WO2023162495A1

WO2023162495A1 - 被膜剥離装置および被膜剥離方法

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Publication number: WO2023162495A1
Application number: PCT/JP2023/000619
Authority: WO
Inventors: 豊西森; 聖谷野
Original assignee: 東レ株式会社
Priority date: 2022-02-24
Filing date: 2023-01-12
Publication date: 2023-08-31
Also published as: TW202348386A

Abstract

剥離した被膜が基材フィルムへ再付着することや、洗浄液中へ被膜成分が溶出して剥離能力が低下することを抑制する、被膜剥離装置を提供する。本発明の被膜剥離装置は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する装置であって、洗浄槽と、上記洗浄槽へ洗浄液を供給する供給装置と、上記被膜付きフィルムが上記洗浄槽内を通過するように、上記被膜付きフィルムを長手方向へ搬送する搬送装置と、上記洗浄槽内に配置され、フィルムが通過できる隙間をあけて上記被膜付きフィルムの搬送経路の一部を囲う吸引ボックスと、上記吸引ボックス内に配置され、上記被膜付きフィルムから被膜を剥離させるための剥離機構と、上記吸引ボックス内から、上記洗浄液および剥離された上記被膜を上記洗浄槽の外へ排出するための排出装置と、を有する。

Description

被膜剥離装置および被膜剥離方法

　本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの表面の被膜を効率よく除去することが可能な被膜剥離装置および被膜剥離方法に関する。

　プラスチックは様々な分野に利用されている一方、マイクロプラスチックなど海洋汚染の原因物とされ、プラスチックによる環境負荷低減が急務となっている。
　また近年、ＩｏＴ（Ｉｎｔｅｒｎｅｔ　ｏｆ　Ｔｈｉｎｇｓ）の進化により、コンピュータやスマートフォンに搭載されるＣＰＵなどの電子デバイスが増加し、それに伴い、電子デバイスを駆動するために必要な積層セラミックコンデンサー（ＭＬＣＣ）の数も急激に増加している。このＭＬＣＣの一般的な製造方法は、プラスチックの基材フィルム上に離型層を形成した離型フィルムをキャリアシートとして使用し、該離型フィルム上にセラミックグリーンシート層を形成する工程と、該セラミックグリーンシート層を剥離してセラミックグリーンシートとする工程がある。この工程において、セラミックグリーンシートが剥離された離型フィルムは不要物として廃棄されることとなる。

　すなわち、近年のＭＬＣＣ製造数量の急激な増加に伴う離型フィルムの廃棄物としての増大が環境問題になっており、基材フィルムの再利用に向けた取り組みが活発化してきている。廃棄された離型フィルムを再利用するには、回収／粉砕／樹脂チップにした後、再溶融して製膜を行うことで再生フィルムを得ればよい。
　しかし、離型フィルムに含まれる離型層の成分は、離型性の観点から、一般的には基材フィルムを構成する成分とは異なる組成であるため、離型層が付いた離型フィルムをそのまま再溶融して再生フィルムを製膜した場合、離型層の成分が異物として存在するため、安定製膜をすることができない。
　特許文献１では、離型フィルムから離型成分を除去する方法として、基材フィルムと離型層との間に水溶性樹脂層を形成した離型フィルムを使用して、温水槽に２秒以上浸漬させた後に、離型フィルム表面をブラシロールで擦過させることで離型層を剥離する方法が開示されている。

特開２００４－３６３１４０号公報

　しかしながら、特許文献１に開示されている被膜剥離の方法は、ブラシロールで剥離した被膜が搬送中の離型フィルムに再付着し、後工程へ運ばれて回収フィルムに被膜が混入したり、後工程のロールを汚染するという問題を生じる場合があった。
　また、ブラシロールで剥離した水溶性樹脂が温水槽内に浮遊し、水溶性樹脂が温水中に溶解して、剥離処理時間の経過とともに温水中の樹脂濃度が上昇し、初期の剥離能力を継続して発現することができないという問題を生じる場合があった。
　これらの問題は、フィルム搬送速度が増速するほどより顕著に発生するため、解消するには、装置の定期的な清掃やフィルム搬送速度の低速化、１回に処理するフィルム長さの短尺化などが必要となる。そうすると、単位時間当たりの剥離処理能力が大幅に低下して、効率的に剥離処理を行うことができない。

　そこで本発明は、走行するフィルムから被膜を剥離する被膜剥離装置において、剥離処理時間の経過やフィルム搬送速度の増速によって剥離した被膜の量が増加した場合でも、剥離した被膜が基材フィルムへ再付着することや、洗浄液中へ被膜成分の少なくとも一部が溶出することで剥離能力が低下することを抑制する、被膜剥離装置および被膜剥離方法を提供することを目的とする。

　上記課題を解決する本発明の被膜剥離装置は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
洗浄槽と、
上記洗浄槽へ洗浄液を供給する供給装置と、　
上記被膜付きフィルムが上記洗浄槽内を通過するように、上記被膜付きフィルムを長手方向へ搬送する搬送装置と、
上記洗浄槽内に少なくとも前記被膜付きフィルムに接触する先端部が配置され、フィルムが通過できる隙間をあけて上記被膜付きフィルムの搬送経路の一部を囲う吸引ボックスと、
上記吸引ボックス内に配置され、上記被膜付きフィルムから被膜を剥離させるための剥離機構と、
上記吸引ボックス内から、上記洗浄液および剥離された上記被膜を上記洗浄槽の外へ排出するための排出装置と、を有する。

　本発明の被膜剥離装置は、上記排出装置が、排出液から異物を除去するための除去装置を有しており、異物が除去された排出液を上記洗浄槽へ供給することが好ましい。
　上記課題を解決する本発明の別態様の被膜剥離装置は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
上記被膜付きフィルムの搬送方向に並んで配置された２つ以上の洗浄槽と、
少なくとも上記搬送方向の最下流に配置された上記洗浄槽へ洗浄液を供給する供給装置と、　
上記被膜付きフィルムが上記各洗浄槽内を順次通過するように、上記被膜付きフィルムを長手方向へ搬送する搬送装置と、　
上記各洗浄槽内に少なくとも前記被膜付きフィルムに接触する先端部が配置され、フィルムが通過できる隙間をあけて上記被膜付きフィルムの搬送経路の一部を囲う吸引ボックスと、
上記各吸引ボックス内に配置され、上記被膜付きフィルムから被膜を剥離させるための剥離機構と、
上記各吸引ボックス内から、上記洗浄液および剥離された上記被膜を上記洗浄槽の外へ排出するための排出装置と、を有し、
少なくとも１つの上記排出装置が、排出液から異物を除去するための除去装置を有しており、異物が除去された排出液を、当該排出装置が備えられた上記洗浄槽よりも上記搬送方向の上流側に配置されている別の上記洗浄槽へ供給する。

　上記課題を解決する本発明の被膜剥離方法は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する被膜剥離方法であって、
洗浄槽に洗浄液を供給し、　
上記被膜付きフィルムを長手方向に搬送させることで上記洗浄液中を通過させ、
上記洗浄液中に配置された、フィルムが通過できる隙間を有する吸引ボックスに前記被膜付きフィルムを導入し、当該吸引ボックス内で被膜剥離機構により上記被膜を剥離し、
上記吸引ボックス内の上記洗浄液および剥離した上記被膜を、上記洗浄槽の外へ排出する。

　本発明の被膜剥離方法は、上記吸引ボックス内から排出した排出液から異物を除去した後、当該異物が除去された排出液を上記洗浄槽に供給することが好ましい。
　上記課題を解決する本発明の別態様の被膜剥離方法は、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する方法であって、
２つ以上の洗浄槽を上記被膜付きフィルムの搬送方向に並べて配置し、
少なくとも上記搬送方向の最下流に配置された上記洗浄槽へ洗浄液を供給し、
上記被膜付きフィルムを長手方向に搬送し、上記各洗浄槽内の上記洗浄液中を順次通過させ上記各洗浄槽内の上記洗浄液中に配置された、フィルムが通過できる隙間を有する吸引ボックス中に前記被膜付きフィルムを導入し、当該吸引ボックス内で被膜剥離機構により上記被膜を剥離し、
上記各吸引ボックス内の上記洗浄液および剥離した上記被膜を、上記洗浄槽の外へ排出し、
少なくとも１つの上記吸引ボックス内から排出した排出液から異物を除去した後に、当該異物が除去された排出液を、当該吸引ボックスが備えられた上記洗浄槽よりも上記搬送方向の上流側に配置されている別の上記洗浄槽へ供給する。

　本発明の被膜剥離方法は、上記吸引ボックスの上記被膜付きフィルムが出て行く上記隙間における上記洗浄液の流速が、上記被膜付きフィルムの搬送速度より大きくなるように、上記吸引ボックスからの上記排出液の排出量を設定することが好ましい。
　次に、本発明における用語の意味を説明する。

　「フィルムが通過できる隙間」とは、被膜付きフィルムが通過する隙間と、被膜付きフィルムから被膜が剥離された基材フィルムが通過する隙間の両方のことを言う。
　「排出液」とは、吸引ボックス内から排出した洗浄液、および剥離された被膜のことを言う。
　「異物」とは、被膜付きフィルムから剥離した被膜のことを言う。

　本発明の被膜剥離装置および被膜剥離方法によれば、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムの表面から被膜を剥離する際、剥離した被膜が基材フィルムへ再付着することや、洗浄液中へ被膜成分の少なくとも一部が溶出することで剥離能力が低下することを抑制することができる。

本発明の第１の実施形態の被膜剥離装置１０１の概略図である。図１の被膜剥離装置の吸引ボックス周辺の拡大図である。図２をＸ方向からみた矢視図である。本発明の第２の実施形態の被膜剥離装置２０１の概略図である。本発明の第３の実施形態の被膜剥離装置３０１の概略図である。本発明の別の実施形態の被膜剥離装置４０１の概略図である。

　本発明者らは、基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムの表面から被膜を剥離する際、剥離した被膜が基材フィルムへ再付着することや、洗浄液中へ被膜成分の少なくとも一部が溶出することで剥離能力が低下することを抑制する方法を鋭意検討した結果、次のような被膜付きフィルムの被膜剥離方法と被膜剥離装置を見出すに至った。

　被膜付きフィルムの被膜は、環境への負荷等を考慮すると、水溶性樹脂を含む被膜であることが好ましい。中でも、水溶性樹脂として、水溶性のポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレンアイオノマー系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、エチレン―ビニルアルコール系樹脂、でんぷんのうちの少なくとも１種を主たる成分とするものがより好ましい。水溶性樹脂を含む被膜は、水溶性樹脂を含む単層体であっても、水溶性樹脂を含む２つ以上の層の積層体であっても、水溶性樹脂を含む層と水溶性樹脂を含まない層の積層体であってもよい。

　また、被膜付きフィルムとしては、被膜の一部に水溶性樹脂のほかに離型成分を含む被膜付き離型フィルムが特に好ましく、効率的に被膜剥離の効果を発現することができる。ここでいう離型成分とは、被膜表面の水に対する接触角を大きく、すなわち、被膜の表面エネルギーを小さくする成分である。離型成分は、例えば、ジメチルシロキサンを主骨格とする熱硬化型シリコーン樹脂化合物や、アクリロイル基あるいはメタクリロイル基を含有するオルガノポリシロキサンに光重合開始剤を配合し、ＵＶ光を照射することによって硬化させるＵＶ硬化型シリコーン樹脂化合物等の硬化型シリコーン樹脂、そのほか、長鎖アルキル基を有する化合物、フッ素を有する化合物が挙げられる。被膜は水溶性樹脂と離型成分とが混合されていても良いし、水溶性樹脂を含む層と離型成分を含む層が積層されていても良い。積層された被膜の場合には、基材フィルムの直上に水溶性樹脂を含む層、ついで最表面に離型成分を含む層が形成されていることが好ましい。離型成分には水の透過性が高いジメチルシロキサンを主骨格とする熱硬化型シリコーン樹脂化合物を用いるのが特に好ましい。

　［第１の実施形態］
　本発明の被膜剥離装置の望ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は本発明に係る実施形態の１つを例示するものであり、これに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

　図１は、本発明の第１の実施形態の被膜剥離装置１０１の概略図である。まず、本発明の被膜剥離装置１０１の構成を説明する。被膜剥離装置１０１は、被膜付きフィルム１を巻き出す巻出装置４と被膜を剥離した後の基材フィルム２を巻き取る巻取装置５を備える。また、被膜剥離装置１０１は、巻出装置４と巻取装置５との間に、被膜付きフィルム１および基材フィルム２の搬送装置９、洗浄液１６を溜める洗浄槽１５、被膜付きフィルム１から被膜を剥離する剥離機構１９、剥離機構１９のバックアップロール１７、搬送フィルムの一部および剥離機構１９を囲う吸引ボックス１８が備えている。また、バックアップロール１７と吸引ボックス１８とで、被膜付きフィルム１が通過する隙間である入口開口部２０、基材フィルム２が通過する隙間である出口開口部２１が形成される。被膜剥離装置１０１は、さらに吸引ボックス内の洗浄液１６、および剥離した被膜を排出する排出装置としての排出ポンプ１２、洗浄槽１５へ洗浄液１６を供給する供給装置としての送液装置１３、および供給ノズル１４を備えている。

　上記のように構成された被膜剥離装置１０１を用いて、被膜付きフィルム１から被膜を剥離する方法について説明する。被膜付きフィルム１は、基材フィルム２の片面に被膜が形成されてなる。先ず初めに、所定の紙管等にロール状に巻き取られた被膜付きフィルム１を巻出装置４に取り付ける。このとき、被膜付きフィルム１の被膜面が剥離機構１９と接触する側となるように取り付ける。次いで、被膜付きフィルム１の先端を、予め巻取装置５の紙管に巻き付けられて、フィルム搬送経路に通しておいたリードフィルムと適当な手段で連結する。洗浄槽１５には予め、洗浄液１６を満たしておく。次に、搬送装置９を稼働させてフィルムを搬送しつつ、剥離機構１９で被膜を剥離し、基材フィルム２を巻取装置５で巻き取る。その際、吸引ボックス１８内の洗浄液１６および被膜を排出ポンプ１２で吸引、排出するとともに、送液装置１３、供給ノズル１４を用いて洗浄槽１５へ洗浄液１６を供給する。

　搬送装置９は、被膜付きフィルム１、および被膜を剥離した基材フィルム２を安定して搬送させるために、張力カットできる構成であることが好ましく、例えば金属製の駆動ロールとゴムロールでニップされた構成が挙げられる。また搬送装置９は、洗浄液１６が付着する可能性が高いため、防錆対策として、ステンレス鋼や表面処理を施したものが好適に用いられる。

　剥離機構１９は、搬送される被膜付きフィルム１に直接接触する先端が鋭利な樹脂製のプレート等を使用することができる。剥離機構１９としては、これに限定されず、先端が鋭利な金属製プレートを設けても良いし、ブレードのように被膜付きフィルム１に押し当ててしなるような樹脂製や薄い金属製のブレードを設けても良い。あるいは、金属や樹脂からなるブラシロールを搬送方向と同方向、あるいは逆方向に回転させる機構により、被膜付きフィルム１の被膜表面に直接接触させても良いし、ウエスや布帛を用いて被膜付きフィルム１に押し当てて被膜を拭き取るように剥離しても良い。また、本発明の実施形態の被膜剥離装置１０１では、被膜付きフィルム１を支えるバックアップロール１７の位置において剥離機構１９を押し付けて被膜を剥離しているが、搬送される被膜付きフィルム１のフリースパンの位置において、張力を張った状態の搬送フィルムに剥離機構１９を押し付けて被膜を剥離しても良い。剥離機構１９の設置位置は、被膜付きフィルム１が洗浄液１６に十分な時間浸された後に被膜を剥離できるような位置に設置すれば良く、図１のように洗浄槽１５の底部には限定されない。また、剥離機構１９は被膜付きフィルム１の被膜表面に対向して設置してあれば良く、図１のように下面側の設置には限定されない。またロール状に巻かれた被膜付きフィルム１の被膜がロールの内側、外側のいずれの面であっても対応できるように、被膜付きフィルム１の巻出方向を切り替えて、被膜付きフィルム１の被膜表面が剥離機構１９に対向して搬送できるよう、巻出装置４が上出しと下出しのいずれにも対応できる機構であることがより好ましい。

　吸引ボックス１８は、剥離した被膜、および被膜成分の少なくとも一部が溶出して被膜成分濃度が上昇した洗浄液１６ａが洗浄槽１５内に拡散しないように留めておくための装置であり、排出ポンプ１２で吸引ボックス１８内の被膜および洗浄液１６ａを吸引、排出しながら被膜を剥離することで、被膜が搬送される基材フィルム２に再付着することや、洗浄槽１５内の洗浄液１６の被膜成分濃度が上昇することを抑制できる。この際、出口開口部２１を通過して吸引ボックス１８内に流入する洗浄液１６の流速が小さいと、吸引ボックス１８内の被膜や被膜成分濃度が高い洗浄液１６ａが搬送フィルムの随伴流によって出口開口部２１から流出することがあるため、出口開口部２１における洗浄液の流速は搬送フィルムの速度より大きいことが好ましく、より好ましくは１．５倍以上である。出口開口部２１における洗浄液の流速は、測定が難しい場合、入口開口部２０、出口開口部２１、バックアップロール１７と吸引ボックス１８との隙間などの各開口部の形状と、排出ポンプ１２による排出量から計算した値で代用することができる。各開口部の形状によって決まる圧力損失の理論式を元に各開口部を通過する流量を計算し、各開口部の断面積で割って流速を計算すると良い。

　また、図１では吸引ボックス１８内に剥離機構１９全体が入っているが、剥離機構１９で剥離した被膜を吸引ボックスの内部に留められれば良く、剥離機構１９のうち、先端部のみが吸引ボックス１８内にあり、それ以外の部分は吸引ボックス１８の外に出ていても良い。
　入口開口部２０および出口開口部２１は、小さすぎると搬送フィルムが蛇行したり、バタついた際にフィルムと接触することがあり、また大きすぎると出口開口部２１の流速が小さくなり吸引ボックス１８内の被膜や被膜成分濃度の高い洗浄液１６ａが搬送フィルムの随伴流によって出口開口部２１から流出しやすくなる。従って、搬送フィルムと接触しない程度にできるだけ小さくすることが好ましく、搬送フィルムの蛇行やバタつきの大きさによって適宜決定すると良いが、例えば開口部におけるフィルムと吸引ボックスとの距離が３ｍｍ～２０ｍｍとなるようにすると良い。

　ここで、吸引ボックス１８の構造について図２および図３を用いて詳細に説明する。図２は図１の被膜剥離装置の吸引ボックス１８周辺の部分拡大図、図３は図２をＸ方向（下流方向）からみた矢視図である（図２、３において剥離機構１９は図示しない）。吸引ボックス１８は図２および図３に示すようにフィルム幅方向の両端部がバックアップロール１７と接触していても良いし、隙間を設けて非接触にしても良い。非接触にする場合は、その隙間からも洗浄液が吸引ボックス１８内に流入するため、出口開口部２１を通過する流速が小さくなる。従って隙間は出来るだけ小さい方が好ましく、例えば隙間における吸引ボックス１８とバックアップロール１７との距離は、０．５ｍｍ～１０ｍｍが好ましい。吸引ボックス１８の材質は特に限定されないが、耐熱性、耐錆性を有する金属や樹脂で構成するのが好ましく、バックアップロール１７に接触させる場合は、接触する部分の材質をポリアセタール、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等の滑り性と低摩耗性を有する材質にすることが好ましい。

　また、図１では吸引ボックス１８はバックアップロール１７とともに搬送フィルムおよび剥離機構１９を囲っているが、吸引ボックス１８単体で搬送フィルムおよび剥離機構１９を囲っても良い。例えば図６は本発明の別の実施形態を示した概略図であるが、本図に示すように、搬送されるフィルムのフリースパンの位置に箱状の吸引ボックス１８を設け、被膜付きフィルム１が通過する隙間である入口開口部２０および基材フィルム２が通過する隙間である出口開口部２１を通してフィルムを通過させても良い。

　吸引ボックス１８の大きさは特に制限されないが、大きすぎると内部に漂う被膜を吸引、排出するのに時間がかかり、被膜成分の溶出量が増加して洗浄液の被膜成分濃度が上昇する原因となる。吸引ボックス１８の大きさは、排出ポンプ１２により、吸引ボックス１８で囲われた容積の洗浄液を２分以内で排出できる大きさにすると良い。
　排出ポンプ１２としては、ダイヤフラムポンプやギアポンプ等の送液ポンプを用いることができる。被膜成分濃度が高い洗浄液１６だけでなく、被膜付きフィルム１から剥離した被膜を吸引、排出するため、スラリー液を安定して送液できるホースポンプがより好ましい。

　供給ノズル１４は、スプレーやスリットノズルなど、いかなるものであってもよい。洗浄液１６を洗浄槽１５に供給する際、図１のように洗浄液１６ａを基材フィルム２に吹きつけながら供給することで、基材フィルム２に被膜が再付着した場合でも洗い落すことができるため好ましいが、スプレーやノズル、もしくは配管から出した洗浄液１６を基材フィルム２に吹きつけずに直接洗浄槽１５に供給しても良い。
　送液装置１３は、洗浄液１６を送液できる送液ポンプが使用できる。送液ポンプとしては、排出ポンプ１２として使用するものと同様のポンプを使用することができる。

　洗浄槽１５は、洗浄液１６を満たしてあり、巻き出した被膜付きフィルム１の表面に洗浄液１６を接触させるための槽である。洗浄液１６を温めるための加温用ヒーター（図示しない）を備えてもよい。洗浄槽１５に搬送された被膜付きフィルム１が、剥離機構１９に到達するまでに洗浄液１６に接触する時間は長い方が良く、２秒以上が好ましい。接触時間を調整するために、洗浄槽１５内にロールを設置し、洗浄槽１５内で基材フィルム１を折り返して搬送させても良い。

　バックアップロール１７は、剥離機構１９で被膜を剥離する際に被膜付きフィルム１を支えるためのロールであり、平滑な金属ロールが好ましい。

　巻出装置４は、被膜付きフィルム１を巻き出す装置であり、紙管等にロール状に巻き取られた被膜付きフィルム１を回転軸に固定して装着する。回転軸はパウダークラッチなどに連結されており、被膜付きフィルム１が巻き出し時に空転するのを制御できる構造となっている。

　巻取装置５は、基材フィルム２を巻き取る装置であり、基材フィルム２がたるまないように、例えばトルクモーター等で巻き取り張力をコントロールできるようにすると良い。

　洗浄液１６は、温度が高いほど被膜成分の溶出速度が早まる。すなわち洗浄効果が向上するため、洗浄液１６の温度は４０℃以上であることが好ましい。熱による基材フィルム２の寸法変化や平面性悪化抑制のためには、被膜付きフィルム１に付与する洗浄液１６の温度は１５０℃以下であることが好ましい。従って洗浄液１６は、４０℃から１５０℃が好ましい。また、被膜成分を溶出しうる溶媒であれば、いかなる溶媒でもその効果を発現するが、環境負荷を低減するためには、水を使用することが好ましい。洗浄液１６の加温は、供給ノズル１４にカートリッジヒーターなどの熱源を備えていても良いし、洗浄液１６を貯留するタンク（図示しない）を加熱しておいても良いが、洗浄液１６を加熱できればいかなる手段でも良く、これらには限定されない。供給ノズル１４の材質は、加温した洗浄液１６を吐出するために耐熱性を有している事が好ましく、金属、あるいは耐熱性を有する樹脂が好適に用いられる。

　巻取装置５で巻き取った被膜を剥離した後の基材フィルム２は、再溶融した後に安定して再生フィルムとして製膜するために洗浄液１６を完全に取り除いておくことがより好ましく、供給ノズル１４と巻取装置５との間に乾燥装置（図示しない）を設けても良い。乾燥装置は巻取前に設けておけば良く、駆動装置９の前後いずれでも良い。

　また、被膜を剥離した後の基材フィルム２の品質を確認するために、被膜の残渣や工程で付着した環境異物を検出する検査機（図示しない）を巻取装置５の前に設けても良い。検査機は、基材フィルム２の性状に合わせて選定すれば良く、透過光や反射光を用いた検査機が好適に用いられる。また、検査機で検出した被膜の残渣や工程で付着した環境異物の位置を記録するためのマーキング装置（図示しない）を、検査機と巻取装置５との間に設けても良い。マーキング装置によるマーキングの方式は、ペンやシール、あるいはレーザーなど、検出対象の位置がマーキングできれば、いかなる方式でも良い。被膜の残渣や工程で付着した環境異物をマーキングしておくことで、再溶融をする前にその箇所を除去することが可能となるため、より安定して再生フィルムを製膜することができ、再生フィルムの品質低下を防ぐこともできる。

　［第２の実施形態］
　図４は、本発明の第２の実施形態の被膜剥離装置２０１の概略図である。被膜剥離装置２０１は、吸引ボックス１８内からの洗浄液１６ａおよび剥離された被膜の排出装置として、排出ポンプ１２に加え、除去装置２０２、調整バルブ２０３、および供給ノズル１４が設けられている。本実施形態では、排出ポンプ１２から排出した排出液を再利用し、洗浄槽１５へ供給する構成となっているため、図１の被膜剥離装置１０１に比べて洗浄液にかかるコストを抑えることができる。また、排出液を再利用する際は、排出ポンプ１２で排出した排出液から、除去装置２０２で異物を除去した後、供給ノズル１４を介して洗浄槽１５へ供給することで被膜が基材フィルム２に再付着することを抑制することができる。

　排出ポンプ１２で排出した排出液のうち、再利用する排出液の量は調整バルブ２０３で調整すると良い。その際、再利用しなかった排出液と同量の真新しい洗浄液１６を送液装置１３から供給ノズル１４を介して洗浄槽１５へ供給することで、洗浄槽１５の洗浄液量を一定に保つと良い。再利用する排出液の量が多い程、洗浄槽１５内の洗浄液１６の被膜成分濃度が高くなり、剥離能力が低くなるため、基材フィルム２の剥離状態を確認しながら、必要な剥離能力が満たせるように再利用する排出液の量を決めると良い。

　除去装置２０２は、排出液から被膜を除去するための装置であり、フィルターや連続式の遠心分離機等を用いることができる。フィルターを使用する場合は、経時で捕捉された被膜から被膜成分がフィルター内を流れる洗浄液に溶出し、洗浄槽１６へ供給する洗浄液中の被膜成分濃度が上昇する原因となるため、フィルターは定期的に交換することが好ましい。
　上記以外は図１の被膜剥離装置１０１と同じであるので、被膜剥離装置１０１と共通する構成要素については、説明を省略する。

　［第３の実施形態］
　図５は、本発明の第３の実施形態の被膜剥離装置３０１の概略図である。被膜剥離装置３０１は、巻出装置４と巻取装置５との間に、被膜付きフィルム１および基材フィルム２の搬送装置９、９’、洗浄液１６、１６’をそれぞれ溜める洗浄槽１５、１５’、被膜付きフィルム１から被膜を剥離する剥離機構１９、１９’、バックアップロール１７、１７’、搬送フィルムの一部および剥離機構１９、１９’をそれぞれ囲う吸引ボックス１８、１８’、被膜付きフィルム１が通過する隙間である入口開口部２０、２０’、基材フィルム２が通過する隙間である出口開口部２１、２１’、吸引ボックス内の洗浄液１６、１６’および剥離した被膜を排出する排出ポンプ１２、１２’、供給ノズル１４、１４’、を備える。そして、バックアップロール１７’と吸引ボックス１８’とで、被膜付きフィルム１が通過する隙間である入口開口部２０’と出口開口部２１’が形成され、バックアップロール１７と吸引ボックス１８とで、被膜付きフィルム１が通過する隙間である入口開口部２０と基材フィルム２が通過する出口開口部２１が形成されている。

　本実施形態では下流側の洗浄槽１５から排出ポンプ１２で排出した排出液を再利用し、供給ノズル１４’を介して上流側の洗浄槽１５’へ供給する。この際、排出液を全て再利用しても良いし、一部のみ再利用しても良い。一部のみ再利用する場合は、図２の被膜剥離装置２０１のように、除去装置２０２の上流側に調整バルブを設置して、再利用する排出液の量を調整すると良い。その際、洗浄槽１５’の洗浄液量が一定になるように、別の供給手段で真新しい洗浄液を洗浄槽１５’に供給しても良いし、排出ポンプ１２’の排出量を調整しても良い。本実施形態では、被膜付きフィルム１の被膜を剥離機構１９、１９’の２段階で剥離するため、１回あたりの剥離量を少なくすることができる。これにより吸引ボックス１８、１８’内に発生する被膜量が少なくてすみ、剥離した被膜が基材フィルム２へ再付着することや、下流側の洗浄槽１５中の洗浄液中の被膜成分濃度の上昇をさらに抑制し、被膜剥離効果を高く維持できる。

　また、剥離機構１９と剥離機構１９’、吸引ボックス１８と吸引ボックス１８’は、それぞれ同じものである必要はない。例えば、吸引ボックス１８、１８’のいずれか一方が図６に図示する吸引ボックスの構造であってもよい。
　上記以外は図１の被膜剥離装置１０１、図２の被膜剥離装置２０２と同じであるので、共通する構成要素については、説明を省略する。

　以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。

　＜被膜付きフィルム＞
　ポリエチレンテレフタレートの厚み３０μｍ、幅３００ｍｍの基材フィルム上に、水溶性樹脂を含む層として膜厚０．１μｍのポリビニルアルコール樹脂の被膜を形成した。さらにその上に、離型成分を含む層として膜厚０．１μｍの硬化型シリコーン樹脂の被膜を形成した被膜付きフィルムを作製した。

　＜剥離評価方法＞
　剥離の評価は、市販のダインペン（表面エネルギー：３０、７０ｍＮ／ｍ）を用いて、以下の方法で測定した。室温２３℃の環境下で、試料表面にダインペンで描画し、４秒以上その状態を保持する場合は、そのダインペンの表面エネルギーよりも試料表面の表面エネルギーの方が高いと判断した。被膜付きフィルムの離型成分の硬化型シリコーン樹脂が表面に残れば、表面エネルギーは３０ｍＮ／ｍ未満であるため、いずれのダインペンも試料表面に試薬が弾かれて、描画を保持できない。一方、離型成分の硬化型シリコーン樹脂の被膜が剥離されて、ポリビニルアルコール樹脂が表出している場合には、表面エネルギーが７０ｍＮ／ｍ以上であるため、いずれのダインペンも描画を保持できる。離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜がいずれも剥離されて、ポリエチレンテレフタレートが表出している場合には、表面エネルギーが４３．８ｍＮ／ｍであるため、３０ｍＮ／ｍのダインペンの描画は保持するが、７０ｍＮ／ｍのダインペンの描画は保持できない。以上の評価方法により、被膜付きフィルムの被膜が剥離できたか否かを判断した。

　＜フィルムへの異物再付着評価方法＞
　剥離した被膜の挙動を目視で観察し、剥離した被膜の基材フィルムへの再付着の有無を確認した。また、巻取部の直前に設けられたラインカメラによって、基材フィルムに再付着し、巻取部に持ち込まれる剥離した被膜の個数を数え、フィルム搬送速度と走行時間から、フィルム走行１００ｍあたりの回収フィルムに持ち込まれた剥離した被膜の個数を算出し、剥離した被膜の再付着による回収フィルムへの混入を抑制できたか否かを判断した。

　＜被膜付きフィルムからの被膜剥離＞
　［実施例１］
　図１に示す被膜剥離装置１０１を用いて、被膜付きフィルム１の被膜を剥離した。被膜付きフィルム１を被膜剥離装置１０１の巻出装置４にセットし、駆動装置９で５０ｍ／分の搬送速度で洗浄槽１５に搬送して洗浄液１６として温水（４０℃）に接触させた。次いで、剥離機構１９として樹脂製の先端が鋭利なプラスチックドクターブレード（富士商興株式会社製、Ｈｉ－ＰＯＭシリーズ、厚み１．２５ｍｍ）に接触させて、被膜を剥離し、被膜を剥離した基材フィルム２を巻取装置５で巻き取った。この時、洗浄槽１５に搬送された被膜付きフィルム１が、剥離機構１９に到達するまでに洗浄液１６に接触する時間が２秒になるように洗浄槽内の洗浄液量を設定した。吸引ボックス１８はポリテトラフルオロエチレン製とし、図５に示すようにフィルム幅方向の両端部はバックアップロール１７と接触させた。入口開口部２０、および出口開口部２１は四角形の形状とし、大きさは共にフィルム幅方向の長さが３２０ｍｍ、フィルム厚み方向の長さを５ｍｍとした。送液装置１３による洗浄液１６の供給量、および排出ポンプ１２による洗浄液１６ａの排出量は共に０．１８ｍ^３／分とし、この時、出口開口部２１における洗浄液１６の流速の計算値は５６ｍ／分であった。
　本装置を用いて１０分間連続で被膜を剥離してから基材フィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離できていた。また、基材フィルムへの被膜の再付着個数は２個であった。　

　［実施例２］
　図４に示すように、排出ポンプ１２から排出した排出液の一部を除去装置２０２でろ過した後、洗浄槽１５へ供給し再利用する構成とした以外は実施例１と同じ装置で被膜を剥離した。被膜を除去する除去装置２０２としては、連続式遠心分離機（ＧＥＡジャパン株式会社製、ＳＳＥ２０）を用いた。また、排出液の３０％の量を再利用し、残り７０％は廃棄するように調整バルブ２０３を調整し、廃棄した排出液と同量の真新しい洗浄液を送液装置１３から送液した。　　　
　それ以外の条件は実施例１と同じにして、１０分間連続で被膜を剥離してから基材フィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離できていた。また、基材フィルムへの被膜の再付着個数は２個であった。

　［実施例３］
　図５に示す被膜剥離装置３０１を用いて、被膜付きフィルム１の被膜を剥離した。被膜剥離装置３０１を構成する巻出装置４、巻取装置５、搬送装置９、９’、洗浄槽１５、１５’、剥離機構１９、１９’、バックアップロール１７、１７’、吸引ボックス１８、１８’、排出ポンプ１２、１２’、送液装置１３、供給ノズル１４、１４’、は実施例１と同じ装置を用いた。また、除去装置２０２は実施例２と同じ連続式遠心分離機を用いた。
　洗浄槽１５、１５’に搬送された被膜付きフィルム１が、剥離機構１９、１９’に到達するまでに洗浄液１６、１６’に接触する時間がそれぞれ１秒になるように洗浄槽内の洗浄液量を設定し、それ以外は実施例１と同じ条件で被膜を剥離した。この時、出口開口部２１、２１’における洗浄液の流速の計算値は５６ｍ／分であった。
　本装置を用いて１０分間連続で被膜を剥離してから基材フィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離できていた。また、基材フィルムへの被膜の再付着個数は０個であった。　

　［実施例４］
　搬送速度を７０ｍ／分とし、入口開口部２０、および出口開口部２１のフィルム厚み方向の長さを３．６ｍｍとした。洗浄槽１５に搬送された被膜付きフィルム１が、剥離機構１９に到達するまでに洗浄液１６に接触する時間は１．４秒であった。それ以外は実施例１と同じにして被膜を剥離した。この時、出口開口部２１における洗浄液の流速の計算値は７８ｍ／分であった。
　本装置を用いて１０分間連続で被膜を剥離してから基材フィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂は剥離できていたが、水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜は残存していた。また、基材フィルムへの被膜の再付着個数は８個であった。　

　［実施例５］
　搬送速度を７０ｍ／分とし、入口開口部２０、２０’および出口開口部２１、２１’のフィルム厚み方向の長さを３．６ｍｍとした。洗浄槽１５に搬送された被膜付きフィルム１が、剥離機構１９に到達するまでに洗浄液１６に接触する時間は１．４秒であった。それ以外は実施例３と同じにして被膜を剥離した。この時、出口開口部２１、２１’における洗浄液の流速の計算値は７８ｍ／分であった。
　本装置を用いて１０分間連続で被膜を剥離してから基材フィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離できていた。また、基材フィルムへの被膜の再付着個数は０個であった。　

　［実施例６］
　入口開口部２０、および出口開口部２１のフィルム厚み方向の長さを７ｍｍとした以外は実施例１と同じにして被膜を剥離した。この時、出口開口部２１における洗浄液の流速の計算値は４０ｍ／分であった。
　本装置を用いて１０分間連続で被膜を剥離してから基材フィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂は剥離できていたが、水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜は残存していた。また、基材フィルムへの被膜の再付着個数は７個であった。　

　［実施例７］
　入口開口部２０、および出口開口部２１のフィルム厚み方向の長さを３．６ｍｍとした以外は実施例１と同じにして被膜を剥離した。この時、出口開口部２１における洗浄液の流速の計算値は７８ｍ／分であった。
　本装置を用いて１０分間連続で被膜を剥離してから基材フィルムを確認した結果、離型成分の硬化型シリコーン樹脂と水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜をいずれも剥離できていた。また、基材フィルムへの被膜の再付着個数は０個であった。　

　［比較例１］
　吸引ボックス１８を設けず、洗浄槽１５の底面から洗浄槽１５内の洗浄液および剥離した被膜を排出ポンプ１２で排出した以外は実施例１と同じにして被膜を剥離した。
　本装置を用いて被膜を剥離したところ、剥離初期から洗浄槽に被膜が浮遊していた。そのまま、５分間連続で被膜を剥離してから基材フィルムを確認した結果、、離型成分の硬化型シリコーン樹脂は剥離できていたが、水溶性のポリビニルアルコール樹脂の被膜は残存していた。また、基材フィルムへの被膜の再付着個数は４０であった。さらに続けて５分間連続で被膜を剥離すると（つまり、剥離開始してから１０分間連続で被膜を剥離すると）、洗浄槽内に浮遊する被膜が増加し、基材フィルムへの被膜の再付着個数は３００個となった。また、ポリビニルアルコール樹脂および硬化型シリコーン樹脂の両方が基材フィルム上に残存していた。　

　上記の実施例、比較例での被膜付きフィルムの被膜剥離結果を表１にまとめる。表中の被膜剥離可否において、被膜剥離とは、基材フィルム上の被膜であるポリビニルアルコール樹脂と硬化型シリコーン樹脂の両方が基材フィルムから剥離し、被膜付きフィルムが被膜と基材フィルムに分離したことを示す。また、被膜一部残存とは、基材フィルム上の被膜のうち、表層に位置する硬化型シリコーン樹脂のみが剥離し、ポリビニルアルコール樹脂は基材フィルム上に残存して、基材フィルムから分離していないことを示す。そして、被膜残存とは、基材フィルム上の被膜であるポリビニルアルコール樹脂および硬化型シリコーン樹脂の両方が基材フィルム上に残存し、被膜が基材フィルムから分離していないことを示す。

　［実施例１～３と比較例１との対比］
　本発明の実施例１～３は、従来の技術のである比較例１と比較して、被膜剥離可否、被膜の再付着個数の評価において優れていることが確認でき、剥離処理時間の経過によって被膜剥離性能の低下や、基材フィルムへの被膜の再付着個数の増加はみられなかった。このことから、剥離した被膜の再付着や、被膜成分の少なくとも一部が洗浄液中へ溶出して剥離能力が低下することを抑制するには、実施例１～３のように吸引ボックスを設け、その内部の被膜や洗浄液を吸引、排除することが重要であることが実証できた。

　［実施例１、２の対比］
　実施例２は、実施例１と比較して真新しい洗浄液の使用量を抑えながら、被膜剥離可否、被膜の再付着個数の評価において同等の性能であった。このことから、排出ポンプから排出した排出液を除去装置でろ過し、洗浄槽へ供給することで、上記性能を維持しながら、洗浄液にかかるコストを抑えられることが実証できた。

　［実施例１、３、４、５の対比］
　洗浄槽を２つ用いた実施例３は、洗浄槽が１つの実施例１に比べて、洗浄槽内に浮遊する被膜量が少ないことが目視確認でき、また被膜の再付着個数が少なかった。また、両者の搬送速度を大きくした実施例４、５では、洗浄槽が２つある実施例５の方が、洗浄槽が１つの実施例４より、被膜の再付着個数だけでなく被膜剥離可否の評価においても優れていることが確認できた。このことから、洗浄槽を複数用いて剥離することで、剥離した被膜が基材フィルムへ再付着することや、下流側の洗浄槽中の被膜成分の濃度上昇を抑制して剥離能力が低下することを抑制できることが実証できた。

　［実施例１、６、７の対比］
　出口開口部における流速が搬送速度より小さい実施例６に対して、搬送速度より大きい実施例１は被膜剥離可否、被膜の再付着個数の評価において優れていることが確認できた。また、出口開口部における流速が搬送速度の１．５倍以上とさらに大きい実施例７は被膜の再付着個数はさらに少なくなった。このことから、剥離した被膜の再付着や、被膜が洗浄液へ溶出して剥離能力が低下することを抑制するには、出口開口部における流速を大きくすることが重要であることが実証できた。

　本発明は、樹脂フィルムや紙フィルム、金属フィルムなどの基材フィルムに被膜が形成された被膜付きフィルムからの被膜剥離装置および被膜剥離方法に適用できるが、これらの用途に限られるものではない。

１　被膜付きフィルム
２　基材フィルム
４　巻出装置
５　巻取装置
９　搬送装置
１２、１２’　排出ポンプ
１３　送液装置
１４、１４’　供給ノズル
１５、１５’　洗浄槽
１６、１６’、１６ａ　洗浄液
１７、１７’　バックアップロール
１８、１８’　吸引ボックス
１９、１９’　剥離機構
２０、２０’　入口開口部
２１、２１’　出口開口部
１０１、２０１、３０１、４０１　被膜剥離装置
２０２　除去装置
２０３　調整バルブ

Claims

　基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
　前記被膜付きフィルムの搬送方向に並んで配置された２つ以上の洗浄槽と、
　少なくとも前記搬送方向の最下流に配置された前記洗浄槽へ洗浄液を供給する供給装置と、　
　前記被膜付きフィルムが前記各洗浄槽内を順次通過するように、前記被膜付きフィルムを長手方向へ搬送する搬送装置と、　
　前記各洗浄槽内に配置され、フィルムが通過できる隙間をあけて前記被膜付きフィルムの搬送経路の一部を囲う吸引ボックスと、
　前記各吸引ボックス内に少なくとも前記被膜付きフィルムに接触する先端部が配置され、前記被膜付きフィルムから被膜を剥離させるための剥離機構と、
　前記各吸引ボックス内から、前記洗浄液および剥離された前記被膜を前記洗浄槽の外へ排出するための排出装置と、を有し、
　少なくとも１つの前記排出装置が、排出液から異物を除去するための除去装置を有しており、異物が除去された排出液を、当該排出装置が備えられた前記洗浄槽よりも前記搬送方向の上流側に配置されている別の前記洗浄槽へ供給する、
被膜剥離装置。
　基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する被膜剥離装置であって、
　洗浄槽と、
　前記洗浄槽へ洗浄液を供給する供給装置と、　
　前記被膜付きフィルムが前記洗浄槽内を通過するように、前記被膜付きフィルムを長手方向へ搬送する搬送装置と、
　前記洗浄槽内に少なくとも前記被膜付きフィルムに接触する先端部が配置され、フィルムが通過できる隙間をあけて前記被膜付きフィルムの搬送経路の一部を囲う吸引ボックスと、
　前記吸引ボックス内に配置され、前記被膜付きフィルムから被膜を剥離させるための剥離機構と、
　前記吸引ボックス内から、前記洗浄液および剥離された前記被膜を前記洗浄槽の外へ排出するための排出装置と、
を有する被膜剥離装置。
　前記排出装置が、排出液から異物を除去するための除去装置を有しており、異物が除去された排出液を前記洗浄槽へ供給するものである、請求項２に記載の被膜剥離装置。
　基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する被膜剥離方法であって、
　２つ以上の洗浄槽を前記被膜付きフィルムの搬送方向に並べて配置し、
　少なくとも前記搬送方向の最下流に配置された前記洗浄槽へ洗浄液を供給し、
　前記被膜付きフィルムを長手方向に搬送し、前記各洗浄槽内の前記洗浄液中を順次通過させ
　前記各洗浄槽内の前記洗浄液中に配置された、フィルムが通過できる隙間を有する吸引ボックス中に前記被膜付きフィルムを導入し、当該吸引ボックス内で被膜剥離機構により前記被膜を剥離し、
　前記各吸引ボックス内の前記洗浄液および剥離した前記被膜を、前記洗浄槽の外へ排出し、
　少なくとも１つの前記吸引ボックス内から排出した排出液から異物を除去した後に、当該異物が除去された排出液を、当該吸引ボックスが備えられた前記洗浄槽よりも前記搬送方向の上流側に配置されている別の前記洗浄槽へ供給する、
被膜剥離方法。
　基材フィルムの少なくとも片面に被膜を有する被膜付きフィルムから当該被膜を剥離する被膜剥離方法であって、
　洗浄槽に洗浄液を供給し、　
　前記被膜付きフィルムを長手方向に搬送させることで前記洗浄液中を通過させ、
　前記洗浄液中に配置された、フィルムが通過できる隙間を有する吸引ボックス中に前記被膜フィルムを導入し、当該吸引ボックス内で被膜剥離機構により前記被膜を剥離し、
　前記吸引ボックス内の前記洗浄液および剥離した前記被膜を、前記洗浄槽の外へ排出する、
被膜剥離方法。
　前記吸引ボックス内から排出した排出液から異物を除去した後、当該異物が除去された排出液を前記洗浄槽に供給する、請求項５の被膜剥離方法。
　前記吸引ボックスの前記被膜付きフィルムが出て行く前記隙間における前記洗浄液の流速が、前記被膜付きフィルムの搬送速度より大きくなるように、前記吸引ボックスからの前記排出液の排出量を設定する、請求項４～６のいずれかの被膜剥離方法。