WO2023145898A1 - 慢性腎臓病の尿検査方法 - Google Patents

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Definitions

  • the present invention relates to a urine test method for chronic kidney disease and a drug for performing the urine test.
  • the present invention also relates to chronic kidney disease markers.
  • Chronic kidney disease refers to a state in which findings suggestive of decreased renal function or renal failure expressed by glomerular filtration rate (GFR) persists chronically (3 months or more), especially diabetes is a factor The disease is called Diabetic Kidney Disease (DKD).
  • DKD Diabetic Kidney Disease
  • There is no effective treatment for chronic kidney disease and if chronic kidney disease progresses and renal function decline progresses, there is a risk of end-stage renal failure (uremia), necessitating dialysis or kidney transplantation.
  • uremia end-stage renal failure
  • the number of dialysis patients due to renal failure has exceeded 2.1 million worldwide and is expected to increase exponentially in the future.
  • chronic kidney disease can usually be classified into stages 1 to 5 according to the degree of progression, using GFR as an index. However, it is possible to detect conditions prior to the condition in which microalbuminuria in urine is detected).
  • At least one type of protein is detected as a urinary marker for renal damage, but from the viewpoint of increasing the accuracy of testing for chronic kidney disease, the amount of multiple types of protein is detected.
  • at least one protein selected from the group consisting of AMBP, ZAG and PLG is preferred, and AMBP is more preferred, from the viewpoint of relatively high urinary concentration.
  • SPR method surface plasmon resonance method
  • a capturing antibody By immobilizing a capturing antibody on a sensor chip (GLM) and then contacting the target protein in a urine sample, the target protein recognized by the antibody is captured.
  • LLM sensor chip
  • This quantification method utilizes the fact that the change in this angle (resonance unit, RU) is proportional to the amount of bound protein.
  • Medical intervention and treatment for such chronic kidney disease is not particularly limited, but guidance for blood sugar level management, lifestyle improvement, dietary guidance, blood pressure management, anemia management, electrolyte management, uremic toxin management, immune management, and lipid management or medication.

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Abstract

被検者から採取された尿検体について、尿中にアルブミンより偏って排出される、AMBP等のタンパク質の量を検出する工程と、検出したタンパク質量を各タンパク質の基準量と比較する工程と、当該比較の結果、前記被検者におけるタンパク質が基準量よりも高い場合、前記被検者は慢性腎臓病に罹患している又は罹患のおそれがあると判定する工程とを含む、慢性腎臓病を検査する方法。

Description

慢性腎臓病の尿検査方法
 本発明は、慢性腎臓病の尿検査方法及び当該尿検査を行うための薬剤に関する。また、本発明は慢性腎臓病マーカーに関する。
 腎臓は、血液中の老廃物や余分な水分を濾過し、尿として排泄することで、体液の恒常性を維持することを主な役割とする臓器である。腎臓は、糖尿病、高血圧、免疫系の異常、薬剤、出血、急激な血圧低下、感染症等により障害を受け、腎機能が低下する。腎障害により腎機能が約60%以下に低下した場合に腎不全と呼び、腎機能低下の進行速度の違いにより、急性腎障害(Acute Kidney Injury:AKI)と慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)とに大別される。
 慢性腎臓病(CKD)は、糸球体濾過量(GFR)で表される腎機能の低下又は腎臓の障害を示唆する所見が慢性的に(3ヶ月以上)持続する状態をいい、特に糖尿病を要因とするものは糖尿病性腎臓病(Diabetic Kidney Disease:DKD)と称される。慢性腎臓病に有効な治療法はなく、慢性腎臓病が進行して腎機能低下が進むと末期腎不全(尿毒症)の危険があり、人工透析や腎移植が必要となる。腎不全による透析治療患者は全世界で210万人を超え、今後も指数的に増加する見込みである。さらに、末期腎不全に至る前の慢性腎臓病患者は全世界で約7億人存在し(2017年)、医療経済上も大きな負担となっている。
 慢性腎臓病は、自覚症状がないまま病状が進行するが、その進行には生活習慣病(糖尿病、高血圧等)が深く関連するため、当該疾患の早期発見による生活習慣の改善や疾患の治癒及び進行抑制が必要である。そのためには、非侵襲で慢性腎臓病を早期発見できる腎障害のマーカー(指標)による診断法の開発が重要である。現在、臨床現場において、慢性腎臓病の治療・薬効の指標となる検査項目(尿蛋白、尿アルブミン/クレアチニン比(uACR)、推算糸球体濾過量(eGFR)等)はあるが、いずれも感度、精度は高くなく、早期診断等に適用可能な信頼できるマーカーとその検出方法、試薬は未だない。このため容易に非侵襲で検査できる有力な尿マーカーを同定し、その検査法を開発することが出来れば、慢性腎臓病をより早期に診断でき、病状の変化の把握が可能となり、ひいては、生活習慣の改善や早期医療介入によって、腎機能の悪化防止も可能となる。かかる観点から、糖尿病性腎臓病等の慢性腎臓病に関し、様々なマーカーについての報告はあるものの(例えば、特許文献1及び2)、未だ実用化はなされていない。
特開2018-72212号公報 国際公開2012/037603号
 本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、腎障害に関連する尿マーカー分子を同定し、当該分子の量を指標とする慢性腎臓病の尿検査方法又はその検査薬を提供することを目的とする。
 アルブミンは、肝臓で作られ、血液中のタンパク質の60%を占めているが、通常、尿ではほとんど検出されない。しかし、腎臓の機能が低下、特に、腎糸球体でのろ過障害が生じると、アルブミン、さらには他の血漿タンパク質も尿中に排泄されることになる。そのため、尿中のアルブミン、タンパク質量を測定することで腎臓障害の状態を把握することが出来る(所謂、アルブミン尿、タンパク尿)。しかし、腎障害のごく初期では、ごくわずかしかアルブミンは尿中に排泄されないため、そのわずかのアルブミンでも検出できる「尿中アルブミン」の検査が、臨床現場において現在、早期腎障害の検出のために行われている。一方、推算糸球体濾過量(eGFR)は採血が必要で、精度は早期腎障害の検出には十分とは言えない。
 また、腎糸球体から漏出したアルブミンは、尿細管で約70%が再吸収され、その再吸収能には予備能がある。このため、慢性腎臓病の早期でアルブミンが糸球体で血液から尿中に漏出しても尿中での増加は顕著ではなく、尿中でアルブミン増加(微量アルブミン尿)が検出される状態では、かなり大量のアルブミンが糸球体から漏出している状態であり、早期といえども、既に腎障害がある程度進んでいることになる。
 本発明者らは、アルブミンについてのかかる知見も考慮し、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、糸球体で漏出したアルブミンは尿細管で再吸収されやすいが、アルブミンとともに尿中に漏出する血漿タンパク質の中には、アルブミンよりも再吸収されにくい血漿タンパク質が存在しているのではと考えた。そして、このようなアルブミンより尿中に偏って排出されやすい血漿タンパク質は、腎障害のより早期の検出において有効なマーカー分子になるのではと考えた。
 そこで、本発明者らは先ず、健常人の血中及び尿中にて検出されるタンパク質を、質量分析にて網羅的に解析した。そして、血中と尿中双方に存在するタンパク質を抽出し、アルブミンとの相対比で、血中より尿中の比率の高い血漿タンパク質を選定した。その結果、尿中にアルブミンより偏って排泄されやすい血漿タンパク質35種を同定することに至った。
 そして、このようにして同定されたタンパク質のうちの3種のタンパク質(AMBP、ZAG、PLG)に関し、微量アルブミン尿(30mg/gクレアチニン以上)が検出された(早期腎障害が検出された)糖尿病患者の尿で、その検出時点から遡って、より早期に腎障害を検出できるかどうかを解析した。その結果、これらタンパク質の尿中排泄量は、アルブミンとともに、早期から亢進していること等が明らかになった。したがって、尿中にアルブミンより偏って排出される指標として選抜された、AMBP、ZAG、PLG等のタンパク質は、アルブミンよりも早期に腎障害を検出し得ることを明らかにし、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明は、慢性腎臓病の検査方法等に関し、より具体的には以下に関する。
 <1> 下記(a)~(c)の工程を含む、慢性腎臓病を検査する方法
(a)被検者から採取された尿検体について、下記タンパク質群から選択される少なくとも1のタンパク質の量を検出する工程、
(b)工程(a)で検出したタンパク質量を各タンパク質の基準量と比較する工程、
(c)工程(b)における比較の結果、前記被検者におけるタンパク質が基準量よりも高い場合、前記被検者は慢性腎臓病に罹患している又は罹患のおそれがあると判定する工程
タンパク質群(下記にて、これらタンパク質群を各々コードする遺伝子名にて表記する):
AMBP、ZAG、PLG、SERPINF1、BTD、CPN2、SERPINA6、LUM、F2、LRG1、KNG1、ITIH4、SERPINA3、SERPINA1、APOH、SERPING1、AHSG、CP、CFB、CLU、A1BG、C4A、TTR、ITIH1、HPX、APOE、SERPINC1、RBP4、APOA4、VTN、GC、C3、APOD、TF及びCFH。
 <2> 工程(a)で検出する前記タンパク質が、AMBP、ZAG及びPLGからなる群から選択される少なくとも1のタンパク質である、<1>に記載の方法。
 <3> 前記被検者が糖尿病患者であり、前記慢性腎臓病が糖尿病性腎臓病又は糖尿病性腎症である、<1>又は<2>に記載の方法。
 <4> 前記タンパク質量は、免疫学的方法、質量分析方法及びラマン分光法からなる群から選択される少なくとも1の方法によって検出される、<1>~<3>のうちのいずれか1項に記載の方法。
 <5> <1>~<3>のうちのいずれか1項に記載の方法により、慢性腎臓病を検査するための薬剤であって、工程(a)で検出する前記タンパク質に結合する少なくとも1の抗体を含む薬剤。
 <6> 下記タンパク質群から選択される少なくとも1のタンパク質である、慢性腎臓病マーカータンパク質群(下記にて、これらタンパク質群を各々コードする遺伝子名にて表記する):
AMBP、ZAG、PLG、SERPINF1、BTD、CPN2、SERPINA6、LUM、F2、LRG1、KNG1、ITIH4、SERPINA3、SERPINA1、APOH、SERPING1、AHSG、CP、CFB、CLU、A1BG、C4A、TTR、ITIH1、HPX、APOE、SERPINC1、RBP4、APOA4、VTN、GC、C3、APOD、TF及びCFH。
 本発明によれば、早期からの慢性腎臓病の尿検査が可能となる。特に、本発明によれば、現状臨床にて早期腎障害の指標として用いられる微量アルブミン尿よりも、早期に腎障害を感度よく検出することが可能となる。さらに、本発明の方法が対象とする検体は尿であるため、血液等の他の検体よりも、侵襲性低く得ることが出来、頻回に検査しても被検者の負担も少なくて済む。
糖尿病患者等の尿中AMBPタンパク質量を、表面プラズモン共鳴法(SPR法)にて解析した結果を示す、箱ひげ図である。図中、「糖尿病」は、腎障害を伴わない糖尿病患者の尿を解析した結果であることを示し、「健常者」は、健常者の尿を解析した結果であることを示す。また「DN」は、早期腎障害が微量アルブミン尿として認められた糖尿病患者のその時点の尿を解析した結果であることを示し、「4ヵ月」~「20ヵ月」は、その患者で微量アルブミン尿が認められる4ヵ月前~20ヵ月前の時点の尿を解析した結果であることを各々示す。有意差の記述には、Welch’sのt検定値に基づく。 質量分析において検出された、尿中AMBP由来のトリプシン消化断片ペプチドを、AMBPの20~203位のアミノ酸からなる領域(α1-マイクログロブリン(a1-MG))にマッピングした結果を示す、図である。 質量分析において検出された、尿中AMBP由来のトリプシン消化断片ペプチドの平均相対強度を示すグラフである。図中のα1-マイクログロブリン断片番号 ♯1~11は、図2に示す番号に対応する。 メタノール/クロロホルム沈殿法によって処理し、中間層のタンパク質と水層の短い断片(ペプチド)を質量分析対象とする、AMBP由来ペプチド分析の概要を示す、図である。 糖尿病患者由来の尿検体をメタノール/クロロホルム沈殿法によって処理し、水層に分離された短い断片ペプチドを、質量分析に供してAMBP断片ペプチドと同定されたペプチドを、AMBPの20~203位のアミノ酸からなる領域(a1-MG)にマッピングした結果を示す、図である。図中、アミノ酸配列に併記している横棒は、同定されたペプチドを各々示す。中でも、黒の横棒は、糖尿病患者群と健常者群とを有意に区別可能なペプチド断片であることを示す。 糖尿病患者由来の尿検体をメタノール/クロロホルム沈殿法によって処理し、水層に分離された短い断片ペプチドを、質量分析に供してAMBP断片ペプチドと同定されたペプチドを、AMBPの204~352位のアミノ酸からなる領域(ビクニンを含む領域)にマッピングした結果を示す、図である。 健常者由来の尿検体をメタノール/クロロホルム沈殿法によって処理し、水層に分離された短い断片ペプチドを、質量分析に供してAMBP断片ペプチドと同定されたペプチドを、AMBPの20~203位のアミノ酸からなる領域(a1-MG)にマッピングした結果を示す、図である。図中、アミノ酸配列に併記している横棒は、同定されたペプチドを各々示す。中でも、黒の横棒は、糖尿病患者群と健常者群とを有意に区別可能なペプチド断片であることを示す。 健常者由来の尿検体をメタノール/クロロホルム沈殿法によって処理し、水層に分離された短い断片ペプチドを、質量分析に供してAMBP断片ペプチドと同定されたペプチドを、AMBPの204~352位のアミノ酸からなる領域(ビクニンを含む領域)にマッピングした結果を示す、図である。図中、アミノ酸配列に併記している横棒は、同定されたペプチドを各々示す。 図5~8において検出された全てのAMBPペプチド断片について、それらN末端のアミノ酸位置をプロットした結果(図中、上部)、及び、その集計値に基づき前記アミノ酸位置毎のROC解析を行った結果を示す、図である。なお、矢印が付されたペプチドは、図5に示す黒の横棒にて表されるペプチド断片に対応する。 図5~8において検出された全てのペプチド断片について、それらC末端のアミノ酸位置をプロットした結果(図中、上部)、及び、その集計値に基づき前記アミノ酸位置毎のROC解析を行った結果を示す、図である。なお、矢印が付されたペプチドは、図5に示す黒の横棒にて表されるペプチド断片に対応する。 糖尿病患者群で特徴的に検出されたAMBPペプチドA~Dについて、健常者群及び患者群における質量分析測定値(ペプチド同定数)に対し、群間比較(ウェルチのt検定)を実施した結果を示す、箱ひげ図である。 抗AMBP抗体(R&D systems社製、MAB7724)の認識部位をELISA法によって解析するために合成したペプチド1~5の、AMBPにおける位置関係を示す、概略図である。 図12及び表7に示すペプチド1~5(図中「ビオチン化抗原」)及び前記抗AMBP抗体を用いた、前記ELISA法の概要を示す、図である。 前記ELISA法によって解析した結果を示す、グラフである。
 <慢性腎臓病の尿検査方法>
 後述の実施例に示すとおり、本発明者らによって、早期腎障害のマーカーであるアルブミンより尿中に偏って排出されるタンパク質は、微量アルブミン尿よりもより早期に腎障害を検出する上で有用であることが明らかになった。
 すなわち、本発明は、かかる知見に基づき完成されたものであり、下記(a)~(c)の工程を含む、慢性腎臓病を検査する方法を提供する。
 下記(a)~(c)の工程を含む、慢性腎臓病を検査する方法
(a)被検者から採取された尿検体について、下記タンパク質群から選択される少なくとも1のタンパク質の量を検出する工程、
(b)工程(a)で検出したタンパク質量を各タンパク質の基準量と比較する工程、
(c)工程(b)における比較の結果、前記被検者におけるタンパク質が基準量よりも高い場合、前記被検者は慢性腎臓病に罹患している又は罹患のおそれがあると判定する工程
タンパク質群:(下記にて、これらタンパク質群を各々コードする遺伝子名にて表記する)
AMBP、ZAG、PLG、SERPINF1、BTD、CPN2、SERPINA6、LUM、F2、LRG1、KNG1、ITIH4、SERPINA3、SERPINA1、APOH、SERPING1、AHSG、CP、CFB、CLU、A1BG、C4A、TTR、ITIH1、HPX、APOE、SERPINC1、RBP4、APOA4、VTN、GC、C3、APOD、TF及びCFH。
 本発明の検出対象である「慢性腎臓病」は、Chronic Kidney Disease、CKDとも称され、以下のいずれかの状態が3ヶ月以上持続する場合に該当すると定義されている。
(1)尿所見異常等の腎疾患・腎障害の存在を示す所見がある
(2)中等度以上の腎機能低下(糸球体濾過量(GFR) 60ml/分/1.73m2未満)を認める。
 また「慢性腎臓病」は通常、その進行度によって、GFRを指標として、ステージ1~5に分類することができるが、本発明においてはいずれのステージも検出対象となり、またステージ1(GFRは正常範囲であるが、尿中の微量アルブミン尿が検出される状態)よりも前の状態も検出することが可能となる。
 本発明において「慢性腎臓病」としては例えば、臨床及び病理学的に、糖尿病性腎臓病(DKD)、糖尿病性腎症(DN)、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、腎硬化症、IgA腎症、又は膠原病に伴う腎症と診断される疾患が挙げられるが、これら疾患、特に糖尿病性腎臓病、糖尿病性腎症の早期発見において、本発明は好適に用いられ得る。
 「糖尿病性腎臓病」は通常、(1)アルブミン尿の上昇及びGFRの低下を伴う、典型的(古典的)DKD、(2)顕性アルブミン尿を呈する以前からGFRが低下する臨床経過を伴うDKD(early decliner)、(3)正常アルブミン尿のままGFRが低下する臨床経過を伴うDKD(NADKD)、(4)顕性アルブミン尿を呈してもGFRがさほど低下しない臨床経過を伴う、GFR安定型DKDの4パターンに分けられる。なお「顕性アルブミン尿」とは、尿アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)の数値が300以上の尿のことである。本発明においてはいずれのパターンのDKDも本発明の好適な検査対象となる。
 「糖尿病性腎症」は通常、ステージ1~5に分類することができるが、本発明においてはいずれのステージも検出対象となり、特にステージ1(尿中アルブミン量が正常(30mg/gCr未満)である、腎症前期)及びその前の状態を検出することが可能となる。
 本発明において「被検者」は、ヒトであれば特に制限はなく、例えば、腎機能の低下を感じている者、腎機能が低下するおそれがある者、慢性腎臓病を罹患するおそれがある者(例えば、糖尿病患者)、他の検査方法において慢性腎臓病を罹患していると判断されている者が挙げられるが、後述の実施例に示すとおり、本発明にかかる被検者は、好ましくは糖尿病患者である。ここで「糖尿病患者」は、糖尿病を罹患している者(糖尿病罹患者)であり、より具体的には、空腹時血糖値が126mg/dL以上であるか、又は、経口ブドウ糖負荷試験後2時間後の血糖値が200mg/dL以上である者を意味する。
 かかる被検者から採取(分離)される「尿検体(尿試料)」としては、例えば、排尿(放尿)、又は尿管へのカテーテルの挿入による収集によって得ることができるが、低侵襲性の観点から、排尿により得ることが好ましい。尿検体は、尿を含む試料又は尿に由来する試料であればよく、後述の本発明にかかるタンパク質量の検出前に、予備的な処理に供されている尿であってもよい。かかる予備的な処理としては、特に制限はないが、例えば、処理液(例えば、緩衝液、更には、キレート剤、界面活性剤等を添加した溶液)の添加、遠心処理、ろ過、攪拌、タンパク質の分画、タンパク質の抽出、タンパク質の沈殿、タンパク質の分解(ペプチドへの断片化)、加熱、凍結、冷蔵が挙げられる。また、かかる処理は複数組み合わせて尿に施してもよい。
 本発明において、腎障害の尿中マーカーとして検出されるタンパク質(本発明にかかるタンパク質)は、後述の実施例に示すとおり、アルブミンより尿中に偏って排出される血漿タンパク質であり、より具体的には、下記表1及び2に示す35種のタンパク質が挙げられる。各タンパク質のアミノ酸配列情報は、下記表に付記したUniprot.No.(アクセッション番号)を基に、データベース(www.uniprot.org/)で検索することにより得ることができる。
 なお、タンパク質をコードする遺伝子のDNA配列は、その変異等により、自然界において(すなわち、非人工的に)変異しうる。したがって、本発明において検出対象となる腎障害のマーカーは、前記典型的なアミノ酸配列に特定されることなく、それらアミノ酸配列の天然の変異体も含まれる。また、本発明において検出対象となる腎障害のマーカーは、全長のアミノ酸配列からなるもののみならず、生体内で断片化された部分ポリペプチド(断片ペプチド)も含まれる。
 かかる部分ポリペプチドとしては、例えば、後述の実施例に示すとおり、AMBPにおいては、20~203位のアミノ酸(配列番号:2に記載のアミノ酸配列)を含むペプチド、183~202位のアミノ酸(配列番号:3に記載のアミノ酸配列)を含むペプチド、183~203位のアミノ酸(配列番号:4に記載のアミノ酸配列)を含むペプチド、184~202位のアミノ酸(配列番号:5に記載のアミノ酸配列)を含むペプチド、184~203位のアミノ酸(配列番号:6に記載のアミノ酸配列)を含むペプチド、175~203位のアミノ酸(配列番号:11に記載のアミノ酸配列)を含むペプチド、63~85位のアミノ酸(配列番号:7に記載のアミノ酸配列)を含むペプチドが挙げられる。なお、本願発明において、AMBPにおける何位とは、当該タンパク質のアミノ酸配列(UniProt No.P02760(配列番号:1)に記載のアミノ酸配列)において、最初のメチオニンを1位とした際の順番を意味する。
 本発明において、腎障害の尿中マーカーとして検出するタンパク質の種類としては、少なくとも1種であれば良いが、より慢性腎臓病の検査の精度を高めるという観点から、複数種のタンパク質量を検出してもよい。複数種としては、特に制限はなく、例えば、2種以上(2種、3種、4種等)、5種以上(5種、6種、7種、8種、9種等)、10種以上(10種、12種、15種、18種等)、20種以上(20種、22種、25種、28種等)、30種以上(30種、31種、32種、33種、34種、35種)が挙げられる。また、本発明においては、比較的尿中濃度が高いという観点から、AMBP、ZAG及びPLGからなる群から選択される少なくとも1のタンパク質が好ましく、AMBPがより好ましい。
 本発明において検出する腎障害のマーカーの「タンパク質の量」とは、絶対量のみならず、相対量であってもよい。相対量としては、例えば、尿中の総タンパク質(ポリペプチド)量に対する割合が挙げられる。また、相対量としては、検出に用いる測定方法又は測定装置に基づくタンパク質(ポリペプチド)量の比(所謂、任意単位(AU)で表される数値)が挙げられる。相対量としてはまた、例えば、参照分子の量を基準として算出した値を用いてもよい。本発明にかかる「参照分子」は、尿検体において安定して存在しており、また異なる尿検体間において、その1日総排泄量の差が小さい分子であればよく、例えば、内在性コントロール(内部標準)分子が挙げられ、より具体的には、クレアチニン(Cr)が挙げられる。なお、尿中クレアチニン濃度は、クレアチニンの産生が筋肉の量に依存することから、一個体に対して、その1日総排泄量はほぼ一定であると考えられている。尿中成分の検査においては、尿の濃淡誤差を回避するため、クレアチニン1g当りの量により、目的とする尿中成分の1日総排泄量を推定する手法が一般的に用いられており、これによりクレアチニン単位グラム当たりの尿中成分を比較することが可能になる。
 「タンパク質量の検出」は、当業者であれば、適宜公知の手法を採用して実施することができる。かかる公知の手法としては、例えば、抗体を用いて検出する方法(免疫学的方法)、質量分析法、ラマン分光法が挙げられる。
 「免疫学的方法」では、本発明にかかるタンパク質を認識する抗体が使用され、当該抗体を各々の抗体が結合するタンパク質(標的タンパク質)に接触させ、当該抗体の各タンパク質への結合性を指標として、各タンパク質量が検出される。
 免疫学的方法としては、例えば、イムノクロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着法(ELISA法)、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、ラテックス凝集法、マルチプレックスアッセイ、抗体アレイ等のサンドイッチ法、イムノブロッティング、イムノアフィニティークロマトグラフィー、イメージングサイトメトリー、フローサイトメトリー、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降法、免疫組織化学的染色法、表面プラズモン共鳴法(SPR法)が挙げられる。
 より具体的に、イムノクロマトグラフィー、ELISA法等のサンドイッチ法においては、先ず、プレート、繊維状物質、粒子等の固相に固定した、標的タンパク質を認識する抗体(捕獲用抗体)に、前記尿検体中の標的タンパク質を接触させることにより、当該抗体が認識する標的タンパク質は捕獲される。次いで、捕獲された標的タンパク質に対して、後述の標識がなされた標的タンパク質を認識する抗体(検出用抗体)を作用させ、当該標識を化学的に又は光学的に検出することにより、本発明にかかるタンパク質の量を検出することができる。
 なお、「捕獲用抗体」と「検出用抗体」とは、本発明にかかるタンパク質を認識する限り、同一の抗体であってもよく、異なる抗体であってもよいが、本発明にかかるタンパク質を非競合的に捕獲、検出することができるという観点から、異なる抗体であることが好ましい。異なる抗体としては、例えば、捕獲用抗体が本発明にかかるタンパク質に対するポリクローナル抗体であり、検出用抗体が同標的タンパク質に対するモノクローナル抗体であるという組み合わせ、捕獲用抗体が本発明にかかるタンパク質に対するモノクローナル抗体であり、検出用抗体が同標的タンパク質に対するポリクローナル抗体であるという組み合わせ、または捕獲用抗体が本発明にかかるタンパク質に対するモノクローナル抗体であり、検出用抗体が当該捕獲用抗体の認識する部位(エピトープ)とは異なる部位を認識する同標的タンパク質に対するモノクローナル抗体であるという組み合わせである。
 また、標識物質を結合させた検出用抗体を用いて本発明にかかるタンパク質に結合した抗体量を直接測定する方法以外に、標識物質を結合させた二次抗体を利用する方法や二次抗体と標識物質を結合させたポリマーを利用する方法等の間接的検出方法を利用することもできる。ここで「二次抗体」とは、本発明にかかる抗体に特異的な結合性を示す抗体である。また、二次抗体に代えて、標識物質を結合させたプロテインGやプロテインA等を用いることも可能である。
 また、免疫学的方法としてより具体的に、表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いる場合には、抗体は捕獲用抗体1種類だけが使われる。捕獲用抗体をセンサーチップ(GLM)に固定し、その後、尿検体中の標的タンパク質を接触させることにより、当該抗体が認識する標的タンパク質は捕獲される。その結果、センサー表面に入射する光がタンパク質の結合により、表面近傍の屈折率が変化し、光の反射強度が最小となる角度が変化する。この角度の変化(レゾナンスユニット、RU)は結合したタンパク質の量に比例することを利用した定量法である。
 「質量分析法」とは、タンパク質をトリプシン消化したペプチド試料を、イオン源を用いてイオン化し、質量分析計の分析部において、真空中で運動させ電磁気力を用いて、あるいは飛行時間差によりイオン化したペプチドを質量電荷比に応じて分離、検出し、ペプチドのイオン量の総和からタンパク質量を測定する方法のことをいう。なお、ここでの「ペプチド試料」は、本発明においては、尿検体に相当し、尿タンパク質をトリプシン分解することにより調製される。イオン源を用いてイオン化する方法としては、EI法、CI法、FD法、FAB法、MALDI法、ESI法等の方法を適宜選択することができる。また、分析部において、イオン化したペプチド試料を分離する方法としては、磁場偏向型、四重極型、イオントラップ型、飛行時間(TOF)型、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型等分離方法を適宜選択することができる。また、2種類以上の質量分析法を組み合わせたタンデム型質量分析(MS/MS)やトリプル四重極型質量分析を利用することができる。特に、トリプル四重極型質量分析計による選択反応モニタリング(SRM:Selected reaction monitoring)又は多重反応モニタリング(MRM:Multiple reaction monitoring)によって、1回の測定で1種類又は多種のマーカー分子を同時に測定することができる。また、質量分析計は単独で用いられてもよいし、液体クロマトグラフィー(LC)や高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を組み合わせることにより、対象タンパク質を構成するペプチドを分離・精製してサンプルとすることができる。
 「ラマン分光法」とは、ラマン散乱光を用いて物質の分析を行う分光法であり、通常、光源、分光器及び検出器から構成されるラマン分光装置を用いて行われる。ラマン散乱光とは、物質に光を照射した際に生じる、入射光と異なる波長を有し、振動数の変化した散乱光である。単色光を照射した場合、その振動数成分の集まり(ラマンスペクトル)は物質に固有のものとなる。このため、かかるラマン散乱光の特性を利用し、レーザー光を使用したラマン分光法によって、本発明が対象とする尿中の特定タンパク質のような、生体微量物質であっても定量的に分析することが可能となる。かかる生体微量物質の定量分析が可能なラマン分光法としては特に制限はないが、例えば、共鳴ラマン分光法、共鳴ラマンラベル法、表面増強共鳴ラマン(SERRS)等の高感度定量分析法、マルチチャンネルラマン分光による多項目同時分析、コヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)分光法等が、好適な方法として挙げられる。なお、ラマン分光法によって生体物質を検出できることは公知である(例えば、特許第6470779号、特開2007-175242号公報、科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究報告書 CARSによる非侵襲血糖計測技術の研究(研究代表者 戸井田昌宏)、加納英明ら、「ナノ秒白色レーザーを用いたコヒーレント・ラマン分光イメージング」、日本光学会会誌 光学、2011年、第40巻、第8号、第421(35)~429(43)ページ等 参照)。
 本発明の検査方法においては、このようにして検出された本発明にかかるタンパク質の量と、同タンパク質の基準量とを比較する。比較対象となる「本発明にかかるタンパク質の基準量」としては特に制限はなく、当業者であれば上記検出方法及び統計学的解析方法に合わせ、それを基準とすることにより、慢性腎臓病を罹患していない者と慢性腎臓病患者とを判別することのできる、所謂カットオフ値として設定することができる。
 慢性腎臓病の罹患の有無を判別するための基準量としては、例えば、慢性腎臓病を罹患していない個体群(例えば、腎障害を伴わない糖尿病患者群、少なくとも1年間腎障害を発症していない糖尿病患者群、健康診断を受診し、異常が検出されなかった健常者群)において検出された本発明にかかるタンパク質量の中央値又は平均値が挙げられる。また、慢性腎臓病を罹患していない個体群と慢性腎臓病を罹患している個体群とにおいて、本発明にかかるタンパク質の量を比較することにより決定される値(例えば、慢性腎臓病を罹患していない個体群の本発明にかかるタンパク質の量と、慢性腎臓病に罹患している個体群の同タンパク質の量との、間の値)であってもよい。さらに、後述の実施例に示すとおり、腎障害の進行に伴い、本発明にかかるタンパク質の尿中の量は増加し得る。そのため、本発明にかかる基準量として、被検者自体の過去の本発明にかかるタンパク質の量も挙げられる。
 かかる基準量の設定は、当業者であれば、上記検出方法に合った統計学的解析方法を適宜選択して行うことができる。統計学的解析方法としては、例えば、t検定(Welch’s t検定等)、非等分散性のパラメトリック検定、Steelの多重検定、マン・ホイットニーのU検定、分散分析(ANOVA)、クラスカル・ウォリス検定、ウィルコクソン検定、オッズ比、ハザード比、フィッシャーの正確検定、受信者動作特性解析(ROC解析)、分類木と決定木解析(CART解析)が挙げられる。また、比較の際には、正規化された又は標準化かつ正規化されたデータを用いることもできる。
 かかる基準量として、後述の実施例(表6)に示すように、本発明において腎障害のマーカーとしてAMBPタンパク質の尿中量をSPR法にて検出した場合、より具体的な例としては、好ましくは15であり、より好ましくは18であり、さらに好ましくは20であり、より好ましくは30であり、さらに好ましくは35である。なお、ここでの数値は、SPR法にておいて検出されるレゾナンスユニット(RU)値を表す。
 「前記被検者におけるタンパク質量が基準量よりも高い」とは、当業者であれば適宜判断することができる。例えば、検出されたタンパク質量が基準量より高く、好ましくはその差が統計的に有意と認められること(例えば、P<0.05)が挙げられる。また、例えば、検出されたタンパク質量が対応する基準量の2倍以上(好ましくは、3倍以上、4倍以上、5倍以上、6倍以上、7倍以上、8倍以上、9倍以上)であることも挙げられる。そして、本発明の検査方法において、前記被検者におけるタンパク質量が基準量よりも高い場合、前記被検者は慢性腎臓病を罹患している又は罹患するおそれがある(発症するおそれがある)と判定される。
 また、慢性腎臓病の検査は、通常、医師(医師の指示を受けた者も含む)によって行われるが、上述のタンパク質量等に関するデータは、医師による治療のタイミング等の判断も含めた診断に役立つものである。よって、本発明の方法は、医師による診断のために上述のタンパク質に関するデータを収集する方法、当該データを医師に提示する方法、上述のタンパク質と基準量とを比較し分析する方法、医師による診断を補助するための方法とも表現し得る。
 さらに、本発明の検査方法は、他の慢性腎臓病の検査方法と組み合わせて行ってもよい。かかる他の検査方法としては、特に制限はないが、例えば、尿検査(尿中アルブミン量の検出、尿中アルブミン/Cr比の検出、尿中タンパク量の検出、尿中タンパク/Cr比の検出等)、血液検査(血清クレアチニン値の検出等)、画像診断(超音波検査、腹部CT等)、腎生検が挙げられる。
 以上の通り、本発明によれば、慢性腎臓病を早期発見できる、あるいは、病状の病態の変化を検査することができる。そして、かかる評価の結果により、慢性腎臓病罹患者における、食塩制限、運動、禁煙等の生活習慣の改善といった医療介入、血糖や血圧のコントロール等を目的とした薬物等による治療を行うか否かを判断することもできる。したがって、本発明は、本発明の検査方法により慢性腎臓病を罹患していると判定された被検者に、慢性腎臓病の医療介入、治療を施す工程を含む、慢性腎臓病に医療介入する方法、又は慢性腎臓病を治療する方法を提供することもできる。
 かかる慢性腎臓病の医療介入、治療としては特に制限はないが、血糖値管理、生活習慣改善、食事指導、血圧管理、貧血管理、電解質管理、尿毒素管理、免疫管理、脂質管理のための指導又は投薬が挙げられる。
 糖尿病患者では血糖値は、Hba1c 6.9%未満になるように管理され、場合により血糖降下薬が投与される。血糖降下薬として、SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン、ダパグリフロジン、ルセオグリフロジン、トホグリフロジン、カナグリフロジン、エンパグリフロジン等)、DPP4阻害薬(シタグリプチンリン酸、ビルダグリプチン、サキサグリプチン、アログリプチン、リナグリプチン、テネリグリプチン、トレラグリプチン、アナグリプチン、オマリグリプチン等)、スルホニル尿素薬(トルブタミド、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリクロピラミド、グリベンクラミド、グリクラジド、グリメピリド等)、チアゾリジン薬(ピオグリタゾン等)、ビグアナイド薬(メトホルミン、ブホルミン等)、α-グルコシダーゼ阻害薬(アカルボース、ボグリボース、ミグリトール等)、グリニド薬(ナテグリニド、ミチグリニド、レパグリニド等)インスリン製剤、NRF2活性化剤(バルドキソロンメチル等)等が用いられる。
 生活習慣改善としては、禁煙及びBMI値の25未満への減量等が推奨される。食事指導としては、減塩及びタンパク質制限が行われる。
 血圧管理としては、130/80mmHg以下となるように、管理され、場合により高血圧治療薬が投与されうる。高血圧治療薬としては、利尿薬(サイアザイド系利尿薬、例えばトリクロルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、サイアザイド系類似利尿薬、例えばメチクラン、インダバミド、トリバミド、メフルシド、ループ利尿薬、例えばフロセミド、カリウム保持性利尿薬・アルドステロン拮抗薬、例えばトリアムテレン、スピロノラクトン、エプレレノン等)、カルシウム拮抗薬(ジヒドロピリジン系、例えばニフェジピン、アムロジピン、エホニジピン、シルニジピン、ニカルジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニルバジピン、バルニジピン、フェロジピン、ベニジピン、マニジピン、アゼルニジピン、アラニジピン、ベンゾチアゼピン系、ジルチアゼム等)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(カプトプリル、エナラプリル、アセラプリル、デラプリル、シラザプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、テモカプリル、キナプリル、トランドラプリル、ベリンドプリルエルブミン等)、アンジオテンシン受容体拮抗薬(アンジオテンシンII受容体拮抗薬、例えばロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタン、イルベサルタン、アジルサルタン等)、交感神経遮断薬(β遮断薬、例えばアテノロール、ビソプロロール、ベタキソロール、メトプロロール、アセプトロール、セリプロロール、プロプラノロール、ナドロール、カルテオロール、ピンドロール、ニプラジロール、アモスラロール、アロチノロール、カルベジロール、ラベタロール、ベバントロール、ウラピジル、テラゾシン、ブラゾシン、ドキサゾシン、ブナゾシン等)等が用いられうる。
 貧血治療薬としてはエリスロポエチン製剤、鉄剤、HIF-1阻害剤等が用いられる。電解質調整薬としてカルシウム受容体作動薬(シナカルセト、エテルカルセチド等)、リン吸着剤が用いられる。尿毒素吸着剤として活性炭等が用いられる。
 免疫管理としては、免疫抑制剤(ステロイド類、タクロリムス、抗CD20抗体、シクロヘキサミド、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)等)が用いられる。
 脂質管理では、LDL-C120mg/dL未満となるよう管理され、場合により脂質異常症治療薬、例えばスタチン系薬剤(ロスバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン等)、フィブラート系薬剤(クロフィブラート、ベザフィブラート、フェノフィブラート、クリノフィブラート等)、ニコチン酸誘導体(ニコチン酸トコレロール、ニコモール、ニセリトロール等)、コレステロールトランスポーター阻害剤(エゼチミブ等)、PCSK9阻害剤(エボロクマブ等)、EPA製剤等が用いられる。
 腎機能の低下が著しく生命予後に危険が及ぶ場合は、腹膜透析、血液透析、持続的血液濾過透析、血液アフェレーシス(血漿交換、血漿吸着等)や腎移植のような腎代替療法が施される。
 また、本発明によれば、かかる治療薬の用法(投与対象、投与時期)が特定される。したがって、本発明は、本発明の方法により慢性腎臓病に罹患していると判定された被検者に投与される、上述の血糖降下薬等の薬剤を有効成分とする、慢性腎臓病の治療薬をも提供する。
 <慢性腎臓病を検査するための薬剤>
 上述の通り、本発明の方法においては、上述のタンパク質量を、当該タンパク質を認識する抗体を用いて検出することにより、慢性腎臓病罹患又はそのおそれの有無を判定することができる。
 したがって、本発明は、上述の方法により、慢性腎臓病を検査するための薬剤であって、本発明にかかるタンパク質を認識する抗体を含む薬剤を提供する。
 本発明の薬剤に含まれる「抗体」は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよく、また、抗体の機能的断片であってもよい。「抗体」には、免疫グロブリンの全てのクラス及びサブクラスが含まれる。「ポリクローナル抗体」は、異なるエピトープに対する異なる抗体を含む抗体調製物である。また、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(抗体断片を含む)を意味する。ポリクローナル抗体とは対照的に、モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を認識するものである。本発明において抗体の「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、標的タンパク質を特異的に認識するものを意味する。具体的には、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、及びこれらの重合体等が挙げられる。
 本発明にかかる抗体は、ポリクローナル抗体であれば、抗原(本発明にかかるタンパク質、部分ペプチド又はこれを発現する細胞等)で免疫動物を免疫し、その抗血清から、従来の手段(例えば、塩析、遠心分離、透析、カラムクロマトグラフィー等)によって、精製して取得することができる。
 また、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法や組換えDNA法によって作製することができる。ハイブリドーマ法としては、代表的には、コーラー及びミルスタインの方法(Kohler&Milstein,Nature,256:495(1975))が挙げられる。組換えDNA法は、上記本発明に係る抗体をコードするDNAをハイブリドーマやB細胞等からクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主細胞(例えば哺乳類細胞株、大腸菌、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞等)に導入し、本発明に係る抗体を組換え抗体として産生させる手法である(例えば、P.J.Delves,Antibody Production:Essential Techniques,1997 WILEY、P.Shepherd and C.Dean Monoclonal Antibodies,2000 OXFORD UNIVERSITY PRESS、Vandamme A.M. et al.,Eur.J.Biochem.192:767-775(1990))。
 本発明にかかる抗体はまた、イムノクロマトグラフィー、ELISA法、表面プラズモン共鳴法等に用いるべく、固相化された形態で提供されてもよい。固相としては、例えば、プラスチックプレート等のプレート、ニトロセルロース等の繊維状物質、磁性粒子やラテックス粒子等の粒子を用いることができる。また、上記検出方法に合わせ、抗体は標識用物質で標識されていてもよい。標識用物質としては、例えば、HRP、β-D-グルコシダ―ゼ、ルシフェラーゼ等の酵素、ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン等の発光物質、FITC、FAM、DEAC、R6G、TexRed、Cy5等の蛍光物質、金属コロイド(金コロイド、白金コロイド等)、ラテックス(例えば、赤色及び青色等の顔料で着色されたポリスチレンラテックス等の合成ラテックス、天然ゴムラテックス)等の呈色物質、H、14C、32P、35S、123I等の放射性同位体、ビオチン、ストレプトアビジン等の親和性物質が挙げられる。
 本発明の薬剤は、前記抗体の他、組成物として許容される他の成分を含むことができる。このような他の成分としては、例えば、薬理学上許容される担体又は希釈剤(滅菌水、生理食塩水、植物油、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤等)が挙げられる。賦形剤としては、乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としてはアジ化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
 また、上記本発明にかかる抗体又は薬剤の他、標識の検出に必要な基質、試料(尿検体等)のタンパク質を溶解するための溶液(タンパク質溶解用試薬)、試料の希釈や洗浄に用いる緩衝液(希釈液、洗浄液)、標識の検出反応を停止するための試薬(反応停止薬)、陽性対照(例えば、本発明に係るタンパク質各種、標品、慢性腎臓病罹患者に由来する尿検体)、陰性対照(例えば、慢性腎臓病を罹患していない者に由来する尿検体)、本発明にかかる抗体に対するアイソタイプコントロール抗体等を組み合わせることができ、慢性腎臓病を検査するためのキットとすることもできる。かかるキットとしては、例えば、少なくとも1の発明に係るタンパク質を認識する抗体と、前記抗体に対するアイソタイプコントロール抗体、陽性対照及び陰性対照から選択される少なくとも1の物品とを含む慢性腎臓病を検査するためのキットが挙げられる。また、標識されていない抗体を抗体標品とした場合には、当該抗体に結合する物質(例えば、二次抗体、プロテインG、プロテインA等)を標識化したものを組み合わせることができる。さらに、かかるキットには、当該キットの使用説明書を含めることができる。
 <慢性腎臓病を検査するための装置>
 本発明が対象とする尿は、医療行為等を伴わずとも排尿によって容易に採取することができ、また日常的に分析することで健康管理(例えば、糖尿病患者の疾患管理)を行うことも可能である。よって、かかる観点から、便器等に備える、慢性腎臓病を検査するための以下のような装置も提供することが可能である。
 本発明の検査方法によって慢性腎臓病を検査するための装置であって、
 被検者の尿を採取するための採尿器と、採尿器内の尿検体における本発明にかかるタンパク質を検出するための系と、当該系で検出された前記タンパク質量を対応するタンパク質の基準量と比較し、前記被検者の慢性腎臓病の罹患又はそのおそれの有無を判定するためのデータ処理部と、当該判定結果を出力するデータ出力部とを備えた装置。
 本発明において、採尿器は、例えば、便器本体内で放尿を受ける位置の設けられる器(サンプルポート等)が挙げられる。本発明にかかるタンパク質を検出するための系としては、当該タンパク質を検出できる装置等であればよく、例えば、ラマン分光装置、免疫学的検出装置(自動イムノクロマトグラフィーアッセイ装置、自動ELISA装置等)、質量分析計が挙げられる。データ出力部は、データ送信部を更に備えるものであってもよく、無線LAN、赤外線通信等によって、前記判定結果を、被検者又はその健康状態を管理する者(医師等)等が有する情報端末(携帯電話、スマートフォン、タブレット、携帯情報端末、コンピュータ、携帯用コンピュータ、ウェラブルコンピューター等)に送信することも可能となる。
 また、本発明の装置において、採尿器及びタンパク質検出系と、データ処理部及びデータ出力部とは分離していてもよい。かかる場合、タンパク質検出系はデータ送信部を備え、データ処理部はデータ受信部を備えることにより、分離した装置間において、検出したタンパク質に関するデータの送受信が可能となる。
 以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
 (実施例1)
 微量アルブミン尿より早期に糸球体障害を尿検査で検出できるようにする尿バイオマーカーの探索に際し、軽度の糸球体障害でアルブミンとともに尿中に排泄され、アルブミンより近位尿細管で再吸収され難い低分子血漿タンパク質が存在すると仮定した。そして、かかるタンパク質であれば、尿中のアルブミンを指標とするよりも、より早期に腎障害を反映するマーカーとして利用し得るのではないかと考え、以下の方法にて、当該タンパク質の探索を行った。
 健常者3名から得た血漿タンパク質及び尿タンパク質を、質量分析装置(LC-MS/MS、HITACHI NanoFrontier LD System)を用いたプロテオーム解析に供し、これら試料中に存在するタンパク質を同定、定量した。
 なお、血漿タンパク質は、健常者から採取した血漿を、トリス塩酸バッファーでタンパク質濃度を40mg/mlになるよう希釈した後、分子篩カラム(Thermo Fisher Scientific社製、Zeb Spin Desalting Column、MWCO 7K)で血漿タンパク質を抽出することにより調製した。なお、その後、ゲル電気泳動(Agilent社製、OFFGEL)によって、24に分画し、それぞれの分画タンパク質をトリプシン分解処理し、前記質量分析に供した。
 尿タンパク質は、健常者から採取した尿をメタノール/クロロフォルム沈澱法によって処理することにより調製し、トリプシン分解して、前記質量分析に供した。
 その結果、前記質量分析によって、血漿においては約400種類のタンパク質が、尿においては約1,200種類が同定され、さらに、3名の検体で共通して検出されたタンパク質で両者を比較した結果、尿中に排泄される血漿タンパク質48種類を抽出することが出来た。
 そして、それらのタンパク質量を、質量分析の結果に基づき定量し(SIN;normalized spectral index)、さらに、両試料に含まれるアルブミン(ALB)値を基準に、同定タンパク質の尿中分率を算出した。
 この結果、下記表3及び4に示すとおり、アルブミンと比較し、尿中に偏って高い(=近位尿細管でアルブミンより再吸収されにくい)血漿タンパク質を、微量アルブミン尿より早期に糸球体障害を検出できるバイオマーカー候補(35種)として選抜することが出来た。
 なお、表中の表記については以下のとおりである。
Xp:血漿タンパク中の各同定したタンパク質の量
Xu:尿タンパク中の各同定したタンパク質の量
Albp:血漿タンパク中のアルブミン量
Albu:尿中タンパク中のアルブミン量
尿中分率=(Xu/Albu)/(Xp/Albp)。
 (実施例2)
 次に、上記マーカー候補が、実際に、アルブミンを指標とする場合よりも早期に腎障害を検出できるかにつき、腎障害が認められた糖尿病患者の尿検体の時系列データを用い、評価した。なお、上記マーカー候補から、比較的尿中濃度が高いという観点から、AMBP、ZAG、PLGを、以下の評価に供した。
 解析対象に関し、インフォームドコンセントを得た糖尿病患者約6000人から、来院の都度行われる通常の尿検査後、不要になった尿検体を冷凍保存し、使用した。この中から、糖尿病にのみ罹患している外来患者であって、その後再来院時に微量アルブミン尿が検出され、早期腎障害を発症したと考えられる患者43名を特定した。さらに、これら患者の過去来院時の尿検体を抽出し、過去4ヶ月毎に区切ってグループ化し、マーカー候補評価時に使用した。
 尿中の各タンパク質量の測定は、各タンパク質を特異的に認識する抗体を用い、表面プラズモン共鳴法(SPR法、装置名:BioRad ProteOn XPR36)によって行った。具体的には、ProteOn XPR36(BioRad)でセンサーチップ(GLM)の6ラインを50%グリセロールでイニシャライズし、アクチベータ(EDCとSulfo‐NHSとの1:1混合液)でライン表面を活性化した後、捕獲用抗体(4種類)、コントロール(正常マウスIgG等)(10mM 酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)にて10μg/mLになるよう希釈)をそれぞれ1ラインずつに固定し、1M Ethanolamine-HClでデアクチベートした。その後、抗体及びコントロール固定ラインに直交する1~6ラインに尿検体セット(6検体)を2分間、50μL/分で反応させ、それぞれの最大ピークのRU値を求めた。捕獲用抗体への結合量は、捕獲用抗体で得られたRU値からコントロールで得られたRU値を差し引いた値とした。その反応後、リジェネレーター(10mM グリシン‐HC緩衝液‐10% Tween20、pH2.5)を用い、1分、100μL/分で6ラインを洗い、抗体に結合したタンパク質を解離させ、10% Tween20含有PBS緩衝液(PBS-T、pH7.5)を用い、16分、25μL/分でラインを平衡化した後、次の尿検体セット(6検体)を反応させ、そのRU値を得た。これを繰り返すことで、多検体の尿中の各タンパク質、4種類を定量した。
 また、比較対象として尿中のアルブミン量も測定した。加えて、尿中成分の量比等の比較時にクレアチニン補正を実施することが一般的であるため、SPR測定値をクレアチニン測定値で割ったクレアチン補正値も算出し、比較解析も行った。
 なお、尿検体は、凍結保存していたものを、37℃で10分間温め、10% Tween20含有PBS緩衝液(PBS-T、pH7.5)で10倍に希釈して、本SPR法に供した。また、本SPR法において捕獲用抗体として用いた各抗体は以下のとおりである。
抗AMBP抗体…R&Dsystems社製、製品名:Human alpha 1-Microglobulin antibody、Clone#784917、カタログ番号:MAB7724、
抗ZAG抗体…R&Dsystems社製、製品名:Human ZAG Antibody、Clone#842025、カタログ番号:MAB4764、
抗PLG抗体…R&Dsystems社製、製品名:Human Plasminogen/Plasmin Antibody、Clone#270412、カタログ番号:MAB2596、
抗アルブミン抗体…PAR社製、Albumin antibody、Clone#BI2025A。
 また、尿検体は、凍結保存していたものを、37℃で10分間インキュベートすることにより解凍した後、PBS-T緩衝液にて10倍に希釈したものの、上清を前記SPR法に供した。
 そして、このようにして得られた各SPR測定値を、クレアチン補正有/無にて、早期腎障害を発症したと考えられる糖尿病患者の尿及びその過去来院時の尿と、少なくとも1年間は腎障害を発症していない糖尿病患者の尿とで比較した。また、当該糖尿病患者の尿と健常者の尿とも比較した。これら2群間の比較はWelch’s t検定にて行った。得られたAMBPに関する結果を下記表に示す。なお、当該表において、「日数」は、微量アルブミン尿が検出された時点、すなわち早期腎障害の発症時点から遡っての日数を示す。また、この日数以外の数値は、前記t検定によって得られた各P値であり、0.05未満を有意であると判断した。
 表5に示した結果から明らかなように、尿中のAMBPは、クレアチニン補正の有無に関わらず、早期腎障害の発症より480~599日前から、有意に増加していることが明らかになった。すなわち、AMBPを指標とすることによって、微量アルブミン尿と比較して、1年半程度早く腎障害の傾向を検出できることが明らかになった。さらに、その有意性(検出感度)は、クレアチニン補正を行うことによって、より向上することも明らかになった。
 また、図表には示していないが、ZAGに関するSPR測定値(クレアチン補正有)においても、早期腎障害の発症より240~359日前の時点で有意な増加が認められ、PLGに関するSPR測定値(クレアチン補正無)においても、早期腎障害の発症より240~359日前の時点で有意な増加が認められた。
 さらに、少なくとも1年間は腎障害を発症していない糖尿病患者の尿と健常者の尿とで比較した結果、いずれのマーカーにおいても有意差が認められた(アルブミンのP値:0.015917、AMBPのP値:0.042547、ZAGのP値:0.000510、PLGのP値:0.022905)。
 以上の結果から、尿中にアルブミンより偏って排出されることを指標として選抜された、AMBP、ZAG、PLG等の上記マーカー候補は、実際にアルブミンよりも早期に腎障害を検出し得ることが明らかになった。
 (実施例3)
 次に、実施例2にて統計解析に供したAMBPに関するデータの分布を確認するために、箱ひげ図を作成した。なお、有意差の記述には、Welch’sの検定値を使用した。得られた結果を、図1に示す。
 図1に示すとおり、データ分布において、特に大きな差があるわけではなく、Day0時点(図中「DN」、糖尿病患者にて、微量アルブミン尿が検出され、早期腎障害が認められた時点)の分布と、16ヶ月前あたりまでの分布は同様であることが確認された。
 (実施例4)
 次に、AMBPによる腎障害の検出に関し、各種統計値及び臨床評価値(ROC曲線を用いたAUC値評価)を算出した。得られた結果を下記表に示す。なお、表中の項目については以下のとおりである。
DM標本数:糖尿病外来に来院し、糖尿病のみ罹患している患者尿
DN標本数:経過観察時に早期腎障害を発症した患者を43名と、その発症前の検体尿
平均:SPR測定値の平均値
SD:SPR測定の標準偏差値
Welch’s:比較群のn数が少ない場合、等分散性の過程が成り立たない可能性があり、非等分散性のパラメトリック検定も行い、P値を算出
Steel検定:各データ分布が、正規性が無い場合も鑑み、ノンパラメトリック検定の多重検定法であるSteelの多重検定を行った場合のP値
AUC:ROC解析において、ROC曲線の下部面積値で1が最大
感度:疾患を持った人のうち、その所見がある人の割合(真陽性率)
特異度:疾患を持たない人で、その所見がない人の割合(真陰性率)
カットオフ:ROC曲線に対して、左上の隅の点からの距離が最小となる点を算出し、その際の測定値。
 表6に示すとおり、ROC解析の結果、AUC値は統計的に有意な期間で、0.8を超えており、AMBPは、腎障害の検出マーカーとして、十分な判定性能を有していると考えられる。
 AMBPは、α1-マイクログロブリン/ビクニン前駆体と称される、血漿中に分泌される糖タンパク質であり、ヒト由来であれば、352アミノ酸からなる(配列番号:1)。また、その名が示すとおり、タンパク質分解によって、α1-マイクログロブリン(a1-MG、AMBPの20~203位のアミノ酸からなるペプチド、配列番号:2)と、ビクニン(AMBPの206~352位のアミノ酸からなるペプチド)とが生成される。
 (実施例5) 尿中AMBPのトリプシン断片ペプチドの質量分析による定量
 糖尿病患者の尿タンパク質を、質量分析装置(LC-MS/MS、Bruker社製 tims TOF pro)を用いた定量プロテオミクス(Data-Independent Aquisition,DIA)に供し、検出されたAMBP由来のペプチドを定量(ppm)し、前記尿タンパク質中に存在するタンパク質を同定した。前記糖尿病患者は、微量アルブミン尿陰性の糖尿病患者及び微量アルブミン尿陽性(腎障害あり)の糖尿病患者であり、これらから採取した尿をメタノール/クロロフォルム沈澱法によって処理することによって得られたタンパク質分画125検体を、トリプシン分解して、前記質量分析に供した。
 その結果、図2に示すとおり、AMBPの20~203位のアミノ酸からなる領域(a1-MG)において、#1~#11で示す各々の領域からなる、トリプシン消化され生成されたAMBP由来のペプチドが、糖尿病患者由来の尿から検出された。さらに、前記質量分析で同定、定量されたペプチド#1~#11の各断片毎に、相対量(ppm)の平均値を解析した結果、図3に示すとおり、#6~#8のペプチドは、ほとんど検出されなかった。このことから、尿中にはAMBPあるいはa1-MGの全長ではなく、断片化されたポリペプチドとして存在している可能性が示唆された。なお、#1よりN末端側のペプチドと#7と#8の間のペプチドには糖鎖が結合していて検出されなかった可能性がある。
 (実施例6) 尿中AMBP由来ポリペプチドの同定
 図4に示すとおり、尿をメタノール/クロロフォルムによって処理すると、タンパク質は沈殿するが、その上清(水層)には、沈殿しなかった比較的小さなタンパク質や、ペプチドが存在する。そこで、実施例5で予測されたAMBPタンパク質の断片化ペプチドが水層に存在するか、確認を行った。
 具体的には、質量分析装置(LC-MS/MS、Bruker社製 tims TOF pro)を用いて水層中のペプチド配列の同定を行った。さらに、同定されたAMBPペプチドをa1-MGとビクニンの全長にマッピングを行った。微量アルブミン尿陰性の糖尿病患者(28名)由来の検体で同定されたペプチドのマッピング結果を、図5及び6に示す。健常者(45名)由来の検体で同定されたペプチドのマッピング結果を、図7及び8に示す。
 また、前記にて検出された全てのペプチド断片について、それらN末端のアミノ酸位置をプロットした。さらに、このプロット数を、糖尿病患者と健常者でそれぞれのアミノ酸位置で集計し、この集計値を使用して、ROC解析を行った。その結果、図9に示すとおり、矢印で示しているN末端アミノ酸を有するペプチド断片を指標とすることによって、糖尿病患者を有意に健常者と区別できることが明らかとなった。
 また、前記にて検出された全てのペプチド断片について、それらC末端アミノ酸位置をプロットした。さらに、このプロット数を、糖尿病患者と健常者でそれぞれのアミノ酸位置で集計し、この集計値を使用して、ROC解析を行った。その結果、図10に示すとおり、矢印で示しているC末端アミノ酸を有するペプチド断片を指標とすることによって、糖尿病患者を有意に健常者と区別できることが明らかとなった。
 以上の結果から、糖尿病患者群で特徴的に検出された5種類のペプチド断片(ペプチドA:AMBPの183~202位のアミノ酸(配列番号:3)、ペプチドB:AMBPの183~203位のアミノ酸(配列番号:4)、ペプチドC:AMBPの184~202位のアミノ酸(配列番号:5)、ペプチドD:AMBPの184~203位のアミノ酸(配列番号:6)、ペプチドE:AMBPの63~85位のアミノ酸(配列番号:7))を指標とすることによって、患者と健常者とを有意に区別できることが明らかとなった。特に、a1-MG(AMBPの20~203位のアミノ酸(配列番号:2))のC末端領域に位置する4種類のペプチド断片(ペプチドA~ペプチドD)は、AUC値が0.9を超える特に高い患者検出能を有することが示された。
 さらに、これら4種のペプチドについて、健常者群及び糖尿病患者群の質量分析によるペプチド同定数を用いて、群間比較(ウエルチのt検定)を実施した。その結果、図11に示すとおり、4種のペプチドは有意差 p<0.01で患者群と健常者群を識別可能であることが示された。
 (実施例7) a1-MGのC末端領域についての解析
 実施例6に示した結果から、a1-MGのC末端領域に位置するペプチドは、糖尿病患者識別において有用であることが示唆された。そこで、実施例2において、糖尿病患者における腎障害の検出能を評価(臨床評価)に使用した抗AMBP抗体(R&Dsystems社製、MAB7724)が、前記領域を認識していたかどうかを解析した。
 具体的には、図12及び下記表7に示すとおり、a1-MGのC末端領域(AMBPの100~203位のアミノ酸からなる領域)において、アミノ酸数21~30からなるペプチドを5種類、常法に従って化学的に合成した。なお、ペプチド5は、実施例6におけるペプチドA~Dのうち、最も鎖長の長いものであるペプチドBである。
 次に、これら合成ペプチド及び臨床評価に使用した前記抗AMBP抗体を用いたELISAによって、前記抗体が認識する部位を評価した。具体的には、先ず、抗マウスIgG-Fc抗体(アブカム社製、カタログ番号:ab98709)をPBS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、カタログ番号:20012-027)で1μg/mLに希釈し、96ウェルプレートに1ウェルあたり50μL添加し、冷蔵にて一日静置した。続いて、1×TBS(TBS(タカラバイオ社製、カタログ番号:T9141)を1タブレットあたり精製水1000mLで希釈し調製)を1ウェルあたり300μL用いて3回洗浄した。洗浄後、ブロッキングバッファー(3% BSA(富士フイルム和光純薬社製、カタログ番号:011-27055)、0.1% ProClin300(シグマアルドリッチ社製、カタログ番号:48912-U)、1×TBS(タカラバイオ社製、カタログ番号:T9141))を1ウェルあたり300μL添加し、冷蔵にて三日静置した。続いて、1×TBSを1ウェルあたり300μL用いて3回洗浄した。洗浄後、抗AMBP抗体(R&Dsystems社製、カタログ番号:MAB7724)を希釈用バッファー(1% BSA、0.05% Tween 20(バイオラッド社製、カタログ番号:161-0781)、0.1% ProClin300、1×TBS)で1μg/mLに希釈し、1ウェルあたり50μL添加し、室温にて2時間静置した。続いて、1×洗浄液(洗浄液(AIA-パックCL用)(東ソー社製、カタログ番号:0029703)を150mLあたり精製水2850mLで希釈し調製)を1ウェルあたり300μL用いて3回洗浄した。洗浄後、ビオチン化合成ペプチド1~5又はビオチン化α1-MGの希釈系列サンプルを調製した。希釈系列サンプルは、まず各ビオチン化ペプチドを、希釈用バッファー及びDMSO(富士フイルム和光純薬社製、カタログ番号:040-32815)を用いて、25000ng/mL(DMSO濃度:0.125%)になるよう調製した。さらに、これを希釈用バッファーで10倍希釈したものを最高濃度(2500 ng/mL)として、以降、希釈用バッファーで4倍希釈し調製した。本希釈系列サンプルを1ウェルあたり50μL添加し、室温にて2時間静置した。続いて、1×洗浄液を1ウェルあたり300μL用いて3回洗浄した。洗浄後、Streptavidin-Alkaline Phosphatase(シグマアルドリッチ社製、カタログ番号:S2890-1MG)を希釈用バッファーで0.1μg/mLに希釈し、1ウェルあたり50μL添加し、室温にて2時間静置した。続いて、1×洗浄液を1ウェルあたり300μL用いて3回洗浄した。洗浄後、基質溶液(Eテスト「TOSOH」II基質セット(東ソー社製、カタログ番号:0020968)中の、Eテスト「TOSOH」II基質に、Eテスト「TOSOH」II基質溶解液100 mLを添加し混和したものを、基質希釈バッファー(0.1M Tris-HCl(pH9.0)、1mM MgCl)で10倍希釈し調製)を1ウェルあたり50μL添加し、プレートリーダーで蛍光測定を実施した。得られた前記抗AMBP抗体の反応性評価結果を図14に示す。
 図14に示した結果から明らかなように、前記抗AMBP抗体は、ペプチド4及び5にのみに反応し、オーバーラップしているペプチド5の配列を認識していることが強く示唆された。また、前記抗体は、a1-MG全長よりもペプチド4及び5に対してより強く反応することが示唆された。
 以上の結果から、尿中にてAMBPは断片化しても存在していることが示されており、実施例2においては、AMBPの183~203位のアミノ酸を含むペプチドを対象として、臨床的評価が行えていたことが明らかとなった。すなわち、AMBPのの183~203位のアミノ酸を含むペプチドを指標とすることによって、糖尿病のみならず、それにおいて発症し得る腎障害を検出できることが、明らかとなり、前記ペプチドは、慢性腎臓病の検査において有用であることが示された。
 以上説明したように、本発明によれば、慢性腎臓病の検査が可能となる。特に、本発明によれば、現状臨床にて早期腎障害の指標として用いられる微量アルブミンよりも、早期に腎障害を感度よく検出することが可能となる。さらに、本発明の方法が対象とする検体は尿であるため、血液等の他の検体よりも、侵襲性低く得ることが出来、被検者の負担も少なくて済む。したがって、本発明は、慢性腎臓病に関する医療分野において有用である。

Claims (6)

  1.  下記(a)~(c)の工程を含む、慢性腎臓病を検査する方法
    (a)被検者から採取された尿検体について、下記タンパク質群から選択される少なくとも1のタンパク質の量を検出する工程、
    (b)工程(a)で検出したタンパク質量を各タンパク質の基準量と比較する工程、
    (c)工程(b)における比較の結果、前記被検者におけるタンパク質が基準量よりも高い場合、前記被検者は慢性腎臓病に罹患している又は罹患のおそれがあると判定する工程
    タンパク質群:
    AMBP、ZAG、PLG、SERPINF1、BTD、CPN2、SERPINA6、LUM、F2、LRG1、KNG1、ITIH4、SERPINA3、SERPINA1、APOH、SERPING1、AHSG、CP、CFB、CLU、A1BG、C4A、TTR、ITIH1、HPX、APOE、SERPINC1、RBP4、APOA4、VTN、GC、C3、APOD、TF及びCFH。
  2.  工程(a)で検出する前記タンパク質が、AMBP、ZAG及びPLGからなる群から選択される少なくとも1のタンパク質である、請求項1に記載の方法。
  3.  前記被検者が糖尿病患者であり、前記慢性腎臓病が糖尿病性腎臓病又は糖尿病性腎症である、請求項1又は2に記載の方法。
  4.  前記タンパク質量は、免疫学的方法、質量分析方法及びラマン分光法からなる群から選択される少なくとも1の方法によって検出される、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の方法。
  5.  請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の方法により、慢性腎臓病を検査するための薬剤であって、工程(a)で検出する前記タンパク質に結合する少なくとも1の抗体を含む薬剤。
  6.  下記タンパク質群から選択される少なくとも1のタンパク質を含む、慢性腎臓病マーカー
    タンパク質群:
    AMBP、ZAG、PLG、SERPINF1、BTD、CPN2、SERPINA6、LUM、F2、LRG1、KNG1、ITIH4、SERPINA3、SERPINA1、APOH、SERPING1、AHSG、CP、CFB、CLU、A1BG、C4A、TTR、ITIH1、HPX、APOE、SERPINC1、RBP4、APOA4、VTN、GC、C3、APOD、TF及びCFH。
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