WO2024106522A1 - 単量体組成物、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、樹脂成形体及び樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

単量体組成物、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、樹脂成形体及び樹脂成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

メタクリル酸メチルと、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む単量体組成物であって、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が前記単量体組成物の総質量に対して36質量ppm超であり、前記α-オレフィンが2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、単量体組成物。

Description

単量体組成物、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、樹脂成形体及び樹脂成形体の製造方法
 本発明は、単量体組成物、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、樹脂成形体及び樹脂成形体の製造方法に関する。
 メタクリル系樹脂は、透明性、耐熱性及び耐侯性に優れ、且つ、機械的強度、熱的性質、成形加工性等の樹脂物性においてバランスのとれた性能を有している。このような優れた特性から、車両用部材、医療用部材、玩具、液体容器、光学材料、看板、ディスプレイ、装飾部材、建築部材、電子機器の面板等の多くの用途に使用され、特に、透光性を有する部材に使用されている。
 上記用途において、直射日光やUVランプ等の光に曝される環境下にメタクリル系樹脂板が使用された部材が設置された場合、メタクリル系樹脂板の透明性が大きく低下するという問題点があった。そのため、光に長時間曝露されても透明性が維持されるメタクリル系樹脂、すなわち、光安定性に優れるメタクリル系樹脂が要求されていた。
 メタクリル系樹脂の光安定性を向上させる技術として、例えば特許文献1には、光安定剤の1つである特定の構造を有するヒンダードアミン系化合物の存在下でメチルメタクリレート等のモノマーを重合させたメタクリル系樹脂が開示されている。特許文献2には、トリアジン系化合物を構造単位として有する重合体を含むメタクリル系樹脂が開示されている。
特開昭55-139404号公報 特開2012-72333号公報
 しかしながら、特許文献1及び2に記載のメタクリル系樹脂は、重合時の添加剤の増加に伴い、光安定性は向上する一方で、添加剤に由来する着色が発生するという問題があった。そのため、特定の色調と透明性が同時に求められる場合には用いることができないという課題があった。
 以上の状況から、本発明の目的は、メタクリル系樹脂が本来有する透明性及び耐熱性を維持しつつ、光安定性に優れた樹脂組成物を得るための単量体組成物、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、樹脂成形体及び樹脂成形体の製造方法を提供することにある。
 上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
〔1〕
 メタクリル酸メチルと、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と、を含む、単量体組成物であって、
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、36質量ppm超であり、
 前記α-オレフィンが、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、単量体組成物。
〔2〕
 前記メタクリル酸メチルの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、85質量%以上である、〔1〕に記載の単量体組成物。
〔3〕
 前記メタクリル酸メチルの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、90質量%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の単量体組成物。
〔4〕
 前記α-オレフィンの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、0.1質量ppm以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔5〕
 前記α-オレフィンの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、10質量ppm以上である、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔6〕
 前記α-オレフィンの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、60質量ppm以上である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔7〕
 前記α-オレフィンの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、80質量ppm以上である、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔8〕
 遷移金属の化合物及び第13族元素の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が、前記α-オレフィンの総質量に対して、2×10質量ppm以下である、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔9〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、40質量ppm以上である、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔10〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、60質量ppm以上である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔11〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、70質量ppm以上である、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔12〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、100質量ppm以上である、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔13〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量に対する前記α-オレフィンの含有量の比([前記α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量])が、0.00001以上1,000以下である、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔14〕
 アクリル酸エステルをさらに含有する、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔15〕
 前記アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸n-ブチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、〔14〕に記載の単量体組成物。
〔16〕
 前記アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル又はアクリル酸エチルである、〔14〕に記載の単量体組成物。
〔17〕
 スチレンをさらに含有する、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔18〕
 イソ酪酸メチルをさらに含有する、〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の単量体組成物。
〔19〕
 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の単量体組成物を含む重合性組成物をラジカル重合するラジカル重合工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
〔20〕
 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の単量体組成物の重合物を含む、樹脂組成物。
〔21〕
 メタクリル系重合体(P)と、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む、樹脂組成物であって、
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、26質量ppm超であり、
 前記α-オレフィンが、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、樹脂組成物。
〔22〕
 前記メタクリル系重合体(P)が、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を、前記メタクリル系重合体(P)の総質量に対して、50質量%以上含有する、〔21〕に記載の樹脂組成物。
〔23〕
 前記メタクリル系重合体(P)が、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を、前記メタクリル系重合体(P)の総質量に対して、70質量%以上含有する、〔21〕又は〔22〕に記載の樹脂組成物。
〔24〕
 前記α-オレフィンの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、0.1質量ppm以上である、〔21〕~〔23〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔25〕
 前記α-オレフィンの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、10質量ppm以上である、〔21〕~〔24〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔26〕
 前記α-オレフィンの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60質量ppm以上である、〔21〕~〔25〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔27〕
 前記α-オレフィンの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、80質量ppm以上である、〔21〕~〔26〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔28〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、30質量ppm以上である、〔21〕~〔27〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔29〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、40質量ppm以上である、〔21〕~〔28〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔30〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60質量ppm以上である、〔21〕~〔29〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔31〕
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、80質量ppm以上である、〔21〕~〔30〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔32〕
 前記樹脂組成物中にイソ酪酸メチルをさらに含有する、〔21〕~〔31〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔33〕
 前記メタクリル系重合体(P)が、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位及びアクリル酸エステル由来の繰り返し単位含む、〔21〕~〔32〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔34〕
 前記メタクリル系重合体(P)が、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を及びスチレン由来の繰り返し単位を含む、〔21〕~〔32〕のいずれかに記載の樹脂組成物。
〔35〕
 〔20〕~〔34〕のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、樹脂成形体。
〔36〕
 〔35〕に記載の樹脂成形体を含む、車両用部材。
〔37〕
 〔35〕に記載の樹脂成形体を含む、医療用部材。
〔38〕
 〔35〕に記載の樹脂成形体を含む、玩具。
〔39〕
 〔35〕に記載の樹脂成形体を含む、液体容器。
〔40〕
 〔35〕に記載の樹脂成形体を含む、光学材料。
〔41〕
 〔35〕に記載の樹脂成形体を含む、看板。
〔42〕
 〔35〕に記載の樹脂成形体を含む、ディスプレイ。
〔43〕
 メタクリル系重合体(P)と、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む樹脂組成物を成形する成形工程を含み、
 前記樹脂組成物中のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、26質量ppm超であり、
 前記α-オレフィンが、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、樹脂成形体の製造方法。
 本発明によれば、メタクリル系樹脂が本来有する透明性及び耐熱性を維持しつつ、光安定性に優れた樹脂組成物を得るための単量体組成物、樹脂組成物、樹脂組成物の製造方法、樹脂成形体及び樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
 本明細書及び特許請求の範囲における以下の用語の定義は以下のとおりである。
 「単量体」は、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物を意味する。
 「繰り返し単位」は単量体が重合することによって形成された前記単量体に由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
 「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方あるいは両方を意味する。
 「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方あるいは両方を意味する。
 「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の一方あるいは両方を意味する。
 「共役」とは、間に存在するσ結合を越えたp軌道同士の重なり合いを意味する。
 「非共役」とは、共役が生じないことを意味する。
 「得られる樹脂組成物」は、単量体組成物を含む単量体混合物をラジカル重合してなる樹脂組成物を意味する。
 「得られた樹脂成形体」は、樹脂組成物を成形して得られた樹脂成形体を意味する。
 「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有割合を示す。
 「質量平均分子量」は、標準試料として標準ポリスチレンを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定した値である。
 「UV」及び「紫外線」とは、波長範囲として295~430nmの光を主として含む光を意味する。
 「遷移金属」とは、周期表で第3族から第12族に位置する金属元素を意味する。典型的には、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、及び水銀(Hg)等である。
 「第13族元素」とは、周期表で第13族に位置する元素を意味する。典型的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びタリウム(Tl)である。
 「周期表」とは、「Periodic Table of Elements」(”Periodic Table of Elements”, [online], National Center for Biotechnology Information, [令和4年11月7日検索], インターネット, <URL: https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/periodic-table/>)を意味する。
 本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味し、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
<1.単量体組成物>
 本発明の第1の実施形態に係る単量体組成物は、メタクリル酸メチルと、α-オレフィンと、プロピオン酸、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と、を含み、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が前記単量体組成物の総質量に対して36質量ppm超であり、前記α-オレフィンが2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする(以下、特に断りがない限り、「α-オレフィン」は、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択する少なくとも1種を指すものとする。)。また、本発明の効果を損ねない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。
<1-1.メタクリル酸メチル>
 本実施形態に係る単量体組成物は、メタクリル酸メチルを含む。メタクリル酸メチルは、例えばアセトンシアノヒドリン法、新アセトンシアノヒドリン法、C4直接酸化法、直メタ法、エチレン法、新エチレン法等の方法により製造することができる。また、メタクリル酸メチルを含む単量体組成物を重合した樹脂組成物を熱分解することで得られるメタクリル酸メチルを使用してもよい。メタクリル酸メチルは、メタクリル酸メチルを含む単量体組成物を重合した樹脂組成物を熱分解することで得られるメタクリル酸メチルであることがより好ましい。本実施形態に係る単量体組成物は、メタクリル酸メチルを含むことで、優れた光安定性及びメタクリル系樹脂本来の耐熱性を担保した樹脂組成物を提供することができる。
 単量体組成物の総質量に対するメタクリル酸メチルの含有量の下限は特に限定されないが、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、97質量%以上であることが特に好ましい。また、メタクリル酸メチルの含有量の上限は特に限定されないが、通常99.99質量%以下であり、99.98質量%以下又は99.97質量%以下であってもよい。したがって、例えば85質量%以上99.99質量%以下、90質量%以上99.98質量%以下、95質量%以上99.97質量%以下、97質量%以上99.97質量%以下、及び97質量%以上99.97質量%以下の範囲が挙げられる。
 また、本実施形態に係る単量体組成物の総質量に対するメタクリル酸メチルと、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物との合計含有量は、特に限定されず、通常100質量%以下である。
<1-2.α-オレフィン>
 本実施形態に係る単量体組成物は、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセン からなる群より選択される少なくとも1種を含むα-オレフィンを含むことで、優れた光安定性を有する樹脂組成物を提供することができる。α-オレフィンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。
 本実施形態に係る単量体組成物の総質量に対するα-オレフィンの含有量の下限は、特に限定されないが、光安定性が良好な樹脂組成物を提供できることから、0.1質量ppm以上であることが好ましく、10質量ppm以上であることがより好ましく、60質量ppm以上であることがさらに好ましく、80質量ppm以上であることがさらにより好ましく、100質量ppm以上であることが特に好ましい。
 本実施形態に係る単量体組成物中のα-オレフィンの含有量の上限は、特に限定されないが、耐熱性を良好に維持できる樹脂組成物を提供できることから、10,000質量ppm以下であることが好ましく、5,000質量ppm以下であることがより好ましく、4,000質量ppm以下であることがさらに好ましく、3,000質量ppm以下であることがさらにより好ましく、2,000質量ppm以下であることが特に好ましい。
 上記の好ましい上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
 具体的には、本実施形態に係る単量体組成物の総質量に対するα-オレフィンの含有量は、0.1質量ppm以上10,000質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以上5,000質量ppm以下であることがより好ましく、60質量ppm以上4,000質量ppm以下であることがさらに好ましく、80質量ppm以上3,000質量ppm以下であることがさらにより好ましく、100質量ppm以上2,000質量ppm以下であることが特に好ましい。なお、単量体組成物がα-オレフィンを2種以上含有する場合には、上記含有量は、2種以上のα-オレフィンの合計含有量である。
 前記α-オレフィンは、紫外線によって生成したラジカルが付加したオレフィン同士のカップリング生成物が安定であり、ラジカル捕捉効果に優れることが推察される。
 2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンは、重合時の加熱により揮発してしまうことなく得られる樹脂組成物中に残存しやすい。そのため、単量体組成物の重合により得られる樹脂組成物の光安定性向上に充分に寄与することができる。2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種のα-オレフィンは、少ない含有量で光安定性向上の効果を発揮しやすい。後述のように、α-オレフィンによる光安定性向上効果は、二重結合に隣接する炭素に結合した水素が関与していると考えられる。そのため、同じ質量でも炭素数が少ない方がα-オレフィン1分子中で二重結合に関与する炭素原子の数が多くなるので、光安定性向上の効果を発揮しやすくなると考えられる。
 α-オレフィンとしては、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンの中でも、1-オクテン及び2-エチル-1-へキセンから選択される1種以上がより好ましく、重合後に樹脂組成物中に残存しやすいことから、1-オクテンがさらに好ましい。前記α-オレフィンに占める1-オクテンの割合は、特に限定されないが、α-オレフィンの総質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、また、通常100質量%以下である。
 本実施形態に係る単量体組成物において、遷移金属の化合物及び第13族元素の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量は、α-オレフィンの総質量に対して、0質量ppm以上2×10質量ppm以下であることが好ましい。
 本実施形態におけるα-オレフィンは、共役の単量体であるメタクリル酸メチルと比較して、共鳴安定化効果が得られず、著しく反応性が低い。そのため、遷移金属の化合物及び第13族元素の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物といった特定の重合触媒を使用し、触媒としての効果を発揮する特殊な条件下でない限り、得られる樹脂組成物中には、未反応のα-オレフィン(以下「α-オレフィン単量体」とも記す。)が残存している。α-オレフィン単量体が樹脂組成物中に残存することで、光安定性が良好な樹脂組成物を提供できると考えられる。すなわち、前記少なくとも1種の化合物が触媒としての効果を発揮しないために、前記少なくとも1種の化合物の含有量は、α-オレフィンの総質量に対して、2×10質量ppm以下であることが好ましく、1×10質量ppm以下であることがより好ましく、1,000質量ppm以下であることがさらに好ましく、500質量ppm以下であることが特に好ましく、含有しないことが特に好ましい。ここで、「含有しない」とは、検出限界未満であることを示す。
 前記少なくとも1種の化合物の種類としては、例えば、キレート性配位子を有する第5族~第11族の遷移金属の化合物やルイス酸触媒が挙げられる。前記遷移金属の具体例としては、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、白金、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、及び銅が挙げられる。前記遷移金属としては、これらの中で、第8族~第11族の遷移金属が好ましく、第10族の遷移金属がより好ましく、ニッケル(Ni)又はパラジウム(Pd)がさらに好ましい。これらの遷移金属は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
 前記キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Ittelらによる総説に、キレート性配位子の構造が例示されている(Ittelら,“Late-Metal Catalysts for Ethylene Homo- and Copolymerization”,Chemical Reviews,2000年3月25日,第100巻,第4号,p.1169-1204)。前記キレート性配位子としては、例えば、二座アニオン性P、O配位子が挙げられる。前記二座アニオン性P、O配位子としては、例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、及びリンエノラートが挙げられる。前記二座アニオン性P、O配位子以外のキレート性配位子としては、例えば、二座アニオン性N、O配位子が挙げられる。前記二座アニオン性N、O配位子としては、例えば、サリチルアルドイミナート及びピリジンカルボン酸が挙げられる。前記二座アニオン性P、O配位子及び前記二座アニオン性N、O配位子以外のキレート性配位子としては、例えば、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、及びジアミド配位子が挙げられる。
 ここで、前記キレート性配位子を有する第5属~第11族の遷移金属の化合物である触媒としては、代表的に、いわゆる、SHOP系触媒及びDrent系触媒等の触媒が知られている。前記SHOP系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である。また、前記Drent系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがパラジウム金属に配位した触媒である。
 また、代表的なルイス酸触媒としては二価のパラジウム又は白金のカチオン性錯体が挙げられる。前記二価のパラジウム又は白金のカチオン性錯体はルイス酸性を示し、Diels-Alder反応等のルイス酸触媒として有用である。また、第13族元素ホウ素及びアルミニウム、第4周期遷移金属のチタン、並びに第5周期遷移金属のジルコニウムの化合物等もルイス酸性を示すため好ましい。
<1-3.プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物>
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物は、本実施形態に係る単量体組成物に含まれる成分の1つである。前記単量体組成物の総質量に対するプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、36質量ppm超であることで、優れた光安定性を有する樹脂組成物を提供することができる。なお、単量体組成物がプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される2種以上の化合物含有する場合には、上記含有量は、これらの化合物の合計含有量を意味するものとする。具体的な例として、3つの化合物のうち1種のみを含有する場合には、1種の化合物の含有量が36質量ppm超であればよく、3種すべての化合物を含有する場合には、3種の化合物の合計含有量が36質量ppm超であればよい。
 本実施形態に係る単量体組成物の総質量に対するプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量の下限は、特に限定されないが、光安定性が良好な樹脂組成物を提供できることから、通常36質量ppm超、好ましくは40質量ppm以上、より好ましくは60質量ppm以上、さらに好ましくは70質量ppm以上、さらにより好ましくは80質量ppm以上、特に好ましくは100質量ppm以上である。
 本実施形態に係る単量体組成物の総質量に対するプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量の上限は、特に限定されないが、耐熱性を良好に維持できる樹脂組成物を提供できることから、20,000質量ppm以下であることが好ましく、15,000質量ppm以下であることがより好ましく、10,000質量ppm以下であることがさらに好ましく、6,000質量ppm以下であることがさらにより好ましく、5,000質量ppm以下であることが特に好ましい。
 上記の好ましい上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
 具体的には、本実施形態に係る単量体組成物中の、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量は、36質量ppm超20,000質量ppm以下であることが好ましく、40質量ppm以上20,000質量ppm以下であることがより好ましく、60質量ppm以上15,000質量ppm以下であることがさらに好ましく、70質量ppm以上10,000質量ppm以下であることがさらにより好ましく、80質量ppm以上6,000質量ppm以下であることが特に好ましく、100質量ppm以上5,000質量ppm以下であることが最も好ましい。
 本実施形態に係る単量体組成物において、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量に対するα-オレフィンの含有量の比(「[α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量]の比」とも呼ぶ)の上限は、特に限定されないが、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とα-オレフィンとの相互作用により、光安定性が良好な樹脂成形体を提供できる点で、1,000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましく、100以下であることがさらにより好ましく、10以下であることが特に好ましい。[α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量]の比の下限は特に限定されないが、樹脂成形体の耐熱性が良好となる観点から、0.00001以上であることが好ましく、0.0001以上であることがより好ましく、0.001以上であることがさらに好ましく、0.01以上であることがさらにより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
 上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、[α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量]の比の好ましい範囲としては、0.00001以上1,000以下、0.0001以上500以下、0.001以上300以下、0.01以上100以下、及び0.5以上10以下の範囲が挙げられる。これらのうち、[α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量]の比は、より好ましくは0.0001以上500以下であり、さらに好ましくは0.001以上300以下である。
<1-4.メタクリル酸メチル以外の単量体>
 本実施形態に係る単量体組成物は、メタクリル酸メチル以外の単量体を含有しても良い。なお、本明細書において、「単量体」は未重合の化合物を意味する。メタクリル酸メチル以外の単量体としては、例えば、下記(1)~(16)に示す単量体が挙げられる。下記(1)~(16)に示す単量体は、1種を単独で又は2種以上を任意の比率及び組み合わせで使用することができる。
(1)メタクリル酸エステル:
 例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸iso-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル、又はメタクリル酸ベンジル。
(2)アクリル酸エステル:
 例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、又はアクリル酸2-エチルヘキシル。
(3)不飽和カルボン酸:
 例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、又はイタコン酸。
(4)不飽和カルボン酸無水物:
 例えば、無水マレイン酸、又は無水イタコン酸。
(5)マレイミド:
 例えば、N-フェニルマレイミド、又はN-シクロヘキシルマレイミド。
(6)ヒドロキシ基含有ビニル単量体:
 例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、又はメタクリル酸2-ヒドロキシプロピル。
(7)ビニルエステル:
 例えば、酢酸ビニル、又は安息香酸ビニル。
(8)塩化ビニル、塩化ビニリデン、又はそれらの誘導体。
(9)窒素含有ビニル単量体:
 例えば、メタクリルアミド、又はアクリロニトリル。
(10)エポキシ基含有単量体:
 例えば、アクリル酸グリシジル、又はメタクリル酸グリシジル。
(11)芳香族ビニル単量体:
 例えば、スチレン、又はα-メチルスチレン。
(12)アルカンジオールジ(メタ)アクリレート:
 例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、又は1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート。
(13)ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート:
 例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、又はポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート。
(14)分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するビニル単量体:
 例えば、ジビニルベンゼン。
(15)エチレン性不飽和ポリカルボン酸を含む少なくとも1種の多価カルボン酸と少なくとも1種のジオールから得られる不飽和ポリエステルプレポリマー。
(16)エポキシ基の末端をアクリル変性することにより得られるビニルエステルプレポリマー。
 これらのうち、単量体は、透明性、耐熱性、及び成形性のバランスに優れる樹脂組成物を提供できる点で、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸n-ブチルからなる群より選択される少なくとも1種のアクリル酸エステルであることが好ましく、アクリル酸メチル又はアクリル酸エチルであることがより好ましい。また、このアクリル酸エステルの含有量は、単量体組成物の総質量に対して、0質量%以上30質量%以下であることが好ましい。単量体組成物中にアクリル酸エステルを含むことにより、優れた光安定性を有する樹脂組成物を提供できる。また、この樹脂組成物を含む樹脂成形体が光に長時間曝露された際の光安定性の低下を抑制することができる。また、アクリル酸エステルをスチレンに変更することで、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位(以下、「メタクリル酸メチル単位」とも称する。)及びスチレン由来の繰り返し単位(以下、「スチレン単位」とも称する。)を含有するメタクリル系重合体(P1)の製造にも適用することができる。この際、スチレンの含有量は、<3-2.メタクリル系重合体(P)>で述べるスチレン単位の含有割合を適用することができる。
<1-5.イソ酪酸メチル>
 前記単量体組成物中にはさらに、イソ酪酸メチルを含むことが好ましい。該化合物を含有することでさらに優れた光安定性を有する樹脂組成物を提供できる。これは<3-1.作用効果>で述べるα-オレフィンと特定量のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含有することによる光安定性の向上効果を一層増進させると推察される。また、この樹脂組成物を含む樹脂成形体が光に長時間曝露された際の光安定性の低下を抑制することができる。
 本実施形態に係る単量体組成物がイソ酪酸メチルを含有する場合、単量体組成物の総質量に対するイソ酪酸メチル、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量は、上述したプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量の範囲内となる量であることが好ましい。
 また、本実施形態に係る単量体組成物がイソ酪酸メチルを含有する場合、単量体組成物の総質量に対するイソ酪酸メチルの含有量は、好ましくは10質量ppm以上、より好ましくは50質量ppm以上、さらに好ましくは100質量ppm以上、特に好ましくは200質量ppm以上であり、最も好ましくは250質量ppm以上であり、また、好ましくは10,000質量ppm以下、より好ましくは8,000質量ppm以下、さらに好ましくは5,000質量ppm以下、特に好ましくは3,000質量ppm以上であり、最も好ましくは、1,500質量ppm以上である。
 上記の好ましい上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、本実施形態に係る単量体組成物の総質量に対するイソ酪酸メチルの含有量の好ましい範囲としては、10質量ppm以上10,000質量ppm以下、50質量ppm以上8,000質量ppm以下、100質量ppm以上5,000質量ppm以下、200質量ppm以上3,000質量ppm以下、及び250質量ppm以上1,500質量ppm以下の範囲が挙げられる。
<1-6.添加剤>
 本実施形態に係る単量体組成物は、その他の添加剤を含有しても良い。添加剤としては、離型剤、熱安定化剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤(α-オレフィン、イソ酪酸メチル、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチル以外のもの)、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤及び蛍光剤等の公知の添加剤が挙げられる。前記添加剤は、1種を単独で又は任意の2種以上を任意の比率及び組み合わせで組み合わせて使用することができる。
 本実施形態において、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とは、一般的に知られているUV吸収剤及びラジカル捕捉剤(HALS)とは異なる作用機序により優れた光安定性を発現すると考えられる。よって、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とをUV吸収剤及びHALS等の添加剤と併用することも可能である。単量体組成物が、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と該添加剤とを含むことにより、より光安定性が増した樹脂組成物や樹脂成形体を提供することが可能となる。
 また、本実施形態に係る単量体組成物は、メタクロレイン及びメタノールのような、メタクリル酸メチルに不可避的に混入する化合物を含んでいてよい。
<2.重合性組成物>
 本発明の第2の実施形態に係る重合性組成物は、後述する本発明の第3の実施形態に係る樹脂組成物を得るための原料の一態様である。本実施形態に係る重合性組成物(「重合性組成物(X2)」とも呼ぶ)は、例えば、前記単量体組成物及び必要に応じて公知のラジカル重合開始剤を含む重合性組成物である。
<2-1.ラジカル重合開始剤>
 ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の公知のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイド等の公知の有機過酸化物;等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を任意の比率及び組み合わせで使用することができる。また、必要に応じて、ラジカル重合開始剤と共にアミン、及びメルカプタン等の公知の重合促進剤を併用することができる。
 重合性組成物(X2)中のラジカル重合開始剤の含有量は、特に限定されるものでなく、当業者が周知技術に従い適宜決めることができる。具体的には、ラジカル重合剤の含有量は、前記重合性組成物(X2)の総質量100質量部に対して、0.005質量部以上5質量部以下であってよく、0.01質量部以上1.0質量部以下であってもよい。
<2-2.添加剤>
 添加剤の様態は、<1-6.添加剤>の記載と同様である。
 なお、添加剤は1種類であっても2種類以上であってもよい。
<3.樹脂組成物>
 本発明の第3の実施形態に係る樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称する。)は、メタクリル系重合体(P)と、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを少なくとも含有する樹脂組成物であって、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が前記樹脂組成物の総質量に対して26質量ppm超であり、前記α-オレフィンが2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、樹脂組成物である。なお、樹脂組成物がプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される2種以上の化合物含有する場合には、上記含有量は、これらの化合物の合計含有量を意味するものとする。具体的な例として、3つの化合物のうち1種のみを含有する場合には、1種の化合物の含有量が26質量ppm超であればよく、3種すべての化合物を含有する場合には、3種の化合物の合計含有量が26質量ppm超であればよい。本実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の第1の実施形態に係る単量体組成物の重合物を含む組成物であってもよく、本発明の第2の実施形態に係る重合性組成物をラジカル重合してなる組成物であってもよい。
 本実施形態に係る樹脂組成物は、メタクリル系重合体(P)を含むことで、耐熱性に優れ、透明性の良好な樹脂成形体を提供することができる。
 樹脂組成物は、メタクリル系重合体(P)を含む樹脂組成物において、α-オレフィンと、特定の含有量のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むことで、メタクリル系重合体(P)の重合鎖中に、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなるの群より選択される少なくとも1つの化合物とが単量体の状態で存在し、UVに長時間曝露されても、黄帯色の発生が抑制され、さらに、光安定性の低下が抑制された樹脂成形体を提供することができる。また、樹脂組成物の形態は特段制限されないが、通常、固体である。
 プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の様態は、<1-3.プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物>の記載と同様である。α-オレフィンの様態は、<1-2.α-オレフィン>の記載と同様である。
 樹脂組成物の総質量に対するメタクリル系重合体(P)の含有量は、特に制限されないが、耐熱性が良好となる観点から、通常80.0質量%以上であり、85.0質量%以上であることが好ましく、90.0質量%以上であることがより好ましく、95.0質量%以上であることがさらに好ましく、99.0質量%以上であることが特に好ましい。一方、この含有量は、優れた光安定性を得る観点から、通常99.99質量%以下であり、99.9785質量%以下であることが好ましく、99.97質量%以下であることがより好ましく、99.95質量%以下であることがさらに好ましく、99.90質量%以下であることが特に好ましい。上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、メタクリル系重合体(P)の好ましい含有量としては、80.0質量%以上99.99質量%以下、85.0質量%以上99.9785質量%以下、90.0質量%以上99.97質量%以下、95.0質量%以上99.95質量%以下、及び99.0質量%以上99.90質量%以下の範囲が挙げられる。なお、樹脂組成物がメタクリル系重合体(P)を2種以上含有する場合には、上記含有量は、2種以上のメタクリル系重合体(P)の合計含有量である。
 樹脂組成物の総質量に対するα-オレフィンの含有量は、特に制限されないが、優れた光安定性を得る観点から、通常0.1質量ppm以上であり、10質量ppm以上であることが好ましく、60質量ppm以上であることがより好ましく、80質量ppm以上であることがさらに好ましく、100質量ppm以上であることが特に好ましい。
 本実施形態に係る樹脂組成物の総質量に対するα-オレフィンの含有量の上限は、特に限定されないが、樹脂成形体の耐熱性が良好となる観点から、通常10,000質量ppm以下であり、5,000質量ppm以下であることが好ましく、4,000質量ppm以下であることがより好ましく、3,000質量ppm以下であることがさらに好ましく、2,000質量ppm以下であることが特に好ましい。
 上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、樹脂組成物の総質量に対するα-オレフィンの好ましい含有量としては、0.1質量ppm以上10,000質量ppm以下、10質量ppm以上5,000質量ppm以下、60質量ppm以上4,000質量ppm以下、80質量ppm以上3,000質量ppm以下、及び100質量ppm以上2,000質量ppm以下の範囲が挙げられる。これらのうち、α-オレフィンの含有量は、より好ましくは10質量ppm以上5,000質量ppm以下であり、さらに好ましくは100質量ppm以上2,000質量ppm以下である。
 本実施形態に係る樹脂組成物の総質量に対するプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量は、優れた光安定性を得る観点から、通常26質量ppm以上であり、30質量ppm以上であることが好ましく、40質量ppm以上であることがより好ましく、60質量ppm以上であることがさらに好ましく、80質量ppm以上であることが特に好ましく、100質量ppm以上であることが最も好ましい。
 本実施形態に係る樹脂組成物の総質量に対するプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量の上限は、特に限定されないが、樹脂成形体の耐熱性が良好となる観点から、20,000質量ppm以下であることが好ましく、15,000質量ppm以下であることがより好ましく、10,000質量ppm以下であることがさらに好ましく、5,000質量ppm以下であることが特に好ましく、3,000質量ppm以下であることが最も好ましい。
 上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量としては、26質量ppm超20,000質量ppm以下、30質量ppm以上20,000質量ppm以下、40質量ppm以上15,000質量ppm以下、60質量ppm以上10,000質量ppm以下お及び80質量ppm以上5,000質量ppm以下、100質量ppm以上3,000質量ppm以下の範囲が挙げられる。これらのうち、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量は、より好ましくは30質量ppm以上20,000質量ppm以下であり、さらに好ましくは40質量ppm以上15,000質量ppm以下である。
<3-1.作用効果>
 本発明の第1の実施形態に係る単量体組成物は、メタクリル酸メチルと、α-オレフィンと、特定の含有量のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含み、該単量体組成物を含む重合性組成物(X2)をラジカル重合して得られる樹脂組成物は、優れた耐熱性を担保しつつ、光安定性に優れ、黄変が抑制される。
 本発明の第1の実施形態に係る単量体組成物が特定のα-オレフィン及び特定の含有量のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含むことで、優れた耐熱性を担保しつつ、光安定性に優れ、黄変が抑制された樹脂組成物が得られる理由は、以下のように推測される。
 メタクリル酸メチルに基づく単位を含む重合体(メタクリル系重合体)は、光により主鎖又は側鎖が開裂し、ラジカル種を生成する。そして、通常は、この生成したラジカル種が、メタクリル系樹脂の黄変及び分子量低下による機械的強度低下をもたらす。
 しかし、本発明の第1の実施形態に係る単量体組成物に含まれるα-オレフィンと、特定の含有量のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物は、共役の単量体であるメタクリル酸メチルと比較して、共鳴安定化効果が得られず、著しく反応性が低い。そのため特殊な条件下でない限り、得られる樹脂組成物中には、未反応のα-オレフィン(α-オレフィン単量体とも呼ぶ)及び未反応のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物(プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物単量体とも呼ぶ)が残存している。そして、この未反応のα-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とが、前記ラジカル種を補足するラジカル捕捉剤として機能すると考えられる。これにより未反応のα-オレフィンは、二重結合部位に隣接する炭素原子に結合した水素原子が引き抜かれ、ラジカル種を補足する。
 この時、水素原子が引き抜かれた未反応のα-オレフィンに対して、未反応のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物が相互作用し水素原子を置換することで、再びα-オレフィンはラジカル捕捉剤として機能すると考えられる。したがって、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物単独の得られる樹脂組成物の光安定性向上効果だけでなく、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを併用することによる相乗効果によって、得られる樹脂組成物の光安定性は顕著に良好な光安定性を示すものと考えられる。
 本実施形態に係る樹脂組成物において、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量に対するα-オレフィンの含有量の比(「[α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量]の比」とも呼ぶ)の上限は、特に限定されないが、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とα-オレフィンとの相互作用により、樹脂成形体の光安定性が良好となる観点から、1,000以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることがさらに好ましく、100以下であることがさらにより好ましく、10以下であることが特に好ましい。[α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量]の比の下限は特に限定されないが、樹脂成形体の耐熱性が良好となる観点から、0.00001以上であることが好ましく、0.0001以上であることがより好ましく、0.001以上であることがさらに好ましく、0.01以上であることがさらにより好ましく、0.5以上であることが特に好ましい。
 上記の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、[α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量]の比の好ましい範囲としては、0.00001以上1,000以下、0.0001以上500以下、0.001以上300以下、0.01以上100以下、及び0.5以上10以下の範囲が挙げられる。これらのうち、[α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量]の比は、より好ましくは0.0001以上500以下であり、さらに好ましくは0.001以上300以下である。
 <3-2.メタクリル系重合体(P)>
 メタクリル系重合体(P)は、本実施形態に係る樹脂組成物に含まれる成分の1つである。
 樹脂組成物は、メタクリル系重合体(P)を含むことにより、透明性を向上させることができるとともに、熱や光による分解が抑制され、加熱成形性、耐熱性、及び機械的強度を良好にすることができる。さらに、メタクリル系重合体(P)が本来有している耐熱性と、α-オレフィンと、特定の含有量のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物との相乗効果により、得られる樹脂組成物の光安定性が高く、耐熱性が維持されたメタクリル系樹脂成形体を得ることが可能となる。
 メタクリル系重合体(P)におけるメタクリル酸メチル単位の含有割合は、特に制限されないが、耐熱性が良好となる観点から、該メタクリル系重合体(P)の総質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがさらにより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、通常100質量%以下である。
 メタクリル系重合体(P)は、メタクリル酸メチル単位及び必要に応じてアクリル酸エステル由来の繰り返し単位(以下、「アクリル酸エステル単位」とも称する。)又はスチレン単位を含有する共重合体メタクリル系重合体(P1)であることが好ましい。これらの共重合体の配列は特段制限されず、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、又は交互共重合体等であってよいが、ランダム共重合体が好ましい。
 前記アクリル酸エステル由来の繰り返し単位としては、炭素数1~6のアルキル基を側鎖に有するアクリル酸エステル由来の繰り返し単位である。この単位を構成する単量体としては、メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、又はアクリル酸tert-ブチル等のアクリル酸エステルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。これらの単量体の中でも、樹脂組成物を含む樹脂成形体が、高い光安定性を確保する観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸n-ブチルからなる群より選択される少なくとも1つのアクリル酸エステルであることが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルであることがより好ましい。
 メタクリル系重合体(P1)におけるメタクリル酸メチル単位の含有割合は、特に制限されないが、耐熱性が良好となる観点から、該メタクリル系重合体(P1)の総質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、通常100質量%以下である。
 メタクリル系重合体(P1)におけるアクリル酸エステル単位の含有割合は、特に制限されないが、耐熱性及び光安定性が良好となる観点から、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、通常0質量%以上である。なお、メタクリル系重合体(P1)がアクリル酸エステル単位を2種以上含有する場合には、上記の含有割合は、2種以上のアクリル酸エステル単位の合計含有割合である。
 メタクリル系重合体(P1)におけるスチレン単位の含有割合は、特に制限されないが、透明性が良好となる観点から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることがさらにより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましく、通常0質量%以上である。
 さらに、本実施形態におけるメタクリル系重合体(P)は、発明の効果が得られる範囲で、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上含む多官能性単量体由来の構造単位(以下、「多官能性単量体単位」という。)を含むことができる。
 ここでいうラジカル重合性官能基とは、炭素-炭素二重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよく、具体的には、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基などが挙げられる。特に(メタ)アクリロイル基は、ラジカル重合性官能基を有する化合物の貯蔵安定性が優れている観点や、当該化合物の重合性を制御することが容易である観点から好ましい。なお、ラジカル重合性官能基を2個有する単量体中の各ラジカル重合性官能基は、同一であっても異なっていてもよい。
 メタクリル系重合体(P)が、多官能性単量体単位を含むことにより、耐溶剤性又は耐薬品性等を向上させることができる。
 多官能性単量体としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。これらのうち、多官能性単量体は、耐溶剤性及び耐薬品性がより良好となる観点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートから選択されるものであることがより好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
 さらに、本実施形態に係る樹脂組成物においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、前記メタクリル系重合体(P)の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。前記質量平均分子量(Mw)は、樹脂成形体の使用用途等に応じて適宜設定することができる。例えば、10,000以上であってよく、100,000以上であってよく、150,000以上であってよく、また、1,000,000以下であってよく、2,000,000以下であってよく、4,000,000以下であってよい。質量平均分子量を適宜大きくすることにより、耐溶剤性及び耐薬品性を高めることができる。
 メタクリル系重合体(P)の質量平均分子量(Mw)は、重合温度、重合時間、重合開始剤の添加量、又は連載移動剤の種類や添加量等を調整することにより制御できる。
<3-3.イソ酪酸メチル>
 前記樹脂組成物中にはさらに、イソ酪酸メチルを含むことが好ましい。該化合物を含有することでさらに優れた光安定性を有する樹脂組成物を提供できる。これは<3-1.作用効果>で述べたα-オレフィンと、特定量のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含有することによる光安定性の向上効果を一層増進させると推察される。また、この樹脂組成物を含む樹脂成形体が光に長時間曝露された際の光安定性の低下を抑制することができる。
 本実施形態に係る樹脂組成物がイソ酪酸メチルを含有する場合、樹脂組成物の総質量に対するイソ酪酸メチル、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量は、上述したプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量の範囲内となる量であることが好ましい。
 また、本実施形態に係る樹脂組成物がイソ酪酸メチルを含有する場合、樹脂組成物の総質量に対するイソ酪酸メチルの含有量は、好ましくは5質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上、さらに好ましくは15質量ppm以上、特に好ましくは30質量ppm以上であり、最も好ましくは、40質量ppm以上であり、また、好ましくは20,000質量ppm以下、より好ましくは5,000質量ppm以下、さらに好ましくは1,000質量ppm以下、特に好ましくは500質量ppm以上であり、最も好ましくは、100質量ppm以上である。
 上記の好ましい上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。具体的には、本実施形態に係る樹脂組成物の総質量に対するイソ酪酸メチルの含有量の好ましい範囲としては、5質量ppm以上20,000質量ppm以下、10質量ppm以上5,000質量ppm以下、15質量ppm以上1,000質量ppm以下、30質量ppm以上500質量ppm以下、及び40質量ppm以上100質量ppm以下の範囲が挙げられる。
<3-4.樹脂組成物の特性>
 本実施形態に係る樹脂組成物は、前記メタクリル系重合体(P)と、α-オレフィンと、特定の量でプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含有しているので、光安定性に優れている。
 具体的には、樹脂組成物からなる試験片(縦50mm×横50mmの正方形状、厚さ3mm)に、以下に示すUV曝露試験を施したときに、前記試験片について、UV曝露試験の開始前からUV曝露試験開始後200時間の間に得られる、ASTM D1925に準拠して測定した黄色度(YI)が6.2以下、好ましくは6.0以下、より好ましく5.8以下、さらに好ましくは5.5以下、さらにより好ましくは5.0以下、特に好ましくは4.8以下である。
<4.樹脂成形体>
 本発明の第4の実施形態に係る樹脂成形体(単に「樹脂成形体」とも称する。)は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂組成物を含む樹脂成形体である。すなわち、本実施形態に係る樹脂成形体は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂組成物を含む。該樹脂組成物を成形する成形工程を経ることにより、メタクリル系樹脂が本来有する透明性及び耐熱性を維持しつつ、優れた光安定性を有する樹脂成形体を得ることができる。成形工程における成形方法としては、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、溶融紡糸等が挙げられる。本明細書において、樹脂成形体とは、上記の樹脂組成物を含む成形体であれば特段制限されず、樹脂組成物のみからなる成形体は、実質的に樹脂組成物及び樹脂成形体のいずれにも該当する。
 前記樹脂成形体の形状としては、以下に限定されないが、例えば粒状のペレット、板状の樹脂成形体(樹脂板)又はシート又はフィルム状の樹脂成形体(樹脂シート)が挙げられる。樹脂成形体の厚みとしては、厚い板状から薄いフィルム状まで必要に応じて任意の厚さに調整することができる。例えば厚み0.1μm以上30mm以下又は1mm以上30mm以下とすることができる。
 樹脂成形体は、上述した樹脂組成物を含むため、光安定性に優れている。すなわち、樹脂成形体は、上述したUV曝露試験の開始前からUV曝露試験開始後200時間の間に得られる、ASTM D1925に準拠して測定した黄色度(YI)が6.0以下、好ましくは5.5以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.5以下、特に好ましくは4.0以下となるような、優れた光安定性を示す。
<5.樹脂組成物又は樹脂成形体の製造方法>
 樹脂組成物、又は該樹脂組成物を含む樹脂成形体(以下、該樹脂組成物及び該樹脂成形体を総称して「樹脂組成物等」とも称する。)を製造する方法は、特段制限されない。樹脂組成物等の具体的な製造方法としては、例えば、本発明の第2の実施形態に係る重合性組成物(X2)、好ましくは本発明の第1の実施形態に係る単量体組成物を含む重合性組成物(X2)をラジカル重合するラジカル重合工程を含む方法が挙げられる。ラジカル重合工程は、重合性組成物(X2)の一部を重合してシラップを調製するシラップ調製工程、及び前記シラップ中の重合性成分を重合する重合工程を含んでいてもよい。なお、シラップ調製工程における「重合性組成物(X2)の一部を重合」とは、得られるシラップ中のメタクリル系重合体の含有量が10質量%以上80質量%以下、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下となるよう重合することを意味する。
 重合性組成物(X2)を重合する際の重合温度は、特に限定されるものでなく、当業者が周知技術に従い適宜決めることができる。通常、使用するラジカル重合開始剤の種類に応じて好ましくは40℃以上180℃以下、より好ましくは50℃以上150℃以下の範囲で適宜設定される。また、重合性組成物(X2)は必要に応じて多段階の温度条件で重合を行うことができる。重合時間は、重合硬化の進行に応じて適宜決定すればよい。
 重合性組成物(X2)の重合法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法又は分散重合法等が挙げられるが、これらの中で、生産性の点で、塊状重合法が好ましい。
 また、樹脂組成物等を製造する方法は、具体的には、例えば、セルキャスト法又は連続キャスト法等の公知のキャスト重合法を用いて、塊状重合法により樹脂組成物等を得る方法、或いは又、塊状重合法で製造した組成物を、成形して樹脂組成物等を得る方法等が挙げられる。高分子量化や架橋構造の導入により、樹脂組成物の耐熱性のさらなる向上を図ることができる観点から、キャスト重合(注型重合)法を利用した方法を採用することがより好ましい。
 キャスト重合法としては、例えば、板状の形態を有する樹脂組成物等を得る場合、対向する2枚のガラス板又は金属板(SUS板)と、その縁部に配置された軟質樹脂チューブ等のガスケットとから形成された空間を鋳型として、重合性組成物(X2)又は重合性組成物(X2)の一部を重合したシラップを前記鋳型に注入し、加熱重合処理することによって重合を完結させ、鋳型から樹脂組成物等を取り出すセルキャスト法が挙げられる。或いは又、同一方向に同一速度で所定の間隔をもって対向して走行する2枚のステンレス製エンドレスベルトと、その両側辺部に配置された軟質樹脂チューブ等のガスケットとで形成された空間を鋳型として、前記エンドレスベルトの一端から連続的に重合性組成物(X2)又は重合性組成物(X2)の一部を重合したシラップを前記鋳型の注入し、加熱重合処理することによって重合を完結させ、エンドレスベルトの他端から連続的に樹脂組成物等を取り出す連続キャスト法が挙げられる。
 鋳型の空隙の間隔を、ガスケットの太さ(直径)で適宜調整して、所望の厚さの樹脂組成物等を得ることができる。板状の樹脂組成物等の厚さは、通常は1mm以上、30mm以下の範囲に設定される。
<6.用途>
 上述した樹脂組成物及び樹脂成形体(「樹脂組成物等」)の用途は特段制限されないが、車両用部材、医療用部材、玩具、液体容器、光学材料、看板、ディスプレイ、装飾部材、建築部材、電子機器の面板のいずれかに使用される透光性を有する部材、特に透明部材として好ましく用いられる。
 以下に実施例と参考例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、以下において、「部」は「質量部」を示す。
 実施例及び参考例で使用した化合物の略号、及び名称は以下のとおりである。
・メタクリル酸メチル:メタクリル酸メチル(三菱ケミカル(株)製)
・ピルビン酸メチル(東京化成工業(株)製)
・2-メチル酪酸メチル(東京化成工業(株)製)
・プロピオン酸メチル(東京化成工業(株)製)
・1-オクテン(東京化成工業(株)製)
・2-エチル-1-ヘキセン(東京化成工業(株)製)
 なお、メタクリル酸メチル(三菱ケミカル(株)製)中には、メタクリル酸メチル総質量に対して、イソ酪酸メチルが260質量ppm、プロピオン酸メチルが8質量ppm、ピルビン酸メチルが19質量ppm、2-メチル酪酸メチルが8質量ppm含有されていた。
[測定方法及び評価方法]
<単量体組成物中の遷移金属の化合物及び第13族元素の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量測定方法>
 単量体組成物2gを精秤し、ケルダール分解フラスコに入れた。硫酸を3mL添加し、ケルダール分解装置で完全に炭化後、冷却した。ここに、硫酸2mLを入れ加熱し、冷却し、硝酸3mLを入れ再分解し、この一連の操作を3回繰り返した。
 冷却後に硝酸3mL及び過酸化水素1mLを添加して加熱後に再度冷却し、この操作を着色がなくなるまで繰り返した。ケルダールフラスコ中の硝酸、過酸化水素を加熱して揮発させた後、ケルダールフラスコ中の硫酸含有量が5mLになるように硫酸を添加し、溶液を調製した。この溶液の全量を100mLメスフラスコに移し超純水で希釈した。この溶液をICP発光分光分析装置で以下の条件下で各元素の定量を行った。
使用装置      :ICP発光分光分析装置(パーキンエルマー製、機種名:Optima 8300)
出力        :1300W
ポンプスピード   :1.0mL/min
プラズマガス流量  :10L/min
補助ガス流量    :0.2L/min
ネブライザーガス流量:0.55L/min
検出器       :SCD(分割アレイ型CCD)
積分時間      :Auto(1~5sec)
測定回数      :3回
測定方法      :絶対検量線法
観測方向      :アキシャル
<樹脂組成物中の目的物質の残存量測定方法>
(1)試料と検液の調製手順
 実施例及び参考例で得られた樹脂成形体を細かく破砕し、破砕した樹脂0.2gを10mLの残留農薬試験用アセトン(以下、単に「アセトン」と記す。)に溶解させた。樹脂が溶解した後、内部標準液をホールピペットで1mL添加した。内部標準液には0.1体積%サリチル酸メチル/アセトン溶液を用いた。対象の標準試薬をアセトンで希釈することで濃度の異なる3種類の検液を調製し、後述するガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)測定により、3点検量線を作成し、サンプル中の各ターゲット物質の含有量を定量した。内部標準液には、0.1体積%サリチル酸メチル/アセトン溶液を用いた。
(GC/MS測定条件)
装置:GC HP6890/MS HP5973(アジレント社製)
イオン化法:EI(電子イオン化、Electron Ionization)法
カラム:DB-WAX 60m×250μm×0.5μm(アジレント社製)
昇温条件:70℃(5min)→200℃(5min) Rate=10℃/min注入口温度:220℃
AUX温度:230℃
イオン源温度:230℃
スプリット比:10:1
流量:2.0mL/min
平均線速度:37cm/sec
注入量:1μL
測定モード:SIM
<耐熱性の評価方法>
 実施例及び参考例で得られた樹脂組成物の耐熱性の指標として、実施例及び参考例で得られた樹脂成形体の試験片(長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3mm)について、JIS K 7191に準拠して、荷重たわみ温度(以下、「HDT」と示す)(℃)を測定した。
[光安定性評価]
 実施例及び参考例において製造した樹脂組成物の光安定性の指標として、黄色度の変化(ΔYI)を用いた。
<光安定性試験>
 光安定性試験は、メタルハライドランプ(ダイプラ・ウィンテス(株)製、型式:MW-60W)及び光カットフィルタ(ダイプラ・ウィンテス(株)製、型式:KF-1)を備えたメタルウェザー超促進光安定性試験機(ダイプラ・ウィンテス(株)製、機種名:DW-R8PL-A)を用いて行った。具体的には、メタルウェザー超促進光安定性試験機の評価室内に、樹脂組成物からなる試験片(縦50mm×横50mmの正方形状、厚さ3mm)を設置し、メタルハライドランプから試験片に光を300時間照射した。UVの照射強度は、紫外線照度計(ウシオ電機(株)製、機種名:UVP-365-03)で測定した波長300~400nmにおける照射強度が、130mW/cmとなるように補正した。試験片には、メタルハライドランプによる可視光及びUVが照射される。メタルウェザー超促進光安定性試験機の評価室内は、温度63℃湿度50RH%の環境下となるように設定した。
<樹脂組成物の製造>
[実施例1]
(1)シラップの製造
 冷却管、温度計及び攪拌機を備えた反応器(重合釜)にα-オレフィンである、1-オクテン及びプロピオン酸メチルを加え、さらにメタクリル酸メチルを供給し、撹拌しながら窒素ガスでバブリングした後、加熱を開始した。反応器の内温が80℃になった時点で、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.12部及び連鎖移動剤として1-ドデカンチオールを0.075部添加し、更に反応器の内温が100℃になるまで加熱した後、9分間保持した。次いで、反応器の内温が室温になるまで冷却し、1-オクテンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを、それぞれ500ppm含有するシラップを得た。シラップの総質量に対し、シラップ中の重合体の含有量は25質量%であった。
(2)注型重合
 上記のシラップ100部に対し、ラジカル重合開始剤としてt-ヘキシルペルオキシピバレード0.15部を添加して、重合性組成物(X2)を得た。次いで、重合性組成物(X2)を、対向する2枚のSUS板の間のSUS板端部に軟質樹脂製ガスケットを配置して設けられた、空隙間隔6.5mmの空間に流し込み、80℃で30分、次いで130℃で30分加熱して、重合性組成物(X2)を硬化させて樹脂組成物を得た。樹脂組成物の組成を表1に示す。次いでSUS板ごと(メタ)アクリル樹脂組成物を冷却した後に、SUS板を取り除き、厚さ5mmの板状の樹脂成形体を得た。得られた樹脂成形体の特性の評価結果を表1に示す。なお、表1中、「-」は測定を行わなかったことを意味する。
[実施例2~7、参考例1~6]  
 単量体組成物の組成を表1及び表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物、及び樹脂成形体を製造した。得られた樹脂組成物の組成を表1及び表2に示す。得られた樹脂成形体の特性の評価結果を表1及び表2に示す。
 実施例1~10では、メタクリル酸メチルと、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む、単量体組成物であって、前記単量体組成物の総質量に対して、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が36質量ppm超であり、前記α-オレフィンが2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む単量体組成物を使用した。これらの単量体組成物を重合して得た樹脂組成物は、メタクリル系重合体(P)と、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む樹脂組成物であって、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が26質量ppm超であり、前記α-オレフィンが2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物であった。これらの樹脂組成物を成形して得た樹脂成形体は、メタクリル系樹脂が本来有する透明性及び耐熱性を維持しつつ、光安定性に優れていることがわかる。
 一方、参考例1、2、4、5の単量体組成物は、α-オレフィンを含むものの、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が36質量ppm以下である。参考例3の単量体組成物は、α-オレフィンを含まず、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量も36質量ppm以下である。参考例6、7の単量体組成物は、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が36質量ppm超であるものの、α-オレフィンを含まない。また、参考例1、2、4、5の樹脂組成物は、α-オレフィンを含むものの、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が26質量ppm以下である。参考例3の単量体組成物は、α-オレフィンを含まず、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量も26質量ppm以下である。参考例6、7の単量体組成物は、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が36質量ppm超であるものの、α-オレフィンを含まない。
 実施例1~10と参考例3を比べると、実施例1~10で得た樹脂成形体は、従来のメタクリル系樹脂を成形した樹脂成形体が本来有する透明性及び耐熱性と同等の性能を維持していることがわかる。
 一般的なメタクリル系樹脂成形体に求められる透明性(光照射0時間におけるYI)は0.5以下、耐熱性(HDT)は100℃以上であることから、実施例1~10で得た樹脂成形体は、一般的なメタクリル系樹脂成形体に求められる水準を上回る透明性及び耐熱性を有することがわかる。
 さらに、実施例1~10と参考例1~7とを比べると、実施例1~10で得た樹脂成形体は、参考例1~7で得た成形体よりも、光安定性も格段に高いことがわかる。
 また、実施例1~10から、単量体組成物及び樹脂組成物中にα-オレフィンと、特定量以上のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物を含む限り、その含有量によらず、透明性、耐熱性及び光安定性に優れる樹脂成形体が得られることがわかる。
 さらに、実施例10では、単量体組成物及び樹脂組成物に、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とが含まれ、なおかつ、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される化合物が2種含まれる。実施例10より、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、特定量以上であれば、いずれの化合物を選択した場合であっても、従来のメタクリル系樹脂成形体と同等の透明性及び耐熱性に加え、格段に高い光安定性を示す樹脂成形体が得られることがわかる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002

Claims (43)

  1.  メタクリル酸メチルと、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物と、を含む、単量体組成物であって、
     プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、36質量ppm超であり、
     前記α-オレフィンが、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、単量体組成物。
  2.  前記メタクリル酸メチルの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、85質量%以上である、請求項1に記載の単量体組成物。
  3.  前記メタクリル酸メチルの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、90質量%以上である、請求項1又は2に記載の単量体組成物。
  4.  前記α-オレフィンの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、0.1質量ppm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  5.  前記α-オレフィンの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、10質量ppm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  6.  前記α-オレフィンの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、60質量ppm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  7.  前記α-オレフィンの含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、80質量ppm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  8.  遷移金属の化合物及び第13族元素の化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が、前記α-オレフィンの総質量に対して、2×10質量ppm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  9.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、40質量ppm以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  10.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、60質量ppm以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  11.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、70質量ppm以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  12.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記単量体組成物の総質量に対して、100質量ppm以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  13.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量に対する前記α-オレフィンの含有量の比([前記α-オレフィンの質量]/[プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計質量])が、0.00001以上1,000以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  14.  アクリル酸エステルをさらに含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  15.  前記アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸n-ブチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である、請求項14に記載の単量体組成物。
  16.  前記アクリル酸エステルが、アクリル酸メチル又はアクリル酸エチルである、請求項14に記載の単量体組成物。
  17.  スチレンをさらに含有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  18.  イソ酪酸メチルをさらに含有する、請求項1~17のいずれか1項に記載の単量体組成物。
  19.  請求項1~18のいずれか1項に記載の単量体組成物を含む重合性組成物をラジカル重合するラジカル重合工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
  20.  請求項1~18のいずれか1項に記載の単量体組成物の重合物を含む、樹脂組成物。
  21.  メタクリル系重合体(P)と、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む、樹脂組成物であって、
     プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、26質量ppm超であり、
     前記α-オレフィンが、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、樹脂組成物。
  22.  前記メタクリル系重合体(P)が、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を、前記メタクリル系重合体(P)の総質量に対して、50質量%以上含有する、請求項21に記載の樹脂組成物。
  23.  前記メタクリル系重合体(P)が、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を、前記メタクリル系重合体(P)の総質量に対して、70質量%以上含有する、請求項21又は22に記載の樹脂組成物。
  24.  前記α-オレフィンの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、0.1質量ppm以上である、請求項21~23のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  25.  前記α-オレフィンの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、10質量ppm以上である、請求項21~24のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  26.  前記α-オレフィンの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60質量ppm以上である、請求項21~25のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  27.  前記α-オレフィンの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、80質量ppm以上である、請求項21~26のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  28.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、30質量ppm以上である、請求項21~27のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  29.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、40質量ppm以上である、請求項21~28のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  30.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60質量ppm以上である、請求項21~29のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  31.  プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、80質量ppm以上である、請求項21~30のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  32.  前記樹脂組成物中にイソ酪酸メチルをさらに含有する、請求項21~31のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  33.  前記メタクリル系重合体(P)が、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位及びアクリル酸エステル由来の繰り返し単位含む、請求項21~32のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  34.  前記メタクリル系重合体(P)が、メタクリル酸メチル由来の繰り返し単位を及びスチレン由来の繰り返し単位を含む、請求項21~32のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  35.  請求項20~34のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、樹脂成形体。
  36.  請求項35に記載の樹脂成形体を含む、車両用部材。
  37.  請求項35に記載の樹脂成形体を含む、医療用部材。
  38.  請求項35に記載の樹脂成形体を含む、玩具。
  39.  請求項35に記載の樹脂成形体を含む、液体容器。
  40.  請求項35に記載の樹脂成形体を含む、光学材料。
  41.  請求項35に記載の樹脂成形体を含む、看板。
  42.  請求項35に記載の樹脂成形体を含む、ディスプレイ。
  43.  メタクリル系重合体(P)と、α-オレフィンと、プロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルからなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含む樹脂組成物を成形する成形工程を含み、
     前記樹脂組成物中のプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル及び2-メチル酪酸メチルの合計含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、26質量ppm超であり、
     前記α-オレフィンが、2-エチル-1-へキセン、1-オクテン及び1-ドデセンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、樹脂成形体の製造方法。
     
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