WO2024142417A1 - 有効成分の滞留剤 - Google Patents

有効成分の滞留剤

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大夢 田口
宗明 朝武
守紘 青柳
敬 榎田
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ハウスウェルネスフーズ株式会社
ハウス食品株式会社
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Abstract

本発明は、有効成分の効果を増強、及び/又は長く維持することを可能とする新たな手段を提供することを目的とするものであり、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤を提供する。

Description

有効成分の滞留剤
 本発明は、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤に関するものである。
 今日、油脂、水、サイクロデキストリン、及び水溶性ゲル化剤を含んでなる乳化組成物が、医薬、化粧品、飲食品等の様々な分野で広く利用されている。
 特許文献1には、水、油性成分、αサイクロデキストリン、及びゲル形成成分として寒天、低強度寒天、ガラクトマンナン又はグルコマンナンとキサンタンガムの併用、カラギーナン、ファーセレラン、ジェランガム、ネーティブ型ジェランガムのいずれか1以上を含有する乳化組成物が開示され、これを使用した医薬品、化粧品、化成品が開示されている。
 特許文献2には、油脂、蛋白加水分解物、水、サイクロデキストリン等を含有することを特徴とする乳化組成物が開示され、また、安定剤としてキサンタンガム、グアーガム、アラビアガムCMC、カラギーナン、ローカストビーンガム等のガム類を用いてもよいことが開示されている。
 特許文献3には、ペクチン、トラガントガム、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマーといった水溶性高分子化合物を溶解した水性原料と化粧料用油性原料を混和し、サイクロデキストリンを加えて乳化させてなる乳化化粧料が開示されている。
 特許文献4には、水、油脂及びサイクロデキストリン、ならびに、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガムからなる群から選択される少なくとも一つの水溶性ゲル化剤を含む、皮膚用乳化組成物が開示されている。
 非特許文献1には、大豆油とサイクロデキストリン水溶液の1:1容積比試料を乳化させてなる水中油滴型のエマルションに、乳化安定剤としてキサンタンガムとトラガントガムをそれぞれ添加したところ乳化安定性が増したことが記載されている。
特開2016-204311号公報 特開平10-262560号公報 特公昭61-038166号公報 WO2022/064997号公報
Nippon Shokuhin Kogyo Gakkaishi,Vol.38,No.1,16-20(1991)
 医薬、化粧品、飲食品等の分野においては従前より、対象の負担軽減や消費者の健康志向の高まり等の理由から、有効成分である薬剤や味質の成分等の含有量を低減することが切望されており、そのため有効成分の効果を増強、及び/又は長く維持することを可能とする手段が求められていた。そこで、本発明は、有効成分の効果を増強、及び/又は長く維持することを可能とする新たな手段を提供することを目的とする。
 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、疎水性物質、水、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を配合してなる水中油型エマルジョンが、動物の組織に付着して、そこで有効成分を保持し、及び/又は有効成分を吸収・吸着して保持することによって、滞留させることができ、当該組織において有効成分による効果を増強、及び/又は長く維持できることを見出した。
 本発明は、これらの新規知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤。
[2] 疎水性物質が、油脂、疎水性ワックス、及び疎水性樹脂からなる群より選択される一種以上である、[1]の滞留剤。
[3] 増粘多糖類が、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム、アラビアガム、ペクチン、リン酸架橋でんぷん、ヒドロキシプロピルでんぷん、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でんぷん、トラガントガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び、ヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択される一種以上である、[1]又は[2]の滞留剤。
[4] 飲食品に添加して用いられる、[1]~[3]のいずれかの滞留剤。
[5] 医薬品に添加して用いられる、[1]~[3]のいずれかの滞留剤。
[6] 化粧品に添加して用いられる、[1]~[3]のいずれかの滞留剤。
[7] 水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を混合して水中油型エマルジョンを形成する工程を含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤の製造方法。
[8] 水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤を、その疎水性物質の量にして0.5質量%~55質量%含んでなる、飲食品。
[9] 水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤を、その疎水性物質の量にして0.5質量%~55質量%含んでなる、医薬品。
[10] 水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤を、その疎水性物質の量にして0.5質量%~55質量%含んでなる、化粧品。
[11] 有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤の製造方法における、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンの使用。
 本明細書は本願の優先権の基礎である2022年12月28日に出願された日本国特許出願2022-211335号の明細書等に記載される内容を包含する。
 本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとりいれるものとする。
 本発明によれば、動物の組織上に、有効成分を滞留させることができ、有効成分による効果を増強、及び/又は長く維持することを可能とする、有効成分の滞留剤を提供することができる。
図1は、本発明に係る水中油型エマルジョンの水溶液(1%O/W(+))ならびに水中油型エマルジョンを構成する成分の混合物(水中油型エマルジョンを形成しない)の水溶液(1%O/W(-))に各味質の成分を配合して調製した各試料を摂取した後、1分間における味の強度の変化を、官能評価ソフトウェアFIZZ(Biosystemes社)を用いたTime Intensity(TI)法により評価した結果を示すグラフ図である(甘味:N=4、塩味・苦味:N=5、酸味・旨味:N=3。結果は平均値を示す)。 図2は、本発明に係る水中油型エマルジョンの水溶液(10%O/W(+))を口腔内に付着させる前(付着前)及び付着させた後(付着後)における、食塩水溶液を摂取した後、1分間における味の強度の変化を、官能評価ソフトウェアFIZZ(Biosystemes社)を用いたTime Intensity(TI)法により評価した結果を示すグラフ図である(N=4)。
1.水中油型エマルジョン
 本発明における水中油型エマルジョンは、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含むものである。
 本発明において「疎水性物質」とは、水に不溶性であり、水と下記に詳述する、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類と共に、水中油型エマルジョンを形成することが可能な物質であればよく、特に限定されるものではないが、好ましくは、油脂、疎水性ワックス、疎水性樹脂等が挙げられる。疎水性物質はいずれかの物質を単独で用いてもよいし、あるいは異なる種類の疎水性物質を組み合わせて用いてもよい。例えば、疎水性物質は、油脂、疎水性ワックス、及び疎水性樹脂からなる群より選択される一種以上の物質を用いることができ、本発明の滞留剤の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。
 本発明において「水中油型エマルジョン」とは、水の中に疎水性物質が分散してなる乳化組成物を意味し、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類はこの乳化状態の形成や安定性に寄与する。
 本発明において「油脂」とは、水中油型エマルジョンの形成において一般的に使用される油脂を利用することができ、極性及び非極性のいずれも使用することができる。このような油脂としては、例えば、植物由来の油脂(例えば、キャノーラ油、菜種白絞油、大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、米油、米糠油、ツバキ油、ベニバナ油、オリーブ油、アマニ油、シソ油、エゴマ油、ヒマワリ油、パーム油、茶油、ヤシ油、アボガド油、ククイナッツ油、グレープシード油、ココアバター、ココナッツ油、小麦胚芽油、アーモンド油、月見草油、ひまし油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ローズヒップ油、ブドウ油、カカオ油、ホホバ油、パーム核油、等)、イソステアリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、2-オクタデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、フィトステロール、コレステロール、ステアリン酸、イソステアリン酸、カプリン酸、ラノリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、リノール酸、リノレン酸、モノステアリン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノベヘニン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノラノリン酸グリセリル、モノリノ-ル酸グリセリル、モノリノレン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリン、イソプロピルミリステート、グリセロールトリ-2-ヘプチルウンデカノエート、グリセロールトリ-2-エチルヘキサノエート、2-ヘプチルウンデシルパルミテート、ジ-2-ヘプチルウンデシルアジペート、セチルイソオクタノエート、トリメチロールプロパン-2-トリメチロールヘプチルウンデカノエート、プロパン-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトール-2-ヘプチルウンデカノエート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、コレステロールイソステアレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート等の合成エステル油、牛脂、豚油、ラノリン、スクワレン、スクワラン等の動物由来の油脂、シリコーン油等が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明において利用される油脂としては、少なくとも常温において液体の状態のものが好ましく、ならびに、安全性の高い動物由来又は植物由来の油脂が好ましく、食経験があり安全性の高い食用植物油が特に好ましい。油脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる油脂を組み合わせて用いてもよく、本発明の滞留剤の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。なお、本明細書において「常温」とは、5~35℃、好ましくは15~30℃を意味する。
 本発明において「疎水性ワックス」とは、動植物や石油若しくは鉱物由来の天然疎水性ワックス、合成の疎水性ワックスが挙げられ、80℃以下の融点を有するものを使用することができ、少なくとも常温において液体の状態のものが好ましい。このような疎水性ワックスとしては、例えば、ミツロウ、鯨ロウ、羊毛ロウ、モクロウ、ロジン(松脂)、キャンデリラロウ、カルナバロウ、カカオ脂、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ワセリンワックス、オゾケナイトワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、アルコール変性ワックス、マレイン酸変性酸化ポリエチレンワックス、アミドワックス、等が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明において利用される疎水性ワックスとしては、安全性の高い動物由来又は植物由来の疎水性ワックスが特に好ましい。疎水性ワックスはいずれか単独で用いてもよいし、異なる疎水性ワックスを組み合わせて用いてもよく、本発明の滞留剤の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。
 本発明において「疎水性樹脂」とは、親水性基を有さないか又はその含有量が小さな樹脂であり、水等の極性溶媒に溶解しない樹脂を指し、本発明においては少なくとも常温において液体の状態のものを好適に用いることができる。このような疎水性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂(親水化されていないもの)、ポリウレタン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ならびにこれらのポリマーの共重合体等が挙げられるが、これらに限定はされない。本発明において利用される疎水性樹脂としては、生体適合性や生体親和性有することが確認された安全性の高いものが特に好ましい。疎水性樹脂はいずれか単独で用いてもよいし、異なる疎水性樹脂を組み合わせて用いてもよく、本発明の滞留剤の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。
 本発明において「疎水性物質」とは、好ましくは油脂及び疎水性ワックスであり、特に好ましくは油脂である。
 本発明の水中油型エマルジョンには、疎水性物質を任意の量で含むことができ、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下とすることができる。本発明の水中油型エマルジョンにおける疎水性物質の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の水中油型エマルジョンには疎水性物質を、1質量%~50質量%、1質量%~30質量%、又は1質量%~20質量%、又は1質量%~10質量%、好ましくは、5質量%~10質量%、又は7質量%~10質量%の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。疎水性物質の量が1質量%よりも少ないと乳化が不十分となる場合があり、一方、疎水性物質の量が50質量%よりも多いとべとつきやぬるつき等が強く感じられる場合があり、いずれにおいても目的の用途における利用形態において、有効成分を滞留させることができない場合や、所望の使用感を得ることができない場合がある。
 なお、本明細書中、本発明の水中油型エマルジョンに含まれる各成分の量の記載は、当該水中油型エマルジョンの全質量を100質量%とする、質量%の量にて示す。
 本発明の水中油型エマルジョンにおいて、水は疎水性物質を乳化してサイクロデキストリン及び増粘多糖類と共に水中油型エマルジョン形成することが可能な任意の量で含むことができる。例えば、本発明の水中油型エマルジョンは水を、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、又は70質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、90質量%以下、又は85質量%以下とすることができる。本発明の水中油型エマルジョンにおける水の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の水中油型エマルジョンには水を、15質量%~90質量%、45質量%~90質量%、又は70質量%~85質量%の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。本発明の水中油型エマルジョンに含まれる水の量は、体積比にして疎水性物質よりも多く含まれることが好ましく、例えば疎水性物質と水の含有量は体積比にして(疎水性物質:水)1:1を超える量、例えば、1:2以上、1:3以上、1:4以上、1:5以上、1:6以上、1:10以上、1:15以上、又は1:20以上、とすることができ、水の量の上限は特に限定されないが、1:90以下、1:80以下、1:70以下、1:60以下、又は1:50以下とすることができる。本発明の水中油型エマルジョンに含まれる水と疎水性物質の量を上記範囲に調節することによって、べとつきやぬるつき等を抑えることができる。
 「サイクロデキストリン」は、ブドウ糖を構成単位とする環状無還元マルトオリゴ糖を意味し、ブドウ糖の数が6つのα-サイクロデキストリン、7つのβ-サイクロデキストリン、8つのγ-サイクロデキストリンが挙げられる。本発明においては、α-、β-、γ-サイクロデキストリン、及びそれらの誘導体、ならびにそれらの任意の組み合わせを用いることができる。サイクロデキストリンの誘導体としては、例えば、エチルサイクイロデキストリン、メチルサイクロデキストリン、ヒドロキシエチルサイクロデキストリン、ヒドロキシプロピルサイクロデキストリン、メチルアミノサイクロデキストリン、アミノサイクロデキストリン、カルボキシエチルサイクロデキストリン、カルボキシメチルサイクロデキストリン、スルフォキシエチルサイクロデキストリン、スルフォキシルサイクロデキストリン、アセチルサイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、サイクロデキストリン脂肪酸エステル、グルコシルサイクロデキストリン、マルトシルサイクロデキストリン等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくはα-サイクロデキストリンを使用する。α-サイクロデキストリンは水への溶解性が高く、ざらつきの少ない水中油型エマルジョンを得ることができる。
 本発明の水中油型エマルジョンにおいてサイクロデキストリンは、増粘多糖類と共に水中油型エマルジョンの乳化や安定性に寄与し、かつ目的の用途における利用形態において所望の使用感を得ることが可能な量で含めることができる。例えば、本発明の水中油型エマルジョンにはサイクロデキストリンを、0.5質量%以上、1質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上、又は5質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、もしくは6質量%以下とすることができる。本発明の水中油型エマルジョンにおけるサイクロデキストリンの量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の水中油型エマルジョンにはサイクロデキストリンを、0.5質量%~15質量%、例えば1質量%~15質量%、2.5質量%~10質量%、2.5質量%~9質量%、3質量%~9質量%、4質量%~8質量%、4.5質量%~9質量%又は5質量%~7質量%、好ましくは2.5質量%~9質量%、又は4.5質量%~9質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。サイクロデキストリンの量が0.5質量%よりも少ないと当該水中油型エマルジョンの乳化や安定性が不十分となる場合があり、一方、15質量%よりも多い場合には当該水中油型エマルジョンの粘性が高くなりすぎる場合や、きしみ感が強くなる場合があり、いずれにおいても目的の用途における利用形態において、有効成分を滞留させることができない場合や、所望の使用感を得ることができない場合がある。
 本発明において「増粘多糖類」とは、一般的に、水に溶解し、粘性を付与する(増粘安定剤、水溶性糊料等とも呼ばれる場合がある)多糖類を意味する。本発明において利用可能な増粘多糖類としては、飲食品や医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の製造において通常用いられている成分を利用することが可能であり、特に限定はされない。増粘多糖類はいずれか単独で用いてもよいし、異なる増粘多糖類を組み合わせて用いてもよく、本発明の滞留剤の利用態様に応じて、適当なものを選択して用いることができる。本発明において「増粘多糖類」とは、好ましくは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム、アラビアガム、ペクチン、リン酸架橋でんぷん、ヒドロキシプロピルでんぷん、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でんぷん、トラガントガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができ、これらのいずれかを単独で用いてもよいし、異なる種類のものを二種以上組み合わせて用いてもよい。
 本発明において「増粘多糖類」は、より好ましくは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、及び、ジェランガムであり、さらに好ましくは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グルコマンナン、タマリンドガム、及びキサンタンガムである。これらの増粘多糖類は特に、本発明の水中油型エマルジョンにとりわけ高い乳化安定性を付与することができる。
 本発明の水中油型エマルジョンにおいて増粘多糖類は、サイクロデキストリンと共に水中油型エマルジョンの乳化や安定性に寄与し、かつ目的の用途における利用形態において所望の使用感を得ることが可能な量で含めることができる。例えば、本発明の水中油型エマルジョンには増粘多糖類を、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上の量で含み、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、1質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、又は0.5質量%以下とすることができる。本発明の水中油型エマルジョンにおける増粘多糖類の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、本発明の水中油型エマルジョンには、増粘多糖類を、0.05質量%~1質量%、0.1質量%~1質量%、0.2質量%~0.8質量%、又は0.2質量%~0.5質量%の範囲より適宜選択される量で含めることができる。増粘多糖類の量が0.05質量%よりも少ないと当該水中油型エマルジョンの乳化や安定性が不十分となる場合があり、一方、1質量%よりも多い場合には当該水中油型エマルジョンの粘性が高くなりすぎる場合があり、いずれにおいても目的の用途における利用形態において、有効成分を滞留させることができない場合や、所望の使用感を得ることができない場合がある。
 本発明の水中油型エマルジョンにおいては、上記サイクロデキストリンと上記増粘多糖類の併用により水中油型エマルジョンの乳化や安定性を付与する。上記サイクロデキストリンと上記増粘多糖類の併用によりもたらされる水中油型エマルジョンの乳化や安定性は、一般的なゲル化剤が水に溶解され冷却することにより形成される3次元マトリックスゲルに依拠するものではなく(好ましくは、3次元マトリックスゲルを含むものではなく)、下記実施例により詳述するように、上記サイクロデキストリンと上記増粘多糖類との間で生じる水素結合による相互作用の存在によるものであると考えられる。また、本発明の水中油型エマルジョンは、上記サイクロデキストリンと上記増粘多糖類の併用により、乳化や安定性を有するものであることから、従来乳化組成物の製造において一般的に利用されている乳化剤を実質的に含まないものとしてもよく、好ましくは当該乳化剤を実質的に含まない。本発明において「乳化剤を実質的に含まない」とは、本発明の水中油型エマルジョンにおいて、乳化剤が乳化作用を発揮する態様で含まれないことを意味し、乳化剤が一切含まれないことを意図するものではない。本発明は、乳化剤を実質的に含まないことにより、例えば、本発明の水中油型エマルジョンを適用する場合に、刺激が少ない、アレルゲン性が低い等の安全性の高い有利な水中油型エマルジョンを得ることができる。「従来乳化組成物の製造において一般的に利用されている乳化剤」としては、例えば、タンパク質、ペプチドもしくはそれらの加水分解物、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられるが、これらに限定はされない。
 本発明の水中油型エマルジョンの形態は特に限定されず、上記水分含量を有する形態の他、水分含量を減少させて調製された、半固体/半液体(ゲル、ゾル等)や乾燥体(例えば、粉体、フレーク等)の形態で提供とすることができる。このような半固体/半液体(ゲル、ゾル等)や乾燥体(例えば、粉体、フレーク等)の形態は、上記水分含量を有する形態の水中油型エマルジョンを得たのち、それを従来公知の乾燥手段に付して、当該水中油型エマルジョンの水分含量を減少させることにより得ることができる。このような乾燥手段としては、例えば、凍結乾燥、加熱乾燥、風乾、噴霧乾燥、ドラム乾燥、熱風乾燥、真空乾燥等が挙げられるが、これらに限定はされない。乾燥手段に付された後の当該水中油型エマルジョンの水分含量は、目的とする形態に応じて適宜選択することが可能である。乾燥体の形態であれば例えば、15質量%未満、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下とすることができる。乾燥手段に付された後の当該水中油型エマルジョンの水分含量の下限は特に限定されないが、0質量%以上、0質量%超、0.1質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、又は0.8質量%以上とすることができる。当該乾燥体の形態の水分含量の範囲は前記上限及び下限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、当該水中油型エマルジョンの水分含量は、0質量%~15質量%未満、0質量%超15質量%未満、0.1質量%~15質量%未満、0.1質量%~10質量%、0.5質量%~5質量%、0.5質量%~1質量%、0.6質量%~1質量%、0.7質量%~1質量%、又は0.8質量%~1質量%とすることができる。乾燥手段に付された後の本発明の水中油型エマルジョンは相転移を生じて油中水型エマルジョンを生じるものではなく、そして、とりわけ、乾燥体の形態は、高温(例えば、100℃~200℃程度)条件、及び/又は多湿(例えば、~95%湿度程度)条件に付された後においても、変色や溶解を生じることのない、高い耐熱性及び耐湿性を有するものである。
 本発明の水中油型エマルジョンには、上記成分に加えて、必要に応じてさらに、飲食品や医薬品(医薬部外品を含む)、化粧品等の目的の用途における利用形態の製造において通常用いられている成分(以下、「その他の成分」と記載する)を、本発明の効果を損なわない範囲で、所望の利用形態に応じた量にて適宜配合することができる。このようなその他の成分としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、懸濁化剤、増粘剤、保存剤、抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、染料、色素、潤滑剤、可塑剤、溶剤、溶解補助剤、等張化剤、矯味矯臭剤、ビタミン類、界面活性剤、pH調整剤、キレート剤等が挙げられるが、これらに限定はされない。
 本発明の水中油型エマルジョンは、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類、ならびに必要に応じてその他の成分を上記の量にて混合、攪拌することにより製造することができる。各成分は全て一緒に混合、攪拌してもよいし、各成分を別々にもしくは任意の組み合わせで順次添加して(順序は問わない)混合、攪拌してもよい。混合、攪拌して得られた水中油型エマルジョンは、加熱殺菌処理に付してもよい。
 また、混合、攪拌して得られた水中油型エマルジョンは、必要に応じてさらに乾燥手段に付してもよい。乾燥手段は、上記従来公知の乾燥手段により行うことができ、当該水中油型エマルジョンの水分含量を、半固体/半液体(ゲル、ゾル等)や乾燥体の目的とする形状に応じて適宜調整することができる。得られた乾燥体は、必要に応じてさらに破砕、粉砕、又は摩砕処理に付して粉体やフレーク等の形態とすることができる。乾燥手段に付されて得られた水中油型エマルジョンには、必要に応じてその他の成分を上記の量にて混合、攪拌してもよく、ならびに/あるいは、加熱殺菌処理に付してもよい。
2.用途
 本発明の水中油型エマルジョンは、有効成分を滞留させるための滞留剤として用いることができる。
 本発明において「滞留剤」とは、有効成分を所定の部位に保持又は維持することにより長く留めることができ、それによって当該滞留剤を使用しない場合と比べて、当該有効成分の効果を増強、及び/又は長く維持することを可能とするものである。本発明の滞留剤は、動物に有効成分と共に投与又は摂取されると、水中油型エマルジョンが適用部位の組織に付着し、そこで、有効成分を保持し、及び/又は有効成分を吸収・吸着して保持することによって、留めることができ、当該滞留剤を使用しない場合と比べて、有効成分による効果を増強、及び/又は長く維持することができる。
 本発明において「動物」とは、特に限定されるものではなく任意の動物であってよいが、好ましくは哺乳動物であり、例えば、ヒト、家畜動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ等)、愛玩動物(イヌ、ネコ、ウサギ、ウサギ、ハムスター、モルモット等)が挙げられるが(これらに限定はされない)、より好ましくはヒトである。
 本発明において「組織」とは、皮膚、口腔、食道、肛門、膣、鼻腔、気管、気管支、胃、小腸、大腸、卵管、子宮、胸膜、腹膜、血管内皮、肺胞、甲状腺(濾胞)、尿細管、尿管、膀胱等でみられる各種上皮組織や毛髪、爪、歯等が挙げられ、目的とする適用部位に応じて適宜選択することができる。本発明において「上皮組織」とは、好ましくは皮膚、口腔、食道、鼻腔、気管、気管支等でみられる各種上皮組織であり、より好ましくは口腔内の上皮組織である。
 本発明において「有効成分と共に投与又は摂取される」とは、本発明の水中油型エマルジョンと有効成分とが、適用部位の組織にて併存できる時間内に両者が投与又は摂取されればよく、例えば、本発明の水中油型エマルジョンと有効成分とを一つの組成物中に含めて同時に投与又は摂取してもよいし、あるいは両者を別々の形態及び/又は別々の投与経路で、同時に又は前後して(好ましくは、本発明の水中油型エマルジョン、次いで有効成分の順序で)投与又は摂取してもよい。「投与」は、適用部位である組織に本発明の水中油型エマルジョンと有効成分とを送達できればよく、本発明の水中油型エマルジョンと有効成分の形態や量等に応じて適宜選択することができる。例えば、「投与」には、経口投与、噴霧投与、吸引、経鼻投与、口腔内投与、直腸内投与、経皮投与、塗布等が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましくは「投与」とは、経口投与、噴霧投与、吸引、口腔内投与、又は塗布である。
 本発明において「有効成分」としては、水溶性成分であるか、あるいは上記疎水性物質に親和性を有する成分(例えば、親油性成分等)が挙げられる。水溶性成分は、本発明の水中油型エマルジョンにおける水分中に、好ましくは、増粘多糖類及び/又はサイクロデキストリンと結合(例えば、水素結合)して、保持されると考えられる。一方、上記疎水性物質に親和性を有する成分は、本発明の水中油型エマルジョンにおける疎水性物質中に保持されると考えられる。本発明における「有効成分」としては、飲食品における味質の成分(塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩味成分;糖類(ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、オリゴ糖、異性化糖等)、糖アルコール類(キシリトール、ソルビトール、グリセリン、エリトリトール等)、天然甘味料(ステビア、グリチルリチン、ソーマチン等)、人工甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等)等の甘味成分;クエン酸、コハク酸、乳酸、酒石酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸等の酸味成分;グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸等の旨味成分;アルカロイド類(カフェイン、キニン、ストリキニン、テオブロミン等)、テルペン類(リモノイド、リモニン、オバクノン、ノミリン、ククルビタシン、フムロン、ルプロン等)、配糖体類(テルペン配糖体、フラバノン配糖体、ナリジン、ネオヘスペリジン等)、アミノ酸類(トリプトファン、フェニルアラニン、トリプシン、アルギニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン等)、カゼインや大豆タンパク質等の苦味成分;カプサイシン、ピペリン、サンショオール、ショウガオール、ジンゲロール、ジアリルジスルフィド、p-ヒドロキシベンジル、イソチオシアネート等の辛味成分;タンニン、カテキン、テアフラビン、テアルビジン等の渋味成分等(これらに限定はされない))ならびにそれらを含む食材、調味料、スパイス等や、医薬品(医薬部外品を含む)及び化粧品(以下、「医薬品等」と記載する)における所定の処置・目的のために用いられる成分(例えば、薬剤、殺菌剤、抗菌剤、抗生物質、酵素、抗体、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、清涼剤、防臭剤、保湿剤、香料等(これらに限定はされない))が挙げられる。
 本発明の滞留剤は、飲食品や医薬品等の有効成分を滞留させるために、飲食品や医薬品等に添加して用いることができる。その添加量は、飲食品や医薬品等の有効成分を、所定の部位に保持又は維持することにより、当該滞留剤を使用しない場合と比べて、長く留めることができ、当該有効成分の効果を、増強、及び/又は長く維持することを可能とすることが可能な量であればよく、有効成分の種類や量、飲食品や医薬品等の種類や形態に応じて、適宜決定することが可能である。例えば、飲食品や医薬品等には、本発明の滞留剤をその疎水性物質の量にして0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2.5質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上の量で含めることができ、その上限は特に限定されるものではないが、例えば、55質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下とすることができる。飲食品や医薬品等における本発明の滞留剤の量の範囲は前記下限及び上限の数値よりそれぞれ選択される2つの数値を用いて表すことができ、例えば、飲食品や医薬品等には本発明の滞留剤をその疎水性物質の量にして、0.5質量%~55質量%、0.5質量%~50質量%、0.5質量%~40質量%、0.5質量%~20質量%、又は0.5質量%~10質量%の範囲より適宜選択される量にて含めることができる。飲食品や医薬品等に含まれる本発明の滞留剤の量が上記範囲よりも少ないもしくは多い場合には、いずれにおいても目的の用途における利用形態において、有効成分を滞留させることができない場合がある。
 なお、本明細書中、飲食品や医薬品等に含まれる各成分の量の記載は、当該飲食品や医薬品等の溶液や固形部分を除いた液状部分の(例えば、飲食品であれば、具材が除かれたソースやスープ等の液状部分の量)全質量を100質量%とする、質量%の量にて示される。当該量は、飲食品や医薬品等が液体の形態や液状部分を有さない形態である場合には、投与又は摂食時に適当な溶媒(例えば、水、湯、生理食塩水、緩衝液等)を加えて/適当な溶媒に加えて調製された溶液、あるいは、当該飲食品や医薬品等が適用部位の組織における水分(例えば、唾液等の体液)で溶解された溶液における量とすることができる。
 飲食品や医薬品等には、本発明の滞留剤と有効成分を一緒に含めてもよいし(例えば、一つの組成物中に含めてもよく)、あるいは、本発明の滞留剤と有効成分とは別々の形態としてもよい(例えば、共に投与又は摂取される二つ以上の組成物中にそれぞれ含めてもよい)。
 飲食品や医薬品等の形態は、目的の用途における利用形態(例えば、所定の製品等の形態)に応じて適宜選択することができ、固体、粉体、顆粒、フレーク、チュアブル錠、シート、フィルム、チューイングガム、液体、乳液、半固体/半液体(ゲル、ゾル、クリーム、ペースト、ムース等)、軟カプセル等(これらに限定はされない)、任意の形態をとることができる。ただし、適用部位の組織にて、本発明の滞留剤が、上記範囲となる量で、有効成分と共存することが好ましい。飲食品や医薬品等はその形態に応じて、必要に応じて、投与又は摂食時に、適当な溶媒(例えば、水、湯、生理食塩水、緩衝液等)を加えて/適当な溶媒に加えて、飲食品や医薬品等における本発明の滞留剤の含有量を上記範囲に調製した後に投与又は摂食することができる(このような形態の飲食品や医薬品等には、固体、粉体、顆粒、フレーク、液体、乳液、半固体/半液体(ゲル、ゾル、クリーム、ペースト、ムース等)等の形態が挙げられるが、これらに限定はされない)。あるいは、飲食品や医薬品等は適用部位の組織における水分(例えば、唾液等の体液)中に、本発明の滞留剤と有効成分とが溶解され、本発明の滞留剤の含有量を上記範囲とし作用させてもよい(このような形態の飲食品や医薬品等には、粉体、顆粒、チュアブル錠、シート、フィルム、チューイングガム等の形態が挙げられるが、これらに限定はされない)。
 飲食品や医薬品等には、本発明の滞留剤や有効成分に加えて、必要に応じてさらに、目的の用途における利用形態(例えば、所定の製品等の形態)の製造において通常用いられている成分を、本発明の効果を損なわない範囲で、所望の利用形態に応じた量にて適宜配合することができる。このような成分としては、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、懸濁化剤、増粘剤、保存剤、抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、染料、色素、潤滑剤、可塑剤、溶剤、溶解補助剤、等張化剤、矯味矯臭剤、香料、甘味料、呈味成分、酸味料、調味料、保湿剤、ビタミン類、界面活性剤、キレート剤、抗菌剤、乳化剤、水溶性有機溶媒、食材等が挙げられるが、これらに限定はされない。
 一態様において、本発明の滞留剤は飲食品に含めて提供される。当該飲食品を喫食することにより、本発明の滞留剤における水中油型エマルジョンが口腔内の上皮組織に付着し、そこで共に摂取される有効成分、例えば、味質の成分を保持し、及び/又は味質の成分を吸収・吸着して保持することによって、滞留させ、有効成分がもたらす効果(例えば、味質の成分がもたらす風味や呈味)を、当該滞留剤を使用しない場合と比べて、増強、及び/又は長く維持することができる。このような利用態様における本発明の滞留剤は、風味増強剤や呈味増強剤等とも称される場合がある。
 また、別の態様において、本発明の「滞留剤」は口腔内ケア製品に含めて提供される。当該製品を口に含むことにより、本発明の滞留剤における水中油型エマルジョンが口腔内の上皮組織に付着し、そこで共に投与される有効成分であるところの薬剤(例えば、虫歯予防・修復剤(塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム(BTC)、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等)、歯肉炎・歯周炎予防・改善剤(ε-アミノカプロン酸、イソプロピルメチルフェノール(シメン-5-オール)、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム、β-グリチルレチン酸、塩化セチルピリジニウム(CPC)、ヒノキチオール、トリクロサン、トラネキサム酸、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム(BTC)、トリクロサン、塩化ナトリウム、酢酸トコフェロール等)、口内炎予防・改善剤(アラントイン、グリチルリチン酸、トラネキサム酸等)、知覚過敏予防・抑制剤(乳酸アルミニウム、硝酸カリウム等)、プラーク予防・除去剤(デキストラナーゼ等)、歯石予防・除去剤(ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等)、ステイン予防・除去剤(ポリリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等)、口臭予防・除去剤(イソプロピルメチルフェノール(シメン-5-オール)、ラウロイルサルコシンナトリウム等)、口腔乾燥予防・抑制剤(ヒアルロン酸、乳タンパク質エキス、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、リゾチーム、ラクトフェリン、リン酸二カリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、ピロカルピン塩酸塩、セビメリン塩酸塩水和物、アネトールトリチオン等)等が挙げられるが、これらに限定はされない)を保持し、及び/又は薬剤を吸収・吸着して保持することによって、滞留させ、薬剤がもたらす効果を、当該滞留剤を使用しない場合と比べて、増強、及び/又は長く維持することができる。このような口腔内ケア製品は従来公知の一般的な形態、例えば、洗口剤、洗口液、マウスウォッシュ、液状歯磨き剤、練り歯磨き剤、粉末状歯磨き剤、ジェル、フィルム、チューインガム、スプレー剤、液剤等とすることができる。
 また、別の態様において、本発明の「滞留剤」はヘアケア製品に含めて提供される。当該製品を髪に塗布することにより、本発明の滞留剤における水中油型エマルジョンが髪に付着し、そこで共に投与される有効成分、例えば、毛髪保護成分(加水分解卵殻膜、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン、加水分解シルク、加水分解コムギ、加水分解コムギタンパク、加水分解ダイズタンパク、グルタミン酸、アルギニン、ピロリドンカルボン酸、ジメチコン、アモジメチコン、ポリクオタニウム-10、キトサン等)、髪質改善成分(ステアリルトリモニウムブロミド、セトリモニウムブロミド、ステアリルトリモニウムクロリド等)、毛髪補修成分(オリーブ油、ホホバ油、アボカド油、スクアラン、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、卵黄脂肪油、吸着精製ラノリン、ダイズステロール、コレステロール、セラミド等)、保湿成分(ヒアルロン酸、グリセリン、加水分解卵殻膜、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン、加水分解シルク、加水分解コムギ、加水分解コムギタンパク、加水分解ダイズタンパク、グルタミン酸、アルギニン、ピロリドンカルボン酸、卵黄脂肪油、吸着精製ラノリン、ダイズステロール、コレステロール、セラミド等(これらに限定はされない)を保持し、及び/又はこれらを吸収・吸着して保持することによって、滞留させ、有効成分がもたらす効果を、当該滞留剤を使用しない場合と比べて、増強、及び/又は長く維持することができる。このようなヘアケア製品は従来公知の一般的な形態、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント等とすることができる。
 以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実験1:水中油型エマルジョンの乳化安定性の評価
(1)水中油型エマルジョンの作製
 以下の表1の組成にしたがって、各成分を添加、混合し、水中油型エマルジョンを作製した。疎水性物質としては油脂(キャノーラ油)を使用し、増粘多糖類としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グルコマンナン、グアーガム、κ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム、キサンタンガム、ι-カラギーナン、ローカストビーンガム、λ-カラギーナン、対照として非多糖類の増粘剤であるカルボキシルビニルポリマーとポリアクリル酸ナトリウムのいずれか一つを配合した。
 各成分の混合は一度に行い、ハンドブレンダーを用いて20,000rpmにて10分間攪拌して行った。得られた各水中油型エマルジョン(50mL)をコニカルチューブ(Falcon(登録商標)コニカルチューブ50mL)に移し、3000rpmにて1分間で遠心した。次いで、水相、ミセル、油相の厚み(深さ)を目視で観察し、各相の割合(%)を計測して、各組成物の乳化安定性を評価した。評価はミセルの割合が100%であるものを「◎」、ミセルの割合が70%以上かつ100%未満であるものを「〇」、ミセルの割合が70%未満であるものを「×」として行った。
 なお、以下に記載される表中の各成分の量は、得られた水中油型エマルジョンの量を100質量%とする、質量%の量にて示される。油脂、α-サイクロデキストリン、及び増粘多糖類はいずれも食品添加物(食品グレード)を使用した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
(2)結果
 水中油型エマルジョンに添加した増粘多糖類と、計測された各相の割合、及び評価結果を表2に示す。水、疎水性物質、α-サイクロデキストリンと共に増粘多糖類を添加、混合することにより水中油型エマルジョンを形成することが可能であるが、上記結果より明らかなとおり、増粘多糖類として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グルコマンナン、グアーガム、κ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム、キサンタンガム、ι-カラギーナン、ローカストビーンガム、λ-カラギーナンを用いた場合には、上記条件下においても水中油型エマルジョンのミセル相が維持され、特に高い乳化安定性を示すことが確認された。とりわけ、CMC、グルコマンナン、タマリンドガム、キサンタンガムをそれぞれ添加した場合には、水相及び油相の分離は認められず、顕著に高い乳化安定性が確認された。一方、非多糖類の増粘剤の添加によっては、上記条件下において水相と油相の分離が大きく、乳化安定性が比較的低いことが確認された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 以下の表3の組成にしたがって、各成分を添加、混合し、水中油型エマルジョンを作製した。疎水性物質としては、オイルレッドを1%の量で含む、カルナバロウ、ワセリンワックス(白色ワセリン)、ロジン、シリコーン油のいずれか一つを使用し、増粘多糖類としては、キサンタンガムを配合した。表中の各成分の量は、得られた水中油型エマルジョンの量を100質量%とする、質量%の量にて示される。
 上記と同様の手法にて各成分の混合、攪拌を行い、得られた各水中油型エマルジョン(50mL)をコニカルチューブ(Falcon(登録商標)コニカルチューブ50mL)に移し、3000rpmにて1分間で遠心した。次いで、水相、ミセル、油相の厚み(深さ)を目視で観察し、各相の割合(%)を計測して、各組成物の乳化安定性を上記と同様に評価した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 水中油型エマルジョンに添加した疎水性物質と、計測された各相の割合、及び評価結果を表4に示す。この結果より、油脂だけでなく、その他の疎水性物質を用いた場合においても、水中油型エマルジョンを形成することができ、また上記条件下においても水中油型エマルジョンのミセル相が維持され、高い乳化安定性が得られることが確認された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
実験2:水中油型エマルジョンにおけるα-サイクロデキストリンと増粘多糖類間の相互作用の評価
 水溶液中のα-サイクロデキストリンと増粘多糖類との相互作用を評価するため、従来公知の手法に準じた等温滴定型熱量測定(Isothermal Titration Calorimetry;ITC)によりエンタルピー変化(ΔH)を求めた。すなわち、等温滴定カロリメータ(NANO ITC SV;TA Instruments)を用いてα-サイクロデキストリンの水溶液(25g/100mL)に、増粘多糖類の水溶液(0.05g/100mL)を180秒ごとに10μLを25回(75分)にわたって滴下し、25回目(最終)の滴定ピークの面積よりエンタルピー値(μJ)を求めた。対照として非多糖類の増粘剤であるカルボキシルビニルポリマーとポリアクリル酸ナトリウムを用いて、同様にエンタルピー値(μJ)を求めた。
 結果を表5に示す。上記実験1においてとりわけ高い乳化安定性が示された増粘多糖類(CMC、及びキサンタンガム)を用いた場合においてプラスのエンタルピー値、すなわち吸熱反応が認められた。この結果は、増粘多糖類とα-サイクロデキストリンとの間で、水和水を介した相互作用の存在を示唆するものであり、例えば、増粘多糖類に水和していた水分子の一部が、α-サイクロデキストリンと水素結合することが考えられる。通常、水分子間で形成される水素結合は、荷電部位による分子間反発を生じる増粘多糖類とα-サイクロデキストリンとの間で形成される水素結合よりも距離が短くエネルギー値が高い。このため、増粘多糖類に水和していた水分子の一部が、α-サイクロデキストリンと水素結合する場合、エネルギー値の差し引きの結果として吸熱反応を生じるものと考えられる。熱量の移動(プラスのエンタルピー値)は増粘多糖類とα-サイクロデキストリンとの間で生じる相互作用の存在を示唆するものであり、この相互作用が上記実験1において、水中油型エマルジョンに高い乳化安定性を生じる要因であると考えられる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
実験3:水中油型エマルジョンの性能評価(風味増強)
(1)水中油型エマルジョン自体の風味評価
 以下の表6の組成にしたがって、各成分を添加、混合し、水中油型エマルジョンを作製した。各成分の混合は一度に行い、ハンドブレンダーを用いて20,000rpmにて10分間攪拌して行った。
 なお、表中の各成分の量は、得られた水中油型エマルジョンの量を100質量%とする、質量%の量にて示される。
 対照には、以下の表6の組成にしたがって、油脂以外の成分を混合した後、油脂を添加して、剪断力を加えることなく手混合して(すなわち、水中油型エマルジョンとせず)作製した混合物を用いた。
 得られた水中油型エマルジョン及び対照の混合物を、それぞれ水に1質量%となる量で加えて、各溶液の風味の有無を、よく訓練された専門のパネラーらが官能評価した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 結果、水中油型エマルジョン及び対照の混合物はいずれも、何も加えていない水と比べて、匂いに差は認められなかった。
 対照の混合物は摂取した際に、水と比べて、油脂に由来するまったり感が少し感じられたが、味の違いは感じられなかった。
 水中油型エマルジョンについては摂取した際に、水と比べて、口腔内全体が広く覆われている(水中油型エマルジョンが付着している)ように感じられたが、味の違いは感じられなかった。1質量%の水中油型エマルジョン溶液に含まれる油脂の量は、0.13質量%程度でしかなく、油脂に由来する味や匂いが感じられることはないことが確認された。
(2)水中油型エマルジョンの併用による風味増強の効果I
 上記にて得られた1質量%の水中油型エマルジョン溶液、及び1質量%の対照の混合物溶液に、下記表7に記載の各味質の成分を所定の量となるように各溶液に加えて、風味評価のための試料とした(以下、1質量%の水中油型エマルジョン溶液を含む試料を「1%O/W(+)」と記載し、1質量%の対照の混合物溶液を含む試料を(以下、「1%O/W(-)」と記載する)。対照としてさらに、水に各味質の成分だけを同量加えた水溶液(以下、「対照水溶液」と記載する。)を用いた。
 下記表7に記載される評価順序で、各試料(10mL)を摂取し、それぞれの味の強度を、よく訓練された専門のパネラーらが、対照水溶液の評価を5とする、10段階で評価した。すすぎは、20mLの水にて2回行った。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 各試料のそれぞれの味の強度の評価結果を以下の表8に示す(甘味・旨味・酸味・苦味:N=4、塩味:N=3)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 以上の結果より、味質の成分を水中油型エマルジョンに含めることによって(1%O/W(+))、それぞれの味の強度が顕著に高められることが確認された。味質の成分を水中油型エマルジョンを形成しない混合物に含めた場合(1%O/W(-))においても味の強度がやや高まる傾向が認められたが、その程度は微々たるものであった。
 さらに、1%O/W(+)及び1%O/W(-)について、各試料を摂取した後、1分間における味の強度の変化を、よく訓練された専門のパネラーが、官能評価ソフトウェアFIZZ(Biosystemes社)を用いたTime Intensity(TI)法により評価した。その結果を、図1に示す(甘味:N=4、塩味・苦味:N=5、酸味・旨味:N=3、図1の結果は、各パネラーの結果の平均値を示す)。
 図1の結果より、1%O/W(-)と比べて、1%O/W(+)においては、それぞれの味の喫食直後の立ち上がり、強度、ミドルの厚み、後味の持続性の一以上において高い値が得られることが確認された。
(3)水中油型エマルジョンの併用による風味増強の効果II
 以下の表9の組成にしたがって、各成分を添加、混合し、水中油型エマルジョンを作製した。増粘多糖類として、キサンタンガム、アラビアガム、ペクチン、リン酸架橋でんぷん、ヒドロキシプロピルでんぷん、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でんぷん、トラガントガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースを用いて、各成分の混合は一度に行い、ハンドブレンダーを用いて20,000rpmにて10分間攪拌して行った。
 なお、表中の各成分の量は、得られた水中油型エマルジョンの量を100質量%とする、質量%の量にて示される。
 対照には、以下の表9の組成にしたがって、油脂以外の成分を混合した後、油脂を添加して、剪断力を加えることなく手混合して(すなわち、水中油型エマルジョンとせず)作製した混合物を用いた。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000009
 得られた水中油型エマルジョン及び対照の混合物を、それぞれ水に1質量%となる量で加えて、1質量%の水中油型エマルジョン溶液、及び1質量%の対照の混合物溶液を調製した。これに食塩を0.6質量%の量となるように各溶液に加えて、風味評価のための試料とした(以下、1質量%の水中油型エマルジョン溶液を含む試料を「1%O/W(+)」と記載し、1質量%の対照の混合物溶液を含む試料を(以下、「1%O/W(-)」と記載する)。対照水溶液としてさらに、水に食塩を0.6質量%の量となるように加えた水溶液を用いた。
 上記表7に記載される評価順序で、各試料(10mL)を摂取し、それぞれの味の強度を、よく訓練された専門のパネラーらが、対照水溶液の評価を5とする、10段階で評価した。すすぎは、20mLの水にて2回行った。
 各試料のそれぞれの味の強度の評価結果を以下の表10に示す(N=3)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
 以上の結果より、用いた増粘多糖類の種類に関わらず、水中油型エマルジョンを含めることによって(1%O/W(+))、味の強度が顕著に高められることが確認された。
(4)水中油型エマルジョンの併用・繰り返し摂取による風味増強の効果
 上記(2)と同様の方法で調製した味質成分(食塩0.6質量%、又はカフェイン0.2質量%)を加えた1%O/W(+)をそれぞれ4回連続で(すすぎを挟むことなく)摂取し(各10mL)、各回におけるそれぞれの味の強度を、1回目の摂取の評価を5とする、10段階で評価した。評価は、よく訓練された専門のパネラーらにより行った。
 各試料のそれぞれの味の強度の評価結果を以下の表11に示す(塩味:N=4、苦味:N=3)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
 以上の結果より、いずれの場合においても水中油型エマルジョンを含む試料の繰り返しの摂取により、味の強度が段階的に高まることが確認された。これは、味質の成分が水中油型エマルジョンと共に口腔内に付着して、蓄積されるためであると考えられる。
(5)水中油型エマルジョンの別途使用による風味増強の効果I
 上記(1)にて調製した水中油型エマルジョンを、それぞれ水に10質量%となる量で加えて、味質の成分を含まない、水中油型エマルジョンの10質量%水溶液を得た(以下、「10%O/W(+)」と記載する)。味質の成分を加えた水溶液(以下、「味質水溶液」と記載する。)には、0.6質量%の食塩水溶液を用いた。
 評価に際しては、味質水溶液(10mL)を摂取し、味の強度を評価(付着前)した後、口内を洗浄し(20mLの水にてすすぎ×2回)、次いで、10%O/W(+)(10mL)を30秒間口に含んで、口腔内に付着させた後に吐き出し、口内を洗浄し(20mLの水にてすすぎ×2回)、次いで、再度、味質水溶液(10mL)を摂取し、味の強度を評価(付着後)した。評価は、よく訓練された専門のパネラーらが、付着前の味質水溶液の評価を5とする、10段階で評価した。
 得られた評価結果を、以下の表12に示す(N=4)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
 さらに、水中油型エマルジョンを付着させる前及び付着させた後の味質水溶液について、各試料を摂取した後、1分間における味の強度の変化を、よく訓練された専門のパネラーらが、官能評価ソフトウェアFIZZ(Biosystemes社)を用いたTime Intensity(TI)法により評価した結果を、図2に示す(N=4)。
 これらの結果より、味質の成分を予め水中油型エマルジョンの水溶液中に混合させず、口腔内に水中油型エマルジョンを付着させたところに、味質水溶液を摂取するだけでも、味の強度が高まることが確認された。また、図2に示されるように、水中油型エマルジョンを付着させた後に、味質水溶液を摂取した場合には、味の喫食直後の立ち上がり、強度、ミドルの厚み、後味の持続性において高い値が得られることが確認された。これは、味質の成分が付着された水中油型エマルジョンに付着、蓄積して作用するためであると考えられる。
(6)水中油型エマルジョンの別途使用による風味増強の効果II
 下記表13に記載の各味質の成分を所定の量となるように水に加えて、味質水溶液を調製し、上記(5)に記載の評価方法と同様にして、口腔内を10%O/W(+)で付着させる前後の味質水溶液の各味の強度を評価した。評価は、よく訓練された専門のパネラーらが、それぞれ付着前の味質水溶液の評価を5とする、10段階で評価した。
 得られた評価結果を、以下の表13に示す(N=2)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000013
 以上の結果より、5つの基本味の全てについて、味質の成分を予め水中油型エマルジョンの水溶液中に混合させず、口腔内に水中油型エマルジョンを付着させたところに、味質水溶液を摂取するだけで、味の強度が高まることが確認された。
(7)水中油型エマルジョンの併用による辛味成分の風味増強の効果
 上記の5つの基本味は全て味覚神経により感知されるものである。一方、辛味や渋味等は、味覚神経ではなく、痛覚や温度覚により感知されるものであることから、上記味質の成分とは区別されるものである。そこで、味質の成分とは異なる成分に対しても、水中油型エマルジョンの併用により同様の効果が得られるか否かを確認した。
 以下の表14の組成にしたがって、各成分を添加、混合し、油脂中に辛味成分を含有する水中油型エマルジョンを作製した。増粘多糖類として、キサンタンガム、アラビアガム、ペクチン、リン酸架橋でんぷん、ヒドロキシプロピルでんぷん、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でんぷん、トラガントガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースを用いて、各成分の混合は一度に行い、ポリトロンホモジナイザーを用いて20,000rpmにて1分間攪拌して行った。
 なお、表中の各成分の量は、得られた水中油型エマルジョンの量を100質量%とする、質量%の量にて示される。
 対照には、ラー油を用いた。
 評価は、よく訓練された専門のパネラーらが、各試料(10mL)を摂取し、それぞれの味の強度を、対照の評価を5とする、10段階で評価を行った。結果は、表14に示され、各数値は平均値を示す(N=3)。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000014
 結果、辛味成分を含む水中油型エマルジョンはいずれも、用いた増粘多糖類の種類に関わらず、対照と比べて辛味の強度が高まることが確認された。また、辛味成分を含む水中油型エマルジョンは、摂取後10分以上辛みが持続するが、対照の摂取後に感じられる辛味は2分程度で感じられなくなることが確認された。
 この結果より、味質の成分とは異なる成分、また油脂中の成分に対しても、水中油型エマルジョンを併用することによって、効果(強度)や持続性を高めることが可能であることが確認された。
(8)比較例
 以下の表15の組成にしたがって、各成分を添加、混合して、乳化組成物を作製した。各成分の混合は、ポリトロンホモジナイザーを用いて20,000rpmにて1分間攪拌して行った。
 評価に際しては、比較例Aと比較例Bのセットに分けて行い、それぞれα-サイクロデキストリン及び増粘多糖類(キサンタンガム)を含まない乳化組成物(A-1,B-1)と比較して、乳化組成物(A-2,B-2)において高い強度の塩味が感じられるか確認した。
 評価は、よく訓練された専門のパネラーら(N=3)が、各乳化組成物(A-1,B-1)(10mL)を摂取し、味の強度を評価した後、口内を洗浄し(20mLの水にてすすぎ×2回)、次いで、各乳化組成物(A-2,B-2)を摂取し、味の強度を評価、比較した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000015
 比較例Aにおいて、比較例A-1と比較例A-2のいずれも、バター状の形状を有し、塩味はほとんど感じられなかった。比較例A-1と比較例A-2とを比較して、両者の塩味の強度に差は認められなかった。
 比較例Bにおいて、比較例B-1と比較例B-2のいずれも、乳化が不十分であり、油浮きが認められた。比較例B-1と比較例B-2のいずれについても、塩味は感じられるが、後に残る感じはなく、両者の塩味の強度に差は認められなかった。
実験4:水中油型エマルジョンの性能評価(ヘアケア効果の増強)
 以下の表16の組成にしたがって、各成分を添加、混合し、水中油型エマルジョンを作製した。各成分の混合は一度に行い、ハンドブレンダーを用いて20,000rpmにて10分間攪拌して行った。なお、表中の各成分の量は、得られた水中油型エマルジョンの量を100質量%とする、質量%の量にて示される。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000016
 得られた水中油型エマルジョンを、市販のヘアコンディショナー(TSUBAKIプレミアムモイスト ヘアコンディショナー(株式会社ファイントゥデイ))に25質量%となる量で加えて、水中油型エマルジョン配合のヘアコンディショナーを調製した。対照には、水中油型エマルジョンを配合していない上記市販のヘアコンディショナーを用いた。
 髪をヘアシャンプーで洗浄後、40℃前後のお湯でよくすすぎ、水中油型エマルジョン配合のヘアコンディショナー、又は、対照のヘアコンディショナーを約10g手に取り、髪全体によく塗布して1分程度放置し、その後40℃前後のお湯でよくすすぎ、タオルで水分を取り除き、ドライヤーで乾燥させた後、髪の質感をそれぞれ、パネラーら(N=3)が官能評価した。
 結果、対照のヘアコンディショナーを用いた場合には、髪は非常になめらかで光沢ある感じになったが、静電気的な反発で髪のまとまりは少なく、ハネ等が認められた。
 一方、水中油型エマルジョン配合のヘアコンディショナーを用いた場合には、対照のヘアコンディショナーを用いた場合と同様に髪は非常になめらかで光沢ある感じになったが、さらに、保湿感のあるしっとりした感じになり、まとまりもよく静電気的なハネ等は認められなかった。この結果は、水中油型エマルジョンを含めることによって、ヘアコンディショナーに含まれる有効成分を髪に、より滞留させることができ、当該有効成分による効果が増強、及び/又は長く維持されたことにより、保湿効果等を高め、ハネ等に影響する髪の表面電位を少なくすることができ、髪同士の反発をより低減しているものと考えられる。
 以上のとおり、本発明に係る水中油型エマルジョンによれば、所定の部位に付着して、有効成分を保持し、及び/又は吸収・吸着して維持して滞留させることができ、有効成分による効果を増強、及び/又は長く維持することが可能であり、有効成分の滞留剤として、飲食品、医薬品、化粧品など、様々な分野において利用されることが期待されるものである。

 

Claims (11)

  1.  水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤。
  2.  疎水性物質が、油脂、疎水性ワックス、及び疎水性樹脂からなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載の滞留剤。
  3.  増粘多糖類が、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グルコマンナン、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、タマリンドガム、ジェランガム、アラビアガム、ペクチン、リン酸架橋でんぷん、ヒドロキシプロピルでんぷん、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋でんぷん、トラガントガム、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び、ヒドロキシエチルセルロースからなる群より選択される一種以上である、請求項1に記載の滞留剤。
  4.  飲食品に添加して用いられる、請求項1に記載の滞留剤。
  5.  医薬品に添加して用いられる、請求項1に記載の滞留剤。
  6.  化粧品に添加して用いられる、請求項1に記載の滞留剤。
  7.  水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を混合して水中油型エマルジョンを形成する工程を含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤の製造方法。
  8.  水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤を、その疎水性物質の量にして0.5質量%~55質量%含んでなる、飲食品。
  9.  水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤を、その疎水性物質の量にして0.5質量%~55質量%含んでなる、医薬品。
  10.  水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンを含む、有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤を、その疎水性物質の量にして0.5質量%~55質量%含んでなる、化粧品。
  11.  有効成分を滞留させるために用いられる滞留剤の製造方法における、水、疎水性物質、サイクロデキストリン、及び、増粘多糖類を含む水中油型エマルジョンの使用。

     
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