WO2024143517A1 - 焼結金属材料、焼結用金属微粒子及びそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微細粒組織を有する焼結金属材料、焼結用金属微粒子及びその製造方法を提供する。 【解決手段】積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下の金属の塩から有機物で被覆された金属微粒子を作製し、通常の粉末冶金の方法で700℃以上の温度で常圧焼結し、冷却することで金属の組織中に、双晶間隔が250nm以下の焼鈍双晶が導入された微細粒組織を有する材料により、上記課題を解決する。

Description

焼結金属材料、焼結用金属微粒子及びそれらの製造方法
 本発明は、微細粒組織を有する焼結金属材料、焼結用金属微粒子及びそれらの製造方法に関する。
 金属材料の高強度化を目指した結晶粒微細化に関する研究がなされている。この分野の技術は、焼結法や電析法に代表されるボトムアップアプローチと、加工熱処理法や超強加工法に代表されるトップダウンアプローチの2つに分類される。これらの方法によって、高強度のナノ結晶金属(平均結晶粒子径が100nm以下)や超微細結晶粒金属(平均結晶粒子径が0.1~1.0μm)がバルク状で作製できるようになっている。
 トップダウンアプローチ法としての加工熱処理法は、最も一般的な結晶粒微細化法であり、加工後の材料を各種条件で熱処理することによって結晶粒を微細化するものである。しかし、この加工熱処理法で得られる結晶粒径は、最小でも1μmであり、通常は10μm程度である(特許文献1,2)。これをさらに進めた超強加工法は、圧下率が95%以上に相当する加工ひずみを加えて結晶粒を超微細化できる。超強加工法の代表的な例は、ESCP法やARB法であり、結晶粒径が0.1μm程度の超微細結晶粒を得ることが可能である(非特許文献1~3)。超強加工法は、従来の加工熱処理法で問題となる静的再結晶挙動を示さず、粒成長のみを示すことが報告されている。超強加工法は、超微細粒組織が得られることで高い強度の材料が得られ、合金元素添加に代わる高強度化の方法として注目されている。
 一方、ボトムアップ法としての焼結法は、ガスアトマイズや水アトマイズで作製された金属粉をボールミル等の機械装置で微細に粉砕し、金属粉に巨大なひずみを加えて結晶粒径を0.1μm以下の粉末に改質することができる(以下、MM法という。)。このMM法において、放電プラズマ焼結法(以下、SPS法という。)を利用して低温・短時間で焼結させることで、焼結時の結晶粒成長を抑えて、ナノ結晶金属のバルク体が作製されている(以下、MM-SPS法という。)(特許文献3,4、非特許文献4)。
 高強度微細結晶粒の金属薄膜は、電析法による開発が進められており、定電流電析法や、結晶粒径をさらに微細化できるパルス電析法によって、高強度のナノ結晶金属や超微細結晶粒金属の薄膜が作製され、その電気的特性や疲労特性等の解析が進められている(特許文献5)。
 さらに金属の超微粒子を固化して、超微細粒組織を有する材料の創製も試みられている。非特許文献5では、ガス中蒸発法で作製した銅・ニッケル・コバルト・鉄の超微粒子(粒径:0.02~0.05μm)を一軸加圧、無加圧焼結における緻密化条件、結晶粒度、密度、硬さを調べている。また、非特許文献6では、熱プラズマ法で作製した銅及ニッケルの超微粒子(粒径:0.09μm)を用いて酸化の影響を排除した条件で一軸加圧、無加圧焼結により固化体を作製して組織、密度、硬さ等を調べている。これらの調査により、超微粒子の低温固化によって高強度な超微細粒組織が作製可能であることが示されている。
 次に、本発明に係る焼結金属材料の原料となる焼結用金属微粒子及びその製造方法に関する技術的背景について説明する。
 金属粉末から金属バルク体を作製する方法で産業的に利用されている技術としては、金属粉末を金型に入れて圧縮成形し、高温で焼結して精度の高い部品をつくる粉末冶金法、及び、金属粉末と樹脂を混煉してペレットを作製し、これを金型に射出成形し、脱脂、焼結してさらに高精度で複雑な形状の部品を作製する金属射出成形法(以下、MIM法という)が知られている。粉末冶金法で用いられる金属粉末は数10~数100μm程度であり、MIM法で用いられる金属粉末は数μm~10μmであるが、粉末冶金法やMIM法における成形技術は、MIM用粉末を用いたマイクロ成形技術やサブμmの金属粉末を用いたμ-MIM法等が開発されており、材料技術のトレンドは、金属粉末の微細化であり、微細金属粉末やナノ金属粉末に向かって開発が進められている。
 粉末冶金法やMIM法で用いられる金属粉末は水アトマイズ法やガスアトマイズ法で作製されているが、これより小さい1μm以下の金属粉になると、特別な製造方法が必要とされる。微細な金属粉末を作製する技術開発は、積層セラミックコンデンサー(以下、MLCCという。)の内部電極材料をはじめとした焼結型金属ペースト剤の金属粉末が牽引する形で進められてきた。特にMLCCの分野においては、内部電極形成に用いられるニッケル粉末の平均粒子径が0.10μm以下の0.05μm程度まで検討が進められている。
 ニッケル粉末の製造方法は、乾式法と湿式法に大別される。乾式法には、気相法に分類される高温の塩化ニッケル蒸気を水素で還元してニッケル粉末を作製する化学気相成長法や、ニッケル粗粉をプラズマ中で蒸発気化させてニッケル粉末を作製するプラズマ化学気相析出法(共にCVD法に分類)と、物理気相析出法(PVD法)とがある。
 気相法は、1000℃以上の高温プロセスで作製されるため、結晶性の高い金属粒子が得られるが、粒度分布の制御が難しい。特にMLCCの分野では、絶縁破壊の要因となる粗粒子の除去と合わせて、活性の高い微細粉の除去が同時に必要とされ、要求される粒度品質を確保するためには分級処理が必須で大きなコストアップの要因となっている。また、内部電極の薄層化で、0.05μm~0.10μmと小さいニッケル粒子が求められており、より高度な分級技術が必要となっている。
 一方、湿式法は、気相法と比較して、得られるニッケル粉末の粒度分布が狭いという利点がある。一般に湿式法で得られるニッケル粉末は、ニッケル金属錯塩の熱分解により発生する金属核が成長して30nm以下の一次粒子を形成し、これが凝集して擬球形の二次粒子を形成すると言われている(特許文献10)。また、ギ酸金属塩をアミン化合物で錯体化して熱分解で還元して金属粒子を得る方法(特許文献11及び12)や、無機金属塩にアルカリを加えて金属水酸化物に変え、ヒドラジンと錯体化して熱分解で還元して金属粒子を得る方法(特許文献10及び13)等が知られている。
堀田喜治、「溶接学会誌」、Vol.74(2005)、No.2、p.88-91. 辻 伸泰、「鉄と鋼」、Vol.88(2002)、No.7、p.359-369. 辻 伸泰、「鉄と鋼」、Vol.94(2008)、No.12、p.582-589. 渡辺亮太郎、久保田正広、「銅と銅合金」、Vol.52(1)、p.240-244. 林 広爾、「日本金属学会誌」、Vol.55(1989)、No.6、p.608-613. 宇高政道、「日本金属学会誌」、Vol.58(1994)、No.11、p.1318-1326. 藤田大介、Journal of Surface Analysis、Vol.10(2003)、No.3、p.218-229. 林 広爾、「日本金属学会誌」、Vol.50(1986)、No.12、p.1089-1094. 西藪和明、「日本機械学会論文集」,Vol.79(2013)、807号、p.1593-1603. 西川精一、「生産研究」、Vol.18(1966)、1号、p.16-18. 林 広爾、「日本金属学会誌」、Vol.53(1989)、No.2、p.221-226.
特開昭62-182219号公報 WO2004/022805 特開2000-96111号公報 特開2009-41087号公報 特表2006-505101号公報 WO2007/114439 特開2008-1975号公報 特開2018-35010号公報 特開2015-160978号公報 特開2017-171957号公報 特開2015-227476号公報 特表2008-538593号公報 特開2008-274408号公報 特開平11-80647号公報
 (焼結金属材料に関する課題)
 最初に、本発明に係る焼結金属材料に関する課題について記載する。銅やニッケルの金属材料は、電気、電子、通信、情報、計測機器や自動車等の分野で広く使用されている。こうした分野で使用される金属材料は、部品としての機能と構造を維持するために、耐力や応力緩和性といった機械的な特性が重要視される。これらの特性を改善する方法としては、結晶粒を微細化することが最も有効な改善手段と考えられており、これまで記載してきたように様々な方法が開発されている。
 塑性加工による転位等格子欠陥導入により材料内部にはエネルギーが蓄積する。こうしたエネルギーを駆動力とし、回復→再結晶→粒成長の過程を経て、準安定化した超微細粒組織を形成できる。しかし、塑性加工により低下した再結晶温度よりも高い温度に置かれると、粒成長により強度が低下するという課題がある。
 この改善策として、結晶中に転位の障害物となる異なる結晶構造を持つ析出物を分散させ、転位運動を抑制するピニング効果が多用されている。例えば特許文献2では、黄銅合金に積層欠陥エネルギーを低下させるケイ素を添加し、核発生頻度を高めると同時にコバルトを添加して微細なCoSi等の粒子を析出することで結晶粒の成長を抑制し、高強度の銅合金としている。結晶粒を微細化して強化することで耐力が向上して応力緩和特性が改善されるが、再結晶温度が400℃前後と低く、長期の応力緩和特性を考慮すると、例えば150℃以上の耐熱性が必要な場合、クリープ特性の時間-温度換算則の観点から十分とは言えない。
 また、再結晶温度を超えるとピニング効果を担っている析出粒子がオズワルド成長で粒成長し、機械的特性が大幅に低下する。この変化は不可逆的であり、回復させることは困難である。
 非特許文献5及び6には、結晶粒微細化に塑性加工による駆動エネルギーを利用しない方法、つまり超微細粒子が持っている高い表面自由エネルギーを利用して焼結により固化体を作製する方法が記載されている。しかし、この方法では、300MPaといった比較的低い成形圧にも関わらず、600℃以上に加熱されると結晶粒が粗大化して硬度が低下することが示されている。
 特許文献6には、積層欠陥エネルギーが50mJ/m以下の金属又は合金からなる超微細粒組織を有する材料であって、結晶組織中に双晶間隔が200nm以下の変形双晶を持つ材料が記載されている。しかし、543Kの焼鈍熱処理で硬度が低下することも記載されている。
 特許文献7には、電着法でFCCナノ結晶金属に炭素を固溶させることにより、炭素が粒界に偏析し、優れた機械的特性が得られることが記載されている。しかし、実施例には300℃の加熱で結晶粒成長と硬度の低下が記載されている。また、炭素供給源としてサッカリンを用いているが、スルファメート法の添加剤としては一般的であり、非特許文献10には、冷間加工材とは異なるが電着時の残留応力によって加熱すると再結晶軟化することが知られていること、硬質メッキであるスルファメート法ニッケルメッキ層は、サブミクロン以下の微細結晶粒組織であり、初期硬度はビッカース硬度で400以上と高いが、300℃以上に加熱すると軟化傾向を示し、600℃の焼鈍熱処理では急激に軟化して50以下となること等が記載されている。
 800℃の高温焼鈍熱処理を行っても硬度が低下しない材料としては、ナノスケールのセラミック酸化物を均一に分散させたセラミック分散強化合金(ODS合金)が知られている。微細なセラミック粒子は、高温における結晶粒成長と転位運動をピニング効果によって抑制し、高温域の機械的特性を向上させている。しかし、製造にはメカニカルアロイング処理と熱間・冷間加工が必要とされ、均質な材質を得るためには時間もコストもかかるという問題がある。また、ナノ結晶を0.3~1.5重量%と比較的高濃度で分散強化しているため、溶接や固体拡散接合が困難であり、ロウ材を用いた液相接合が必要なことも課題となっている(具体例としては、米国ノースアメリカ・へガネス・ハイ・アロイズ社、アルミナ分散強化銅合金GLIDCOP(登録商標)がある)。
 ここで課題となる耐熱性については、1000℃以上といった絶対的な熱間強度が必要とされる高強度超耐熱金属材料ではなく、150℃~400℃の中温域で機械的強度が要求される分野、例えば次世代パワー半導体や車載モーター等の200℃以上の高温動作が要求される分野、セラミックと電極材の同時焼成が必要とされるセラミック電子部品、ロウ付作業を必要とするヒートシンク部品等の製造プロセスで付加される熱履歴が課題とされる分野、使用上過渡的に加わる異常発熱・加熱によって機能部品や構造材料等に致命的な損壊を生じことのない高い信頼性が求められる分野、等において、800℃以上の二次再結晶化温度を持ち、焼鈍軟化特性に優れた高強度金属材料を提供可能な結晶粒微細化技術が求められている。
 (金属微粒子及びその製造方法に関する課題)
 次に、本発明に係る微細粒組織を有する焼結金属材料の原料となる焼結用金属微粒子及びその製造方法に関する課題について記載する。
 焼結金属材料の高強度化を達成させるには、焼結体内の残留空隙を極限まで除去をすることが重要である。非特許文献8には、通常の粉末冶金法で用いられる普通粒度の粉末(数10~数100μm)の焼結挙動と、粒径の小さな金属微粒子(0.05μm)の焼結挙動とが異なっていることが報告されている。さらに非特許文献8には、通常粒度の銅粉末を用いた場合、圧粉体密度を90~95容量%以上として焼結すると、焼結体は閉じ込められたガス圧で膨張する現象が発生することが記載され、圧粉体密度を90~95容量%とすると、膨張も収縮も生じない焼結体が得られることが記載され、これに対してガス中蒸発法で作製した銅微粒子(0.05μm)の場合は、圧粉体密度を55容量%以上ではガス圧で膨張するが、圧粉体密度が55容量%以下では膨張することなく100容量%に近い焼結密度が得られることが記載され、この粒度による差異は粒子間の空隙径に対応した還元性ガスの流入及び発生ガス流出が要因であることが記載されている。この報告は、金属微粒子が有機物で覆われていない理想状態での検証であるが、実際の産業的なプロセスでは状況が異なると考えられる。
 粒子径が10μm以下の金属粉末を成形して焼結体を得る方法としてMIM法が実施され、最近ではサブμmの金属粉末を利用したμ-MIM法も実施されている。MIM法は、熱分解性に優れるポリマー中に金属粉末を高密度で充填して成形金型に射出成形を行い、脱脂・焼成することで複雑な形状の金属部品を高精度で作製ができる製法として広く普及している。非特許文献8では、粒子径が10μmと0.7μmの銅粉末をMIM法で作製し、その焼結特性について報告している。焼成条件を最適化することで、焼結密度は、焼成温度700℃以上で、93容量%、95容量%の結果が得られている。また、焼結体の炭素量は、それぞれ、0.013重量%、0.025重量%の値が得られている。0.7μmの銅粉末で前述の放電プラズマ焼結法(SPS法)を実施した場合は、焼結密度が99.8容量%まで向上し、熱間等方圧加圧法(HIP法)で98.9容量%まで向上すること等が報告されている。MIM法で焼結体を作製した場合、粒子径が小さいサブμm銅粉の方が95容量%と高密度であるが、残留炭素濃度はマイクロ銅粉の2倍となっており、溶製材と比較して炭素含有量が多いことが課題として指摘されている。
 微細粒組織を有する高密度の焼結金属材料を得るには、粒径が小さく、粒度の揃った金属微粒子が適しているが、焼成時の還元ガスの流入、水蒸気や有機物の分解ガスの流出経路となる開気孔の確保、残留炭素のコントロール、空隙の縮小によるナノ空隙を如何に達成するか、が最大の課題である。
 (金属微粒子の製造方法に関する課題)
 金属粉末の更なる微小化は、MLCC等のセラミック電子部品の分野で顕著である。内部電極形成に用いられるニッケル粉末の平均粒子径は、0.10μm以下、0.05μm程度まで検討が進められている。以下、MLCC分野のニッケル粉末を事例に説明する。
 MLCC分野で内部電極材料であるニッケル粉末に対する技術課題は、0.10μm以下で粒度分布が揃っていることが前提条件となっている。また、誘電体セラミック層とニッケル内部電極層とを数百層から千層近くまで積層して同時焼成する必要があるため、ニッケル内部電極層の焼結挙動が性能、品質、コストの面で重要な課題項目として開発がなされている。
 既述したように、ニッケル粉末の製造方法は、乾式法と湿式法に大別されるが、湿式法には、気相法と比較して、得られるニッケル粉末の粒度分布が狭いという利点がある。特許文献10には、湿式還元反応で得られるニッケル粉末は、一次粒子として30nm以下の微結晶粒子が析出し、この微結晶粒子が凝集して0.05~0.30μmの概球形の二次粒子を形成していることが記載されている。また、同文献には、微細なニッケル粉末が触媒活性を有しており、脱バインダ工程時に樹脂が低温で分解ガス化することや、低温で焼結することで不具合を生じる場合があると記載され、この対策として、硫化物を添加して、触媒の不活化と焼結の高温化を改善する提案がされている。
 特許文献11には、ニッケル粒末が一次粒子の凝集体で成り立っているため、結晶子径が気相法で作製したものよりも小さく、凝集粒界の間に窒素やアルカリ金属等の不純物が介在して不具合を生じることが指摘され、この対策として、結晶子径を大きくすることで改善できることが記載されている。
 しかし、これらの湿式法の製造方法は、反応温度が気相法に比べると100℃と低いため、結晶子径を大きくするには限界がある。また、粒径制御するため、ニッケルよりも貴な核となる金属元素を添加し、触媒活性や焼結特性の不具合を改善するために硫化物を添加しており、電気伝導性を必要とする電極材料には好ましくない。また、工程が複雑となり、排水処理の負荷が上昇する等、コスト面でも不利となる。
 金属微粒子を出発原料として常圧で焼成して結晶粒が微細な金属組織を得るために、再結晶粒に相当する金属微粒子は高い焼結性を実現するため、粒子径ができる限り細かくて粒度が揃っていることが不可欠となる。また、製造方法においては、安全性、対環境性、大量生産性、及びコストを考慮した技術が必要とされる。
 (本発明の目的)
 本発明の目的は、高強度と耐熱性を実現できる焼結金属材料を提供することにある。本発明の他の目的は、高強度と耐熱性を実現できる焼結金属材料の製造方法を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、高強度と耐熱性の焼結金属材料を実現できる焼結用金属微粒子を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、安全性、対環境性、大量生産性、及びコストを考慮した焼結用金属微粒子の製造方法を提供することにある。
 (1)本発明に係る焼結金属材料は、積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能な金属からなる焼結金属材料であって、平均結晶粒径が0.2~10μmの微細粒組織を有し、20nm以下のナノ空隙を有し、結晶粒組織中に双晶を含み、該双晶中の双晶間隔が5~250nmである、ことを特徴とする。
 この発明によれば、上記数値範囲内の構成要素を備えるので、高強度及び高い耐熱性を実現できる。特に、結晶粒組織が微細粒組織となっているので、高強度化に寄与していると考えられる。また、エネルギー的に安定な双晶が5~250nmの双晶間隔で高密度に形成され、併せてこの焼結金属材料に存在する微量な析出炭素がピニング効果を発現するので、耐熱性に寄与していると考えられる。
 本発明に係る焼結金属材料において、対応する純金属に対して電気電導率が75%以上であり、二次再結晶化温度が800℃以上である。この発明によれば、電気電導率と二次結晶化温度が上記範囲内であるので、高い電気伝導性と耐熱性を実現できる。
 本発明に係る焼結金属材料において、前記金属は、融点が950℃以上である。この発明によれば、融点が950℃以上の金属で構成されているので、この焼結金属材料の製造過程で存在する被覆剤の有機物の炭素化と被覆金属への炭素の固溶と析出が可能であり、好都合である。なお、ここで言う「被覆金属」とは、被覆剤の有機物の一部が炭素化されて、その被覆剤で被覆された金属に優先的に固溶したものを被覆金属という。
 本発明に係る焼結金属材料において、Co,Ni,Ag,Au,Pt,Pd,Rh及びCuの群から選択される1の金属である。この発明によれば、これら金属はいずれも積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能であるので、上記した析出した炭素がピニング効果として振る舞うことができ、高強度と高耐熱を実現できる。
 本発明に係る焼結金属材料において、Co,Ni及びCuの群から選択される1の金属である。この発明によれば、各分野においてこれらの金属を好ましく適用できる。
 本発明に係る焼結金属材料において、相対焼結密度が95容積%以上である。この発明によれば、高密度な焼結体とすることができる。
 本発明に係る焼結金属材料において、前記金属は純金属であって、炭素含有量が0.001~0.1重量%、窒素含有量が0.001重量%以下、硫黄含有量が0.01重量%以下であり、不可避不純物を除き、他の金属元素及び無機元素を含まない。この発明によれば、炭素、窒素、硫黄、その他の不可避不純物を実質的に含まない純金属で焼結金属材料が構成されているにもかかわらず、焼結された後においても微細粒組織を有し、耐熱性を有するという、従来にない微細組織構造を備えている。
 (2)本発明に係る焼結金属材料の製造方法は、積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能な金属微粒子を焼結して、平均結晶粒径が0.2~10μmの微細粒組織を有し、20nm以下のナノ空隙を有し、結晶粒組織中に双晶を含み、該双晶中の双晶間隔が5~250nmである焼結金属材料の製造方法であって、前記金属微粒子は、平均粒子径が20~200nmで、有機物で被覆されており、前記金属微粒子をペースト又はインキ化して印刷して乾燥して形成した乾燥皮膜体、又は、粉末成形法若しくは粉末射出成形法で成形した固化体、を焼結する、ことを特徴とする。
 この発明によれば、高強度で高い耐熱性を有する焼結金属材料を製造できる。
 (3)本発明に係る焼結用金属微粒子は、焼結金属材料の作製に使用される金属微粒子であって、平均粒子径が20~200nmであり、結晶子径が4~40nmであり、炭素及び/又は窒素を含む有機化合物を有し、前記炭素の含有率Cw(重量%)を前記結晶子径から算出された比表面積(m/g)で割った値が50~500(μg/m)であり、及び/又は、前記窒素の含有率Nw(重量%)を前記結晶子径から算出された比表面積(m/g)で割った値が5~100(μg/m)である、ことを特徴とする。
 この発明によれば、粒子最表面だけでなく、粒子内部にも被覆剤が存在していると考えられ、効果的に結晶粒成長を抑制することで微細な金属組織が得られる。
 本発明に係る金属微粒子において、前記金属微粒子表面の金属又は自然酸化膜(金属酸化膜及び/又は金属水酸化物、及び吸着水を含む。)に前記有機化合物が化学的若しくは物理的に吸着している単結晶体又は多結晶体で構成される一次粒子、又は、前記一次粒子が凝集した二次粒子である。この発明によれば、本来は高活性な金属微粒子の表面自由エネルギーを低減して安定化しており、大気中での取り扱いが容易である。
 本発明に係る金属微粒子において、前記金属微粒子を構成する金属は、積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、融点が950℃以上で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能である。この発明によれば、融点が950℃以上の金属で構成されているので、被覆剤の有機物の炭素化と被覆金属への炭素の固溶と析出が可能であり、好都合である。
 本発明に係る金属微粒子において、前記金属は、Co,Ni,Ag,Au,Pt,Pd,Rh及びCuの群から選択された1の金属である。これら金属はいずれも積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能であるので、この発明によれば、上記した析出炭素がピニング効果として振る舞うことができ、高強度と高耐熱を実現できる。
 本発明に係る金属微粒子において、前記金属は、Co,Ni及びCuの群から選択された1の金属である。この発明によれば、各分野においてこれらの金属を好ましく適用できる。
 (4)本発明に係る金属微粒子の製造方法は、標準酸化還元電位が-0.30V~+0.60Vの遷移金属を還元して平均粒子径が20~200nmの金属微粒子を製造する方法であって、
 標準酸化還元電位が-0.30V~+0.60Vの遷移金属のイオンの塩基性低分子有機酸金属塩と、前記塩基性低分子有機酸金属塩に対して少なくとも1モル%の長鎖脂肪族カルボン酸と、水及び/又はアルカノールアミン類と共沸混合物を形成可能な非極性溶媒とを加熱攪拌して、前記長鎖脂肪族カルボン酸を前記塩基性低分子有機酸金属塩に付加する第1工程と、
 前記塩基性低分子有機酸金属塩に対して4.0±1.0モル当量のアルカノールアミン類を錯化剤として添加した後、加熱攪拌して、前記塩基性低分子有機酸金属塩を完全に溶解して金属錯体に錯化する第2工程と、
 金属の配位水を含め反応液中の水と分解して遊離した前記錯化剤を共沸蒸留で留去しつつ、加熱攪拌して前記金属錯体を分解して金属水酸化物のゾルを作製し、さらに脱水して金属酸化物の微粒子に転換する第3工程と、
 前記金属酸化物が金属に還元される温度に加熱して平均粒子径が20~200nmの金属微粒子を作製する第4工程と、をその順で有する、ことを特徴とする。
 この発明によれば、少なくとも金属イオンの塩基性低分子有機酸塩と、錯化剤、塩基性調整剤及び還元剤として機能を有するアルカノールアミン類とを用い、水及び/又はアルカノールアミン類と共沸混合物を形成可能な非極性溶媒中で反応させて均一な溶解液を作製し、金属水酸化物のゾルを経由して、金属酸化物の均一な超微粒子となし、これを還元して金属微粒子を作製する。特に、焼結金属材料において炭素源となる有機化合物を反応初期の時点で金属イオンに結合させており、金属水酸化物や金属酸化物となっても金属原子の近傍に何らかの形で存在していると考えられ、最終的に炭素源が結晶粒界並びに粒子表面へ強固に付着した金属微粒子を得ることができる。
 標準酸化還元電位が+0.60ボルトを超える貴な金属の場合は、特別な製造方法でなくとも炭素源となる被覆材の有機化合物を共存させて、公知の方法で得ることができる。しかし、標準酸化還元電位が-0.30ボルト~+0.60ボルトの遷移金属では、公知の方法では作製が困難であり、新規な製造方法が必要であったが、本発明によれば、上記した第1~第4工程により、標準酸化還元電位が-0.30ボルト~+0.60ボルトの遷移金属であっても、平均粒子径が20~200nmの金属微粒子を製造することができる。
 本発明に係る金属微粒子の製造方法において、前記塩基性低分子有機酸金属塩が、塩基性炭酸金属塩、塩基性ギ酸金属塩、又は、塩基性酢酸金属塩である。この発明によれば、塩基性低分子有機酸金属塩が金属に固溶して金属純度を低下させる窒素、硫黄、ハロゲン元素を含まないため、原料由来の不純物を低減できる。
 本発明に係る金属微粒子の製造方法において、前記錯化剤のアルカノールアミンが還元剤となる。この発明によれば、NaBHやLiAlH等のヒドリド還元剤を用いないため、還元剤由来の不純物を低減できる。また、ヒドラジン等の毒性の高い化学物質も使用しないため、排液処理が容易となる。
 本発明に係る金属微粒子の製造方法において、前記塩基性低分子有機酸金属塩が塩基性ギ酸金属塩であり、前記第4工程において、過剰な錯化剤のアルカノールアミンをより塩基性の低い第2のアルカノールアミンと交換して還元させる。この発明によれば、金属核の原料となる金属酸化物の微粒子及び生成した金属微粒子の腐食を低減できるため、品質の高い金属微粒子が得られる。
 本発明に係る金属微粒子の製造方法において、前記標準酸化還元電位が-0.30ボルト~+0.60ボルトの遷移金属は、Co,Ni及びCuの群から選択される1の金属である。
 本発明によれば、微細粒組織を有する高強度と耐熱性を併せ持つ焼結金属材料を提供することができる。また、そうした焼結金属材料作製用の金属微粒子を提供することができる。また、微細粒組織を有する焼結金属材料を、金属微粒子を通常の粉末冶金法に準じた製造方法で容易に製造できる。
銅-炭素の二元合金状態図である。 ニッケル-炭素の二元合金状態図である。 コバルト-炭素の二元合金状態図である。 鉄-炭素の二元合金状態図である。 実施例3のニッケル微粒子の等時焼結特性試験で得られた熱収縮挙動と重量変化を示したグラフである。 実施例5のニッケル微粒子の等時焼結特性試験で得られた熱収縮挙動と重量変化を示したグラフである。 比較例3のニッケル微粒子の等時焼結特性試験で得られた熱収縮挙動と重量変化を示したグラフである。 実施例3、実施例5及び実施例6のニッケル微粒子の等時焼結特性試験で得られた熱収縮挙動を比較したグラフである。 実施例2の銅微粒子のSEM画像(5万倍)である。 実施例1の銅微粒子を焼結して得られる結晶組織のSEM画像であり、(A)は1万倍のSEM画像であり、(B)は10万倍のSEM画像である。 実施例5のニッケル微粒子を焼結して得られる結晶組織のSEM画像であり、(A)は1万倍のSEM画像であり、(B)は10万倍のSEM画像である。 (A)は、実施例6のコバルト微粒子を焼結して得られる結晶組織のSEM画像(2,500倍)である。(B)は、実施例6のコバルト微粒子を焼結して得られる結晶組織のSEM画像(1万倍)である。(C)は、実施例6のコバルト微粒子を焼結して得られる結晶組織のSEM画像(3万倍)である。 実施例1~7の粒子径及び結晶子径と炭素含有量の散布図である。 実施例1~7の粒子径及び結晶子径から計算された各比表面積と炭素含有量の散布図である。 実施例5のニッケル微粒子の焼結体の画像である。 比較例3のニッケル微粒子の焼結体の画像である。 実施例8の高分散性ニッケル微粒子の画像である。
 本発明に係る焼結金属材料、焼結用金属微粒子及びそれらの製造方法について詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、本発明に対して種々の変更を加えることも可能である。
 [1 焼結金属材料]
 本発明に係る焼結金属材料は、積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能な金属からなる焼結金属材料であって、平均結晶粒径が0.2~10μmの微細粒組織を有し、20nm以下のナノ空隙を有し、結晶粒組織中に双晶を含み、該双晶中の双晶間隔が5~250nmである、ことを特徴とする。この焼結金属材料は、高強度及び高い耐熱性を有し、後述する焼結金属材料の製造方法で説明するように、特徴的な金属微粒子を焼結して作製することができる。
 機械的な特性を要求される金属材料では、用途や金属の種類によって異なるが、ビッカース硬度で70HV以上、引張強度で200MPa以上が最低必要とされる。金属材料の硬度や強度は、その結晶粒径と相関があることや、Hall-Petchの関係式が知られており、前述の条件を達成するためには、金属材料の結晶粒径は10μm以下が目安となることが報告されている(非特許文献11の表7等)。
 特許文献6には、加工処理による変形双晶の導入は積層欠陥エネルギーが50mJ/m以下でないと困難であることが記載されている。この中で、各種金属の積層欠陥エネルギーとして、銀(2mJ/m)、銅(78mJ/m)、コバルト(15mJ/m)、ニッケル(128mJ/m)、黄銅(約20mJ/m)等が記載されている。積層欠陥エネルギーが50mJ/m以上の場合は、黄銅等のように不純物元素を添加して下げることで変形双晶を導入できることが記載されている。
 本発明者は、例えば銅やニッケルのように積層欠陥エネルギーが比較的高い金属において、不純物元素を入れることなく、また加工処理によらず、金属微粒子を700℃以上で焼結して冷却するだけで双晶間隔が250nm以下の焼鈍双晶を導入できることを見出した。焼鈍双晶であっても変形双晶と同様に結晶粒を拘束する役割を持ち、結晶粒の成長を抑制すると考えられる。
 本発明では、平均粒子径が20~200nmの金属微粒子を一軸成形して常圧で焼成した後に冷却することで、結晶粒微細化が達成された高強度の焼結金属材料が得られる。本発明は、合金元素添加に代わる新しい高強度化の手法であり、省資源や易リサイクル性の観点からも利点がある。本発明は、比較的粒度の揃った金属微粒子から開始するため、前述の超強加工法と同様な効果が期待され、焼結金属材料の製作の時点では静的再結晶がなく、正常粒成長により結晶粒微細化が達成される。すなわち、本発明では、再結晶と粒成長を分離することが可能となるため、製造工程並びに条件管理が簡素化される大きな利点がある。
 また、本発明では、金属微粒子を固化成形する圧力は50~200MPa程度であり、塑性加工で問題となる蓄積エネルギーの影響を受けることがない。これにより、塑性加工による再結晶温度の低下がなく、また再結晶核の生成もないため、静的再結晶を生じることがないと考えられる。本発明者は、この効果が結晶粒の成長を抑制し、粗大結晶粒成長も抑制することで、10μm以下の結晶粒微細化を達成する「1つ目の技術構成要素」と考えている。
 本発明の「2つ目の技術構成要素」は、金属微粒子を用いることで金属の結晶粒を微細化することにより結晶粒の内部に歪みエネルギーを生じる。これを緩和するため、積層欠陥エネルギーが150mJ/m(以下SFEという。)以下の金属の場合、結晶粒中にエネルギー的に安定な焼鈍双晶が導入される。その双晶間隔が250nm以下である。SFEが低いCo等の金属においては、双晶が5~250nmの双晶間隔で高密度に形成されるため、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察した場合、観察箇所によっては積層構造として観察される。金属材料のビッカース硬度と平均結晶粒径の間には、Hall-Petchの法則が成立することが知られているが、本発明に係る焼結金属材料は、双晶を含まない平均結晶粒径で得られるビッカース硬度よりも高い数値を示すことから、双晶の形成も高強度化に寄与していると考えられる。
 本発明の「3つ目の技術構成要素」は、結晶粒成長を抑制するピニング効果である。その効果を発現する物質の詳細は十分に明らかにはなっていないが、800℃で1時間の焼鈍熱処理を実施しても硬度低下を示さないものでは、原料である金属微粒子の表面を被覆している有機化合物に由来する炭素から生成したと考えられる結晶性炭素の存在が推定されている。本発明者は、この結晶性炭素が結晶粒界に存在するナノ空隙又は、結晶粒界に析出して可逆的なピニング効果を発現していると考えている。後述する実施例に示すように、炭素含有量は同程度であるが、本発明の効果である高強度と耐熱性を同時に達成する焼結金属材料の観点で見ると、Cu,Ni及びCoではそれら効果が達成できているが、Feでは達成できていない。このことは、それぞれの金属-炭素の二元合金状態図を比較検討した結果、いずれの金属においても金属微粒子の表面に被覆された有機物由来の炭素が焼結プロセスの後半(600℃以上)で金属内部に固溶することが公知であり、また、金属に固溶した炭素は温度低下により炭素固溶限の低下にともなって固溶炭素が金属表面に析出して表面偏析又は結晶質炭素膜を形成することが公知であり、また、結晶粒界に析出することが公知である(非特許文献7、特許文献8等)、ことから推認できる。金属微粒子の焼結では、結晶粒の成長により、粒子間の空隙が次第に消失していくことが知られている。また、結晶粒界の3重点にある空隙は、ナノ空隙として残存し、正常粒成長を阻害することも知られている。
 なお、本願で言う「被覆金属」とは、被覆剤の有機物の一部が炭素化されて、その被覆剤で被覆された金属に優先的に固溶したものを被覆金属といっている。また、本発明において、析出炭素は微量であり、その析出炭素の量については、固溶炭素と析出炭素を区別して定量化することは現在の分析技術では困難である。
 本発明に係る焼結金属材料では、200nm以上の空隙(ボイド)の他に、多数の20nm以下のナノ空隙が結晶粒界に存在する。なお、10nm以上の空隙は電子顕微鏡でその存在を確認することは可能であるが、定量化は現時点では困難であるとされている。この点を考慮すると、固溶炭素の析出はナノ空隙にも生じ、ナノ空隙の外周部に表面偏析又は結晶質炭素膜を形成して結晶粒界の自由表面エネルギーを低下させることで、ナノ空隙がピニング効果の役割をすることは容易に推察できる。Cu,Ni及びCoでは炭素と安定な化合物を作らないことは公知であり、FeはFeC(セメンタイト)を形成することは公知であり、二次再結晶化温度の序列が炭素固溶限の序列と一致することを考慮すれば、本発明を構成する『炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能な金属』は、本発明の特異な高強度と耐熱性を発現するための重要な技術構成要素であると本発明者は考える。
 本発明者は、焼結金属材料を作製するために用いる金属微粒子について、湿式法における金属微粒子の晶析反応(すなわち金属塩とヒドラジンやギ酸等の還元剤で錯体を作りこれを熱分解して金属微粒子を得る方法)ではなく、金属微粒子の製造方法の課題(すなわち反応溶液中の薬剤成分に起因する不要な不純物を金属微粒子の結晶粒界又は粒子表面に極力取り込ませない課題)を解決した。金属微粒子の製造方法については、後に詳しく説明する。
 [2 金属微粒子]
 本発明に係る金属微粒子及びその製造方法について、以下に詳細に説明する。なお、本発明における金属微粒子として、凝集晶析工程で得られる金属微粒子をそのまま金属粉末として用いることもできるが、金属微粒子の凝集粉末に解砕処理等を施した後、金属粉末として用いるか、金属微粒子にバインダを添加して10μm~100μm程度の大きさに造粒した金属粉末として用いることもできる。
 本発明に係る金属微粒子は、湿式法により得られ、概球形の粒子形状を有し、平均粒子径が20~200nm、結晶子径が4~40nmであり、粒子の結晶粒界及び表面に炭素及び/又は窒素を含む有機化合物を有し、炭素含有率Cw(重量%)を結晶子径から算出された比表面積(m/g)で割った値が50~500(μg/m)であり、及び/又は、窒素含有率Nw(重量%)を結晶子径から算出された比表面積(m/g)で割った値が5~100(μg/m)であることを特徴とする。
 (粒子形状)
 金属微粒子は、そのまま粉末成形して焼結させるか、有機溶剤でペースト化して皮膜化して焼結させる。充填性の観点から、形状が概球形であることが好ましい。概球形とは、球形、楕円形、又は実質的に球形や楕円形と見做せる程度の形状をいう。
 (平均粒径)
 金属微粒子の平均粒径は、金属微粒子の走査型電子顕微鏡画像から求めた数平均の粒径を意味する。楕円形の場合は、長径と短径の平均値をその粒子の粒子径として採用する。金属微粒子の平均粒子径は、20nm~200nmの範囲であり、金属の種類や目的とする機械的な特性に合わせて適宜選択される。
 (粒径の変動係数)
 本発明では、湿式法により金属微粒子を得ているが、反応途中で得られる10nm以下の均一な金属酸化物の超微粒子を金属核のリザーバーとして利用している。そのため、粒度分布の狭い金属微粒子を得ることが可能となっている。粒度分布の指標として、粒子径の標準偏差をその平均粒子径で除した値(%)である変動係数で表すことができる。本発明の変動係数は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。変動係数が30%を超えると粒度分布が広いため、焼結開始時の粒子表面エネルギーにばらつきを生じ、焼結後の成長結晶粒径のばらつきに影響を与えるため好ましくない。
 (結晶子径)
 結晶子径は、結晶子サイズとも呼ばれるが、結晶化の程度を示す指標であり、結晶子径が大きいほど高結晶化していることを示している。湿式法を用いて得られる本発明の金属微粒子の結晶子径は、4nm~40nmの範囲であるが、好ましくは4nm~35nmの範囲であり、より好ましくは4nm~30nmの範囲である。この結晶子径は、湿式法で製造された時点、つまり、還元晶析→乾燥時の大きさを定義するものである。金属微粒子を製造後に焼結収縮率を低減する等の目的で150℃~600℃の高温で焙煎することは有効であるが、このような場合は、この範囲に限定されない。
 金属微粒子の結晶子径は4nm~40nmの範囲に設定しているが、不純物の含有量が少ないため、結晶子径が小さいことに起因する不具合は見つかっていない。また、金属微粒子の炭素含有量は、平均粒子径よりもむしろ結晶子径に依存性が認められ、炭素含有率が高くても焼成後の残炭率が少なく、高密度な焼結体が得られている。金属微粒子に含有又は付着している有機物は、エタノールで超音波洗浄でも脱落することがない。粒子の炭素含有量と粒子径及び結晶子径の相関性を吟味したところ、炭素含有量と結晶子径の間に相関性があることが判った。図14は、実施例1~7の粒子の炭素量と結晶子径から計算した結晶子の比表面積をプロットした結果であり、明確な一次関数となることが示された。これらのことから、有機物は、単純に粒子表面に付着したものではなく、生成した一次粒子の表面に付着した状態で凝集して二次粒子を形成した金属微粒子であると本発明者は推察する。結晶子径を4nm未満とすることは製造上困難であり、また焼結収縮が大きくなり好ましくはない。結晶子径を40nm超とすることは、微細結晶粒組織を作製する本発明においては、好ましくない。
 本発明では、金属微粒子の結晶子径は、X線回折測定を行い、その解析データに基づいてScherrer法を用いて算出している。
 (炭素、窒素及び硫黄の含有量)
 炭素及び窒素は、反応液中の薬剤に起因する金属微粒子の有機被覆剤量を示し、硫黄の含有量は、金属塩の原料由来の不純物かコンタミネーション由来の含有量を示している。金属微粒子中の有機被覆剤は、焼成過程で熱分解して、600℃以上での炭素化を経て、一部が結晶粒界に残存し、さらに高温に加熱されると金属中に炭素が固溶される。固溶される量は、金属-炭素の二元合金状態図に依存すると考えられ、固溶しないものは粒界に残ると推定される。炭素含有率Cw(重量%)を結晶子径から算出された比表面積(m/g)で割った値は50~500(μg/m)であることが好ましく、窒素含有率Nw(重量%)を結晶子径から算出された比表面積(m/g)で割った値は5~100(μg/m)であることが好ましい。硫黄も金属中に固溶して又は硫化物を形成して電気特性等を劣化させることが知られており、0.01重量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.001重量%以下である。
 (その他、不純物の含有量)
 本発明に係る金属微粒子は、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能な金属であることを特徴とする金属である。したがって、安定な炭化物を形成するFe,Ti,Cr,Al等の金属元素は電気特性も低下させる元素であり、金属炭化物によるピニング効果を目指すものではないこともあり、いわゆる不可避不純物程度の0.02重量%以下であることが好ましく、0.002重量%以下であることがより好ましい。
 (熱収縮挙動)
 特許文献9及び10には、金属微粒子中に捕捉された不純物が要因となり、異常な熱収縮挙動が報告されている。具体的には、ニッケル粉末を加圧成形したペレットを不活性雰囲気下又は還元雰囲気下で、25℃から1200℃まで加熱した時(銅の場合は、1000℃)に最大収縮量に到達後、膨張する挙動が不具合として記載されている。金属粉末の焼結における膨張する挙動は、粒成長に伴って開気孔が閉塞することで金属酸化物の還元で発生する水蒸気等が閉じ込められ、内圧で膨張することで生じる。したがって、当該特許文献のようにニッケル粉末に硫黄を添加して触媒活性を低減し、低温での分解ガスの発生と粒成長を抑制する対策が講じられている。つまり、内部発生ガスの放出が完了するまで粒成長を抑制して閉塞を生じさせないことである。
 本発明に係る金属微粒子では、粒子中に捕捉された不純物が低減されている。また、後述するように高次元的に有機物で被覆されている。そのため、結晶子径が4nm~40nmと小さいにも関わらず、このような異常な熱収縮挙動は確認されない。本発明では、表2の結果が示すようにニッケル粒子を含め、銅やコバルト粒子でもこの挙動は確認されない。また、当該特許文献のように、ニッケル粉末に硫黄を添加して触媒活性を低減し、粒成長を抑制せずとも、本発明に係る金属微粒子であれば、触媒活性の低減と粒成長抑制作用を達成できている。
 金属微粒子の熱収縮挙動は、金属微粒子の製造方法に強く依存しており、表面状態を制御することで、金属表面の触媒活性及び粒成長を制御できることが示された。本発明に係る金属微粒子の表面は、金属表面に炭素及び/又は窒素を含む有機化合物が化学的又は物理的に吸着した金属微粒子である。より具体的には、金属表面には自然酸化膜が形成されており、金属酸化物及び/又は金属水酸化物、吸着水を含み、さらにその表面に当該有機化合物が化学的吸着又は物理吸着した粒子である。この粒子は単結晶体又は多結晶体で構成される粒子であり、この一次粒子が凝集した二次粒子であることを特徴としている。
 金属表面の自然酸化膜は、金属の触媒活性を抑えると同時に界面エネルギーを低くすることで焼結温度を上昇させることが知られている。また、金属表面にカルボキシル基やアミノ基等を有する有機化合物が吸着すると同様の効果が期待できる。
 本発明者は、金属微粒子の製造方法を工夫することで、少なくとも一次粒子の表面に炭素及び/又は窒素を含む有機化合物が化学的又は物理的に吸着させており、この一次粒子が凝集した二次粒子である金属微粒子を作製することで、本発明に係る金属微粒子を完成させた。すなわち、凝集粒子である二次粒子表面だけではなく、一次粒子表面が被覆されていることで、結果として凝集粒子である本発明に係る金属微粒子の内部、粒界にも被覆の有機化合物が存在することを特徴としている。
 [3 金属微粒子の製造方法]
 本発明に係る金属微粒子の製造方法は、湿式法を用いており、以下に示す基本的な工程で作製することができる。すなわち、標準酸化還元電位が-0.30ボルト~+0.60ボルトの遷移金属を還元して平均粒子径が20~200nmの金属微粒子を製造する方法であって、(第1工程)金属イオンの塩基性低分子有機酸金属塩と金属塩に対して少なくとも1モル%の長鎖脂肪族カルボン酸と、水及び/又はアルカノールアミン類と共沸混合物を形成可能な非極性溶媒を加熱攪拌して、長鎖脂肪族カルボン酸を金属塩に付加する第1工程と、(第2工程)金属塩に対して4.0±1.0モル当量のアルカノールアミン類から選択された薬剤を錯化剤として添加後、加熱攪拌して、金属塩を完全に溶解して金属錯体に錯化する第2工程と、(第3工程)金属の配位水を含め、反応液中の水と分解で遊離した錯化剤を共沸蒸留で留去しつつ、加熱攪拌して前記金属錯体を分解して金属水酸化物のゾルを作製し、さらに脱水により金属酸化物の微粒子に転換する第3工程と、(第4工程)金属酸化物が金属に還元される温度へ加熱して金属微粒子を作製する第4工程とをその順で有する。
 特に、この製造方法では、微細粒組織を有する焼結金属材料に用いる金属微粒子の製造を目的としているため、平均粒子径が20nm~200nmであり、平均粒子径に対して結晶子径が4nm~40nmと小さく、結晶性が低い粒子がより好ましい。
 金属微粒子を作製する湿式法には、金属塩の錯体を熱分解して直接、金属粉末を得る一段で還元する方法(以下、熱分解還元法という。)と、金属塩から金属水酸化物を得て、これを脱水して金属酸化物とし、これを還元して金属粉末を得る方法(以下、酸化物還元法という。)に分けられる。前者の熱分解還元法では、特許文献9及び10等のヒドラジン金属錯塩を用いる方法、特許文献11等のギ酸金属塩の錯体を用いる方法、特許文献12の銅のアルカノールアミン錯体を用いる方法が公知である。後者の酸化物還元法では、特許文献13に参考文献を含めて記載されている。熱分解還元法の場合、分解温度にできる限り早く昇温して短時間で金属核を発生させることで、粒度分布が狭い均一な金属微粒子を得られる特徴がある。しかし、急激に金属核を発生させるため、一次粒子が凝集して二次粒子を形成する際に不純物を取り込みやすい(特許文献9及び10)。温度の昇温速度を緩慢にする等、反応を抑制すると粒度分布が広がりやすく、貴な金属を金属核として加えることで対策がなされている。
 一方、酸化物還元法では、金属酸化物が金属核のためのリザーバーとして機能するため、金属核の発生頻度や核の成長等を比較的制御しやすく、金属酸化物の粒径が還元後の金属粉末の粒径と相関性が高いため、粒度制御は容易に可能となる。しかし、従来の方法では、金属塩からアルカリ金属で金属水酸化物に変換しているため、無機不純物の取り込みや反応溶媒に水系を用いることになり、金属微粒子の生成と共に酸化物や水酸化物が生成しやすいという課題があった。
 本発明者は、これら従来法の課題を解決し、同時に本発明に係る課題を解決する製造方法を鋭意検討して新たな知見を得た。アルカノールアミンを錯化剤として低分子有機酸金属塩(水和物)を金属錯体に錯化して溶解し、減圧下で加熱を継続することにより金属塩の低分子有機酸がアルカノールアミンとアミン塩を形成することで反応系の塩基性の低下が引き金となり、前記した金属錯体の分解を促進して金属水酸化物を生じることを見出した。これがさらに脱水反応で金属酸化物に転換されることも見出した。また、低分子有機酸がギ酸等の還元性有機酸の場合、一定の塩基性環境下で還元作用を発現することを見出した。すなわち、系に添加される低分子有機酸の添加量と錯化剤として添加するアルカノールアミン類の塩基度及び添加量、含有量を適切に制御することで新たな金属粉末の酸化物還元法を見出し、完成させた。
 また、この製造方法によれば、従来の金属錯体を熱分解して還元する方法のような反応ガスの急激な発生がなく、均一に分散した金属酸化物の超微粒子を金属微粒子に還元転換するため、金属核となる高価な貴金属を添加することなく、平均粒子径が20~200nmの均一な金属微粒子が作製することができる。金属酸化物の超微粒子を金属核発生のリザーバーとすることで、金属核の濃度を適切に制御できるため、金属成長粒の急激な凝集を避けることができる。また、反応液の金属濃度が2.0モル/L以上と高濃度で製造ができるため、生産性は高い。金属水酸化物の生成には、無機のアルカリ剤を使用せず、アルカノールアミン類の高い塩基性を利用しているため、不要な不純物を取り込むことがない。そのため、純度の高い金属微粒子が得られる。
 アルカノールアミンは、特許文献14の中で貴金属や銅イオンの還元剤として作用することが記載されている公知の還元剤である。しかし、このアルカノールアミン類は、炭酸ガスの吸収剤として古くから実績があり、この炭酸ガスを吸収した水溶液ではステンレス等の金属腐食が問題となっている。この腐食の原因は、カルバミン酸イオンであり、金属酸化物を溶解する能力があることが解っている。したがって、この腐食作用が金属微粒子の品位を低下させないように設定することが好ましいと考えられる。
 粒度分布の揃った平均粒子径20nm~200nmの小さな金属微粒子を精度良く製造するためには、工程毎に反応が完結していることが重要である。例えば、(1)原料の金属塩が完全に溶解すること、(2)中間体の金属水酸化物や金属酸化物の粒子径が小さく均一なこと、(3)還元が開始する金属酸化物の中には金属水酸化物が残存していないこと、等が好ましい。
 上記条件を満足するためには、以下の(A)~(C)を管理することで達成できる。(A)金属塩の対アニオンを適正(炭酸、低分子有機酸等)に選択し、金属イオンに対して1.0±0.2モル当量、アルカノールアミンを4.0±1.0モル当量添加すること。(B)金属錯塩の加水分解で遊離したアルカノールアミンを共沸留去して塩基性を制御することで析出する金属水酸化物の粒径を小さくし、結果、均一に分散した超微細な金属酸化物を得る。(C)還元反応では還元水が留出するので、反応の終点を判断できる。
 (塩基性低分子有機酸金属塩)
 塩基性低分子有機酸金属塩は、塩基性炭酸銅、塩基性炭酸ニッケル等の金属炭酸塩と金属水酸化物の複塩であり、通常は結晶水を持っている。塩基性金属塩を選択する理由は、ギ酸金属塩や酢酸金属塩等を用いると、金属イオン1に対して2モル当量の低分子カルボン酸を有しており、これがアルカノールアミンと塩を形成するが、急速に塩基性を低下させるため、分散性の悪い粗大な金属水酸化物が生成してしまい、反応液の撹拌ができなくなる恐れがある。また、アルカノールアミンを余分に一時的に消費するため、塩基性を担保するため、余分に加える必要があり、経済的にも好ましくない。
 塩基性低分子有機酸金属塩は、塩基性炭酸金属塩にギ酸や酢酸等の低分子有機酸を付加させてもよい。塩基性金属塩は、このまま原料として使用する場合もあるが、金属イオンに対して1モル当量のギ酸等の低分子有機酸を付加させて、塩基性低分子有機酸塩(塩基性ギ酸塩)とするか、ギ酸金属塩を純水に溶かして放置することでも塩基性ギ酸金属塩を作製することができる。原料の塩基性炭酸塩は、通常の工業用グレードが使用することができる。また、電子材料グレードの原料であることがより好ましい。
 塩基性炭酸金属塩に付加する低分子有機酸は、金属イオン1に対して1.0±0.2モル当量であることが好ましい。この範囲より少ない場合は、難溶性の塩基性炭酸金属塩が未溶解で残存し、還元金属微粒子に混入する恐れがあり、好ましくない。この範囲を超える場合は、前記した不具合(分散性の悪い粗大な金属水酸化物が生成、経済性)が生じるため好ましくない。
 (対アニオン種)
 塩基性低分子有機酸金属塩は、硝酸イオン、ハロゲンイオン、硫酸イオン等、金属微粒子中の窒素、硫黄やハロゲンの不純物を低減できるため好ましく用いられる。また、前述の対イオンの塩を用いた場合、反応系に水を用いないと可溶化が困難となり、水の存在は還元金属を作製する環境としては酸化雰囲気になり易く、好ましくない。塩基性低分子有機酸金属塩は、極力水を排除した非極性溶媒中で反応を進行させることができるため、好ましく用いられる。
 (アルカノールアミン類)
 アルカノールアミンの添加量は、金属イオン1に対して4.0±1.0モル当量であることが好ましい。この添加量は、塩基性低分子有機酸金属塩を速やかに溶解し、対応する水酸化金属塩が析出しない塩基性を維持するために必要な適正量である。この範囲より少ないと、溶解速度が低下し、水酸化金属塩が不安定な状態、塩基性が低い環境下で析出してしまうため、均一で小さな粒子を形成できない。この範囲より過剰な場合、余剰なアルカノールアミンを除去する量が無駄に多くなり、好ましくない。
 還元性の観点で、一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有し、一級アルコール基を有するアルカノールアミンであって、pHが10~12.5でSP値が11~15のものが好ましく使用できる。具体的な例では、2-アミノエタノール、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、5-アミノ-1-ペンタノール、6-アミノ-1-ヘキサノール、2-(メチルアミノ)エタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、2-(3-アミノプロピルアミノ)エタノール等を挙げることができる。
 (共沸溶媒)
 共沸溶媒は、アルカノールアミン及び/又は水と共沸混合物を形成する非極性の有機溶媒であって、沸点が80℃~250℃のものから選択できる。「及び/又は」としたのは、共沸溶媒がアルカノールアミンと共沸混合物を形成する場合、共沸溶媒が水と共沸混合物を形成する場合、共沸溶媒がアルカノールアミン及び水と共沸混合物を形成する場合を含む意味で用いている。共沸溶媒は、非プロトン性溶媒であることがより好ましい。非プロトン性溶媒であれば、共沸液からアルカノールアミン及び/又は水の分離性がよく、効率がよい。アルカノールアミンは、水酸基を有しているため、分子量の割には沸点が高いため反応系から留去するには、共沸溶媒を用いて、結晶水や反応生成水を同時に留去することで低い温度で効率よく反応を進行させることが可能となる。具体的には、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、C9アルキルシクロヘキサン混合物(商品名:スワクリーン150)、ナフテン系炭化水素溶媒(商品名:テクリーンN16、N20、N22、ナフテゾール160、200、220)等を挙げることができる。
 共沸溶媒は、第1工程から第3工程で反応溶媒としての役割を持ち、錯化剤として加えたアルコールアミンを効率良く反応系外に留去する役割を持っているが、第4工程の還元段階では、必ずしも必要ではない。第3工程においては、共沸溶媒を、金属種及び要求される金属微粒子の要求品質に応じて最適な反応溶媒系に調整する場合もある。共沸溶媒に次の項で述べる希釈反応溶媒を加えた混合溶媒系や、共沸溶媒を希釈反応溶媒に交換して反応を進める方法を選択することもある。
 (希釈反応溶媒)
 希釈反応溶媒としては、分子内に疎水性のアルキル基並びに親水性のエーテル基及び水酸基を有するものを挙げることができる。こうした希釈反応溶媒には、非極性・極性化合物の双方に対して適した溶解性を示すグリコールエーテル類やアミノグリコール類を一部添加したものであってもよい。グリコールエーテル類は、界面活性剤と共に水に添加して洗浄剤として多用されている。水に数%~10%程度添加すると水の表面張力を下げる効果があることが知られている。共沸流出した液では、有機溶媒とアルカノールアミン及び水との分離性がよいことが必要だが、反応液中では、水やアルカノールアミンと共沸溶媒のSP値が違いすぎると混和性が悪くなり、好ましくないことがある。そのような場合にグリコールエーテル類を添加すると、このような不具合を回避できる。金属水酸化物や金属酸化物の微粒子に共沸液への混入を防ぐため、共沸溶媒よりも沸点が高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましい。EO系グリコールエーテル、PO系グリコールエーテル等のグリコールエーテルを挙げることができる。より具体的にはメチルジグリコール、メチルトリグリコール、イソプロピルグリコール、ブチルグリコール等のEO系グリコールエーテル、メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、ブチルプロピレングリコール、等のPO系グリコールエーテル、等を挙げることができ、また、金属種によっては、還元力の弱いアミノグリコール等も希釈反応溶媒として使用できる。具体的には、2-(2-アミノエトキシ)エタノールや2-(3-アミノプロキシ)エタノール等を挙げることができる。これらからなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
 (長鎖脂肪族カルボン酸)
 長鎖脂肪族カルボン酸は、錯化溶解する前に塩基性低分子有機酸金属塩に金属イオンに対して少なくとも1モル%を付加させることが好ましい。長鎖脂肪族カルボン酸を付加させることで非極性有機溶媒との親和性が高まり、反応系の粘度を低下させる。また、長鎖脂肪族カルボン酸は、金属微粒子の被覆剤としても機能し、凝集力を低下させる。
 長鎖脂肪族カルボン酸の付加量は、金属イオンに対して、少なくとも1モル%が好ましく、10モル%以下であることが好ましい。付加量が10モル%以上では、反応系の粘度が上昇して好ましくない。長鎖脂肪族カルボン酸の長さは、金属微粒子の被覆層厚みに相関するため、用途に応じて適切な長さのものを選択することが好ましい。炭素鎖長が短いと金属微粒子の凝集性が強くなり、長いと凝集性が低下する。長鎖脂肪族カルボン酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等を挙げることができる。また、ナフテン環をもつ環状飽和脂肪酸も好ましく使用することができる。例えば、ヘプタナフテンカルボン酸、モノヒドロキシヘプタナフテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンプロピオン酸、メチルシクロペンタンカルボン酸、3-(3-エチルシクロペンチル)プロピオン酸等を挙げることができる。
 (長鎖脂肪族アミン)
 アルカノールアミン以外の長鎖脂肪族アミンは還元力が弱いので還元剤としては期待できないが、炭素含有率が高いため、炭素源又は、分散助剤として金属微粒子の凝集性を調整することができ、任意に添加することを排除しない。具体的には、2-エチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、n-ウンデシルアミン、オレイルアミン等を挙げることができる。
 (第1工程/長鎖脂肪族カルボン酸の付加反応)
 共沸溶媒に塩基性低分子有機酸金属塩を分散して、金属イオンに対して1~10モル%の長鎖脂肪族カルボン酸を計量して添加する。希釈反応溶剤を使用する場合は、この時点で添加していることが好ましい。また、一部を添加して第4工程の前にさらに追加添加してもよい。攪拌しつつ、塩基性低分子有機酸金属塩が分解しない温度で継続的に加熱して長鎖脂肪族カルボン酸を付加させる。条件は、金属塩の種類によって異なるが、90℃~140℃の間で、1時間~3時間加熱することが好ましい。
 (第2工程/アルカノールアミンによる錯化溶解)
 反応液の温度を40℃~55℃に調整し、4.0±1.0倍当量のアルカノールアミンを温度に注意しながら添加する。このとき、反応液の温度は、80℃以下、より好ましくは70℃以下に維持されることが好ましい。アルカノールアミンの添加量は4.0±1.0倍当量の範囲であり、錯化反応の温度は70℃~160℃、反応時間は1~3時間である。添加量、温度及び時間は、塩基性低分子有機酸金属塩の種類(分解性及び溶解性)に応じて適宜設定することが好ましい。また、この時点で金属塩の水和水が脱離するので、真空度を適切に設定して、共沸溶媒で共沸させて留去、分離させる。錯化溶解の確認は、金属に応じた錯化溶液の色と溶液の濁りの消失で確認すればよい。
 (第3工程/金属水酸化物を経由した金属酸化物の生成)
 続いて、錯化液の温度を金属の種類に応じて、70℃~200℃の温度で維持して金属錯塩の配位変換と脱離を行う。ここでの反応液の温度は、金属水酸化物の溶解度及び分解温度に依存しており、金属の種類で異なる。低分子有機酸は金属塩から脱離し、アルカノールアミンとアミノカルボン酸の塩を形成し、また金属塩から遊離したアルカノールアミンを留去することでフリーのアルカノールアミンが減少し、反応液の塩基性が低下することで金属水酸化物が析出してくる。さらに反応を継続し、系中の水及びアルカノールアミンを連続的に留去することで、金属水酸化物の脱水反応で金属酸化物へと転換される。アルカノールアミンは一定のPH領域で金属を腐食するため、水と同時に余剰なアルカノールアミンを系外に留去ことで、可逆的な腐食溶解を防止して金属酸化物に効率良く転換が可能となる。共沸溶媒は、水及びアルカノールアミンと共沸混合物を形成するものを選択することで、低い温度で効率良く留去することができ、真空度を調整して反応に必要な設定温度に容易に調整することができる。金属水酸化物から金属酸化物への転換は、色の変化で確認ができるが、この時点で金属水酸化物が残存していると金属微粒子に混入するため好ましくない。
 金属水酸化物の特性(すなわち溶解性や塩基性に対する挙動)は金属によって異なることが知られており、この性質は金属の湿式精錬で工業的に活用されている。したがって、金属種によっては、製造方法の第3工程で錯化剤のアルコールアミンを共沸留去しつつ、生成する金属水酸化物のゾルを安定化するために第2のアルコールアミンを添加する。金属水酸化物の安定性を保つためには、添加量が制約されるため、金属水酸化物の生成に伴い反応液の粘度が上昇し、攪拌が困難となることがある。そのような場合には希釈反応溶媒を添加することもある。また、分散性を要求されるセラミックコンデンサーのニッケル粉末のような特性(すなわち高分散性)を要求される場合は、共沸溶媒を希釈反応溶媒に置換して第4工程の還元粒子化を実施する方が好ましい結果が得られることが多い。逆に粉末冶金で用いる造粒粒子用途の場合は、このような置換操作をしない方が好ましいこともある。第4工程の反応溶媒は、適宜選択することが好ましい。
 (第4工程/還元による晶析反応)
 金属酸化物の還元は、標準酸化還元電位が水素よりを貴な、プラスの電位を持つ金属はアルカノールアミン単独で全量を還元可能であるが、貧な、マイナスの電位を持つニッケルやコバルト等はアルカノールアミン単独での還元は困難である。反応温度を上げて還元すると、ガラス表面のOHが触媒となって金属粒子が析出して金属微粒子を得ることができない。このような金属種の場合は、低分子有機酸に還元性の低分子有機酸、例えば、ギ酸やシュウ酸等をいることが好ましい。特にギ酸を用いることがより好ましい。
 ギ酸を用いる場合、塩基性ギ酸金属塩とすることで達成される。ギ酸は第3工程において金属イオンから脱離してアルカノールアミンと塩を形成して系内に留まり、大部分はアミド化されて不活性化されることなく、塩基性に応じて可逆的に離脱して還元反応に寄与すると考えられる。ニッケル等の卑な金属の場合、ギ酸によって金属核が発生して、これが触媒的な作用で金属酸化物とアルカノールアミンの還元反応を円滑に進行させると本発明者は推論している。塩基性が高い場合はギ酸に対してアルカノールアミンが過剰に存在するため、ギ酸が還元作用を発揮することができない。水と共に余剰のアルカノールアミンを留去することで塩基性が低下し、ギ酸が還元に寄与できると考えられる。このとき、ギ酸での還元反応をより完結するためには、可能な限り最初に錯化剤として加えたアルカノールアミンを除去することである。しかし、反応液の粘度が上昇することや還元剤としてのアルコールアミンが不足する場合は、最初のアルカノールアミンよりも塩基性の弱い第2のアルカノールアミンを随時添加することが有効である。さらに還元温度が高い場合は、さらに沸点が高く、塩基性の弱い第3のアルカノールアミンを用いることも有効である。塩基性の高いアルカノールアミンは金属の溶解度が高く、還元反応温度が高い場合、金属微粒子の表面を侵食する場合があるので適正に選択することが好ましい。
 本発明の金属酸化物を金属微粒子に還元粒子化する還元剤は、ギ酸とアルコールアミンの塩及びアルコールアミンが還元反応に寄与する。ギ酸金属塩の熱分解還元反応は、本発明の温度よりも高い条件が必要であり、しかも還元時には水素が多量に発生するため、大量生産性や安全性に課題がある。本発明の第4工程の還元時には、少量の水素は発生するものの、主要な還元副生物は、炭酸ガス、アンモニア及び水である。還元反応の速度は温度により適切に制御が可能であり、還元の終点は副生物の流出量で管理が可能である。
 還元反応の晶析を開始する時点で長鎖脂肪族アミンを添加してもよい。添加する量は、第1工程で付加した長鎖脂肪族カルボン酸と同モル%か10倍モル%を超えないことが好ましい。本発明の製造方法では還元温度が低いため、還元剤としての能力は低いが分散助剤としての作用を持ち金属微粒子の凝集性を弱める働きを持つため、適宜添加することが好ましい。還元反応の終了点は還元水の留出の有無で判断ができる。
 (金属微粒子の回収)
 反応が終了した後、系内の真空度を上げて、還元反応よりも10℃低い温度で共沸溶媒を95%以上留去する。留去が完了した後、温度を65℃以下に下げ、大気解放してエタノールを加えて金属微粒子を凝集させる。室温まで冷却した後、濾別して凝集した金属微粒子を得る。エタノールで通液洗浄の後、純水で通液洗浄を行い、エタノールを通液して水を除去する。
 高分散性を要求される製品では、第4工程に移る時点で共沸溶媒を希釈反応溶媒に置換して金属粒子化を行うが、反応終了時点ですでに濾別可能な凝集体を形成している。そのため、そのまま濾別して、トルエン/メタノール混合溶剤、アセトン、純水にて順次攪拌洗浄を行い、最終的な濾別を実施し、エタノールを通液して水分を除去する。
 乾燥については、凝集金属微粒子を10hPa以下の真空下、65℃で6時間乾燥させる。また、焼結時の収縮性が大きい場合や、有機被覆物や結合水等の揮発ガスが問題となる場合は、金属微粒子が焼結しない条件で高温焙煎処理を行うことも可能である。例えば、窒素雰囲気下で150℃~600℃、処理時間が3~6時間程度等、金属微粒子によって適宜設定して処理をすることができる。高温焙煎処理は、金属微粒子の焼結工程の前段部分を粉体の段階で実施することであり、本発明に係る特徴を損なうものではない。
 (解砕処理)
 凝集させて濾別して乾燥させた金属微粒子、又は、高温熱処理した金属微粒子の凝集粉末は、そのまま使用することも可能であるが、適度な粒度に解砕してもよい。また、ニッケル等の磁性粒子の場合は、強く凝集するため、解砕処理を行なって粉末の流動性を高める、ペースト化する場合の分散性を高める目的で粗大な凝集粉末を低減する、等とすることが好ましい。解砕処理としては、スパイラルジェット解砕処理、カウンタージェットミル解砕処理等の乾式解砕方法や、高圧流体衝突解砕処理等の湿式解砕処理方法、その他の汎用の解砕方法を適用することができる。
 以下、本発明について、実施例と比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されることはない。
 [評価方法]
 実施例及び比較例で得られた金属微粒子について、不純物(炭素(C)、窒素(N)、硫黄(S))の含有量、その他の不純物の含有量、結晶子径、平均粒径、等時焼結での焼結密度を測定した。また、焼結金属材料について、ビッカース硬度、高温焼鈍後のビッカース硬度、不純物(炭素(C)、窒素(N)、硫黄(S))の含有量、その他の不純物の含有量、結晶粒径、体積固有抵抗を測定した。
 (不純物の含有量)
 不純物として炭素、窒素及び硫黄の含有量を測定した。炭素は、炭素源となる被覆剤の有機化合物に起因し、窒素は、被覆剤の有機化合物に起因し、硫黄は、原料由来の不純物である。炭素と硫黄の含有量は、燃焼法による炭素硫黄分析装置(LECO社製、CS600)で測定した。窒素の含有量は、不活性ガス溶融法による酸素窒素分析装置(堀場製作所製、EMGA-820H)で測定した。
 (その他の不純物の含有量)
 その他の不純物は、金属イオン原料に起因する不可避不純物元素(リン、鉄、マンガン、アルカリ金属等)であり、波長分散型蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSXPrimusIV)で、測定径10mmφにて測定した。
 (結晶子径)
 金属微粒子の結晶子径は、X線解析装置(リガク社製、RINTUltima+)により得られた回析パターンから、公知の方法であるScherrer法で算出した。
 (平均粒子径)
 金属微粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM:日立社製、S-4300)を用いて観察(倍率:30000~75000倍)し、観察像(SEM像)の画像解析の結果から、平均粒径を得た。
 (等時焼結特性試験)
 金属微粒子がニッケルの場合を例に説明すると、ニッケル微粒子を超硬金型にて圧力200MPaで一軸加圧し、得られた成形体を測定用試料とした。焼結温度を200℃から1200℃まで100℃刻みで設定して、昇温速度:3.3℃/分、焼結保持温度:90分、冷却速度:10℃/分で焼結体を作製し、得られた焼結体の外形寸法を測定して焼結体密度と重量変化を計算した。形状が歪な場合は、アルキメデス法で求めた密度を採用した。焼結体密度は、ニッケルの密度8.908を用いた。また、測定用試料は、条件毎に2個準備し、その結果を平均した。金属微粒子が銅の場合は、焼結温度を1000℃までとした。図5~図8は、ニッケルでの測定結果の例である。
 (熱膨張挙動の有無)
 等時焼結特性試験において、最大焼結密度に到達した温度よりも高い温度で焼結して密度が低下した場合に熱膨張を示したと判断し、熱膨張挙動の有無を判定した。
 (ビッカース硬度)
 金属微粒子を成形圧200MPaで粉体成形して、直径15mmφ、厚さ約2.5mmの試料を作製した。その試料を、N-H(5%)の混合ガス雰囲気中で、所定の焼結条件で焼結して直径約12mmφ、厚さ約2.0mmの焼結体を作製した。この焼結体をエポキシ樹脂で包埋し、最終3μmダイヤモンドスラリー及びコロイドシリカで研磨して鏡面研磨した。研磨後の試料をマイクロビッカース硬さ試験機(ミツトヨ社製:HM-2200、荷重:100g)でビッカース硬度を測定した。
 (高温焼鈍前後のビッカース硬度)
 N-H(5%)の混合ガス雰囲気中で、実施例1の銅は950℃で90分焼成し、実施例4のニッケルは900℃で90分焼成し、実施例6,7のコバルトと参考例3の鉄は1100℃で3時間焼成した。焼成した各焼結体を、アルゴン雰囲気中、昇温速度と冷却速度を3.3℃/分とし、800℃で1時間保持して高温焼鈍した。高温焼鈍前後のビッカース硬度を室温下で測定して比較した。比較対象として、銅-クロム合金(Z3234-2種)、純銅(C1020)及び純ニッケル(NW2201)についても同様に、高温焼鈍前後のビッカース硬度を室温下で測定して比較した。測定は、0.5mm間隔で7回測定して平均値を計算した。結果を表3に示す。
 (平均結晶粒径及び双晶間隔)
 ビッカース硬度を測定した後の試料をイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製:IM4000PLUS)で平面ミリングをかけ、平滑化して走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製:Regulus8230)を用いて観察(倍率:500~100000倍)し、観察像(PD-BSE像)の画像解析の結果から平均結晶粒径及び双晶間隔を算出した。
 (体積固有抵抗値)
 ビッカース硬度測定用に作製した焼結直後の試料を用い、4探針法で抵抗計(日置電機社製:RM3545)を用いて抵抗値を測定し、厚さに応じた標準試料で求めた補正係数を用いて体積固有抵抗値を算出した。
 [参考例1/塩基性ギ酸銅の合成例]
 銅塩として塩基性炭酸銅(CuCO・Cu(OH)・HO、分子量:230.3)500gを、エタノール(98%)700gと蒸留水100gの混合液に添加し、撹拌しながら50℃に液温を上げ、液温が60℃を超えないように注意しつつ、炭酸ガスの発生に注意しながらギ酸(88%、分子量:46.03)242gをゆっくりと添加した。ギ酸の添加が終了した後に液温を70℃に上げ、8時間反応を継続した。反応終了後、室温まで冷却して濾過し、エタノールで通液洗浄した。濾過したケーキ状物を解して70℃で減圧乾燥した。
 [参考例2/塩基性ギ酸ニッケル・二水和物の合成例]
 ニッケル塩として塩基性炭酸ニッケル(NiCO・2Ni(OH)・4HO、分子量:376.1)552gを、エタノール700g(98%)と蒸留水100gの混合液に添加し、撹拌しながら50℃に液温を上げ、液温が60℃を超えないように注意しながらギ酸(88%、分子量:46.03)233gをゆっくりと添加した。ギ酸の添加が終了した後に液温を70℃に上げ、8時間反応を継続した。反応終了後、室温まで冷却して濾過し、エタノールで通液洗浄した。濾過したケーキ状物を解して70℃で減圧乾燥した。
 [実施例1/銅微粒子の合成例1]
 (第1工程)塩基性ギ酸銅(分子量:125.6)251.2g及びミリスチン酸(分子量:228.37)22.8gを、スワクリーン#150(丸善石油製)400gとメチルプロピレントリグリコール50gとの混合溶媒に添加し、撹拌しながら温度を110℃で3時間反応させてミリスチン酸を付加させた。反応に伴い流出する水は系外に除去した。
 (第2工程)得られた反応液を50℃まで冷却し、2-アミノエタノール(分子量:61.08)488.7gを添加して錯化した。添加に際し、錯化に伴い温度が上昇したが、液温が75℃を超えないように添加速度を調整した。添加が終了し、温度が低下するのを確認した後、系内を減圧してスワクリーンと水と2-アミノエタノールとが共沸して留出する状態で、反応液の温度が88℃~90℃を維持するように減圧度と熱源を調整した。留出したスワクリーンの下層に分離した2-アミノエタノール及び水は系外に分別し、スワクリーンは系内に戻す操作を継続的に実施した。錯化溶液は、濁りのない濃青色を呈した。
 (第3工程)第2工程で、スワクリーン、水、2-アミノエタノール及びアミン分解物が共沸して留出する状態で、反応液の温度が95℃~100℃を維持するように減圧度と熱源を調整した。このとき、金属錯体の分解に伴い、濃緑色を呈して、やがて赤茶色に変化した。このことから、2-アミノエタノールの流出に応じて、水酸化銅→酸化銅→亜酸化銅に連続的に反応が進行していることがわかった。
 (第4工程)第3工程において、標準酸化還元電位が水素より貴でプラスの電位を持つ銅は、アルカノールアミン単独で全量を還元可能である。そのため、2-アミノエタノールの留去が完了する前に、ギ酸アルコールアミン塩からギ酸を遊離させることなく2-アミノエタノールが還元作用を発現して銅鏡となり、亜酸化銅の還元が確認された。留出したスワクリーンから重質液の分離がほとんど確認されなくなったら、還元反応が完結したと判断した。
 (金属微粒子の回収)
 液温を80℃以下とし、真空度を15hPaとして、スワクリーンを減圧留去した。留去を完了した後、大気解放し、液温を60℃以下まで冷却し、エタノール800mLを撹拌しつつ添加して、銅微粒子を凝集析出させた。その後、液温を室温まで冷却して、銅微粒子を濾過分取した。銅微粒子のケーキ状物に対してエタノールを用いて通液洗浄し、次いで蒸留水を用いて通液洗浄し、最後にエタノールを通液して水を除去した。洗浄した銅微粒子の凝集粉を65℃で5時間の減圧乾燥を実施し、乾燥粉末を得た。収量は132gであった。乾燥粉末に含まれる銅成分は127.5gであり、収率は100%であった。図10は、実施例1の銅微粒子を焼結して得られる結晶組織のSEM画像であり、図10(A)は1万倍のSEM画像であり、図10(B)は10万倍のSEM画像である。図10(B)では、20nm以下のナノ空隙が、結晶粒界の3重点及び結晶粒界に黒い点として観察されるのがわかる。
 [実施例2/銅微粒子の合成例2]
 第1工程において、塩基性ギ酸銅(分子量:125.6)を394.3gとし、ミリスチン酸(分子量:228.37)を35.8gとし、それらを450gのスワクリーン#150(丸善石油製)と50gのメチルプロピレントリグリコールの混合溶媒に添加した。第2工程において、671.8gの2-アミノエタノール(分子量:61.08)を添加した。反応液の温度が83℃~85℃を維持するように減圧度と熱源を調整した。これら以外は実施例1と同様に操作して反応を実施し、乾燥粉末を得た。収量は208.9gであった。乾燥粉末に含まれる銅成分は196.15gであり、収率は98.3%であった。
 [実施例3/ニッケル微粒子の合成例1]
 (第1工程)塩基性ギ酸ニッケル・二水和物(分子量:156.7)313.4g及びミリスチン酸(分子量:228.37)22.8gを、テクリーンN16(ENEOS製)400gとメチルプロピレントリグリコール50gとの混合溶媒に添加し、撹拌しながら温度を110℃で3時間反応させてミリスチン酸を付加させた。反応に伴い流出する水は系外に除去した。
 (第2工程)得られた反応液を50℃まで冷却し、2-アミノエタノール(分子量:61.08)488.7gを添加して錯化した。添加に際し、錯化に伴い温度が上昇したが、液温が75℃を超えないように添加速度を調整した。添加が終了し、温度が低下するのを確認した後、系内を減圧してテクリーンと水と2-アミノエタノールとが共沸して留出する状態で、反応液の温度が123℃~125℃を維持するように減圧度と熱源を調整した。留出したテクリーンの下層に分離した2-アミノエタノール及び水は系外に分別し、テクリーンは系内に戻す操作を継続的に実施した。錯化溶液は、濁りがある青緑色を呈し、水和水が除去されるにつれて濁りのない濃緑色に変化した。
 (第3工程)金属錯体の分解に伴い、錯化溶液は鉄色を呈し、さらに暗緑色に変化した。このことから、2-アミノエタノールの流出に応じて、水酸化ニッケルから酸化ニッケルへの生成反応が進行した。2-アミノエタノールと水の留出量が400mLの時点から反応液の粘度が上昇するため、留出量に応じて3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)400gを加えつつ、最終的に反応液の温度が136℃~139℃を維持するように、減圧度と熱源を調整した。2-アミノエタノールの留去を継続し、留出量が800mLとなって3-アミノ-1-プロパノールへの転換が完了すると、反応液は暗緑色から茶褐色~黒褐色に変化した。アルカノールアミンの留出がなくなったら、反応液の温度を110℃以下に冷却後、窒素ガスで置換して、次の反応を継続した。
 (第4工程)反応液に3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)200gとラウリルアミン(分子量:185.35)65gを加え、反応液の温度が139℃~141℃を維持するように減圧度と熱源を調整して還元反応に移行し、ギ酸アルコールアミン塩からギ酸を遊離させた。こうすることで、ギ酸の還元作用が発現して金属核を生成し、酸化ニッケルのアミン還元が進行した。留出したテクリーンから還元水の分離がほとんど確認されなくなったら、還元反応が完結したと判断した。
 (金属微粒子の回収)
 液温を90℃以下とし、真空度を15hPaとして、テクリーンを減圧留去した。留去を完了した後、大気解放し、液温を60℃以下まで冷却し、エタノール800mLを撹拌しつつ添加して、ニッケル微粒子を凝集析出させた。その後、液温を室温まで冷却して、ニッケル微粒子を濾過分取した。ニッケル微粒子のケーキ状物に対してエタノールを用いて通液洗浄し、次いで蒸留水を用いて通液洗浄し、最後にエタノールを通液して水を除去した。洗浄したニッケル微粒子の凝集粉を65℃で5時間の減圧乾燥を実施し、乾燥粉末を得た。収量は117.8gであった。乾燥粉末に含まれるニッケル成分は111.1gであり、収率は94.64%であった。
 [実施例4/ニッケル微粒子の合成例2]
 第4工程において、還元用の3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)を200gとし、ラウリルアミン(分子量:185.35)を18.5gとし、それらを加えた後の反応液の温度が134℃~136℃を維持するように減圧度と熱源を調整して還元反応を実施した。これら以外は、実施例3と同様に操作して反応を実施し、乾燥粉末を得た。収量は119.5gであった。乾燥粉末に含まれるニッケル成分は113.8gであり、収率は96.95%であった。
 [実施例5/ニッケル微粒子の合成例3]
 第1工程において、ミリスチン酸をラウリン酸(分子量:200.32)に変えた。第4工程において、ラウリルアミンは添加せず、還元用の3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)200gを加え、反応液の温度が128℃~130℃を維持するように減圧度と熱源を調整して還元反応を実施した。これら以外は、実施例3と同様に操作して反応を実施し、乾燥粉末を得た。収量は118.0gであった。乾燥粉末に含まれるニッケル成分は112.9gであり、収率は96.13%であった。図11は、実施例5のニッケル微粒子を焼結して得られる結晶組織のSEM画像であり、図11(A)は1万倍のSEM画像であり、図11(B)は10万倍のSEM画像である。図11(B)では、20nm以下のナノ空隙が、結晶粒界の3重点及び結晶粒界に黒い点として観察されるのがわかる。
 [実施例6/コバルト微粒子の合成例1]
 (第1工程)塩基性ギ酸コバルト・二水和物(分子量:156.9)313.8g及びミリスチン酸(分子量:228.37)22.8gを、テクリーンN16(ENEOS製)400gとメチルプロピレントリグリコール50gとの混合溶媒に添加し、撹拌しながら温度を120℃で3時間反応させてミリスチン酸を付加させた。反応に伴い流出する水は系外に除去した。
 (第2工程)得られた反応液を50℃まで冷却し、2-アミノエタノール(分子量:61.08)488.7gを添加して錯化した。添加に際し、錯化に伴い温度が上昇したが、液温が75℃を超えないように添加速度を調整した。添加が終了し、温度が低下するのを確認した後、系内を減圧してテクリーンと水と2-アミノエタノールとが共沸して留出する状態で、反応液の温度が123℃~125℃を維持するように減圧度と熱源を調整した。留出したテクリーンの下層に分離した2-アミノエタノール及び水は系外に分別し、テクリーンは系内に戻す操作を継続的に実施した。錯化溶液は、濁りがある赤紫色を呈し、水和水が除去されるにつれて濁りのない赤紫色に変化した。
 (第3工程)金属錯体の分解に伴い、錯化溶液は紫色を呈し、さらに青紫色に変化した。このことから、2-アミノエタノールの流出に応じて、水酸化コバルトから酸化コバルトの生成反応が進行した。2-アミノエタノールと水の留出量が400mLの時点から反応液の粘度が上昇するため、留出量に応じて3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)300gを加えつつ、2-アミノエタノールの留去を継続した。留出量が600mLとなると、反応液は赤紫色から紫色に変化した。減圧下、反応液温を160℃~180℃に調整し、テクリーンN16をより沸点の高いテクリーンN20へ置換した後、留出量に応じて希釈反応溶媒として2-(2-アミノエトキシエタノール(分子量:105.14)300gを加えつつ、大気圧下、反応液を189℃~191℃に調整し、2-アミノエタノール及び3-アミノ-1-プロパノールの留去を継続した。反応液の色が紫色から青紫色に変化し、さらに黒褐色に変化した。アルカノールアミンの留出がなくなったら、反応液の温度を160℃以下に冷却後、窒素ガスで置換して、次の反応を継続した。
 (第4工程)反応液に2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(分子量:104.15)200gとラウリルアミン(分子量:185.35)32gを加え、反応液の温度が196℃~198℃を維持するように減圧度と熱源を調整して還元反応に移行し、ギ酸アルコールアミン塩からギ酸を遊離させた。こうすることで、ギ酸の還元作用が発現して金属核を生成し、酸化コバルトのアミン還元が進行した。留出したテクリーンから還元水の分離がほとんど確認されなくなったら、還元反応が完結したと判断した。
 (金属微粒子の回収)
 液温を110℃以下とし、真空度を15hPaとして、テクリーンを減圧留去した。留去を完了した後、大気解放し、液温を60℃以下まで冷却し、エタノール800mLを撹拌しつつ添加して、コバルト微粒子を凝集析出させた。その後、液温を室温まで冷却して、コバルト微粒子を濾過分取した。コバルト微粒子のケーキ状物に対してエタノールを用いて通液洗浄し、次いで蒸留水を用いて通液洗浄し、最後にエタノールを通液して水を除去した。洗浄したコバルト微粒子の凝集粉を65℃で5時間の減圧乾燥を実施し、乾燥粉末を得た。収量は119.0gであった。乾燥粉末に含まれるコバルト成分は112.8gであり、収率は95.70%であった。
 [実施例7/コバルト微粒子の合成例2]
 (第1工程)塩基性ギ酸コバルト・二水和物(分子量:156.9)313.8g及びミリスチン酸(分子量:228.37)22.8gを、テクリーンN20(ENEOS製)400gとメチルプロピレントリグリコール50gとの混合溶媒に添加し、撹拌しながら温度を120℃で3時間反応させてミリスチン酸を付加させた。反応に伴い流出する水は系外に除去した。
 (第2工程)得られた反応液を50℃まで冷却し、2-アミノエタノール(分子量:61.08)488.7gを添加して錯化した。添加に際し、錯化に伴い温度が上昇したが、液温が75℃を超えないように添加速度を調整した。添加が終了し、温度が低下するのを確認した後、系内を減圧して水と2-アミノエタノールが共沸して留出する状態で、反応液の温度が135℃~138℃で錯化反応を完結させた。さらに反応液の温度を161℃~165℃に上げ、テクリーンと水と2-アミノエタノールとが共沸して留出する状態を維持するように減圧度と熱源を調整した。留出したテクリーンの下層に分離した2-アミノエタノール及び水は系外に分別し、テクリーンは系内に戻す操作を継続的に実施した。錯化溶液は、濁りがある赤紫色を呈し、水和水が除去されるにつれて濁りのない赤紫色に変化した。
 (第3工程)金属錯体の分解に伴い、錯化溶液は紫色を呈し、さらに青紫色に変化した。このことから、2-アミノエタノールの流出に応じて、水酸化コバルトの生成反応が進行した。2-アミノエタノールと水の留出量が400mLの時点から反応液の粘度が上昇するため、留出量に応じて希釈反応溶媒として2-(2-アミノエトキシエタノール(分子量:105.14)300gを加えつつ、最終的に減圧下、反応液を175℃~178℃に調整し、2-アミノエタノールの留去を継続した。反応液の色が紫色から青紫色に変化し、さらに黒褐色に変化した。アルカノールアミンの留出がなくなったら、反応液の温度を160℃以下に冷却後、窒素ガスで置換して、次の反応を継続した。
 (第4工程)反応液に2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(分子量:104.15)200gとラウリルアミン(分子量:185.35)32gを加え、大気圧下、反応液の温度が191℃~195℃を維持するように熱源を調整して還元反応に移行し、ギ酸アルコールアミン塩からギ酸を遊離させた。こうすることで、ギ酸の還元作用が発現して金属核を生成し、酸化コバルトのアミン還元が進行した。留出したテクリーンから還元水の分離がほとんど確認されなくなったら、還元反応が完結したと判断した。
 (金属微粒子の回収)
 実施例6と同様に操作して、コバルト微粒子を得た。収量は122.0gであった。乾燥粉末に含まれるコバルト成分は113.8gであり、収率は96.54%であった。
 [実施例8/ニッケル微粒子の合成例4]
 この実施例8は、高分散性を有するニッケル微粒子の実施例である。第1工程と第2工程は実施例3と同様に操作して反応を実施した。第3工程において、留出量に応じて3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)400gに変えて、3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)280gとし、さらに希釈反応溶媒としてメチルトリグリコール400gを加えつつ、最終的に反応液の温度が136℃~139℃を維持するように、減圧度と熱源を調整した。共沸溶媒のテクリーンN16を減圧留去して反応溶媒を希釈反応溶媒のメチルトリグリコールに交換し、反応液の温度を110℃以下に冷却後、窒素ガスで置換して、次の反応を継続した。
 第4工程では、反応液に3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)200gとオレイルアミン(分子量:267.49)65gを加え、反応液の温度が139℃~141℃を維持するように減圧度と熱源を調整して還元反応に移行し、ギ酸アルコールアミン塩からギ酸を遊離させた。こうすることで、ギ酸の還元作用が発現して金属核を生成し、酸化ニッケルのアミン還元が進行した。還元水の留出がほとんど確認されなくなったら、還元反応が完結したと判断した。
 (金属微粒子の回収)
 液温を40℃以下まで冷却し、そのまま凝集したニッケル微粒子を濾過分取した。ニッケル微粒子のケーキ状物に対してトルエン/メタノール混合溶媒を加えて攪拌洗浄し、次いでアセトン、蒸留水を用いて攪拌洗浄し、最後にエタノールを通液して水を除去した。洗浄したニッケル微粒子の凝集粉を65℃で5時間の減圧乾燥を実施し、乾燥粉末を得た。収量は118.0gであった。乾燥粉末に含まれるニッケル成分は113.3gであり、収率は96.52%であった。得られたニッケル微粒子は凝集力が弱く、均一で分散性に特に優れた粒子が得られた。図17は、実施例8の高分散性ニッケル微粒子の画像である。
 [参考例3/鉄微粒子の合成例]
 二ギ酸鉄・二水和物(分子量:181.9)363.8gを用い、実施例6と同様に操作して、第1工程から第3工程の処理を実施した。
 第4工程(還元工程)において、反応液に2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(分子量:104.15)200gとラウリルアミン(分子量:185.35)32gを加え、大気圧下、反応液の温度が191℃~195℃を維持するように熱源を調整して還元反応に移行し、ギ酸アルコールアミン塩からギ酸を遊離させた。このとき、ギ酸の熱分解に伴う緩やかな水素ガスの発生があった。酸化鉄に対してギ酸の還元反応が進行し、又はアミン還元が進行して、マグネタイトが生成した。留出したテクリーンから還元水の分離がほとんど確認されなくなったら、還元反応が完結したと判断した。
 (マグネタイト微粒子の回収)
 実施例6と同様にして、マグネタイト微粒子を得た。収量は149.17gであった。
 (マグネタイト微粒子の還元)
 マグネタイト微粒子をアルミナボートに入れ、電気炉で水素雰囲気下、575℃にて6時間還元処理を行い、室温まで冷却して徐酸化処理を実施した。その後、大気中に取り出した。得られた鉄微粒子の収量は99.14gであった。乾燥粉末に含まれる鉄成分は97.76gであり、最終的な収率は87.5%であった。
 [比較例1/銅微粒子の合成例3]
 第1工程において、塩基性ギ酸銅(分子量:125.6)394.3g及びミリスチン酸(分子量:228.37)35.8gを、スワクリーン#150(丸善石油製)450gとメチルプロピレントリグリコール50gの混合溶媒に添加した。第2工程において、2-アミノエタノールの代わりに1-アミノ-2-プロパノール(分子量:75.11)825.5gを使用し、反応温度を92℃~95℃で維持するように減圧度と熱源を調整した。それ以外は実施例1と同様に操作して反応を実施したが、金属錯体の熱分解時に多量の水素と炭酸ガスが発生し、実施例1とは異なる反応機構で反応が進行した。粉体の取り扱いは、窒素中で実施し、収量は203.3gであった。乾燥粉末に含まれる銅成分は193.2gであり、収率は96.81%であった。得られた銅微粒子は酸素との反応性が高く、空気中で急激な発熱を伴い酸化するため、粉体を大気中で取り扱うことは困難であった。
 [比較例2/銅微粒子の合成例4]
 実施例1の塩基性ギ酸銅をギ酸銅・無水物(分子量:153.55)307.1gに変え、ミリスチン酸(分子量:228.37)は45.6g添加した。第1工程の長鎖脂肪族カルボン酸の付加反応は実施せず、50℃まで加温して撹拌しつつ、3-アミノ-1-プロパノール(分子量:75.11)450.7gを添加した。添加終了後、120℃まで昇温した。それ以外は、比較例1と同様に銅微粒子を合成した。金属錯体の熱分解時には、比較例1と同じく多量の水素ガスと炭酸ガスの発生を伴う反応が起こった。銅微粒子は酸素との反応性が高く、大気中で取り扱うには徐酸化処理が必要であった。収量は122.66gであり、乾燥粉末に含まれる銅成分は119.0gであり、収率は93.61%であった。
 [比較例3/ニッケル微粒子の合成例5]
 第1工程において、塩基性ギ酸ニッケル・二水和物(分子量:156.7)391.8g及びミリスチン酸(分子量:228.37)28.5gを、混合溶媒に添加した。第3工程において、2-アミノエタノールと水の留出量が400mLの時点、すなわち錯化剤の留去が不十分な状態で中止し、第4工程に移行して還元反応を実施した。それ以外は実施例3と同様に操作を実施した。収量は80.5gであり、乾燥粉末に含まれるニッケル成分は77.8gであり、収率は53.02%であった。
 [比較例4/ニッケル微粒子の合成例6]
 第1工程において、塩基性ギ酸ニッケル・二水和物をギ酸ニッケル・二水和物(分子量:184.76)369.5gに変えた。それ以外は実施例3と同様にニッケル微粒子を合成した。実施例3とは異なり、150℃以下では還元反応は進行しなかったため、160℃~162℃で反応を行なった。反応は僅かだが、水素ガスの発生を伴った。収量は112.0gであり、乾燥粉末に含まれるニッケル成分は109.76gであり、収率は93.51%であった。平均粒子径は250nmであり、結晶子径は26.8nmであり、金属微粒子は大きな粒子であった。
 [比較例5/ニッケル微粒子の合成例7]
 第1工程において、塩基性ギ酸ニッケル・二水和物を酢酸ニッケル・四水和物(分子量:248.84)497.7gに変えた。それ以外は実施例3と同様にニッケル微粒子の合成を試みた。実施例3及び比較例4とは異なり、160℃~162℃で反応を行なったが、反応液中にニッケル微粒子は生成しなかった。フラスコ側壁には、ガラスのSi-OHを還元触媒としたニッケル粒子の生成・付着が確認された。
 実施例1~7、比較例1~4、参考例3について、金属微粒子の性状を表1に示し、焼結金属材料の性状を表2に示した。また、実施例1,4,6,7及び参考例3の焼結金属材料の高温焼鈍試験結果を表3に示した。なお、表3において、銅-クロム合金、純銅及び純ニッケルの高温焼鈍試験結果を併せて記載した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 図13は、実施例1~7の粒子径及び結晶子径と炭素含有量の散布図であり、図14は、実施例1~7の粒子の炭素量と結晶子径から計算した結晶子の比表面積をプロットした散布図である。粒子の炭素含有量と粒子径及び結晶子径の相関性を吟味したところ、図14に示すように明確な一次関数となり、炭素含有量と結晶子径の間に相関性があることが判った。これらのことから、有機物は、単純に粒子表面に付着したものではなく、生成した一次粒子の表面に付着した状態で凝集して二次粒子を形成した金属微粒子であると本発明者は推察した。
 図15は、実施例5のニッケル微粒子の焼結体の画像であり、図16は、比較例3のニッケル微粒子の焼結体の画像である。実施例5のニッケル微粒子の焼結体では、900℃以上(図15の例では900℃と1100℃)で焼成しても発生ガスによる膨れは確認されず、図6で示すように焼結密度が98%と高密度な焼結体が得られることがわかった。一方、比較例3のニッケル微粒子の焼結体では、900℃以上(図16の例では900℃と1100℃)で焼成した場合、発生ガスによる膨れが確認され、図7に示すように800℃以上では焼結密度が低下することがわかった。
 [まとめ]
 本発明で得られた焼結金属材料は、図9~図12の結晶粒組織画像が示すように、微細粒結晶組織を有している。得られた銅微粒子焼結体、ニッケル微粒子焼結体及びコバルト微粒子焼結体は、平均結晶粒径がそれぞれ0.58μm、0.91μm、6.37μmであり、双晶間隔がそれぞれ15.6~125nm、23.2~242nm、12.4~186nmであった。これを反映した焼結体のビッカース硬度は、冷間圧延率80%に相当する硬さを超えて達成されていた。さらに特異な特性として、800℃での焼鈍試験後でもその硬度を保持しており、結晶粒成長を抑制することが示された。このことから、得られた焼結金属材料は、高い二次再結晶温度を有する特異な焼結体であることが確認できた。
 本発明で得られた金属微粒子は、その特異な被覆構造に由来して平均粒子径が20~200nmと微細である。その金属微粒子は、大気中で取扱いが可能であり、安定性を有する。この金属微粒子を一軸加圧で成形した成形物は、不活性若しくは還元雰囲気下で無加圧焼成することで、相対密度95容量%以上の高密度な焼結体を得ることができる。
 本発明に係る金属微粒子の製造方法は、図5~図8に示すように被覆材料や反応条件を調整することで焼結特性を制御することができる。通常の有機物で被覆されたニッケル微粒子は、図7が示すように熱分解されることなく被覆剤が脱離するため、焼結性の抑制作用がなく、300℃といった温度以上で焼結による粒成長が生じて開気孔を閉塞して焼結密度は93容量%位が限界となる。さらに加熱すると、還元ガスによる膨張現象を引き起こす。図5及び図6のニッケル微粒子は、400℃以上で被覆成分の熱分解による離脱がある。そのため、焼結性の抑制効果が発現され、焼結温度が高温化することが判る。焼結温度を高温化することは、オズワルド成長を生じる二次結晶化温度が高温側にシフトすることであり、微細な結晶粒組織を有する焼結金属材料が提供可能となる。
 また、本発明に係る製造方法は、特殊な装置を用いることなく、還元時に水素等のガスが大量に発生することもない安全性の高い手法である。本発明に係る製造方法は、平均粒子径が小さく、粒度の揃った粒子を製造するために従来法のような貴金属を核剤として用いずとも製造可能である。また、本発明に係る製造方法は、反応を2モル/L以上の高濃度で生産できるため、コスト的にも優勢性がある。
 本発明に係る焼結金属材料は、高強度で高い耐熱性を有し、さらに電気伝導性や放熱性に優れることから、機械的強度を必要とされる焼結部品や電極材料に好適である。また、ハンドリング性に優れる圧粉成形体を成形できることから、従来の銅粉末、ニッケル粉末、コバルト粉末と同様の幅広い使用環境に対応可能であり、粉末冶金法によって製造される多くの焼結部品を成形できる。特に800℃で熱処理を実施しても硬度低下を起こさないため、従来の耐応力緩和性が問題になる焼結部品として使用可能であり、幅広い分野で使用できる。
 

 

Claims (18)

  1.  積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能な金属からなる焼結金属材料であって、平均結晶粒径が0.2~10μmの微細粒組織を有し、20nm以下のナノ空隙を有し、結晶粒組織中に双晶を含み、該双晶中の双晶間隔が5~250nmである、ことを特徴とする焼結金属材料。
  2.  対応する純金属に対して電気電導率が75%以上であり、二次再結晶化温度が800℃以上である、請求項1に記載の焼結金属材料。
  3.  前記金属は、融点が950℃以上である、請求項1又は2に記載の焼結金属材料。
  4.  Co,Ni,Ag,Au,Pt,Pd,Rh及びCuの群から選択される1の金属である、請求項1又は2に記載の焼結金属材料。
  5.  Co,Ni及びCuの群から選択される1の金属である、請求項1又は2に記載の焼結金属材料。
  6.  相対焼結密度が95容積%以上である、請求項1又は2に記載の焼結金属材料。
  7.  前記金属は純金属であって、炭素含有量が0.001~0.1重量%、窒素含有量が0.001重量%以下、硫黄含有量が0.01重量%以下であり、不可避不純物を除き、他の金属元素及び無機元素を含まない、請求項1又は2に記載の焼結金属材料。
  8.  積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能な金属微粒子を焼結して、平均結晶粒径が0.2~10μmの微細粒組織を有し、20nm以下のナノ空隙を有し、結晶粒組織中に双晶を含み、該双晶中の双晶間隔が5~250nmである焼結金属材料の製造方法であって、
     前記金属微粒子は、平均粒子径が20~200nmで、有機物で被覆されており、
     前記金属微粒子をペースト又はインキ化して印刷して乾燥して形成した乾燥皮膜体、又は、粉末成形法若しくは粉末射出成形法で成形した固化体、を焼結する、ことを特徴とする焼結金属材料の製造方法。
  9.  焼結金属材料の作製に使用される金属微粒子であって、
     平均粒子径が20~200nmであり、結晶子径が4~40nmであり、炭素及び/又は窒素を含む有機化合物を有し、
     前記炭素の含有率Cw(重量%)を前記結晶子径から算出された比表面積(m/g)で割った値が50~500(μg/m)であり、及び/又は、前記窒素の含有率Nw(重量%)を前記結晶子径から算出された比表面積(m/g)で割った値が5~100(μg/m)である、ことを特徴とする金属微粒子。
  10.  前記金属微粒子表面の金属又は自然酸化膜(金属酸化膜及び/又は金属水酸化物、及び吸着水を含む。)に前記有機化合物が化学的若しくは物理的に吸着している単結晶体又は多結晶体で構成される一次粒子、又は、前記一次粒子が凝集した二次粒子である、請求項9に記載の金属微粒子。
  11.  前記金属微粒子を構成する金属は、積層欠陥エネルギーが150mJ/m以下で、融点が950℃以上で、炭素と安定な化合物を形成せず、炭素が固溶可能である、請求項9及び10に記載の金属微粒子。
  12.  前記金属は、Co,Ni,Ag,Au,Pt,Pd,Rh及びCuの群から選択された1の金属である、請求項9又は10に記載の金属微粒子。
  13.  前記金属は、Co,Ni及びCuの群から選択された1の金属である、請求項9又は10に記載の金属微粒子。
  14.  標準酸化還元電位が-0.30V~+0.60Vの遷移金属を還元して平均粒子径が20~200nmの金属微粒子を製造する方法であって、
     標準酸化還元電位が-0.30V~+0.60Vの遷移金属のイオンの塩基性低分子有機酸金属塩と、前記塩基性低分子有機酸金属塩に対して少なくとも1モル%の長鎖脂肪族カルボン酸と、水及び/又はアルカノールアミン類と共沸混合物を形成可能な非極性溶媒とを加熱攪拌して、前記長鎖脂肪族カルボン酸を前記塩基性低分子有機酸金属塩に付加する第1工程と、
     前記塩基性低分子有機酸金属塩に対して4.0±1.0モル当量のアルカノールアミン類を錯化剤として添加した後、加熱攪拌して、前記塩基性低分子有機酸金属塩を完全に溶解して金属錯体に錯化する第2工程と、
     金属の配位水を含め反応液中の水と分解して遊離した前記錯化剤を共沸蒸留で留去しつつ、加熱攪拌して前記金属錯体を分解して金属水酸化物のゾルを作製し、さらに脱水して金属酸化物の微粒子に転換する第3工程と、
     前記金属酸化物が金属に還元される温度に加熱して平均粒子径が20~200nmの金属微粒子を作製する第4工程と、をその順で有する、ことを特徴とする金属微粒子の製造方法。
  15.  前記塩基性低分子有機酸金属塩が、塩基性炭酸金属塩、塩基性ギ酸金属塩、又は、塩基性酢酸金属塩である、請求項14に記載の金属微粒子の製造方法。
  16.  前記錯化剤のアルカノールアミンが還元剤となる、請求項14又は15に記載の金属微粒子の製造方法。
  17.  前記塩基性低分子有機酸金属塩が塩基性ギ酸金属塩であり、
     前記第4工程において、過剰な錯化剤のアルカノールアミンをより塩基性の低い第2のアルカノールアミンと交換して還元させる、請求項14に記載の金属微粒子の製造方法。
  18.  前記標準酸化還元電位が-0.30ボルト~+0.60ボルトの遷移金属は、Co,Ni及びCuの群から選択される1の金属である、請求項14又は15に記載の金属微粒子の製造方法。
PCT/JP2023/047165 2022-12-29 2023-12-28 焼結金属材料、焼結用金属微粒子及びそれらの製造方法 WO2024143517A1 (ja)

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