WO2023199603A1

WO2023199603A1 - 遠心機、それに用いる試料容器、及び、試料容器の蓋開閉用工具セット

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Publication number: WO2023199603A1
Application number: PCT/JP2023/006235
Authority: WO
Inventors: 卓矢山本; 悟史花野; 寛厚戸井; 勇輔澤; 拓也岸; 淳佐藤
Original assignee: エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
Priority date: 2022-04-15
Filing date: 2023-02-21
Publication date: 2023-10-19

Abstract

横断面が略三角形の試料容器に使われる外蓋とネックサポート部を一体的に形成すると共に、運搬を容易にした試料容器及びそれを用いた遠心機を実現する。外蓋７０を容器部４１に適正に取り付けた際に、中心軸線方向から見た外蓋７０と容器部４１の外縁形状が同一位置になるように、外蓋７０を非円形の外縁形状にした。試料容器４０をロータの保持穴に装着すると、外蓋７０の外周面７１が保持穴の内壁と当接するため、遠心運転時の外蓋７０に加わる遠心荷重を外蓋７０により支えることができる。また、内蓋６１に可倒式のハンドル６８を設け、外蓋７０を締めた状態でも貫通穴７６を介して、ハンドル６８を展開できるので、作業者はハンドル６８を把持して試料容器４０を保持できる。

Description

遠心機、それに用いる試料容器、及び、試料容器の蓋開閉用工具セット

　本発明は、医学、薬学、遺伝子工学等の分野で使用されている遠心機（遠心分離機）に関し、一度に処理できる液体試料の量を増加できる非円筒形の試料容器を少ない部品点数で実現するものである。また、試料容器用の開閉用の工具を実現するものである。

　液体試料の分離に使用される遠心機は、液体試料を収容した複数の試料容器を、ロータの円周上に均等配置された試料容器保持穴に装着する。遠心機は、ロータと、ロータを回転駆動する駆動手段と、ロータ室を冷却する冷却装置等を有し、大気圧下または減圧下でロータを高速回転させることによって試料容器内の液体試料を遠心分離して目的物を収集する。

　遠心機用のロータは、例えば特許文献１にて知られている。従来のアングル式のロータのロータボディには、複数の試料容器用の保持穴が円周に沿って等角度ピッチで形成され、各保持穴には、液体試料が注入された試料容器が挿入される。特許文献１の試料容器は、水平断面が略三角形の、非円形の試料容器である。特許文献１に示す試料容器を用いる目的の一つとして菌の集菌が挙げられる。遠心分離による集菌を効率的に行うため、一度に多くの試料を処理できると有利である。非円形試料容器は、従来の水平断面が円形の試料容器に比べて大容量であり、例えば、９００～１５００ｍｌの容量が可能になる。

　特許文献１のような水平断面が略三角形の試料容器（以下、「三角ボトル」と称することもある）を用いる場合であっても蓋部を固定する開口部は円筒形であり、試料容器をアングル式のロータにセットした際には蓋部と試料容器の間にネックサポートを介在させる必要があった。ネックサポートは、内側開口を蓋部の外側に接するようにし、外形をロータボディの保持穴にフィットさせる形状にすることにより、ロータの高速回転時に遠心力により試料容器の蓋部の取り付け部分たる肩部の破損を防止する。特許文献１ではネックサポートと蓋部が別体式でされるが、特許文献２ではネックサポートを蓋部と一体にした試料容器が開示される。

　試料容器が大きくなるに従って手で容器部を保持しながら安定して蓋を締め付けることが困難になっており、遠心後のサンプルを乱さないために容器部を安定して開閉できる蓋開閉用工具セットが提供された。図１５（ａ）は、特許文献１で開示される試料容器１４０の展開斜視図である。試料容器１４０は、液体試料を入れるための容器部１４１と、容器部１４１を密閉するため内蓋１６１と、内蓋１６１の上から覆うように外蓋１７０を装着することにより、容器部１４１が密閉される。外蓋１７０の周囲には、ネックサポート部材１８０が装着される。ネックサポート部材１８０は、外蓋１７０に対して相対回転可能なように、周方向に３カ所形成された凸部１８１が、外蓋１７０の外周溝１７２に係止される。容器部１４１のうちの胴体部１４２は、水平断面が略三角形である。尚、図１５では容器部１４１の開口１５３ａ付近の雄ねじ部（後述の図４の５６に相当）の図示は省略している。

　特許文献３では、ネックサポートと蓋部を一体型にして、蓋部を容器部に対して咬合式で着脱可能に構成した。ここでは、開口部の外周面に咬合手段となるＬ字状の溝部が形成され、外蓋の内周面には溝部と対を成すような凸部が設けられ、外蓋の１２０度未満の小さな回転角で外蓋が締結される。

特開２０１１－１１１３１号公報特開２０１４－５６５号公報特開２０１２－６６４３号公報

　特許文献３の構成では従来の試料容器１４０（図１５（ａ）参照）よりも組立に必要な部品点数を少なくできる。しかしながら、特許文献３の試料容器では、外蓋の開閉を１２０度未満の少ない回転で行うため、締め付け力を十分に確保すると、開閉時に要する力が大きくなりすぎて、作業者による開閉が難しくなってしまう。また、外蓋の締め付け力を従来のねじ締結式の外蓋と同様程度まで確保すると、遠心分離運手終了後の外蓋の開閉時に、容器部の内部に存在する液体試料や沈殿物を揺らしてしまう虞が大きくなり、沈殿物を乱さずに外蓋を開けることが難しくなる。

　本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、断面形状が非円形であって、ネックサポート部材の使用が不要な、部品点数を削減した遠心機用の試料容器及びそれを用いた遠心機を実現することにある。
　本発明の他の目的は、外蓋を締めた状態でも使用可能なハンドルを付加することにより、運搬を容易にした遠心機用の試料容器を実現することにある。
　本発明のさらに他の目的は、クリーンベンチ等の任意の場所で試料容器の外蓋の開閉作業が容易にできるようにした、可搬型の蓋開閉用工具セットを実現することにある。

　本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
　本発明の一つの特徴によれば、試料容器を保持する複数の保持穴を有するロータと、該ロータを回転させる駆動部と、ロータを収容するロータ室を形成するチャンバを有する遠心機において、試料容器は、容器部と蓋部から構成され、試料容器及び保持穴の水平な横断面形状は、３つの頂点部を有する略三角形であって、保持穴の鉛直方向の配置は、上部の開口部から底部に至るに従って回転半径が増大するように、保持穴がロータの回転軸に対して傾斜するように形成される。ロータの保持穴は、横断面における３つの頂点のうち一つが最内周に位置し、残りの２つの頂点が、外周側であってロータの回転軸からの距離が等距離となる位置に配置されるように形成される。試料容器の上部には、開口部が円形であって外形が保持穴の形状に対応する非円形のねじ込み式の蓋部が取り付けられ、試料容器のネジ部及び蓋部のネジ部には、それぞれストッパ部が設けられる。蓋部は、外蓋と内蓋から構成され、外蓋が容器部に適正に取り付けられた際に、中心軸線方向から見た外蓋と容器部の外縁形状が同一位置になるように、容器部と外蓋にそれぞれストッパ部が設けられる。試料容器の開口部の外周面には、外蓋の回転角で１周分以上の雄ねじ山が形成され、外蓋の内周面には、回転角で１周分以上の雌ねじ山が形成され、ストッパ部は、外蓋の内周面に設けられた雌ねじ部の閉鎖端と、試料容器の雄ねじ部に設けられたリブを用いて構成できる。

　本発明の他の特徴によれば、試料容器は、開口が形成されると共に外周面に雄ねじ部が形成された円筒部と、胴体部と、円筒部と胴体部の間を接続する肩部と胴体部の下側を閉鎖する底部を有して構成される。胴体部は、横断面形状で３つの頂点部を有し、これら頂点部を円筒部の外径よりも小さな曲率半径で形成し、３つの頂点部の間を辺部で接続して形成される。肩部において３つの頂点部の一部の特定領域の周囲には、内側に窪む凹部が形成される。また、試料容器の肩部の辺部を通る縦断面の形状は、回転半径Ｒ１、Ｒ３の２つの外側に突出する曲面の間に、１つの内側に窪む回転半径Ｒ２の曲面が形成された形状とされた凹凸形状とされ、回転半径Ｒ２は、回転半径Ｒ１及びＲ３よりも小さくなるように形成される。試料容器の内蓋は円筒部に内挿されるものであって、外蓋を円筒部に取り付けることにより内蓋が外れないように、外蓋によって保持される。さらに、内蓋には可倒式のハンドルが形成され、外蓋の中央部にはハンドルを可動可能な状態で外部に露出させるための貫通穴が形成される。

　本発明のさらに他の特徴によれば、試料容器は、開口が形成されると共に外周面に雄ねじ山が形成された円筒部と、横断面形状で３つの頂点部を有し、頂点部を円筒部の外径よりも小さな曲率半径で形成して３つの頂点部の間を辺部で接続した胴体部と、円筒部と胴体部の間を接続する肩部と、胴体部の下側を閉鎖する底部を有する。試料容器の肩部において、３つの頂点部の一部の特定領域の周囲に、内側にわずかに窪む凹部が形成される。また、試料容器の内蓋は、円筒部の上面を閉鎖する上壁部と、上壁部から上方に隆起する２カ所の突起部と、突起部において展開状態から収納状態に回動可能なように軸支される可倒式のハンドルと、ハンドルを収容する際の収容面が形成される。試料容器の外蓋であって、雌ねじ山より上側かつ内側部分には、ハンドルを可動可能な状態で外部に露出させるための貫通穴が形成される。

　本発明のさらに他の特徴によれば、断面形状が３つの頂点部を有する略三角形の容器部と、容器部の外縁形状と一致する非円形の外縁形状を有する外蓋を有する遠心機用の試料容器の蓋開閉用工具セットが提供される。蓋開閉用工具セットは、手持ち式の蓋開閉工具と手持ち式の容器保持工具から構成される。蓋開閉工具は、外蓋の非円形の外縁形状に対応する内縁形状を有する上側円環保持部が形成され、円環保持部から延在する上側ハンドル部を有する。また、容器保持工具は、容器部の外縁断面形状に対応する内縁形状を有する下側円環保持部と、円環保持部に接続される下側ハンドル部を有し、円環保持部に容器部を挿入させるようにして正立させた状態の容器部に係合可能なに構成される。蓋開閉工具と容器保持工具によって、容器部に外蓋の締め付けと緩めを容易に行うことが可能となる。

　本発明のさらに他の特徴によれば、蓋開閉工具は金属製であって、円環保持部と上側ハンドル部が形成される第１プレートと、外蓋の上面を上から押さえる第２プレートにて構成される。容器保持工具は金属製であって、円環保持部と下側ハンドル部を形成する第３プレートと、容器部の底面を保持する底板を形成して第１プレートに接続される第４プレートにより構成される。密閉状態の試料容器に容器保持工具と蓋開閉工具を取り付けた際には、上側ハンドル部と下側ハンドル部が、上面視で重ならないように円環保持部の形状が周方向にずれるように配置される。また、容器保持工具の円環保持部の３つの頂点部には、周方向に見た頂点部の中心位置に目印が設けられる。さらに、蓋開閉工具の円環保持部の３つの頂点部には、周方向に見た頂点部の中心位置の径方向外側に窪むような開口部が設けられ、外蓋の上から下方向に開口部を通して目印を視認できるように形成される。

　本発明によれば、外蓋とネックサポートを一体に形成することにより、遠心機のロータに装着する試料容器の部品点数を削減できた。また、外蓋をねじ締め式とし、外蓋を１回転以上させることで、十分な回転角を確保しつつ、締結時にネックサポートとなる外蓋の角部（頂点部）の位置が、容器部の角部（頂点部）の位置に常に一致させることができる。この結果、試料容器を非円形の保持穴を有するロータにスムーズに装着し、又は、取り外すことができる。さらに、試料容器に可倒式のハンドルを設けたので、試料容器の装着及び取り出し時にはハンドルを展開状態とすることができる。さらに、遠心運転時にはハンドルを収容状態とすることができるので、ロータカバーの装着を阻害せずに、取り扱いの容易な遠心機用の試料容器を実現できた。さらに、クリーンベンチ内等の任意の場所で、試料容器の外蓋の開閉を容易に行うことができる外蓋開閉工具を実現できたので、遠心分離運転後に沈殿物を乱さずに外蓋を開けることが容易になった。

本発明の実施例１に係る遠心機１の正面図であり、一部を断面図にて示す。本発明の実施例１におけるロータ３０と試料容器４０の縦断面図である本発明の実施例１に係るロータボディ３１を示す図であり、（ａ）は斜視図、（ｂ）は図２のＣ－Ｃ部における横断面図である。本発明の実施例１に係る試料容器４０の展開斜視図である。試料容器４０の容器部４１を示す図であり、（ａ）は上面図、（ｂ）は斜め下から見た斜視図、（ｃ）は側面図、（ｄ）は底面図である。試料容器４０の容器部４１を示す図であり、（ａ）は図５（ｃ）の円筒部５３と肩部４５の部分拡大図であり、（ｂ）は図６（ａ）のＤ－Ｄ部の断面図である。試料容器４０の外蓋７０を示す図であり、（ａ）は上面図、（ｂ）は斜め上から見た斜視図、（ｃ）は側面図、（ｄ）は斜め下から見た斜視図である。試料容器４０の内蓋６１を示す図であり、（ａ）は上面図、（ｂ）は側面図、（ｃ）は斜め上から見た斜視図であり、（ｄ）はハンドル６８単体の斜視図である。試料容器４０の外蓋７０を閉める際の状況を示す上面図であり、（ａ）は外蓋７０の締め付け途中の状態を示し、（ｂ）外蓋７０を容器部４１に締め付けが完了した状態を示す。試料容器４０と、その外蓋７０の開閉に使用する外蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０の展開斜視図である。図１０の容器保持工具２５０に試料容器４０を装着し、外蓋７０の上に外蓋開閉工具２００を装着した状態を示す斜視図である。（ａ）は実施例１の外蓋開閉工具２００の斜視図であり、（ｂ）は実施例１の容器保持工具２５０の斜視図である。本発明の実施例２に係る試料容器４４０の容器部４４１を示す図であり、（ａ）は上面図、（ｂ）は斜め下から見た斜視図、（ｃ）は側面図、（ｄ）は底面図である。図１３の試料容器４４０の円筒部４５３と肩部４４５の部分拡大図である。（ａ）は従来の試料容器１４０の展開斜視図であり、（ｂ）は従来の遠心機用試料容器１４０用の容器保持工具３５０と、外蓋の開閉工具３００を示す図である。

　以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。

　図１は本発明の遠心機（遠心分離機）１の正面図であり、一部を断面で示す図である。遠心機１は、矩形箱型の筐体２を備え、筐体２の内部には水平な仕切り板２ａによって上下２段の空間に仕切られる。仕切られた上段の空間には、上面が開口する円筒状のチャンバ（ボウル）３が設けられる。チャンバ３の外周部には図示しない冷媒循環用パイプが接着され、遠心機１内に設けられた図示しない冷却機から供給される冷媒を流すことによりチャンバ３の内部空間、即ち、ロータ室４を冷却する。チャンバ３の周囲は断熱材９が設けられる。チャンバ３の上側には、図示されていない開閉可能な略円形のドア１０が設けられ、ドア１０を閉じることによってロータ室４が密閉される、このロータ室４内にはロータ３０が収容される。筐体２の上部、右側には操作・表示部１３が設けられる。

　筐体２内の仕切り板２ａによって仕切られた下段には、駆動部５が仕切り板２ａに取付けられる。駆動部５はモータハウジング６を含み、モータハウジング６の内部には駆動源としての電気式のモータ７が設けられる。モータハウジング６の上方側には軸支持部６ａがチャンバ３の底部に設けられた穴３ｂを貫通してロータ室４内に達するように配置される。また、モータ７の回転軸７ａは、軸支持部６ａにより回転可能に支持され、ロータ室４内にまで上方に延びる。回転軸７ａの上端部にはクラウン（駆動軸部）１２が設けられ、クラウン１２にはロータ３０の装着穴３１ａが固定される。ロータ３０が、クラウン１２に対して着脱可能に構成しつつ、モータ７によってロータ３０が回転される。通常、使用する試料容器４０に応じた保持穴３２を有するロータ３０を選択して装着する。ロータ３０に形成された試料容器用の保持穴３２には、液体試料９０を充填した試料容器４０が装着される。

　図２は図１のロータ３０と試料容器４０の部分拡大縦断面図である。ロータ３０には、複数の試料容器用の保持穴３２が円周方向に等角度ピッチで形成される。保持穴３２は、内周側壁部３２ｂ（後述の図３参照）と外周側壁部３２ｄと底部３２ｃを含んで形成される。各保持穴３２には、液体試料９０が注入された試料容器４０が装着される。ロータ３０の上側には、遠心分離中に万一試料容器４０から試料が漏れた場合にロータ３０からの液漏れを防ぐための液封環状溝３１ｃが設けられ、その上部に開口３３が形成される。開口３３にはロータカバー３５が取り付けられる。ロータカバー３５は、蓋部３６とハンドル部３７と固定軸３７ａを含んで構成される。ハンドル部３７によって固定軸３７ａがロータボディ３１にねじ締結されることによってロータボディ３１内が密閉される。回転軸線Ａ１方向に見てロータボディ３１の下方には、駆動部５のクラウン１２に装着するための装着穴３１ａが形成される。装着穴３１ａは、クラウン１２に対して相対的に回転不能なように固定される公知の着脱機構である。

　試料容器４０は、上部に円筒部５３を有する容器部４１と、容器部４１を封鎖する蓋部６０により構成される。蓋部６０は、円筒部５３の内側に内挿され、容器部４１内を密封する内蓋６１と、内蓋６１の上側であって円筒部５３の外周側に固定される外蓋７０によって構成される。試料容器４０は、中心軸線Ｂ１から見た上面視で、非円形となる容器であり、ここではロータ３０の回転軸線Ａ１及び試料容器４０の中心軸線Ｂ１を通る鉛直面で見た際に、容器部４１の中心軸線Ｂ１から内周側の側壁までの距離Ｌ１が、中心軸線Ｂ１から容器の外周側の側壁までの距離Ｌ２よりも大きくなる。一方、円筒部５３は円形であり、中心軸線Ｂ１から開口部内側までの距離と外側までの距離は等しい。ここで、中心軸線Ｂ１とは、蓋部６０の締め付け時の回転中心となる軸線であり、円筒部５３の中心と一致する。また、中心軸線Ｂ１は、試料容器４０の底面の中心位置を通る位置関係にある。このように容器部４１の中心軸線Ｂ１と直交する断面形状を非円形とすることで、同一外径のロータボディ３１において、同一本数の円形断面形状の試料容器（図１５（ａ）参照）よりも大容量化を図った試料容器４０を実現できる。

　試料容器４０をロータボディ３１の保持穴３２に装着した際には、外蓋７０の下側外周面（ネックサポート部７１の辺部７１ｅ）が保持穴３２の内壁面に当接する。図２にてわかるように、外蓋７０のネックサポート部７１の辺部７１ｅの外縁位置は、容器部４１の外縁位置とほぼ同一位置になる。一方、外蓋７０の最内周部付近（辺部７１ａ）は、保持穴３２には当接しない。保持穴３２の中央部分は、ロータボディ３１の重量軽減のために下方向に大きく減肉するようにした凹部３１ｂが形成されるからである。ロータ３０を高速回転させた際には、外蓋７０には径方向外側に向けて強い遠心荷重がかかるので、矢印７１ｅに示す外蓋７０が保持穴３２の外周側の内壁面に当接させれば遠心荷重を受けることができるので、矢印７１ａに示す内側内周部分をロータボディ３１の保持穴３２に当接させる必要はない。

　図３はロータボディ３１を示す図であり、（ａ）は斜視図である。図２に示した試料容器４０を装着可能なロータボディ３１は、重量増加の要因となる構成材部分をできるだけ少なくしつつ試料容器４０の容量を断面形状が丸形の試料容器より多く確保できるロータ３０である。ロータボディ３１には試料容器４０を装着するための複数（ここでは４つ）の非円柱形の保持穴３２が形成される。保持穴３２は、図３（ａ）に示したように内周側の一部を除き、容器部４１のほぼ全部の面と底部を覆うように形成する。保持穴３２は試料容器４０の容器部の外形とほぼ同形の形状であり、その大きさは試料容器４０を無理なく着脱でき、しかもできるだけ小さい隙間とする。例えば、保持穴３２の壁面と試料容器４０の容器部４１の外面との隙間が０．１乃至１ｍｍ程度である。保持穴３２は、図２で示した底部３２ｃと２つの内周側壁部３２ｂ（試料容器４０の辺部の２つが主に当接）と、外周側壁部３２ｄ（試料容器４０の残りの辺部に当接）、の主に４つの曲面から形成される。外周側壁部３２ｄは試料容器４０に３つのうちの１つの辺部に対応した大きな曲率半径の曲面であるが、この曲面の曲率半径が、ロータボディ３１の外周の曲率に略平行になるように形成される。このように形成すれば、曲率の違いによる外周側壁部３２ｄ周辺の肉厚の不要な増加を抑えることができ、ロータ３０の軽量化が図れる。

　ロータボディ３１は。回転軸線Ａ１の周囲の上側中央付近を下方向に減肉した凹部（減肉部）３１ｂを形成した。凹部（減肉部）３１ｂを設けることによって、ロータ３０の低重心化を図ることができる。ロータボディ３１の回転軸線Ａ１上には、ハンドル部３７をねじ締めすることによってロータカバー３５を固定するためのねじ穴３４が形成される。

　ロータボディ３１は、アルミ合金やチタン合金材料を用いて機械加工で製作された一体構造（中実型）である。また、ＣＦＲＰコンポジット材で製作することも可能である。金属材料からの機械加工の際、保持穴３２の加工は、フライス盤を使用し、刃物としてエンドミルを使用することにより容易に加工することができる。

　図３（ｂ）は図２のＣ－Ｃ部の断面位置におけるロータ３０及び試料容器４０の水平断面図である。この図の形状から試料容器４０の形状が理解できよう。尚、ロータ３０の保持穴３２は、その中心軸線（図２のＢ１と一致）の上側が回転軸線Ａ１に近づくように所定の角度がつけられている。点線３２ａの底部想像線で示すように、保持穴３２の底面付近は、Ｃ－Ｃ部の断面の開口よりも外周側に位置することになる。図３（ｂ）では、液体試料９０が密閉された試料容器４０の遠心分離運転の液面９１を示している。ロータ３０が高速回転中には、液面９１は図の位置にでき、液面９１の内周側には空気が移動した空間９２ができる。

　図４は本発明の第１の実施例に係る試料容器４０の展開斜視図である。試料容器４０は、容器部４１と、蓋部６０とに大きく分けられる。容器部４１は、遠心分離される液体試料９０（図３（ｂ）参照）を収容する容器を構成する部位であり、容器部４１の上部には試料の出し入れ口となる円形の開口５３ａを有する円筒部５３が設けられる。開口５３ａの外周面には、雄ねじ部５４が形成される。雄ねじ部５４の連続する凸部の上側端部は開放端５４ａとして形成される。蓋部６０は、内蓋６１と外蓋７０によって構成され、内蓋６１と開口５３ａの間には、内蓋６１を容器部４１に対して密封するためのＯリング６９が介在される。Ｏリング６９は断面形状が円形のゴム等の弾性体製の部材である。内蓋６１の円筒部６２は、円筒部５３の内周側に嵌挿され、フランジ部６３ａがＯリング６９を介在させて開口５３ａの上側に位置するように内蓋６１が容器部４１に装着される。内蓋６１は円筒部５３に中心軸線Ｂ１（図２参照）下向きに押し込むことで嵌挿でき、容器部４１から取り外すときは、作業者がハンドル６８をつまんで、容器部４１に対して内蓋６１を上方に引き上げるように移動させる。ハンドル６８は可動式であり、ステンレス等の金属の細い丸棒を半円状に曲げた後に、両端部付近を、その長手方向が半円の中心点に向くように部分的に折り曲げたものである（詳細形状は後述の図８（ｄ）で後述）。

　容器部４１に内蓋６１が取り付けられた後に、それらを上から覆うようにして外蓋７０が設けられる。外蓋７０の内面には、容器部４１の雄ねじ部５４に締結される雌ねじ部７７（図７で後述）が形成される。また、外蓋７０の上面中央には貫通穴７６が形成され、貫通穴７６の外側周囲は円環状の上壁面となっており、内蓋６１のフランジ部６３ａの上側付近に位置して、内蓋６１が容器部４１から抜けないようにしっかりと保持するので、内蓋６１による容器部４１の密封を良好に維持できる。

　外蓋７０の上部には、内蓋６１のハンドル６８が貫通できる円形の貫通穴７６が形成される。このような形状にすれば外蓋７０を付けた状態であっても、内蓋６１のハンドル６８を掴むことで試料容器４０全体を保持することができる。外蓋７０の貫通穴７６の内側には、成人が指でハンドル６８を掴めるように内蓋６１の上面に下方向に窪むような窪み部６５が形成される。ロータボディ３１の保持穴３２に装着された試料容器４０を引き出す際には、作業者がハンドル６８を親指と人差し指で掴んでハンドル６８を上側に展開した状態として、ハンドル６８を掴みながら試料容器４０を引き出すことが可能である。

　外蓋７０の外周形状は、容器部４１と同様に水平断面形状が円形ではなくて、略三角形の形状の外周面を有する（ネックサポート部７１）。ここで、図１５（ａ）を用いて従来の略三角形の試料容器１４０の形状を説明する。従来の試料容器１４０は、上面視で略三角形の容器部１４１に、Ｏリング６９を介在させて内蓋１６１を嵌挿し、その上に外形が円形の外蓋１７０にて内蓋１６１を締め付けるようにした。外蓋１７０の外周側には別部材たるネックサポート部材１８０が装着される。ネックサポート部材１８０は、外形が略三角形であって、容器部１４１の外形形状と同じに形成され、外蓋１７０とロータ３０の保持穴３２との間の空間を埋めるために介在される部材である。ネックサポート部材１８０の介在によって、比較的質量のある外蓋１７０が遠心力によって外側に移動しようとする動きを阻止し、容器部１４１の円筒部１５３や肩部１４５に過大な力が作用することを防止する。外蓋１７０の上部には、４つの貫通穴１７１が形成される。４つの貫通穴１７１を設けることで、外蓋１７０の外側と内蓋１６１の上面との間に空気が流通可能になる。ネックサポート部材１８０は外蓋１７０に対して着脱可能、かつ、相対回転可能に構成されるので、外蓋１７０を容器部１４１に装着することで同時にネックサポート部材１８０も容器部１４１に装着できる。図では見えないが、ネックサポート部材１８０の下面は、肩部１４５に密着するように肩部１４５の形状に対応させた曲面形状とされる。

　従来の試料容器１４０の外蓋１７０の開閉状況を示すのが図１５（ｂ）の斜視図である。試料容器１４０が大きくなるに従って手で容器部１４１を保持しながら安定して外蓋１７０を締め付けたり、緩めたりすることが困難になっている。遠心分離運転後のサンプルを乱さないために、試料容器１４０の外蓋１７０は揺らさず静かに開閉することが重要である。そのため作業台取付型の容器保持工具３５０を使用している。容器保持工具３５０は、机などにクランプ部材にて固定されるもので、非円形の辺部１４３ａ等の下側側面を保持する仕切り３５２～３５４（図では３５３は見えない）が周方向に３か所形成されるため、設置される試料容器１４０が自転しないように保持できる。この状態でＴ字状の外蓋開閉工具３００の下向き凸部（図では見えない）を、外蓋１７０のうち２つの貫通穴１７１に差し込むようにして、外蓋開閉工具３００を矢印３２０の方向に回転させることで、外蓋１７０を取り外すことができる。この際、ネックサポート部材１８０は外蓋１７０の回転に対して空回りするが、外蓋１７０と一緒に取り外すことができる。

　再び図４に戻る。試料容器４０の容器部４１は、その横断面形状が、正三角形をベースに、正三角形の辺の部分（辺部４３ａ、４３ｂ、４３ｃ：但し４３ｂは後述）を外側に緩やかな凸状となる大きな曲率半径の曲面とし、正三角形の３カ所の頂点部分（頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃ：但し４４ｃは後述）を小さな曲率半径の曲面で接続した形状の容器である。容器部４１の雄ねじ部５４から外側には水平方向に平面な肩部４５が形成される。

　肩部４５から辺部４３ａ～４３ｃ及び頂点部４４ａ～４４ｃへ至る部分は、従来の試料容器１４０では、縦断面で見た時に小さな曲率半径を有する緩やかな曲面により接続していた。この部分は肩部から辺部、肩部から頂点部に至る接続部分となり、できるだけ曲率半径の小さな形状とすることにより、強度を増大させるためである。本実施例の試料容器４０では、従来よりも肩部４５の強度を向上させるために、外向きの凸部(但し、頂点部４４ａ～４４ｃの外縁位置からははみ出していない)と内向きに窪む凹部を複合させたような複雑な形状にて形成した（この形状については、図５にて後述する）。底部５７の形状は、底面５７ａから辺部４３ａ～４３ｃ及び頂点部４４ａ～４４ｃへ至る部分が、縦断面で見た時に１つの小さな曲率半径の曲面により緩やかに接続されるように形成した。

　試料容器４０の容器部４１、内蓋６１、外蓋７０は、材料としてポリプロピレンやポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで製造すると好ましく、容器部４１はブロー成形法やインジェクションブロー成形法で製造できる。容器部４１の色は、透明に構成しても良いし、着色されて中が見えないように構成しても良い。更に外蓋７０には必要に応じてガラス繊維等を入れて強度を増すようにしても良い。このようにプラスチックで形成することにより、耐薬品性が良く取り扱いが容易な試料容器を実現できる。蓋部６０は、例えばインジェクション成形法で製造や切削加工で製造できる。外蓋７０は、従来のネックサポート部材１８０（図１５参照）の機能を兼用するもので、遠心荷重が円筒部５３においてロータ３０の径方向外側へ過大にかかることを効果的に防止し、胴体部４２に伝達される負担を少なくする。外蓋７０は弾力性の小さく、軽量かつ高強度な材料で構成することが重要である。

　本実施例の試料容器４０では、図１５（ａ）に示した従来の試料容器１４０の高応力部分の変形を抑える別部材、すなわちネックサポート部材１８０を削除したため、ネックサポート部材１８０の代わりに外蓋７０自身にて容器部４１の変形を抑える必要がある。そのため外蓋７０の外形を、容器部４１と同じ横断面形状で略三角形としたネックサポート部７１を形成し、保持穴３２（図３参照）の内壁に良好に当接する形状とした。このように、外蓋７０の形状を変えることで、遠心分離運転時に円筒部５３や外蓋７０に加わる局所的な応力の低減を実現できた。また、図１５（ａ）で示した従来の試料容器１４０よりも組立に必要な部品点数の減少を図ることができた。

　図５は本実施例の試料容器４０の容器部４１を示す図であり、（ａ）は上面図、（ｂ）は斜め下から見た斜視図、（ｃ）は側面図、（ｄ）は底面図である。図５（ａ）～（ｃ）にて示すように、容器部４１は、遠心分離される液体試料９０（図２参照）を収容する容器の部分であり、上部には試料の出し入れ口となる円筒形の円筒部５３が形成される。円筒部５３の上側には円形の開口５３ａが設けられ、円筒部５３の外周面には、外側にねじ山が突出する雄ねじ部５４が形成される。円筒部５３の下方には、肩部４５を介して胴体部４２が接続される。胴体部４２は、その横断面形状が、正三角形をベースに、正三角形の辺部４３ａ、４３ｂ（図では見えない）、４３ｃを外側に緩やかな凸状となる大きな曲率半径（例えばＲ＝６５ｍｍ）の曲面とし、正三角形の３カ所の頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃを小さな曲率半径（例えばＲ＝２６ｍｍ）の曲面で接続した形状の容器である。円筒部５３の開口５３ａは、内径が半径２３．５ｍｍで外形が２５．６５ｍｍである。胴体部４２の下側は、底部５７にて閉鎖される。底部５７は容器の底面５７ａと、胴体部４２の下縁部を滑らかな曲面で接続する部位である。

　胴体部４２の雄ねじ部５４から下側には、頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃ及び辺部４３ａ、４３ｂ、４３ｃまでを接続するための肩部４５が形成される。肩部４５は、その外縁の輪郭を滑らかに接続するような形状であるが、外側から見たときに複数の凸部と凹部を組み合わせたような複雑な形状とされる。

　円筒部５３の形状、特に開口５３ａ（図５（ａ）では黒で塗りつぶしている）の形状は円形である。開口５３ａを通して略三角形の底面５７ａが視認できる。図５（ｃ）に示すように胴体部４２の外縁輪郭に対して、円筒部５３の大きさは小さいため、上面から視認できる位置に肩部４５が形成されることになる。ここでドットを付して示した範囲内、即ち円筒部５３と肩部４５の間の領域は、上側接続面４６が形成される。つまり、上側接続面４６は円筒部５３の下側に位置する接続面（Ｒ部）５６の径方向外側、かつ、上下方向下側に位置する。上側接続面４６は完全な円環状ではなく、胴体部４２の外縁形状に沿う形状とされる。接続面（Ｒ部）５６の外周側の３カ所は、上面視で山状の平面部分、すなわち、微小平坦面５６ａ～５６ｃが形成され、上側窪み部４９ａ、４９ｂ、４９ｃに接続される。外縁面４８ａ、４８ｂ、４８ｃは、開口５３ａの周方向にみて１２０度ずつ隔てた位置に配置され、それぞれ頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃの周方向中心位置と同じ位置に形成される。円筒部５３の内周側の形状は、内蓋６１を内挿するのに好適な、凹凸の無い内筒面５３ｃにて形成される。

　外縁面４８ａ、４８ｂ、４８ｃは、図５（ａ）、（ｃ）にてわかるようにロータ３０の保持穴３２の壁面形状に沿った輪郭を有しながら胴体部４２の側面（ここでは辺部４３ａ、４３ｂ、４３ｃの上縁位置）に接続されるゆるやかな曲面である。外縁面４８ａ、４８ｂ、４８ｃは、下端位置（径方向外側位置）が頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃの上端位置に連続するように形成されている。また、本実施例の肩部４５では、外縁面４８ａ、４８ｂ、４８ｃの上側、下側、及び、周方向両側に、径方向内側に向けてわずかに窪むような凹状部分、すなわち、上側の窪み部４９ａ～４９ｃ、下側窪み５０ａ～５０ｆ、側部窪み５１ａ～５１ｆを形成した。このように、周方向の３か所であって、胴体部４２の角部分（頂点）に相当する位置に外縁面４８ａ、４８ｂ、４８ｃを形成し、外縁面４８ａ、４８ｂ、４８ｃの周囲を、内側に窪ませるような形状としたので、外縁面４８ａ、４８ｂ、４８ｃは略半球状の凸形状になり、肩部４５の剛性を高めることができ、それより胴体部４２と円筒部５３の剛性も高めることができた。

　図５（ｄ）は容器部４１の底面図である。容器部４１の底部５７は、中央付近であってテーブル等に載置する際の接地面となる略三角形の底面５７ａが形成され、底面５７ａの外縁部分から緩やかな曲面にて胴体部４２の下側縁部に接続される。辺部５８ａ、５８ｂ、５８ｃが、容器部４１の辺部４３ａ、４３ｂ、４３ｃに接続される面であり、頂点部５９ａ、５９ｂ、５９ｃが、胴体部４２の頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃに接続される面である。尚、底面５７ａは完全な平坦面ではなく、中心付近がわずかに下から上方向に窪むような形状としても良い。

　図６は本実施例の試料容器４０の容器部４１を示す図であり、（ａ）は図５（ｃ）の円筒部５３と肩部４５の部分拡大図である。円筒部５３の外周面には、外側円筒面から外側に突出するねじ山が形成された雄ねじ部５４が形成される。円筒部５３の内周面は平坦であり、雄ねじ部５４のねじ山の部分だけ樹脂の厚みが径方向に増やされる。雄ねじ部５４は、上側にねじ山の先端部分となる開放端５４ａが形成され、ねじ山が２．７５周分だけ形成され、ねじ山の下側の端部は閉鎖端（リブ５５）として形成される。リブ５５は、外蓋７０の最大締め付け位置を制限するためのストッパとして機能する。リブ５５が外蓋７０に形成されたストッパ部７９（図７（ｄ）参照）が突き当たる部位となる。

　肩部４５のハッチング線で示す部分は、外側から内側に緩やかな曲面になるように窪ませるように形成した部位である。つまり、従来の試料容器の肩部１４５（図１５（ａ）参照）の輪郭線が点線５２のように形成されるのに対して、側部窪み５１ａ～５１ｆの部分において、内側に最小曲率半径Ｒ２で窪むような窪みを形成した。一方、試料容器４０の頂点部に位置する外縁面４８ａ～４８ｃの領域は、点線５２で示す従来の外縁位置と同じである。この形状により、外縁面４８ａの下側略半分がロータ３０の保持穴３２の内壁面に当接することになる。外縁面４８ａの上側には、肩部４５の上側縁部付近と接続するためであって内側にわずかに窪む上側窪み４９ａが形成される。外縁面４８ａの下側には、肩部４５の下側縁部付近と接続するためであって内側にわずかに窪む下側窪み５０ａ、５０ｆが形成される。このような形状とした結果、肩部４５のうち側部窪み５１ａ、５１ｆの上側は、曲率半径Ｒ１の曲面にて上側接続面４６に接続され、側部窪み５１ａ、５１ｆの下側は、曲率半径Ｒ３の曲面にて形成される。

　上側窪み４９ａ～４９ｂ、側部窪み５１ａ～５１ｆよりも上側であって、ハッチングで示した接続面（Ｒ部）５６との間の領域、即ち、ハッチングが付されていない領域は、点線５２のような１つの大きな曲率半径で形成される部分である。また、下側窪み５０ａ～５０ｆ及び側部窪み５１ａ～５１ｆよりも下側であって、複数の矢印４２ａで示した胴体部４２の上縁との間のハッチングが付されていない領域は、点線５２のような１つの大きな曲率半径で形成される下側接続面４７ａ～４７ｆ（図では４７ｃ～４７ｅは見えない）である。下側接続面４７ａ～４７ｆは、外向きに緩やかに突出する曲面であり、下側窪み５０ａ～５０ｆ及び側部窪み５１ａ～５１ｆの下側縁部と、辺部４３ａ、４３ｂ、４３ｃ及び頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃの上側縁部（図６（ａ）にて複数の矢印４２ａで示す上下に高さが波打つような線の部分）との間をゆるやかな曲面で接続する。このように肩部４５を鉛直面で見た際に、全体を点線５２のような１つの大きな曲率半径で円筒部５３から胴体部４２に接続する形状にするのではなく、外側に突出する２つの曲率半径Ｒ１、Ｒ３の間に、内側に窪む最小曲率半径Ｒ２の窪みを形成して凸部の間に凹部を組み合わせたので、肩部４５の剛性を大きく向上させることができる。これら複数の曲率半径を組み合わせた肩部４５は、従来の試料容器と同じ合成樹脂のブロー成形法で容易に製造することが可能である。

　図６（ｂ）は、図６（ａ）のＤ－Ｄ部の断面図である。この図において肩部４５における水平方向（周方向）における壁面の形状が理解できよう。ハッチングにて示す断面部分は、３つの頂点部にある外縁面４８ａ～４８ｃが形成される。外縁面４８ａ～４８ｃの周方向の両側は側部窪み５１ａ～５１ｆが形成される。容器部４１はこのような形状としているが、ブロー成形法で製造されるため容器部４１の肉厚は、断面位置においてほぼ一定である。従って、外縁面４８ａ～４８ｃの領域内は、内側から外側に窪む凹部４８ｄ～４８ｆとして形成されることになる。

　図７は本実施例の試料容器４０の外蓋７０を示す図であり、（ａ）は上面図、（ｂ）は斜め上から見た斜視図、（ｃ）は側面図、（ｄ）は斜め下から見た斜視図である。図７（ａ）に示すように、外蓋７０は上面視で容器部４１（図５（ａ）参照）の外縁形状と同一の外縁形状にて形成され、外蓋７０自体が、従来の試料容器１４０用のネックサポート部材１８０（図１５（ａ）参照）の機能を兼ねている。つまり、図７（ｃ）に示すように、外蓋７０には、外周面を形成するネックサポート部７１（７１ａ～７１ｆ）が形成される。ネックサポート部７１の上側は、作業者が外蓋７０を開閉する際に把持しやすくする把持部７２が形成される。把持部７２は、複数のリブ（７３ａ～７３ｃ、７４ａ～７４ｆ）を含んで構成され、内周側から３つの頂点部の中央に向かう３つのメインリブ７３ａ～７３ｃと、メインリブ７３ａ～７３ｃの両側に隣接して配置される２つずつのサブリブ７４ａ～７４ｆによって形成される。メインリブ７３ａ～７３ｃとサブリブ７４ａ～７４ｆの間は、それぞれ傾斜面７５ａ～７５ｃ、７６ａ～７６ｆが形成される。本実施例の試料容器４０は、高応力部分の変形を抑えるために、従来のネックサポート部材１８０（図１５（ａ）参照）を一体化させたよう形状とし、外蓋７０自身で容器部４１の変形を抑えるようにした。つまり、外蓋７０も容器部４１と同じ略三角形の横断面形状にして、ロータ３０の保持穴３２で外蓋７０の外周面（ネックサポート部）を支えるようにすることで、容器部４１の局所的に増大する応力（特に肩部４５付近）の低減に成功した。

　図７（ａ）でわかるように、メインリブ７３とサブリブ７４の内周側であって、把持部７２の上面部分には円環面７２ａが形成される。円環面７２ａの内周側には、中心軸線Ｂ１方向に貫通する円形の貫通穴７７が形成される。貫通穴７７を形成したことによって、その下側に位置する内蓋６１（図４参照）のハンドル６８（図４参照）に外蓋７０の外側からアクセスすることができる。貫通穴７７の大きさは、内蓋６１に形成されたハンドル６８の外径よりもわずかに大きく形成され、外蓋７０を容器部４１に装着した後であっても、ハンドル６８を収容状態（ハンドル６８の半円面が水平になる状態）から展開状態（ハンドル６８の半円面がほぼ鉛直になる状態）に回動させることができる。

　図７（ｂ）、（ｄ）で示すように、ネックサポート部７１及び把持部７２の内周側には、雌ねじ部７８が形成される。雌ねじ部７８は径方向内側から外側にかけて窪むように形成されたねじ溝であり、その下端位置は、谷部とほぼ同一面の内周面７１ｉが形成されており、ねじ部の山部が矢印７９で示す位置で途切れている。つまり、矢印７９におけるねじ溝の終端位置が、容器部４１のリブ５５（図６（ａ）参照）と当接するストッパ部として機能する。ネックサポート部７１の底部は円環面７１ｇとして形成され、円環面７１ｇと内周面７１ｉとを滑らかに繋ぐ曲面７１ｈが形成される。曲面７１ｈは容器部４１の円筒部５３と肩部４５とのつなぎ目のＲ部５６と接触しないように設けられている。

　以上のように、試料容器４０の横断面形状が略三角形になったため、容器部４１と外蓋７０の三角形の頂点部が合わないと外蓋７０がロータ３０の保持穴３２に乗り上げてしまい、ロータカバー３５（図２参照）を閉めることができないという問題が生ずる虞がある。この問題の対処のために、本実施例の試料容器４０では、外蓋７０と容器部４１のねじ部にそれぞれストッパ部（図６に示すリブ５５、図７（ｄ）の終端部７９）を設けて、外蓋７０と容器部４１の３つの頂点部（メインリブ７３ａの先端部、頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃの径方向最外位置）が一致する位置にて外蓋７０の締め付け方向への回転が止まるように構成した。この状態では、外蓋７０の底面部７１ｊが内蓋６１の円環部６３を下方向に押しつけることができるので、内蓋６１を容器部４１に対して良好に押しつけると共にＯリング６９（図４参照）を端面５３ａに良好に当接（圧縮）することができ、容器部４１内の良好な密閉状態を維持できる。

　図８は本実施例の試料容器４０の内蓋６１を示す図であり、（ａ）は上面図、（ｂ）は側面図、（ｃ）は斜め上から見た斜視図である。内蓋６１は、容器部４１（図５参照）の開口５３ａを閉塞するための部材であり、図８（ｂ）にてわかるように、容器部４１（図５参照）の円筒部５３の内周面と密接する円筒部６２が形成される。内蓋６１は、例えばポリプロピレンやポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで製造できる。円筒部６２の上側には、開口５３ａ（図６参照）の上側に位置し、Ｏリング６９（図４参照）の上面を覆うように径方向外側に延在するフランジ部６３ａが形成される。フランジ部６３ａの下側であって、円筒部６２の上端付近には、内蓋６１と容器部４１の開口５３ａとの間に介在されるＯリング６９を保持するために径方向内側に窪む溝部６２ａが形成される。円筒部６２の下側端部は、外周側の角部が円弧状に形成された円弧面又は斜面６２ｂで形成され、内蓋６１の容器部４１への挿入を容易にしている。図８では見えないが、内蓋６１の円筒部６２部分の形状や大きさは、従来の試料容器１４０（図１５）と互換又は相似である。円筒部６２の内側は空洞部が設けてあって、下側に開口６６が形成され、上側が上壁となる部分（円環部６３、隆起部６４、窪み部６５）にて閉塞される。

　図８（ｃ）で示す円環部６３の形状は平坦な円環状であって、円環部６３の径方向内側部分に、２カ所の隆起部６４ａ、６４ｂが形成され、円環部６３との繋目にはＲ部６３ｃが形成されている。隆起部６４ａ、６４ｂは、外蓋７０から上側に突出する部分であると共に、ハンドル６８を保持する機能を果たす。隆起部６４ａ、６４ｂの周方向に１８０度離れた２カ所には、ハンドル６８の掛止部６８ｂ、６８ｃを径方向外側から内側まで貫通させる貫通穴６７ａ、６７ｂが形成される。隆起部６４ａと６４ｂに挟まれる部分には、貫通穴６７ａ、６７ｂを結ぶ軸線Ｃ１を軸心とした円環状の窪み部６５が形成される。窪み部６５は、作業者が貫通穴６７ａ、６７ｂによって軸止されるハンドル６８を把持する際に、ハンドル６８の下側に指を入れることができるようにするための窪みである。従って、窪み部６５は標準的な成人が人差し指を入れられる程度以上の大きさとすることが好ましい。

　図８（ｄ）は、ハンドル６８の単体図であって、図８（ｃ）で示す内蓋６１に取り付ける前の状態を示す。ハンドル６８は、十分な強度を有する金属の丸棒を半円状に曲げて把持部６８ａを形成し、さらに、丸棒の両端部を半円の中心方向に向けて曲げて掛止部６８ｂ、６８ｃを形成した。内蓋６１への取り付けは、掛止部６８ｂ、６８ｃが軸線Ｃ１方向に離れるように広げた状態で、貫通穴６７ａ、６７ｂの径方向外側に位置させ、伸張された把持部６８ａの復元力によって掛止部６８ｂ、６８ｃを貫通穴６７ａ、６７ｂの内部に位置づける。貫通穴６７ａ、６７ｂの大きさは、掛止部６８ｂ、６８ｃの直径よりもわずかに大きく構成して、把持部６８ａが軸線Ｃ１を中心に１８０度程度回転できるようにする。このように構成することによって、収納式のハンドル６８を形成することができた。

　ハンドル６８の把持部６８ａの外径は、外蓋７０の貫通穴７７（図７参照）よりもわずかに小さくなるようにすれば、容器部４１に液体試料９０を充填して、内蓋６１と外蓋７０を締めた状態であっても、ハンドル６８の把持部６８ａが上方向に延在するように軸線Ｃ１を中心に揺動させることができる。ハンドル６８を軸線Ｃ１上の外側部分６８ｄ、６８ｃと貫通穴７７（図７参照）との間には、ハンドル６８が回動することが出来るように適度な隙間が設けられている。作業者は、ハンドル６８を把持することにより試料容器４０全体を運搬することができる。作業者による試料容器４０のロータ３０の保持穴３２への装着、及び、保持穴３２からの取り出しは、ハンドル６８を指で把持しながら行うことができ、又は指を窪み部６５とハンドル６８との間に入れることで、指でハンドル６８を引掛けることが出来るので、使い勝手が良い。

　試料容器４０のロータ３０の保持穴３２への装着した後には、ハンドル６８を軸線Ｃ１を中心にどちらかの方向に９０度回転させることで、ハンドル６８の把持部６８ａを円環部６３に沿う位置に待避できるので、ロータ３０に装着するロータカバー３５（図２参照）にも干渉しない。ハンドル６８は、軸線Ｃ１上の外側部分６８ｄ、６８ｅが、閉鎖後の外蓋７０の貫通穴７７（図７参照）の下側の内周面に対向するような位置関係となるので、外蓋７０を装着後においては、ハンドル６８が内蓋６１から脱落することはない。

　図９は、本実施例の試料容器４０の外蓋７０を閉める際の状況を示す図であり、（ａ）は外蓋７０の締め付け途中の状態を示す図であり、（ｂ）外蓋７０を容器部４１に締め付けが完了した状態を示す上面図である。外蓋７０を容器部４１への取り付けは、図９のように上面から見たら容器部４１に対して矢印８０の方向に回転させることで行う。図９（ａ）は、容器部４１の頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃと外蓋７０の三角形の頂点部７１ａ～７１ｃ（メインリブ７３ａ～７３ｃ）の位置が合っていない状態であり、（ａ）の状態からさらに矢印８０の方向に回転させて、最終締め付け位置まで回転させた状態が図９（ｂ）である。図９（ｂ）の状態では外蓋７０と容器部４１のねじ部にそれぞれ設けられるストッパ部（図６に示すリブ５５、図７（ｄ）のストッパ部７９）が当接している状態であり、容器部４１の頂点部４４ａ、４４ｂ、４４ｃの周方向中心位置と外蓋７０の略三角形の頂点の先端位置（メインリブ７３ａ～７３ｃの先端位置）が一致している状態である。図９（ｂ）の状態ではロータ３０の保持穴３２（図３参照）に干渉することなく、外蓋７０付きの試料容器４０をロータ３０にスムーズに装着することができる。

　本実施例の外蓋７０は、略三角形の頂点の先端位置に、径方向内側から外側に延在する３本のメインリブ７３ａ～７３ｃを形成したので、作業者にとって外蓋７０の締め付け終了位置の把握が容易になった。尚、外蓋７０には、サブリブ７４ａ～７４ｆが形成されているが、強度的に十分確保できて、外蓋７０の開閉が容易になるならばサブリブ７４ａ～７４ｆを省略する形状としても良い。さらには、外蓋７０のメインリブ７３ａ～７３ｃとサブリブ７４ａ～７４ｆの代わりに、外蓋７０の強度を向上させる形状であって、重量増加を抑制できて、略三角形の頂点の先端位置の把握を容易にできた形状の外蓋が実現できれば、その他の形状で外蓋を実現できる。また、内蓋６１としてハンドル６８が設けられないものを使用することも可能であり、その場合は、外蓋７０の中央部の貫通穴７７の大きさを小さくするか、又は、省略して貫通穴７７を閉鎖しても良い。

　図１０は本実施例の試料容器４０と、その外蓋７０の開閉に使用する外蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０の展開斜視図である。蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０の２つで、本実施例の蓋開閉用工具セットが構成される。ここで、本実施例の外蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０を説明する前に、図１５（ｂ）を用いて従来の外蓋開閉工具３００と容器保持工具３５０を説明する。従来の容器保持工具３５０は、容器部１４１の底面を保持する部材であって、容器部１４１の横断面形状と同様の形状に形成された底板３５１と、底板３５１の辺部から上方に延在する板状の仕切り３５２～３５４（図１５（ｂ）では、３５３は隠れて見えない）を有し、仕切り板３５２～３５４に囲まれる底板３５１の上側に試料容器１４０を置くようにした。底板３５１と作業台３８０の間にはゴムシート３６０が介在される。容器保持工具３５０は、作業台３８０にクランパ３５７によって固定する作業台取付型である。そのため底板３５１から下方向に鉛直板３５５が延在し、鉛直板３５５の下端部が底板３５１と平行になるように折り曲げられて、クランパ３５７を軸支する水平板３５６を形成する。

　外蓋１７０の開閉は、容器保持工具３５０により容器部１４１を固定した状態で、専用の外蓋開閉工具３００を用いて行う。外蓋開閉工具３００は、ハンドル部３０１の先端にハンドル部３０１の長手方向と直交方向両側に延びる連結部３１０を有する。つまり、外蓋開閉工具３００は上面視で略Ｔ字状の形状である。連結部３１０の下面には、外蓋１７０の貫通穴１７１の大きさに対応する円柱状の突起（図１５では見えない）が２カ所形成され、それら突起を外蓋１７０の４つの貫通穴１７１の内、周方向に１８０度離れた２つの貫通穴に係合させるようにして、外蓋開閉工具３００を外蓋１７０の上側に位置づける。そして、図１５（ｂ）のように容器保持工具３５０の突起（図１５では見えない）が外蓋１７０の貫通穴１７１の２つに係合している状態で外蓋開閉工具３００を矢印３２０の方向に回すことで、外蓋１７０を開くことができる。

　以上のように、従来の容器保持工具３５０は作業台取付型に構成されるため、部品点数を少なくすることができるという利点があったが、一方で、必ず作業台３８０等に固定して使用する必要があるため、集菌した菌の飛散による汚染や異物の混入を防ぐためにクリーンベンチ内で作業をしたいというような要望に答えられないことがあった。作業台取付型の容器保持工具３５０はクリーンベンチ内には取り付けが難しいからである。そこで本実施例における容器保持工具２５０では、図１０にて示すように、作業台取付型でなく可搬型にて構成した。

　図１０において、容器保持工具２５０はアルミニウム合金等の軽量でさびにくい金属で製造される。ここでは２枚の金属板（上側プレート２６０、下側プレート２８０）をプレス加工によって切り抜き、及び、曲げ加工した後に接合したものである。上側に位置する上側プレート２６０は、本発明の蓋開閉用工具セットにおける第３プレートに相当するもので、作業者が片手で把持するためのハンドル部２６１が形成され、その先端側に容器部４１を貫通させて保持する円環保持部２６４が形成される。円環保持部２６４には容器部４１の外縁形状と同じ形状の貫通穴２６５が形成される。下側プレート２８０は、本発明の蓋開閉用工具セットにおける第４プレートに相当するもので、作業台の上等に載置した際の底面となる部分であり、ハンドル部２６１の下側に位置するハンドル対応部２８１と、その先端側に接続され、ハンドル対応部２８１の長手方向と直交方向に延在する底面保持部２８３を含んで構成される。底面保持部２８３の左右両側部分から上方向に直交するように側壁鉛直部２８４、２８５が形成され、側壁鉛直部２８４、２８５が上側プレート２６０の円環保持部２６４の周方向に離れた２カ所に固定される。下側プレート２８０のハンドル対応部２８１の後方側には後方鉛直部２８２が形成され、後方鉛直部２８２の上端が上側プレート２６０のハンドル部２６１の後端付近に固定される。上側プレート２６０と下側プレート２８０の固定の方法は任意であり、公知の方法、例えば溶接にて固定すれば良い。

　外蓋開閉工具２００はアルミニウム合金等の軽量でさびにくい金属で製造される。ここでは２枚の金属板（第１プレート２１０、第２プレート２３０）をプレス加工によって切り抜き、及び、曲げ加工した後に接合したものである。第１プレート２１０は作業者が片手で把持するためのハンドル部２１１が形成され、ハンドル部２１１の先端側に外蓋７０の外周部分を保持するための円環保持部２１４が形成される。円環保持部２１４には外蓋７０の外縁形状と同じ形状の貫通穴２１５が形成される。第２プレート２３０は、外蓋７０の直径方向に延在する天板部２３１を有し、天板部２３１の両端部が下方向に折り曲げられることにより側面鉛直部２３２、２３３が形成され、円環保持部２１４に固定される。

　図１１は図１０の試料容器４０に、外蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０を取り付けた状態の斜視図である。試料容器４０の底面５７ａは底面保持部２８３の上側に載置される状態にあり、円環保持部２６４の貫通穴２６５は容器部４１の上下方向のほぼ中央付近に位置する。貫通穴２６５の大きさは、容器部４１を上から下方向に挿入するのに十分な大きさであって、がたつきがほとんど無い程度に形成される。外蓋開閉工具２００の貫通穴２１５の大きさは、蓋開閉工具２００を外蓋７０の上面よりも下方向に移動できるような十分な大きさであって、がたつきがほとんど無いように形成される。外蓋７０の上端部分は、天板部２３１の下面に当接する状態で保持される。ここで、外蓋開閉工具２００のハンドル部２１１は、外蓋７０の三角形の角部（例えばメインリブ７３ａ）の延長線上に延在する。一方、容器保持工具２５０のハンドル部２６１は、容器部４１の角部でなくて辺部４３ａの法線方向に延在するように配置される。従って、外蓋７０を締めた密閉状態での試料容器４０に外蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０を取り付けると、ハンドル部２１１と２６１は必ず周方向にずれた位置（６０度、１８０度、３００度のいずれか）にある。この状態から作業者は、例えば左手で床置きされた状態の容器保持工具２５０のハンドル部２６１を保持し、右手でハンドル部２１１を保持し、ハンドル部２１１を矢印２４０の方向に回転させることで外蓋７０を緩めることができる。この作業は、平坦な台上であれば任意の位置で行うことができるので、クリーンベンチ内での外蓋７０の開封作業が可能となる。また、容器保持工具２５０は、固定式ではない上に金属製であってゴム部品が使用されていないため、高温下での滅菌作業（オートクレーブ）が可能となる。尚、外蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０は、必ずしもペアで使う必要は無い。例えば、図１５（ｂ）で示した容器保持工具３５０を用いて、外蓋開閉工具２００を使って外蓋７０を開閉するようにしても良い。

　図１２（ａ）は本実施例の外蓋開閉工具２００の斜視図である。外蓋開閉工具２００の第１プレート２１０の貫通穴２１５は、３つの頂点部を有する略三角形の形状である。第１プレート２１０と第２プレート２３０は、数ｍｍ程度の厚みを有して十分な強度の金属板を用いる。ここでは円環保持部２１４に外蓋７０の外形に対応する貫通穴２１５が形成されるが、３つの頂点部の周方向中心位置に、円形の開口部２１６～２１８が配置されるようにして、外蓋７０に装着された際に、外蓋７０の３つの頂点部の外側に略円形の隙間が形成されるように構成した。開口部２１６～２１８は、そのうちの一つ、即ち開口部２１８がハンドル部２１１に近い位置に隣接するように配置される。ハンドル部２１１の後方には長円状の貫通穴２１２が形成されるが、これは外蓋開閉工具２００をフックにかけたり、吊り下げ具を掛止したりするのに用いられる。さらに、円環保持部の左右両側には、側面鉛直部２３２、２３３の下端部分を貫通及び固定するための貫通穴２２２、２２３が形成される。

　第２プレート２３０の天板部２３１の左右中央付近は、外蓋７０（図７（ａ）参照）の上側の貫通穴７７よりも大きい直径の略円形になっている。このような大きさとすることで、外蓋７０の貫通穴７７の周囲に形成される円環面７２ａ（図７（ａ）参照）の上側に天板部２３１を良好に当接させることができる。

　図１２（ｂ）は本実施例の容器保持工具２５０の斜視図である。容器保持工具２５０の上側プレート２６０と下側プレート２８０は、外蓋開閉工具２００の第１プレート２１０と第２プレート２３０と同じ暑さの金属板にて構成できる。容器保持工具２５０の上側プレート２６０の貫通穴２６５は３つの頂点部付近には位置決めマーク２６６～２６８が形成される。位置決めマーク２６６～２６８は、貫通穴２６５の中心点から放射状に、径方向外側に向けて細長く円環保持部２６４を切断した切り欠きである。このように位置決めマーク２６６～２６８を形成したことによって、外蓋７０を外蓋開閉工具２００にて締め付ける際に、外蓋７０の３つの頂点部に位置するメインリブ７３ａ～７３ｃの先端位置と、位置決めマーク２６６～２６８の位置を周方向に正確に一致させることが容易になるので、外蓋７０の外縁輪郭と容器部４１の外縁輪郭が一致する位置に正しく外蓋７０を取り付けることできる。

　作業者は、外蓋開閉工具２００の３つの頂点部の外側に位置する略円形の開口部２１６～２１８のいずれか一つの上方から、目視にて開口部を通して下に位置する位置決めマーク２６６～２６８を見ながらハンドル部２１１を回転させるようにすれば、外蓋７０を容器部４１に対して適正な位置に合わせることが容易となる。尚、本実施例では位置決めマーク２６６～２６８を切り欠きにて形成したが、円環保持部２６４を上側から見た際に視認できる印字、着色、刻印、凹凸部など任意の可視的な形状又は色彩で実現しても良い。また、外蓋開閉工具２００の開口部２１６～２１８の形状は、円形だけでなく、目視する際の隙間が形成されるような形状であれば、円形以外の任意の形状でも良い。さらに外蓋開閉工具２００の開口部２１６～２１８は、必ずしも３つ設ける必要は無く、いずれか１つ又は２つとしても良い。

　ハンドル部２６１の後方側には、容器保持工具２５０をフックにかけたり、吊り下げ具を掛止したりするのに用いられる長円状の貫通穴２６３が形成される。ここでは貫通穴２６３に接するように後方鉛直部２８２の上端を固定する貫通穴２６２が形成される。円環保持部２６４の左右両側には、側壁鉛直部２８４、２８５を貫通及び固定するためのスリット状の貫通穴２７１、２７２が形成される。

　容器保持工具２５０の下側プレート２８０は、容器保持工具２５０をテーブル等の平らな場所に載置した際に、保持する試料容器４０が倒れないように安定的に保持するための脚部として機能する。ここではハンドル対応部２８１と底面保持部２８３が上面視で略Ｔ字状になるようにして、左右方向に試料容器４０が倒れないように形成した。尚、底面保持部２８３は左右方向に細長い長方形状としたが、天板部２３１と同様に左右中央付近に略円形の平板部を形成して容器部４１の底面５７ａ（図５（ｄ）参照）との接触面積を増やすようにしても良い。

　図１０～図１２にて説明したように、本実施例による外蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０を用いることによって、図１５（ｂ）で示した容器保持工具３５０が固定されている場所以外の場所においても容易に外蓋７０を開閉することが可能になる。特に、外蓋７０をクリーンベンチ内で開閉したいとの顧客の要求に対応することが可能となった。また、外蓋開閉工具２００と容器保持工具２５０をアルミ合金等の金属で製造したので、高温の蒸気による滅菌が可能となるので、遠心分離を行う環境下において使いやすい蓋開閉用工具セットを実現できた。

　次に図１３及び図１４を用いて実施例２に係る試料容器４４０を説明する。図１３は、本発明の実施例２に係る試料容器４４０の容器部４４１を示す図であり、（ａ）は上面図、（ｂ）は斜め上から見た斜視図、（ｃ）は側面図、（ｄ）はＥ－Ｅ断面図である。試料容器４４０は、容器部４４１の形状だけが第１の実施例の試料容器４０（図５参照）と異なり、図４にて示した第１の実施例の外蓋７０と内蓋６１はそのまま用いる。容器部４４１は、円筒部４５３と肩部４４５の形状が第１の実施例の試料容器４０と異なるが、底部５７の形状は試料容器４０と同じである。胴体部４４２は肩部４４５の形状変更に合わせて形状をわずかに変更したことを除いて、容器部４１の胴体部４２の形状と同様である。容器部４１と同一形状の部分には、同じ番号の参照符号を付すことにして、繰り返しの説明は省略する。

　図１３（ａ）、（ｃ）にて示すように、円筒部４５３の開口５３ａの形状や大きさは、第１の実施例の容器部４１とほぼ同じであり、雄ねじ部５４の大きさや巻き数も同じである。尚、雄ねじ部５４の巻き数は、外蓋７０が１回転以上できるようにすれば良いが、好ましくは２回転以上できるようにすると良い。雄ねじ部５４の下側から肩部４４５に至る接続面（Ｒ部）４５６の外側部分には、上面視にて径方向外側に延在する３つの平面状の延在面４５６ａ～４５６ｃが形成される。第２の実施例における上側接続面４４６の頂点部４４４ａ～４４４ｃ付近の位置は、図５（ａ）で示した上側接続面４６に比べて、径方向外側に位置している。

　胴体部４４２の頂点部４４４ａ～４４４ｃの上側であって、周方向にみて中心の位置には、外縁面４４８ａ～４４８ｃが形成される。また、外縁面４４８ａの周方向の一方側に、下側窪み４５０ａが隣接し、他方側に下側窪み４５０ｆが隣接する。下側窪み４５０ａには隣接するように側部窪み４５１ａが形成される。図１３（ｃ）では、側部窪み４５１ａは、外縁面４４８ａの紙面左側のハッチング線が引かれた２区画部分であり、側部窪み４５１ｆは、外縁面４４８ａの紙面右側のハッチング線が引かれた２区画部分である。このように、外縁面４４８ａの周りには、側部窪み４５１ａ、４５１ｆ並びに下側窪み４５０ａ、４５０ｆが設けられることによって、肩部４４５には曲率半径の中心点が容器部４４１の外側に位置する曲面（側部窪み４５１ａ、下側窪み４５０ａ等）と、曲率半径の中心点が容器部４４１の内側に位置する曲面（外縁面４４８ａ等）が形成される。第２の実施例ではさらに、側部窪み４５１ａ、４５１ｆの上側であって、上側接続面４４６との間に、側部窪み４５１ａ、４５１ｆと辺部４４３ａ、４４３ｃをつなぐ曲面４４７ａ、４４７ｂが配置される。このように、第１の実施例では、外縁面４８ａ～４８ｃは略半球状の凸形状であるのに対し、第２の実施例の外縁面４４８ａ～４４８ｃは中心軸線下側に長い形の凸形状となっている。

　図１３（ｂ）、（ｃ）において円筒部４５３の形状は、下端付近の接続面（Ｒ部）４５６の円環状部分から外側に延在する平面部分（延在面４５６ａ～４５６ｃ）の形状が大きく取られている。さらに、上側接続面４４６の鉛直断面からみた曲率半径Ｒ４の部分は、第１の実施例の曲率半径Ｒ１の部分よりも径方向外側に位置し、容器部４４１の内容量がわずかに増加している。曲率半径Ｒ１と曲率半径Ｒ４はほぼ同じである。円筒部４５３の内側は、内蓋６１を内挿するのに好適な、凹凸の無い内筒面５３ｃにて形成される。

　図１３（ｄ）は、図１３（ｃ）のＥ－Ｅ部の断面図である。ハッチングにて示す断面部分は、３つの頂点部にある外縁面４４８ａ～４４８ｃが示されている。外縁面４４８ａ～４４８ｃの周方向の両側は側部窪み４５１ａ～４５１ｆが形成される。容器部４４１はこのような形状としているが、ブロー成形法で製造されるため容器部４４１の肉厚は、断面位置においてほぼ一定である。従って、外縁面４４８ａ～４４８ｃの領域内は、内側から外側に窪む凹部４４８ｄ～４４８ｆとして形成されることになる。

　図１４は、試料容器４４０の円筒部４５３と肩部４４５の部分拡大図である。側部窪み４５１ａ、４５１ｆの領域内に、縦方向に線が惹かれているが、これは内側に窪む形状の曲面の曲率半径が変わる境界を示す２次元線を追加したものであり、実際の形状に目で識別できるような境界が存在するとは限らない。側部窪み４５１ａ、４５１ｆの上側であって上側接続面４４６との間には、平坦面４４７ａ、４４７ｆ等が配置される。また、側部窪み４５１ａ、４５１ｆの下側には、鉛直方向からやや斜めに形成される曲面４５２ａ、４５２ｆが配置される。曲面４５２ａ、４５２ｆの下側縁部は、頂点部４４４ａと、辺部４４３ａ、４４３ｃに接続される。外縁面４４８ａ～４４８ｃの下端位置から、上側接続面４４６の上端位置までの間が、第２の実施例で規定する肩部４４５（符号は図１３（ｃ）参照）の範囲になる。

　第２の実施例に係る容器部４４１においても、周方向の３か所であって、胴体部４２の角部分（頂点）に相当する位置に外縁面４４８ａ、４４８ｂ、４４８ｃを形成し、これら外縁面４４８ａ、４４８ｂ、４４８ｃが、内側に窪ませるような形状部分（側部窪み４５１ａ～４５１ｆ、下側窪み４５０ａ～４５０ｆ）と、平面に形成される形状部分（平坦面４４７ａ～４４７ｆ）で囲まれるように形成したので、肩部４４５の剛性を高めることができ、それに伴って胴体部４４２と円筒部４５３の剛性を高めることができた。

　以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例の形状だけに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、容器部４１、４４１の代わりに図１５（ａ）で用いた従来の容器部１４１を用いて、本発明の内蓋６１と外蓋７０を取り付けるように構成することも可能である。

１…遠心機、２…筐体、２ａ…仕切り板、３…チャンバ、３ｂ…（チャンバの）穴、４…ロータ室、５…駆動部、６…モータハウジング、６ａ…軸支持部、７…モータ、７ａ…（モータの）回転軸、９…断熱材、１０…ドア、１２…クラウン、１３…操作・表示部、３０…ロータ、３１…ロータボディ、３１ａ…装着穴、３１ｂ…凹部（減肉部）、３１ｃ…液封環状溝、３２…保持穴、３２ａ…（保持穴の）底部想像線、３２ｂ…内周側壁部、３２ｃ…底部、３２ｄ…外周側壁部、３３…開口、３４…ねじ穴、３５…ロータカバー、３６…蓋部、３７…ハンドル部、３７ａ…固定軸、４０…試料容器、４１…容器部、４２…胴体部、４３ａ～４３ｃ…辺部、４４ａ～４４ｃ…頂点部、４５…（試料容器の）肩部、４６…上側接続面、４７ａ～４７ｆ…下側接続面、４８ａ～４８ｃ…外縁面、４８ｄ～４８ｆ…凹部、４９ａ～４９ｃ…上側窪み、５０ａ～５０ｆ…下側窪み、５１ａ～５１ｆ…側部窪み、５２…仮想輪郭線、５３…円筒部、５３ａ…開口、５３ｂ…外周面、５３ｃ…内周面、５４…雄ねじ部、５４ａ…開放端、５５…リブ（ストッパ部）、５６…接続面（Ｒ部）、５６ａ～５６ｃ…微小平坦面、５７…底部、５７ａ…底面、５８ａ～５８ｃ…辺部、５９ａ～５９ｃ…頂点部、６０…蓋部、６１…内蓋、６２…円筒部、６２ａ…溝部、６２ｂ…円弧面、６３…円環部、６３ａ…フランジ部、６３ｂ…テーパー面、６３ｃ…Ｒ部、６４…隆起部、６５…窪み部、６６…開口、６７ａ，６７ｂ…貫通穴、６８…ハンドル、６８ａ…把持部、６８ｂ，６８ｃ…掛止部、６９…Ｏリング、７０…外蓋、７１…ネックサポート部、７１ａ～７１ｃ…頂点部、７１ｄ～７１ｆ…辺部、７１ｇ…円環面、７１ｈ…曲面、７１ｉ…内周面、７２…把持部、７２ａ…円環面、７３ａ～７３ｃ…メインリブ、７４ａ～７４ｆ…サブリブ、７５ａ～７５ｃ…傾斜面、７６ａ～７５ｆ…接続面、７７…貫通穴、７８…雌ねじ部、７９…ストッパ部、８０…締め付け方向、９０…液体試料、９１…液面、９２…空間、１４０…試料容器、１４１…容器部、１４２…胴体部、１４３ａ…辺部、１４５…肩部、１５３…円筒部、１５３ａ…開口、１６１…内蓋、１７０…外蓋、１７１…貫通穴、１８０…ネックサポート部材、２００…外蓋開閉工具、２１０…第１プレート、２１１…ハンドル部、２１２…貫通穴、２１４…円環保持部、２１５…貫通穴、２１６～２１８…開口部、２２２…貫通穴、２３０…第２プレート、２３１…天板部、２３２，２３３…側面鉛直部、２５０…容器保持工具、２６０…上側プレート（第３プレート）、２６１…ハンドル部、２６２，２６３…貫通穴、２６４…円環保持部、２６５…貫通穴、２６６～２６８…位置決めマーク、２７１…貫通穴、２７１，２７２…係合穴、２８０…下側プレート（第４プレート）、２８１…ハンドル対応部、２８２…後方鉛直部、２８３…底面保持部、２８４，２８５…側壁鉛直部、３００…外蓋開閉工具、３０１…ハンドル部、３１０…連結部、３２０…矢印、３５０…容器保持工具、３５１…底板、３５２～３５４…仕切り板、３５５…鉛直板、３５６…水平板、３５７…クランパ、３６０…ゴムシート、３８０…作業台、４４０…試料容器、４４１…容器部、４４２…胴体部、４４３ａ～４４３ｃ…辺部、４４４ａ～４４４ｃ…頂点部、４４５…肩部、４４６…上側接続面、４４７ａ，４４７ｆ…曲面、４４８ａ～４４８ｃ…外縁面、４４８ｄ～４４８ｆ…凹部、４５０ａ～４５０ｆ…下側窪み、４５１ａ～４５１ｆ…側部窪み窪み、４５２ａ～４５２ｆ…曲面、４５３…円筒部、４５６…接続面（Ｒ部）、４５６ａ～４５６ｃ…延在面、Ａ１…（ロータ３０の）回転軸線、Ｂ１…（試料容器４０の）中心軸線、Ｃ１…（ハンドル６８の）回動軸線

Claims

　試料容器を保持する複数の保持穴を有するロータと、該ロータを回転させる駆動部と、前記ロータを収容するロータ室を形成するチャンバを有する遠心機において、
　前記試料容器は、容器部と蓋部から構成され、
　前記試料容器及び前記保持穴の水平な横断面形状は、３つの頂点部を有する略三角形であって、
　前記保持穴の鉛直方向の配置は、上部の開口部から底部に至るに従って回転半径が増大するように、前記保持穴が前記ロータの回転軸に対して傾斜するように形成され、
　前記保持穴は、横断面における３つの頂点のうち一つが最内周に位置し、残りの２つの頂点が、外周側であって前記ロータの回転軸からの距離が等距離となる位置に配置され、
　前記試料容器の上部には開口部が円形であって、外形が前記保持穴の形状に対応する非円形のねじ込み式の前記蓋部が取り付けられ、
　前記試料容器のネジ部及び前記蓋部のネジ部には、それぞれストッパ部が設けられることを特徴とする遠心機。
　前記蓋部は、外蓋と内蓋から構成され、
　前記外蓋が前記容器部に適正に取り付けられた際に、中心軸線方向から見た前記外蓋と前記容器部の外縁形状が同一位置になるように、前記容器部と前記外蓋にそれぞれストッパ部が設けられることを特徴とする請求項１に記載の遠心機。
　前記ストッパ部は、前記外蓋の内周面に設けられた雌ねじ部の閉鎖端であり、前記試料容器の雄ねじ部に設けられたリブであることを特徴とする請求項２に記載の遠心機。
　前記試料容器は、開口が形成されると共に外周面に前記雄ねじ部が形成された円筒部と、
　横断面形状で３つの頂点部を有し、頂点部を前記円筒部の外径よりも小さな曲率半径で形成し、前記３つの頂点部の間を辺部で接続した胴体部と、
　前記円筒部と前記胴体部の間を接続する肩部と、
　前記胴体部の下側を閉鎖する底部を有し、
　前記肩部において、前記３つの頂点部の一部の特定領域の周囲に、内側に窪む凹部を形成したことを特徴とする請求項３に記載の遠心機。
　前記試料容器の前記肩部の前記辺部を通る縦断面の形状は、回転半径Ｒ１、Ｒ３の２つの外側に突出する曲面の間に、１つの内側に窪む回転半径Ｒ２の曲面が形成された形状とされ、
　回転半径Ｒ２は、前記回転半径Ｒ１及びＲ３よりも小さくなるように形成されることを特徴とする請求項４に記載の遠心機。
　前記内蓋は前記円筒部に内挿されるものであって、前記外蓋を前記円筒部に取り付けることにより前記内蓋が外れないように前記外蓋によって保持され、
　前記内蓋には展開式のハンドルが形成され、
　前記外蓋の中央部には前記ハンドルを展開状態で外部に露出させるための貫通穴が形成されることを特徴とする請求項５に記載の遠心機。
　試料を収納可能な容器部と、該容器部に装着可能な外蓋を備えた遠心離用の試料容器であって、
　前記容器部の胴体は上から見て略三角形の外形を持ち、上方に円形の開口部を有し、
　前記開口部に、密閉部材を介して前記外蓋をねじ式で着脱可能に構成し、
　回転軸線方向から見た前記外蓋と前記容器部の外縁形状が一致するように形成し、
　前記外蓋が前記容器部に適正に取り付けられた際に、回転軸線方向から見た前記外蓋と前記容器部の外縁形状一致する位置にて停止するように、前記試料容器のネジ部及び前記外蓋のネジ部に、それぞれストッパ部を形成したことを特徴とする試料容器。
　前記開口部の外周面には、前記外蓋の回転角で１周分以上の雄ねじ山が形成され、
　前記外蓋の内周面には、回転角で１周分以上の雌ねじ山が形成され、
　前記ストッパ部は、前記外蓋の内周面に設けられた雌ねじ山の閉鎖端であり、前記試料容器の雄ねじ山の端部に設けられたリブであることを特徴とする請求項７に記載の試料容器。
　前記試料容器は、開口が形成されると共に外周面に前記雄ねじ山が形成された円筒部と、
　横断面形状で３つの頂点部を有し、頂点部を前記円筒部の外径よりも小さな曲率半径で形成し、前記３つの頂点部の間を辺部で接続した胴体部と、
　前記円筒部と前記胴体部の間を接続する肩部と、
　前記胴体部の下側を閉鎖する底部を有し、
　前記肩部において、前記３つの頂点部の一部の特定領域の周囲に、内側にわずかに窪む凹部を形成したことを特徴とする請求項８に記載の試料容器。
　前記円筒部の内周面と密接するように取り付けられる内蓋を有し、
　前記内蓋は、
　　前記円筒部の上面を閉鎖する上壁部と、
　　前記上壁部から上方に隆起する２カ所の突起部と、
　　前記突起部において展開状態から収納状態に回動可能なように軸支されるハンドルと、
　　前記ハンドルを収容する際の収容面を有し、
　前記外蓋の前記雌ねじ山より上側かつ内側部分には、前記ハンドルを展開可能な状態で外部に露出させるための貫通穴が形成されることを特徴とする請求項９に記載の試料容器。
　請求項７～１０のいずれか一項に記載の前記試料容器と、前記試料容器を収納する保持穴を有することを特徴とする遠心機用ロータ。
　横断面形状が３つの頂点部を有する略三角形の容器部と、前記容器部の外縁形状と一致する非円形の外縁形状を有する外蓋を有する遠心機用の試料容器の蓋開閉用工具セットであって、
　前記外蓋の非円形の外縁形状に対応する内縁形状を有する上側円環保持部が形成され、円環保持部から延在する上側ハンドル部を有する手持ち式の蓋開閉工具と、
　前記容器部の外縁断面形状に対応する内縁形状を有する下側円環保持部と、前記円環保持部に接続される下側ハンドル部を有し、前記円環保持部に前記容器部を挿入させるようにして正立させた状態の前記容器部に係合可能な手持ち式の容器保持工具から構成され、
　前記蓋開閉工具と前記容器保持工具によって、前記容器部に前記外蓋の締め付けと緩めを行うことを特徴とする蓋開閉用工具セット。
　前記蓋開閉工具は金属製であって、前記円環保持部と上側ハンドル部が形成される第１プレートと、前記外蓋の上面を上から押さえる第２プレートにて構成され、
　前記容器保持工具は金属製であって、前記円環保持部と下側ハンドル部を形成する第３プレートと、前記容器部の底面を保持する底板を形成し前記第１プレートに接続される第４プレートにより構成され、
　密閉状態の前記試料容器に前記容器保持工具と前記蓋開閉工具を取り付けた際に、前記上側ハンドル部と前記下側ハンドル部が、上面視で重ならないように前記円環保持部の形状が決定されることを特徴とする請求項１２に記載の蓋開閉用工具セット。
　前記容器保持工具の前記円環保持部の３つの前記頂点部には、周方向に見た前記頂点部の中心位置に目印が設けられ、
　前記蓋開閉工具の前記円環保持部の３つの前記頂点部には、周方向に見た前記頂点部の中心位置の径方向外側に窪むような開口部が設けられ、前記外蓋の上から下方向に前記開口部を通して前記目印を視認できるように形成されることを特徴とする請求項１３に記載の蓋開閉用工具セット。