WO2024143388A1 - 非水電解液二次電池の電極形成用スラリー、非水電解液二次電池、及び非水電解液二次電池の製造方法 - Google Patents

非水電解液二次電池の電極形成用スラリー、非水電解液二次電池、及び非水電解液二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

電極活物質と導電助剤と分散媒とを含み、下記式(1)~(4)を満たす、非水電解液二次電池の電極形成用スラリー、このスラリーを用いた非水電解液二次電池及びその製造方法。 式(1)0<y-x≦10 式(2)0≦x≦30 式(3)SBET≧170 式(4)ΔE≦30 x:電極活物質と導電助剤の合計100g当たりの分散媒の吸液量(mL) y:電極活物質と導電助剤の合計100g当たりの分散媒の量(mL) SBET:導電助剤のBET比表面積(m/g) ΔE:分散媒の表面自由エネルギーと導電助剤の表面自由エネルギーとの差の絶対値(mN/m)

Description

非水電解液二次電池の電極形成用スラリー、非水電解液二次電池、及び非水電解液二次電池の製造方法
 本発明は、非水電解液二次電池の電極形成用スラリー、非水電解液二次電池、及び非水電解液二次電池の製造方法に関する。
 リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高エネルギー密度であり、貯蔵性能、低温動作性等にも優れ、携帯電話、ノートパソコン等のポータブル電子機器に広く利用されている。また、電池を大型化して、自動車をはじめとした輸送機器にも使用されるようになり、また夜間電力、自然エネルギー発電による電力等の貯蔵装置としての利用も進められている。
 非水電解液二次電池の一般的な製造方法を説明する。まず、正極集電体と正極活物質層との積層構造からなる正極と、負極集電体と負極活物質層との積層構造からなる負極とを、正極活物質層と負極活物質層がセパレータを挟んで向き合うように配して電極積層体を得る。通常は、この電極積層体をさらに捲回して捲回電極体を得て、この捲回電極体を電池ケース等に格納する。次いで、電解液を電池ケース内に注液し、この電解液を、正極活物質層、セパレータ及び負極活物質層の全体に浸透させる。その後、得られた電池を充放電(初期化)して負極上にSEI(Solid Electrolyte Interface)を形成することにより、非水電解液二次電池が得られる。以降の説明において、正極と負極とを合わせて「電極」、正極活物質と負極活物質とを合わせて「電極活物質」又は単に「活物質」、正極集電体と負極集電体とを合わせて「電極集電体」又は単に「集電体」と称すことがある。
 非水電解液二次電池を高容量化する技術が検討されている。例えば特許文献1には、電極活物質層を、活物質を高含有するスラリーの状態として二次電池として機能させる技術が開示されている。具体的には、
 第1の非水液体電解質中に、第1の活物質及び電解液を含む、非結着体からなる正極と、
 第2の非水液体電解質中に、第2の活物質及び電解液を含む、非結着体からなる負極と、
 上記正極と上記負極との間に配設されたイオン透過膜と、
を含む、電気化学セルであって、
 上記正極及び上記負極は各々、約200μmから約3000μmの厚みを有する、
電気化学セルが記載されている。
 特許文献1記載の技術によれば、上記の正極及び負極のように、電極活物質層(正極活物質層及び負極活物質層)が電解質を含み、かつスラリー状で非結着状態のため、電極活物質層の可撓性を維持しつつ厚膜にでき、固体粒子間を結着させるバインダーも不要で、電池の可撓性を維持しつつ電荷容量及びエネルギー密度全体を大幅に増加させることができる。特許文献1に記載されるような、電極活物質層を、電解液を含むスラリー状に形成した非水電解液二次電池を、以降の説明では準固体二次電池と称すことがある。
特開2017-147222号公報
 準固体二次電池ではない一般的な非水電解液二次電池の製造では、電極活物質層は通常、電極活物質と導電助剤とを含むスラリー(電極形成用スラリー)を電極集電体上に塗布し、乾燥して形成される。この際、製造効率の向上のために、電極形成用スラリーの特性を種々の角度から制御することが求められる。例えば、電極形成用スラリーのハンドリング性を高めて電極活物質層を均一に精度良く形成するために、電極形成用スラリーには、適度な低粘度を示し、かつ、そこに含まれる固体粒子(活物質及び導電助剤)の安定的な分散状態を維持できること(分散安定性)が求められる。また、製造時間短縮のために、電極形成用スラリーには、塗布後、素早く乾燥させることができること(易乾燥性)が要求される。
 易乾燥性の観点から、電極形成用スラリー中の溶媒量を低減し、固形分濃度(活物質及び導電助剤の各含有量の合計)の高いスラリーを塗布することが考えられる。しかし、電極スラリー中の固形分濃度が高まるとスラリーの粘度が上昇し、また、凝集が生じやすくなり分散安定性も低下し、塗布適性に劣るものとなる。結果、得られる電極活物質層の均一性が損なわれ、表面は荒れた状態となり、得られる電池間において、性能のばらつきを生じやすくなる。
 また、非水電解液二次電池の高容量化(高エネルギー密度化)のために、イオンを貯蔵する活物質をより高含有させて、逆に導電助剤の含有量を抑える試みがある。しかし、導電助剤の含有量を抑えれば導電性が低下し、出力特性において不利となる。比表面積が高く電子伝導ネットワークを構築しやすい導電助剤を少量用いることにより、高容量化と高出力特性を両立する試みがあるが、比表面積の高い導電助剤はスラリー中で固体粒子の凝集を誘導し、分散安定性を担保することがより困難になってしまう。
 また、準固体二次電池の製造における電極形成用スラリーに着目すると、上記の観点に加え、別の観点からも、電極形成用スラリーの活物質濃度を高めることが求められる。すなわち、準固体二次電池では電極形成用スラリーが、事実上、そのまま電極活物質層として機能する。そのため、準固体二次電池の製造において、電極形成用スラリー中の活物質含有量は、電池の高容量化(高エネルギー密度化)に直結する重要な技術要素である。しかし、活物質の含有量を高めて固形分濃度が上昇すれば塗布適性に劣るものとなることは上記の通りであり、また、活物質の含有量をより高めるべく比表面積の高い導電助剤を少量用いる形態にすれば、分散安定性が犠牲になることも上記の通りである。
 本発明は、非水電解液二次電池の電極形成用スラリーであって、所定の高い比表面積の導電助剤を適用しながらも、製造適性(分散安定性、昜乾燥性及び塗布適性)に優れ、優れた電池性能を示す非水電解液二次電池を得ることができる電極形成用スラリーを提供することを課題とする。また、本発明は、この電極形成用スラリーを用いた非水電解液二次電池及びその製造方法を提供することを課題とする。
 本発明の上記の課題は以下の手段により解決された。
〔1〕
 電極活物質と導電助剤と分散媒とを含み、下記式(1)~(4)を満たす、非水電解液二次電池の電極形成用スラリー。
   式(1)0<y-x≦10
   式(2)0≦x≦30
   式(3)SBET≧170
   式(4)ΔE≦30
 xは、上記電極形成用スラリーにおいて、上記電極活物質と上記導電助剤の合計100g当たりの上記分散媒の吸液量(mL)であり、下記式(5)で算出される。
 yは、上記電極形成用スラリーにおいて、上記電極活物質と上記導電助剤の合計100g当たりの上記分散媒の量(mL)である。
 SBETは、上記導電助剤のBET比表面積(m/g)である。
 ΔEは、上記分散媒の表面自由エネルギーと上記導電助剤の表面自由エネルギーとの差の絶対値(mN/m)である。
   式(5) x=[Sa×da/100]+[Sc×dc/100]
 Saは、上記電極活物質100g当たりの上記分散媒の吸液量(mL)である。
 daは、上記電極形成用スラリー中の上記電極活物質と上記導電助剤の合計に占める上記電極活物質の割合(質量%)である。
 Scは、上記導電助剤100g当たりの上記分散媒の吸液量(mL)である。
 dcは、上記電極形成用スラリー中の上記電極活物質と上記導電助剤の合計に占める上記導電助剤の割合(質量%)である。
〔2〕
 電解質を含む、〔1〕に記載の電極形成用スラリー。
〔3〕
 上記式(2)が下記式(2a)を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載の電極形成用スラリー。
  式(2a)0≦x≦21
〔4〕
 上記式(4)が下記式(4a)を満たす、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
  式(4a)ΔE≦25
〔5〕
 上記分散媒の表面自由エネルギーが20~40mN/mである、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔6〕
 上記Saが10~21mLである、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔7〕
 上記Scが200~1700mLである、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔8〕
 上記導電助剤のかさ密度が35g/L以下である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔9〕
 上記導電助剤が表面処理されている、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔10〕
 分散剤を含有する、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔11〕
 上記電極活物質の含有量が45質量%以上である、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔12〕
 固形分の含有量が60質量%を越える、〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔13〕
 上記電極活物質が正極活物質である、〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔14〕
 上記電極活物質の割合daが90.00~99.99質量%であり、上記導電助剤の割合dcが0.01~10.00質量%である、〔1〕~〔13〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリー。
〔15〕
 正極とセパレータと負極とをこの順に有し、正極活物質層及び/又は負極活物質層として〔2〕に記載の電極形成用スラリーを用いた非水電解液二次電池。
〔16〕
 電極集電体上に、〔1〕~〔14〕のいずれか1つに記載の電極形成用スラリーを塗布して電極活物質層を形成することを含む、非水電解液二次電池の製造方法。
 本発明の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
 本発明において「非水電解液」とは、水を実質的に含まない電解液を意味する。すなわち、「非水電解液」は本発明の効果を妨げない範囲で微量の水を含んでいてもよい。本発明において「非水電解液」は、水の濃度が200ppm(質量基準)以下であり、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましい。なお、非水電解液を完全に無水とすることは現実的に困難であり、通常は水が1ppm以上含まれる。
 本発明において「非水溶媒」もまた、水を実質的に含まない溶媒を意味する。すなわち、「非水溶媒」は本発明の効果を妨げない範囲で微量の水を含んでいてもよい。本発明において「非水溶媒」は、水の濃度が200ppm(質量基準)以下であり、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましい。なお、非水溶媒を完全に無水とすることは現実的に困難であり、通常は水が1ppm以上含まれる。
 本発明の非水電解液二次電池の電極形成用スラリーは、経時によっても分散状態を維持でき、素早く乾燥させることができ、さらには、均一な塗布層を形成でき、結果、非水電解液二次電池の製造適性に優れ、得られる非水電解液二次電池をより性能に優れたものとすることができる。本発明の非水電解液二次電池は、その製造における電極活物質層の形成工程において、乾燥時間を短縮することができ、また、平滑な電極活物質層を形成でき、製造適性が高く、電池性能にも優れる。本発明の非水電解液二次電池の製造方法によれば、電極活物質層の形成工程において、乾燥時間を短縮することができ、また、平滑な電極活物質層を形成でき、製造適性が高く、電池性能にも優れる非水電解液二次電池を得ることができる。
図1は、本発明に係る二次電池の一実施形態について、基本的な積層構成を模式化して示す縦断面図である。
 本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明は、本発明で規定すること以外は、これらの形態に限定されるものではない。
[電極形成用スラリー]
 本発明の電極形成用スラリー(「本発明のスラリー」ともいう。)は、電極活物質と導電助剤と分散媒とを含むスラリーであり、非水電解液二次電池の電極活物質層の形成に好適なスラリーである。
 電極活物質は、正極活物質でもよく、負極活物質でもよく、正極活物質がより好ましい。本発明のスラリーが正極活物質を含む場合は、本発明のスラリーを正極活物質層形成用スラリーとして用いることができる。本発明のスラリーが負極活物質を含む場合は、本発明のスラリーを負極活物質層形成用スラリーとして用いることができる。
 本発明のスラリーの好ましい一形態(第一の形態)では、本発明のスラリーは、一般的な非水電解液二次電池(準固体二次電池ではない非水電解液二次電池)の電極形成用スラリーとして用いられる。また、本発明の別の好ましい形態(第二の形態)では、本発明のスラリーは、準固体二次電池の電極形成用スラリーとして用いられる。第二の形態の電極形成用スラリーは、電解質を含む(すなわち、分散媒に電解質を加えた電解液を含有する)点で、第一の形態と相違する。
 本発明のスラリーは下記式(1)~(4)を満たす。
   式(1)0<y-x≦10
   式(2)0≦x≦30
   式(3)SBET≧170
   式(4)ΔE≦30
 xは、上記電極形成用スラリーにおいて、上記電極活物質と上記導電助剤の合計100g当たりの上記分散媒の吸液量(mL)であり、下記式(5)で算出される。
 yは、上記電極形成用スラリーにおいて、上記電極活物質と上記導電助剤の合計100g当たりの上記分散媒の量(mL)である。
 SBETは、上記導電助剤のBET比表面積(m/g)である。
 ΔEは、上記分散媒の表面自由エネルギーと上記導電助剤の表面自由エネルギーとの差の絶対値(mN/m)である。
   式(5) x=[Sa×da/100]+[Sc×dc/100]
 Saは、上記電極活物質100g当たりの上記分散媒の吸液量(mL)である。
 daは、上記電極形成用スラリー中の上記電極活物質と上記導電助剤の合計に占める上記電極活物質の割合(質量%)である。
 Scは、上記導電助剤100g当たりの上記分散媒の吸液量(mL)である。
 dcは、上記電極形成用スラリー中の上記電極活物質と上記導電助剤の合計に占める上記導電助剤の割合(質量%)である。
 本発明のスラリーは式(1)0<y-x≦10を満たす。すなわち、本発明のスラリーは、このスラリーを構成する電極活物質と導電助剤の合計100g当たりの分散媒の吸液量x(mL)に応じて、電極活物質と導電助剤の合計100g当たりの分散媒の量y(mL)が所定の範囲に制御される。本発明においてy-xを実効液量ということがある。
 ここで、本発明において、「電極活物質と導電助剤の合計100g当たりの分散媒の吸液量」とは、スラリー中に存在する電極活物質種と導電助剤種とを、スラリー中の含有量比と同じ割合で混合した混合物100gが、その構造中に保持できる分散媒量を意味する。
 xは、式(5)により求めることができる。式(5)において、電極活物質100g当たりの分散媒の吸液量Sa及び導電助剤100g当たりの分散媒の吸液量Scの決定方法は後述する。
 分散媒の量yに対して上記吸液量xが少なすぎる(y-x>10である)と、スラリーを塗布して電極活物質層を形成し、その後、乾燥したときに、揮発する溶媒量が多くなり電極活物質層中に空隙等が生じやすくなる。結果、体積エネルギー密度が低下してしまう。また、スラリーを塗布して電極活物質層を形成したときに、過剰の分散媒が端部から流れ出し、電極活物質層の平滑性の低下にもつながる。
 本発明のスラリーは、式(1)に関し、下記式(1a)を満たすことが好ましく、下記式(1b)を満たすことがより好ましく、下記式(1c)を満たすことがより好ましく、下記式(1d)を満たすことがさらに好ましい。
  式(1a) 1.0≦y-x≦10
  式(1b) 3.0≦y-x≦10
  式(1c) 6.0≦y-x≦10
  式(1d) 7.0≦y-x≦9.0
 本発明のスラリーは、電極活物質と導電助剤の合計100g当たりの分散媒の吸液量xが式(2)0≦x≦30を満たす。すなわち、電極活物質及び導電助剤による吸液量の合計が所定の範囲に制御される。この吸液量xを上記範囲内とすることにより、本発明のスラリーに含まれる分散媒の量を抑えることができる。
 本発明のスラリーは、式(2)に関し、下記式(2a)を満たすことが好ましく、下記式(2b)を満たすことがより好ましく、下記式(2c)を満たすことがさらに好ましく、下記式(2d)を満たすことが特に好ましい。
  式(2a)0≦x≦21
  式(2b)7≦x≦18
  式(2c)8≦x≦18
  式(2d)10≦x≦16
 上記電極活物質及び導電助剤の各100g当たりの分散媒の吸液量(Sa、Sc)は、JIS 6217-4:2017に準拠して、以下のようにして求めることができる。
-吸液量測定方法-
 吸液量の測定には、吸油量測定装置(S-500(商品名)、あさひ総研社製)を用いる。電極活物質又は分散助剤の粉体15gに対し、スラリーを構成する分散媒を0.5gずつ滴々添加していきトルクを測定し、トルクが最大(極大)となる分散媒添加量(mL)を測定する。得られた値に基づいて、粉体100g当たりの吸液量を算出する。
 上記吸液量は、本発明のスラリーが分散媒として混合溶媒を含む場合には、この混合溶媒を、「上記スラリーを構成する分散媒」として用いて吸液量を測定するものとする。本発明のスラリーが準固体二次電池用の電極形成用スラリーである場合には、スラリーの調製に用いる非水電解液を構成する分散媒(溶質を除いた溶媒)を、上記測定に用いるものとする。
 式(5)において、電極活物質100g当たりの分散媒の吸液量Saは、10~21mLが好ましく、10~18mLがより好ましく、10~15mLがより好ましく、11~15mLがさらに好ましい。
 導電助剤100g当たりの分散媒の吸液量Scは200~1700mLが好ましく、200~1500mLがより好ましく、350~1500mLがより好ましく、450~1400mLがさらに好ましい。吸液量Scは700~1500mLともでき、800~1500mLともでき、900~1500mLともできる。
 電極形成用スラリー中の電極活物質と導電助剤の合計に占める電極活物質の割合daは、90.00~99.99質量%が好ましく、95.00~99.99質量%が好ましく、97.00~99.95質量%が好ましく、98.00~99.90質量%がより好ましい。
 電極形成用スラリー中の電極活物質と導電助剤の合計に占める導電助剤の割合dcは、0.01~10.00質量%が好ましく、0.01~5.00質量%がより好ましく、0.10~2.00質量%がさらに好ましい。導電助剤の割合dcは、0.10~1.00質量%とすることもできる。
 電極活物質及び導電助剤の各吸液量は、これらの組成、平均粒径、BET比表面積、かさ密度、表面処理等により、適宜に制御することができる。
 本発明のスラリーは、導電助剤について式(3)SBET≧170を満たす。すなわち、本発明のスラリーは、BET比表面積(m/g)の比較的大きな導電助剤を用いる。
 導電助剤のSBETは、下記式(3a)を満たすことが好ましく、下記式(3b)を満たすことがより好ましく、下記式(3c)を満たすことがさらに好ましく、下記式(3d)を満たすことがさらに好ましい。
  式(3a)SBET≧300
  式(3b)SBET≧500
  式(3c)SBET≧700
  式(3d)SBET≧800
 SBETの上限は特に限定されないが、1500m/gが実際的である。したがって、導電助剤のSBETは、下記式(3e)を満たすことが好ましく、下記式(3f)を満たすことがより好ましく、下記式(3g)を満たすことがさらに好ましく、下記式(3h)を満たすことがさらに好ましい。
  式(3e)1500≧SBET≧300
  式(3f)1500≧SBET≧500
  式(3g)1500≧SBET≧700
  式(3h)1500≧SBET≧800
 導電助剤が上記の大きなBET比表面積を有する場合、導電助剤の表面は凹凸に富んだものとなり、導電助剤の添加量を低減しても良好な導電助剤による導電ネットワークが形成でき、電池とした際に出力特性が高めることができる。したがって、導電助剤の添加量を低減することが可能となる。他方、BET比表面積が大きな導電助剤は固体粒子の凝集を誘導する傾向がある。本発明ではこの点を、上記式(4)を満たすようにスラリーを制御して対処している。
 導電助剤のSBETは、下記の通り、BET法により測定することができる。
-BET比表面積測定方法-
 導電助剤0.2gを、120℃で、6時間乾燥させた後、マイクロトラック社製BELSORP mini(商品名)を使用して、下記の測定条件にて測定する。
・吸着温度:77K
・吸着ガス:N
・平衡時間:100秒
・パージガス:He
 
 本発明のスラリーは、式(4)ΔE≦30(mN/m)を満たす。分散媒の表面自由エネルギー(E)と導電助剤の表面自由エネルギー(E)との差の絶対値(ΔE)が上記範囲内にあることにより、分散媒と導電助剤とのぬれ性(親和性)が高くなる。その結果、導電助剤の作用で形成される粒子凝集体中に、分散媒が染み込みやすくなり、粒子間相互作用が低下して、スラリーの粘度を低下させることができると考えられる。
 式(4)は、下記式(4a)を満たすことが好ましい。
  式(4a)ΔE≦25
 ΔEの下限は特に限定されないが、2≦ΔEであることが好ましい。
 ΔEは、10≦ΔE≦30であることが好ましく、15≦ΔE≦30であることがより好ましく、20≦ΔE≦30であることがさらに好ましい。また、ΔEは、10≦ΔE≦25であることも好ましく、15≦ΔE≦25であることも好ましく、20≦ΔE≦25であることも好ましい。
 分散媒の表面自由エネルギー(E)は、10~80mN/mが好ましく、10~60mN/mがより好ましく、20~40mN/mがさらに好ましい。
 分散媒の表面自由エネルギーは、分散媒種の選択、その組合せ、後述する、電極活物質及び導電助剤の分散剤の添加等により、制御することができる。
 導電助剤の表面自由エネルギー(E)は、3~50mN/mが好ましく、3.5~30mN/mがより好ましく、4.0~20mN/mがより好ましく、7.0~20mN/mがより好ましく、16~20mN/mがさらに好ましい。
 導電助剤の表面自由エネルギーは、表面処理等により制御することができる。
 上記分散媒の表面自由エネルギーと導電助剤の各表面自由エネルギーは、以下のようにして算出することができる。
<表面自由エネルギー測定方法>
1)導電助剤の表面自由エネルギー
 導電助剤の表面自由エネルギーは浸透速度法により求めることができる。詳細を以下に記載する。
 表面張力計(装置名DY-700(商品名)、協和界面科学社製)を使用し、粉体接触角測定キットを用いて、測定を行う。導電助剤の粉体2.0gを内径1cm(断面積S:0.785cm)の筒に詰め、筒の内径と同じ直径を有する円筒状の棒で粉体を圧縮し充填する。上記の粉体接触角測定キット上に、上記の筒をセットし、筒中の粉体に3種の溶媒(ヘキサデカン、エチレングリコール、ブロモナフタレン)をそれぞれ5分間浸透させ(時間t=300秒)、それぞれの溶媒の浸透重量W(g)を測定し、W /tを算出する。
 このようにして得られた各溶媒のW /tを、下記液体密度ρ、液体表面張力γ、及び液体粘度ηと共に、下記Washburnの式に代入し各溶媒の接触角cosθを以下のようにして算出する。
 
 上記3種の溶媒の液体密度ρ、液体表面張力γ、及び液体粘度ηは、文献値を参照し、以下の定数を使用する。
 
ヘキサデカン:ρ=0.775g/mL、γ=27.6mN/m、η=3.5mPa・s
エチレングリコール:ρ=1.11g/mL、γ=47.7mN/m、η=2mPa・s
ブロモナフタレン:ρ=1.48g/mL、γ=44.6mN/m、η=2.3mPa・s
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000001
 上記3種の溶媒の内、最も良く濡れた溶媒の接触角を0°と仮定し、実測した浸透重量Wと浸透時間tから算出したW /tを、Washburnの式に代入してεrを決定する。ここで、εrは粉体種によって決まる定数である。(上記Washburnの式においてrの単位は「m」、空隙率εは、0.0~1.0の範囲の値である。)
 他の2種の溶媒の実測重量と浸透時間から算出した各溶媒のW /t及び、上記で得られたεrをWashburnの式に代入し、各溶媒に対してcosθを導出する。
 上記のようにして得られた2つの溶媒についてのcosθと、文献値より定まる表面自由エネルギーの分散成分及び極性成分とを、下記に示す、接触角の成分に関するFowkesの式に対し代入し、粉体の表面自由エネルギーの分散成分Y=γSV 、極性成分X=γSV についての二元連立方程式を解くことで、粉体の表面自由エネルギーの分散成分、極性成分を得る。
 なお、上記各溶媒の表面自由エネルギーとしては、日本接着学会誌、8、131(1972)に記載された各定数を使用する。各溶媒の表面自由エネルギーの分散成分(γLV )、極性成分(γLV )、及び分散成分と極性成分の和(γ)は以下の通りである。
 
ヘキサデカン:γLV =27.6mN/m、γLV =0.0mN/m、γ=27.6mN/m
エチレングリコール:γLV =29.4mN/m、γLV =18.3mN/m、γ=47.7mN/m
ブロモナフタレン:γLV =44.4mN/m、γLV =0.2mN/m、γ=44.6mN/m
 
 上記操作(浸透重量の測定)を4回行い(N=4)、分散成分、極性成分の平均値をそれぞれ得る。得られた分散成分の平均値Y及び極性成分の平均値Xの合計を、粉体の表面自由エネルギー(mN/m)とする。粉体の表面自由エネルギーの算出には、解析ソフトDYNALYZERを用いた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-M000002
γSV :粉体の表面自由エネルギーの分散成分(粉体気体間)(mN/m)
γLV :液体(溶媒)の表面自由エネルギーの分散成分(液体気体間)(mN/m)
γSV :粉体の表面自由エネルギーの極性成分(粉体気体間)(mN/m)
γLV :液体(溶媒)の表面自由エネルギーの極性成分(液体気体間)(mN/m)
γ:γLV +γLV 、液体の表面自由エネルギーの分散成分と極性成分の和(mN/m)
2)分散媒の表面自由エネルギー
 表面張力計(装置名DY-700(商品名)、協和界面科学社製)を用いてWilhelmy法で求める。具体的には、分散媒に白金プレート(周囲長L:0.03m)を接触させ、プレートにかかる張力F(mN)および、白金プレートと分散媒との接触角θを測定し、下記式により表面自由エネルギーγ(mN/m)を求める。
 
γ=F/Lcosθ
 
 上記操作を4回行い、得られた測定値の平均値を分散媒の表面自由エネルギー(mN/m)とする。算出には、解析ソフトDYNALYZERを用いた。
 スラリーが分散剤を含む場合には、分散剤をスラリーと同じ濃度に溶解させた分散剤を用いて、分散媒の表面自由エネルギーを測定するものとする。
 上記のように、本発明のスラリーは、比較的大きな比表面積の導電助剤を用い、電極活物質及び導電助剤の吸液量を考慮して分散媒量が少なく制限され、また、導電助剤と分散媒との表面自由エネルギーの関係が制御されている。結果として、スラリー中の液量を減らすことができ、所定の高い比表面積の導電助剤を用いた高濃度スラリーでありながらも、より分散安定性に優れ、より平滑な電極の形成が可能となり、電極活物質層の形成の観点で電池の製造効率及び品質向上に寄与する。
 本発明のスラリーは、スラリー中の電極活物質の含有量が45質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、78質量%以上であることがさらに好ましい。
 本発明のスラリーは、スラリー中の固形分(分散媒(溶媒)以外の成分)の含有量が60質量%を越えることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。この固形分の含有量は、60~95質量%が好ましく、65~92質量%がより好ましく、70~90質量%がさらに好ましく、72~88質量%がさらに好ましく、75~85質量%が特に好ましい。
 本発明のスラリーを構成する各成分についてより具体的に説明する。
<電極活物質>
(正極活物質)
 正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素や硫黄と金属の複合物などでもよい。
 中でも、正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有するリチウム含有遷移金属酸化物がより好ましい。また、このリチウム含有遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0~30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3~2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
 リチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
 (MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])及びLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
 (MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn(LMO)、LiCoMnO、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn及びLiNiMnが挙げられる。
 (MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO及びLiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類並びにLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
 (MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩及びLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
 (ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO及びLiCoSiO等が挙げられる。
 本発明では、正極活物質としては、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物が好ましく、LiFePOがより好ましい。
 正極活物質の形状は特に制限されず、粒子状が好ましい。
 正極活物質の平均粒径(球換算平均粒子径)は特に制限されない。例えば、0.1~50μmとすることができ、0.2~30μmが好ましく、0.5~20μmがより好ましく、0.8~10μmが更に好ましい。
 正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機又は分級機を用いればよい。焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
 市販品の正極活物質を用いる場合、正極活物質の平均粒径は製造元のカタログ記載の値を採用する。
 製造元の平均粒径の情報が入手できない場合又は合成した正極活物質を用いる場合は、正極活物質を水中で分散させ、レーザー回析/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、HORIBA製Particle LA-960V2)で測定して得られる平均粒径の値(水中での体積基準のメジアン径D50)を採用する。このことは、正極活物質以外の固体粒子の平均粒径についても同様である。
 上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
 正極活物質の表面は、別の金属酸化物等の酸化物、炭素系材料等で表面被覆されていてもよい。
 表面被覆材としては、Ti、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含む金属酸化物が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、及び、ニオブ酸リチウム系化合物が挙げられ、例えば、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、Li、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiO、SiO、TiO、ZrO、Al、B、及びLiAlFが挙げられる。また、C、SiC、SiOC(炭素添加シリコン酸化物)等の炭素系材料も表面被覆材として用いることができる。
 正極活物質は、電子伝導度を所望のレベルへと高める観点から、炭素系材料で表面被覆されていてもよい。正極活物質は、炭素(C)により表面被覆されていることが好ましい。炭素による表面被覆は、炭素源となる添加剤(有機物)の存在下で、正極活物質を焼成することにより形成することができる。添加剤としては、例えば、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート等を使用することができる。
 また、正極活物質の表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
 更に、正極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
 上記正極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
(負極活物質)
 負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを吸蔵及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、ケイ素系材料、金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金形成可能な負極活物質等が挙げられる。中でも、炭素質材料またはケイ素系材料が信頼性の点から好ましく用いられる。
 負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂若しくはフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。更に、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維及び活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー並びに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
 負極活物質として適用される金属酸化物及び金属複合酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な酸化物であれば特に制限されず、非晶質酸化物が好ましく、更に金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイトも好ましく挙げられる。ここでいう非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°~40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。
 上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、及び上記カルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族~15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBiの1種単独若しくはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、又はカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、GeO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Sb、Bi、Bi、GeS、PbS、PbS、Sb及びSbが好ましく挙げられる。
 金属(複合)酸化物及び上記カルコゲナイドは、構成成分として、チタン及びリチウムの少なくとも一方を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。リチウムを含有する金属複合酸化物(リチウム複合金属酸化物)としては、例えば、酸化リチウムと上記金属(複合)酸化物若しくは上記カルコゲナイドとの複合酸化物、より具体的には、LiSnOが挙げられる。
 負極活物質はチタン原子を含有することも好ましい。より具体的にはTiNb(チタン酸ニオブ酸化物[NTO])、LiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制され、リチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
 負極活物質としてのリチウム合金としては、二次電池の負極活物質として通常用いられる合金であれば特に制限されず、例えば、リチウムアルミニウム合金が挙げられる。
 リチウムと合金形成可能な負極活物質は、二次電池の負極活物質として通常用いられるものであれば特に制限されない。このような活物質として、ケイ素原子若しくはスズ原子を有する負極活物質、Al及びIn等の各金属が挙げられ、より高い電池容量を可能とするケイ素原子を有する負極活物質(ケイ素原子含有活物質)が好ましく、ケイ素原子の含有量が全構成原子の40mol%以上のケイ素原子含有活物質がより好ましい。
 一般的に、これらの負極活物質を含有する負極(例えば、ケイ素原子含有活物質を含有するSi負極、スズ原子を有する活物質を含有するSn負極)は、炭素負極(黒鉛及びアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量(エネルギー密度)を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
 ケイ素原子含有活物質としては、例えば、Si、SiOx(0<x≦1)等のケイ素材料、更には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅若しくはランタンを含む合金(例えば、LaSi、VSi)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi/Si)、他にも、SnSiO、SnSiS等のケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。なお、SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金化可能な活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
 スズ原子を有する負極活物質としては、例えば、Sn、SnO、SnO、SnS、SnS、更には上記ケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。また、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOも包含される。
 本発明では、負極活物質は、炭素質材料が好ましく、人造黒鉛がより好ましい。
 負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。
 負極活物質の平均粒径(球換算平均粒子径)は、0.1~60μmが好ましく、例えば、0.5~50μmが好ましく、1.0~40μmがより好ましく、5.0~30μmが更に好ましい。
 所定の粒子径にするには、通常の粉砕機若しくは分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミル若しくは篩などが好適に用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級方法としては、特に限定はなく、篩、風力分級機などを所望により用いることができる。分級は乾式及び湿式ともに用いることができる。
 上記負極活物質は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
 負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
 上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
<導電助剤>
 導電助剤としては、上記式(3)を満たすものであれば特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いてもよい。
 本発明においては、導電助剤は炭素質材料が好ましく、アセチレンブラック及びケッチェンブラックがより好ましい。
 正極活物質と導電助剤とを併用する場合、上記の導電助剤のうち、電池を充放電した際にLiの挿入と放出が起きず、活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に活物質層中において活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく活物質に分類する。電池を充放電した際に活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、活物質との組み合わせにより決定される。
 導電助剤の市販品としては、例えば、以下を挙げることができる。
 ケッチェンブラック:カーボンECP(BET比表面積=890m/g)、カーボンECP600JD(BET比表面積=1480m/g)、カーボンECP200L(BET比表面積=430m/g)(いずれもLion社製)、
 カーボンブラック:LITX300(BET比表面積=180m/g)、PBX09(BET比表面積=230m/g)、PBX51(BET比表面積=1350m/g)、LITXmax90(BET比表面積=1400m/g)(いずれもCABOT社製)
 CNT:BT1001M(BET比表面積=272m/g)、BT1003M(BET比表面積=230m/g)(いずれもLG社)
 導電助剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
 導電助剤の形状は、特に制限されないが、粒子状が好ましい。
 導電助剤の平均粒径(球換算平均粒子径)は、特に限定されない。例えば、0.01~50μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましく、0.2~2.0μmが更に好ましい。
 導電助剤のかさ密度(g/L)は、特に制限されない。例えば、かさ密度は40g/L以下が好ましく、35g/L以下がより好ましい。下限は特に限定されないが、10g/L以上が実際的である。したがって、導電助剤のかさ密度は、10~40g/Lであることが好ましく、10~35g/Lであることがより好ましい。かさ密度は、20~35g/Lとすることもできる。
 導電助剤のかさ密度は、以下のようにして測定することができる。
-かさ密度測定方法-
 試料5gを250mLメスシリンダーに静かに入れる。粉体層の上面を圧密せずにならし、かさ体積(mL)を最小目盛単位まで読み取る。試料重量(g)をかさ体積で除することによってかさ密度(g/mL)を計算する。試行を3回繰り返し、平均値を導電助剤のかさ密度とする。
 導電助剤は、表面処理されていてもよい。表面処理することにより、表面自由エネルギーを制御することができる。
 表面処理の方法としては、特に限定されないが、化学処理剤を用いた表面処理及び原子層堆積(Atomic Layer Deposition、ALD)処理が好ましい。
 化学処理剤としては、有機ケイ素化合物(より好ましくは、シランカップリング剤)、有機ホスホン酸化合物等が好ましく、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、オクタデシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリメトキシ(オクチル)シラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタンホスホン酸、1-オクチルホスホン酸、パーフルオロポリエーテルトリエトキシシラン(KY1903(商品名))等を挙げることができる。
 ALD処理において、堆積させる層としては、HfO、SiO、ZrO、Ta、TiO等を挙げることができる。
<分散媒>
 分散媒は、第一の形態(一般的な非水電解液二次電池の電極形成用スラリー)では、水でもよく、非水溶媒でもよい。第二の形態(準固体二次電池の電極形成用スラリー)では、水は用いずに、非水溶媒を用いる。
 非水溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましく、中でも炭素数が2~10の非プロトン性有機溶媒がより好ましい。
 このような非水溶媒としては、鎖状若しくは環状のカーボネート化合物、ラクトン化合物、鎖状若しくは環状のエーテル化合物、エステル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、オキサゾリジノン化合物、ニトロ化合物、鎖状又は環状のスルホン若しくはスルホキシド化合物、リン酸エステル化合物が挙げられる。
 なお、エーテル結合、カルボニル結合、エステル結合又はカーボネート結合を有する化合物が好ましい。これらの化合物は置換基を有していてもよい。
 非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、フッ化エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-メチルオキサゾリジノン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、リン酸トリメチル、ジメチルスルホキシドあるいはジメチルスルホキシドリン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びγ-ブチロラクトンのうちの少なくとも1種が好ましく、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネート等の高粘度(高誘電率)溶媒(例えば、比誘電率ε≧30)と、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネート等の低粘度溶媒(例えば、粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。このような組み合わせの混合溶媒とすることで、電解質塩の解離性及びイオンの移動度が向上する。上記非水溶媒は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの組み合わせが特に好ましい。
 なお、本発明に用いられる非水溶媒は、これらに限定されるものではない。
 本発明のスラリーが、第一の形態の、正極形成用のスラリーである場合、分散媒は、N―メチルピロリドン(NMP)、又はN―メチルピロリドン(NMP)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶媒であることが好ましい。
 本発明のスラリーが、第一の形態の、負極形成用のスラリーである場合、分散媒は、水又はN―メチルピロリドン(NMP)であることが好ましい。
 本発明のスラリーが、第二の形態の、電極形成用のスラリーである場合、分散媒は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒であることが好ましい。
<電解液>
 本発明のスラリーが、第二の形態の電極形成用スラリーである場合、分散媒に電解質を加えて、電解液として用いる。
 分散媒としては、上記の非水溶媒を用いる。
 電解質としては、準固体二次電池の電解液に使用される電解液を使用することができる。金属塩が好ましく、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
 リチウム塩としては、リチウムイオン二次電池の電解質に通常用いられるリチウム塩が好ましく、例えば、以下のリチウム塩が挙げられる。
(L-1)無機リチウム塩:LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF等の無機フッ化物塩、LiClO、LiBrO、LiIO等の過ハロゲン酸塩、LiAlCl等の無機塩化物塩等
(L-2)含フッ素有機リチウム塩:LiCFSO等のパーフルオロアルカンスルホン酸塩、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(FSO、LiN(CFSO)(CSO)等のパーフルオロアルカンスルホニルイミド塩、LiC(CFSO等のパーフルオロアルカンスルホニルメチド塩、Li[PF(CFCFCF)]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF)]、Li[PF(CFCFCFCF]、Li[PF(CFCFCFCF]等のパーフルオロアルキルフッ化リン酸塩等
(L-3)オキサラトボレート塩:リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート等
 これらのなかで、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、Li(Rf1SO)、LiN(Rf1SO、LiN(FSO、又は、LiN(Rf1SO)(Rf2SO)が好ましく、LiPF、LiBF、LiN(Rf1SO、LiN(FSO、又は、LiN(Rf1SO)(Rf2SO)がより好ましく、LiPFが特に好ましい。ここで、Rf1及びRf2はそれぞれパーフルオロアルキル基を示し、炭素数は1~6であることが好ましい。
 なお、本発明の電解液に用いるリチウム塩は、1種を単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせてもよい。
 電解液中、リチウム塩の濃度は、通常は10.0~50.0質量%であり、好ましくは15.0~30.0質量%である。モル濃度としては0.5~1.5Mが好ましい。
<分散剤>
 本発明のスラリーは、分散剤を含んでいてもよい。分散剤は、電極活物質及び導電助剤に吸着する吸着部位とともに反発部位を有し、活物質同士および導電助剤同士の凝集を抑制する機能を有する。
 分散剤としては、非水電解液二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができる。例えば、PVP(ポリビニルピロリドン)、PEG(ポリエチレングリコール)等を用いることができる。
 分散剤として、以下の市販品を用いることもできる。
BYK-ET3004、BYK-ET3034、BYK-ET3003、DISPERBYK-102、DISPERBYK-106、DISPERLAST-1142(いずれも商品名、BYK社製)、Tween20、Triton-X-100(いずれも商品名、東京化成工業社製)。
 本発明のスラリー中、分散剤の含有量は、電極活物質及び導電助剤の合計100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.2~1質量部がより好ましい。
<他の成分>
 本発明のスラリーは、所望により、バインダー、イオン液体、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。これらは、非水電解液二次電池において通常使用されているものを使用することができる。
 バインダーとしては、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)及びスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)が好ましい。
 バインダーの含有量は、電極活物質100質量部に対して、0.1~8質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましい。
 増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)が好ましい。
 増粘剤の含有量は、電極活物質及び導電助剤の合計100質量部に対して、0.1~2.0質量部が好ましく、0.5~1.5質量部がより好ましい。
[非水電解液二次電池]
 本発明の非水電解液二次電池(以下、「本発明の二次電池」とも称す。)は、正極とセパレータと負極とをこの順に有し、正極活物質層及び/又は負極活物質層の形成に、上記本発明のスラリーを用いている。
 本発明の二次電池の説明に先立って、一般的な非水電解液二次電池の構造について説明する。
 図1は、一般的な非水電解液二次電池10の積層構造を、電池として作動させる際の作動電極も含めて、模式化して示す断面図である。非水電解液二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、セパレータ3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する積層構造(以下、電極積層体とも称す)を有している。負極活物質層2と正極活物質層4とこれらの間は非水電解液(図示せず)で満たされ、かつセパレータ3で分断されている。セパレータ3は空孔を有し、通常の電池の使用状態では電解液及びイオンをこの空孔により透過しながら正負極間を絶縁する正負極の分離膜として機能する。このような構造により、例えばリチウムイオン二次電池であれば、充電時には外部回路を通って負極側に電子(e)が供給され、同時に電解液を介して正極からリチウムイオン(Li)が移動してきて負極に蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が電解液を介して正極側に戻され、作動部位6には電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球を採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
 続いて、準固体二次電池に特徴的な基本的構成について説明する。準固体二次電池は、上述の通り、電極活物質層が、非水電解液中に電極活物質を分散してなる電極スラリー層である。したがって、電極活物質層が、非水電解液中に分散してなるスラリー(懸濁液、分散液)である点で、一般的な非水電解液二次電池とは構成を異にする。
 すなわち、一般的な非水電解液二次電池では、電極活物質を、電解質を含まない媒体中に分散してなる塗布液を調製し、この塗布液を集電体上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させて、薄膜状の電極活物質層が形成される。この塗布液には通常、結着材(バインダー)が配合され、電極活物質粒子間が強固に結着した硬い電極活物質層が形成される。こうして形成された電極活物質層上(負極活物質層と正極活物質層との間)に非水電解液が存在する形態となるため、電極活物質層は、その一部に非水電解液が浸透し得る部分が存在するとしても、全体として硬い固体粒子層の状態であり、スラリー層ではない。
 これに対し、準固体二次電池では、電極活物質層が、非水溶媒中にリチウム塩(電解質)を溶解してなる非水電解液中に、電極活物質と導電助剤とを含む固体粒子を分散してなる電極スラリー層である。この電極スラリー層が電極活物質層として機能するに当たり、電極活物質粒子間には強固な結着性が求められず、それゆえ電極スラリー層は通常は結着材を含有しない。電極活物質層が電極スラリー層である点、及び、電極スラリー層とセパレータとが接している点を除けば、準固体二次電池の基本的な層構成は、図1に示す層構成と同じである。
 本発明の二次電池が、一般的な非水電解液二次電池である場合、正極活物質層及び/又は負極活物質層は、本発明の第一の形態のスラリーを塗布し、必要に応じて乾燥させて得られる層である。
 本発明の二次電池が、準固体二次電池である場合、正極活物質層及び/又は負極活物質層は、本発明の第二の形態のスラリーにより形成された層である。
 本発明の二次電池において、正極活物質層及び負極活物質層の両方が本発明のスラリーを用いて形成されていることが好ましい。
 正極活物質層と負極活物質層のいずれかを本発明のスラリー以外の電極形成用スラリーを用いて形成する場合の電極活物質層としては、通常の電極活物質層を用いることができる。
 本発明の二次電池は、正極活物質層及び/又は負極活物質層の形成に本発明のスラリーを用いること以外は、正極活物質、正極集電体、負極活物質、負極集電体、セパレータ等の各材料及び部材は、特に制限されない。これらの材料及び部材等は、通常の二次電池に用いられるものを適宜に適用することができる。これらの二次電池に通常使用される部材及び作製方法については、例えば、特開2016-201308号公報、特開2005-108835号公報、特開2012-185938号公報、国際公開第2018/135395号等を適宜に参照することができる。
 本発明の二次電池において、正極活物質層の厚さは特に制限されず、例えば、5~500μmとすることができ、20~200μmが好ましい。
 本発明の二次電池において、負極活物質層の厚さは特に制限されず、例えば、5~500μmとすることができ、20~200μmが好ましい。
[非水電解液二次電池の製造方法]
 本発明の非水電解液二次電池の製造方法は、電極集電体上に、本発明のスラリーを塗布して電極活物質層を形成することを含む。
 スラリーの塗布方法は特に制限されず、例えば、ロールコーターを用いて塗布したり、ドロップコーティングしたり、集電体の上に均等にスラリーを設置後にプレス(ロールプレスや平板プレス)したり、規定厚みの枠内に設置してスラリーを押し伸ばしたりして塗布することができる。
 本発明の二次電池の製造方法により得られる二次電池が、通常の二次電池である場合、本発明の製造方法は、本発明のスラリーを乾燥させことを含んでもよい。
 本発明の非水電解液二次電池の作製方法についても、電極活物質層を、特定のスラリー層を用いて形成すること以外は、通常の方法を適宜に採用することができる。例えば、特開2016-201308号公報、特開2005-108835号公報、特開2012-185938号公報、特開2017-147222号公報等を適宜に参照することができる。
 本発明の非水電解液二次電池は、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどの電子機器に搭載することができる。また、民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などに搭載することができる。さらに、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
 以下に、実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。
[電極形成用スラリーの調製]
 以下の成分を用いて、電極形成用スラリーを調製した。
<電極活物質>
・LFP1:LiFePO、Gelon社製(平均粒径(球換算平均粒子径)0.9μm)
・LFP2:LiFePO、Gelon社製(平均粒径(球換算平均粒子径)1.2μm)
・LFP3:LiFePO、Gelon社製(平均粒径(球換算平均粒子径)1.7μm)
・LFP4:LiFePO、Gelon社製(平均粒径(球換算平均粒子径)2.5μm)
・Graphite1:人造黒鉛、UF-G5(商品名)、昭和電工社製(平均粒径(球換算平均粒子径)3μm)
・Graphite2:人造黒鉛、UF-G10(商品名)、昭和電工社製(平均粒径(球換算平均粒子径)5μm)
・Graphite3:人造黒鉛、UF-G30(商品名)、昭和電工社製(平均粒径(球換算平均粒子径)10μm)
<導電助剤>
・AB1:アセチレンブラック、Li100(商品名)、デンカ社製
・AB2:アセチレンブラック、Li435(商品名)、デンカ社製
・CB1:カーボンブラック、LITX300(商品名)、CABOT社製
・CB2:カーボンブラック、PBX09(商品名)、CABOT社製
・KB1:ケッチェンブラック、カーボンECP(商品名)、Lion社製
・KB1H:以下のように、かさ密度を制御したケッチェンブラック
 遊星ボールミル(フリッチュ社、P-7(商品名))を用いて、ジルコニアベッセル45mL中にジルコニアビーズ(直径3mm)を30g添加し、KB1の粉体(かさ密度38g/L)を10g添加し、300rpmで24時間混合して凝集を解いた。このようにして、かさ密度32g/Lの導電助剤粉体(KB1H)を得た。
・KB1HS:上記かさ密度を制御したケッチェンブラック(KB1H)をさらに以下のようにして表面処理したケッチェンブラック
 エタノール95質量部に対し、水5質量部、酢酸3質量部を加え、KB1H10質量部を更に加え10分間攪拌した。その後、メチルトリメトキシシラン(MTMS)2質量部を加え、5分間攪拌した。その後、静置しデカンテーションにより液体を取り除いた。エタノールで2回洗浄した後、110℃で24時間真空加熱した。
・KB2:ケッチェンブラック、ECP600JD(商品名)、Lion社製
<分散媒>
・NMP:N-メチルピロリドン
・DMC:ジメチルカーボネート
・EMC:エチルメチルカーボネート
1)非水電解液の調製
 エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを、EC:DMC:EMC=3:4:3の質量比で混合した混合溶媒に、リチウム塩としてLiPFを1Mになるように配合して、非水電解液(電解液1)を調製した。
2)正極スラリーの調製(第一の形態)
・比較例1~5、実施例1~11
 表1記載の電極活物質、導電助剤及び分散媒と、バインダーとしてポリビニレンジフルオリド(PVdF)とを混合して、正極スラリー(電極形成用スラリー)を得た。この正極スラリー中の各成分の含有量は、以下の通りとした。
 電極活物質及び導電助剤は、電極活物質と導電助剤の合計に占める電極活物質及び導電助剤の各含有量がそれぞれ表1記載の割合(質量%)となる量とした。
 スラリー中の分散媒の量は、スラリー中の電極活物質と導電助剤との合計100g当たりの量が表1記載の量となるようにした。
 バインダーは、電極活物質100質量部に対して6質量部とした。
 このようにして、比較例1~5及び実施例1~11の正極スラリーを得た。実施例1の正極スラリー中の電極活物質の含有量は、70.8質量%である。
 なお、比較例4及び実施例9~11では、複数種類の分散媒を混合することにより表面自由エネルギーを制御した分散媒を用いた。具体的には、N-メチルピロリドン(NMP)とジメチルカーボネート(DMC)とをNMP:DMC=3:2(質量比)で混合した分散媒を用いた。表1では「NMP+DMC」と記す。この分散媒を、後述する比較例8においても用いた。
 比較例5では、N-メチルピロリドン(NMP)と水(Water)とをNMP:Water=2:3(質量比)で混合した分散媒を用いた。表1では「NMP+Water」と記す。この分散媒を、後述する比較例6及び10においても用いた。
・実施例12
 分散剤として、BYK社製ET3004(商品名)(酸性基含有共重合体のアルキルアンモニウム塩)を、電極活物質及び導電助剤の合計100質量部に対して1質量部加えたこと及びN-メチルピロリドン(NMP)とジメチルカーボネート(DMC)とをNMP:DMC=2:3(質量比)で混合した分散媒を用いたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例12の正極スラリーを得た。上記分散媒を表1では「NMP+DMC2」と記す。
3)正極スラリーの調製(第二の形態)
・実施例20
 表1記載の電極活物質、導電助剤、非水電解液を、遠心プラネタリミキサー(シンキー社製:あわとり練太郎(商品名))にて1250rpmで90秒混合し、正極スラリーを得た。この正極スラリー中の各成分の含有量は、以下の通りとした。
 電極活物質及び導電助剤は、電極活物質と導電助剤の合計に占める電極活物質及び導電助剤の各含有量がそれぞれ表1記載の割合(質量%)となる量とした。
 スラリー中の非水電解液の量は、スラリー中の電極活物質と導電助剤との合計100g当たりの量が表1記載の量となるようにした。
 このようにして、実施例20の正極スラリーを得た。なお、非水電解液として上記電解液1を用いたことを、便宜上、表中の「分散媒 種類」のカラムに示したが、電解液1における分散媒は、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒である。
4)負極スラリーの調製(第一の形態)
・比較例6~10、実施例13
 表1記載の電極活物質、導電助剤及び分散媒と、バインダーとしてスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)とを混合して、負極スラリー(電極形成用スラリー)を得た。この負極スラリー中の各成分の含有量は、以下の通りとした。
 電極活物質及び導電助剤は、電極活物質と導電助剤の合計に占める電極活物質及び導電助剤の各含有量がそれぞれ表1記載の割合(質量%)となる量とした。
 スラリー中の分散媒の量は、スラリー中の電極活物質と導電助剤との合計100g当たりの量が表1記載の量となるようにした。
 バインダーは、電極活物質100質量部に対して1質量部とし、増粘剤は、電極活物質100質量部に対して1質量部とした。
 このようにして、比較例6~10及び実施例13の負極スラリーを得た。
5)負極スラリーの調製(第二の形態)
・実施例21
 表1記載の電極活物質、導電助剤、非水電解液を、遠心プラネタリミキサー(シンキー社製:あわとり練太郎(商品名))にて1250rpmで90秒混合し、負極スラリーを得た。この負極スラリー中の各成分の含有量は、以下の通りとした。
 電極活物質及び導電助剤は、電極活物質と導電助剤の合計に占める電極活物質及び導電助剤の含有量がそれぞれ表1記載の割合(質量%)となる量とした。
 スラリー中の非水電解液の量は、スラリー中の電極活物質と導電助剤との合計100g当たりの量が表1記載の量となるようにした。
 このようにして、実施例21の負極スラリーを得た。
 上記で得られた各電極スラリーの式(1)~式(4)の充足性を確認するために、各スラリーの調製において用いた成分について、電極活物質100g当たりの分散媒の吸液量、導電助剤100g当たりの分散媒の吸液量、導電助剤のBET比表面積、及び分散媒と導電助剤の表面自由エネルギーをそれぞれ、上述のようにして求めた。さらに、導電助剤のかさ密度を上述のようにして確認した。
 表1に、電極スラリーを構成する電極活物質、導電助剤、及び分散媒の種類、電極活物質及び導電助剤の100g当たりの分散媒の吸液量(表1では「活物質吸液量」及び「導電助剤吸液量」)、電極活物質と導電助剤の合計に占める電極活物質及び導電助剤の割合(表1では、「活物質割合」及び「導電助剤割合」)、電極活物質と導電助剤の合計100g当たりの分散媒の量(表1では「分散媒量」)、並びに電極スラリー中の固形分濃度及び活物質濃度をまとめて示す。
 表2に、式(1)~(4)の充足性を示す。表2の「表面E差」の欄には分散媒の表面自由エネルギーと上記導電助剤の表面自由エネルギーとの差の絶対値を、「導電助剤の表面E」の欄には導電助剤の表面自由エネルギーを、「分散媒の表面E」には分散媒の表面自由エネルギーをそれぞれ記載する。表2の「分散剤」の欄には、分散剤の有無についても併せて記載する。「無し」は分散剤が用いられていないことを意味する。分散剤を用いた場合には、使用した分散剤の種類を記載した。便宜上、分散剤を添加せずに導電助剤に表面処理をした場合について、「分散剤」欄に、使用した表面処理剤の種類を記載した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 得られた電極スラリーの粘度及び製造適性を評価した。製造適性は、電極スラリー作製後の分散安定性、電極活物質層の形成に必要な乾燥時間、及び塗布適性の観点から評価した。具体的な評価方法を以下に示す。
[スラリー粘度測定方法]
 E型粘度計(TV-35、東機産業社製)、標準コーンロータ(1°34’×R24)、を用いて行った。サンプルカップを25℃に調整しておき、上記で得られた電極スラリー1.1mLを投入し、サンプルカップを本体にセットして、5分間温度が一定になるまで維持した。その後、回転数50rpmで測定した粘度を粘度値とした。得られた粘度値を下記評価基準に当てはめ評価した。
 
-評価基準-
A:100mPa・s未満
B:100mPa・s以上1000mPa・s未満
C:1000mPa・s以上5000mPa・s未満
D:5000mPa・s以上10000mPa・s未満
E:10000mPa・s以上100000mPa・s未満
F:100000mPa・s以上
 
[分散安定性]
 スラリー作製後の粒子の沈殿状態を指標として、分散安定性を評価した。
 上記で得られた各電極スラリー90mLを、バイアル瓶(100ml、直径30mm)に投入し、72時間静置して、沈降物の鉛直方向の上方に上澄み領域を生じさせた。
 72時間後に、上記の上澄み領域の高さ(H)を、定規を用いて測定した。また、スラリー全体の高さ(沈降物と上澄みを合わせた高さ)(H)を測定した。得られた上澄み領域の高さ(H)の、スラリー全体の高さ(H)に占める割合(H/H×100)を、分散安定性の指標とした。得られた値を下記評価基準に当てはめ評価した。
 
-評価基準-
A:2%未満
B:2%以上4%未満
C:4%以上10%未満
D:10%以上15%未満
E:15%以上30%未満
F:30%以上
 
[電極活物質層の形成にかかる乾燥時間]
 上記で得られた各電極スラリーをアルミ箔(縦:300mm、横:200mm)上に乾燥後の厚みが約80μmとなるように塗工した。得られた塗工物を、恒温槽にて240℃で乾燥して、電極層を得た。乾燥開始時から、塗工物の重量を0.5分毎に測定し、乾燥開始から塗工物の重量が直前の測定時の重量から変化しなくなるまでの時間を、乾燥時間とした。
 なお、実施例20の正極スラリー及び実施例21の負極スラリーはいずれも、準固体二次電池用の電極スラリーであり乾燥不要であるため、評価対象から外した。
 得られた乾燥時間を下記評価基準に当てはめ評価した。
 
-評価基準-
A:1分未満
B:1分以上10分未満
C:10分以上20分未満
D:20分以上30分未満
E:30分以上60分未満
F:60分以上
 
[電極表面の平滑性]
 電極表面の平滑性を指標として、塗布適性を評価した。
 上記乾燥時間測定において得られたアルミ箔付きの電極層(乾燥後のもの)の中央部分5か所を直径10mmで打ち抜き、得られた打ち抜き片それぞれの中心の膜厚(μm)を測定し、平均値を算出した(T)。また、塗工物の端部から1cmの領域5か所を直径10mmで打ち抜き、得られた打ち抜き片それぞれの中心の膜厚(μm)を測定し、平均値を算出した(T)。中央部に対する側面部の膜厚平均のずれ((|T-T|)/T×100)を算出し、得られた値を下記評価基準に当てはめ評価した。
 実施例20の正極スラリー及び実施例21の負極スラリーについては、これらのスラリーを集電体(上記[電極活物質層の形成にかかる乾燥時間]用の電極層作製に用いたアルミ箔と同じアルミ箔)に塗工してアルミ箔付きの電極層(厚さ80μm)を作製した。このようにして作製した電極層を用いたこと以外は上記と同様にして、T及びTを測定し、膜厚平均のズレを評価した。
 
-評価基準-
A:2%未満
B:2%以上4%未満
C:4%以上6%未満
D:6%以上8%未満
E:8%以上10%未満
F:10%以上
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 本発明のスラリーの第一の形態についてみると、スラリー中の電極活物質、導電助剤及び分散剤が、式(1)~(4)の全てを満たさない比較例1の正極スラリー、式(1)~(4)の何れかを満たさない比較例2~5の正極スラリーは、いずれも、分散安定性が低く、これらを用いて得られた電極層は、乾燥時間、及び平滑性の少なくともいずれかに劣り、製造適性が十分とは言えなかった。また、比較例3~5の正極スラリーは、いずれも、スラリー粘度が高く、この点でも塗布性に劣っていた。
 これに対し、式(1)~(4)の全てを満たす実施例1~12の正極スラリーはいずれも、スラリー粘度が低粘度でありながらも、72時間静置しても分散状態を良好に維持でき、これらの正極スラリーを用いて得られた電極層は、塗布後60分未満での乾燥が可能であり、中央と端部での膜厚のばらつきも抑えられていた。
 同様の傾向を、比較例6~10、及び実施例13の負極スラリーとの比較から読み取ることができる。
 さらに、実施例20及び21の第二の形態の正極スラリー及び負極スラリーの場合についても、同様である。
 本発明の電極スラリーは、BET比表面積170m/g以上の比較的比表面積の大きな導電助剤を適用しながらも、均一性の高い電極層を効率よく製造でき製造適性に優れることがわかる。
 得られた各電極スラリーを用いて、2種の二次電池(一般的な非水電解液二次電池(単に、非水電解液二次電池という)及び準固体二次電池)を作製し、得られた電池のエネルギー密度と出力特性を評価した。二次電池の作製方法と、具体的な評価方法を以下に示す。
[非水電解液二次電池の作製]
1)正極の調製
 12μm厚の正極集電体(アルミニウム箔)の片面に、上記比較例1~5、実施例1~12の各正極スラリーを厚み120μmで塗工し、240℃で分散媒が完全に揮発するまで乾燥した。その後、ロールプレス機を用いて圧力2.7tでプレス工程を施し、正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極(C-1~C-17)を得た。この正極の正極活物質層の厚みは約80μmであった。
2)負極の調製
 12μm厚の負極集電体(銅箔)の片面に、上記比較例6、実施例13の各負極スラリーを厚み120μmで塗工し、240℃で分散媒が完全に揮発するまで乾燥した。その後、ロールプレス機を用いて圧力2tでプレス工程を施し、負極集電体と負極活物質層とからなるシート状の負極(A-1及びA-6)を得た。この負極の負極活物質層の厚みは約80μmであった。
3)電池の調製
 得られた正極と負極とをW-SCOPE社製セパレータ(厚み20μm)を介して積層し、正極集電体-正極活物質層-セパレータ-負極活物質層-負極集電体からなる積層体を形成し、電極積層体を得た。電極積層体を得る際の正極と負極の組合せは表4に示した通りの組合せとした。正極集電体の端部にアルミタブを、負極集電体の端部にニッケルタブをそれぞれ超音波溶接にてタブ付けした。この積層体をラミネート容器内に収容することによって電池組立体を作製した。注液口を開放した状態で非水電解液1を注入後、注液口を封止してケースを密閉することによって、評価試験用のリチウムイオン二次電池(通常の非水電解液二次電池)(S-1~S-18)を構築した。
[準固体二次電池の作製]
 準固体二次電池は特表2016-500465(実施例10、11)を参考に作製した。詳細を以下に示す。
 実施例20の正極スラリーを厚み500μm、面積80cmになるように正極集電体であるアルミニウム箔上に塗布し、正極集電体と正極活物質層とからなる正極(C-20)を形成した。
 同様に実施例21の負極スラリーを厚み500μm、面積85cmになるように負極集電体である銅箔上に塗布し、負極集電体と負極活物質層とからなる負極(A-20)を形成した。
 W-SCOPE社製セパレータ(厚み20μm)を面積90cmになるように切断した。
 負極上にセパレータを負極がセパレータの大きさの内側に入るように積層し、その上に正極を負極の大きさの内側になるように積層することで、負極集電体-負極活物質層(スラリー)-セパレータ-正極活物質層(スラリー)-正極集電体の積層体を作製した。積層体の作製は、非水電解液の揮発を避けるため、1分程度で完結した。
 この積層体の、アルミニウム箔の正極スラリー未塗工部、及び銅箔の負極スラリー未塗工部にそれぞれタブを超音波溶接し、この積層体をアルミラミネートで包み、真空シーラーで密閉することで、評価試験用のリチウムイオン二次電池(準固体二次電池)(S-19)を作製した。
[体積エネルギー密度評価方法]
 上記各二次電池の調製に用いた正極を直径10mmに打ち抜き、得られた打ち抜き片から電極集電体を取り除いた。上記正極活物質層の厚みを測定し、打ち抜き片の正極活物質層の体積を求めた。
 別途、後述する[出力特性]試験の条件1で充放電して基準放電容量(Ah)を測定するとともに、放電時の平均電圧(V)を測定し、基準放電容量(Ah)×平均電圧(V)の積により電力量(Wh)を求めた。
 このようにして得られた電力量(Wh)を、上記で求めた正極活物質層の体積(L)で除することで、正極活物質層の体積エネルギー密度を算出した。得られた値を下記評価基準に当てはめ評価した。
 
-評価基準-
A:400Wh/L以上
B:380Wh/L以上400Wh/L未満
C:350Wh/L以上380Wh/L未満
D:325Wh/L以上350Wh/L未満
E:300Wh/L以上325Wh/L未満
F:300Wh/L未満
 
[出力特性]
 上記で作製した二次電池に対し、下記条件で出力特性試験を実施した。
 具体的には、上記で得られた二次電池を、以下の条件1の条件で充放電して基準放電容量を測定し、その後、条件2の条件で充放電して出力評価放電容量を測定した。得られた基準放電容量と出力評価放電容量とから、以下の式により、放電容量維持率を算出し、下記評価基準に当てはめ評価した。
 
・条件1:基準放電容量
定電流(CC)-定電圧(CV)充電: 電流値25mA、上限電圧3.9V、終止電流値2.5mA
定電流(CC)放電: 電流値25mA、終止電圧値2.0V
 
・条件2:出力評価放電容量
CC-CV充電: 電流値250mA、上限電圧3.9V、終止電流値25mA
CC放電: 電流値1000mA、終止電圧値2.0V
 
放電容量維持率(%)=[(出力評価放電容量)/(基準放電容量)]×100
 
-評価基準-
A:80%以上
B:70%以上80%未満
C:65%以上70%未満
D:60%以上65%未満
E:55%以上60%未満
F:55%未満
 
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 式(1)~(4)の少なくとも1つを満たさない比較例1~5の正極スラリーを用いて製造された正極(C-1~C-5)を有する非水電解液二次電池(S-1~S-5)は、出力特性が55%未満であり、体積エネルギー密度も、325Wh/L未満であった。
 これに対し、式(1)~(4)の全てを満たす実施例1~12の正極スラリーを用いて製造された正極(C-6~C-17)を有する非水電解液二次電池(S-6~S-18)は、出力特性が55%以上であり、体積エネルギー密度も325Wh/L以上であった。本発明の電極スラリーを用いれば、優れた電池性能を示す二次電池を得ることができることがわかる。
 さらに、負極に、本発明の負極スラリーを用いて作製された負極(A-6)を有する非水電解液二次電池(S-18)は、さらに電池性能に優れることがわかる。
 また、本発明の第二の形態の電極スラリーを用いて製造された正極(C-20)及び負極(A-20)を有する非水電解液二次電池(S-19)についても、さらに電池性能に優れることがわかる。
 本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
 本願は、2022年12月27日に日本国で特許出願された特願2022-210786に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
10 非水電解液二次電池
 1 負極集電体
 2 負極活物質層
 3 セパレータ
 4 正極活物質層
 5 正極集電体
 6 作動部位(電球)

Claims (16)

  1.  電極活物質と導電助剤と分散媒とを含み、下記式(1)~(4)を満たす、非水電解液二次電池の電極形成用スラリー。
       式(1)0<y-x≦10
       式(2)0≦x≦30
       式(3)SBET≧170
       式(4)ΔE≦30
     xは、前記電極形成用スラリーにおいて、前記電極活物質と前記導電助剤の合計100g当たりの前記分散媒の吸液量(mL)であり、下記式(5)で算出される。
     yは、前記電極形成用スラリーにおいて、前記電極活物質と前記導電助剤の合計100g当たりの前記分散媒の量(mL)である。
     SBETは、前記導電助剤のBET比表面積(m/g)である。
     ΔEは、前記分散媒の表面自由エネルギーと前記導電助剤の表面自由エネルギーとの差の絶対値(mN/m)である。
       式(5) x=[Sa×da/100]+[Sc×dc/100]
     Saは、前記電極活物質100g当たりの前記分散媒の吸液量(mL)である。
     daは、前記電極形成用スラリー中の前記電極活物質と前記導電助剤の合計に占める前記電極活物質の割合(質量%)である。
     Scは、前記導電助剤100g当たりの前記分散媒の吸液量(mL)である。
     dcは、前記電極形成用スラリー中の前記電極活物質と前記導電助剤の合計に占める前記導電助剤の割合(質量%)である。
  2.  電解質を含む、請求項1に記載の電極形成用スラリー。
  3.  前記式(2)が下記式(2a)を満たす、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
      式(2a)0≦x≦21
  4.  前記式(4)が下記式(4a)を満たす、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
      式(4a)ΔE≦25
  5.  前記分散媒の表面自由エネルギーが20~40mN/mである、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  6.  前記Saが10~21mLである、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  7.  前記Scが200~1700mLである、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  8.  前記導電助剤のかさ密度が35g/L以下である、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  9.  前記導電助剤が表面処理されている、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  10.  分散剤を含有する、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  11.  前記電極活物質の含有量が45質量%以上である、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  12.  固形分の含有量が60質量%を越える、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  13.  前記電極活物質が正極活物質である、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  14.  前記電極活物質の割合daが90.00~99.99質量%であり、前記導電助剤の割合dcが0.01~10.00質量%である、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリー。
  15.  正極とセパレータと負極とをこの順に有し、正極活物質層及び/又は負極活物質層として請求項2に記載の電極形成用スラリーを用いた非水電解液二次電池。
  16.  電極集電体上に、請求項1又は2に記載の電極形成用スラリーを塗布して電極活物質層を形成することを含む、非水電解液二次電池の製造方法。
PCT/JP2023/046714 2022-12-27 2023-12-26 非水電解液二次電池の電極形成用スラリー、非水電解液二次電池、及び非水電解液二次電池の製造方法 WO2024143388A1 (ja)

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