WO2024106386A1 - 粘着シート - Google Patents

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健太 熊倉
哲士 本田
雅 永井田
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日東電工株式会社
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Abstract

光照射による剥離力低下性がよく、かつ溶液重合によらないポリマーに基づく光硬化性粘着剤層を有する粘着シートを提供する。光照射により硬化する粘着剤層を有する粘着シートが提供される。上記粘着剤層は、上記粘着剤層は、アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量が1.0μg/g以下である。上記粘着シートは、下記式より求められる剥離強度低下率が50%以上である。 剥離強度低下率[%]=(1-B/A)×100 (式中のAは、シリコンウエハに貼り付けた後、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される初期剥離強度であり、式中のBは、シリコンウエハに貼り付けて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った後に、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される硬化処理後剥離強度である。)

Description

粘着シート
 本発明は、粘着シートに関する。
 本出願は、2022年11月18日に出願された日本国特許出願2022-185187号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
 一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、例えば粘着剤層を有する粘着シートの形態で、様々な分野において広く利用されている。粘着シートのなかには、光照射により硬化する粘着剤層(光硬化性粘着剤層)を備えたものがある。この種の技術に関する従来技術文献として、特許文献1が挙げられる。
日本国特許出願公開2015-059179号公報
 粘着剤のなかには、被着体に一時的に接着して用いられ、その接着目的を終えた後、被着体から剥離除去されるものがある。このように被着体から剥離除去される態様で用いられる粘着剤には、被着体に接着しているあいだは良好な接着性を示し、その接着目的を終えた後には被着体から容易に剥離できる性能を有することが求められる。そのような性能を有する粘着剤として、接着固定時には所望の接着力を有しつつ、剥離除去時には剥離力を低下させることができる粘着剤が用いられ得る。例えば、紫外線照射により硬化して剥離力が低下する紫外線硬化性粘着剤層を備えた粘着シートが知られている。
 紫外線硬化性粘着剤層の作製には、一般に、紫外線照射による剥離力の低下をもたらす紫外線反応性官能基を有する成分と、該紫外線反応性官能基の反応を促す光開始剤と、を有機溶剤中に含む液状の粘着剤組成物(溶剤型粘着剤組成物)が用いられている。上記溶剤型粘着剤組成物を適当な表面に塗布し、次いで乾燥させる(有機溶媒を除去する)ことにより、上記溶剤型粘着剤組成物が固体化して紫外線硬化性粘着剤層が形成される。典型的な溶剤型粘着剤組成物は、粘着剤層を構成するベースポリマーとして、アゾ系またはペルオキシド系重合開始剤を用いた溶液重合により得られたポリマーまたはその変性物を含んでいる。そのため、上記溶剤型粘着剤組成物から形成された紫外線硬化性粘着剤層中には、通常、上記溶液重合に用いられたアゾ系またはペルオキシド系重合開始剤が、該重合開始剤の分解物や残存物の形態で存在している。
 一方、近年では、環境衛生への配慮等から、有機溶剤の使用量の削減に対する要請が強まっている。そこで本発明は、光照射による剥離力低下性がよく、かつ溶液重合によらないポリマーに基づく光硬化性粘着剤層を有する粘着シートを提供することを目的とする。
 この明細書によると、光照射により硬化する粘着剤層(光硬化性粘着剤層)を有する粘着シートが提供される。上記粘着剤層は、アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量が1.0μg/g以下である。このようにアゾ系重合開始剤とペルオキシド系重合開始剤との合計含有量を制限することにより、上記重合開始剤に起因する弊害(例えば、上記重合開始剤が熱により開裂することで、経時による粘着剤の物性変化、粘着シートが貼り付けられた被着体表面の変質や汚染、アウトガスの発生、等を引き起こす事象)を防止または抑制することができる。例えば、上記粘着剤層は、アゾ系およびペルオキシド系の重合開始剤のいずれも含有しない粘着剤層であり得る。上記粘着シートは、下記式より求められる剥離強度低下率が50%以上である。
 剥離強度低下率[%]=(1-B/A)×100
 ここで、上記式中のAは、シリコンウエハに貼り付けた後、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される初期剥離強度(単位:[N/20mm])である。上記式中のBは、シリコンウエハに貼り付けて、積算光量300mJ/cmの紫外線(UV)を照射する硬化処理を行った後に、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される硬化処理後剥離強度(単位:[N/20mm])である。
 上記粘着剤層は、アゾ系またはペルオキシド系の重合開始剤を用いた溶液重合に依存しないので、該粘着剤層を有する粘着シートによると、有機溶剤の使用量を削減することができる。また、このようにUV照射により剥離力(剥離強度)が大きく低下する粘着シートは、被着体への貼付け後に所望のタイミングで光照射を行うことにより易剥離化が可能な粘着シートとして有用である。
 いくつかの好ましい態様に係る粘着シートは、上記硬化処理後剥離強度が1.0N/20mm未満である。このように低い硬化処理後剥離強度を示す粘着シートによると、光照射による易剥離化を利用して、粘着シートを剥離する際に被着体が受ける負荷を効果的に軽減することができる。
 いくつかの態様において、上記粘着剤層は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーを含む。かかる組成の粘着剤層を有する粘着シートは、光照射によって上記ポリマーの炭素-炭素二重結合を反応させることにより効果的に剥離強度を低下させることができるので、上記剥離強度低下率を実現しやすい。
 いくつかの態様において、上記炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマーにより架橋していることが好ましい。上記ポリマーが多官能モノマーによる架橋構造を有することは、該ポリマーを含む光硬化性粘着剤層に適度な凝集性を付与する観点から有利となり得る。
 いくつかの態様において、上記粘着剤層は、1.0×10-4mol/100g以上の炭素-炭素二重結合を含む。粘着剤層に含まれる炭素-炭素二重結合の量が多くなると、光照射による特性や物性の変化を得やすくなる傾向にある。したがって、上記含有量で炭素-炭素二重結合を含む粘着剤層によると、より効果的に剥離強度を低下させ得る。
 いくつかの態様において、上記粘着剤層は、1.0×10-4mol/100g以上の光開始剤を含む。上記含有量で光開始剤を含む粘着剤層は、該粘着剤層の光硬化性がよく、良好な剥離強度低下性を発揮し得る。
 いくつかの態様において、上記粘着剤層は、積算光量300mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った後に測定されるゲル分率が70%以上であることが好ましい。上記ゲル分率が高い粘着剤層によると、光照射による易剥離化の効果が好適に発揮される傾向にある。
 上記粘着剤層は、有機溶剤の含有量が1.0μg/g以下であることが好ましい。有機溶剤の含有量が少ない粘着剤層は、低臭気であり、環境衛生の観点から望ましい。粘着剤層における有機溶剤の含有量が少ないことは、該有機溶剤の揮発に起因する発泡の抑制や、低汚染性の観点からも有利となり得る。
 なお、本明細書に記載された各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。 他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
 以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
 なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
 この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、アクリル系モノマーを50重量%より多く(好ましくは70重量%より多く、例えば90重量%より多く)含むモノマー成分に由来する重合物をいう。上記アクリル系モノマーとは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマーのことをいう。また、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
 この明細書において「エチレン性不飽和化合物」とは、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物をいう。エチレン性不飽和基の例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。以下、エチレン性不飽和基を1つ有する化合物を「単官能モノマー」ということがあり、エチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を「多官能モノマー」ということがある。また、多官能モノマーのうちエチレン性不飽和基をX個有する化合物を「X官能モノマー」のように表記することがある。
<粘着シートの構成例>
 ここに開示される粘着シートは粘着剤層を備える。この粘着剤層は、典型的には粘着シートの少なくとも一方の表面を構成している。粘着シートは、粘着剤層を基材(支持体)の片面または両面に有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、上記粘着剤層が剥離ライナー(剥離面を備える基材としても把握され得る。)に保持された形態等の基材レスの粘着シートであってもよい。この場合、粘着シートは粘着剤層のみからなるものであり得る。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。また、上記粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、本明細書により提供される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
 ここに開示される粘着剤層を有する粘着シートの一構成例を図1に示す。この粘着シート1は、粘着剤層10からなる基材レス両面粘着シートである。使用前(被着体への貼付け前)の粘着シート1は、例えば図1に示すように、粘着剤層10の各面10A,10Bが、少なくとも粘着剤層側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー31,32で保護された、剥離ライナー付き粘着シート50の形態であり得る。あるいは、剥離ライナー31の背面(粘着剤側とは反対側の表面)が剥離面となっており、剥離ライナー31の背面に粘着面10Bが当接するように巻回または積層されることで粘着面10A,10Bが保護された形態であってもよい。粘着剤層10は、単一層であってもよく、2層以上の積層構造であってもよい。
 粘着剤層10は、光照射により硬化するように構成されている。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層10は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーと光開始剤とを含む。粘着剤層10に含まれる光開始剤の量は、1.0×10-4mol/100g以上であることが好ましい。かかる含有量によると、光照射による良好な硬化性が得られやすい。同様の理由から、いくつかの態様において、粘着剤層10に含まれる炭素-炭素二重結合の量は、1.0×10-4mol/100g以上であることが好ましい。
 粘着剤層10における有機溶剤の含有量は、1.0μg/g以下であることが好ましい。炭素-炭素二重結合を有するポリマーと光開始剤とを含有し、かつ上記有機溶剤の含有量が制限された粘着剤層は、例えば、活性エネルギー線(例えば紫外線)硬化型粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させることで一次ポリマー(典型的には、活性エネルギー線重合により得られた、炭素-炭素二重結合不含有のポリマー)を含む一次粘着剤層を形成し、次いで、有機溶剤を使用しないか少量のみ(上記有機溶剤の含有量を実現し得る限度で)使用する手法によって上記一次粘着剤層への光開始剤の添加および上記一次ポリマーへの炭素-炭素二重結合の導入を行うことにより、好ましく形成することができる。かかる形成方法では、あらかじめ形成された一次粘着剤層に、光開始剤および炭素-炭素二重結合を新たに含有させるので、上記一次粘着剤層を形成するための粘着剤組成物として活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を好ましく採用することができる。上記活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物としては、有機溶媒を含まないか少量のみ(上記有機溶剤の含有量を実現し得る限度で)含むものを使用する。
 粘着剤層10は、アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量が1.0μg/g以下であることが好ましい。そのような粘着剤層10は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーとして、例えばアゾ系またはペルオキシド系の重合開始剤を用いた溶液重合を行うことなく得られたポリマー(例えば、活性エネルギー線重合により炭素-炭素二重結合不含有の一次ポリマーを得、該一次ポリマーに炭素-炭素二重結合を導入して得られたポリマー)を含む構成において、好ましく実現することができる。
 ここに開示される粘着剤層を有する粘着シートの他の一構成例を図2に示す。この粘着シート2は、一方の表面10Aが被着体への貼付面(粘着面)となっている光硬化性粘着剤層10と、粘着剤層10の他方の表面10Bに積層された基材(支持体)20と、を含む片面接着性の粘着シート(基材付き片面粘着シート)として構成されている。粘着剤層10は、基材20の一方の表面20Aに接合している。基材20としては、例えばポリエステルフィルム等の樹脂フィルムが用いられ得る。使用前の粘着シート1は、例えば図2に示すように、粘着面10Aが、少なくとも該粘着剤層側が剥離性表面(剥離面)となっている剥離ライナー30で保護された、剥離ライナー付き粘着シート50の形態であり得る。あるいは、基材20の第二面20B(第一面20Aとは反対側の表面であり、背面ともいう。)が剥離面となっており、基材20の第二面20Bに粘着面10Aが当接するように巻回または積層されることで粘着面10Aが保護された形態であってもよい。
 また、ここに開示される粘着シートは、シート状の基材の一方の表面に第1粘着剤層が積層され、上記基材の他方の表面の第2粘着剤層が積層された、基材付き両面粘着シートの形態であってもよい。かかる形態の粘着シートにおいて、第1粘着剤層および第2粘着剤層のいずれか一方または両方を、ここに開示される光硬化性粘着剤層により構成することができる。
<粘着シートの特性>
 ここに開示される粘着シートは、下記式より求められる剥離強度低下率が50%以上であることによって特徴付けられる。
 剥離強度低下率[%]=(1-B/A)×100
 ここで、上記式中のAは、シリコンウエハに貼り付けた後、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される初期剥離強度(単位:[N/20mm])である。上記式中のBは、シリコンウエハに貼り付けて積算光量300mJ/cmの紫外線(UV)を照射する硬化処理を行った後に、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される硬化処理後剥離強度(単位:[N/20mm])である。上記剥離強度低下率を満たす粘着シートは、被着体への貼付け後、所望のタイミングで光照射を行うことによって、該被着体からの剥離力(剥離強度)を大幅に低下させる(易剥離化する)ことができる。したがって、被着体に接着して用いられているあいだ(使用期間中)には良好な接着性を示し、その接着目的を終えた後には被着体から容易に剥離できる性能を有する粘着シートとして有用である。
 いくつかの態様において、上記剥離強度低下率は、好ましくは65%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、90%以上であってもよく、94%以上であってもよく、96%以上であってもよく、97%以上または98%以上であってもよい。より剥離強度低下率の高い粘着シートによると、使用期間中における良好な接着性と、光照射後における易剥離性とを、より高レベルで両立し得る。上記剥離強度低下率は、典型的には100%以下であり、100%未満であってもよく、例えば99.8%以下または99.5%以下であってもよい。剥離強度低下率が100%未満であることは、例えば、硬化処理後の粘着シートが非意図的に被着体から分離することを防ぐ観点から有利となり得る。
 ここに開示される粘着シートについて、JIS Z 0237:2000に基づいて、23℃、50%RHの環境下にて、シリコンウエハを被着体として剥離角度180度、引張速度300mm/minの条件で測定される初期剥離強度(初期粘着力)は、特に限定されず、目的や用途に応じて適切な範囲に調節し得る。上記初期粘着力は、例えば0.5N/20mm以上であってよく、0.8N/20mm以上であってもよい。所定値以上の初期粘着力を示す粘着シートは被着体によく接着することができる。そのような観点から、いくつかの態様において、上記初期粘着力は、1.0N/20mm以上(例えば、1.0N/20mm超)であることが好ましく、1.5N/20mm以上であることがより好ましく、2.0N/20mm以上であることがさらに好ましく、2.5N/20mm以上であってもよく、3.0N/20mm以上であってもよく、3.5N/20mm以上、4.0N/20mm以上または4.5N/20mm以上であってもよい。上記初期粘着力の上限は特に限定されず、例えば30N/20mm未満であってよく、他の特性とのバランスをとりやすくする等の観点から、25N/20mm以下であってもよく、20N/20mm以下であってもよく、15N/20mm以下であってもよい。なお、上記初期粘着力は、硬化処理前に測定される剥離強度である。初期粘着力は、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定される。
 ここに開示される粘着シートは、粘着剤層をシリコンウエハに貼り付け、光照射による硬化処理を実施した後に測定される硬化処理後剥離強度(硬化処理後粘着力)が2.0N/20mm以下であることが好ましく、1.0N/20mm以下であることがより好ましい。このように硬化処理後剥離力が制限された粘着シートは、硬化処理後に被着体から剥離される使用態様において、良好な剥離容易性(易剥離性)を発揮し得る。かかる観点から、いくつかの態様では、上記硬化処理後粘着力は、1.0N/20mm未満であることが好ましく、0.7N/20mm以下であることがより好ましく、0.5N/20mm以下であることがさらに好ましく、0.3N/20mm以下であってもよく、0.2N/20mm以下であってもよく、0.1N/20mm以下であってもよく、0.1N/20mm未満(例えば、0.08N/20mm以下または0.05N/20mm以下)であってもよい。硬化処理後粘着力の下限は特に制限されず、例えば0N/20mmであってもよく、0N/20mm超(例えば、0.005N/20mm以上)であってもよい。硬化処理後粘着力は、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定される。
 ここに開示される粘着シートにおいて、上記初期剥離強度[N/20mm]と上記硬化処理後剥離強度[N/20mm]との差(剥離強度差)は、例えば0N/20mm以上であってもよく、典型的には0N/20mm超であり、0.5N/20mm以上であることが好ましく、1.0N/20mm以上であることがより好ましく、1.5N/20mm以上または2.0N/20mm以上であることがさらに好ましく、3.0N/20mm以上であってもよく、4.0N/20mm以上であってもよい。このようにUV照射により剥離力が大きく低下する粘着シートは、被着体への貼付け後に所望のタイミングで光照射を行うことにより易剥離化が可能な粘着シートとして有用である。上記剥離強度差は、例えば30N/20mm未満であってもよく、他の特性とのバランスをとりやすくする等の観点から、25N/20mm未満であってもよく、20N/20mm未満であってもよく、15N/20mm未満または10N/20mm未満であってもよい。
 ここに開示される粘着シートの粘着剤層(すなわち、光照射による硬化処理を行う前の粘着剤層)について、後述の実施例に記載の方法で測定される25℃における貯蔵弾性率G’(以下、「初期弾性率G’」ともいう。)は、特に限定されないが、例えば5.0×10Pa未満であってよく、3.0×10Pa未満であることが適当であり、1.0×10Pa未満であることが有利であり、5.0×10Pa未満でもよく、1.0×10Pa未満でもよく、8.0×10Pa未満でもよく、6.0×10Pa未満でもよく、5.0×10Pa未満でもよい。粘着剤層の初期弾性率G’が低いことは、光照射によって大きな弾性率変化を得やすくなる傾向にあるので易剥離化の観点から有利であり、被着体の表面形状への追従性を高める観点からも好ましい。初期弾性率G’の下限は特に限定されず、例えば1.0×10Pa以上であり得る。いくつかの態様では、硬化処理前の粘着剤層における適度な凝集性や、該粘着剤層を有する粘着シートの加工性や取扱い性等の観点から、粘着剤層の初期弾性率G’は、5.0×10Pa以上であることが適当であり、8.0×10Pa以上であることが有利であり、1.0×10Pa以上であることが好ましく、3.0×10Pa以上であってもよく、5.0×10Pa以上であってもよい。
 ここに開示される粘着シートの粘着剤層について、後述の実施例に記載の方法で硬化処理を行った後に測定される25℃における貯蔵弾性率G’(以下、「硬化処理後弾性率G’」ともいう。)は、特に限定されないが、該粘着剤層の初期弾性率G’より高いことが好ましい。上記硬化処理後弾性率G’は、初期弾性率G’より高い値であって、かつ、例えば1.0×10Pa以上または1.0×10Pa超であってよく、3.0×10Pa以上または3.0×10Pa超であってもよく、5.0×10Pa以上または5.0×10Pa超であってもよく、1.0×10Pa以上または1.0×10Pa超であってもよい。いくつかの態様において、硬化処理後弾性率G’は、初期弾性率G’より高い値であって、かつ2.0×10Pa以上であることが適当であり、4.0×10Pa以上であることが好ましく、6.0×10Pa以上(例えば、8.0×10Pa以上、1.0×10Pa以上、1.3×10Pa以上または1.5×10Pa以上)であることがより好ましい。硬化処理後弾性率G’が高いことは、光照射による易剥離化の観点から有利である。硬化処理後弾性率G’の上限は、特に制限されず、例えば1.0×10Pa以下であってよく、1.0×10Pa以下であってもよく、5.0×10Pa以下または3.0×10Pa以下であってもよい。
 上記初期弾性率G’および上記硬化処理後弾性率G’から、下記式により粘着剤層の貯蔵弾性率増加率が算出される。
 貯蔵弾性率増加率[%]=(R/Q-1)×100
 ここで、上記式中のQは初期弾性率G’[Pa]であり、上記式中のRは硬化処理後弾性率G’[Pa]である。貯蔵弾性率増加率は、典型的には0%超(例えば2.5×10%超)であり、3.0×10%以上であることが好ましく、5.0×10%以上(例えば7.0×10%以上)であることがより好ましく、1.0×10%以上でもよく、1.5×10%以上でもよく、2.0×10%以上でもよく、2.5×10%以上でもよく、3.0×10%以上でもよい。貯蔵弾性率増加率の上限は、特に制限されない。硬化処理前において適度な凝集性を発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、上記貯蔵弾性率増加率は、例えば1.0×10%以下であってよく、1.0×10%以下であってもよく、5.0×10%以下であってもよい。
 ここに開示される粘着シートの粘着剤層について、後述の実施例に記載の方法で測定される25℃における損失弾性率G”は、特に限定されない。いくつかの態様において、例えば硬化処理前の粘着剤層において適度な粘着性を発揮しやすくする観点から、上記損失弾性率G”は、凡そ1.0×10Pa以下であることが適当であり、5.0×10Pa未満(例えば3.0×10Pa未満)であることが有利であり、1.5×10Pa未満(例えば1.0×10Pa未満)であることが好ましく、5.0×10Pa未満であってもよく、1.0×10Pa未満であってもよく、7.0×10Pa未満であってもよい。また、粘着剤層の損失弾性率G”は、例えば1.0×10Pa以上であってよく、粘着剤層に加わり得る外力をよりよく散逸させて被着体への密着を維持しやすくする観点から、5.0×10Pa以上であることが有利であり、1.0×10Pa以上であることが好ましい。かかる損失弾性率G”を有する粘着剤層は、外力(例えば、せん断方向への外力)を受けても被着体から剥がれにくい傾向にある。いくつかの態様において、上記損失弾性率G”は、3.0×10Pa以上であってもよく、5.0×10Pa以上であってもよく、7.0×10Pa以上であってもよく、1.0×10Pa以上であってもよい。
 ここに開示される粘着シートの粘着剤層について、後述の実施例に記載の方法で測定される、光照射による硬化処理を行った後のヤング率(硬化処理後ヤング率)は、特に限定されず、例えば0.05MPa超であり得る。いくつかの態様において、例えば被着体に貼り付けられた粘着シートに硬化処理を適用した後に該粘着シートを被着体から剥がす使用態様における低汚染性の観点から、上記硬化処理後ヤング率は、0.1MPa超であることが適当であり、0.5MPa超であることが有利であり、1.0MPa以上であることが好ましい。粘着剤層の硬化処理後ヤング率が高くなると、光照射後において被着体からの良好な剥離性が得られやすくなる傾向にある。例えば、被着体からの剥離時において、粘着剤層の一部が千切れて該被着体上に残る事象(糊残り)の発生を防止または抑制しやすくなる。かかる効果をより発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、上記硬化処理後ヤング率は、例えば1.2MPa以上であってよく、1.5MPa以上であってもよく、2.0MPa以上であってもよく、2.5MPa以上であってもよく、3.5MPa以上であってもよく、4.0MPa以上または4.5MPa以上であってもよい。また、上記硬化処理後ヤング率は、例えば10MPa以下であってよく、硬化処理前における良好な柔軟性との両立を容易とする観点から、7.0MPa以下であることが好ましく、5.0MPa以下であることがより好ましい。
 ここに開示される粘着シートの粘着剤層について、後述の実施例に記載の方法で測定される、光照射による硬化処理を行った後のゲル分率は、特に限定されず、例えば50%以上であってよく、60%以上または70%以上であってもよい。光照射による易剥離化の効果を好適に発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、上記ゲル分率は、80%以上であることが好ましく、82%以上であることがより好ましく、84%以上であることがさらに好ましく、86%以上であってもよく、88%以上であってもよく、90%以上であってもよい。また、硬化処理前における良好な柔軟性や粘着性との両立を容易とする観点から、いくつかの態様において、上記ゲル分率は、例えば99.5%以下であってよく、99%以下であってもよく、97%以下または95%以下であってもよい。
 <粘着剤層>
 ここに技術における粘着剤層(光硬化性粘着剤層)としては、該粘着剤層を備える粘着シートにおいて50%以上の剥離強度低下率を実現し得るものが用いられる。上記粘着剤層を構成する粘着剤の種類は、特に限定されず、例えばアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の、各種ゴム状ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。粘着性能やコスト等の観点から、アクリル系ポリマーまたはゴム系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤を好ましく採用し得る。上記剥離強度低下率を実現することのできる粘着剤の一例として、以下ではアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤について主に説明するが、ここに開示される粘着剤をアクリル系粘着剤に限定する意図ではない。
 なお、この明細書において、粘着剤層の「ベースポリマー」とは、該粘着剤層に含まれるポリマーの主成分をいう。上記ポリマーは、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すゴム状ポリマーであることが好ましい。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
 (炭素-炭素二重結合を有するポリマー)
 いくつかの好ましい態様において、粘着剤層を構成する粘着剤は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーを含む。炭素-炭素二重結合を有するポリマーを含む粘着剤層は、上記ポリマー中の炭素-炭素二重結合を光照射により反応させることを含む機構によって硬化させることができる。被着体に貼り付けられた粘着剤層に対して光照射を行うことにより、上記ポリマー中の炭素-炭素二重結合が反応することで上記粘着剤層が硬化収縮し、該粘着剤層を有する粘着シートを効果的に易剥離化することができる。なかでも、炭素-炭素二重結合を有するポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤が好ましい。
 上記ポリマー中における炭素-炭素二重結合の存在形態は、特に限定されない。上記ポリマーは、炭素-炭素二重結合を側鎖に有するポリマーであってもよく、主鎖に有するポリマーであってもよい。ここで、炭素-炭素二重結合を主鎖に有するとは、ポリマーの主鎖骨格中に炭素-炭素二重結合が存在することと、主鎖末端に炭素-炭素二重結合が存在することを包含する。炭素-炭素二重結合の反応性や、炭素-炭素二重結合の反応による弾性率向上性等の観点から、炭素-炭素二重結合を側鎖に有するポリマーを好ましく採用し得る。ここで、ポリマーの主鎖とは、当該ポリマーの骨格をなす鎖状構造を指すものとする。また、ポリマーの側鎖とは、上記主鎖と結合する基(ペンダント基、側基)や、ペンダントとみなされ得る分子鎖を指すものとする。
 いくつかの好ましい態様において、上記炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、炭素-炭素二重結合をエチレン性不飽和基の形態で有する。上記炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、例えば、下記式(1):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
(式中、Rは水素原子またはメチル基である。);
で表わされる反応性基((メタ)アクリロイル基)の形態で炭素-炭素二重結合を有するポリマーであり得る。
 炭素-炭素二重結合を有するポリマーとしては、特に限定されず、粘着剤層の特性等を考慮して適当なポリマーを選択して用いることができる。炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、例えば、炭素-炭素二重結合不含有の一次ポリマーに、化学修飾等の方法によって炭素-炭素二重結合を導入したもの(二次ポリマー)であり得る。
 一次ポリマーに炭素-炭素二重結合を導入する方法の具体例としては、官能基(以下「官能基A」ともいう。)を有するモノマーが共重合された一次ポリマーを用意し、該一次ポリマーに、上記官能基Aと反応し得る官能基(以下「官能基B」ともいう。)と炭素-炭素二重結合とを有する化合物(例えば、官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物)を、炭素-炭素二重結合が消失しないように反応させることにより、炭素-炭素二重結合が導入されたポリマ(二次ポリマー)を得る方法が挙げられる。官能基Aと官能基Bとの反応は、例えば縮合反応や付加反応等の、ラジカル発生を伴わない反応であることが好ましい。官能基Aと官能基Bとの組合せの例としては、カルボキシ基とエポキシ基との組合せ、カルボキシ基とアジリジル基との組合せ、水酸基とイソシアネート基との組合せ等が挙げられる。なかでも、反応追跡性の観点から、水酸基とイソシアネート基との組合せが好ましい。また、上記官能基A,Bの組合せは、炭素-炭素二重結合を有するポリマーが得られる組合せであれば、上記組合せ中における一方の官能基を官能基Aとし、他方を官能基Bとしてもよく、あるいは上記一方の官能基を官能基Bとし、上記他方を官能基Aとしてもよい。例えば、水酸基とイソシアネート基との組合せで説明すると、一次ポリマーの有する官能基Aは、水酸基であってもよく(その場合、官能基Bがイソシアネート基となる。)、イソシアネート基であってもよい(その場合、官能基Bが水酸基となる。)。なかでも、一次ポリマーが水酸基を有し、上記炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物(好ましくは、官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物)がイソシアネート基を有する組合せが好ましい。この組合せは、上記一次ポリマーがアクリル系ポリマーである場合に特に好ましい。
 一次ポリマーの官能基Aと、炭素-炭素二重結合を有する化合物の官能基Bとを反応させるにあたり、上記官能基Aのモル(M)と上記官能基Bのモル(M)とのモル比(M/M)は、両者の反応性の観点から、通常は0.2以上とすることが適当であり、0.5以上(例えば0.7以上、典型的には1.0以上)とすることが好ましく、1.0超(例えば1.1以上)としてもよく、1.2以上としてもよい。上記モル比(M/M)は、通常は2000以下(例えば、1500以下または1000以下)とすることが適当であり、500以下とすることが有利であり、200以下でもよく、100以下でもよく、50以下でもよい。いくつかの態様において、上記モル比(M/M)は、30以下であることが好ましく、20以下でもよく、10以下でもよく、5.0以下でもよく、3.0以下でもよく、2.5以下でもよく、2.0以下でもよく、1.5以下でもよい。また、官能基Aと官能基Bとの接触機会を高める観点から、炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物を多めに使用してもよく、その場合、モル比(M/M)は1未満(例えば0.99未満、0.95未満)とすることが好ましい。また、例えば余剰の官能基Aを他の目的(例えば、硬化処理前の光硬化性粘着剤層の接着性向上等)にも利用する場合には、モル比(M/M)は、1よりも大きいことが好ましい。
 上記炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物(好ましくは、官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物)の使用量は、官能基Aを有するポリマー(典型的には、炭素-炭素二重結合が導入される前のポリマー)100重量部に対して、例えば凡そ0.001重量部以上、凡そ0.01重量部以上または凡そ0.1重量部以上とすることができ、凡そ0.5重量部以上(例えば凡そ1.0重量部以上)とすることが適当であり、好ましくは凡そ3.0重量部以上、より好ましくは凡そ5.0重量部以上であり、凡そ7.0重量部以上でもよく、凡そ9.0重量部以上でもよく、凡そ10重量部以上でもよく、凡そ12重量部以上でもよい。また、炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物の使用量は、官能基Aを有するポリマー(典型的には、炭素-炭素二重結合が導入される前のポリマー)100重量部に対して、凡そ40重量部以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ35重量部以下、より好ましくは凡そ30重量部以下であり、凡そ25重量部以下でもよく、凡そ20重量部以下でもよく、凡そ17重量部以下でもよい。上記使用量は、上述のモル比(M/M)を満たすように設定することが好ましい。例えば、ポリマーとして後述のアクリル系ポリマーを用いる構成に対して、上述のモル比(M/M)や、炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物の使用量を好ましく適用することができる。
 (炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー)
 ここに開示される光硬化性粘着剤層は、光照射による硬化容易性等の観点から、上記炭素-炭素二重結合を有するポリマーとしてアクリル系ポリマー(すなわち、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー)を含む態様で好ましく実施することができる。アクリル系ポリマーは、モノマー原料の選択の自由度が高く、物性の制御が容易である点でも有利である。炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーおよび該アクリル系ポリマーを含む粘着剤層は、後述するように有機溶剤に依存しない手法による製造に適するという観点からも好ましい。
 炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーは、一次ポリマーとしてのアクリル系ポリマー(典型的には、炭素-炭素二重結合不含有のアクリル系ポリマー)を化学修飾することで炭素-炭素二重結合が導入されたものであり得る。アクリル系ポリマーへの炭素-炭素二重結合の導入方法は特に限定されない。例えば、アクリル系ポリマー中に共重合によって導入された官能基(官能基A)と、該官能基Aと反応し得る官能基(官能基B)および炭素-炭素二重結合を有する化合物とを、炭素-炭素二重結合が消失しないように反応(典型的には縮合、付加反応)させる方法を好ましく採用することができる。官能基Aと官能基Bとの組合せの例としては、カルボキシ基とエポキシ基との組合せ、カルボキシ基とアジリジル基との組合せ、水酸基とイソシアネート基との組合せ等が挙げられる。なかでも、反応追跡性の観点から、水酸基とイソシアネート基との組合せが好ましい。ポリマー設計等の観点から、アクリル系ポリマーが水酸基を有し、上記化合物がイソシアネート基を有する組合せが特に好ましい。また、上記官能基Bおよび炭素-炭素二重結合を有する化合物は、光硬化性粘着剤層の光硬化性等の観点から、官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
 官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物の一好適例として、イソシアネート基含有モノマー(イソシアネート基含有化合物)が挙げられる。イソシアネート基含有モノマーの具体例としては、アクリル系ポリマーの重合に用いられ得る副モノマーとして後述するもの等が挙げられる。なかでも、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートがより好ましい。イソシアネート基含有モノマーのイソシアネート基(官能基B)と、アクリル系ポリマーの水酸基(官能基A)とが反応して結合(典型的にはウレタン結合)することにより、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーが好適に実現される。
 イソシアネート基含有モノマーの使用量は、上記官能基Aとしての水酸基との反応性の観点から、上述のモル比(M/M)を満たす範囲で適切に設定され得る。例えば、水酸基を有するアクリル系ポリマー(一次ポリマー)100重量部に対して、イソシアネート基含有モノマーの使用量は、凡そ1重量部以上(例えば3重量部以上)とすることが適当であり、硬化処理による効果(例えば、剥離強度を低下させる効果)をよりよく発揮しやすくする観点から、5重量部以上(例えば7重量部以上)とすることが好ましく、8.5重量部以上としてもよく、10重量部以上としてもよく、12重量部以上としてもよい。イソシアネート基含有モノマーの使用量の上限は特に限定されず、上記水酸基を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して、凡そ40重量部以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ35重量部以下、より好ましくは凡そ30重量部以下であり、例えば凡そ25重量部以下であってもよい。
 官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物の他の一好適例として、水酸基含有モノマーが挙げられる。水酸基含有モノマーの具体例としては、アクリル系ポリマーの重合に用いられ得る副モノマーとして後述するものが挙げられる。例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)や4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、なかでも4HBAが好ましい。水酸基含有モノマーの水酸基(官能基B)と、アクリル系ポリマーのイソシアネート基(官能基A)とが反応して結合(典型的にはウレタン結合)することにより、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーが好適に実現される。官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物としての水酸基含有モノマーの使用量は、上記官能基Aとしてのイソシアネート基との反応性の観点から、上述のモル比(M/M)を満たす範囲で適切に設定され得る。
 官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物の他の例として、エポキシ基含有モノマーが挙げられる。エポキシ基含有モノマーの具体例としては、アクリル系ポリマーの重合に用いられ得る副モノマーとして後述するものが挙げられる。例えば、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。エポキシ基含有モノマーのエポキシ基(官能基B)と、アクリル系ポリマーのカルボキシ基(官能基A)とが反応して結合することにより、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーが好適に実現される。官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物としてのエポキシ基含有モノマーの使用量は、上記官能基Aとしてのカルボキシ基との反応性の観点から、上述のモル比(M/M)を満たす範囲で適切に設定され得る。いくつかの態様において、モル比(M/M)を1より大きくすることにより、余剰のカルボキシ基による効果(例えば、光硬化性粘着剤層を硬化処理する前における剥離強度の向上、硬化処理前および/または硬化処理後における凝集性や耐熱性の向上等)を利用することができる。かかる態様において、モル比(M/M)は、例えば1.1以上とすることができ、1.5以上または2.0以上としてもよい。
 一次ポリマーとしてのアクリル系ポリマーは、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物であり得る。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
 アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(2)で表される化合物を好適に用いることができる。
 CH=C(R)COOR     (2)
 ここで、上記式(2)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。)である。粘着剤層の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1-14(例えばC1-12)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、Rが水素原子であってRがC1-20(例えばC1-14、典型的にはC1-12)の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。
 RがC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、エチルアクリレート(EA)、n-ブチルアクリレート(BA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、ラウリルアクリレート(LA)が挙げられる。
 いくつかの好ましい態様において、上記アルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素原子数が9以下であるアルキル(メタ)アクリレートA1(すなわち、RがC1-9のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート)を含む。このように側鎖アルキル基の長さが制限された構成によると、光照射による剥離力低下に適した光硬化性粘着剤層が得られやすい。例えば、炭素-炭素二重結合を有するポリマーとして側鎖(典型的には側鎖末端)に炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを含む光硬化性粘着剤層においては、側鎖アルキル基の長さが制限されていることにより、光照射による硬化処理時に炭素-炭素二重結合の反応が円滑に進行し得る。
 アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA1の配合割合は、凡そ10重量%以上であることが適当であり、アルキル(メタ)アクリレートA1の作用を好ましく発現させる観点から、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは55重量%以上であり、65重量%以上であってもよく、75重量%以上であってもよく、80重量%以上であってもよく、85重量%以上であってもよく、90重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよい。全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA1の配合割合の上限は、特に限定されない。いくつかの態様では、副モノマー(例えば、官能基Aを有するモノマー)の使用量との兼ね合いを考慮して、全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA1の配合割合は、凡そ99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが適当であり、95重量%以下とすることが好ましく、92重量%以下であってよく、90重量%以下であってもよく、85重量%以下であってもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよく、70重量%以下でもよい。
 主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレート全体に占めるアルキル(メタ)アクリレートA1の含有割合は、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)であることが適当であり、アルキル(メタ)アクリレートA1の作用を好ましく発現させる観点から、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、95重量%以上であってもよく、99~100重量%であってもよい。
 いくつかの好ましい態様において、上記アルキル(メタ)アクリレートA1は、アルキル基の炭素原子数が8未満であるアルキル(メタ)アクリレートA3を含む。アルキル(メタ)アクリレートA3は、例えば、金属等の極性被着体に対する接着性の向上に役立ち得る。アルキル(メタ)アクリレートA3におけるアルキル基の炭素原子数は、典型的には7以下であり、好ましくは6以下、より好ましくは4以下であり、2以下であってもよい。いくつかの態様では、硬化処理前の光硬化性粘着剤層における柔軟性等の観点から、アルキル(メタ)アクリレートA3におけるアルキル基の炭素原子数は、2以上であることが好ましい。
 全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA3の配合割合は、凡そ10重量%以上であることが適当であり、アルキル(メタ)アクリレートA3の作用を好ましく発現させる観点から、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上であり、60重量%以上であってもよく、70重量%以上であってもよく、80重量%以上でもよく、90重量%以上でもよい。全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA3の配合割合の上限は、特に限定されない。いくつかの態様では、副モノマーの使用量との兼ね合いを考慮して、全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA3の配合割合は、凡そ99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが適当であり、95重量%以下とすることが好ましく、90重量%以下または80重量%以下としてもよく、70重量%以下としてもよく、60重量%以下としてもよく、50重量%以下としてもよく、30重量%以下、15重量%以下、10重量%以下または5重量%以下としてもよい。
 主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレート全体に占めるアルキル(メタ)アクリレートA3の含有割合は、凡そ5重量%以上であることが適当であり、アルキル(メタ)アクリレートA3の作用を好ましく発現させる観点から、好ましくは20重量%以上、より好ましくは35重量%以上、さらに好ましくは45重量%以上、特に好ましくは55重量%以上であり、65重量%以上であってもよく、75重量%以上であってもよく、85重量%以上(例えば90重量%以上)であってもよい。上記アルキル(メタ)アクリレート全体に占めるアルキル(メタ)アクリレートA3の含有割合の上限は100重量%である。いくつかの態様では、例えば後述するアルキル(メタ)アクリレートA2を含む場合にその作用を好ましく発現させる観点から、アルキル(メタ)アクリレート全体に占めるアルキル(メタ)アクリレートA3の含有割合は、例えば90重量%以下であってよく、75重量%以下であってもよく、60重量%以下であってもよく、45重量%以下であってもよく、30重量%以下であってもよく、15重量%以下であってもよい。
 いくつかの態様において、上記アルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素原子数が5以上であるアルキル(メタ)アクリレートA2を、上記アルキル(メタ)アクリレートA1またはA3として、あるいはアルキル(メタ)アクリレートA1またはA3とは異なるモノマーとして含む。アルキル(メタ)アクリレートA2を用いることで、例えば硬化処理後の粘着力を低下させやすく、より優れた易剥離性や低汚染性が得られやすい。アルキル(メタ)アクリレートA2におけるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは7以上(例えば8以上)であり、9以上であってもよい。接着力等の粘着特性の観点から、アルキル(メタ)アクリレートA2におけるアルキル基の炭素原子数は、好ましくは14以下、より好ましくは12以下であり、10以下または9以下であってもよい。
 アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA2の配合割合は、凡そ10重量%以上であることが適当であり、アルキル(メタ)アクリレートA2の作用を好ましく発現させる観点から、好ましくは凡そ20重量%以上、より好ましくは凡そ40重量%以上、さらに好ましくは凡そ55重量%以上、特に好ましくは凡そ65重量%以上であり、例えば凡そ75重量%以上であってもよく、凡そ80重量%以上であってもよく、凡そ85重量%以上であってもよく、凡そ90重量%以上であってもよく、凡そ95重量%以上であってもよい。全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA2の配合割合は、特に限定されない。いくつかの態様では、副モノマーの使用量との兼ね合いを考慮して、全モノマー成分中におけるアルキル(メタ)アクリレートA2の配合割合は、凡そ99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが適当であり、95重量%以下とすることが好ましく、90重量%以下または80重量%以下としてもよく、70重量%以下としてもよく、60重量%以下としてもよく、50重量%以下としてもよく、30重量%以下、15重量%以下、10重量%以下または5重量%以下としてもよい。
 主モノマーとしてのアルキル(メタ)アクリレート全体に占めるアルキル(メタ)アクリレートA2の含有割合は、例えば凡そ1重量%以上であってよく、アルキル(メタ)アクリレートA2の作用を好ましく発現させる観点から、好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは25重量%以上、特に好ましくは35重量%以上であり、45重量%以上であってもよく、60重量%以上であってもよく、80重量%以上(例えば90重量%以上)であってもよい。上記アルキル(メタ)アクリレート全体に占めるアルキル(メタ)アクリレートA2の含有割合の上限は100重量%である。いくつかの態様では、例えばアルキル(メタ)アクリレートA3を含む場合にその作用を好ましく発現させる観点から、アルキル(メタ)アクリレート全体に占めるアルキル(メタ)アクリレートA2の含有割合は、例えば90重量%以下であってよく、75重量%以下であってもよく、60重量%以下であってもよく、45重量%以下であってもよく、30重量%以下であってもよく、15重量%以下であってもよい。
 アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分中における主モノマーの配合割合は、55重量%以上であることが好ましく、60重量%以上(例えば65重量%以上)であることがより好ましい。主モノマーの配合割合の上限は特に限定されない。いくつかの態様では、副モノマーの使用量との兼ね合いを考慮して、主モノマーの配合割合は、例えば99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが適当であり、95重量%以下としてもよく、90重量%以下、85重量%以下または凡そ75重量%以下としてもよい。
 主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、例えば、一次ポリマーまたは二次ポリマーとしてのアクリル系ポリマーの凝集力を高めたり、該ポリマーに架橋点を導入したりするために役立ち得る。後述する炭素-炭素二重結合を有する化合物の官能基(官能基B)と反応し得る官能基(官能基A)を有するモノマーを、副モノマーの少なくとも一部として採用することが好ましい。副モノマーとしては、例えば以下のような官能基含有モノマー成分を、1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。官能基Aを有するモノマーと、他の官能基を有するモノマーとを併用してもよい。
 水酸基含有モノマー:例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテル等のエーテル系化合物。
 イソシアネート基含有モノマー:(メタ)アクリロイルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート。
 カルボキシ基含有モノマー:例えばアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)。
 アミド基含有モノマー:例えば(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド。
 アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート。
 エポキシ基含有モノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル。
 シアノ基含有モノマー:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル。
 ケト基含有モノマー:例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート。
 窒素原子含有環を有するモノマー:例えばN-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリン。
 アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン。
 炭素-炭素二重結合を有する化合物の官能基(官能基B)と反応し得る官能基(官能基A)を有する副モノマーを用いる場合、該副モノマーの種類は、官能基Bの種類に応じて選択し得る。官能基Aを有する副モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマーが好ましい。
 いくつかの態様において、官能基Aを有する副モノマーとしては、官能基Bを有する化合物との反応性等の観点から、水酸基含有モノマーが好ましく用いられ得る。副モノマーとして水酸基含有モノマーを用いることで、得られるアクリル系ポリマー(一次ポリマー)は水酸基を有する。これに対して、炭素-炭素二重結合を有する化合物としてイソシアネート基を有する化合物を用いることで、上記アクリル系ポリマーの水酸基と上記化合物のイソシアネート基とが反応し、上記化合物に由来する炭素-炭素二重結合が上記アクリル系ポリマーに導入されて、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー(二次ポリマー)が得られる。水酸基含有モノマーの好適例として、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)や4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも4HBAが好ましい。
 上記副モノマーの量は、所望の使用目的(官能基Bとの反応点の導入、光硬化性粘着剤層の凝集性や粘着特性の調節等)が達成されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、光硬化性粘着剤層に対して光照射(硬化処理)を行うことによる効果(例えば、剥離力を低下させる効果)を好適に発揮しやすくする観点から、上記副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは0.3重量%以上(例えば1重量%以上)である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の70重量%以下(例えば60重量%以下)とすることが適当であり、いくつかの態様では、光硬化性粘着剤層の柔軟性等の観点から、50重量%以下とすることが好ましく、45重量%以下とすることがより好ましく、40重量%以下としてもよく、30重量%以下としてもよく、20重量%以下、10重量%以下または5重量%以下としてもよい。
 炭素-炭素二重結合を有する化合物(好ましくは、官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物)との反応を目的として、官能基Aを有する副モノマーを使用する場合、上記官能基Aを有する副モノマー(官能基Bの種類に応じて、例えば水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等)の量は、硬化処理(典型的には光照射処理)による剥離強度低下性等の観点から、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは12重量%以上(例えば14重量%以上)である。また、硬化処理前の粘着剤層(光硬化性粘着剤層)において接着性等の粘着特性を良好に保つ観点から、上記官能基Aを有する副モノマーの量は、全モノマー成分中の50重量%以下(例えば40重量%以下)とすることが適当であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは25重量%以下であり、20重量%以下であってもよく、15重量%以下であってもよい。
 いくつかの態様において、上記副モノマーとして窒素原子含有環を有するモノマーを好ましく使用し得る。窒素原子含有環を有するモノマーは、光硬化性粘着剤層の初期状態(硬化処理前)における剥離強度の向上に役立ち得る。また、光硬化性粘着剤層に光照射(硬化処理)を行うことによる剥離強度の低下幅(剥離強度差)を大きくする観点からも有利となり得る。窒素原子含有環を有するモノマーの具体例は上述のとおりであり、好適例としてN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)およびN-アクリロイルモルホリン(ACMO)が挙げられる。窒素原子含有環を有するモノマーの使用量は、アクリル系ポリマー(一次ポリマー)の原料として用いられる全モノマー成分中、例えば0.5重量%以上または1重量%以上とすることができ、より高い使用効果を得る観点から3重量%以上とすることが適当であり、5重量%以上とすることが有利であり、10重量%以上としてもよく、12重量%以上としてもよく、17重量%以上または20重量%以上としてもよい。また、窒素原子含有環を有するモノマーの使用量は、アクリル系ポリマー(一次ポリマー)の原料として用いられる全モノマー成分中、例えば40重量%以下とすることができ、光硬化性粘着剤層の柔軟性の観点から、いくつかの態様では35重量%以下とすることが適当であり、30重量%以下(例えば28重量%以下)とすることが好ましい。
 また、アクリル系ポリマーの凝集力を高める等の目的で、上述した副モノマー以外の他の共重合成分を必要に応じて用いることができる。かかる共重合成分としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α-メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート等、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。これら副モノマー以外の他の共重合成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記他の共重合成分の量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分中の20重量%以下(例えば2~20重量%、典型的には3~10重量%)とすることが好ましい。
 上記他の共重合成分として、多官能モノマーを用いてもよい。多官能モノマーの例としては、1分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する各種の多官能(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の多官能ビニル系モノマー、アリル(メタ)アクリレートやビニル(メタ)アクリレートのように(メタ)アクリロイル基と他のエチレン性不飽和基とを組み合わせて有する多官能性モノマー、等が挙げられる。多官能モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、多官能(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、およびビニル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとしては、1種類の多官能(メタ)アクリレートを単独で用いてもよいし、2種類以上の多官能(メタ)アクリレートを組み合わせて用いてもよい。いくつかの態様において、アクリル系ポリマーのための多官能(メタ)アクリレートとして、好ましくは、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が用いられる。
 多官能モノマーを含むモノマー成分を重合させることにより、典型的には、該多官能モノマーにより架橋した構造のアクリル系ポリマー(一次ポリマー)が得られる。すなわち、上記多官能モノマーは、共重合性架橋剤として機能し得る。かかる構造のアクリル系ポリマーに炭素-炭素二重結合を導入することにより、炭素-炭素二重結合を有し、かつ多官能モノマーにより架橋した構造のアクリル系ポリマー(二次ポリマー)が得られる。炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーが架橋構造を有することは、該ポリマーを含む光硬化性粘着剤層に適度な凝集性を付与する観点から有利となり得る。炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む光硬化性粘着剤層では、上記アクリル系ポリマーが架橋していることが特に有意義である。
 上記他の共重合成分としての多官能モノマー(共重合性架橋剤)の使用量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマー(一次ポリマー)を構成する全モノマー成分中、0.001重量%以上とすることができ、より高い使用効果を得やすくする観点から、0.005重量%以上とすることが好ましく、0.007重量%以上とすることがより好ましく、0.01重量%以上としてもよく、0.03重量%以上としてもよい。また、光硬化性粘着剤層を硬化処理することによる効果(例えば、剥離強度を低下させる効果)を好適に発揮しやすくする観点や、光硬化性粘着剤層の柔軟性等の観点から、多官能モノマーの使用量は、アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分中、例えば10重量%以下とすることができ、5重量%以下とすることが有利であり、5重量%未満とすることが好ましく、3重量%以下としてもよく、1重量%以下としてもよい。いくつかの態様において、多官能モノマーの使用量は、アクリル系ポリマー(典型的には、一次ポリマーとしてのアクリル系ポリマー)を構成する全モノマー成分中、1重量%未満(例えば0.9重量%以下)とすることが好ましく、0.5重量%以下とすることがより好ましく、0.3重量%以下としてもよく、0.2重量%以下としてもよく、0.1重量%以下(例えば0.1重量%未満)としてもよく、0.09重量%以下、0.08重量%以下または0.07重量%以下としてもよい。一次ポリマーの共重合成分として用いられる多官能モノマーの使用量が多すぎないことは、光硬化性粘着剤層を硬化処理(例えば、紫外線照射処理)することによる効果(例えば、易剥離化効果)を好適に発揮しやすくする観点から有利となり得る。
 上述のようなモノマー成分からアクリル系ポリマー(一次ポリマー)を得る方法は、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法から選択し得る。有機溶剤の使用を避ける観点から、溶液重合(例えば、アゾ系重合開始剤またはペルオキシド系重合開始剤を用いて行われる溶液重合)以外の重合方法を採用することが好ましい。いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマー(一次ポリマー)は、該ポリマーを構成するモノマー成分の一部を重合物の形態で含み、残部を未重合物(未反応のモノマー)の形態で含む活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を硬化させて得ることができる。例えば、上記活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を適宜の表面に塗工し、活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射して硬化させることにより、上記モノマー成分から形成されたアクリル系ポリマーを含む粘着剤層(一次粘着剤層)が得られる。上記アクリル系ポリマーは、上記モノマー成分の活性エネルギー線重合物である。一般的に、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物に含まれる炭素-炭素二重結合(例えば、エチレン性不飽和結合)は、該粘着剤組成物を硬化させて粘着剤層を形成する際の活性エネルギー線照射により反応して消失する。したがって、上記の方法によると、典型的には炭素-炭素二重結合を含まない粘着剤層(一次粘着剤層)が形成される。
 いくつかの態様では、この一次粘着剤層に対し、該粘着剤層中のアクリル系ポリマー(炭素-炭素二重結合不含有のアクリル系ポリマー)に炭素-炭素二重結合を導入し、必要に応じて適量の光開始剤を添加する。これにより、上記一次粘着剤層に光硬化性を付与して、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーおよび所定量以上の光開始剤を含む光硬化性粘着剤層(二次粘着剤層)を得ることができる。上記炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーは、上記モノマー成分の活性エネルギー線重合物に化学修飾により炭素-炭素二重結合を導入してなるアクリル系ポリマーであって、上記活性エネルギー線重合物の変性物に該当する。一次粘着剤層から二次粘着剤層を得る方法のいくつかの好適例については後述する。
 いくつかの好ましい態様において、一次粘着剤層を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分(原料モノマー)の少なくとも一部を含むモノマー混合物の部分重合物を含む。このような部分重合物は、上記モノマー混合物に由来する重合物と未反応のモノマーとの混合物であって、典型的にはシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「モノマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。
 上記重合反応物を得る際の重合方法は特に制限されず、公知の各種重合方法を適宜選択して用いることができる。有機溶剤の使用を避ける観点から、溶液重合(例えば、アゾ系重合開始剤またはペルオキシド系重合開始剤を用いて行われる溶液重合)以外の方法を採用することが好ましい。なかでも、効率や簡便性の観点から、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、上記モノマー混合物の重合転化率を容易に制御することができる。
 上記部分重合物におけるモノマー混合物の重合転化率(モノマーコンバーション)は、特に限定されない。上記重合転化率は、例えば凡そ70重量%以下とすることができ、凡そ60重量%以下とすることが好ましい。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常、上記重合転化率は、凡そ50重量%以下が適当であり、凡そ40重量%以下(例えば凡そ35重量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には凡そ1重量%以上であり、通常は凡そ5重量%以上とすることが適当である。
 上記モノマー混合物の部分重合物を含む粘着剤組成物は、例えば、原料モノマーのうち単官能モノマーの一部または全部を含むモノマー混合物を適当な重合方法(例えば光重合法)により部分重合させることによって得ることができる。上記部分重合物を含む粘着剤組成物には、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光開始剤、共重合性架橋剤としての多官能モノマーなど)が配合され得る。そのような他の成分を配合する方法は特に限定されず、例えば上記モノマー混合物にあらかじめ含有させてもよく、上記部分重合物に添加してもよい。
 ここに開示される粘着剤組成物は、モノマー成分(原料モノマー)のうち一部の種類のモノマーを含むモノマー混合物の部分重合物または完全重合物が、残りの種類のモノマーまたはその部分重合物に溶解した形態であってもよい。このような形態の粘着剤組成物も、モノマー成分の重合物と未重合物とを含む粘着剤組成物の例に含まれる。なお、本明細書において「完全重合物」とは、重合転化率が95重量%超であることをいう。
 (第1の光開始剤)
 一次粘着剤層を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物には、硬化促進等の目的で、光開始剤を含有させることができる。活性エネルギー線として紫外線等の光を利用する場合は、粘着剤組成物に光開始剤を配合することが特に好ましい。粘着剤組成物に含有させる光開始剤としては、ここに開示される粘着シートの粘着剤層(光硬化性粘着剤層)に含まれる光開始剤として用いられ得る材料の例示から選択される1種または2種以上を用いることができる。なお、粘着剤組成物に配合された上記光開始剤は、上述のモノマー成分や架橋剤の重合・架橋反応を進行させてアクリル系ポリマーを形成するための触媒として機能するものである。したがって、上記光開始剤は、上記粘着剤組成物から粘着剤層(一次粘着剤層)を形成する際の活性エネルギー線照射(典型的には紫外線照射)により失活・分解し、ここに開示される粘着シートの粘着剤層には残っていないか、残っているとしても痕跡量程度と考えられる。一方、ここに開示される粘着シートの粘着剤層(光硬化性粘着剤層)に含まれる光開始剤は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーとともに上記粘着剤に含まれるものであり、上記炭素-炭素二重結合による架橋反応を促進するものである。以下、粘着剤組成物に含有されて該粘着剤組成物から粘着剤層を形成するための光開始剤を「第1の光開始剤」ということがある。また、ここに開示される粘着シートの有する粘着剤層(光硬化性粘着剤層)に含有されて該粘着剤層の光硬化に用いられる光開始剤を「第2の光開始剤」ということがある。第1の光開始剤と第2の光開始剤とは、同種の材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
 (触媒)
 いくつかの態様において、一次粘着剤層には、官能基Aと官能基Bとの反応を促進する触媒を含有させることができる。例えば、イソシアネート基と水酸基との付加反応の促進に用いられ得る触媒として、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系触媒等が例示される。また、例えばカルボキシ基とエポキシ基との付加反応の促進に利用し得る触媒として、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラベンジルアンモニウムブロミド等の第4級アンモニウム化合物やその誘導体;トリフェニルホスフィン(TPP)等のリン系化合物やその誘導体;ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物やその誘導体;2-エチル-4-メチル-イミダゾール等のイミダゾール系化合物やその誘導体;等が例示される。上記触媒の使用量は特に制限されず、官能基Aと官能基Bとの反応を適切に促進し得るように設定することができる。いくつかの態様において、上記触媒の使用量は、一次粘着剤層100g当たり、例えば0.05~15g程度とすることができ、0.1~10g程度としてもよく、0.5~5g程度としてもよい。
 一次粘着剤層を形成するための粘着剤組成物(例えば、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)に上記触媒を含ませておくことにより、該触媒を含む一次粘着剤層を容易に得ることができる。例えば、官能基Aを有する一次ポリマー(好ましくはアクリル系ポリマー)および上記触媒を含む一次粘着剤層に、官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物を浸透させ、次いで上記触媒の存在下で上記官能基Aと上記官能基Bとを反応させることにより、炭素-炭素二重結合を有するポリマー(上記一次ポリマーの化学修飾による変性物)を効率よく得ることができる。上記官能基Aと上記官能基Bとの反応を上記触媒の存在下で行う他の方法としては、例えば、後述の後塗工液に上記触媒を含有させる方法が挙げられる。一次粘着剤層の形成に用いる粘着剤組成物に上記触媒を含ませておく方法は、官能基Aと官能基Bとの反応のコントロール性等の観点から好ましい。
 (第2の光開始剤)
 ここに開示される粘着シートを構成する粘着剤層(光硬化性粘着剤層)は、光開始剤を含むことが好ましい。光開始剤を含ませることで、硬化処理時に光開始剤からラジカルが生成し、粘着剤層の光硬化が速やかに進行する。光開始剤としては、例えばケタール系光開始剤、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾインエーテル系光開始剤、アシルホスフィンオキシド系光開始剤、α-ケトール系光開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光開始剤、光活性オキシム系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンジル系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤等が挙げられる。光開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
 ケタール系光開始剤の具体例には、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(例えば、商品名「Omnirad651」、IGM Resins B.V.社製)等が含まれる。
 アセトフェノン系光開始剤の具体例には、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニル-ケトン(例えば商品名「Omnirad184」、IGM Resins B.V.社製)、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、メトキシアセトフェノン等が含まれる。ベンゾインエーテル系光開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテルおよびアニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテルが含まれる。アシルホスフィンオキシド系光開始剤の具体例には、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が含まれる。α-ケトール系光開始剤の具体例には、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン等が含まれる。芳香族スルホニルクロリド系光開始剤の具体例には、2-ナフタレンスルホニルクロライド等が含まれる。光活性オキシム系光開始剤の具体例には、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシム等が含まれる。ベンゾイン系光開始剤の具体例にはベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光開始剤の具体例にはベンジル等が含まれる。ベンゾフェノン系光開始剤の具体例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。チオキサントン系光開始剤の具体例には、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
 ここに開示される光硬化性粘着剤層における光開始剤の含有量は、1.0×10-4mol/100g以上(すなわち、粘着剤層100g当たり1.0×10-4mol以上)であることが適当であり、硬化反応を精度よく進行させる観点から、3.0×10-4mol/100g以上であることが有利であり、5.0×10-4mol/100g以上であることが好ましく、7.0×10-4mol/100g以上でもよく、1.0×10-3mol/100g以上でもよく、2.0×10-3mol/100g以上または3.0×10-3mol/100g以上でもよい。光開始剤の含有量の上限は、特に制限されない。いくつかの態様では、粘着シートの保存安定性の観点から、例えば1.0×10-1mol/100g以下であってよく、5.0×10-2mol/100g以下でもよく、1.0×10-2mol/100g以下でもよく、5.0×10-3mol/100g以下でもよい。
 光硬化性粘着剤層における光開始剤の含有量は、該粘着剤層の製造原料として用いられた材料の合計重量部数や、得られた粘着剤層中に残るようにして用いられた光開始剤の重量部数および該光開始剤の分子量に基づいて、計算により求めることができる。例えば、光開始剤を含む粘着剤組成物を用いて形成された一次粘着剤層に、追加の光開始剤を後塗工および浸透させて得られた光硬化性粘着剤層において、少なくとも後塗工により供給された光開始剤は、その後に上記光開始剤の分解を積極的に進行させる処理(紫外線照射処理等)を行わない場合、得られた光硬化性粘着剤層中に残るようにして用いられた光開始剤であるといえる。したがって、上記光硬化性粘着剤層における光開始剤の含有量は、後塗工により供給された光開始剤に基づいて算出される含有量と同等以上とみなすことができる。光開始剤を含む粘着剤組成物に光照射を行って硬化(一次硬化)させることで得られた一次粘着剤層に光開始剤を後塗工および浸透させて得られた光硬化性粘着剤層では、該光硬化性粘着剤層における光開始剤の含有量は、後塗工により供給された光開始剤に基づいて算出される含有量と概ね同程度とみなすことができる。
 これらの情報が不明な場合は、光硬化性粘着剤層における光開始剤の含有量として、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)に基づく分析から得られる値を用いることができる。クロマトグラムに現われるピークのうち光開始剤のピークに対応する溶出物の成分分析により上記光開始剤を同定し、その同定物または同定物と類似の分子構造を有する化合物を標品に用いて検量線を作成することにより、測定試料中における上記光開始剤の含有量を求めることができる。その含有量および上記光開始剤の分子量に基づいて、粘着剤層における上記光開始剤の含有量[mol/100g]を算出することができる。
 HPLC用の測定試料は、以下のようにして調製することができる。すなわち、粘着剤層から適当量(例えば、約0.1g)の粘着剤を採取し、スクリュー管に入れて秤量する。上記スクリュー管にクロロホルム3mLを加え、冷暗所にて一晩(約16時間)振とうすることにより、上記試料中の光開始剤をクロロホルム中に溶出させる。次いで、アセトニトリル10mLを加えて粘着成分を再沈殿させ、光開始剤が溶解した上澄み液をメンブレンフィルター(孔径0.20μm)で濾過する。これをHPLC用の測定試料とする。分析装置としては、Thermo Fisher Scientific社の「UltiMate 3000」またはその相当品を用いるとよい。測定条件としては、下記の条件が採用され得る。
 [測定条件]
 カラム:ZORBAX Eclipse Plus C18(3.0mmφ×100mm、担体の平均粒子径1.8μm)
 カラム温度:40℃
 カラム流量:0.5mL/min
 溶離液組成:純水/アセトニトリルのグラジエント条件
 インジェクション量:10μL
 検出器:DAD(190nm~800nm、210nmおよび245nm抽出)
 (その他のポリマー)
 ここに開示される光硬化性粘着剤層が炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを含む場合、該光硬化性粘着剤層は、上記炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーに加えて、他のポリマーを含んでもよい。上記他のポリマーは、炭素-炭素二重結合を有しないアクリル系ポリマーであってもよく、アクリル系ポリマー以外のポリマーであってもよい。上記アクリル系ポリマー以外のポリマーとしては、粘着剤層に含まれ得るポリマーとして例示した各種ポリマーのうちアクリル系ポリマー以外のものが好適例として挙げられる。そのようなポリマーは、炭素-炭素二重結合を有するポリマーであり得る。上記炭素-炭素二重結合を有しないアクリル系ポリマーとしては、上述した一次ポリマーとしてのアクリル系ポリマー(すなわち、炭素-炭素二重結合を導入する化学修飾が行われていないアクリル系ポリマー)が好適例として挙げられる。ここに開示される粘着剤層が炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーに加えて上記他のポリマーを含む場合、該他のポリマーの含有量は、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して100重量部以下とすることが適当であり、50重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。上記他のポリマーの含有量は、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー100重量部に対して5重量部以下であってもよく、1重量部以下であってもよい。ここに開示される技術は、例えば、粘着剤層に含まれるポリマーの99.5~100重量%が炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーである態様で好ましく実施され得る。
 (ポリマー以外の炭素-炭素二重結合含有化合物)
 ここに開示される光硬化性粘着剤層は、炭素-炭素二重結合含有ポリマー以外の炭素-炭素二重結合含有化合物を含んでいてもよい。そのような炭素-炭素二重結合含有化合物の例として、多官能モノマー、単官能モノマー、炭素-炭素二重結合を有する多官能または多官能のオリゴマー、等が挙げられる。光硬化性粘着剤層が上記炭素-炭素二重結合含有化合物を含むとは、該炭素-炭素二重結合含有化合物の有する炭素-炭素二重結合が未反応の形態で含むことをいう。
 いくつかの態様において、光硬化性粘着剤層は、上記炭素-炭素二重結合含有化合物として多官能モノマーを含んでいてもよい。光硬化性粘着剤層に含有させる多官能モノマーとしては、一次ポリマーの共重合成分として用いられ得る多官能モノマ―(共重合性架橋剤)と同様のものから1種または2種以上を選択し得る。光硬化性粘着剤層が多官能モノマーを含む場合、該光硬化性粘着剤層は、炭素-炭素結合を有するポリマー(好ましくは、炭素-炭素結合を有するアクリル系ポリマー)と上記多官能モノマーとを組み合わせて含むことが好ましい。光硬化性粘着剤層に含まれる多官能モノマーは、光硬化性粘着剤層の柔軟性の向上や、硬化処理後の弾性率の向上に役立ち得る。例えば、光硬化性粘着剤層に多官能モノマーを含有させる方法としては、例えば、一次粘着剤層(活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射して形成された一次粘着剤層であり得る。)に多官能モノマーを塗工して浸透させる方法を採用し得る。
 ここに開示される光硬化性粘着剤層において、炭素-炭素二重結合含有ポリマー以外の炭素-炭素二重結合含有化合物(例えば、多官能モノマー)の含有量は、所望の使用効果が適切に発揮させるように設定することができ、例えば、上記光硬化性粘着剤層のベースポリマー(例えば、炭素-炭素結合を有するアクリル系ポリマー)100重量部に対して0.01重量部以上とすることができ、0.1重量部以上としてもよく、0.5重量部以上としてもよい。また、光硬化性粘着剤層の凝集性や、剥離ライナーからの剥離性等の観点から、いくつかの態様において、炭素-炭素二重結合含有化合物の含有量は、光硬化性粘着剤層のベースポリマー100重量部に対して10重量部以下とすることが適当であり、5重量部以下とすることが好ましく、1重量部以下としてもよく、1重量部未満としてもよい。ここに開示される技術は、光硬化性粘着剤層が炭素-炭素二重結合含有ポリマー以外の炭素-炭素二重結合含有化合物を含まない態様で好ましく実施され得る。
 (その他の任意成分)
 ここに開示される粘着剤層には、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤を、その他の任意成分として含ませ得る。これら各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
 いくつかの好ましい態様において、ここに開示される粘着剤層は、ポリマー(典型的にはベースポリマー)の含有量が、該粘着剤(粘着剤組成物の固形分)の全重量(すなわち、この粘着剤により構成される粘着剤層の重量)の凡そ90重量%以上を占める組成であり得る。これにより、硬化処理による粘着剤層の易剥離化が好ましく実現され得る。そのような観点から、上記ポリマーの含有量は、粘着剤層の全重量の凡そ95重量%以上であることが好ましく、凡そ97重量%以上であることがより好ましく、凡そ98重量%以上であることがさらに好ましく、凡そ99重量%以上(例えば99~100重量%)であってもよい。換言すると、上記粘着剤組成物の固形分(粘着剤層)に占めるポリマー以外の成分(添加剤等)の含有量は、凡そ10重量%以下であることが適当であり、好ましくは凡そ5重量%以下、より好ましくは凡そ3重量%以下、さらに好ましくは凡そ2重量%以下であり、凡そ1重量%以下であってもよい。
 ここに開示される粘着剤層に含まれる炭素-炭素二重結合の量は、例えば1.0×10-6mol/100g以上であってよく、1.0×10-5mol/100g以上であってもよい。いくつかの態様では、光照射による特性や物性の変化を得やすくする観点から、上記炭素-炭素二重結合の量は、5.0×10-5mol/100g以上であることが適当であり、1.0×10-4mol/100g以上であることが有利であり、5.0×10-4mol/100g以上または1.0×10-3mol/100g以上であることが好ましく、5.0×10-3mol/100g以上であってもよく、1.0×10-2mol/100g以上であってもよく、3.0×10-2mol/100g以上でもよく、4.0×10-2mol/100g以上でもよく、5.0×10-2mol/100g以上でもよい。また、粘着剤層に含まれる炭素-炭素二重結合の量は、例えば1.0mol/100g以下であってよく、5.0×10-1mol/100g以下であってもよく、1.0×10-1mol/100g以下でもよく、8.0×10-2mol/100g以下でもよく、7.0×10-2mol/100g以下でもよい。炭素-炭素二重結合の含有量が多すぎないことは、粘着剤層または該粘着剤層を有する粘着シートの保存安定性の観点や、他の特性とのバランスのとりやすさの観点から有利となり得る。なお、本明細書において、粘着剤層に含まれる炭素-炭素二重結合の量の単位「mol/100g」は、該粘着剤層100g当たりの炭素-炭素二重結合のモル量を意味する。
 ここに開示される粘着剤層に含まれる炭素-炭素二重結合は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーの形態で含まれていてもよく、炭素-炭素二重結合を有するポリマー以外の形態(例えば、炭素-炭素二重結合を有する多官能モノマー、単官能モノマー、オリゴマー等の形態)で含まれていてもよい。粘着剤層に含まれる炭素-炭素二重結合のうち少なくとも一部は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーの形態で含まれていることが好ましい。いくつかの態様において、炭素-炭素二重結合を有するポリマーの形態で粘着剤層に含まれる炭素-炭素二重結合の量は、例えば1.0×10-6mol/100gまたは1.0×10-5mol/100g以上であってもよく、光照射による特性や物性の変化を得やすくする観点から5.0×10-5mol/100g以上であることが適当であり、1.0×10-4mol/100g以上であることが有利であり、5.0×10-4mol/100g以上または1.0×10-3mol/100g以上であることが好ましく、5.0×10-3mol/100g以上であってもよく、1.0×10-2mol/100g以上であってもよく、3.0×10-2mol/100g以上でもよく、4.0×10-2mol/100g以上でもよく、5.0×10-2mol/100g以上でもよく、また、例えば1.0mol/100g以下であってよく、5.0×10-1mol/100g以下であってもよく、1.0×10-1mol/100g以下でもよく、8.0×10-2mol/100g以下でもよく、7.0×10-2mol/100g以下でもよい。
 粘着剤層に含まれる炭素-炭素二重結合(典型的には、エチレン性不飽和基)の量は、該粘着剤層の製造原料として用いられた材料の合計重量部数や、そのうち炭素-炭素二重結合が粘着剤層中に残るようにして用いられた材料の重量部数および分子量に基づいて、計算により求めることができる。
 これらの情報が不明な場合は、粘着剤層における炭素-炭素二重結合の含有量として、NMR法に基づく測定値を用いることができる。具体的には、粘着剤層から適当量の試料を採取し、内部標準物質を所定量添加した測定溶媒に上記試料を溶解したものにつき測定を行うことによって、炭素-炭素二重結合の存在量は求められる。分析装置としては、フーリエ変換NMR装置(BrukerBiospin社製、「AVANCE III-600」)またはその相当品を用いるとよい。測定条件としては、下記の条件が採用され得る。
 [測定条件]
 観測周波数:H 600MHz
 測定溶媒:CDCl
 測定温度:300K
 化学シフト基準:測定溶媒 H;7.25ppm
 ここに開示される粘着剤層のいくつかの態様において、該粘着剤層は、有機溶剤の含有量が1.0μg/g以下(すなわち、該粘着剤層1g当たりの有機溶剤含有量が1.0μg以下)であることが好ましく、例えば1.0μg/g未満であることが好ましく、0.5μg/g未満であることがより好ましく、0.2μg/g未満であってもよく、0μg/gであってもよい。上記有機溶剤の具体例として、酢酸エチルおよびトルエンが挙げられる。有機溶剤の含有量が少ない粘着剤層は、低臭気であり、環境衛生の観点から望ましい。粘着剤層の有機溶剤含有量は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
 ここに開示される粘着剤層は、好適には、アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤(分解物や残存物の形態で含まれる重合開始剤であり得る。)の合計含有量が1.0μg/g以下に制限されている。すなわち、上記粘着剤層1g当たりのアゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量が1.0μg以下である。このことによって、上記重合開始剤に起因する弊害を防止または抑制することができる。上記弊害の例としては、熱重合開始剤であるアゾ系重合開始剤やペルオキシド系重合開始剤が熱や経時により開裂してラジカルを発生することで、粘着剤の物性が非意図的に変化(例えば硬化)したり、粘着シートが貼り付けられた被着体表面に変質(例えば、ペルオキシド系重合開始剤の開裂に伴う酸化)や汚染(例えば、低分子量の分解生成物や反応物による汚染)が生じたり、アウトガス(例えば、アゾ系重合開始剤の分解によるNガス)が発生したりすること等が挙げられる。かかる弊害をよりよく抑制する観点から、いくつかの態様において、該粘着剤層は、アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量が1.0μg/g未満であることが好ましく、0.5μg/g未満であることがより好ましく、0.2μg/g未満であってもよく、0μg/g(すなわち、不含有)であってもよい。粘着剤層のアゾ系およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量は、後述に実施例の方法で測定される。
 (粘着剤層の厚さ)
 ここに開示される粘着シートの有する粘着剤層(光硬化性粘着剤層)の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。上記粘着剤層の厚さは、例えば2μm以上2000μm程度の範囲から選択し得る。いくつかの態様では、粘着シートの薄型化等の観点から、上記粘着剤層の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、500μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。光照射後の剥離強度低減の観点から、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば100μm未満であってよく、80μm以下であってもよく、60μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。光硬化性粘着剤層の厚さが大きすぎないことにより、該粘着剤層への光照射による易剥離化の効果が得られやすくなる傾向にある。光硬化性粘着剤層の厚さが大きすぎないことは、例えば、官能基Aを有する一次粘着剤層を形成し、官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物を含む後塗工液を上記一次粘着剤層に塗布して浸透させた後、上記一次粘着剤層中の官能基Aと上記官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物とを反応させることを含む方法によって光硬化性粘着剤層を形成する場合において、官能基Aと官能基Bとの反応を粘着剤層の厚み全体にわたって均質に進行させる観点からも有利である。また、粘着剤層の厚さは、硬化処理前における被着体への密着性等の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、20μm以上であってもよい。ここに開示される粘着シートが基材の両面に粘着剤層を備える両面粘着シートの場合、各粘着剤層の厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。
<粘着剤層の作製>
 ここに開示される粘着剤層は、例えば以下の工程を含む方法により、好適に作製することができる。
 (a)官能基Aを有する一次ポリマーを含む一次粘着剤層を形成し(一次粘着剤層形成工程)、
 (b)炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物(例えば、官能基Bを有するエチレン性不飽和化合物)および光開始剤を含む後塗工液を準備し、その後塗工液を上記一次粘着剤層の少なくとも一方の面に塗布し(後塗工液塗布工程)、
 (c)上記後塗工液に含まれる炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物および光開始剤を上記一次粘着剤層に浸透させ(後塗工液浸透工程)、
 (d)上記後塗工液が浸透した一次粘着剤層を加熱して上記官能基Aと上記官能基Bとの反応を進行させる(反応工程)。
 上記一次粘着剤層形成工程は、一次粘着剤層形成用の粘着剤組成物を支持体上に塗布することと、その塗布された粘着剤組成物を硬化させて官能基Aを有する一次ポリマーを含む一次粘着剤層を形成することと、を包含し得る。支持体としては、後述する基材層として用いられ得るプラスチックフィルムや、後述する剥離ライナーを用いることができる。上記粘着剤組成物塗布(塗工)には、公知のコーティング法を利用することができ、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどのコーターを用いることができる。
 上記一次粘着剤層形成工程において、塗布された粘着剤組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、例えば、塗布された粘着剤組成物を加熱することや、該粘着剤組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させることが挙げられる。必要に応じて、さらに、加熱乾燥してもよい。いくつかの態様において、上記粘着剤組成物として活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物(好ましくは、有機溶剤フリーの活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)を使用し、該組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる方法を好ましく採用し得る。活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好ましい。
 紫外線は、塗布された粘着剤組成物に直接照射してもよいが、紫外線照射による硬化を阻害する酸素を遮断するために、支持体(剥離フィルムであり得る。)を介して照射することが好ましい。例えば、支持体に塗布された粘着剤組成物の表面を別の支持体で覆い、該別の支持体を介して紫外線を照射する。紫外線照射の照度、時間は、一次粘着剤層の組成や粘着剤層の厚さなどにより適宜設定される。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。
 次に、一次粘着剤層の一方の面から支持体を剥離除去し、炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物と光開始剤(第2の光重合開始剤)とを含む後塗工液を準備し、該後塗工液を上記一次粘着剤層の一方の面に塗布する(後塗工液塗布工程)。後塗工液は、液状で粘着剤層に塗工可能で浸透するものである限り、特に限定されない。例えば、炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物および/または光開始剤が液状である場合は、それぞれ単独で、任意の順序で塗布してもよく、炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物と光開始剤との混合液であってもよい。また、炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物に光開始剤を溶解させた後塗工液であってもよく、その逆でもよい。
 一次粘着剤層の表面に後塗工液を塗布すると、該後塗工液に含まれる成分が上記粘着剤層に浸透する。後塗工液を一次粘着剤層に塗布した後、次の反応工程に進む前に、必要に応じて、上記浸透を十分に進行させるために静置する時間を設けてもよい。静置時間としては、特に限定はなく、例えば、15分以内から適宜選択することができ、いくつかの態様では1秒~10分(例えば10秒~10分)、好ましくは5秒~5分(例えば10秒~5分)の範囲から選択することができる。静置温度は、概ね室温程度(例えば、10~30℃程度)とすることができる。上記の条件で静置することで、後塗工液を一次粘着剤層に十分に浸透させることができる。
 その後、上記後塗工液が浸透した一次粘着剤層を加熱して、上記官能基Aと上記官能基Bとの反応を進行させる(反応工程)。反応工程における加熱温度は、40~200℃が好ましく、より好ましくは50~180℃、さらに好ましくは60~170℃(例えば100~150℃)である。加熱時間は、適宜、適切な時間が採用され得るが、例えば5秒~20分であり、好ましくは5秒~10分、より好ましくは10秒~5分である。
<基材層>
 片面粘着タイプまたは両面粘着タイプの基材付き粘着シートにおいて、粘着剤層を支持(裏打ち)する基材(層)として、各種のシート状基材を用いることができる。上記基材としては、樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。樹脂フィルムの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン製フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;塩化ビニル樹脂フィルム;酢酸ビニル樹脂フィルム;ポリアミド樹脂フィルム;フッ素樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。樹脂フィルムの他の例として、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂等の1種または2種以上のエンジニアリングプラスチック(スーパーエンジニアリングプラスチックであり得る。)から形成された樹脂フィルムが挙げられる。エンジニアリングプラスチックの使用は耐熱性の観点から好ましい。紙の例としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が例示される。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。
 好ましい一態様では、所定の剛性(強度)を有し、加工性、取扱い性に優れる樹脂フィルムを基材(層)として用いる。剛性の高い樹脂フィルム基材を用いることで、被着体が薄厚の場合に、搬送時等における被着体の撓みや損傷を好適に防止することができる。同様の観点から、樹脂フィルム基材としてポリエステルフィルムを用いることが好ましい。なお、この明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念である。基材として用いられ得る樹脂フィルムの密度は、凡そ0.85~1.50g/cm(例えば0.90g/cm~1.20g/cm、典型的には0.92g/cm~1.05g/cm)程度であり得る。
 なお、上記基材(例えば樹脂フィルム基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。
 上記基材層(例えば樹脂フィルム基材やゴムシート基材、発泡体シート基材等)の粘着剤層が配置される面(粘着剤層側表面)には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。
 いくつかの好ましい態様では、基材層の粘着剤層側表面に下塗り層が設けられる。換言すると、基材層と粘着剤層との間には下塗り層が配置され得る。下塗り層形成材料としては、特に限定されず、ウレタン(ポリイソシアネート)系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、イソシアヌレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂等の1種または2種以上が用いられ得る。樹脂フィルム基材上にアクリル系等の粘着剤層を設ける場合、ポリエステル系やウレタン系、アクリル系の下塗り層が好ましく、PETフィルム等のポリエステル系基材層にアクリル系粘着剤層を設ける場合は、ポリエステル系下塗り層が特に好ましい。下塗り層の厚さは特に限定されず、通常、凡そ0.1μm~10μm(例えば0.1μm~3μm、典型的には0.1μm~1μm)の範囲であり得る。下塗り層は、グラビアロールコーター、リバースロールコーター等の公知または慣用のコーターを用いて形成され得る。
 また、ここに開示される粘着シートが基材層の片面に粘着剤層が設けられた片面接着性の粘着シートの場合、基材層の粘着剤層非形成面(背面)には、剥離処理剤(背面処理剤)によって剥離処理が施されていてもよい。背面処理層の形成に用いられ得る背面処理剤としては、特に限定されず、シリコーン系背面処理剤やフッ素系背面処理剤、長鎖アルキル系背面処理剤その他の公知または慣用の処理剤を目的や用途に応じて用いることができる。
 基材層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、一般的には1~800μmであり得る。加工性や取扱い性、作業性等の観点から、基材層の厚さは2μm以上(例えば3μm以上、典型的には5μm以上)であることが適当であり、好ましくは凡そ10μm以上、より好ましくは凡そ25μm以上(例えば30μm以上)であり、また凡そ700μm以下(例えば500μm以下、典型的には200μm以下)であることが適当であり、好ましくは凡そ100μm以下、より好ましくは凡そ80μm以下(例えば凡そ70μm以下)である。
<剥離ライナー>
 剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
 ここに開示される粘着シート(粘着剤層と基材層とを含み得るが、剥離ライナーは含まない。)の総厚は特に限定されず、凡そ5~1000μmの範囲とすることが適当である。粘着シートの総厚は、粘着特性等を考慮して10~500μm(例えば15~300μm、典型的には20~200μm)程度とすることが好ましい。また、取扱い性等の観点から、粘着シートの総厚は30μm以上(例えば50μm以上、典型的には70μm以上)であることがより好ましい。
<用途>
 ここに開示される粘着シートの用途は特に限定されず、硬化処理後、被着体からの分離時に糊残りを高度に防止し得る性能を利用して、被着体に貼り付けた後、剥離される用途で好ましく用いられ得る。そのような用途としては、仮固定用シートや保護シートが挙げられる。また例えば、電子機器、電子部品の製造プロセスにおいて被着体に固定され、剥離されるプロセス材として好ましく用いられ得る。
 ここに開示される粘着シートの好適用途として、半導体素子製造用途が挙げられる。例えば半導体ウエハ加工(典型的にはシリコンウエハ加工)において該ウエハを固定板(例えばガラス板やアクリル板等の硬質基板)に固定するウエハ固定用シート(典型的にはレーザダイシング用シート)として好ましく用いられ得る。また、ここに開示される粘着シートは、上記ウエハ加工において該ウエハ(例えば回路形成面)を保護する保護シートとしても好ましく用いられ得る。上記シートには、上記製造における加工時や搬送時に被着体(典型的には半導体素子や硬質基板)から剥がれない程度の適度な密着性と、目的を達成した後に該被着体から良好に再剥離する性質が求められ得る。ここに開示される粘着シートは、上記の用途に必要とされる性能を満足するものとして、好ましく用いられ得る。
 また例えば、小型化した複数の半導体チップ(LEDチップ等)を一枚の粘着シートの粘着面上で固定し、当該粘着シート上で半導体チップを樹脂で封止する等の加工を行い、加工処理終了後に粘着シートから半導体チップを分離する用途も、ここに開示される粘着シートの好適用途となり得る。ここに開示される粘着シートは、上記加工の間は半導体チップを良好に固定し、かつ被着体(半導体チップ)から剥離する際には光照射によって易剥離化することができる。そのような粘着シートによると、剥離の際には被着体表面の損傷を防止することができる。上記粘着シートは、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)やCSP(Chip Scale Package)に用いられる粘着シートとして好適であり、上記用途に用いられることによって、各種半導体製品の高容量化、高性能化に寄与し得る。
 上述のように、ここに開示される粘着シートは半導体素子の製造用途に好ましく適用される。したがって、この明細書によると、ここに開示される粘着シートを用いた半導体素子の製造方法が提供される。好ましい一態様において、この製造方法は、粘着シートに半導体を固定する工程(固定工程)と;該半導体を加工する工程(加工工程)と;を含む。上記加工工程は、例えば、バックグラインド工程、ダイシング工程、半導体チップの樹脂封止工程、等であり得る。
 また、上記製造方法では、上記加工工程後、粘着シートと半導体(典型的には半導体チップ)とを分離する工程(除去工程。典型的には剥離工程)を含み得る。上記分離は、半導体の表面(粘着シート接着面とは反対側の表面)に転写テープを貼り付けて実施され得る。上記製造方法では、典型的には、上記加工工程後、上記分離工程の前に、粘着シートに対して硬化処理を実施する。硬化処理は好ましくは活性エネルギー線(例えばUV)照射工程であり得る。なお、半導体素子の製造に必要なその他の技術的事項については、当該分野の技術常識に基づき当業者であれば実施可能であるので、ここでは特に説明しない。
 また、ここに開示される粘着シートは、回路基板(例えば、プリント配線板(PCB)や、フレキシブル回路基板(FPC))、有機ELパネル、カラーフィルター、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ等の薄厚基板に製造に用いられる仮固定用シートとして好適である。例えば、PCBのチップ固定において、ここに開示される粘着シートを用いて、被着体をよく接着固定し、所望のタイミングで硬化処理を施すことにより、糊残りを高度に防止しつつ被着体から粘着シートを良好に分離することができる。さらに、ここに開示される粘着シートは、薄層ウエハのサポートテープとして好ましく用いられ得る。この用途では、例えば薄層ウエハへのはんだペーストの印刷において、ここに開示される粘着シートを被着体としての薄層ウエハに貼り付けてサポートテープとして用いた後、適当なタイミングで硬化処理を実施することにより、被着体からの分離時に糊残りを高度に防止しつつ、粘着シートは被着体から良好に分離され得る。
 上述のように、ここに開示される粘着シートは、回路基板(典型的にはPCB)等の薄厚基板の製造用途に好ましく適用される。したがって、この明細書によると、上記粘着シートを用いた薄厚基板(例えば、回路基板、有機ELパネル、カラーフィルター、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ)の製造方法が提供される。好ましい一態様において、この製造方法は、粘着シートに薄厚基板(典型的には該基板の裏面)を固定する工程(固定工程)と;該薄厚基板を加工する工程と;を含む。
 いくつかの態様に係る加工工程は、ダイボンディング工程やワイヤーボンディング工程を含み、さらにモールディング工程、パッケージダイシング工程を含み得る。上記ダイボンディングとは、典型的にはPCB等の薄厚基板上に複数のチップを配置する工程であり、上記ワイヤーボンディング工程とは、上記チップにワイヤーを接合する工程であり、上記モールディング工程とは、例えば、エポキシ樹脂等の樹脂でPCB上のチップを封止する工程であり得る。また、上記製造方法では、上記加工工程後、粘着シートと薄厚基板とを分離する工程(除去工程。典型的には剥離工程)を含み得る。上記製造方法では、典型的には、上記加工工程後、上記分離工程の前に、粘着シートに対して硬化処理を実施する。硬化処理は好ましくは活性エネルギー線(例えばUV)照射工程であり得る。なお、PCB等の薄厚基板の製造に必要なその他の技術的事項については、当該分野の技術常識に基づき当業者であれば実施可能であるので、ここでは特に説明しない。
 他のいくつかの態様に係る回路基板(典型的にはFPC:Flexible Print Circuit)の製造方法は、薄層ウエハを固定した固定テープの裏面に、ここに開示される粘着シートをサポートテープとして貼り合わせる工程と;該薄層ウエハを加工する工程と;を含む。上記製造方法は、上記加工工程後、粘着シートと固定テープとを分離する工程(除去工程。典型的には剥離工程)を含み得る。上記製造方法では、典型的には、上記加工工程後、上記分離工程の前に、粘着シートに対して硬化処理を実施する。硬化処理は好ましくは活性エネルギー線(例えばUV)照射工程であり得る。なお、FPC等の薄厚基板の製造に必要なその他の技術的事項については、当該分野の技術常識に基づき当業者であれば実施可能であるので、ここでは特に説明しない。
 この明細書により開示される事項には、以下のものが含まれる。
 〔1〕 光照射により硬化する粘着剤層を有する粘着シートであって、
 上記粘着剤層は、アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量が1.0μg/g以下であり、
 下記式より求められる剥離強度低下率が50%以上である、粘着シート。
 剥離強度低下率[%]=(1-B/A)×100
(式中のAは、シリコンウエハに貼り付けた後、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される初期剥離強度(単位:[N/20mm])であり、式中のBは、シリコンウエハに貼り付けて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った後に、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される硬化処理後剥離強度(単位:[N/20mm])である。)
 〔2〕 上記硬化処理後剥離強度が1.0N/20mm未満である、上記〔1〕に記載の粘着シート。
 〔3〕 上記粘着剤層は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーを含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の粘着シート。
 〔4〕 上記炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマーにより架橋している、上記〔3〕に記載の粘着シート。
 〔5〕 上記粘着剤層は、1.0×10-4mol/100g以上の炭素-炭素二重結合を含む、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔6〕 上記粘着剤層は、1.0×10-4mol/100g以上の光開始剤を含む、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔7〕 上記粘着剤層は、積算光量300mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った後に測定されるゲル分率が70%以上である、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔8〕 上記粘着剤層は、有機溶剤の含有量が1.0μg/g以下である、上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の粘着シート。
 また、この明細書により開示される粘着シートは、該粘着シートの有する粘着剤層について、上記アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量の制限のない態様を包含し、そのような態様において上記合計含有量は問われない。例えば、以下の事項も本明細書により開示される事項に含まれる。
 〔9〕 光照射により硬化する粘着剤層を有する粘着シートであって、
 上記粘着剤層は、以下の条件:
 (A)アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量が1.0μg/g以下である;
 (B)有機溶剤の含有量が1.0μg/g以下である;
 (C)光硬化型粘着剤組成物の光硬化物またはその変性物である; および、
 (D)光重合物またはその変性物であるポリマーをベースポリマーとして含む;
のうち少なくとも任意の1つを満たし、かつ
 下記式より求められる剥離強度低下率が50%以上である、粘着シート。
 剥離強度低下率[%]=(1-B/A)×100
(式中のAは、シリコンウエハに貼り付けた後、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される初期剥離強度(単位:[N/20mm])であり、式中のBは、シリコンウエハに貼り付けて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った後に、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される硬化処理後剥離強度(単位:[N/20mm])である。)
 〔10〕 上記硬化処理後剥離強度が1.0N/20mm未満である、上記〔9〕に記載の粘着シート。
 〔11〕 上記粘着剤層は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーを含む、上記〔9〕または〔10〕に記載の粘着シート。
 〔12〕 上記炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマーにより架橋している、上記〔11〕に記載の粘着シート。
 〔13〕 上記粘着剤層は、1.0×10-4mol/100g以上の炭素-炭素二重結合を含む、上記〔9〕~〔12〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔14〕 上記粘着剤層は、1.0×10-4mol/100g以上の光開始剤を含む、上記〔9〕~〔13〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔15〕 上記粘着剤層は、積算光量300mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った後に測定されるゲル分率が70%以上である、上記〔9〕~〔14〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔16〕 上記粘着剤層は、上記条件(B)を少なくとも満たす、上記〔9〕~〔15〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔17〕 シリコンウエハに貼り付けた後、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される初期剥離強度が1.0N/20mm以上(例えば2.0N/20mm以上)である、上記〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔18〕 上記粘着剤層に積算光量300mJ/cmの紫外線照射処理を行った後に引張試験により測定されるヤング率が1.0MPa以上である、上記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔19〕 下記式より求められる貯蔵弾性率増加率が300%以上である、上記〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の粘着シート。
 貯蔵弾性率増加率[%]=(R/Q-1)×100
(式中のQおよびRは、動的粘弾性測定に基づく25℃における貯蔵弾性率G’(単位:[Pa])であって、Qは、上記粘着剤層からなる測定用サンプルを用いて測定される貯蔵弾性率G’(初期弾性率G’)であり、Rは、上記測定用サンプルに紫外線を照射する硬化処理を行った後に測定される貯蔵弾性率G’(硬化処理後弾性率G’)である。
 〔20〕 上記粘着剤層は、該粘着剤層からなる測定用サンプルを用いて測定される貯蔵弾性率G’(初期弾性率G’)が1.0×10Pa未満であり、かつ、
 上記測定用サンプルに紫外線を照射する硬化処理を行った後に測定される貯蔵弾性率G’ (硬化処理後弾性率G’)が1.0×10Pa以上である、上記〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔21〕 上記粘着剤層の25℃における損失弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である、上記〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔22〕 上記粘着剤層の厚さが10μm以上100μm未満である、上記〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔23〕 上記粘着剤層は、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを含む、上記〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔24〕 上記アクリル系ポリマーは、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマーにより架橋している、上記〔23〕に記載の粘着シート。
 〔25〕 上記アクリル系ポリマーは、光重合物またはその変性物である、上記〔23〕または〔24〕に記載の粘着シート。
 〔26〕 上記アクリル系ポリマーを構成する全モノマー成分のうち50重量%以上は、アルキル基の炭素原子数が5以上の鎖状アルキル(メタ)アクリレートである、上記〔23〕~〔25〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔27〕 上記粘着剤層は、上記アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む、上記〔23〕~〔26〕のいずれかに記載の粘着シート。
 〔28〕 光照射により硬化する粘着剤層(光硬化性粘着剤層)の製造方法であって:
 官能基Aを有する一次ポリマーを含む一次粘着剤層を形成すること;
 炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物および光開始剤を含む後塗工液を準備し、その後塗工液を上記一次粘着剤層の少なくとも一方の面に塗布すること;
 上記後塗工液に含まれる炭素-炭素二重結合を有する官能基B含有化合物および光開始剤を上記一次粘着剤層に浸透させること;および、
 上記後塗工液が浸透した一次粘着剤層を加熱して上記官能基Aと上記官能基Bとの反応を進行させること;
を含む方法により作製される、粘着剤層製造方法。
 〔29〕 上記〔1〕~〔27〕のいずれかに記載の粘着シートの有する粘着剤層の製造に適用される、上記〔28〕に記載の粘着剤層製造方法。
 〔30〕 上記〔28〕または〔29〕に記載の粘着剤層製造方法により得られた粘着剤層を有する、粘着シート。
 以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<例1>
 (プレポリマー組成物の調製)
 モノマー成分としての2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)13部の混合物に、光開始剤(商品名「Omnirad 184」、IGM Resins B.V.社製;以下、「Omni.184」と表記する。)0.05部を配合した後、窒素雰囲気下で粘度(BH粘度計、No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
 (紫外線硬化型粘着剤組成物の調製)
 上記プレポリマー組成物に、架橋剤としての多官能アクリレート(ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA))0.05部、光開始剤(Omni.184)0.05部およびジオクチルスズジラウレート(商品名「エンビライザーOL-1」、東京ファインケミカル社製;以下「OL-1」と表記する。)1部を添加して混合し、紫外線硬化型の粘着剤組成物C1を得た。
 (一次粘着剤層の形成)
 上記粘着剤組成物C1を、剥離フィルム(商品名「MRF#38」、三菱ケミカル社製)の剥離処理された面上に塗布して、粘着剤組成物層を形成した。上記粘着剤組成物層の表面に剥離フィルム(商品名「MRE#38」、三菱ケミカル社製)を被せて空気を遮断し、照度:5mW/cm、積算光量:2400mJ/cmの条件で紫外線照射を行い、上記粘着剤組成物層を光硬化させて一次粘着剤層(未変性粘着剤層)D1を形成した。この一次粘着剤層D1は、上記モノマー成分の重合物であって上記多官能アクリレートにより架橋したアクリル系ポリマーを、ベースポリマー(一次ポリマー)として含む。
 (後塗工液の調製および塗布)
 メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)11部と光開始剤(商品名「Omnirad 651」、IGM Resins B.V.社製;以下、「Omni.651」と表記する。)1部とを混合して後塗工液E1を調製した。上記一次粘着剤層D1の一方の表面から上記剥離フィルムを剥がし、露出した表面に上記後塗工液E1を、RD Specialties社製のWire Wound Rodタイプのバーコーターにより塗工した。塗工後、10秒~10分程度静置して、上記後塗工液E1を一次粘着剤層D1に浸透させた。
 (炭素-炭素二重結合の導入)
 次いで、後塗工液E1が浸透した一次粘着剤層D1を130℃のオーブン中で3分間加熱してMOIを付加反応させることにより、上記ベースポリマーの側鎖に炭素-炭素二重結合を導入した。このようにして、炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーと光開始剤とを含む光硬化性粘着剤層(基材レス粘着シート)S1を得た。得られた粘着剤層S1の上記一方の表面に、剥離フィルムの剥離処理面を貼り合わせて保護した。なお、上記粘着剤組成物C1の塗布量および上記後塗工液E1の塗布量は、上記粘着剤層S1における各成分の含有量が下記表に示すとおりとなり、かつ該粘着剤層S1の厚さが25μmとなるように調整した。
<例2>
 モノマー成分としての2EHA100部に、光開始剤(Omni.184)0.05部を配合し、例1と同様に紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
 上記プレポリマー組成物に、モノマー成分としての4HBAを13部、架橋剤としてのHDDAを0.05部、光開始剤(Omni.184)を0.05部、およびOL-1を1部添加して混合し、紫外線硬化型の粘着剤組成物C2を得た。
 粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C2を使用したこと以外は例1と同様にして、本例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S2を作製した。
<例3>
 モノマー成分としての2EHA100部に、光開始剤(Omni.184)0.05部を配合し、例1と同様に紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
 上記プレポリマー組成物に、モノマー成分としてのMOIを12部、架橋剤としてのHDDAを0.05部、光開始剤(Omni.184)を0.05部、およびOL-1を1部添加して混合し、紫外線硬化型の粘着剤組成物C3を得た。
 4HBA11部と光開始剤(Omni.651)1部とを混合して後塗工液E3を調製した。粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C3を使用し、後塗工液E1に代えて後塗工液E3を使用したこと以外は例1と同様にして、本例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S3を作製した。
<例4>
 モノマー成分としての2EHA100部およびアクリル酸(AA)13部の混合物に、光開始剤(Omni.184)0.05部を配合し、例1と同様に紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
 上記プレポリマー組成物に、架橋剤としてのHDDAを0.05部、光開始剤(Omni.184)を0.05部、およびテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)を4部添加して混合し、紫外線硬化型の粘着剤組成物C4を得た。
 グリシジルメタクリレート(GMA)11部と光開始剤(Omni.651)1部とを混合して後塗工液E4を調製した。粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C4を使用し、後塗工液E1に代えて後塗工液E4を使用したこと以外は例1と同様にして、本例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S4を作製した。
<例5~7>
 後塗工液の組成を表1に示すように変更した他は例2と同様にして、各例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S5~S7を作製した。
<例8>
 温度計、撹拌機、窒素導入管等を備えた反応容器に、2EHA85部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)15部の配合比でモノマー混合物を用意し、このモノマー混合物100部に対して、アゾ系重合開始剤としてのN,N’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部と、重合溶媒としての酢酸エチルを投入して、窒素ガス気流下約60℃で溶液重合を行い、アクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。この溶液に、0.02部のOL-1および12部のMOIを加えて付加反応させ、炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを調製した。上記炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液に、該アクリルポリマーの固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(三井化学株式会社製の商品名「タケネートD-101E」)を固形分で1部、光開始剤(Omni.651)を1部となる割合で添加した。このようにして、溶剤型の粘着剤組成物C8(固形分50%)を調製した。
 剥離処理されたポリエステルフィルムの剥離処理面に上記粘着剤組成物C8を塗布して120℃で3分間乾燥し、さらに50℃で24時間のエージングを行うことにより、本例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S8を作製した。
<例9>
 上記溶液重合において、AIBN0.2部に代えて、ペルオキシド系重合開始剤であるベンゾイルペルオキシド(日油社製の商品名「ナイパーBMT-40SV」)0.2部を使用した。その他の点については例8と同様にして、本例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S9を作製した。
<例10、11>
 表2に示す種類および量のモノマーをプレポリマー組成物にさらに添加した他は例1と同様にして、各例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S10、S11を作製した。なお、表2において、「ACMO」はN-アクリロイルモルホリンを表し、「NVP」はN-ビニル-2-ピロリドンを表す。
<例12>
 モノマー成分としてのn-ブチルアクリレート(BA)100部および4HBA22部の混合物に、光開始剤(Omni.184)0.05部を配合し、例1と同様に紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を得た。
 上記プレポリマー組成物に、架橋剤としてのHDDAを0.05部、光開始剤(Omni.184)を0.05部、およびOL-1を1部添加して混合し、紫外線硬化型の粘着剤組成物C12を得た。
 MOI18部と、光開始剤(Omni.651)1部とを混合して、後塗工液E12を調製した。粘着剤組成物C1に代えて粘着剤組成物C12を使用し、後塗工液E1に代えて後塗工液E12を使用したこと以外は例1と同様にして、本例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S12を作製した。
<例13>
 表2に示す種類および量のモノマーをプレポリマー組成物にさらに添加した他は例12と同様にして、本例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)S13を作製した。
<測定および評価>
 [炭素-炭素二重結合量]
 各例により得られた粘着剤層(粘着剤層S1~S13)に含まれる炭素-炭素二重結合の量(未反応二重結合量)を、下記式により算出した。
 炭素-炭素二重結合含有量[mol/100g]=((後塗工液に含まれる炭素-炭素二重結合含有化合物の部数[部]×該炭素-炭素二重結合含有化合物1分子に含まれる炭素-炭素二重結合の個数)/粘着剤配合部数合計[部])×100[g]/該炭素-炭素二重結合含有化合物の分子量[g/mol]
 [光開始剤量]
 各例により得られた粘着剤層に含まれる光開始剤の量(未反応光開始剤量)を、下記式により算出した。
 光開始剤量[mol/100g]=(後塗工液に含まれる光開始剤の部数[部]/粘着剤配合部数合計[部])×100[g]/該光開始剤の分子量[g/mol]
 [アゾ系およびペルオキシド系重合開始剤量]
 各例により得られた粘着剤層から約3mgの試料を採取し、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)法により180℃で1時間保持時のアウトガス分析を行うことにより測定した。具体的な測定条件は、下記のとおりである。測定結果に基づいて、上記粘着剤層におけるアゾ系重合開始剤量とペルオキシド系重合開始剤との合計含有量(分解物や残存物の形態で含まれる分量を含む。)を求めた。
 (分析装置)
 加熱装置:GERSTEL, TDU2
 GC/MS:Agilent Technologies, 8890/5977B
 (測定条件)
 TDU条件(試料):30℃(1min)→720℃/min→180℃(60min)
 TDU条件(標品):30℃(1min)→720℃/min→300℃(5min)
 CIS条件:-150℃(2.5min)→12℃/sec→300℃(10min)
 GC/MS条件
  カラム:HP-Ultra1(0.20mmφ×25m,df=0.33μm)
  カラム温度:40℃(5min)→10℃/min→100℃→20℃/min→300℃(9min)
  カラム圧力:定流量モード(113kPa,Vac)
  カラム流量:1mL/min(He)
  注入方法:CIS,Split(20:1)
  検出器:MS
  イオン源温度:230℃
  イオン化方法:EI(70eV)
  スキャン範囲:m/z10~800
 [有機溶剤含有量]
 各例により得られた粘着剤層から約3mgの試料を採取し、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)法により180℃で1時間保持時のアウトガス分析を行うことにより、粘着剤層における有機溶剤含有量を測定した。具体的な測定条件は、上記のとおりである。
 [動的粘弾性測定]
 各例により得られた粘着剤層(基材レス粘着シート)を積層して約2mmの厚みとし、直径7.9mmの円盤状に打ち抜いたものを測定用サンプルとした。Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System (ARES)」を用いて、以下の条件により動的粘弾性測定を行うことにより、25℃における初期弾性率G’および損失弾性率G”を求めた。
 (測定条件)
 変形モード:ねじり
 測定周波数:1Hz
 昇温速度:5℃/分
 形状:パラレルプレート 7.9mmφ
 次に、上記測定用サンプルに対し、照度300mW/cm、積算光量3000mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った。処理後のサンプルを用いて上記方法で動的粘弾性測定を行うことにより、25℃における硬化処理後弾性率G’を求めた。
 得られた初期弾性率G’[Pa]および硬化処理後弾性率G’[Pa]の値から、下記式により貯蔵弾性率G’の増加率を算出した。
 貯蔵弾性率G’の増加率[%]=(R/Q-1)×100
(式中、Qは初期弾性率G’であり、Rは硬化処理後弾性率G’である。)
 [ヤング率(硬化処理後ヤング率)]
 各例により得られた粘着剤層(基材レス粘着シート)に、該粘着剤層が2枚の剥離フィルムに挟まれた形態で、下記条件で紫外線を照射する硬化処理を行った。次いで、上記粘着剤層を上記剥離フィルムごと幅80mm、長さ30mmのサイズにカットした。この幅80mmは、該幅方向に沿う断面における粘着剤層の断面積が約2mmとなるように、上記粘着剤層の厚さに応じて設定した幅である。次いで、上記粘着剤層から一方の剥離フィルムを除去し、他方の剥離フィルム上で上記粘着剤層をその長さ方向を軸として気泡が入らないように巻き取ることにより、長さ30mmの棒状試料を作製した。
 上記棒状試料を引張試験機(ORIENTEC社製、商品名「RTC-1150A」)にセットし、測定温度23℃、チャック間距離10mm、引張速度300mm/minの条件でSSカーブを測定した。上記SSカーブの立ち上がりから初期弾性率を求め、これを硬化処理後の粘着剤層の引張弾性率(硬化処理後ヤング率)とした。
 (UV照射条件)
 UV照射機:日東精機社製、商品名「NEL SYSTEM UM810」、高圧水銀灯光源(特性波長365nm)
 照射量:照度60mW/cm、積算光量300mJ/cm
 [ゲル分率]
 各例により得られた粘着剤層(基材レス粘着シート)に、該粘着剤層が2枚の剥離フィルムに挟まれた形態で、下記条件で紫外線を照射する硬化処理を行った。次いで、上記粘着剤層から約0.5gの測定サンプルを採取して精秤した(重さW1)。この測定サンプルを多孔質PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シートに包んで室温で1週間酢酸エチルに浸漬した後、乾燥させて、酢酸エチル不溶解分の重さ(重さW2)を計測した。上記重さW1およびW2を以下の式:
 ゲル分率[%]=W2/W1×100;
に代入して、硬化処理後の粘着剤層のゲル分率を算出した。上記多孔質PTFEシートとしては、日東電工社製の商品名「ニトフロンNTF1122」を使用した。
 (UV照射条件)
 UV照射機:日東精機社製、商品名「NEL SYSTEM UM810」、高圧水銀灯光源(特性波長365nm)
 照射量:照度60mW/cm、積算光量300mJ/cm
 [180度剥離強度]
 各例により得られた粘着剤層(基材レス粘着シート)から一方の剥離ライナーを剥がし、厚さ50μmの透明なPETフィルムを貼り合わせて裏打ちした後、幅20mm、長さ80mmの短冊状にカットして試験片を作製した。23℃、50%RHの環境下において、上記試験片から他方の剥離ライナーを剥がし、被着体としてのシリコンウエハ(信越化学社製、6インチN<100>-100)のミラー面にハンドローラーで貼り合わせた。これにオートクレーブ処理(50℃、5atm、15分間)を行った後、23℃、50%RHの環境下において、引張試験機(ミネベア社製、万能引張圧縮試験機、装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」)を用いて、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で上記試験片を上記シリコンウエハから引き剥がし、このときの剥離強度を測定した。測定は3回行い、それらの算術平均値を初期剥離強度の値とした。
 また、上記オートクレーブ処理の後、上記PETフィルム側から下記の条件で紫外線(UV)を照射する硬化処理を行った後に上記試験片を上記シリコンウエハから引き剥がしたこと以外は、上記初期剥離強度の測定と同様にして、硬化処理後剥離強度を測定した。
 (UV照射条件)
 UV照射機:日東精機社製、商品名「NEL SYSTEM UM810」、高圧水銀灯光源(特性波長365nm)
 照射量:照度60mW/cm、積算光量300mJ/cm
 得られた初期剥離強度[N/20mm]および硬化処理後剥離強度[N/20mm]の値から、下記式により剥離力低下率(剥離強度低下率)を算出した。
 剥離力低下率[%]=(1-B/A)×100
(式中のAは初期剥離強度であり、Bは硬化処理後剥離強度である。)
 得られた結果を、各例に係る粘着剤層の概要とともに表1、2に示す。表2中の例1は、表1中の例1を再掲したものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 表1、2に示されるように、例1~6、10~13に係る粘着剤層は、紫外線照射により剥離強度が半分以下に低下し、易剥離化性に優れていた。例1~6、10~13に係る粘着剤層は、このように優れた性能を示すものでありながら、アゾ系またはペルオキシド系重合開始剤を用いた溶液重合を行うことなく得られた溶剤フリーの粘着剤組成物を用い、該粘着剤組成物から各例に係る粘着剤層を得る過程でも有機溶剤を使用しない方法で製造することができるので、環境衛生の観点から望ましい。
 一方、例7に係る粘着剤層は、光照射に対して例1~6、例10~13のような硬化性(特性変化)を示さなかった。なお、表1に示す例8、例9に係る粘着剤層は、例8ではアゾ系重合開始剤、例9ではペルオキシド系重合開始剤を用いた溶液重合により得られたアクリル系ポリマーに、溶液中の反応により炭素-炭素二重結合を導入して得られたアクリル系ポリマー(炭素-炭素二重結合を有するアクリル系ポリマー)をベースポリマーとして含む溶剤系粘着剤組成物を、塗布、乾燥させて得られたものである。例8、9の粘着剤層は、このような製造過程を反映して、アゾ系およびペルオキシド系重合開始剤量が13~96μg/100gという高い値であり、残存溶剤量(有機溶剤含有量)も明らかに多いことがわかる。
 以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
  1,2  粘着シート
 10  粘着剤層
 10A 一方の表面(粘着面)
 10B 他方の表面
 20  基材
 20A 第一面
 20B 第二面(背面)
 30,31,32  剥離ライナー
 50  剥離ライナー付き粘着シート

 

Claims (8)

  1.  光照射により硬化する粘着剤層を有する粘着シートであって、
     前記粘着剤層は、アゾ系重合開始剤およびペルオキシド系重合開始剤の合計含有量が1.0μg/g以下であり、
     下記式より求められる剥離強度低下率が50%以上である、粘着シート。
     剥離強度低下率[%]=(1-B/A)×100
    (式中のAは、シリコンウエハに貼り付けた後、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される初期剥離強度(単位:[N/20mm])であり、式中のBは、シリコンウエハに貼り付けて積算光量300mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った後に、引張速度300mm/min、剥離角度180度の条件で測定される硬化処理後剥離強度(単位:[N/20mm])である。)
  2.  前記硬化処理後剥離強度が1.0N/20mm未満である、請求項1に記載の粘着シート。
  3.  前記粘着剤層は、炭素-炭素二重結合を有するポリマーを含む、請求項1に記載の粘着シート。
  4.  前記炭素-炭素二重結合を有するポリマーは、1分子中に2以上のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマーにより架橋している、請求項3に記載の粘着シート。
  5.  前記粘着剤層は、1.0×10-4mol/100g以上の炭素-炭素二重結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
  6.  前記粘着剤層は、1.0×10-4mol/100g以上の光開始剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
  7.  前記粘着剤層は、積算光量300mJ/cmの紫外線を照射する硬化処理を行った後に測定されるゲル分率が70%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
  8.  前記粘着剤層は、有機溶剤の含有量が1.0μg/g以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
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