WO2023144933A1 - 細胞培養容器 - Google Patents
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Abstract
閉鎖系で灌流培養を行う場合の不都合を改善するのに適した細胞培養容器を提供する。 第1方向一方側x1端に開口110を有し、且つ第1方向他方側x2端を塞ぐ容器底部14を有する有底筒状の容器体1と、開口110を塞いで容器体1の内側空間を密閉する閉塞体2と、を備える。閉塞体2は、フィルター押え22と、フィルター押え22に対して第1方向他方側x2に配置された膜フィルター23と、を有する。膜フィルター23と容器底部14とに挟まれた第1閉鎖エリアS1、およびフィルター押え22と膜フィルター23とに挟まれた第2閉鎖エリアS2が形成されている。閉塞体2は、第1流路211および第2流路223を有し、第1流路211は、一方側端が外部に通じ、且つ他方側端が第1閉鎖エリアS1に通じており、第2流路223は、一方側端が外部に通じ、且つ他方側端が第2閉鎖エリアS2に通じている。
Description
本開示は、細胞を培養するための細胞培養容器に関し、特に、自動的に一定の低速度で常時培養液を供給し、同時に同量の培養液を排出する灌流培養に用いる細胞培養容器に関する。
細胞の培養に際しては、例えばディッシュ(シャーレ)、ウェルプレート、フラスコなどの培養容器が広く用いられている。ディッシュやウェルプレートは蓋があっても載せるだけで隙間があり、密閉できなかった。フラスコの場合は密閉可能だが、これら従来の培養容器はいずれも培養液の交換等の作業に蓋の開閉が必要であった。そのため、これらの培養容器は、研究を目的にした細胞培養用途には汎用性が高いが、医療を目的にした細胞培養用途には、コンタミネーションのリスク、専門技術を持つ人材やコストの問題、培養細胞の品質均一化が難しいという問題があった。
昨今、これらの問題を解決するべく様々な自動培養装置が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。自動培養装置に用いられる培養容器において、例えば一対のポートが設けられている。これらポートは、例えば培養容器の蓋に設けられ、それぞれ蓋から下方に延びて培養容器の内部に配置される。細胞培養を行う際には、一方のポートを通じて新しい培養液が培養容器に供給され、かつ他方のポートを通じて培養容器内部の培養液が外部に排出される。一方のポートから培養液を供給し他方のポートから排出をするには、それぞれのポートに適したポンプを接続すればよく、その場合容器内に培養液と気体の層があっても液は流れる。しかしながら、一方のポートから供給する培養液と他方のポートから排出する培養液の量が正確に一致しなければ、培養が長期間に及んだ場合には容器内の液が枯渇または溢れることになり、これを回避するために水位センサーなどを用いた場合には装置が大掛かりになる。
このような不都合を回避するために、1つの容器に対してポンプを1つにした上で、一方のポートから陽圧で培養液を供給し他方のポートからオーバーフローさせて排出するか、片側のポートから培養液を陰圧で排出しもう一方のポートから培養液を引き込むシンプルな方法が有効になる。容器内の培養エリアに培養液を満液化させ、自動的に一定の低速度で常時培養液を供給し、同時に同量の培養液を排出する灌流培養である。この灌流培養においては、スムーズな液流を実現するために、閉鎖系であることと、培養容器の培養エリアに気体の層や気泡を作らないことが重要となるが、閉鎖系の培養容器内部を培養液で満たそうとしても、容器内部に少量の空気(気泡)が残存する場合がある。例えばポートが蓋から下方に延びて容器内部に配置されていると、容器内部に残存する空気を外部に排出することができなかった。さらに、灌流培養の課題として、対象の細胞が容器の底面を足場にして増殖する接着細胞であれば問題ないが、浮遊系の細胞であった場合に当該排出液ととともに流失するおそれがあった。
本開示は、このような事情のもとで考え出されたものであって、閉鎖系で灌流培養を行う場合の不都合を改善するのに適した細胞培養容器を提供することを主たる課題とする。
上記の課題を解決するため、本開示では、次の技術的手段を採用した。
本開示によって提供される細胞培養容器は、第1方向の一方側端に開口を有し、且つ前記第1方向の他方側端を塞ぐ容器底部を有する有底筒状の容器体と、前記開口を塞いで前記容器体の内側空間を密閉する閉塞体と、を備え、前記閉塞体は、外部と前記容器体の内側空間とを隔てる第1天井部と、前記第1天井部に対して前記第1方向の他方側に配置され、液体が通過可能な膜フィルターと、を有し、前記膜フィルターと前記容器底部とに挟まれた第1閉鎖エリア、および前記第1天井部と前記膜フィルターとに挟まれた第2閉鎖エリアが形成されており、前記閉塞体は、少なくとも1つずつの第1流路および第2流路を有し、前記第1流路は、一方側端が外部に通じ、且つ他方側端が前記第1閉鎖エリアに通じており、前記第2流路は、一方側端が外部に通じ、且つ他方側端が前記第2閉鎖エリアに通じている。
好ましい実施の形態においては、前記第1天井部には、前記第1方向の一方側に凹む天井凹部が形成されており、前記天井凹部は、前記第2流路につながっている。
好ましい実施の形態においては、前記閉塞体は、外部と前記容器体の内側空間とを隔てる第2天井部と、前記第2天井部から前記第1方向の他方側に離間して配置され、ガス透過性を有するガス透過膜と、を有し、前記第2天井部と前記ガス透過膜とに挟まれた第3閉鎖エリアが形成され、且つ前記ガス透過膜は、前記第1閉鎖エリアと前記第3閉鎖エリアを区画しており、前記閉塞体は、複数の第3流路を有し、前記第3流路は、一方側端が外部に通じ、且つ他方側端が前記第3閉鎖エリアに通じている。
好ましい実施の形態においては、前記容器体は、前記第1方向に延び、且つ前記開口を有する第1筒状部を含み、前記容器体および前記閉塞体の間に介在する環状のシール部材と、環状の頂板部、および前記頂板部の外周縁から前記第1方向の他方側に延び、且つ前記第1筒状部に外嵌される第2筒状部、を有する外蓋と、をさらに備え、前記容器体および前記外蓋の少なくともいずれか一方には、前記閉塞体に前記頂板部が当接する状態で前記第1筒状部と前記第2筒状部との相対移動を阻止する係止手段が設けられている。
好ましい実施の形態においては、前記容器底部は、前記第1方向の一方側を向く第1底面を有し、前記第1底面には、複数の凹部が設けられており、前記複数の凹部は、前記第1底面の面内方向に沿って稠密に配列されている。
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
以下、本開示の好ましい実施の形態を図面を参照しつつ具体的に説明する。
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
<第1実施形態>
図1~図5は、本開示の第1実施形態に係る細胞培養容器を示している。本実施形態の細胞培養容器A1は、容器体1、閉塞体2、シール部材3および外蓋4を備えている。図1は、細胞培養容器A1の斜視図である。図2は、細胞培養容器A1の平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図2のV-V線に沿う断面図である。
図1~図5は、本開示の第1実施形態に係る細胞培養容器を示している。本実施形態の細胞培養容器A1は、容器体1、閉塞体2、シール部材3および外蓋4を備えている。図1は、細胞培養容器A1の斜視図である。図2は、細胞培養容器A1の平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図2のV-V線に沿う断面図である。
図3~図5に示すように、本実施形態において、容器体1は、第1筒状部11、連絡部12、円筒部13および容器底部14を備える。第1筒状部11は、上下方向(第1方向x)に延びている。容器体1は、第1筒状部11の第1方向xの一方側端(以下、適宜「第1方向一方側x1端」という。)である上端112に開口110を有する容器状とされている。第1筒状部11は、概略円筒状とされており、第1筒状部11の外周面には、雄ネジ111が形成されている。連絡部12は、第1筒状部11の第1方向xの他方側端(以下、適宜「第1方向他方側x2端」という。)につながり、径方向内側に突出する環状部分である。円筒部13は、連絡部12の径方向内側につながり、第1方向xに延びている。
円筒部13の第1方向一方側x1端は、第1筒状部11の第1方向一方側x1端よりも第1方向他方側x2に位置し、円筒部13の第1方向他方側x2端は、第1筒状部11の第1方向他方側x2端よりも第1方向他方側x2に位置する。連絡部12の第1方向一方側x1を向く面は、凹溝121の一部を構成している。当該凹溝121は、連絡部12の第1方向一方側x1を向く面と、これにつながる第1筒状部11の内周面および円筒部13の外周面とにより構成された環状溝であり、シール部材3を配置するための部位である。
容器底部14は、円筒部13の下端(第1方向他方側x2端)につながり、円筒部13の内側を塞いでいる。本実施形態において、円筒部13の下端の適所には、延出片131が設けられている。延出片131は、円筒部13につながって径方向外方に延びる部分である。
容器体1は、例えば半透明または透明のプラスチック材料により形成されている。当該プラスチック材料としては、例えばポリスチレンのほか、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどの、好適には透明性を有する材料が用いられるが、これらに限定されない。
なお、容器底部14は、平板状であり、第1底面14aを有する。第1底面14aは、第1方向一方側x1を向いており、細胞を培養するための平坦な細胞培養面である。この細胞培養面(容器底部14の第1底面14a)には、必要に応じて細胞接着性を向上させるための表面処理が適宜施される。当該表面処理としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理などの親水化処理を挙げることができる。
閉塞体2は、容器体1の開口110を閉塞し、容器体1の内側空間を密閉するためのものである。図3~図5に示すように、閉塞体2は、第1環状板部21、フィルター押え22、膜フィルター23、膨出部24およびガス透過膜25を含んで構成される。
第1環状板部21は、第1方向xに見て環状をなしており、本実施形態では略円環状の板状部分を含んで構成される。第1環状板部21は、第1流路211、排出用円筒部212および内側係止部213を有する。排出用円筒部212は、第1方向一方側x1に延びる円筒状であり、フィルター押え22を配置するための部位である。内側係止部213は、排出用円筒部212の下端(第1方向他方側x2端)から径方向内側に突出する環状突部である。第1流路211については後述する。
フィルター押え22は、膜フィルター23を挟む部材であり、排出用円筒部212に嵌入されている。フィルター押え22は、円筒部221、天井凹部222および第2流路223を有する。円筒部221は、排出用円筒部212の内側に嵌っている。天井凹部222は、円筒部221につながり、円筒部221の内側を塞いでいる。天井凹部222は、第1方向一方側x1に凹んでいる。第1環状板部21およびフィルター押え22(円筒部221)は、膜フィルター23を第1方向xの両側から挟んでいる。詳細な図示説明は省略するが、円筒部221と排出用円筒部212との間には、Oリングが介在している。これにより、第1環状板部21とフィルター押え22との嵌合部は密閉されており、フィルター押え22(天井凹部222)よりも第1方向他方側x2の空間は、外部と隔てられている。第2流路223については後述する。
膜フィルター23は、液体が通過可能な液通過性の膜体である。膜フィルター23は、例えば培養液などの液体が通過可能である。また、空気などの気体も膜フィルター23を通過可能である。その一方、培養細胞などの液体以外の内容物は、膜フィルター23を通過することができずに捕捉される。膜フィルター23は、フィルター押え22に対して第1方向他方側x2に配置されている。この膜フィルター23が設けられることで、細胞培養容器A1の内部においては、互いに区画された第1閉鎖エリアS1および第2閉鎖エリアS2が形成される。第1閉鎖エリアS1は、膜フィルター23と容器底部14とに挟まれている。第2閉鎖エリアS2は、フィルター押え22と膜フィルター23とに挟まれている。膜フィルター23の構成材料は特に限定されず、例えばPET(ポリエステル)、あるいはPC(ポリカーボネート)製の親水化フィルターなどが挙げられる。なお、上記のフィルター押え22は、「第1天井部」の一例に相当する。
膨出部24は、第1環状板部21の内周縁につながっている。膨出部24は、第1方向xに見て第1環状板部21の内側を塞いでいる。また、膨出部24は、第1環状板部21に対して第1方向一方側x1に張り出している。膨出部24は、複数の第3流路241を有する。第3流路241については後述する。
ガス透過膜25は、ガス透過性を有する薄状膜である。その一方、ガス透過膜25は、液体は通過することができず、液非透過性である。ガス透過膜25は、第1環状板部21に取り付けられている。具体的には、ガス透過膜25は、第1環状板部21の下面(第1方向他方側x2を向く面)に例えば接着等の適宜手段により密着状態で固定される。このガス透過膜25が設けられることで、細胞培養容器A1の内部においては、第1閉鎖エリアS1と区画された第3閉鎖エリアS3が形成される。第3閉鎖エリアS3は、膨出部24とガス透過膜25とに挟まれている。第1閉鎖エリアS1は、ガス透過膜25と容器底部14とに挟まれている。ガス透過膜25の構成材料は特に限定されず、例えばPET(ポリエステル)、あるいはPC(ポリカーボネート)製の疎水性フィルターなどが挙げられる。なお、上記の膨出部24は、「第2天井部」の一例に相当する。
シール部材3は、容器体1および閉塞体2の間に介在し、容器体1の内側空間を外部と遮断するものである。シール部材3は、環状をなしており、第1方向xにおいて容器体1の円筒部13と閉塞体2の第1環状板部21との間に挟まれている。また、シール部材3の一部は、凹溝121に配置される。
シール部材3は、可撓性、弾力性を有する軟質素材からなる。シール部材3を構成する素材としては、例えば、シリコーンゴム、エラストマー樹脂などが挙げられる。詳細は後述するが、シール部材3と内容物(例えば培養液)との接触を考慮すると、シール部材3の素材としては、細胞毒性が無く、かつ生体適合性を有する医療用シリコーンゴムがより好ましい。また、シール部材3の硬さについては、例えばゴム硬度が20度~40度程度であるのが好ましい。
外蓋4は、頂板部41および第2筒状部42を有する。頂板部41は、概略円環状とされており、シール部材3を第1環状板部21(閉塞体2)と円筒部13(容器体1)との間に挟み付ける部分である。頂板部41の径方向内側には、貫通孔411が形成されている。貫通孔411は、頂板部41の厚さ方向(第1方向x)に見て当該頂板部41に囲まれている。
第2筒状部42は、頂板部41の外周縁から当該頂板部41の厚さ方向(図中上下方向である第1方向x)に延びており、概略円筒状とされている。第2筒状部42の内周面には、雌ネジ421が形成されており、当該雌ネジ421は、容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に螺合可能である。
外蓋4は、例えば不透明、半透明または透明のプラスチック材料により形成されている。当該プラスチック材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンのほか、ポリスチレン、ポリカーボネートなどが用いられるが、これらに限定されない。
第1流路211、第2流路223および複数の第3流路241は、外部と細胞培養容器A1の内部空間とに通じる筒状の連通路である。図3に示すように、第1流路211は、一方側端(第1方向一方側x1端)が外部に通じ、他方側端(第1方向他方側x2端)が第1閉鎖エリアS1に通じる。第2流路223は、一方側端(第1方向一方側x1端)が外部に通じ、他方側端(第1方向他方側x2端)が第2閉鎖エリアS2に通じる。第2閉鎖エリアS2を規定するフィルター押え22の天井凹部222は、第2流路223につながっている。図5に示すように、複数の第3流路241は、各々、一方側端(第1方向一方側x1端)が外部に通じ、他方側端(第1方向他方側x2端)が第3閉鎖エリアS3に通じる。
次に、細胞培養容器A1の使用方法および作用について、図6、図7を参照しつつ説明する。
細胞培養容器A1は、容器内に培養液を供給し、同時に同量の培養液を容器外に排出する灌流培養に使用される。なお、細胞培養容器A1に収容される培養細胞や培養液については、特に限定されるものではない。
細胞培養容器A1を用いた細胞培養では、あらかじめ、容器体1、閉塞体2、シール部材3および外蓋4をアセンブリしておく。次に、第1流路211および第2流路223を介して細胞培養容器A1に培養液の供給および空気の排出を行い、容器体1の内側空間(第1閉鎖エリアS1)を培養液で満たす。ここで、図6に示すように第1流路211および第2流路223には、それぞれチューブ8が接続される。第1流路211の一方側端(第1方向一方側x1端)には、チューブ8を介して灌流用ポンプ(図示略)が接続され、第2流路223の一方側端(第1方向一方側x1端)には、チューブ8を介して排液用容器(図示略)が接続される。なお、第1閉鎖エリアS1を培養液で満たす前に、培養液とともに培養細胞を第1閉鎖エリアS1に供給する。
第1流路211の他方側端(第1方向他方側x2端)は、第1閉鎖エリアS1に通じている。これにより、第1閉鎖エリアS1は、第1流路211を介して供給される培養液で満たされる。また、第1流路211を介して供給される培養細胞も第1流路211に流れ込む。第1閉鎖エリアS1にある空気は、気体が通過可能な膜フィルター23を通過し、第2閉鎖エリアS2を経て第2流路223から外部に排出される。灌流培養を行う際には、第1流路211を通じて新しい培養液Cが第1閉鎖エリアS1に供給される。第1閉鎖エリアS1にある培養液Cは、膜フィルター23を通過して第2閉鎖エリアS2に流れ込む。そして、第2閉鎖エリアS2にある培養液Cは、第2流路223を通じて外部に排出される。灌流培養工程においては、細胞培養容器A1内(第1閉鎖エリアS1および第2閉鎖エリアS2)の培養液Cを僅かずつ入れ替え続ける。
細胞培養容器A1において、閉塞体2は、膜フィルター23を有する。この膜フィルター23は、細胞培養容器A1の内部を第1閉鎖エリアS1および第2閉鎖エリアS2に区画している。上述のように、第1流路211から細胞培養容器A1内(第1閉鎖エリアS1)に供給される培養液Cは、膜フィルター23を通過し、第2閉鎖エリアS2、第2流路223を経て外部に排出される。一方、灌流スピードは極めてゆっくりしたものなので、培養細胞が自重に逆らい浮遊して天井凹部222側に設けられた膜フィルター23に吸い寄せられることは殆どない。培養液C中にある培養細胞は、万一膜フィルター23に到達した場合でも膜フィルター23を通過することができない。これにより、第1閉鎖エリアS1において培養細胞が培養液C中に浮遊しても、培養液C中の培養細胞が第2流路223から不当に排出されることは防止される。
細胞培養容器A1の第1閉鎖エリアS1に少量の空気が残存する場合がある。膜フィルター23の上側(第1方向一方側x1)に位置する第2閉鎖エリアS2を形成するフィルター押え22には、第1方向一方側x1に凹む天井凹部222が形成されており、当該天井凹部222は第2流路223につながっている。このような構成によれば、第2流路223が上位に位置するように細胞培養容器A1を傾けると、第1閉鎖エリアS1内の気泡は、膜フィルター23を通過して第2閉鎖エリアS2に移動する。この状態で灌流用ポンプを作動させることにより、第2閉鎖エリアS2に残存する気泡は天井凹部222を通じて第2流路223内に移動し、細胞培養容器A1の外部に排出することができる。
閉塞体2は、膨出部24およびガス透過膜25を含む。細胞培養容器A1においては、膨出部24とガス透過膜25とに挟まれた第3閉鎖エリアS3が形成されており、ガス透過膜25は、第1閉鎖エリアS1と第3閉鎖エリアS3を区画している。膨出部24(閉塞体2)は、複数の第3流路241を有する。各第3流路241は、一方側端(第1方向一方側x1端)が外部に通じ、他方側端(第1方向他方側x2端)が第3閉鎖エリアS3に通じる。このような構成によれば、必要に応じて、複数の第3流路2411を通じて所定のガスを膨出部24に供給し、且つ排出することで、第3閉鎖エリアS3を所定のガス雰囲気に維持することができる。そして、第1閉鎖エリアS1の内容物(培養液Cおよび培養細胞)については、ガス透過膜25を介して第3閉鎖エリアS3との通気状態が維持され、第3閉鎖エリアS3のガスを取り込むことが可能である。さらに、第3流路241に供給するガス種を変更することで、第3閉鎖エリアS3のガス雰囲気を、容易、且つ迅速に変更することができる。例えばCO2インキュベータ等を用いて所定のガス雰囲気状態を作る場合と比べて、簡単な構成で所望のガス雰囲気の通気を行うことが可能である。
細胞培養容器A1は、容器体1および閉塞体2の他に、シール部材3および外蓋4を備えている。シール部材3は、容器体1と閉塞体2との間に介在している。容器体1の第1筒状部11に外嵌される外蓋4の第2筒状部42には、雌ネジ421が形成されている。当該雌ネジ421を容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111に締め込むことで、シール部材3が容器体1における円筒部13の上端と閉塞体2の第1環状板部21とによって挟まれて、アセンブリ状態が維持される。これにより、容器体1に収容された内容物(培養細胞や培養液C)は液封されている。したがって、灌流培養工程において細胞培養容器A1の閉鎖状態を維持したまま培養液灌流作業を行うことができ、コンタミネーションのリスクを回避することができる。その結果、細胞培養容器A1によれば、培養液Cの状態を良好に保って、細胞の品質確保を実現することができる。なお、容器体1(第1筒状部11)の雄ネジ111および外蓋4(第2筒状部42)の雌ネジ421は、「係止手段」の一例に相当する。
<第1実施形態の変形例>
図8および図9は、第1実施形態の変形例に係る細胞培養容器を示している。図8は、上記実施形態において示した図3と同様の断面図である。なお、図8以降の図面において、上記実施形態の細胞培養容器A1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
図8および図9は、第1実施形態の変形例に係る細胞培養容器を示している。図8は、上記実施形態において示した図3と同様の断面図である。なお、図8以降の図面において、上記実施形態の細胞培養容器A1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
本変化例の細胞培養容器A11において、容器体1(容器底部14)の第1底面14aには、複数の凹部141が形成されている。図9に示すように、複数の凹部141は、第1底面14aの面内方向に沿って稠密に配列されている。複数の凹部141は、培養細胞が三次元的に凝集し、スフェロイドが形成されやすくするための凹みである。
本変形例の細胞培養容器A11において、閉塞体2は、膜フィルター23を有する。この膜フィルター23は、細胞培養容器A11の内部を第1閉鎖エリアS1および第2閉鎖エリアS2に区画している。第1流路211から細胞培養容器A11内(第1閉鎖エリアS1)に供給される培養液Cは、膜フィルター23を通過し、第2閉鎖エリアS2、第1流路211を経て外部に排出される。一方、灌流スピードは極めてゆっくりしたものなので、培養細胞が自重に逆らい浮遊して天井凹部222側に設けられた膜フィルター23に吸い寄せられることは殆どない。培養液C中にある培養細胞は、万一膜フィルター23に到達した場合でも膜フィルター23を通過することができない。これにより、第1閉鎖エリアS1において培養細胞が培養液C中に浮遊しても、培養液C中の培養細胞が第2流路223から不当に排出されることは防止される。
本変形例では、容器体1(容器底部14)の第1底面14aには複数の凹部141が設けられている。複数の凹部141を含む容器底部14(第1底面14a)には、スフェロイド形成に有利に働く細胞非接着コートを施してもよい。このような構成にすれば、細胞が三次元的に凝集し、スフェロイドが形成されやすい。本開示によれば、灌流の液中に気泡が残存しにくく、灌流スピードは極めてゆっくりしたものなのでスフェロイドが凹部141から不当に浮き上がりにくく、また、天井凹部222側に設けられた膜フィルター23によってスフェロイドが排出されることもない。なお、形成されたスフェロイドを閉鎖的に回収する場合、第1流路211側から吸引することでスフェロイドの回収が可能である。その他にも、本変化例の細胞培養容器A11において、上記実施形態の細胞培養容器A1と同様の作用効果を奏する。
以上、本開示の具体的な実施形態を説明したが、本開示に係る細胞培養容器は、上記実施形態に限定されるものではない。本開示に係る細胞培養容器の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
A1,A11,A2:細胞培養容器、1:容器体、11:第1筒状部、110:開口、111:雄ネジ(係止手段)、112:上端(第1筒状部の第1方向一方側端)、12:連絡部、121:凹溝、13:円筒部、131:延出片、14:容器底部、14a:第1底面、141:凹部、2:閉塞体、21:第1環状板部、211:第1流路、212:排出用円筒部、213:内側係止部、22:フィルター押え(第1天井部)、221:円筒部、222:天井凹部、223:第2流路、23:膜フィルター、24:膨出部(第2天井部)、241:第3流路、25:ガス透過膜、3:シール部材、4:外蓋、41:頂板部、411:貫通孔、42:第2筒状部、421:雌ネジ(係止手段)、8:チューブ、C:培養液、S1:第1閉鎖エリア、S2:第2閉鎖エリア、S3:第3閉鎖エリア、x:第1方向、x1:第1方向一方側、x2:第1方向他方側
Claims (5)
- 第1方向の一方側端に開口を有し、且つ前記第1方向の他方側端を塞ぐ容器底部を有する有底筒状の容器体と、
前記開口を塞いで前記容器体の内側空間を密閉する閉塞体と、を備え、
前記閉塞体は、外部と前記容器体の内側空間とを隔てる第1天井部と、前記第1天井部に対して前記第1方向の他方側に配置され、液体が通過可能な膜フィルターと、を有し、
前記膜フィルターと前記容器底部とに挟まれた第1閉鎖エリア、および前記第1天井部と前記膜フィルターとに挟まれた第2閉鎖エリアが形成されており、
前記閉塞体は、少なくとも1つずつの第1流路および第2流路を有し、
前記第1流路は、一方側端が外部に通じ、且つ他方側端が前記第1閉鎖エリアに通じており、
前記第2流路は、一方側端が外部に通じ、且つ他方側端が前記第2閉鎖エリアに通じている、細胞培養容器。 - 前記第1天井部には、前記第1方向の一方側に凹む天井凹部が形成されており、
前記天井凹部は、前記第2流路につながっている、請求項1に記載の細胞培養容器。 - 前記閉塞体は、外部と前記容器体の内側空間とを隔てる第2天井部と、前記第2天井部から前記第1方向の他方側に離間して配置され、ガス透過性を有するガス透過膜と、を有し、
前記第2天井部と前記ガス透過膜とに挟まれた第3閉鎖エリアが形成され、且つ前記ガス透過膜は、前記第1閉鎖エリアと前記第3閉鎖エリアを区画しており、
前記閉塞体は、複数の第3流路を有し、
前記第3流路は、一方側端が外部に通じ、且つ他方側端が前記第3閉鎖エリアに通じている、請求項1または2に記載の細胞培養容器。 - 前記容器体は、前記第1方向に延び、且つ前記開口を有する第1筒状部を含み、
前記容器体および前記閉塞体の間に介在する環状のシール部材と、
環状の頂板部、および前記頂板部の外周縁から前記第1方向の他方側に延び、且つ前記第1筒状部に外嵌される第2筒状部、を有する外蓋と、をさらに備え、
前記容器体および前記外蓋の少なくともいずれか一方には、前記閉塞体に前記頂板部が当接する状態で前記第1筒状部と前記第2筒状部との相対移動を阻止する係止手段が設けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載の細胞培養容器。 - 前記容器底部は、前記第1方向の一方側を向く第1底面を有し、
前記第1底面には、複数の凹部が設けられており、
前記複数の凹部は、前記第1底面の面内方向に沿って稠密に配列されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の細胞培養容器。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
PCT/JP2022/002905 WO2023144933A1 (ja) | 2022-01-26 | 2022-01-26 | 細胞培養容器 |
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PCT/JP2022/002905 WO2023144933A1 (ja) | 2022-01-26 | 2022-01-26 | 細胞培養容器 |
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Publication Number | Publication Date |
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WO2023144933A1 true WO2023144933A1 (ja) | 2023-08-03 |
Family
ID=87471265
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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PCT/JP2022/002905 WO2023144933A1 (ja) | 2022-01-26 | 2022-01-26 | 細胞培養容器 |
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Country | Link |
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WO (1) | WO2023144933A1 (ja) |
Citations (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04183388A (ja) * | 1990-11-16 | 1992-06-30 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 細胞培養方法 |
JP2011244713A (ja) * | 2010-05-25 | 2011-12-08 | Shimadzu Corp | 細胞培養デバイス、細胞培養システム、及び細胞培養方法 |
WO2021014642A1 (ja) * | 2019-07-25 | 2021-01-28 | 株式会社サンプラテック | 培養液収容容器 |
-
2022
- 2022-01-26 WO PCT/JP2022/002905 patent/WO2023144933A1/ja unknown
Patent Citations (3)
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