WO2023277190A1

WO2023277190A1 - 保護カバー部材、部材供給用シート及び微小電気機械システム

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Publication number: WO2023277190A1
Application number: PCT/JP2022/026516
Authority: WO
Inventors: 栄作田中; 健郎井上; 恭子石井
Original assignee: 日東電工株式会社
Priority date: 2021-07-02
Filing date: 2022-07-01
Publication date: 2023-01-05
Also published as: CN117651746A; US20240286389A1; JPWO2023277190A1; DE112022003389T5; KR20240031338A

Abstract

提供される保護カバー部材は、開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置される部材であって、前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、粘着層と、を含む積層体から構成される。前記保護膜の主面に垂直な方向から見て前記粘着層と一致する前記保護膜の部分を前記保護膜の固定部として定めたときに、前記保護膜における前記粘着層に面する側とは反対側の露出面は、前記垂直な方向から見たときに前記固定部と重複すると共に、メタノールに対する接触角が５５度以上である領域Ａを有する。上記保護カバー部材は、保護膜と粘着層とを含む部材であって、粘着層の面積を縮小することに適している。

Description

保護カバー部材、部材供給用シート及び微小電気機械システム

　本発明は、開口を有する面を持つ対象物の当該面に配置される保護カバー部材と、保護カバー部材を供給するための部材供給用テープ及び保護カバー部材を備える微小電気機械システムと、に関する。

　開口を有する面を持つ対象物の当該面に配置されて上記開口への異物の侵入を防ぐ保護カバー部材が知られている。特許文献１には、ポリテトラフルオロエチレン（以下、ＰＴＦＥと記載）を主成分とし、音の透過を許容しつつ水滴等の異物が透過することを阻止する多孔質膜と、多孔質膜を別部品に固定するために多孔質膜の少なくとも一方の主面上の制限された領域に配置された粘着層である耐熱性両面粘着シートと、を備える部材が開示されている。特許文献１では、対象物である回路基板の表面に部材を固定する両面粘着シートの基材に着目することで、ハンダリフロー時の高温に対する部材の耐熱性の確保が試みられている。

特開２００７－８１８８１号公報

　近年、微小電気機械システム（Micro Electro Mechanical Systems；以下、ＭＥＭＳと記載）等の微細な製品の開口に対して保護カバー部材を配置する要請がある。また、外表面だけではなく、製品内部の面に保護カバー部材を配置する要請もあり、対応のために、保護膜の小面積化が進む状況にある。この状況では、保護膜を介した通気性及び／又は通音性をできるだけ確保するためには、通気及び通音の妨げとなる粘着層の面積を縮小する、例えば保護膜の周縁部に配置された粘着層の幅を狭くする、ことが余儀なくされる。

　本発明は、保護膜と粘着層とを含む保護カバー部材であって、粘着層の面積を縮小することに適した保護カバー部材の提供を目的とする。

　本発明は、
　開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置される保護カバー部材であって、
　前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、粘着層と、を含む積層体から構成され、
　前記保護膜の主面に垂直な方向から見て前記粘着層と一致する前記保護膜の部分を前記保護膜の固定部として定めたときに、前記保護膜における前記粘着層に面する側とは反対側の露出面は、
　前記垂直な方向から見たときに前記固定部と重複すると共に、メタノールに対する接触角が５５度以上である領域Ａ、
　を有する、保護カバー部材、
　を提供する。

　別の側面から、本発明は、
　基材シートと、前記基材シート上に配置された１又は２以上の保護カバー部材と、を備え、
　前記保護カバー部材は、上記本発明の保護カバー部材である部材供給用シート、
　を提供する。

　別の側面から、本発明は、
　上記本発明の保護カバー部材を備える微小電気機械システム、
　を提供する。

　本発明によれば、保護膜と粘着層とを含む保護カバー部材であって、粘着層の面積を縮小することに適した保護カバー部材が達成される。

図１Ａは、本発明の保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。図１Ｂは、図１Ａの保護カバー部材１を保護膜２の側から見た平面図である。図１Ｃは、図１Ａの保護カバー部材１を粘着層３の側から見た平面図である。図２Ａは、保護膜の露出面が領域Ａを有さない場合の流動体のはみ出しを説明するための模式図である。図２Ｂは、保護膜の露出面が領域Ａを有する場合に流動体がとりうる状態の一例を示す模式図である。図３は、本発明の保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。図４は、本発明の保護カバー部材の対象物への配置の態様の一例を模式的に示す断面図である。図５は、本発明の保護カバー部材の対象物への配置の態様の一例を模式的に示す断面図である。図６は、本発明の保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。図７は、本発明の保護カバー部材の一例を模式的に示す断面図である。図８は、本発明の部材供給用シートの一例を模式的に示す平面図である。

　本発明の第１態様にかかる保護カバー部材は、
　開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置される保護カバー部材であって、
　前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、粘着層と、を含む積層体から構成され、
　前記保護膜の主面に垂直な方向から見て前記粘着層と一致する前記保護膜の部分を前記保護膜の固定部として定めたときに、前記保護膜における前記粘着層に面する側とは反対側の露出面は、
　前記垂直な方向から見たときに前記固定部と重複すると共に、メタノールに対する接触角が５５度以上である領域Ａ、
　を有する。

　本発明の第２態様において、例えば、第１態様にかかる保護カバー部材では、前記固定部における前記反対側の露出面の全体において、メタノールに対する接触角が５５度以上である。

　本発明の第３態様において、例えば、第１又は第２態様にかかる保護カバー部材では、前記固定部は、前記垂直な方向から見て前記保護膜の周縁部に位置する。

　本発明の第４態様において、例えば、第１から第３態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記粘着層は前記保護膜と接している。

　本発明の第５態様において、例えば、第１から第４態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記粘着層は、前記保護膜に対して、前記保護カバー部材における前記対象物の面への配置側に位置する。

　本発明の第６態様において、例えば、第１から第５態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記粘着層は、熱硬化性粘着剤組成物から形成された層を含む。

　本発明の第７態様において、例えば、第６態様にかかる保護カバー部材では、前記熱硬化性粘着剤組成物の貯蔵弾性率は、１３０～１７０℃において１．０×１０³Ｐａ以上である。

　本発明の第８態様において、例えば、第６又は第７態様にかかる保護カバー部材では、前記熱硬化性粘着剤組成物の熱硬化後の貯蔵弾性率は、１３０～１７０℃において１．０×１０⁸Ｐａ以下である。

　本発明の第９態様において、例えば、第１から第８態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記保護膜の主面に垂直な方向から見て、前記粘着層は、前記保護膜の周縁部に配置されており、前記保護膜の中心から前記保護膜の外周に至る線分のうち最短の前記線分の長さＬ₁に対する、前記最短の線分における前記粘着層と重複する部分の長さＬ₂の比Ｌ₂／Ｌ₁が０．５以下である。

　本発明の第１０態様において、例えば、第１から第９態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記保護膜は厚さ方向の通気性を有する。

　本発明の第１１態様において、例えば、第１から第１０態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記保護膜は多孔質膜又は微多孔膜を含み、前記多孔質膜及び前記微多孔膜の平均孔径は０．０１μｍ以上３μｍ未満である。

　本発明の第１２態様において、例えば、第１から第１１態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記保護膜はポリテトラフルオロエチレン膜を含む。

　本発明の第１３態様において、例えば、第１から第１２態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記保護膜の面積が１７５ｍｍ²以下である。

　本発明の第１４態様において、例えば、第１から第１３態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材では、前記積層体は、前記保護膜に対して前記粘着層の側に位置する基材フィルムを更に含む。

　本発明の第１５態様において、例えば、第１から第１４態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材は、微小電気機械システム（ＭＥＭＳ）用である。

　本発明の第１６態様において、例えば、第１５態様にかかる保護カバー部材は、前記ＭＥＭＳの内部に配置して使用される。

　本発明の第１７態様にかかる部材供給用シートは、
　基材シートと、前記基材シート上に配置された１又は２以上の保護カバー部材と、を備え、
　前記保護カバー部材は、第１から第１６態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材である。

　本発明の第１８態様にかかる微小電気機械システムは、
　第１から第１６態様のいずれか１つの態様にかかる保護カバー部材を備える。

　以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。

　［保護カバー部材］
　本実施形態の保護カバー部材の一例を図１Ａ、図１Ｂ及び図１Ｃに示す。図１Ｂは、図１Ａの保護カバー部材１を保護膜２の側から見た平面図である。図１Ｃは、図１Ａの保護カバー部材１を粘着層３の側から見た平面図である。図１Ａには、図１Ｂ及び図１Ｃの断面１Ａ－１Ａが示されている。図１Ｂ及び図１Ｃでは、保護膜２の主面に垂直な方向から保護カバー部材１を見ている。保護カバー部材１は、開口を有する面を持つ対象物の当該面（配置面）に配置される部材である。配置面への保護カバー部材１の配置により、例えば、上記開口への及び／又は上記開口からの異物の侵入、換言すれば、上記開口を介した異物の侵入、を防止しうる。保護カバー部材１は、保護膜２と粘着層３とを含む積層体４から構成される。保護膜２は、保護カバー部材１が配置面に配置されたときに上記開口を覆う形状を有する。粘着層３は保護膜２と接合している。保護カバー部材１は、粘着層３により、対象物の配置面に固定できる。

　保護膜２の主面に垂直な方向から見て、粘着層３と一致する保護膜２の部分を保護膜２の固定部２１として定めることができる。保護膜２における粘着層３に面する側とは反対側の露出面２２は、保護膜２の主面に垂直な方向から見たときに固定部２１と重複すると共に、メタノールに対する接触角θ_Mが５５度以上である領域Ａを有する。

　粘着層３の面積を縮小すると、保護膜２と粘着層３との接合及び接合の維持が難しくなる。両者の接合をより確実とするためには、熱プレス等の熱加圧処理を利用することが考えられる。しかし、本発明者らの検討によれば、特に熱加圧処理を利用して両者を接合した場合には、保護膜２の粘着層３側ではなく、粘着層３側とは反対側に他の部材を組み合わせる際に、保護カバー部材１の通気性や通音性が損なわれる傾向にあることが判明した。更なる検討によれば、上記傾向は、典型的には、他の部材を保護カバー部材１に接合する粘着剤や他の部材を配置する前に保護膜２に施される表面処理の処理液等の流動体５が、保護膜２の固定部２１から通気／通音領域２３にまで拡がって当該領域２３を塞ぐことに起因する（図２Ａ参照）。本実施形態の保護カバー部材１では、露出面２２が領域Ａを有することにより、固定部２１から通気／通音領域２３への流動体５のはみ出しを抑制できる（図２Ｂ参照）。なお、粘着剤等に通常含まれる有機溶剤の表面張力（２０℃）は、通常、２０－４０ｍＮ／ｍ程度の範囲にある。これを考慮し、上記範囲の下限に近い表面張力（２２．５ｍＮ／ｍ；２０℃）を有するメタノールに対する接触角θ_Mを定める。

　領域Ａの接触角θ_Mは、５８度以上、６０度以上、６３度以上、６５度以上、６８度以上、７０度以上、７３度以上、更には７５度以上であってもよい。領域Ａの接触角θ_Mの上限は、例えば、１３０度以下であり、１２０度以下、１１０度以下、１００度以下、９０度以下、８５度以下、８０度以下、７５度以下、更には７３度未満であってもよい。接触角θ_Mは、日本産業規格（以下、ＪＩＳと記載）Ｒ３２５７に定められた静滴法（ただし、水滴の代わりに、体積２μＬのメタノール滴を使用する）に準拠して評価できる。評価温度は、２５℃とする。

　領域Ａの接触角θ_Mは、例えば、保護膜２の材質及び特性（厚さ、平均孔径、空孔率、露出面２２の状態、表面自由エネルギー、表面粗さ等）、保護膜２に対する各種の処理の有無、粘着層３の特性（厚さ、貯蔵弾性率、表面自由エネルギー等）、粘着層３の形成に用いた粘着剤組成物の組成及び特性（貯蔵弾性率、表面自由エネルギー等）、並びに保護膜２と粘着層３との接合条件等によって変化する。

　領域Ａの形状は、保護膜２の主面に垂直な方向から見たときに固定部２１と重複する限り、限定されない。なお、領域Ａにおける固定部２１と重複する部分の接触角θ_Mがある角度θ₁（例えば５５度）以上であれば、領域Ａの接触角θ_Mはθ₁以上であるとする。

　図１Ａ～図１Ｃの保護カバー部材１では、固定部２１における上記反対側の露出面２２の全体、換言すれば、保護膜２の主面に垂直な方向から見たときに露出面２２における固定部２１に一致する部分の全体、において、接触角θ_Mが５５度以上である。

　図１Ａ～図１Ｃの固定部２１は、保護膜２の主面に垂直な方向から見て、保護膜２の周縁部に位置している。また、図１Ａ～図１Ｃの固定部２１の形状は、上記垂直な方向から見て、額縁状である。ただし、固定部２１の形状及び保護膜２における位置は、上記例に限定されない。なお、上記垂直な方向から見て、保護膜２における固定部２１に囲まれた領域２３は、保護カバー部材１において気体及び／又は音が主として透過可能な通気／通音領域となりうる。

　領域２３の面積は、例えば２０ｍｍ²以下であり、１５ｍｍ²以下、１２．５ｍｍ²以下、１０ｍｍ²以下、７．５ｍｍ²以下、５ｍｍ²以下、２．５ｍｍ²以下、２ｍｍ²以下、更には１．５ｍｍ²以下であってもよい。領域２３の面積が上記範囲にある保護カバー部材１は、例えば、小径の開口を通常有する回路基板やＭＥＭＳへの配置に適している。領域２３の面積の下限は、例えば、０．００８ｍｍ²以上である。ただし、領域２３の面積は、保護カバー部材１が配置される対象物の種類によっては、より大きな範囲であってもよい。

　領域Ａと領域２３とは、保護膜２の主面に垂直な方向から見て、重複していてもよい。

　図１Ａ～図１Ｃの粘着層３は、保護膜２と接している。より具体的には、粘着層３は保護膜２と接合している。ただし、粘着層３と保護膜２との間には、他の層が配置されていてもよい。粘着層３と保護膜２との接合には、熱プレス等の熱加圧処理を利用してもよい。

　粘着層３に含まれる成分（以下、粘着層３の成分と記載）は、保護膜２の内部に浸透していなくても、浸透していてもよい。粘着層３の成分が保護膜２の内部に浸透している場合、浸透は、保護膜２の露出面２２に達していなくてもよい。保護膜２の内部に浸透していない態様を含め、浸透が露出面２２に達していないことは、露出面２２が領域Ａを有することに寄与しうる。本発明者らの検討によれば、粘着層３の成分の浸透は、粘着層３と保護膜２との接合時に、とりわけ、粘着層３が熱硬化性粘着剤組成物から形成された層である場合や熱加圧処理を利用して粘着層３と保護膜２とを接合する場合に、生じやすい。

　保護膜２の内部への粘着層３の成分の浸透の程度は、例えば、保護膜２に対する上記成分の最大浸透深さにより表すことができる。最大浸透深さは、保護膜２の厚さ未満であってもよく、保護膜２の厚さの９５％以下、９０％以下、７０％以下、５０％以下、３０％以下、更には１０％以下であってもよい。

　図１Ａ～図１Ｃの粘着層３は、保護膜２の主面に垂直な方向から見て、保護膜２の一部の領域に配置されている。粘着層３の形状は、上記垂直な方向から見て、保護膜２の周縁部の形状であり、より具体的には、額縁状である。粘着層３が配置されていない保護膜２の領域２３において、粘着層３が配置されている領域に比べて良好な通気及び／又は通音が可能となる。ただし、粘着層３の形状は、上記例に限定されない。例えば、主面に垂直な方向から見た保護膜２の形状が円形である場合、粘着層３の形状は、上記垂直な方向から見てリング状であってもよい。

　粘着層３の厚さは、例えば３～２００μｍであり、５～１００μｍ、１０～５０μｍ、更には２０～４０μｍであってもよい。

　粘着層３の面積は、合計で、例えば０．１～１０ｍｍ²であり、０．５～５ｍｍ²、０．８～４ｍｍ²、更には１～３ｍｍ²であってもよい。額縁状である粘着層３の幅（固定部２１の幅にも相当）は、例えば５０～３０００μｍであり、１００～１０００μｍ、１５０～８００μｍ、更には２００～５００μｍであってもよい。

　図１Ａ～図１Ｃの粘着層３は、保護膜２の主面に垂直な方向から見て、保護膜２の周縁部に配置されている。このとき、上記垂直な方向から見て、保護膜２の中心Ｏから保護膜２の外周に至る線分のうち最短の線分Ｓ_minの長さＬ₁に対する、当該線分Ｓ_minにおける粘着層３と重複する部分の長さＬ₂の比Ｌ₂／Ｌ₁は、０．５以下であってもよく、０．３以下、０．２以下、更には０．１以下であってもよい。比Ｌ₂／Ｌ₁の下限は、例えば０．０５以上である。なお、保護膜２の中心Ｏは、保護膜２の主面に垂直な方向から見たときの保護膜２の形状の重心として定めることができる。

　粘着層３は、粘着剤組成物から形成された層（以下、層Ｂと記載）を含む。粘着層３は、層Ｂからなる単層構造を有していても、層Ｂを含む積層構造を有していてもよい。積層構造は、２以上の層Ｂを有していてもよい。

　粘着層３は、基材と、基材の少なくとも一方の面に配置された層Ｂとを含んでいてもよい。当該態様の一例を図３に示す。図３の粘着層３は、基材３２と、基材３２の双方の面に各々設けられた層Ｂ３１とを有する。一方の層Ｂ３１は、保護膜２と接している。他方の層Ｂ３１は、対象物の配置面に対する保護カバー部材１の接合面１１を構成する。各々の層Ｂ３１の構成は、互いに同一であっても異なっていてもよい。

　基材３２の例は、樹脂、金属又はこれらの複合材料のフィルム、不織布及びフォームである。樹脂の例は、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）等のポリエステル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥＥＫ）並びにフッ素樹脂である。フッ素樹脂の例は、ポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）、テトラフルオロエチレン－パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体（ＰＦＡ）、テトラフルオロエチレン－ヘキサフルオロプロピレン共重合体（ＦＥＰ）及びテトラフルオロエチレン－エチレン共重合体（ＥＴＦＥ）である。金属の例は、ステンレス及びアルミニウムである。ただし、樹脂及び金属は、上記例に限定されない。

　基材３２は、耐熱性材料を含んでいてもよい。耐熱性材料を含む基材３２を備えた保護カバー部材１は、保護カバー部材１を構成する他の層の材料によっては、高温下での使用に適している。耐熱性材料の例は、金属及び耐熱性樹脂である。耐熱性樹脂は、典型的には、１５０℃以上の融点を有する。耐熱性樹脂の融点は、１６０℃以上、２００℃以上、２２０℃以上、２４０℃以上、２５０℃以上、２６０℃以上、更には３００℃以上であってもよい。耐熱性樹脂の例は、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ＰＥＥＫ及びフッ素樹脂である。フッ素樹脂は、ＰＴＦＥであってもよい。ＰＴＦＥは、耐熱性に特に優れている。

　層Ｂ３１を形成しうる粘着剤組成物の例は、熱硬化性粘着剤組成物、感圧性粘着剤組成物及び紫外線（ＵＶ）硬化性粘着剤組成物である。層Ｂ３１は熱硬化性粘着剤組成物から形成されていてもよく、換言すれば、粘着層３は熱硬化性粘着剤組成物から形成された層（以下、熱硬化性粘着層と記載）を含んでいてもよい。熱硬化性粘着層を含む粘着層３は、熱加圧処理による保護膜２との接合に、より適している。熱硬化性粘着層は、例えば、熱硬化性粘着剤組成物Ｃの塗布及び乾燥により形成される。

　粘着剤組成物Ｃの貯蔵弾性率Ｇ’は、１３０～１７０℃において１．０×１０³Ｐａ以上であってもよい。１３０～１７０℃は、熱硬化性樹脂組成物の典型的な硬化温度及び熱加圧処理の典型的な温度に対応する。粘着剤組成物Ｃの貯蔵弾性率Ｇ’は、１３０～１７０℃において、３．０×１０³Ｐａ以上、５．０×１０³Ｐａ以上、７．０×１０³Ｐａ以上、１．０×１０⁴Ｐａ以上、４．６×１０⁴Ｐａ以上、５．０×１０⁴Ｐａ以上、６．０×１０⁴Ｐａ以上、７．０×１０⁴Ｐａ以上、１．０×１０⁵Ｐａ以上、３．０×１０⁵Ｐａ以上、５．０×１０⁵Ｐａ以上、７．０×１０⁵Ｐａ以上、更には９．０×１０⁵Ｐａ以上であってもよい。同温度域における貯蔵弾性率Ｇ^’の上限は、例えば５．０×１０⁶Ｐａ以下である。当該粘着剤組成物Ｃから形成された層を含む粘着層３は、加熱時における形状の保持性に優れることから、熱加圧処理による保護膜２との接合に、より適している。また、１３０～１７０℃における粘着剤組成物Ｃの貯蔵弾性率Ｇ^’が上記範囲にあることは、保護膜２の内部への粘着層３の成分の浸透を抑制することに寄与しうる。

　粘着剤組成物Ｃの熱硬化後の貯蔵弾性率Ｇ’は、１３０～１７０℃において１．０×１０⁸Ｐａ以下であってもよい。当該粘着剤組成物Ｃから形成された層を含む粘着層３は、硬すぎず、接合性に優れる。熱硬化後の貯蔵弾性率Ｇ’は、１３０～１７０℃において、５．０×１０⁷Ｐａ以下、３．０×１０⁷Ｐａ以下、１．８×１０⁷Ｐａ以下、１．７×１０⁷Ｐａ以下、１．０×１０⁷Ｐａ以下、５．０×１０⁶Ｐａ以下、２．０×１０⁶Ｐａ以下、１．０×１０⁶Ｐａ以下、更には９．６×１０⁵Ｐａ以下であってもよい。同温度域における熱硬化後の貯蔵弾性率Ｇ’の下限は、例えば５．０×１０⁴Ｐａ以上である。

　粘着剤組成物Ｃの熱硬化後の貯蔵弾性率Ｇ’は、２５０℃において１．０×１０⁵Ｐａ以上であってもよい。当該粘着剤組成物Ｃから形成された層を含む粘着層３は、面積が縮小された場合においても、ハンダリフロー等の高温処理における耐久性に優れる。熱硬化後の貯蔵弾性率Ｇ’は、２５０℃において、３．０×１０⁵Ｐａ以上、５．０×１０⁵Ｐａ以上、７．０×１０⁵Ｐａ以上、１．０×１０⁶Ｐａ以上、１．１×１０⁶Ｐａ以上、５．０×１０⁶Ｐａ以上、１．０×１０⁷Ｐａ以上、２．０×１０⁷Ｐａ以上、更には２．２×１０⁷Ｐａ以上であってもよい。同温度域における熱硬化後の貯蔵弾性率Ｇ^’の上限は、例えば５．０×１０⁸Ｐａ以下であり、１．０×１０⁸Ｐａ以下、更には５．０×１０⁷Ｐａ以下であってもよい。

　粘着剤組成物Ｃの貯蔵弾性率Ｇ’は、粘着剤組成物Ｃのフィルム又は熱硬化後のフィルム（長さ２２．５ｍｍ及び幅１０ｍｍ）を試験片とし、強制振動型固体粘弾性測定装置を用いて昇温速度１０℃／分で上記試験片を加熱して評価できる。ただし、試験片の測定方向（振動方向）は長さ方向とし、振動周波数は１Ｈｚとする。

　上記各貯蔵弾性率Ｇ’を満たしうる粘着剤組成物Ｃの例を、以下に説明する。ただし、粘着剤組成物Ｃは、以下の例に限定されない。

　粘着剤組成物Ｃは、例えば、アクリルポリマーを含むアクリル系組成物である。アクリル系組成物は、通常、粘着剤組成物のベースポリマーとしてアクリルポリマー（以下、アクリルポリマーＤと記載）を含む。アクリル系組成物におけるアクリルポリマーＤの含有率は、例えば３５重量％以上であり、４０重量％以上、５０重量％以上、６０重量％以上、７０重量％以上、８０重量％以上、更には９０重量％以上であってもよい。アクリルポリマーＤの含有率の上限は、例えば１００重量％以下であり、９５重量％以下、更には９０重量％以下であってもよい。

　アクリルポリマーＤの重量平均分子量は、好ましくは２０万以上であり、４０万以上、６０万以上、８０万以上、更には１００万以上であってもよい。アクリルポリマーＤの重量平均分子量の上限は、例えば５００万以下である。粘着剤組成物Ｃは、重量平均分子量２０万以上のアクリルポリマーＤを３５重量％以上の含有率で含んでいてもよい。

　粘着剤組成物Ｃは、熱硬化性であり、熱硬化性基を含む。熱硬化性基の例は、エポキシ基、ヒドロキシフェニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、アジリジニル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも１種である。熱硬化性基は、エポキシ基、ヒドロキシフェニル基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも１種であってもよく、エポキシ基及び／又はヒドロキシフェニル基であってもよい。なお、エポキシ基にはグリシジル基が含まれる。

　粘着剤組成物Ｃでは、アクリルポリマーＤが熱硬化性基を有していてもよい。この場合、後述する熱硬化性樹脂が熱硬化性基を有する場合に比べて、熱硬化後の架橋構造がより均質となり、熱硬化後の硬化粘着層の耐熱性が向上しうる。アクリルポリマーＤが有しうる熱硬化性基の例は、エポキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、アジリジニル基及びアミノ基から選ばれる少なくとも１種である。アクリルポリマーＤが有しうる熱硬化性基は、エポキシ基及び／又はカルボキシ基であってもよく、エポキシ基であってもよい。

　アクリルポリマーＤのガラス転移温度（Ｔｇ）は、例えば－１５～４０℃であり、－１０～３０℃、更には－５～２０℃であってもよい。

　粘着剤組成物Ｃは熱硬化性樹脂を更に含んでいてもよく、この場合、粘着剤組成物Ｃにおける熱硬化性樹脂の含有率は、好ましくは、粘着剤組成物ＣにおけるアクリルポリマーＤの含有率に比べて小さい。アクリルポリマーＤの含有率が大きいほど、１３０～１７０℃における粘着剤組成物Ｃの貯蔵弾性率Ｇ’は向上しうる。熱硬化性樹脂は熱硬化性基を有していてもよく、熱硬化性基を有する熱硬化性樹脂は架橋剤として機能しうる。熱硬化性基の例は上述のとおりである。

　粘着剤組成物Ｃにおける熱硬化性樹脂の含有量は、例えば５０重量％以下であり、４０重量％以下、３５重量％以下、３０重量％以下、２０重量％以下、１５重量％以下、更には１０重量％以下であってもよい。熱硬化性樹脂の含有率の下限は、例えば０重量％以上であり、５重量％以上であってもよい。粘着剤組成物Ｃは、熱硬化性樹脂を含まなくてもよい。

　熱硬化性樹脂の例は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂である。ただし、熱硬化性樹脂は、上記例に限定されない。熱硬化性樹脂がフェノール樹脂及び／又はエポキシ樹脂である場合、特にフェノール樹脂である場合、熱硬化後の硬化粘着層の耐熱性が向上しうる。

　フェノール樹脂の例は、フェノールノボラック樹脂、フェノールビフェニル樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert－ブチルフェノールノボラック樹脂及びノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、並びにレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂である。ただし、フェノール樹脂は、上記例に限定されない。

　フェノール樹脂の水酸基価は、例えば１００～５００ｇ／ｅｑであり、１００～４００ｇ／ｅｑであってもよい。

　熱硬化性樹脂の重量平均分子量は、例えば１００～３０００であり、１５０～２０００であってもよい。

　熱硬化性樹脂は、公知の製法により形成できる。

　アクリルポリマーＤの組成の例について説明する。ただし、アクリルポリマーＤは、以下の組成を有するものに限定されない。

　アクリルポリマーＤは、以下の単量体から選ばれる少なくとも１種の単量体に由来する構成単位Ｅを有していてもよい：メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート及びヘキシルアクリレート等の炭素数１～８のアルキル基を有するアルキルアクリレート；メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート及びヘキシルメタクリレート等の炭素数１～８のアルキル基を有するアルキルメタクリレート；アクリロニトリル；スチレン；アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸及びクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー；無水マレイン酸及び無水イタコン酸等の酸無水物モノマー；（メタ）アクリル酸２－ヒドロキシエチル、（メタ）アクリル酸２－ヒドロキシプロピル、（メタ）アクリル酸４－ヒドロキシブチル、（メタ）アクリル酸６－ヒドロキシヘキシル、（メタ）アクリル酸８－ヒドロキシオクチル、（メタ）アクリル酸１０－ヒドロキシデシル、（メタ）アクリル酸１２－ヒドロキシラウリル及び（４－ヒドロキシメチルシクロヘキシル）－メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー；スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、２－（メタ）アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸、（メタ）アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル（メタ）アクリレート及び（メタ）アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー；並びに２－ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー。構成単位Ｅの好ましい例は、炭素数１～４のアルキル基を有するアルキルアクリレート、炭素数１～４のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及びアクリロニトリルから選ばれる少なくとも１種の単量体に由来する単位であり、より好ましい例は、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及びアクリロニトリルから選ばれる少なくとも１種の単量体に由来する単位である。アクリルポリマーＤは、エチルアクリレートに由来する単位、ブチルアクリレートに由来する単位及びアクリロニトリルに由来する単位の全てを構成単位として有することが好ましい。なお、構成単位Ｅは、熱硬化性基を有さない。

　アクリルポリマーＤにおける構成単位Ｅの含有率は、例えば７０重量％以上であり、８０重量％以上、更には９０重量％以上であってもよい。アクリルポリマーＤは、構成単位Ｅから構成されていてもよい。

　アクリルポリマーＤがアクリロニトリルに由来する単位（アクリロニトリル単位）を有する場合、アクリルポリマーＤにおける当該単位の含有率は、例えば５重量％以上であり、１０重量％以上、１５重量％以上、更には２０重量％以上であってもよい。当該単位の含有率の上限は、例えば４０重量％以下である。

　アクリルポリマーＤは、熱硬化性基を有する構成単位Ｆを有していてもよい。構成単位Ｆの例は、熱硬化性基が導入されたアルキルアクリレート及び熱硬化性基が導入されたアルキルメタクリレートに由来する単位である。熱硬化性基、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの具体例は、上述のとおりである。構成単位Ｆのより具体的な例は、グリシジルメチルアクリレート、グリシジルエチルアクリレート、グリシジル２－エチルヘキシルアクリレート、カルボキシメチルアクリレート及びアジリジニルメチルアクリレートである。アクリルポリマーＤは構成単位Ｆを有さなくてもよいが、この場合は、通常、熱硬化性基を有する熱硬化性樹脂を粘着剤組成物Ｃが含む。

　アクリルポリマーＤが構成単位Ｆを有する場合、アクリルポリマーＤにおける構成単位Ｆの含有率は、例えば３０～９５重量％であり、４０～９０重量％であってもよい。この場合、構成単位Ｅの含有率は上記例示した範囲になくてもよく、構成単位Ｅの含有率と構成単位Ｆの含有率との合計は、例えば７０重量％以上であり、８０重量％以上、更には９０重量％以上であってもよい。アクリルポリマーＤは、構成単位Ｅ及び構成単位Ｆから構成されていてもよい。

　アクリルポリマーＤがエポキシ基を有する構成単位Ｆを有する場合、アクリルポリマーＤのエポキシ価は、例えば０．１５～０．６５ｅｑ／ｋｇであり、０．２０～０．５０ｅｑ／ｋｇであってもよい。

　アクリルポリマーＤは、溶液重合、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合等の公知の重合法により形成できる。

　粘着剤組成物Ｃは、フィラーを含んでいてもよい。フィラーの例は、無機フィラー及び有機フィラーである。粘着剤組成物Ｃについて取り扱い性の向上、溶融粘度の調整及びチキソトロピック性の付与等の観点からは、無機フィラーが好ましい。

　無機フィラーの例は、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム及び窒化ホウ素である。シリカは、結晶質シリカであっても非晶質シリカであってもよい。有機フィラーの例は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ナイロン及びシリコーンである。

　フィラーの平均粒径は、例えば０．００５～１０μｍであり、０．０５～１μｍであってもよい。平均粒径が相互に異なるフィラー同士を組み合わせてもよい。フィラーの平均粒径は、光度式の粒度分布計（例えば、ＨＯＲＩＢＡ製、装置名；ＬＡ－９１０）により求めることができる。

　フィラーの形状の例は、球状及び楕円体状である。

　粘着剤組成物Ｃは、上述した以外の他の成分を含んでもよい。他の成分の例は、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤及び熱硬化促進触媒等の添加剤である。

　難燃剤の例は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン及び臭素化エポキシ樹脂である。シランカップリング剤の例は、β－（３、４－エポキシシクロヘキシル）エチルトリメトキシシラン、γ－グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びγ－グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランである。イオントラップ剤の例は、ハイドロタルサイト類及び水酸化ビスマスである。熱硬化促進触媒の例は、トリフェニルフォスフィン骨格、アミン骨格、トリフェニルボラン骨格又はトリハロゲンボラン骨格を有する塩である。

　層Ｂ３１を形成しうる感圧性粘着剤組成物の例は、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系及びゴム系の各粘着剤組成物である。

　保護膜２は、厚さ方向に非通気性であっても、厚さ方向の通気性を有していてもよい。保護膜２が厚さ方向の通気性を有する場合、保護カバー部材１の配置により、対象物の開口を介した異物の侵入を防ぎながら上記開口の通気性を確保できる。通気性の確保により、例えば、対象物の開口を介した圧力の調整や圧力の変動の緩和が可能となる。圧力の変動を緩和する一例を以下に示す。回路基板に設けられた貫通孔の一方の開口を覆うように半導体素子を配置した状態で、ハンダリフロー等の加熱処理を施すことがある。ここで、他方の開口を覆うように保護カバー部材１を配置することで、加熱処理時における貫通孔を介した素子への異物の侵入を抑制できる。保護膜２が厚さ方向の通気性を有すると、加熱による貫通孔内の圧力上昇が緩和されて、圧力上昇による素子の損傷を防ぐことができる。半導体素子の例は、マイクロフォン、圧力センサー及び加速度センサー等のＭＥＭＳである。これらの素子は、通気及び／又は通音可能な開口を有しており、当該開口が上記貫通孔に面するように回路基板に配置しうる。保護カバー部材１は、製造後の半導体素子の開口を覆うように当該素子に配置されてもよい。素子の内部に配置することもできる。保護膜２が厚さ方向の通気性を有する場合、配置された保護カバー部材１は、例えば、対象物の開口を介した異物の侵入を防ぎながら当該開口を介した通気性を確保する通気部材、及び／又は、対象物の開口を介した異物の侵入を防ぎながら当該開口を介した通音性を確保する通音部材として機能しうる。なお、保護膜２が厚さ方向に非通気性である場合にも、保護膜２の振動による音の伝達が可能であることから、配置後の保護カバー部材１は通音部材として機能しうる。

　厚さ方向の通気性を有する保護膜２の通気度は、ＪＩＳ　Ｌ１０９６に定められた通気性測定Ｂ法（ガーレー形法）に準拠して求めた空気透過度（ガーレー通気度）により表示して、例えば０．１秒／１００ｍＬ以上１万秒／１００ｍＬ以下である。ガーレー通気度の下限は０．１５秒／１００ｍＬ以上であってもよく、０．３秒／１００ｍＬ以上、０．５秒／１００ｍＬ以上、更には０．６秒／１００ｍＬ以上であってもよい。ガーレー通気度の上限は、５０００秒／１００ｍＬ以下、１０００秒／１００ｍＬ以下、３００秒／１００ｍＬ以下、２００秒／１００ｍＬ以下、更には１００秒／１００ｍＬ未満であってもよい。なお、１万秒／１００ｍＬを超える保護膜２は、厚さ方向に非通気性の膜であると判断できる。

　保護膜２は、防水性を有していてもよい。防水性を有する保護膜２を備える保護カバー部材１は、対象物への配置後に、例えば防水通気部材及び／又は防水通音部材として機能しうる。防水性を有する保護膜２の耐水圧は、ＪＩＳ　Ｌ１０９２に定められた耐水度試験Ａ法（低水圧法）又はＢ法（高水圧法）に準拠して求めた値にして、例えば５ｋＰａ以上である。

　保護膜２を構成する材料の例は、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。

　保護膜２を構成しうる樹脂及び金属の例は、粘着層３の基材３２を構成しうる樹脂及び金属の例と同じである。ただし、樹脂及び金属は、上記例に限定されない。

　保護膜２は、耐熱性材料から構成されてもよい。耐熱性材料の例は、基材３２の説明において上述したとおりである。

　保護膜２は、ＰＴＦＥ膜を含んでいてもよい。

　保護膜２は多孔質膜又は微多孔膜を含んでいてもよい。厚さ方向の通気性を有する保護膜２は、多孔質膜又は微多孔膜を含みうる。なお、厚さ方向の通気度がガーレー数により表示して２０秒／１００ｍＬ以下の膜を多孔質膜と、２０秒／１００ｍＬを超え１万秒／１００ｍＬ以下の膜を微多孔膜と、それぞれ判断できる。

　多孔質膜及び微多孔膜の平均孔径は、０．０１μｍ以上３μｍ未満であってもよい。平均孔径の下限は、０．０１μｍ以上、０．０５μｍ以上、更には０．１μｍ以上であってもよい。平均孔径の上限は、３μｍ以下、３μｍ未満、２．５μｍ以下、２μｍ以下、１．５μｍ以下、更には１μｍ以下であってもよい。３μｍ未満の平均孔径を有する多孔質膜又は微多孔膜を含む保護膜２は、粘着層３との接合時、特に熱加圧処理を利用した接合時、における粘着層３の成分の浸透を抑制することに特に適している。０．０１μｍ以上の平均孔径を有する多孔質膜又は微多孔膜を含む保護膜２は、粘着層３との接合時、特に熱加圧処理を利用した接合時、における粘着層３の成分の領域２３へのはみ出しや粘着層３の変形を抑制することに適している。保護膜の平均孔径は、ＡＳＴＭ　Ｆ３１６－８６に準拠して評価できる。

　多孔質膜は、延伸多孔質膜であってもよい。延伸多孔質膜は、フッ素樹脂の延伸多孔質膜、特にＰＴＦＥ延伸多孔質膜、であってもよい。ＰＴＦＥ延伸多孔質膜は、通常、ＰＴＦＥ粒子を含むペースト押出物又はキャスト膜を延伸して形成される。ＰＴＦＥ延伸多孔質膜は、ＰＴＦＥの微細なフィブリルにより構成され、フィブリルに比べてＰＴＦＥが凝集した状態にあるノードを有することもある。ＰＴＦＥ延伸多孔質膜によれば、異物の侵入を防ぐ性能及び通気性を高いレベルで両立させることが可能である。保護膜２には、公知の延伸多孔質膜を使用できる。

　厚さ方向の通気性を有する保護膜２は、双方の主面を接続する複数の貫通孔が形成された穿孔膜を含んでいてもよい。穿孔膜は、非多孔質の基質構造を有する原膜、例えば無孔膜、に複数の貫通孔が設けられた膜であってもよい。穿孔膜は、上記複数の貫通孔以外に、厚さ方向の通気経路を有していなくてもよい。貫通孔は、穿孔膜の厚さ方向に延びていてもよく、厚さ方向に直線状に延びるストレート孔であってもよい。貫通孔の開口の形状は、穿孔膜の主面に垂直に見て、円又は楕円であってもよい。穿孔膜は、例えば、原膜に対するレーザー加工、又は、イオンビーム照射及びこれに続く化学エッチングによる孔開け加工により形成できる。

　厚さ方向の通気性を有する保護膜２は、不織布、織布、メッシュ、ネットを含んでいてもよい。

　保護膜２は、上記例に限定されない。

　図１Ａ～図１Ｃの保護膜２の形状は、その主面に垂直な方向から見て、長方形である。ただし、保護膜２の形状は上記例に限定されず、例えば、上記垂直な方向から見て、正方形及び長方形を含む多角形、円、楕円であってもよい。多角形は、正多角形であってもよい。多角形の角は、丸められていてもよい。

　保護膜２の厚さは、例えば、１～１００μｍである。

　保護膜２の面積は、例えば、１７５ｍｍ²以下であり、１５０ｍｍ²以下、１２５ｍｍ²以下、１００ｍｍ²以下、７５ｍｍ²以下、５０ｍｍ²以下、２５ｍｍ²以下、２０ｍｍ²以下、１５ｍｍ²以下、１０ｍｍ²以下、７．５ｍｍ²以下、５ｍｍ²以下、更には２．５ｍｍ²以下であってもよい。保護膜２の面積が上記範囲にある保護カバー部材１は、例えば、小径の開口を通常有する回路基板やＭＥＭＳへの配置に適している。保護膜２の面積の下限は、例えば、０．２０ｍｍ²以上である。ただし、保護膜２の面積は、保護カバー部材１が配置される対象物の種類によっては、上記範囲より大きくてもよい。

　保護膜２の目付（単位面積あたりの重量）は、例えば１～３０ｇ／ｍ²である。目付の下限は、０．５ｇ／ｍ²以上、０．８ｇ／ｍ²以上、１．０ｇ／ｍ²以上、１．２ｇ／ｍ²以上、１．４ｇ／ｍ²以上、１．５ｇ／ｍ²以上、１．７ｇ／ｍ²以上、２．０ｇ／ｍ²以上、２．５ｇ／ｍ²以上、更には３．０ｇ／ｍ²超であってもよい。目付の上限は、２５ｇ／ｍ²以下、２２ｇ／ｍ²以下、２０ｇ／ｍ²以下、１８ｇ／ｍ²以下、１５ｇ／ｍ²以下、１３ｇ／ｍ²以下、１０ｇ／ｍ²以下、８ｇ／ｍ²以下、６ｇ／ｍ²以下、５ｇ／ｍ²以下、４ｇ／ｍ²以下、３ｇ／ｍ²以下、２．５ｇ／ｍ²以下、２ｇ／ｍ²以下、更には１．８ｇ／ｍ²以下であってもよい。

　保護膜２には、撥水処理、撥液処理、着色処理等の各種の処理がなされていてもよい。各種の処理は、公知の方法に基づき実施できる。

　保護膜２として、メタノールに対する接触角θ_Mが７５度以上の膜が使用されていてもよい。換言すれば、保護膜２の固有の接触角θ_Mは７５度以上であってもよい。保護膜２の固有の接触角θ_Mは、７７度以上、８０度以上、８２度以上、８５度以上、８７度以上、８９度以上、更には９０度以上であってもよい。上記範囲にある固有の接触角θ_Mを有する保護膜２は、粘着層３との接合時、特に熱加圧処理を利用した接合時、における粘着層３の成分の浸透を抑制することに特に適している。保護膜２の固有の接触角θ_Mは、例えば、保護膜２の材質及び特性（厚さ、平均孔径、空孔率、表面自由エネルギー、表面粗さ等）、及び保護膜２に対する各種の処理の有無により変化する。保護膜２の材質にもよるが、例えば、小さな平均孔径、低い空孔率、及び、撥水処理又は撥液処理の実施は、保護膜２の固有の接触角θ_Mを高めることに寄与しうる。

　保護カバー部材１に組み込まれた状態における保護膜２の固有の接触角θ_Mは、例えば、（Ｉ）露出面２２における、保護膜２の主面に垂直に見たときに固定部２１と一致する部分を除いた部分（例えば、通気／通音領域２３）、又は（II）保護膜２における粘着層３に面する側の露出面、に対する接触角θ_Mの評価により特定できる。

　保護カバー部材１の好ましい例は、以下の特徴Ｉ～IIIから選ばれる少なくとも１つの特徴を有している。好ましい例は、特徴Ｉ～IIIから選ばれる少なくとも２つの特徴を有していてもよく、特徴Ｉ～IIIの全てを有していてもよい。ただし、保護カバー部材１は、当該好ましい例に限定されない。
　Ｉ：保護膜２の固有の接触角θ_Mが７５度以上である。
　II：保護膜２が多孔質膜又は微多孔膜であり、かつ、その平均孔径は３μｍ未満又は上述した好ましい範囲にある。
　III：粘着層３が熱硬化性粘着層を含み、熱硬化性粘着層は熱硬化性粘着剤組成物Ｃから形成された層であり、１３０～１７０℃における粘着剤組成物Ｃの貯蔵弾性率Ｇ^’は１．０×１０³Ｐａ以上又は上述した好ましい範囲にある。

　図１Ａ～図１Ｃの保護カバー部材１の形状は、保護膜２の主面に垂直な方向から見て、長方形である。ただし、保護カバー部材１の形状は、上記例に限定されない。形状は、上記方向から見て、正方形及び長方形を含む多角形、円、楕円であってもよい。多角形は正多角形であってもよい。多角形の角は丸められていてもよい。

　保護カバー部材１の面積（保護膜２の主面に垂直な方向から見たときの面積）は、例えば、１７５ｍｍ²以下であり、１５０ｍｍ²以下、１２５ｍｍ²以下、１００ｍｍ²以下、７５ｍｍ²以下、５０ｍｍ²以下、２５ｍｍ²以下、２０ｍｍ²以下、１５ｍｍ²以下、１０ｍｍ²以下、７．５ｍｍ²以下、５ｍｍ²以下、更には２．５ｍｍ²以下であってもよい。面積が上記範囲にある保護カバー部材１は、例えば、小径の開口を通常有する回路基板やＭＥＭＳへの配置に適している。保護カバー部材１の面積の下限は、例えば、０．２０ｍｍ²以上である。ただし、保護カバー部材１の面積は、配置される対象物の種類によっては、より大きな値であってもよい。

　保護カバー部材１を配置する対象物の例は、ＭＥＭＳ等の半導体素子、及び回路基板である。換言すれば、保護カバー部材１は、半導体素子、回路基板又はＭＥＭＳを対象物とする半導体素子用、回路基板用又はＭＥＭＳ用の部材であってもよい。ＭＥＭＳは、パッケージの表面に通気孔を有する非密閉系の素子であってもよい。非密閉系ＭＥＭＳの例は、気圧、湿度、ガス、エアフロー等を検出する各種のセンサー及びスピーカーやマイクロフォン等の電気音響変換素子である。また、対象物は、製造後の半導体素子や回路基板に限られず、製造工程にあるこれらの素子や基板の中間製造物であってもよい。この場合、保護カバー部材１によって、製造工程における中間製造物の保護が可能となる。製造工程の例は、ハンダリフロー工程、ダイシング工程、ボンディング工程及び実装工程である。製造工程は、ハンダリフロー工程をはじめとして、高温下で実施される工程であってもよい。高温は、例えば２００℃以上であり、２２０℃以上、２４０℃以上、更には２６０℃以上であってもよい。ハンダリフロー工程は、通常、２６０℃程度で実施される。ただし、対象物は上記例に限定されない。

　図１Ａ～図１Ｃの保護カバー部材１の対象物に対する配置の態様の一例を図４に示す。図４の例では、開口５２を有する面５３を持つ対象物５１の当該面５３に、保護カバー部材１が配置されている。開口５２は、保護カバー部材１の配置により、保護膜２によって覆われる。図４の粘着層３は、保護膜２に対して、保護カバー部材１における対象物５１の面５３への配置側に位置する。保護カバー部材１は、粘着層３を介して、面５３に固定されている。この例では、粘着層３が、対象物５１の面５３との接合面１１を構成する。面５３への固定に、熱プレス等の熱加圧処理を利用してもよい。

　保護カバー部材１が配置されうる対象物の面は、例えば、対象物の外表面である。面は、対象物の内部の面であってもよい。面は、平面であっても曲面であってもよい。また、対象物の開口は、凹部の開口であっても、貫通孔の開口であってもよい。

　保護カバー部材１は、ＭＥＭＳ等の半導体素子又は回路基板の内部に配置して使用されてもよい。ＭＥＭＳの内部への配置の一例を図５に示す。図５には、本実施形態の保護カバー部材１を備えるＭＥＭＳの一例が示されている。図５のＭＥＭＳ６１は、ボトムポート（下部開口）型マイクロフォン素子である。ＭＥＭＳ６１は、開口６９を有する基板６２と、振動板６４を有するＭＥＭＳダイ６３と、キャップ（カバー）６６とを備える。開口６９は、通音口として機能する。ＭＥＭＳ６１の内部６７には、開口６９が保護膜２によって覆われるように、基板６２の内面６８を配置面として保護カバー部材１が配置されている。保護カバー部材１は、粘着層３を介して、内面６８に固定されている。内面６８への固定には、熱プレス等の熱加圧処理を利用してもよい。ＭＥＭＳダイ６３は、粘着層６５を介して保護カバー部材１に、より具体的には保護膜２に、接合されている。粘着層６５は、保護膜２に対して粘着層３とは反対側に位置すると共に、保護膜２に接している。また、粘着層６５は、保護膜２の主面に垂直な方向から見て、保護膜２の固定部２１と重複している（図５の例では、固定部２１と一致している）。

　粘着層６５は、例えば、流動体５である粘着剤組成物を保護膜２の露出面２２に塗布して形成される。粘着層６５を形成する粘着剤組成物は、粘着層３を形成しうる上述の粘着剤組成物から選択してもよい。ＭＥＭＳダイ６３が微細な部材であることから、微小な面積の塗布に特に適した粘着剤組成物、例えば液状粘着剤、を粘着層６５に使用してもよい。液状粘着剤は、例えば、メタノール等のアルコールを溶剤に使用した低粘度の粘着剤組成物である。液状粘着剤の粘度（２５℃）は、例えば、０．１～５００Ｐａ・ｓである。液状粘着剤の粘度は、例えば、ブルックフィールドＢ型粘度計により評価できる。液状粘着剤は、アルミナ等の無機化合物を主成分として含んでいてもよく、一般的な粘着剤が含むポリマー成分を実質的に含んでいなくてもよい。領域Ａを有する保護膜２を備えた本実施形態の保護カバー部材１は、液状粘着剤から形成された粘着層６５を介するＭＥＭＳダイ６３との接合に適している。本明細書において、主成分とは、含有率の最も大きな成分を意味する。主成分の含有率は、５０重量％以上、６０重量％以上、更には７０重量％以上であってもよい。

　ＭＥＭＳ６１は、上記説明した以外の任意の部品を備えうる。

　保護カバー部材１の積層体４は、保護膜２及び粘着層３以外の層を備えていてもよい。更なる層を備える保護カバー部材１の例を図６に示す。

　図６の積層体４は、保護膜２に対して粘着層３の側に位置する基材フィルム６を更に含む。基材フィルム６により、例えば、保護カバー部材１の剛性を高めることができる。また、保護カバー部材１を部材供給用シートにより供給する場合には、部材供給用シートからの保護カバー部材１のピックアップ性を向上できる。

　図６の基材フィルム６は、粘着層３に対して保護膜２側とは反対側に配置されている。基材フィルム６と粘着層３とは互いに接している。ただし、基材フィルム６の位置は上記例に限定されない。基材フィルム６は、保護膜２と粘着層３との間に配置されていてもよい。

　図６の積層体４は、１つの基材フィルム６を含む。積層体４は、２以上の基材フィルム６を含んでいてもよい。２以上の基材フィルム６が、それぞれ、保護膜２と粘着層３との間、及び粘着層３に対して保護膜２側とは反対側に配置されていてもよい。

　図６の保護カバー部材１は、基材フィルム６に対して粘着層３側とは反対側に設けられた更なる粘着層によって、対象物５１の面５３に配置できる。更なる粘着層を形成する粘着剤組成物は、上述の粘着剤組成物から選択できる。更なる粘着層は、積層体４に含まれていてもよい。

　基材フィルム６の材料は、保護膜２の材料として例示した材料から選択できる。基材フィルム６は、耐熱性材料から構成されていてもよい。耐熱性材料の例は、基材３２の説明において上述したとおりである。

　更なる層を備える保護カバー部材１の別の例を図７に示す。図７の積層体４は、保護膜２に対して粘着層３側とは反対側に位置するカバーフィルム７を更に備える。カバーフィルム７は、保護膜２の上に配置されている。カバーフィルム７と保護膜２との間には、他の層が配置されていてもよい。カバーフィルム７は、例えば、対象物に保護カバー部材１が配置されるまでの間、保護膜２を保護する保護フィルムとして機能する。カバーフィルム７は、対象物への保護カバー部材１の配置後に剥離してもよい。カバーフィルム７は、保護膜２の主面に垂直な方向から見て、保護膜２の全体を覆っていても、一部を覆っていてもよい。カバーフィルム７は、例えば、カバーフィルム７における保護膜２の側の面に設けられた粘着層を介して保護膜２上に配置できる。この粘着層は、弱粘着性であることが好ましい。

　図７のカバーフィルム７は、保護膜２の主面に垂直な方向から見て、保護膜２の外周よりも外方に突出した部分であるタブ７１を有する。タブ７１は、カバーフィルム７の剥離に利用可能である。ただし、カバーフィルム７の形状は、上記例に限定されない。

　カバーフィルム７を構成する材料の例は、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。カバーフィルム７を構成しうる材料の具体例は、基材３２を構成しうる材料の具体例と同じである。

　カバーフィルム７の厚さは、例えば、２００～１０００μｍである。

　保護カバー部材１は、例えば、保護膜２の主面に粘着剤組成物を所定のパターンで配置し、配置した粘着剤組成物から粘着層３を形成して製造できる。配置する粘着剤組成物は、熱硬化性粘着剤組成物であってもよく、粘着剤組成物Ｃであってもよい。粘着層３の形成には、熱加圧処理を利用してもよい。本発明者らの検討によれば、熱加圧処理は、縮小された面積を有する粘着層３の形成に適している。熱加圧処理は、保護膜２の主面に粘着剤組成物を配置した状態で実施できる。熱加圧処理の温度は、例えば５０～３００℃であり、５０～２５０℃であってもよい。圧力は、例えば１～５００ｋＰａであり、１～１００ｋＰａであってもよい。熱加圧処理の例は、熱プレス、熱ラミネートである。

　［部材供給用シート］
　本発明の部材供給用シートの一例を図８に示す。図８の部材供給用シート８１は、基材シート８２と、基材シート８２上に配置された複数の保護カバー部材１とを備える。部材供給用シート８１は、保護カバー部材１を供給するためのシートである。部材供給用シート８１によれば、例えば、対象物の面に配置する工程に対して、保護カバー部材１を効率的に供給できる。

　図８の例では、基材シート８２上に２以上の保護カバー部材１が配置されている。基材シート８２上に配置された保護カバー部材１の数は、１つであってもよい。

　図８の例では、基材シート８２上に２以上の保護カバー部材１が規則的に配置されている。より具体的には、保護カバー部材１は、基材シート８２の表面に垂直に見て、各々の保護カバー部材１の中心が長方格子の交点（格子点）に位置するように配置されている。ただし、規則的に配置された保護カバー部材１の配列は上記例に限定されない。各々の保護カバー部材１の中心が、正方格子、斜方格子、菱形格子等の種々の格子の交点に位置するように規則的に配置されていてもよい。また、保護カバー部材１の配置の態様は、上記例に限定されない。例えば、基材シート８２の表面に垂直に見て、保護カバー部材１が千鳥状に配置されていてもよい。なお、保護カバー部材１の中心は、基材シート８２の表面に垂直な方向から見たときの当該部材１の形状の重心として定めることができる。

　基材シート８２を構成する材料の例は、紙、金属、樹脂及びこれらの複合材料である。金属の例は、ステンレス及びアルミニウムである。樹脂の例は、ＰＥＴ等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル（好ましくは、軟質塩化ビニル）である。ただし、基材シート８２を構成する材料は、上記例に限定されない。

　保護カバー部材１は、当該部材１が備える粘着層（例えば粘着層３）を介して基材シート８２上に配置されていてもよい。このとき、基材シート８２における保護カバー部材１の配置面には、基材シート８２からの離型性を向上させる離型処理が施されていてもよい。離型処理は、公知の方法により実施できる。

　保護カバー部材１は、基材シート８２における保護カバー部材１の配置面に設けられた粘着層、典型的には弱粘着層、を介して基材シート８２上に配置されていてもよい。

　基材シート８２の厚さは、例えば、１～２００μｍである。

　図８の基材シート８２は、長方形の形状を有する枚葉状である。枚葉状である基材シート８２の形状は上記例に限定されず、正方形及び長方形を含む多角形、円、楕円等であってもよい。基材シート８２が枚葉状である場合、部材供給用シート８１は枚葉の状態で流通及び使用できる。基材シート８２は帯状であってもよく、この場合、部材供給用シート８１も帯状となる。帯状の部材供給用シート８１は、巻芯に巻回した巻回体として流通できる。

　部材供給用シート８１は、基材シート８２の表面に保護カバー部材１を配置して製造できる。

　以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。

　最初に、評価方法を記載する。

　［重量平均分子量］
　アクリルポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー（ＧＰＣ）により評価した。ＧＰＣは、ＴＳＫ　Ｇ２０００Ｈ　ＨＲ、Ｇ３０００Ｈ　ＨＲ、Ｇ４０００Ｈ　ＨＲ及びＧＭＨ－Ｈ　ＨＲの４本のカラム（いずれも東ソー製）を直列に接続し、溶雛液にテトラヒドロフランを用いて、流速１ｍＬ／分、温度４０℃、サンプル濃度０．１重量％、テトラヒドロフラン溶液及びサンプルの注入量５００μＬの条件で実施した。また、検出器には示差屈折計を用いた。

　［ガラス転移温度（Ｔｇ）］
　アクリルポリマーのＴｇは、粘弾性測定装置（レオメトリックサイエンティフィック製、ＲＳＡ－ＩＩＩ）を用い、昇温速度１０℃／分及び周波数１ＭＨｚの測定条件により評価したｔａｎδ（＝損失弾性率／貯蔵弾性率）のピークから算出した。

　［エポキシ価］
　アクリルポリマーのエポキシ価は、ＪＩＳ　Ｋ７２３６の規定に準拠して評価した。具体的には次のとおりである。評価対象物であるアクリルポリマー４ｇを内容量１００ｍＬのコニカルフラスコに秤量し、これにクロロホルム１０ｍＬを加えて溶解させた。更に、酢酸３０ｍＬ、テトラエチルアンモニウムブロマイド５ｍＬ及びクリスタルバイオレット指示薬５滴を加えて、マグネチックスターラーで撹拌しながら、濃度０．１ｍｏｌ／Ｌの過塩素酸酢酸規定液で滴定した。同様の方法でブランクテストを行い、下記式によりエポキシ価を算出した。
　式：エポキシ価＝［（Ｖ－Ｖ_B）×０．１×Ｆ］／４（ｇ）
　Ｖ_B：ブランクテストに要した過塩素酸酢酸規定液の体積（ｍＬ）
　Ｖ：試料の滴定に要した過塩素酸酢酸規定液の体積（ｍＬ）
　Ｆ：過塩素酸酢酸規定液のファクター

　［１３０～１７０℃における貯蔵弾性率Ｇ^’］
　熱硬化性樹脂組成物について、１３０～１７０℃における貯蔵弾性率Ｇ^’は、次のように評価した。最初に、作製した熱硬化性樹脂組成物を、シリコーンによる離型処理が表面になされたＰＥＴシート（厚さ５０μｍ）の当該表面に塗布して塗布膜（厚さ２５μｍ）を形成し、上記組成物の熱硬化がほぼ進行しない条件である１３０℃及び短時間（２分間）の加熱にて塗布膜を乾燥させてフィルムとした。次に、得られたフィルムをＰＥＴフィルムから剥離すると共に、長さ２２．５ｍｍ及び幅１０ｍｍに切り出して試験片とした。次に、強制振動型固体粘弾性測定装置（レオメトリックサイエンティフィック製、ＲＳＡ－ＩＩＩ）を用いて、上記試験片を０℃から２６０℃まで昇温速度１０℃／分で加熱して、１３０～１７０℃における貯蔵弾性率Ｇ^’を評価した。試験片の測定方向（振動方向）は長さ方向とし、振動周波数は１Ｈｚとした。

　［熱硬化後、１３０～１７０℃又は２５０℃における貯蔵弾性率Ｇ^’］
　熱硬化性樹脂組成物について、熱硬化後の１３０～１７０℃又は２５０℃における貯蔵弾性率Ｇ’は、次のように評価した。最初に、貯蔵弾性率Ｇ^’の評価と同様に、ＰＥＴフィルム上に熱硬化性樹脂組成物の塗布膜を形成した。次に、上記組成物の熱硬化が進行する条件である１７０℃及び６０分間のキュアにて、塗布膜を硬化フィルムとした。次に、得られた硬化フィルムをＰＥＴフィルムから剥離すると共に、長さ２２．５ｍｍ及び幅１０ｍｍに切り出して試験片とした。次に、上記固体粘弾性測定装置を用いて試験片を０℃から２６０℃まで昇温速度１０℃／分で加熱して、１３０～１７０℃における貯蔵弾性率Ｇ’及び２５０℃における貯蔵弾性率Ｇ^’を評価した。試験片の測定方向（振動方向）は長さ方向とし、振動周波数は１Ｈｚとした。

　［厚さ方向の通気度］
　保護膜の厚さ方向の通気度は、ＪＩＳ　Ｌ１０９６：２０１０に定められた通気性測定Ｂ法（ガーレー形法）に準拠して、空気透過度（ガーレー通気度）として求めた。

　［平均孔径］
　保護膜の平均孔径は、ＡＳＴＭ　Ｆ３１６－８６に準拠した測定が可能であるＰｏｒｏｕｓ　Ｍａｔｅｒｉａｌｓ　Ｉｎｃ．製、Ａｕｔｏｍａｔｅｄ　ｐｅｒｍ　ｐｏｒｏｍｅｔｅｒを使用して求めた。

　［メタノールに対する接触角θ_M］
　準備した保護膜の主面、及び保護膜と粘着層との積層体における保護膜の露出面（保護カバー部材が備える保護膜の固定部における露出面に相当）について、メタノールに対する接触角θ_Mは、ＪＩＳ　Ｒ３２５７に定められた静滴法に準拠した評価が可能であるデータフィジックスインストゥルメンツ製、Ｃｏｎｔａｃｔ　Ａｎｇｌｅ　Ｓｙｓｔｅｍ　ＯＣＡ　３０により評価した。ただし、評価は、体積２μＬのメタノール滴を水滴の代わりに使用して実施した。評価温度は２５℃とした。

　［流動体５の拡がり評価］
　保護膜と粘着層との積層体における保護膜の露出面について流動体５が拡がる程度は、以下のように評価した。流動体５として、粘着剤（スリーボンド製、ＴＢ３７３２）及びメタノールを重量比３：５で混合して得た液状粘着剤を準備した。次に、液状粘着剤を保護膜の露出面に２μＬ滴下し、滴下した直後の液滴の高さを上記Ｃｏｎｔａｃｔ　Ａｎｇｌｅ　Ｓｙｓｔｅｍ　ＯＣＡ　３０により評価した。液滴の高さ（露出面から液滴の頂部までの距離に相当）が０．０５ｍｍ超を維持している場合を優（〇）、０．０５ｍｍ以下となった場合を劣（×）と判断した。評価は２５℃で実施した。

　［保護膜の準備］
　保護膜として、以下のＰＴＦＥ膜ａ～ｆを準備した。

　（ＰＴＦＥ膜ａ）
　ＰＴＦＥ微粉末（ＡＧＣ株式会社製、Ｆｌｕｏｎ　ＣＤ１２３Ｅ）１００重量部に対して液状潤滑剤（ｎ－ドデカン、株式会社ジャパンエナジー製）２０重量部を均一に混合し、これをシリンダーにより圧縮した後にラム押出機により押出して、長手方向に延びるシート状成形体を得た。このシート状成形体を、液状潤滑剤が含まれた状態で金属製圧延ロール間に通し、厚さ０．２ｍｍとなるように圧延した。その後、シート状成形体を１５０℃に加熱することにより液状潤滑剤を除去し、シート状成形体を乾燥させた。その後、シート状成形体を、３００℃において長手方向に２．５倍の倍率で延伸し、２００℃において幅方向に２０倍の倍率で延伸した後、ＰＴＦＥの融点以上の温度である４００℃で焼成して、膜厚１５μｍ、面密度５ｇ／ｍ²、厚さ方向の通気度１．３秒／１００ｍＬ、平均孔径１μｍのＰＴＦＥ膜ａを得た。

　（ＰＴＦＥ膜ｂ）
　ＰＴＦＥ膜ａに対して撥液処理を実施して、ＰＴＦＥ膜ｂを得た。撥液処理は、撥液処理液（撥液剤である信越化学製Ｘ－７０－０２９Ｃを濃度１．５重量％となるように信越化学製ＦＳシンナーにより希釈した溶液）にＰＴＦＥ膜ａを３秒間浸漬し、引き上げた後、常温で３０分間放置して乾燥させることで実施した。ＰＴＦＥ膜ｂの膜厚、面密度、厚さ方向の通気度及び平均孔径は、それぞれ、１５μｍ、５．５ｇ／ｍ²、４．０秒／１００ｍＬ及び１μｍであった。

　（ＰＴＦＥ膜ｃ）
　ＰＴＦＥ粒子の分散液（ＰＴＦＥ粒子の濃度４０質量％、ＰＴＦＥ粒子の平均粒径０．２μｍ、ＰＴＦＥ１００質量部に対してノニオン性界面活性剤を６質量部含有）に、フッ素系界面活性剤（ＤＩＣ製、メガファックＦ－１４２Ｄ）をＰＴＦＥ１００質量部に対して１質量部加えた。次に、フッ素系界面活性剤を加えた上記ＰＴＦＥ分散液の塗布膜（厚さ２０μｍ）を、帯状のポリイミド基板（厚さ１２５μｍ）の表面に形成した。塗布膜は、ポリイミド基板をＰＴＦＥ分散液に浸漬した後、引き上げることで形成した。次に、基板及び塗布膜の全体を加熱して、ＰＴＦＥのキャスト膜を形成した。加熱は、第１の加熱（１００℃、１分）と、その後の第２の加熱（３９０℃、１分）との２段階とした。第１の加熱によって、塗布膜に含まれる分散媒の除去が、第２の加熱によって、塗布膜に含まれるＰＴＦＥ粒子の結着に基づくキャスト膜の形成が進行した。上記浸漬及びその後の加熱を更に２回繰り返した後、形成されたＰＴＦＥキャスト膜（厚さ２５μｍ）をポリイミド基板から剥離した。次に、剥離したキャスト膜をＭＤ方向（長手方向）に圧延し、さらにＴＤ方向（幅方向）に延伸した。ＭＤ方向の圧延は、ロール圧延により実施した。圧延の倍率（面積倍率）は２．０倍、温度（ロール温度）は１７０℃とした。ＴＤ方向の延伸は、テンター延伸機により実施した。ＴＤ方向の延伸の倍率は２．０倍、温度（延伸雰囲気の温度）は３００℃とした。このようにして、膜厚１０μｍ、面密度１４ｇ／ｍ²、厚さ方向の通気度１００秒／１００ｍＬ、平均孔径０．１μｍのＰＴＦＥ膜ｃを得た。

　（ＰＴＦＥ膜ｄ）
　ＰＴＦＥ膜ｄとして、日東電工株式会社製ＮＴＦ１０３３を準備した。ＰＴＦＥ膜ｄの膜厚は２０μｍ、面密度は４．４ｇ／ｍ²、厚さ方向の通気度は０．６秒／１００ｍＬ、平均孔径は３μｍであった。

　（ＰＴＦＥ膜ｅ）
　ＰＴＦＥ微粉末（ダイキン工業株式会社製、ポリフロン　Ｆ１０１ＨＥ）１００重量部に対して液状潤滑剤（ｎ－ドデカン、株式会社ジャパンエナジー製）２０重量部を均一に混合し、これをシリンダーにより圧縮した後にラム押出機により押出して、長手方向に延びるシート状成形体を得た。このシート状成形体を、液状潤滑剤が含まれた状態で金属製圧延ロール間に通し、厚さ０．２ｍｍとなるように圧延した。その後、シート状成形体を１５０℃に加熱することにより液状潤滑剤を除去し、シート状成形体を乾燥させた。その後、シート状成形体を、２９０℃において長手方向に９倍の倍率で延伸し、１５０℃において幅方向に５３倍の倍率で延伸した後、ＰＴＦＥの融点以上の温度である４００℃で焼成して、膜厚３μｍ、面密度１．５ｇ／ｍ²、厚さ方向の通気度１．５秒／１００ｍＬ、平均孔径０．３５μｍのＰＴＦＥ膜ｅを得た。

　（ＰＴＦＥ膜ｆ）
　ＰＴＦＥ膜ｅに対して撥液処理を実施して、ＰＴＦＥ膜fを得た。撥液処理は、撥液処理液（撥液剤である信越化学製Ｘ－７０－０４３を濃度１．５重量％となるように信越化学製ＦＳシンナーにより希釈した溶液）にＰＴＦＥ膜ｅを３秒間浸漬し、引き上げた後、常温で乾燥させることで実施した。ＰＴＦＥ膜ｆの膜厚、面密度、厚さ方向の通気度及び平均孔径は、それぞれ、３μｍ、１．７ｇ／ｍ²、２．０秒／１００ｍＬ及び０．３８μｍであった。

　各ＰＴＦＥ膜の主面に対する接触角θ_M（ＰＴＦＥ膜の固有の接触角θ_M）の評価結果を以下の表１に示す。

　［粘着剤組成物の準備］
　粘着層に使用する熱硬化性粘着剤組成物として、以下の組成物ａ～ｃを準備した。

　（組成物ａ）
　アクリルポリマーＤとしてブチルアクリレート－エチルアクリレート－アクリロニトリル－アクリル酸共重合体（根上工業製、重量平均分子量８０万、酸価５ｍｇＫＯＨ／ｇ、Ｔｇマイナス１５℃）９重量部、並びに熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂（明和化成製ＭＥＨ７８５１ＳＳ）２６重量部及びエポキシ樹脂（三菱化学製ＹＬ９８０と、ＤＩＣ製Ｎ－６６５－ＥＸＰ－Ｓとの重量比１：１の混合物）２５重量部をメチルエチルケトンに溶解させ、更に平均粒径５００ｎｍの球状シリカ（アドマテックス製ＳＥ２０５０）４０重量部を分散させて、濃度２３．６重量％の熱硬化性樹脂組成物ａを調製した。

　（組成物ｂ）
　アクリルポリマーＤとしてブチルアクリレート－エチルアクリレート－アクリロニトリル－アクリル酸共重合体（根上工業製、重量平均分子量４０万、酸価５ｍｇＫＯＨ／ｇ、Ｔｇマイナス１５℃）を、フェノール樹脂として明和化成製ＭＥＨ７８００Ｈを、それぞれ用いると共に、調製した組成物におけるアクリルポリマーＤ、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びシリカの含有率が、それぞれ、１１重量％、３２重量％、３２重量％及び２５重量％となるように各材料を配合した以外は組成物ａと同様にして、濃度２３．６重量％の熱硬化性樹脂組成物ｂを調製した。

　（組成物ｃ）
　アクリルポリマーＤとしてブチルアクリレート－エチルアクリレート－アクリロニトリル－グリシジルメチルアクリレート共重合体（根上工業製、重量平均分子量８０万、エポキシ価０．４ｅｑ／ｋｇ、Ｔｇ０℃）を用いると共に、エポキシ樹脂を使用せず、調製した組成物におけるアクリルポリマーＤ、フェノール樹脂及びシリカの含有率が、それぞれ、５２重量％、６重量％及び４２重量％となるように各材料を配合した以外は組成物ａと同様にして、濃度２３．６重量％の熱硬化性樹脂組成物ｃを調製した。

　粘着剤組成物ａ～ｃについて、１３０～１７０℃における貯蔵弾性率Ｇ’、熱硬化後の１３０～１７０℃における貯蔵弾性率Ｇ’及び熱硬化後の２５０℃における貯蔵弾性率Ｇ’の評価結果を以下の表２に示す。

　［保護膜と粘着層との積層体の作製］
　保護カバー部材が備える保護膜の固定部を想定して、保護膜と粘着層との積層体（サンプル１～１４）を以下のように作製した。作製には、熱プレスを利用した。具体的には、次のとおりである。

　（サンプル１）
　最初に、シリコーンによる離型処理が表面になされたＰＥＴシート（厚さ５０μｍ）の表面に組成物ａを塗布して、塗布膜（厚さ２０μｍ）を形成した。次に、１３０℃及び２分間の加熱にて塗布膜を乾燥させてフィルムとした。次に、得られたフィルムと保護膜としてＰＴＦＥ膜ａとを貼り合わせた後、形成された積層体を２０ｍｍ×２０ｍｍの正方形に切り出した。次に、一対のポリイミドフィルム（厚さ２５μｍ）によって積層体の全体を挟持し、ホットプレス機（テスター産業製、高精度ホットプレスＳＡ－４０１－Ｍ）を用いて、これを厚さ方向に熱プレスした。熱プレスの条件は、温度１３０℃、圧力２０ｋＰａ、時間１３秒とした。熱プレスの完了後、ポリイミドフィルムを剥離して、保護膜と粘着層との積層体を得た。

　（サンプル２～１４）
　保護膜であるＰＴＦＥ膜と、粘着剤組成物とを以下の表３に示すように選択した以外はサンプル１と同様にして、保護膜と粘着層との積層体であるサンプル２～１４を得た。

　各サンプルに対する評価結果を以下の表４に示す。

　本発明の保護カバー部材は、例えば、ＭＥＭＳ等の半導体素子及び／又は当該素子を備える回路基板の製造に利用できる。

Claims

　開口を有する面を持つ対象物の前記面に配置される保護カバー部材であって、
　前記保護カバー部材が前記面に配置されたときに前記開口を覆う形状を有する保護膜と、粘着層と、を含む積層体から構成され、
　前記保護膜の主面に垂直な方向から見て前記粘着層と一致する前記保護膜の部分を前記保護膜の固定部として定めたときに、前記保護膜における前記粘着層に面する側とは反対側の露出面は、
　前記垂直な方向から見たときに前記固定部と重複すると共に、メタノールに対する接触角が５５度以上である領域Ａ、
　を有する、保護カバー部材。
　前記固定部における前記反対側の露出面の全体において、メタノールに対する接触角が５５度以上である、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記固定部は、前記垂直な方向から見て前記保護膜の周縁部に位置する、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記粘着層は前記保護膜と接している、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記粘着層は、前記保護膜に対して、前記保護カバー部材における前記対象物の面への配置側に位置する、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記粘着層は、熱硬化性粘着剤組成物から形成された層を含む、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記熱硬化性粘着剤組成物の貯蔵弾性率は、１３０～１７０℃において１．０×１０³Ｐａ以上である、請求項６に記載の保護カバー部材。
　前記熱硬化性粘着剤組成物の熱硬化後の貯蔵弾性率は、１３０～１７０℃において１．０×１０⁸Ｐａ以下である、請求項６に記載の保護カバー部材。
　前記保護膜の主面に垂直な方向から見て、
　　前記粘着層は、前記保護膜の周縁部に配置されており、
　　前記保護膜の中心から前記保護膜の外周に至る線分のうち最短の前記線分の長さＬ₁に対する、前記最短の線分における前記粘着層と重複する部分の長さＬ₂の比Ｌ₂／Ｌ₁が０．５以下である、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記保護膜は厚さ方向の通気性を有する、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記保護膜は多孔質膜又は微多孔膜を含み、
　前記多孔質膜及び前記微多孔膜の平均孔径は０．０１μｍ以上３μｍ未満である、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記保護膜はポリテトラフルオロエチレン膜を含む、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記保護膜の面積が１７５ｍｍ²以下である請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記積層体は、前記保護膜に対して前記粘着層の側に位置する基材フィルムを更に含む、請求項１に記載の保護カバー部材。
　微小電気機械システム（ＭＥＭＳ）用である、請求項１に記載の保護カバー部材。
　前記ＭＥＭＳの内部に配置して使用される、請求項１５に記載の保護カバー部材。
　基材シートと、前記基材シート上に配置された１又は２以上の保護カバー部材と、を備え、
　前記保護カバー部材は、請求項１～１６のいずれかに記載の保護カバー部材である部材供給用シート。
　請求項１～１６のいずれかに記載の保護カバー部材を備える微小電気機械システム。