
13をカーボンヒータ18とともに包囲する保温筒19
とを備えたシリコン単結晶の引上げ装置の改良である。
その特徴ある構成は、石英るつぼ13の底部と保温筒1
9により囲まれる空間に環状の断熱体27が支軸16に
嵌入して設けられ、断熱体27をるつぼ昇降手段17と
独立して上昇又は下降させる断熱体昇降手段41を備え
たところにある。
【0007】シリコン多結晶を融解する際に断熱体昇降
手段41で断熱体27をるつぼ昇降手段17と独立して
上昇させてカーボンヒータ18が加熱すべき空間を縮小
させることにより、シリコン多結晶の融解時におけるカ
ーボンヒータ18の電力消費量を低減させる。断熱体昇
降手段41で断熱体27をるつぼ昇降手段17と独立し
て上昇又は下降させることにより、カーボンヒータ18
が加熱すべき空間を断熱体27が縮小又は拡大して、カ
ーボンヒータ18の電力を変化させることなく融解後に
おけるシリコン融液12の温度を均一にする。
【0008】請求項2に係る発明は、請求項1に係る発
明であって、断熱体昇降手段41が、チャンバ11の下
部に挿通され周囲にラックギヤが形成され上端に断熱体
27が取付けられた支持棒42と、チャンバ11の下方
に設けられ上記ラックギヤに歯合する駆動ギヤと、この
駆動ギヤを駆動する駆動モータ46とを有するシリコン
単結晶の引上げ装置である。ラックギヤに歯合する駆動
ギヤの回転により支持棒42が昇降するため、容易に断
熱体27の位置を制御できる。
【0009】請求項3に係る発明は、請求項1又は2に
係る発明であって、図4に示すように、断熱体27に1
又は2以上の窓孔27cが形成され、この窓孔27cを
開放可能に閉止する閉止板27dが設けられ、断熱体昇
降手段41に閉止板27dを駆動して窓孔27cを開閉
する窓孔開放手段61が設けられたシリコン単結晶の引
上げ装置である。窓孔開放手段61により断熱体27に
形成された窓孔27cを開放することにより、断熱体昇
降手段41による空間の拡大量を超えてカーボンヒータ
18が加熱すべき空間を更に拡大する。この結果、断熱
体27が最下位置に達したにも拘らず液面温度が上昇す
るような場合に液面温度を下げることができる。
【0010】請求項4に係る発明は、保温筒19で包囲
されかつ支軸16の上端に固定された石英るつぼ13に
シリコン多結晶を融解して貯留されたシリコン融液12
から成長するシリコン単結晶棒25を引上げる方法の改
良である。その特徴ある点は、石英るつぼ13の底部と
保温筒19により囲まれる空間に支軸16に嵌入して設
けられた環状の断熱体27をシリコン多結晶の融解時に
石英るつぼ13の底部近傍の第1位置に上昇し、シリコ
ン単結晶棒25の引上げ時に断熱体27を第1位置より
下方に移動させるところにある。環状の断熱体27をシ
リコン多結晶融解時に第1位置に上昇させることによ
り、カーボンヒータ18が加熱すべき空間は縮小し、石
英るつぼ13に当初入れられたシリコン多結晶を融解す
る際のカーボンヒータ18の電力消費量を低減させる。
シリコン単結晶棒25の引上げ時に断熱体27を第1位
置より下方の位置で上下動させることにより、カーボン
ヒータ18が加熱すべき空間を拡大又は縮小させ、熱が
拡散する体積を変化させることによりカーボンヒータ1
8の電力を変更することなくシリコン融液12の融液面
温度を調整する。
【0011】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を図面に
基づいて説明する。図1〜図3に示すように、シリコン
単結晶の引上げ装置10のチャンバ11内には、シリコ
ン融液12を貯留する石英るつぼ13が設けられ、この
石英るつぼ13の外面は黒鉛サセプタ14により被覆さ
れる。石英るつぼ13の下面は黒鉛サセプタ14を介し
て支軸16の上端に固定され、この支軸16の下部はる
つぼ昇降手段17に接続される。るつぼ昇降手段17は
図示しないが石英るつぼ13を回転させる第1回転用モ
ータと、石英るつぼ13を昇降させる昇降用モータとを
有し、これらのモータにより石英るつぼ13が所定の方
向に回転し得るとともに、上下方向に移動可能となって
いる。石英るつぼ13の外周面は石英るつぼ13から所
定の間隔をあけてカーボンヒータ18により包囲され、
このカーボンヒータ18は保温筒19により包囲され
る。カーボンヒータ18は石英るつぼ13に投入された
高純度のシリコン多結晶を加熱・融解してシリコン融液
12にする。
【0012】またチャンバ11の上端には円筒状のケー
シング21が接続される。このケーシング21には引上
げ手段22が設けられる。引上げ手段22はケーシング
21の上端部に水平状態で旋回可能に設けられた引上げ
ヘッド(図示せず)と、このヘッドを回転させる第2回
転用モータ(図示せず)と、ヘッドから石英るつぼ13
の回転中心に向って垂下されたワイヤケーブル23と、
上記ヘッド内に設けられワイヤケーブル23を巻取り又
は繰出す引上げ用モータ(図示せず)とを有する。ワイ
ヤケーブル23の下端にはシリコン融液12に浸してシ
リコン単結晶棒25(図2及び図3)を引上げるための
種結晶24が取付けられる。
【0013】更に、チャンバ11にはこのチャンバ11
のシリコン単結晶棒側に不活性ガスを供給しかつ上記不
活性ガスをチャンバ11のるつぼ内周面側から排出する
ガス給排手段28が接続される。ガス給排手段28は一
端がケーシング21の周壁に接続され他端が上記不活性
ガスを貯留するタンク(図示せず)に接続された供給パ
イプ29と、一端がチャンバ11の下壁に接続され他端
が真空ポンプ(図示せず)に接続された排出パイプ30
とを有する。供給パイプ29及び排出パイプ30にはこ
れらのパイプ29,30を流れる不活性ガスの流量を調
整する第1及び第2流量調整弁31,32がそれぞれ設
けられる。
【0014】一方、引上げられるシリコン単結晶棒25
(図2及び図3)の外周面と石英るつぼ13の内周面と
の間には、シリコン単結晶棒25を包囲する筒状の熱遮
蔽体26が設けられる。熱遮蔽体26はシリコン融液1
2の熱をシリコン単結晶棒25に到達しないように遮蔽
するために設けられ、この熱遮蔽体26の上縁には外方
に略水平方向に張り出すフランジ部26aが連設され
る。このフランジ部26aを保温筒19上に載置するこ
とにより熱遮蔽体26はチャンバ11内に固定され、熱
遮蔽体26の下縁は石英るつぼ13に貯留されたシリコ
ン融液12表面から所定の距離だけ上方に位置するよう
に構成される。
【0015】石英るつぼ13の底部と保温筒19により
囲まれるカーボンヒータ18が加熱する空間には環状の
断熱体27が支軸16に嵌入して設けられる。図4及び
図5に示すように、断熱体27には2つの窓孔27cが
形成され、窓孔27cにはこの窓孔27cを開放可能に
閉止する閉止板27dがそれぞれ設けられる。断熱体2
7及び閉止板27dは環状のカーボンのケーシング27
bの内部に断熱材27aを充填することにより作られ
(図4)、それぞれの閉止板27dは連結部材27fに
より互いに連結される。なお、断熱体27はガス給排手
段28(図1〜図3)により供給された不活性ガスを流
通させるための隙間を保って保温筒19の下部に遊挿し
て設けられ、不活性ガスを流通させるため図示しない複
数の通孔が形成される。
【0016】図1〜図3に戻って、断熱体27はカーボ
ンヒータ18からの放熱を反射しかつその熱を蓄熱す
る。これにより、断熱体27は石英るつぼ13周囲の熱
が断熱体27の下方に放散するのを防ぐように構成され
る。チャンバ11の下部には一対の断熱体昇降手段41
が設けられる。断熱体昇降手段41は周囲にラックギヤ
(図示せず)が形成されチャンバ11の下部である下壁
に挿通された支持棒42と、チャンバ11の下方に設け
られラックギヤに歯合する駆動ギヤと、この駆動ギヤを
駆動する駆動モータ46とを有する。駆動ギヤはギヤボ
ックス43に内蔵されて駆動モータ46による駆動ギヤ
の回転により支持棒42を上下動可能に構成され、支持
棒42の上端には断熱体27が固定される。この断熱体
昇降手段41は、支持棒42を上下動させることにより
断熱体27を上昇又は下降させるように構成される。
【0017】また、断熱体昇降手段41には断熱体27
の閉止板27dを駆動して窓孔27cを開閉する窓孔開
放手段61が設けられる。窓孔開放手段61は周囲にラ
ックギヤ(図示せず)が形成されチャンバ11の下壁に
挿通された補助支持棒62a,62bと、支持棒41に
固着された台板64に設けられラックギヤに歯合する補
助駆動ギヤが内蔵された補助ギヤボックス63と、この
補助駆動ギヤを駆動する補助モータ66とを有し、一方
の補助支持棒62aは回転可能に設けられる。それぞれ
の補助支持棒62a,62bの上端には支持板67が設
けられ、支持板67には連結部材27fが支軸16を中
心として回転可能に設置される。支持板67は支軸16
及び支持棒42に遊嵌して設けられ、図4及び図5に詳
しく示すように、支持板67に下方から貫通した一方の
補助支持棒62aの上端には、連結部材27fの周囲に
形成されたギヤに歯合する回転ギヤ62cが設けられ
る。
【0018】図4に示すように、一方の補助支持棒62
aの中間には、一端が支持棒42に遊嵌して設けられ他
端がこの補助支持棒62aに回転可能にかつ移動不能に
取付けられた補助台板71が設けられる。補助台板71
には回転モータ72が取付けられ、補助支持棒62aは
この回転モータ72により互いに歯合する回転ギヤ73
を介して回転可能に構成される。この窓孔開放手段61
は、補助モータ66により補助ギヤボックス63に内蔵
された図示しない補助駆動ギヤを回転させ、補助支持棒
62を上方に移動させることにより支持板67を介して
閉止板27dを上昇させ、閉止板27dが上昇すること
により窓孔27cを閉止板27dで閉止するように構成
される。一方、窓孔開放手段61により、補助支持棒6
2を図4の実線で示すように下方に移動させると、閉止
板27dが下降して窓孔27cが開放され、回転モータ
72が回転ギヤ73を介して一方の補助支持棒62aを
図の破線矢印で示すように回転させることにより、連結
部材27fが閉止板27dとともに回転してその開放面
積を拡大できるように構成される。
【0019】一方、引上げ手段22における引上げ用モ
ータの出力軸(図示せず)にはロータリエンコーダ(図
示せず)が設けられ、るつぼ昇降手段17には石英るつ
ぼ13内のシリコン融液12の重量を検出する重量セン
サ(図示せず)と、支軸16の昇降位置を検出するリニ
ヤエンコーダ(図示せず)とが設けられる。更にこの引
上げ装置10にはシリコン融液12の融液面温度を検出
する図示しない温度センサが設けられる。ロータリエン
コーダ、重量センサ、リニヤエンコーダ及び温度センサ
の各検出出力はコントローラ(図示せず)の制御入力に
接続され、コントローラの制御出力は引上げ手段22の
引上げ用モータ、るつぼ昇降手段17の昇降用モータ、
断熱体昇降手段41の駆動モータ46及び窓孔開放手段
61の補助モータ66、回転モータ72にそれぞれ接続
される。またコントローラにはメモリ(図示せず)が設
けられ、このメモリにはロータリエンコーダの検出出力
に対するワイヤケーブル23の巻取り長さ、即ちシリコ
ン単結晶棒25の引上げ長さが第1マップとして記憶さ
れ、重量センサの検出出力に対する石英るつぼ13内の
シリコン融液12の液面レベルが第2マップとして記憶
される。コントローラは重量センサの検出出力に基づい
て石英るつぼ13内のシリコン融液12の液面を常に一
定のレベルに保つように、るつぼ昇降手段17の昇降用
モータを制御するとともに、断熱体27をるつぼ昇降手
段17と独立して上昇又は下降するように断熱体昇降手
段41の駆動モータ46を制御するように構成される。
【0020】このように構成された装置による本発明に
よるシリコン単結晶の引上げ方法を説明する。先ず、石
英るつぼ13には高純度のシリコン多結晶を投入され、
カーボンヒータ18によりこの高純度のシリコン多結晶
を加熱・融解してシリコン融液12にする。このシリコ
ン多結晶の融解に際し、図1に示すように、断熱体昇降
手段41は支持棒42を矢印で示すように上方に移動さ
せ、断熱体27を石英るつぼ13の底部近傍の第1位置
に配置する。この際に断熱体27の窓孔27cは閉止板
27dにより閉じておく。断熱体27を第1位置に配置
することによりカーボンヒータ18が加熱すべき空間は
縮小し、石英るつぼ13に当初入れられたシリコン多結
晶を融解する際のカーボンヒータ18の電力消費量を低
減させる。
【0021】シリコン多結晶が融解して石英るつぼ13
にシリコン融液12が貯留された後、第1及び第2流量
調整弁31,32を開くことにより不活性ガスをケーシ
ング21内に供給してシリコン融液12の表面から蒸発
したガスをこの不活性ガスとともに排出パイプ30から
排出させるとともに、シリコン単結晶棒25を引上げる
シリコン融液12の融液面温度を所定の温度に調整す
る。この温度調整は、融液面温度が低い場合にはカーボ
ンヒータ18による所定時間の加熱により行われ、融液
面温度が高い場合には断熱体昇降手段41により断熱体
27を第1位置より下方に移動させることにより行われ
る。断熱体27の移動によりカーボンヒータ18が加熱
すべき空間は拡大し、これにより熱が拡散する体積が増
大するため、カーボンヒータ18の電力を変更すること
なく融液面温度は低下する。
【0022】シリコン融液12の融液面温度を調整した
後、引上げ手段の図示しない引上げ用モータによりワイ
ヤ19を繰出して種結晶24を降下させてその先端部を
シリコン融液12に接触させる。その後種結晶24を徐
々に引上げて種絞り部25aを形成した後、更に種結晶
24を引上げて図1に示すように、種絞り部25aの下
部に先ず肩部25bを育成させる。その後種結晶24を
更に引上げることにより図2に示すように肩部25bの
下方に直胴部25cを形成する。この直胴部25cの形
成はカーボンヒータ18の電力を変更することなく行
い、断熱体昇降手段41が支持棒42を矢印で示すよう
に下方に移動させて断熱体27を第1位置より下方に移
動することによりカーボンヒータ18の余剰熱量を吸収
する。即ち、カーボンヒータ18が加熱すべき空間を拡
大することにより熱の拡散体積を増大させ、カーボンヒ
ータ18の電力を変更することなくシリコン融液12の
融液面温度を所定の温度に保つ。
【0023】図3に示すように、直胴部25cが所定長
さ育成されるとシリコン単結晶棒25の表面積は増大
し、この表面積から放散される熱量は上昇する。この放
散される熱量の上昇に伴い直胴部25cが所定長さ育成
されたシリコン融液12の融液面温度は低下する。断熱
体昇降手段41は支持棒42を破線矢印で示すように上
方に移動させて断熱体27を移動することによりこの融
液面温度の低下を防止する。即ち、断熱体昇降手段41
はカーボンヒータ18の電力を変更することなく、カー
ボンヒータ18が加熱すべき空間を縮小することにより
シリコン融液12の融液面温度を所定の温度に保つ。な
お、直胴部25cの育成とともにシリコン融液12は減
少し、この融液12の量に応じて図示しない昇降用モー
タはるつぼ13を上昇させ、図に示すように、種結晶2
4の引上げとともに低下するシリコン融液12の表面を
所定位置に維持させる。
【0024】なお、上述した実施の形態では、環状のカ
ーボンのケーシング27bの内部に断熱材27aを充填
した断熱体27を使用したが、断熱体は環状のモリブデ
ンからなる板材であっても良い。また、上述した実施の
形態では、直胴部25cの形成当初、断熱体昇降手段4
1が支持棒42を介して断熱体27を第1位置より下方
に移動することによりカーボンヒータ18が加熱すべき
空間を拡大してシリコン融液12の融液面温度を所定の
温度に保ったが、断熱体27が最下位置に達したにも拘
らず液面温度が上昇するような場合には、図4に示すよ
うに、窓孔開放手段61により断熱体27に形成された
窓孔27cを開放してカーボンヒータ18が加熱すべき
空間を更に拡大する。このように空間を更に拡大してシ
リコン融液12の融液面温度を所定の温度に保つことに
よりカーボンヒータ18の電力を一定にしてカーボンヒ
ータ18の電力変化に伴う熱ストレスによるカーボンヒ
ータ18及び石英るつぼ13の劣化を抑制する。
【0025】
【実施例】次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく
説明する。 <実施例1>図1に示すように、内径が400〜600
mm、高さが700〜1000mmの保温筒19を有す
るシリコン単結晶の引上げ装置10に、環状の断熱体2
7を支軸16に遊嵌して断熱体昇降手段41の支持棒4
2に固着した。この断熱体27は厚さ約200mmの環
状のカーボンのケーシング27bの内部に断熱材27a
を充填することにより作られたものを使用した。このよ
うに構成された引上げ装置10を実施例1とした。 <比較例1>図示しないが断熱体27を設けないことを
除いて、引上げ装置を上記実施例1と同一に構成した。
この引上げ装置を比較例1とした。
【0026】<比較試験及び評価>実施例1及び比較例
1の各引上げ装置にて直胴部25cの直径300〜35
0mmのシリコン単結晶棒25を引上げ速度0.1〜
1.0mm/分で引上げたときの電力消費量と固化率と
の関係を熱伝導解析プログラムにてシミュレーション計
算して比較を行った。比較例1では肩部25bの形成時
における電力を100としてカーボンヒータ18の電力
量を変化させてシリコン融液12の融液面温度を一定に
するようにシミュレーション計算した。実施例1では肩
部25bの形成時及び直胴部25cの形成時における電
力を比較例1の肩部形成時の電力の71%とし、カーボ
ンヒータ18の電力を変化させることなく断熱体27を
下降又は上昇させてシリコン融液12の融液面温度を一
定にするようにシミュレーション計算した。この結果を
図6に示す。また、実施例1では断熱体27の下面と保
温筒19の下端まで垂直距離をH(図1)とするとき、
固化率と断熱体27の上下動による垂直距離Hとの関係
のシミュレーション計算された値を図7に示す。なお、
固化率は、引上げられたシリコン単結晶棒25の重量を
石英るつぼ13に当初貯留されたシリコン融液12の重
量で除した値に100を乗じた値として表した。
【0027】図6より明らかなように、比較例1ではシ
リコン単結晶棒25の肩部25bを形成する時点が最大
値を示し、その後徐々に低下し約43%の固化率の時点
において最底値である85.5%を示し、その後僅かに
上昇した。肩部25bの形成後徐々に電力が低下したの
はシリコン多結晶を融解する際のカーボンヒータ18の
電力に比較してシリコン融液12を所定温度維持のため
の電力が低いためと考えられる。また、シリコン単結晶
棒25の育成に伴い電力が最底値を示した後僅かに上昇
したのは、シリコン単結晶棒25の表面積が増大して放
散される熱量が上昇したことに起因するものと考えられ
る。実施例1では、図7に示すように断熱体27を移動
させることにより、比較例1の肩部形成時の電力の71
%であってもシリコン融液12の融液面温度を一定しつ
つシリコン単結晶棒25を有効に引上げられることが判
明した。これは断熱体27の移動によりカーボンヒータ
18が加熱すべき空間が拡大又は縮小することによりカ
ーボンヒータ18からの熱が放散する体積変化によるも
のと考えられる。
【0028】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、石
英るつぼの底部と保温筒により囲まれる空間に環状の断
熱体を支軸に嵌入して設け、断熱体をるつぼ昇降手段と
独立して上昇又は下降させる断熱体昇降手段を備えたの
で、シリコン多結晶を融解する際に断熱体昇降手段で断
熱体を上昇させてカーボンヒータが加熱すべき空間を縮
小させれば、シリコン多結晶融解時におけるカーボンヒ
ータの電力消費量を低減させることができる。また、断
熱体昇降手段により断熱体を上昇又は下降してカーボン
ヒータが加熱すべき空間を縮小又は拡大すればカーボン
ヒータの電力を変化させることなくシリコン融液の温度
を均一にすることができる。特に、融解後におけるシリ
コン融液の融液面温度が高い場合の調整が、従来カーボ
ンヒータの電力を停止して放置することにより行ってい
た場合に比較して、断熱体昇降手段により断熱体を第1
位置より下方に移動させることにより容易かつ速やかに
その調整を行うことができる。
【0029】また、断熱体に窓孔を形成し、窓孔を開放
可能に閉止する閉止板を設け、この閉止板を駆動して窓
孔を開閉する窓孔開放手段を設ければ、断熱体昇降手段
が断熱体を移動することによる空間の拡大量を超えてカ
ーボンヒータが加熱すべき空間を更に拡大することがで
きる。この結果、カーボンヒータの電力を変化させるこ
となくシリコン融液の温度を確実に均一にしてカーボン
ヒータの電力変化に伴うカーボンヒータ及び石英るつぼ
の劣化を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリコン単結晶の引上げ装置の肩部引
上げ時における断面構成図。
【図2】シリコン単結晶棒の直胴部が引上げられた状態
を示す図1に対応する断面構成図。
【図3】シリコン単結晶棒の直胴部が更に引上げられた
状態を示す図1に対応する断面構成図。
【図4】図5における断熱体のB−B線断面を含むチャ
ンバ下部の拡大断面図。
【図5】図1におけるその断熱体のA−A線断面図。
【図6】シリコン単結晶棒の固化率とカーボンヒータの
電力との関係を示す図。
【図7】シリコン単結晶棒の固化率と断熱体の位置との
関係を示す図。
【符号の説明】
10 シリコン単結晶の引上げ装置 11 チャンバ 12 シリコン融液 13 石英るつぼ 16 支軸 17 るつぼ昇降手段 18 カーボンヒータ 19 保温筒 25 シリコン単結晶棒 27 断熱体 27c 窓孔 27d 閉止板 41 断熱体昇降手段 42 支持棒 46 駆動モータ 61 窓孔開放手段
フロントページの続き (72)発明者 喜田 道夫 東京都千代田区大手町1丁目5番1号 三 菱マテリアルシリコン株式会社内 (72)発明者 島貫 康 東京都千代田区大手町1丁目5番1号 三 菱マテリアルシリコン株式会社内 Fターム(参考) 4G050 FE03 FE16 4G077 AA02 BA04 CF00 EG18 EH07 5F053 AA12 AA22 BB04 BB13 DD01 FF04 GG01 RR01 RR13

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支軸(16)の上端に固定されかつチャンバ
    (11)内に設けられシリコン融液(12)を貯留する石英るつ
    ぼ(13)と、前記石英るつぼ(13)を前記支軸(16)を介して
    上昇又は下降させるるつぼ昇降手段(17)と、前記石英る
    つぼ(13)をカーボンヒータ(18)とともに包囲する保温筒
    (19)とを備えたシリコン単結晶の引上げ装置において、 前記石英るつぼ(13)の底部と前記保温筒(19)により囲ま
    れる空間に環状の断熱体(27)が前記支軸(16)に嵌入して
    設けられ、 前記断熱体(27)を前記るつぼ昇降手段(17)と独立して上
    昇又は下降させる断熱体昇降手段(41)を備えたことを特
    徴とするシリコン単結晶の引上げ装置。
  2. 【請求項2】 断熱体昇降手段(41)が、チャンバ(11)の
    下部に挿通され周囲にラックギヤが形成され上端に断熱
    体(27)が取付けられた支持棒(42)と、前記チャンバ(11)
    の下方に設けられ前記ラックギヤに歯合する駆動ギヤ
    と、前記駆動ギヤを駆動する駆動モータ(46)とを有する
    請求項1記載のシリコン単結晶の引上げ装置。
  3. 【請求項3】 断熱体(27)に1又は2以上の窓孔(27c)
    が形成され、前記窓孔(27c)を開放可能に閉止する閉止
    板(27d)が設けられ、断熱体昇降手段(41)に前記閉止板
    (27d)を駆動して前記窓孔(27c)を開閉する窓孔開放手段
    (61)が設けられた請求項1又は2記載のシリコン単結晶
    の引上げ装置。
  4. 【請求項4】 保温筒(19)で包囲されかつ支軸(16)の上
    端に固定された石英るつぼ(13)にシリコン多結晶を融解
    して貯留されたシリコン融液(12)から成長するシリコン
    単結晶棒(25)を引上げる方法において、 前記石英るつぼ(13)の底部と前記保温筒(19)により囲ま
    れる空間に前記支軸(16)に嵌入して設けられた環状の断
    熱体(27)を前記シリコン多結晶の融解時に前記石英るつ
    ぼ(13)の底部近傍の第1位置に上昇し、 前記シリコン単結晶棒(25)の引上げ時に前記断熱体(27)
    を前記第1位置より下方に移動させることを特徴とする
    シリコン単結晶の引上げ方法。
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